ミツバチ科学21(1):9-16 HoneybeeScience(2000)
神奈川県での農業利用のための
マル-ナバチ研究 と今後 の展開方向
1997年 に本誌 18巻第-号で 「日本産 マル-ナバチの実用化 に向けて」 を報告 させて頂 いて か ら,3年が過 ぎよ うと している. その後, マ ル-ナバチに関す る報道 も多 くなされて きてお り,神奈川県農業総合研究所で も,農業者 に限 らず,一般 の県民 に も,施設公開やイ ンターネ ッ ト (神奈川県農業総合研究所 ホームペー ジ: http://www.agri.pref.kanagawa.jp/nos -oken/nosoken.asp)などを通 じて,マルハナバチの利用 と日本産 マル- ナバチの実用化へ の取 り組みを紹介 し,時 にはマル-ナパテの巣 を直接見ていただ く機会 も作 って きた. マル-ナバチを利用 している トマ ト生産者 に も,通常 見 ることがで きない, マル-ナパテの巣 の中を 覗 いて もらうことで, マル-ナバチを使 いこな すためのテクニ ックに応用 して もらった り, 日 本産 マル-ナバチを研究す る意義を理解 してい ただ くことがで きた. トマ トの生産者以外 の農 業者で も, マルハナ/ヾチの ことは耳 に している ようであるが,残念 なが ら,一般の方 々は,「ハ チ」 といえば ミツバチ ・スズメ/ヾチ ・アシナガ 基推研究 マルハナバチに関する基礎的研究
浅田 真一
バチ,「ハチか らの恩恵」といえば,-チ ミツで あ り,ハナバチが もつ ポ リネ一夕-としての機 能や, マル- ナバチとい う昆虫 自体が, まだま だ,市民権 を得ていないよ うに思えた.ただ し, 「このハチが,温室 の中を飛 び回 って,トマ トの 受粉 を して くれ るので, トマ トがで きるんです よ」 といった話 は,大人か ら子供 まで非常 に理 解 されやすい. また,そのために ヨーロッパか ら-チを輸入 している話 には,賛否両論の反応 があ り,紹介 している私 自身,毎回,驚かされ ていた.ハチを置 いてお くだけで も,人の目を ひきつ けることがで きることか ら, 日本で もマ ル-ナパテをより身近な昆虫にす るために も, 関係機関の方 々のPR活動 に期待す るところは 非常 に大 きい. さて,3年前,著者 は, セイ ヨウオオマル-ナバチの輸入問題 (小野,1995)に直面 し,日 本産 マルハナバチの利用 の可能性を探求 し始 め るにあた り, 実用化 までの研究過程 (図1:浅 田,1997)を描 いてみた.そこで本稿では, こ れまでの研究展開を,前回 と同 じ 1) マルハナ 実用化研究 図1 日本産マルハナバチの実用化までの研究過程 (浅田,1997)バチの訪花性,2)室内飼育 ・増殖過程,3)天 敵類の問題 と資源保護 の3面か らまとめ,さら に,神奈川県内でのセイ ヨウオオマル-ナバチ の利用状況や生産者 の方 々の声を交えなが ら, 日本産 マル- ナバチの研究状況を紹介 させてい ただ きたい. マルハナバチの トマ トへの訪花性 まず14種類 の 日本在来種 マル-ナパテの う ち,比較的広 い分布域 を もつ 2種 と,飼育が可 能であった2種の,計4種 のマル- ナパテにつ いて, トマ トへの訪花性 を調査 したところ, い ずれ もセイ ヨウオオマルハナバチと同 じ振動採 粉行動 を示 し, その着果率 も, 日本在来種 とセ イ ヨウオオマルハナバチの と問での差がないこ とを
確
認 した (Asada and Ono, 1996). さらに,4
種の内,室内飼育の研究 を進 めてい るオオマルハナバチ, クロマル-ナ/ヾチについ ては,同一 の- ウスを3部屋 に仕切 り,セイ ヨ ウオオマルハナバチとの比較試験を行 った.そ の結果,着果率 に加え,果重,空洞栗の発生程 度 にも差が見 られなった. また, マルハナバチ によって受粉 をさせた トマ トは, ホルモ ン処理 によって着果 させた トマ トに比べ花跡が大 きい との報 告 が あ った こ とか ら (池 田 ・忠 内, 1995), 花跡 の大 きさにつ いて も比較 したが, 種間差 は認め られなか った (表 1). 