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「緑化政策の対象敷地面積要件による地価への影響について」

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(1)緑化制度 緑化制度の 制度の対象敷地面積要件による 対象敷地面積要件による地価 による地価への 地価への影響 への影響について 影響について. < 要旨 > 都市において様々な緑化政策が行われており、特に近年、規制により緑化を推進する施策が広く普及し ている。その施策の一つとして、東京都や特別区の一部では、開発行為・建築行為等に対して緑化計画書 の提出を義務付けている。その緑化計画書提出制度には、敷地面積要件及び緑化基準タイプ及びその強度 が設定されている。敷地面積要件及びその強度は、緑の選好の低い住民に対し負の効果を与える。また、 緑化基準タイプにおいては、地上緑化、接道緑化、建物緑化といったそれぞれのタイプが地価に与える影 響は異なることが考えられる。 本稿では、緑化計画書提出制度の導入が地価に与える影響をDID分析で示すとともに、敷地面積要件、 緑化基準タイプとその強度について、地価との関係を回帰分析し、それらの効果を計測した。 その結果、緑化計画書の導入は、地価に対し負の効果を示した。また、緑化基準タイプについては、地 上緑化が規制強度を強めるほど負の効果、接道緑化及び建物緑化は、規制強度を強めるほど正の効果があ ることを示した。敷地面積要件については、地上緑化の場合は負の効果を与え、接道緑化・建物緑化は正 の効果となることが示された。 これらの分析結果より、制度設計を行う上では、敷地面積要件及び緑化基準タイプ及びその強度を科学 的な分析にて設定することが重要であることを提言したい。. 2012年 2012年(平成24 平成24年 24年)2月. 政策研究大学院大学 まちづくりプログラム まちづくりプログラム. MJU11006 小野 寛明.

(2) 目次 1.はじめに........................................................................................................................................................................................... 1 2.緑化計画書制度及びこれに対する問題意識 ........................................................................................................................... 2 3.先行研究及び本研究の目的......................................................................................................................................................... 3 4.緑化計画書制度導入効果に関するDID分析 ............................................................................................................................ 5 4.1推計モデル ................................................................................................................................................................................ 5 4.2 推定結果と考察 ................................................................................................................................................................... 6 5.敷地面積要件の地価に対する影響分析.................................................................................................................................... 8 5.1推定式......................................................................................................................................................................................... 8 5.2推定結果と考察........................................................................................................................................................................ 9 6.緑化基準タイプの地価に対する影響分析.............................................................................................................................. 10 6.1推定式....................................................................................................................................................................................... 10 6.2推定結果と考察...................................................................................................................................................................... 11 7.まとめ............................................................................................................................................................................................. 17 謝辞 .................................................................................................................................................................................................... 18 参考文献............................................................................................................................................................................................ 18 使用データ等 ................................................................................................................................................................................... 18.

(3) 1.はじめに はじめに. 都市において環境や景観が近年意識されるようになり、都市の緑が重要視されている。緑化により、美 しい景観やうるおいとやすらぎのある快適な街の形成がなされ、また、ヒートアイランド現象の緩和、大 気の浄化、雨水の貯留等に影響を与えていると考えられている。そのため、様々な緑化政策が行われてお る。具体的に述べると、緑地空間を公共団体が直接供給を行う都市公園・緑地の整備、緑地管理助成金・ 育成奨励金等の補助金政策、緑化施設整備計画認定制度等の税制措置、特別緑地保全地区制度、生産緑地 地区制度、緑化地区制度等による環境破壊抑制や緑化推進を目的とする規制等である。特に近年、規制に より緑化を推進する施策が広く普及している1。 その規制政策の一つとして、東京都や特別区の一部では開発行為・建築行為等に対して緑化計画書の提 出を義務付けている。この制度は開発許可や建築確認申請時と同じ時期に、自治体に対し緑化計画書の提 出を義務付けるものであり、設定された緑化基準における緑量を確保する制度である。公共団体及び民間 団体ともに対象行為者として位置づけられている。この制度は、今後つくられるものに対して一定量の緑 を確保できるという利点があるものの、その制度対象を固定している敷地面積要件、緑化率といった制度 強度は、敷地有効活用に対し負の影響を与えることが考えられる。また、地上緑化、接道緑化、建物緑化 といった緑化基準タイプは、住民が感じる制度強度や外部性の大きさが異なることから、地価に対する影 響が正とは限らない。つまり、都市による緑が評価されていることを前提に、緑化推進を強制的に行うこ の制度は、敷地面積要件、緑化基準タイプ及び制度強度という要素が含まれており、それが地価に対し負 の影響を与える可能性を含んでいることが考えられる。 そこで、本稿では緑化計画書制度に着目し、この制度が地価に与える影響を分析する。また、民間団体 に義務付けられている制度強度を分析の前提とする。本稿の構成と分析方法は次のとおりである、2章では 緑化計画書制度の概要とこれに対する問題意識について説明し、この制度が地価に対して負の影響を与え る要素について述べる。3章ではこれまで行われてきた先行研究と本研究の目的についてにふれ、先行研究 と本研究との相違について述べる。4章では緑化計画書制度の導入が地価に与える効果について、東京都特 別区を対象にDID分析を行い、この制度は地価へ負の影響を与えていることを示す。また、その影響は特 別区各区において異なっていることを示す。5章では、緑化計画書制度において、地価に対して負の影響を 与えている要素と考えられる敷地面積要件を説明変数に導入した回帰分析を行い、敷地面積要件が地価へ 負の影響を与えていることを示す。6章では同じく地価に負の影響を与えていると考えられる要素である緑 化基準タイプとその強度指標を説明変数に導入した回帰分析を行い、地上緑化は制度強度を強くするほど 地価に対し負の影響を与えることを示し、接道緑化、屋上緑化は制度強度を強くするほど、地価に対し正 の影響を与えることを示す。また、推定式を用いて現状制度のシミュレーションを行い、接道緑化、屋上 緑化の制度強度が現状制度では不足していることを示す。そして、7章では、これまでの推定結果のまとめ を示したうえで、敷地面積要件や緑化基準タイプの設定の重要性を述べ、政策提言を行う。. 1. 御手洗(2007)による 1.