日本国内でのマル-ナバ チ利用 は,現在普及 を拡大 しっっあるセイ ヨウオオマルハナバチで さえ も,問題が無 いわけで はない. まず,病害 虫防除での問題が挙 げ られ るが, ここでは,栽 培上の問題点 について,ふれ させていただ く. マルハナバチの導入以前の欧州 と日本の トマ ト 栽培を比較す ると,前者で は,花を人為的に振 動 させて受粉 をさせていたのに対 して,後者で は,受粉 に関係無 く着果す る植物 ホルモ ン剤 の 花への局所散布の技術が普及 していた.欧州で は, トマ トの受粉が正常 に行われるような栽培 がなされていた ことか ら,受粉 を手伝 うための マル-ナパテが比較的スムーズに導入 されてい ったとされているが (岩 崎, 1995), 日本では 花粉 の性状が受粉 に適 していな くて も着果 させ ることができる技術であ ったことか ら,マルハ ナバチを使 うためには, トマ トの花 を受粉 に適 したよ うに栽培環境を変え る必要があ った.神 奈川県でのマル-ナバチ利用 は, トマ トの作型 か ら卜5月が主体 になると考え られ る.秋か ら 育苗を始 め, 12月に入 る頃に施設内に定植 し, 苗がある程度 の大 きさに成長 した段階か らマル ハナバチを設置す る例が多 いが, マルハナバチ の扱 いに慣れている生産者で は12月中か らマ ル- ナバ チを使 うこと も考 えて い るよ うで あ る.冬期のマルハナバチ利用では,ハチの活動 性を維持す ることだけでな く,前記 の とお り, トマ トの花粉の状態 に注意す る必要がある.一 例ではあるが,生産者 の施設で, 1月下旬 に ト マ トの花が咲いているのに, マル-ナパテが受 粉行動 を示 さな くな った ことが あ った.当初 は,農薬の影響 も考え られたが,同時期 に2箇 所で同 じ現象がお きたことか ら, トマ トの花を 観察 したところ,振動 させて も花粉 は落 ちて こ なか った. そこで,筒状 の約を開 き,内部を観 察 した ところ,薪 は開いているものの, その内 側 には,わずかな花粉が付着 しているだけであ 蓑 1 マル-ナバチの訪花が果実品質に及ぼす影響 1果実当た 花跡の マルハナバチ 段位 果重(g) り種子数 大きさ(mm) 空洞果率(%) クロマル-ナバチ 4 175(n-35) オオマルハナバチ 4 193(n-65) セイヨウオオマル-ナバチ 4 190(∩-63) クロマルハナバチ 5 203(n-50) オオマル-ナパテ 5 182(∩-23) セイヨウオオマル-ナバチ 5 189(∩-50) 99(∩-35) 129(n-65) 109(∩-63) 105(∩-50) 121(∩-23) 108(∩-45) 2.3(∩-35) 2.7(∩-65) 2.9(∩-63) 2.6(∩-50) 2.6(∩-23) 2,6(∩-45) 0(∩-32) 2(∩-63) 3(∩-63) 6(n-53) 4(∩-24) 4(∩-51),L・';/HIF'こー\、一 図2 マル-ナパテの訪花行動が見られな かった施設での トマトの花粉粒 弱の内部にわずかに付着 していた花 粉粒を取り出して検鏡した った.正常な トマ トの花粉 を0.5Mの ショ糖液 に入れると, ほぼ完全な球形 になるが, この施 設 か ら採集 した花粉 の形状 は,不定形 であ り (図 2), 寒天倍地 において も花粉管の伸張は見 られなか った.極端 な例ではあるが,ここでは, 花粉の生成量及びその活性 に影響す る環境変化 があったことが想定 された.そこで,施設内の 夜温の設定温度 と花粉の活性 ・生成量の関係を 調査することとした. まず,冬期の トマ ト花粉の状態を従来のホル モ ン処理の温度管理 (最低夜温 8℃) とマルハ ナバチ利用での温度管理 (最低夜温 12℃)とで 比較 した.花粉をそれぞれの施設か ら採集 し, PetersonandTaber(1987)に従 い, フルオ レセインーデ ィーアセテー トによる蛍光染色を 施 し,活性率を測定 した. また,採集 した花粉 を,界面活性剤を含んだ0.5Mの ショ糖液で懸 濁 させ,その液の濁 り具合か ら1花当た り花粉 生成量を推定 した.その結果,一定温度であれ ば,花粉の活性 には温度管理の差は影響 しない ちのの,花粉生成量 は最低夜温 を 12℃ に設定 した施設で多 くなることが確認 された.また, これ らの調査の中で,同 じ温度管理を していて ら,採集時期によって花粉 の生成量が変化する 傾向が見 られたことか ら,現在,花粉生成量の 時期別変化 について調査を進めている. トマ ト 花粉の発芽率の低下 と栽培温度 との関係 も明 ら かにされているが (室井, 1993),当所での試 験では,花粉の活性で判定 してお り,その結果 では,夜温を低めの 8℃に設定 して も, その管 11 理が安定 していれば, トマ トは,花粉活性 につ いて は影響 を受 けない傾 向が示 された.ただ し,花当たりの花粉の生成量 は,安定 した条件 で も,8℃ と 12℃の設定温度 の差によって,影 響を受ける要因であることが示唆 されている. これ らの結果か ら,現地での事例を振 り返 る と,一般に, トマ ト生産者 は,施設内の温度管 理 には特 に気を使 ってお り,大 きな事故がない 限 り,急激 な温度 の低下 は起 こらないことか ら,通常の管理では花粉の生成量 に注意する必 要があろう.前記の施設では,温度設定に多少 の差があるものの,温度制御機器に大 きな事故 はなか った.現地施設での温度の記録がないこ とか ら,不確定な判断 しかできないが,温度管 理 に特 に問題が無 くとも,何 らかの環境変化が 花粉の性状に影響 したことが考え られることか ら,今後は,温度条件以外 にも, 日射量なども あわせて検討する必要があろう.現地では,訪 花 しな くなったマルハナバチを何 とか, もう一 度訪花 させようと,夜温の設定を上げることも 考え られていたが,一度開花 した トマ トの花で は,再 び花粉が作 られないため,夜温の変更は, その後の トマ トの植物体全体の成長 に影響 して しまい,個 々の トマ トの成長 にバ ラツキが生 じ る結果になりかねない.現地で も,その後に開 花 した花では,正常 に花粉が形成 されていたこ とか ら, このような場合 には,施設の温度制御 機構 に異常が無 ければ,特 に設定温度を大 きく 変えずに,花粉が生成 されなか った トマ トの花 房 については, ホルモ ン剤処理を行 うなどの対 策が良いようであった. マルハナバチの生活史を,実際にマル-ナパ テを使 う トマ ト生産者 に理解 して もらうこと ら,重要なことと考え られ る.マル-ナパテの 巣 には, ミツパテと異なり寿命がある. どんな によい管理を して も,マルハナバチの巣 にはい ずれ終わ りが くる.野性のマルハナバチは,香 に越冬か ら覚めた女王蜂が 1頭で営巣 し,夏か ら秋 にかけて,働 き蜂を増や し,成熟 した巣で, 翌年巣を作 る新女王蜂 とオス蜂の生殖虫を生産 す るといった生活史 を もつ.新女王蜂 は交尾 後,翌春 まで越冬 し,営巣 に入 る.春か ら作 ら
図3 マル-ナバチ巣内での-チの増え方 れて いた巣 で は,冬 を迎 え る前 に女王蜂 を失 い,働 き蜂 も死 に絶 えて,巣の寿命を迎え る. では, マル-ナバチを購入 した生産者 は,ハチ の生活史の, どの部分 を見ているのであろうか. 商品 と してのマルハナバチが工場で生産 されて か ら,温室で利用 され る期間の巣内での蜂の増 減 を図3に示 した.マル-ナパテの巣 には,働 き蜂 ・女王蜂 ・オス蜂の3種類 の蜂がお り,こ れ らの うち トマ トの受粉作業 を期待で きるのは 働 き蜂である. マル-ナパテの営巣期間の前半 で働 き蜂が生産 され,後半で新女王蜂,オス蜂 が生産 され る. マル-ナバチの巣が手元 に届 い た時には,すでに営巣期間中期を過 ぎた頃であ り,- ウス内に設置 して しば らくの間は,働 き 蜂の増加が期待で きるものの, いずれその生産 は頭打 ちとな り, その後働 き蜂数 は徐 々に減少 す る. この減少幅を最小限にす ることが,巣の 寿命を伸 ばす ことにつなが ると考え られ る. 室 内飼 育 ・増 殖 日本在来種 のマル-ナバチをセイ ヨウオオマ ル-ナバチに置 き換え るためには, それ と同 レ ベルの増殖技術 を開発す る必要がある.研究当 初,野外 か ら春先 の越 冬 明 けの女王蜂 を採集 し,室内で営巣 させ るところまで は容易 にで き たが,室内飼育下で次の世代 を得 ることがで き なか った. マル-ナバチの成熟巣か ら新女王蜂 を取 り出 し,交尾をさせた後,その女王蜂 に営 巣 させ る過程 は, ブラックボ ックスであった. 現在では,交尾後の女王蜂 を低温処理す ること で, オオマルハ ナバチ, クロマルハ ナバチにつ いては,累代飼育が可能 にな り, この2種類 は 室内飼育の適性があると判断で きる.