(4) 2.緑化計画書 緑化計画書制度 緑化計画書制度及 制度及びこれに対 これに対する問題意識 する問題意識. 緑化計画書提出制度は東京都ならびに特別区の条例にて規定されているものである。開発許可や建築確 認申請と同じ時期に、制度対象となる行為に対して、緑化計画書を提出することを義務付け、自治体が定 められた緑化基準に合致しているか確認するものであり、一部では施工後に確認検査も行っている。制度 対象となる行為は概ね敷地面積要件のある開発行為・建築行為であり、公共及び民間の両方が対象となる。 公共側のほうがやや厳しい条件が設定されており、公共及び民間ともに各自治体にてその値は様々である。 また、緑化基準タイプには地上部を緑化するもの(地上緑化)、接道部を緑化するもの(接道緑化)、 屋上や壁面を緑化するもの(建物緑化)の3タイプがあり、これも各自治体にて導入状況は様々である。 緑 化計画書制度の導入開始時期についても様々であり、1970年代から2000年代と幅がある。東京都にて条例 が制定されたのが2001年であり、制度対象が敷地面積1,000m2以上と緩い条件であるのに対し、各区は敷地 面積要件がこれよりも厳しい条件となっている。また、建物緑化が義務付けられたのは2000年代になって からである。総合設計制度等による建築行為の場合は制度強度が異なってくるが、本研究では分析を簡単 にするため扱わないこととする。(表1参照) この制度を行うことにより、制度対象敷地に対して緑の創出が義務付けられることから、制度対象敷地 ならびにその周辺に対して、景観や環境の向上が図られ、地価に対して正の効果を与えることが考えられ る。しかし、敷地面積要件と緑化基準のタイプが設定されることで地価に対して負の効果を与える可能性 も考えられる。 敷地面積要件は、狭くなる設定されるほど、制度から逃れることが難しくなり、緑化に対する選好が低 い者に対しては、負の影響が大きくなる可能性がある。また、そのような者の中には制度から逃れるため に、敷地面積要件よりも狭い敷地にて建築行動をすることが考えられる。その結果、緑が創出されなく建 て詰まった住環境が形成される可能性がある。よって、これらの現象が地価に対して負の効果を与えるこ とが想定される。 緑化基準タイプについては、前述のとおり地上緑化、接道緑化、建物緑化の3タイプに分けられ、それぞ れに基準緑化率が定められているが、地価に対する効果はそれぞれ違うと考えられる。 地上緑化は、敷地面積あるいはそこから建物面積を除いた空地面積に対し、緑化率を乗じた面積を緑化 しなければならないものである。制度対象敷地の住民は、制度がなければ緑から得られる効用とその設置 費用を考慮し、緑化を行うことが考えられるので、制度の強度が強すぎれば負の影響を受けることになる。 一方、その周辺の敷地に対しては、緑を借景として利用できるかといえば、必ずしも利用できるとはい えず、緑の正の影響を受けることができるとは言えない。 接道緑化は、敷地接道部において、敷地接道延長に緑化率を乗じた長さを緑化しなければならないもの であり、建物緑化は、建物面積等と緑化率から算定された面積の分だけ、屋上や壁面等に緑化を義務付け るものである。制度対象敷地の住民は地上緑化と同様、制度の強度が強すぎれば負の影響を受ける。また、 接道部や建物部であるので管理が行いづらいことも考えられ、これが制度により義務化されれば、負の影 響を受けることが考えられる。 一方、その周辺の敷地は、接道部の緑を見ることが可能であり、緑の正の影響を受ける。 緑化基準のタイプについてまとめると、地上緑化は外部性が少なく、接道緑化や建物緑化は外部性が大 きいことが予想され、周辺敷地に対して正の影響を及ぼすことが考えられる、また、緑化率によって決め られる制度の強度が大きいほど負の影響を及ぼすと考えられる。 2.

(5) 3.先行研究 先行研究及 先行研究及び本研究の 本研究の目的. 緑の地価に対する影響についての先行研究は緑量による効果と緑化政策による効果に大別できる。 前者の例をあげると、札幌市を事例に公園緑地の住宅地地価への影響を分析しているもの2がある。この 研究では線形モデルでは最寄公園緑地面積が、両対数モデルでは周辺緑地率が地価に対し正の影響がある ことを示している。また、地価ポイントでビデオ撮影を行うことで設定した、緑量指標及び緑に対する反 応率指標を用いて、地価を用いてヘドニックアプローチによる分析を行っているもの3がある。この研究で は、緑の量や質等の効果を貨幣尺度で示しており、また、敷地正面の仰角15°~75°における緑は特に効 果があることを示している。ヘドニックアプローチにおける緑地等環境質の変数設定方法及び関数形を分 析しているものもある4。さらに、公園緑地の隣接に着目しヘドニックアプローチによる分析を行い、公園 緑地配置による外部性をシミュレーションしているもの5がある。この研究では隣接公園が多くの画地に面 すると効果がでることから、敷地面積の狭い街区では、線状の公園が効果的であるということが示されて いる。 上記はヘドニックアプローチによる分析であり、いずれの分析も概ね緑関連指標は地価に対して正の影 響があることが示されている。また、上記以外にもCVM法を用いた分析も行われている。 後者は、緑化義務制度の現状をもとに類型化を行っているもの6がある。この研究では工場・事業所設置 型、開発行為型、建築行為型といった対象行為による分類、理念型、非権力型、権力型といった具体的基 準の有無と罰則の程度による分類がなされ、具体的基準があるが罰則強度が低く強制力のない非権力型と 具体的基準及び罰則のある権力型を併用することを提案している。また、大阪府条例をケーススタディと し、緑化義務制度の費用便益分析手法を提案しているものがある7。この研究では、緑化義務制度における 費用便益分析モデル式を提案し、便益計測では二酸化炭素吸収効果等の直接便益計測、CVMによる便益計 測、ヘドニックアプローチによる便益計測を比較し、緑化施設設置費用、維持管理費用等を算出したうえ で費用便益分析を行っている。さらに、世田谷区を事例に戸建住宅価格に対する緑化政策の影響を示した もの8がある。この研究では、景観規制等を説明変数としヘドニックアプローチを行っており、景観規制は その有無だけでは戸建住宅価格に及ぼす影響は大きくないが、細分化の防止など地区の物的な住環境の維 持改善に寄与するならば、住宅価格を引き上げる可能性があると結論づけている。 しかし、これらの研究では、各地域における緑化義務制度についての比較実証分析、緑化計画書制度に おける対象面積要件やその緑化基準タイプの地価への影響についての実証分析は行われていない。 本研究では、緑化計画書制度及びその制度の要素である対象面積要件、緑化基準タイプが地価に負の影 響を与えることを仮説とし、この制度の導入が地価に与える影響をDID分析にて検証するとともに、敷地 面積要件、緑化基準のタイプ及びその強度が地価に与える影響を回帰分析にて検証し、これらの結果につ いてのまとめと政策提言を行う。. 2. 愛甲・崎山・庄子(2008)による 肥田野・亀田(1997)による 4 矢澤・金本(1992)による 5 高・浅見(2000)による 6 御手洗・越澤(2006)による 7 御手洗(2007)による 8 谷下・長谷川・清水(2009)による 3. 3.