ただ し, 大量生産 の ライ ンの中で増殖率を向上 させ るた めには, さ らなる経験 と研究が必要である. 現在,神奈川農総研で は,オオマルハナバチ, クロマル-ナバチの2種 につ いて,野外での生 活史 を再現 し, さらにその飼育 サイクルを短縮 させ た室 内飼育管理 シス テムを構築 中で あ る (図4).現在では,1997年,1998年 に野外で 採集 した女王バチか ら,数世代を経過 した子孫 たちの コロニーが飼育 されている.世代 を経過 す るごとに, コロニー数 を増やす, いわゆる増 殖率 も徐 々に伸びている.大量増殖 を目指 した 飼育技術の確立 に向けて, データを蓄積 してい るところであるが,今 までの飼育の経験か ら, 2種 の 日本在来種間で も, 巣の成長パ ター ンや 好適条件 に差があ り,同一 の飼育方法では,増 殖率の向上 は望 めないよ うである.図4に示 し たフローの各過程 の条件 を,種別 に完成 させ る ための,最終段階にきて いると言えよ う. これ ら2種 の飼育方法 については,ここで は
13 営
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1
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の羽化 越冬後女王蜂の野外採依 図 4 日本産マル-ナハチの室内継代飼育の流れ 書 ききれないため,室内での継代飼育 の一部 を 紹介 したい. 羽化後 の新女王蜂 を交尾 させ,5℃下 で 4か 月の低温処理 をさせた後 に,常温 に戻 して営巣 させ るわけであるが, この過程のなかで,何割 かの女王蜂が死んで しま う. その要因を新女王 蜂の体 サイズと羽化後 の 日齢 の2点 について, オオマル-ナバチで調査を行 い,飼育時の生存 率 との関係 を調べた (浅田 ら 1999). まず,体 サイズにつ いてであるが,表2の と お り,野外で採集 した女王蜂 と室内飼育で得 ら れた新女王蜂では,頭幅で比較 した体 サイズに は差がない.形態的には野外の女王蜂 と差が無 いと思われるこれ らの新女王蜂 について,4
か 月の低温処理期間を終えた個体 と,途中で死亡 した個体 との比較を行 ったが,体 サイズとの関 係 は見 られず (表3),この段階では,新女王蜂 の大 きさが死亡要因には関係 していないと考え られた. 次 に,新女王蜂の羽化後 の 日齢 について,調 査を行 った.交尾 させる段階で,複数 の女王蜂 を 1グル-プとして,飼育 を行 っている関係か ら,それぞれの グループに供試 した交尾後の新 女王蜂のグループ内での平均 日齢を計算 し (義 4),低温処理,常温 にもどす時の覚せい処理, 飼育室 に移 してか らのそれぞれの生存率 との関 係 を調べた ところ,羽化後 の 日齢 の経過 してい るグループで,生存率 が低 い傾 向が言忍め られ た.特 に平均 日齢が10日以上 を経過 している 女王蜂のグループでの生存率の低下が大 きい傾 向が見 られた (図 5).さ らに,平均 日齢の異 な る新女王蜂 の グル ープを同 じコロニ-で2つ 作 り,各処理時の生存率を比較 したところ,供 試女王蜂 の平均 日齢 が経過 して いる集団 の方 が,各処理時の生存率が低 い傾向が認 め られた (図 6).以上の ことか ら, オオマルハナバチに ついては,継代飼育時の生存率 に新女王蜂の羽 化後の 日齢が関係 していることがわか った. こ の段階で は,交尾後 の女 王蜂 の27%に低温処 理後,営巣 させ るにとどま っていたが,その後 のデータでは,オオマルハ ナバチで54%,クロ マルハ ナバ チで40%とな ってお り,現在 も生 存率の向上 にむけて,飼育技術の改良 に取 り組 んでいる. 蓑 2 野外採集個体と飼育個体のオオマル-ナバチ女王蜂の頭幅の比較(浅田ら,1999) 供試虫数 平均頭幅 標準偏差 最 低 値 最 大 値 野外採集個体 33 5.46(mm) 0.13 5.21(mm) 5.67(mm) 飼育個体 78 542 0.14 4.89 5.70表 3 室 内飼育女王蜂 の頭幅 と低温処理 時の生死 との関係 (浅 田 ら,1999)
低温処理時 女王蜂数 平均頭 幅 標準偏差 最 低 値 最 大 値
の時の生死 (mm) (mm) (mm)
生存供試虫 50 5.42 0 13 4,89 5.69
死亡 供試虫 28 5A2 0.15 514 570