(6) 表 1 東京都特別区における 東京都特別区における緑化計画書制度 における緑化計画書制度の 緑化計画書制度の概要( 概要(民間対象) 民間対象) 緑化計画書提出関連. 条例名 (制定年). 自治体. 導入年度. 対象行為. 緑化基準タイプ. 東京における自然の保護と回復に関する条例 (2000年). 2001年. 敷地面積1000m2以上の新築改築増築等、 3000m2以上の開発行為. 港区みどりを守る条例 (1974年). 1979年. 敷地面積660m2の新築 → (1990年) 敷地面積500m2以上の建築計画 → (2003年)敷地面積250m2以上の建築計画. 地上、接道 →(2009年)+建物. 新宿区. 新宿区みどりの条例 (1990年). 1991年. 敷地面積250m2以上の建築行為. 地上、接道 →(2001年)+建物. 文京区. みどりの保護条例 (1975年). 1980年. 敷地面積200m2以上の建築行為. 地上. 台東区. 台東区みどりの条例 (1992年). 2001年. 建築行為. 2009年. 15戸以上の共同住宅、延床面積1000m2以上の共同住宅 5階以上の共同住宅. 敷地面積250m2以上の建築行為. 東京都. 港区. 墨田区集合住宅の建築に係る 墨田区 居住環境の整備及び管理に関する条例 (2008年). 江東区. 江東区みどりの条例 (1973年). 2000年. 品川区. 品川区みどりの条例 (1994年). 1994年. 目黒区. 目黒区みどりの条例 (1990年). 地上、接道、建物. 地上、建物. 地上、接道、建物. 地上、接道 →(2003年)+建物. 敷地面積300m2以上の建築行為、開発行為. 地上、接道 →(2009年)+建物. 1991年. 敷地面積200m2以上の開発行為・建築確認申請 → (2008年)左記+20台以上の自動車駐車場. 地上、接道 →(2008年)+建物. 自然的環境の保護及び回復に関する条例 (1977年、2005年廃止) 世田谷区みどりの基本条例 (2005年). 2005年. 敷地面積250m2以上の建築行為、開発行為 → (2010年)左記+敷地面積300m2以上(緑化地域). 渋谷区. 渋谷区みどりの確保に関する条例 (1978年). 2001年. 敷地面積300m2以上の建築行為. 中野区. 中野区みどりの保護と育成に関する条例 (1979年). 1979年. 敷地面積300m2以上の開発行為、中高層建築 自動車駐車場、200m2以上の建築行為 → (2007年)敷地分割を伴うもので敷地面積300m2以上の建築行為等 敷地面積200m2以上の建築行為等 20台以上で敷地面積300m2以上の駐車場. 杉並区. 杉並区みどりの条例 (1973年). 2006年. 新築・増築. 豊島区. 豊島区みどりの条例 (2002年). 2003年. 新増改築地階を除く延床 (商業地域は800m2以上その他の地域600m2以上) 地階を除く3階以上で住戸15戸以上 開発行為500m2以上 機械式駐車場3階以上または2階式で6台以上駐車. 地上、接道、建物. 北区みどりの条例 (1985年). 1986年. 敷地面積300m2以上の開発行為、建築確認申請等. 地上 →(1996年)+接道. 荒川区. 荒川区みどりの保護条例 (1980年). 1980年. 面積300m2以上の宅地造成・自動車駐車場 敷地面積200m2以上の建築行為 →(2007年)3項目+15戸以上集合住宅建築確認. 地上 →(2007年)+建物. 板橋区. 東京都板橋区緑化の推進に関する条例 (1979年). 1980年. 開発行為、面積1000m2以上の宅造、建築確認 → (1989年)開発行為、面積350m2以上の宅造、建築確認. 練馬区. みどりを保護し回復する条例 (1977年、2008年廃止) 練馬区みどりを愛し守りはぐくむ条例 (2008年). 1977年. 敷地面積300m2以上の開発行為 → (2008年度)300m2以上の開発事業(建築行為含む)建蔽率0.8 または防火地域内の建築物の屋上部緑化計画. 足立区. 足立区緑の保護育成条例 (1976年). 2003年. 敷地面積200m2以上の新築・改築・増築(一戸建て除く) → (2011年)佐記+20台以上の駐車場新築変更. 葛飾区. 葛飾区緑の保護と育成に関する条例 (1975年). 2005年. 敷地面積300m2以上の新築・改築・増築. 地上、接道、建物. 2006年. 3階以上かつ10戸以上の共同住宅 又は一団の土地に40戸以上の共同住宅 一団の土地を3区画以上に分割する集団の戸建て住宅 事業区域面積300平方メートル以上の建築物(共同住宅等は除く) 墓地. 地上、接道、建物. 世田谷区. 北区. 江戸川区住宅等整備事業における 江戸川区 基準等に関する条例 (2005年). 地上 →(2009年)+接道、建 物. 地上、建物. 地上 →(2007年)+接道、建 物. 地上、接道. 地上. 地上 →(2008年)+建物. 地上 →(2009年)+接道、建 物. ※総合設計制度等についてはこの表から割愛した。. 4.

(7) 4.緑化計画書制度導入効果 緑化計画書制度導入効果に 分析 緑化計画書制度導入効果に関するDID分析 する. この章では緑化計画書制度の導入が地価に与える効果について、制度実施区と未実施区を用いた Difference-in-differenceの手法(以下DIDという)で分析を行う。DID分析とは、対象自治体の政策導入以外 の影響がすべて同一とみなし、時系列、クロスセクションでの違いをコントロールして、政策導入以降の、 政策導入自治体が受けた影響を分析する手法である。この手法を用いることで時系列での傾向や地域固有 の特性の影響を取り除いて分析することができる。. 4.1推計 推計モデル 推計モデル. 推計モデル式は以下のとおりである。. lnP  ∑ α x, ∑ β A ∑ δ R  ∑ θ Y + C+ε…(1). P:地価公示(円/m2) x:説明変数 A:各区政策実施後ダミー R:各区ダミー Y:年ダミー C:定数項 ε:誤差項. α, β, δ, θ:パラメタ― i:各説明変数を表す添え字。各説明変数は以下のとおり。 地積(m2)最寄駅までの距離(m)東京駅からの距離(m)容積率(%) 自治体公園面積率(%)東京都政策実施年後ダミー j:制度実施区を表す添え字。制度実施区は以下のとおり。 港区、新宿区、文京区、台東区、江東区、品川区、目黒区、世田谷区、渋谷区、中野区、 杉並区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区 k:各区を表す添え字。 中央区、大田区、港区、新宿区、文京区、台東区、江東区、品川区、目黒区、世田谷区、渋 谷区、中野区、杉並区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区 l:各年を表す添え字。各年は1972~2010年。. 分析は墨田区、豊島区、江戸川区を除いた20区を対象とした。除いた区はいずれも制度対象行為が本研究 の着目点である敷地面積要件だけでなく、様々な条件が付している区である。よって、本研究の対象から 除くこととした。 DID分析における各区政策実施年及び東京都政策実施年の考え方は、各区の緑化計画書制度において、 制度対象に建築行為が含まれた時点を政策実施年とした。各区政策実施後ダミーは各区の公示地価すべて を対象に政策実施後に1となる変数として設定した。よって、規制対象敷地、それ以外の敷地両方に対し、 5.