MANN-
WHI
TNEYU-
検定 で有意差無 し表 4 継代処理 を始 めた時 の女王蜂 の各供試番号 内での平均 日齢 *(浅 田 ら,1999) 供試番号 供試女王蜂数 平均 日齢 標準偏差 最 低 最 高 1 15(頭) 7.2(日) 2 8 16 1 3 6 17.3 4 17 9.6 5 5 9.8 6 7 5.7 7 18 10.6 8 8 10.8 9 14 13.8 2.3(臼)5(日) 2.3 11 5.2 13 5.1 2 1.6 8 3.7 2 2.0 7 2.9 6 5.8 2 ∼I R H Jl l I 8 4 7 1 0 4 3 0 1 1 2 1 1 1 1 1 2 暮平均 日齢 :供試番号 で示 した グループ内での女王蜂 の羽化後 日数 の平均 天敵類の問題 と資源保護 日本では,優れた養蚕技術があり,病理学的 な知見の豊富 さに加え,それ らの知見が実際の 養蚕技術に見事 に応用 されている.マルハナバ チも工場生産を前提に考 えていることか ら, そ の天敵類及び病理学的な研究を進める必要があ る.欧米では,野性状態でのマル-ナバチに関 係す る天敵生物相の知見が豊富であり(Macf a-rlaneeta1.,1995), マルハナバチと天敵 とさ れる微胞子虫 との関係を,社会性昆虫の遺伝的 な多様性 は寄生者や病原の存在があるか らこそ 引き出される, といった観点か ら展開 している 興 味 深 い研 究 も進 め られ て い る (Schmi d-Hempel,1998).欧米のマルハナバチの生産工 場では,実際に病気 と寄生者の知見をどのよう に応用 しているのかは,実は大変興味のある. 残念なが ら, 日本国内ではこれ らの知見が乏 しく, 日本 にどのような天敵生物相が存在する のかさえ,十分には調べ られていない. さらに 困 ったことに,商品 として輸入 されているセイ ヨウオオマルハナバチか ら,蜂に寄生す るダニ (Locustacarusbuchnen,五箇, 1999)と微胞 子虫 (ノゼマ型, 丹羽 ら, 1998)が確認 され 低温処理 党せい処理
済
育 ー20 10
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● ● y-2.5r=3=0.96x5+2101 5 10 1.5一7 0 5 10 15 2 0 5 10 15 2 平均 日♯ (日) 平均 日か (日) 平均 日Iさ(日) 図 5 供試女王蜂 の平 均 日齢 と各処理終了 時及 び飼育1ヶ月後 の生存率 の関係 (浅 田 ら,1999)15 o 0 0 0 8 6 4 2 ( % ) * 帖 ・t q ; 図6 交尾処理開始時の平均日齢の異なる女王蜂の集団問での継代処理時の生存率の比較 (浅田ら 1999) *異なる2群を用いて,それぞれの群から平均日齢の異なる女王蜂の集団を2つずつ作り,各処理時の 生存率を同一群の供試虫で比較 した. た.微胞子虫 に感染 したマル- ナバチを飼育 し た経験では,羽化 した働 き蜂が数 日の うちに死 んで しまい, コロニーが大 き くなれ ない場合 や, まった く関係無 く成長 している場合 など両 極端があ り, まだ,その病徴を詳 しく述べ る段 階ではない. コロニーの成長段階 と感染時期の 関係や微胞子虫の増え方 と病徴 の関係 など, こ れか らの仕事 の方が多 い. ここで,報告 された 微胞子虫 は,農家が購入す る場合 と同 じルー ト で入手 したコロニーか ら分離 した. この胞子 の 形態的な特徴か らセイ ヨウオオマルハナバチで 既 に報告 されて いる
No
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で あ ると 推察 している.国内の生物相が不明な状態で こ れ らの天敵類が, ホス トであるマルハナバチと 一緒 に輸入 されていることが明 らかにな った. これ らの天敵生物が 日本在来種のマルハナバチ に及ぼす影響 について も, セイ ヨウオオマルハ ナバチが野外 に逃 げ出す リスクと同様, もしく はそれ以上 に懸念 され ると考え られ る. 日本在来種 の開発 にあた り,国内で も相当量 のマルハナバチの女王蜂が採集 されることが想 像 され る.採集 した女王蜂 に営巣 させれば,一 時的には日本在来種のマルハナバチの巣が,飼 育施設内を埋 め尽 くすが, ここか ら継代飼育を 続 け, さらに増殖 させ る技術 を身 につける必要 がある.年間国内では40,000箱が利用 されて いると推定 されているが,毎年40,000頭の女 王蜂 を採集す るよ うなことにな らないよ うに, 小規模での増殖系を確立 した後 に大量増殖 を始 めるなどの,野外採集 による生態系への負のイ ンパ ク トを最小限 に抑 え る必要 が あ る. さ ら に,国内で もマル-ナバ チの地理的な変異が混 乱す るとの懸念がある. ただ し,地理的な変異 自体が,依然不明瞭なのが現状であ り,天敵類 の検索同様,前向 きな議論 を した くとも,その 材料が少ないように思え る. マルハナバチ研究の今後 3年 の研究 と, 個人的 に問題 と思われ る点を 駆 け足で紹介 して きた.かな り問題点 は,絞 ら れて きたと思 うが,残 った問題 ほど,解決が難 しいことがわか っていただけると思 う. セイ ヨ ウオオマル-ナパテの利用状況 は,大 きく変わ らない ものの,利用 している生産者では神奈川 県で も, ますます手放せ な くな っているように 思え る.生態学的な観点 か ら, このような昆虫 の利用形態を批判す るの は,理解で きるが,農 業 という産業 を考え ると,問題 となる蜂の利用 を単純 にやめて しま うだ けでは,新 たな問題 を 生む ことが容易 に想像で きる. セイ ヨウオオマ ル-ナパテを利用す る問題点 は, この蜂が野外 に逃 げた場合の リスクに加 え, マルハナバチの 天敵類が,国内に侵入 ・拡散す る新 たな リスク があることが明 らか とな り, 日本在来種をポ リ ネ一夕ーとして,実用化す る意義 はさ らに高 ま ったのではないだろうか.ただ し,飼育 システ ムが未完成のオオマルハ ナバチ, クロマルハナ バ チをセイ ヨウオオマル- ナバ チ と比較 すれ ば,後者 の方が, コス ト安 になるのは,当然で あ り, コス ト高 になる経費を商品に上乗せ して16 日本在来種を販売するの も,現実的ではないだ ろう.ただ,オオマル-ナバチ, クロマル-ナ バチに関 して言えば,この3年間で飼育技術 は かなり進んでお り,3年前 よりも,商品化 まで の研究開発費 も安 くなるのではないだろうか. 国内企業 も日本在来種 マル-ナバチの試験販売 を始めてきてお り,今後の展開を楽 しみにする 一万,より堅実な技術開発 も並列で展開するこ とを期待 したい. トマ ト生産者 としては,マル-ナパテの利用 やそのための トマ トの栽培技術に関する情報が 欲 しいところであろう.マルハナバチを利用す ることで,省力化 にはなってきているものの, まだ,花を受粉 に適 した状態にするための栽培 や,高温管理 を して も, トマ トの誘引や芽か き 等の作業労力が従来 と変わ らないような栽培方 法など,難 しい問題が現場では生 まれている. また,施設栽培 自体が, エネルギーをかけない ように,低温管理を目指 していることか ら,そ こで栽培 され る作物 につ いて も,従来 の収量 性,品質,食味 といった形質に加え,低温伸張 性 も求め られている. ポ リネ一夕ーを利用する には,花を受粉 に適 した状態に管理する必要が ある. イチゴや トマ トなど,施設栽培でポ リネ 一夕ーが必須 になる作物では,花の形質 も考慮 した品種が育成 されることを期待す る. 末筆なが ら, これ らの研究を指導 していただ いた玉川大学昆虫学研究室の佐 々木正己教授, 小野正人助教授 な らびに神奈川県農業総合研究 所生物資源部の諸氏に感謝 の意を衰す る. (〒250-0024 小 田原市根府川574-1 神奈川県農業総合 研究所 根府川試験場) 主 な引用文献 浅 田真一.1997.ミツバ チ科 学 .18:21-28. Asada,S and M.Ono.1996.Appl.Entomol.
Zoo131:575-580. 浅 田真一 ら.1999. 神奈川県農業総合研究所研究報 告.139:7-12. 小野正人.1995.イ ンセ ク タ リュム.32:4-9. 五箇公一.1999.応用動物昆虫学会大会 池 田二三高 ・忠 内雄 次.1995.ミツバ チ科 学 .16: 49-56. 岩 崎正男.1995.ミツパ テ科 学 .16:17-23. Macfarlane,R.P.etal.1995.BeeWorld.76:130-148. 丹羽里美 ・浅 田真一 ・岩野秀俊.1998. 応用動物昆 虫学会大会.