(8) 各区政策実施後ダミーが1に設定されているが、これは規制対象敷地以外にも政策効果が表れると仮定した ためである。よって、分析から得られる結果は規制対象敷地及びそれ以外の敷地に対する政策効果が合わ さった結果となっている。 東京都政策実施はすべての特別区で行われているという条件のもと、コントロールグループは条例での 緑化計画書制度をもたない千代田区、中央区、大田区とし、トリートメントグループは港区、新宿区、文 京区、台東区、江東区、品川区、目黒区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、北区、荒川区、板橋区、 練馬区、足立区、葛飾区とした。 説明変数については、ヘドニックアプローチで用いられていることがある、地積(m2)最寄駅までの距 離(m)東京駅からの距離(m)容積率(%)を用いた。また、まわりの緑の量によって、制度効果が異な る可能性を考慮し、各区の緑量を表す指標として、時系列データが比較的入手しやすい自治体公園面積率 を用いた。これは自治体総面積に対する公園面積の割合を示したものである。 分析データは1972年から2011年の地価公示データである。このデータの地価公示、地積、最寄駅までの 距離、容積率を利用した。なお、自治体公園面積率は公園白書(東京都建設局)から引用した。東京駅か らの距離の算出は、1983年~2011年の分については国土数値情報ダウンロードサービス(国土交通省国土 政策局国土情報課)から座標入りの地価公示データをダウンロードし、ArcGIS(ESRI社)を用いて直線距 離を算出した。1972年~1982年の分については国土交通省ホームページから地価公示と住所を引用し、東 京大学空間情報科学研究センターのアドレスマッチングプログラムを用いて座標を作成し、ArcGIS(ESRI 社)を用いて直線距離を算出した。基本統計量を表2に示す。. 4.2 推定結果と 推定結果と考察. 推定結果は表3のとおりである。従来、地価の説明変数として用いられている最寄駅までの距離、東京駅 までの距離の係数は有意、符号は負となり、距離が大きくなるほど地価が減少傾向となる結果となった。 地積及び容積率の係数は有意、符号は正となり、土地の有効活用が行いやすいほど地価が上昇する傾向と なった。自治体公園面積率の係数は有意、符号は正となり、自治体公園面積率が高いほど地価が上昇する 傾向となった。年ダミー、区ダミーも概ね有意となった。 緑化計画書制度導入効果を示す係数をみてみると、東京都政策実施年後ダミーの係数は有意となり正の 値となった。各区をみてみると係数が有意で正の値となったのは港区、世田谷区、渋谷区であった。有意 で負の値となったのは、新宿区、台東区、江東区、品川区、中野区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、葛 飾区、江戸川区となった。全体的にみて緑化計画書の導入は地価を減少傾向にさせる結果となり、緑の地 価に対する正の効果以上に負の効果があることが、この制度にあることが立証された。また、制度導入時 期と地価への影響との関連もこの結果からは示されなかった。東京都政策実施年後ダミーの係数は東京都 における敷地面積要件が1000m2以上であり、比較的制度強度が小さいことから正の値となったことが考え られる。この分析では、各区毎にダミー変数を用いて制度効果を計測しているが、負の効果の具体的要因 として仮説を立てている敷地面積要件についての分析を次章では行う。. 6.

(9) 表 2 DID分析基本統計量 DID分析基本統計量. ln(公示地価) 地積 最寄駅までの距離 東京駅までの距離 自治体公園面積率 容積率 東京都政策実施後ダミー 港区政策実施後ダミー 新宿区政策実施後ダミー 文京区政策実施後ダミー 台東区政策実施後ダミー 江東区政策実施後ダミー 品川区政策実施後ダミー 目黒区政策実施後ダミー 世田谷区政策実施後ダミー 渋谷区政策実施後ダミー 中野区政策実施後ダミー 杉並区政策実施後ダミー 北区政策実施後ダミー 荒川区政策実施後ダミー 板橋区政策実施後ダミー 練馬区政策実施後ダミー 足立区政策実施後ダミー 葛飾区政策実施後ダミー 年ダミー 区ダミー サンプル数. 平均 標準偏差 13.333 1.009 310.411 1,349.257 663.887 573.743 9,480.382 4,357.681 4.886 2.802 303.362 202.986 0.366 0.482 0.043 0.202 0.034 0.182 0.028 0.165 0.008 0.090 0.013 0.112 0.025 0.157 0.023 0.151 0.021 0.143 0.015 0.122 0.036 0.186 0.011 0.103 0.029 0.168 0.017 0.129 0.046 0.210 0.082 0.275 0.022 0.145 0.010 0.097 yes yes 44945. 最小 0 1 0 5 0.45 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0. 最大 17.47 126956 4500 20232.8 15 6150 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1. 表 3 DID分析推定結果 DID分析推定結果 被説明変数:ln(公示地価) 係数 標準誤差 地積 9.63E-06 3.74E-06 *** 最寄駅までの距離 -0.0002 1.53E-05 *** 東京駅までの距離 -0.00001 1.98E-06 *** 自治体公園面積率 0.0273 0.009 *** 容積率 0.0025 0.000 *** 東京都政策実施後ダミー 1.4803 0.046 *** 港区政策実施後ダミー 0.3625 0.034 *** 新宿区政策実施後ダミー -0.0611 0.025 ** 文京区政策実施後ダミー 0.0055 0.023 台東区政策実施後ダミー -0.2710 0.027 *** 江東区政策実施後ダミー -0.0453 0.017 *** 品川区政策実施後ダミー -0.0496 0.021 ** 目黒区政策実施後ダミー 0.0000 0.018 世田谷区政策実施後ダミー 0.1251 0.011 *** 渋谷区政策実施後ダミー 0.2575 0.027 *** 中野区政策実施後ダミー -0.0463 0.015 *** 杉並区政策実施後ダミー -0.0044 0.013 北区政策実施後ダミー -0.1235 0.018 *** 荒川区政策実施後ダミー -0.1258 0.027 *** 板橋区政策実施後ダミー -0.1294 0.019 *** 練馬区政策実施後ダミー -0.0910 0.019 *** 足立区政策実施後ダミー -0.0677 0.011 *** 葛飾区政策実施後ダミー -0.1304 0.015 *** 年ダミー yes 区ダミー yes 定数項 11.36816 0.212 *** サンプル数 44945 決定係数 0.8573 *,**,***はそれぞれ有意水準1%、5%、10%を満たしていることを示す。. 7.

(10) 5.敷地面積要件 敷地面積要件の 敷地面積要件の地価に 地価に対する影響分析 する影響分析 4章では各区の政策実施年後ダミー等を用いて、DID分析により緑化計画書制度の導入効果を分析したが、 各区の制度の敷地面積要件が異なっていることに着目し、敷地面積要件が地価に与える影響を分析する。. 5.1推定式 推定式. 推定式を以下に示す。. lnP  ∑ α x, βM ∑ δ R  ∑ θ Y + C+ε …(2) P:地価公示(円/m2) x:説明変数 A:各区政策実施後ダミー R:各区ダミー Y:年ダミー M::対象敷地面積指標(対象敷地面積の逆数) C:定数項 ε:誤差項. α, β, δ, θ:パラメタ― i:各説明変数を表す添え字。各説明変数は以下のとおり。 地積(m2)最寄駅までの距離(m)東京駅からの距離(m)容積率(%) 自治体公園面積率(%)東京都政策実施年後ダミー k:各区を表す添え字。 中央区、大田区、港区、新宿区、文京区、台東区、江東区、品川区、目黒区、世田谷区、渋 谷区、中野区、杉並区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区 l:各年を表す添え字。各年は1972~2010年。 4章における各区の政策実施年後ダミーのかわりに、敷地面積指標を導入した。この値は政策導入年のと きに値を持つものであり、政策の導入効果に加え、敷地面積要件の効果も含まれている。推定では敷地面 積要件を表す指標として、敷地面積要件の逆数を用いた。例えば、敷地面積要件が250m2以上ならば1/250 である。敷地面積要件がない場合、すなわち、すべての建築行為に対し制度が適用される場合は、敷地面 積要件は0m2以上となるがこれを逆数にすることができないため、十分大きな値として1で代用した。これ により、敷地面積要件を狭くするほど、すなわち規制を強くするほど大きな値をとる指標となる。また、4 章と同様に規制対象敷地、それ以外の敷地両方に対し同じ値を設定している。よって、分析から得られる 結果は規制対象敷地及びそれ以外の敷地に対する政策効果が合わさった結果となっている。その他の説明 変数についても4章での分析と同様とした。 また、総合設計制度等による条件の考慮は、分析を簡単にするために行わないこととした。表4に基本統 計量を示す。 8.

(11) 表 4 面積要件分析 基本統計量. ln(公示地価) 地積 最寄駅までの距離 東京駅までの距離 自治体公園面積率 容積率 東京都政策実施後ダミー 面積要件指標 年ダミー 区ダミー サンプル数. 平均 標準偏差 13.333 1.009 310.411 1,349.257 663.887 573.743 9,480.382 4,357.681 4.886 2.802 303.362 202.986 0.366 0.482 0.020 0.136 yes yes 44945. 最小 0 1 0 5 0.45 0 0 0. 最大 17.47 126956 4500 20232.8 15 6150 1 1. 表 5 面積要件分析 推定結果. 被説明変数:ln(公示地価) 係数 標準誤差 地積 9.46E-06 3.75E-06 ** 最寄駅までの距離 -0.0002 1.53E-05 *** 東京駅までの距離 -0.000014 1.97E-06 *** 自治体公園面積率 0.0273 0.0083 *** 容積率 0.0025 0.0002 *** 東京都政策実施後ダミー 1.4818 0.0459 *** 敷地面積指標 -0.1177 0.0141 *** 年ダミー yes 区ダミー yes 定数項 11.36872 0.2046 *** サンプル数 44945 決定係数 0.855 *,**,***はそれぞれ有意水準1%、5%、10%を満たしていることを示す。. 5.2推定結果 推定結果と 推定結果と考察. 推定結果は表5のとおりである。前章の分析と同様に、最寄駅までの距離、東京駅までの距離の係数は有 意で符号は負となり、地積、容積率、公園面積率、東京都政策実施年後ダミーの係数は有意で符号は正と なった。年ダミー、区ダミーも概ね有意となった。 敷地面積要件指標の係数は有意で負の値となった。この結果から、敷地面積要件指標が大きいほど、つ まり、敷地面積要件が狭いほど地価に対し、負の影響を与えることが示された。敷地面積要件が狭いほど 制度から逃れられないことや逃れようとして、より狭い敷地での建築行動を選好するような考え方が少な からず、地価へ影響していることが推測される。東京都政策実施ダミーの係数は敷地面積要件が1000m2以 上と比較的大きいことから正の値となっていることが考えられる。 続いて、この制度におけるもう1つの地価への負の影響を与える要因である緑化基準タイプの地価への影 響について、次章で分析を行う。. 9.