Peterson,R.H.andH.G.Taber.1987.HortSci -ence.22:953,
Schmid-Hempel,P.1998.Parasites in Social lnsects・PrincetonPress,Pl-inceton.pp.409.
AsADA,SH【NICHl. Studyofthebumblebeesfor crop pollination in Kanagawa Prefecture. Its presentandfuture.HoneybeeScience(2000)21 (1)ニ9-16, KanagawaPrefecturalAgricultural ResearchInstitute,NebukawaExperimentalSt a-tion・57ト1,Nebukawa,Odawara,Kanagawa, 250-0024Japan.
Tomato pollination byBombusterrestrishas rapidly spread in Japan. These bumblebees wereimportedfrom Europeandsomecompany productsB.terrestriscolonleSinsideJapan.
Butthese techniques ofusingB.terresLris maycausethecompetition 14nativeJapanese bumblebee species. Therefor'e.Iattemptthe
utilization ofJapanese natlVe bumblebee for croppollinationinsteadofB.terrestris. AndI also study the tomato pollination,which is usingbumblebeeinKanagawaPl-efecture.
IcomparedthepollinationabilitywlthJ apa-nesetwospeciesbumblebees(A hypocritaand A ignilus)andB.terrestris.There was no difference in the tomato fruits quality. In Kanagawa,tomato growers mainly use the bumblebeesin wintertospring, Especiallyin coldseason,pollenproductivityofeachRower inlow temperaturegreen-house(minimunltem・ peratureat8℃ duringnight)tendedtobeless than thatofhigh temperaturegreen -house (minimunltempel-atureat12℃ duringnlghけ
Effectivetechniquesf01-artifiClalinductionof nesting by labol-atOry-reared queens were studiesformass-production ofJapanese bum-blebees(B hypocritaandB.ignitus).Ourgroup conGrmed that the high mortality of queen during chitling and acclimatization treatments wasrelated theageofprogeny queensof且
hypocrita,sincethemortalitytendedtodecrease withthepassageofdaysafteremergence.
Recently.mite(Locustacarus buchneri)and protozoa (Microsporidia.Nosema type) Were foundincommercialbumblebeecolonies,which were imported from Europe. These enemies and pathogens were also studies for mass -productioninJapanesebumblebeesandforpre -ventionofspreadlngtheseparasitesinJapan.