(12) 6.緑化基準 緑化基準タイプ 緑化基準タイプの タイプの地価に 地価に対する影響分析 する影響分析. この章では緑化計画書制度における緑化基準タイプが各区で異なっていることに着目し、緑化基準タイ プが地価に与える影響を分析する。 各区の緑化基準タイプについては前述の表1のとおりである。各区によって採用している緑化基準タイプ は、地上緑化はすべての区が採用しているのに対し、接道緑化、建物緑化は採用している自治体もあれば していない自治体もある。そして、義務づけられている緑化率も算定式やその適用方法についても様々で あり、適用方法でいうと用途地域毎に率を変えている自治体もあれば、建物用途により率を変えている自 治体もある。算定式については、地上緑化の場合においていくつかタイプが存在するが、敷地面積に緑化 率を乗じた面積を用いているものと敷地面積から建物面積を除いた面積に緑化率を乗じているものが大半 である。また、接道緑化や建物緑化に関しては、緑化計画書提出の際の敷地面積要件に加え、緩和の敷地 面積要件が設定されている。(表6、表7を参照). 6.1推定式 推定式. 推定式は以下のとおりである。 ln P

(13) ∑ α x, +∑ β G +∑ γ ・ T +∑ δ R   ∑ θ Y + C+ε …(3) P:地価公示(円/m2) x:説明変数 A:各区政策実施後ダミー R:各区ダミー Y:年ダミー G:緑化基準タイプダミー T:緑化基準タイプ強度指標 (=各タイプ緑化率(%)×各タイプ敷地面積指標) (各タイプ敷地面積指標=1/各タイプ敷地面積要件) C:定数項 ε:誤差項. α, β, γ, δ, θ:パラメタ― i:各説明変数を表す添え字。各説明変数は以下のとおり。 地積(m2)最寄駅までの距離(m)東京駅からの距離(m)容積率(%) 自治体公園面積率(%)東京都政策実施年後ダミー k:各区を表す添え字。 中央区、大田区、港区、新宿区、文京区、台東区、江東区、品川区、目黒区、世田谷区、渋 谷区、中野区、杉並区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区 l:各年を表す添え字。各年は1972~2010年。 m:緑化基準タイプを示す添え字。各緑化基準タイプは地上緑化、接道緑化、屋上緑化 10.

(14) この推定式では緑化タイプダミーの項と緑化タイプ強度指標の項がそれぞれの緑化基準タイプの地価に 対する効果を表すものとして仮定した。緑化タイプ強度指標において、緑化率を直接に説明変数として用 いないのは、接道緑化や建物緑化義務の際に、緑化計画書提出のための敷地面積要件に加え、各緑化基準 タイプにて、緩和の敷地面積要件がある場合があるからである。その度合いを反映させるために各緑化基 準タイプの敷地面積要件指標を乗じた強度指標としている。例にあげると、地上緑化強度指標は地上緑化 面積指標(地上緑化面積要件の逆数)に地上緑化率を乗じたものである。なお、敷地面積要件指標と各緑 化基準タイプ敷地面積要件との関係は、地上緑化敷地面積指標については、新宿区を除いた区では敷地面 積要件指標と同じである。接道緑化面積指標については、足立区、葛飾区を除いた区では敷地面積指標と 同じである。 また、緑化率についても前述のとおり、算定式やその適用方法についても様々であることから、緑化率 の最小値をその自治体の代表の数値として設定した。地上緑化の算定式の違いへの対応は、敷地面積に対 する値に換算することとし、地価公示データにおける建ぺい率を用いて、緑化率が最小となるように建ぺ い率を設定し、緑化率を設定した。今回設定した地上緑化率は各区によって比較的異なっているが、接道 緑化率、建物緑化率は各区比較的近い値となった。(表6、表7を参照) また、4章と同様に規制対象敷地、それ以外の敷地両方に対し同じ値を設定している。よって、分析から 得られる結果は規制対象敷地及びそれ以外の敷地に対する政策効果が合わさった結果となっている。その 他の説明変数についても4章での分析と同様とした。 また、総合設計制度等による条件の考慮は、分析を簡単にするために行わないこととした。世田谷区に ついては緑化地域制度が2010年度より導入されているが、緑化計画書制度のほうが基準の強度が大きいこ とから、緑化計画書制度の値を用いて推定する。なお、基本統計量は表8のとおりである。. 6.2推定結果 推定結果と 推定結果と考察 推定結果は表 9 のとおりである。4 章の分析と同様に、最寄駅までの距離、東京駅までの距離の係数は 有意で符号は負となり、地積、容積率、公園面積率、東京都政策実施年後ダミーの係数は有意で符号は 正となった。年ダミー、区ダミーも概ね有意となった。 緑化基準タイプに関する係数はすべて有意であり、地上緑化ダミーは正の値、地上緑化強度指標は負 の値となった。接道緑化ダミー、建物緑化ダミーは負の値、接道緑化強度指標、建物緑化強度指標は正 の値となった。東京都政策実施年後ダミーは 4 章、5 章と同様、比較的制度強度が小さいことが推定結果 に表れていると考えられる。 前述の通り、各緑化タイプダミーの項と緑化タイプ強度指標の項を合わせたものが各緑化タイプの地 価への影響ととらえると、地上緑化強度指標を大きくするほど地価に対して負の効果が、接道緑化強度 指標、建物緑化強度指標を大きくするほど正の効果があることが示された。各緑化タイプの地価公示の 変化率に対する効果について、各緑化率タイプの公示地価の変化率に対する影響を縦軸に、各緑化タイ プ強度指標の項を横軸にしたグラフを図1に示す。 緑化基準タイプ強度指標は緑化タイプ別敷地面積要件指標に緑化率を乗じたものであるので、地上緑化 については敷地面積要件を狭くするほど、緑化率を大きくするほど地価に対し負の効果があることを示し ている。一方、接道緑化、建物緑化については敷地面積要件を狭くするほど、緑化率を大きくするほど地 11.

(15) 価に対し正の効果があることを示している。 この結果について推測すると、地上緑化の場合は、敷地面積に対して緑化率を指定しているので、敷地 の一部分の用途が固定され、建築行為に対し制限を与える。そして、敷地面積の狭い住民ほどより制度が 強く感じることがこの結果をもたらしていると考えられる。接道緑化の場合は、接道部延長に対して緑化 率を決めており、建築行為に対しそれほど制限を与えないと考えられる。一方、接道緑化は外部性を有し ている。住民は外部効果をより多くすることを選好しており、そのことが敷地面積要件を狭くした場合に 評価される結果をもたらしていると考えられる。建物緑化の場合も、建築行為に影響を与えると考えられ るが、壁面緑化など外部効果も有しており、接道緑化と同様、より多く緑化することを住民は選好してい ることが敷地面積要件を狭くした場合に評価される結果をもたらしていると考えられる。 また、各自治体において、制度がない状況から現在の制度を実施した場合をシミュレーションした例を 表10に示す。地上緑化効果は、台東区以外は正の値となった。これは、地上緑化規制強度は概ね適正であ ることを示している。接道緑化効果についてはすべて負の値となった。接道緑化強度については、現状の 制度では強度が小さいことを示している。建物緑化効果についてはすべて負の値となった。この結果も接 道緑化効果と同様に、現状の制度では強度が小さいことを示している。 地上緑化効果、接道緑化効果、建物緑化効果を合計した制度効果をみてみると、文京区、荒川区、板 橋区以外は負の値となった。接道緑化及び建物緑化の強度を大きくするという制度改善の方向性を示す ことができたといえる。 4章、5章の分析と6章との分析を比較すると、4章の分析は緑化計画書導入が地価に対して負の効果を与 えることになることを示しており、表7の結果も概ね負の効果を示していることから、4章の分析と6章の分 析は同じ傾向を示しているといえる。 5章の分析は緑化タイプ及び緑化強度を識別しない形にて、敷地面積要件と地価との関係を分析し、地価 に対し負の効果という結果を得た。つまり、現行制度における緑化タイプ及び強度を前提として、敷地面 積要件と地価との関係を分析している。また、6章での分析において、5章での敷地面積要件と6章での地上 緑化敷地面積要件、接道緑化敷地面積要件はほとんどが同じ値であり、地上緑化効果と接道緑化効果の合 計は半数以上の自治体が負の値であること、建物緑化が2000年代と導入が比較的最近であることから、大 半のデータに影響を及ぼしている地上緑化と接道緑化を合わせた効果が卓越し、その効果と敷地面積要件 との関係が、5章の分析結果の傾向に表れたと考えられる。. 12.

(16) 表 6 地上緑化における 地上緑化における緑化率算定式 における緑化率算定式と 緑化率算定式と推定における 推定における緑化率設定 における緑化率設定 地上緑化 推定における緑化率設定. 自治体. 施行日. 算定式 東京都. 2001年4月1日. (敷地面積-建築面積)*緑化率 (敷地面積)*(1-けんぺい率*0.8)×緑化率. 1979年7月1日. (敷地面積-建築面積)×緑化率. 引用敷地の規模 5000m2未満. 引用用途地域 最小緑化率 -. 引用その他. 敷地面積に 対する割合. -. 0.072 0.2 400m2未満. -. 800m2未満. -. 1000m2未満. -. -. 0.02 0.1. 1990年4月1日. -. (敷地面積-建築面積)×緑化率. 0.04 0.2. 港区 敷地面積×緑化率a+延床面積×緑化率b 屋上、ベランダ、壁面緑化の3/4を乗じた面積も参入可能 敷地面積×緑化率+延床面積×緑化率、 2009年10月1日 緑化面積の5割未満であれば建築物緑化を参入可能 1000m2以上の敷地の場合、敷地面積(1-建ぺい率)×緑化率 1992年4月1日 (敷地面積)*(1-けんぺい率*0.8)×緑化率 1000m2以上の敷地の場合、敷地面積(1-建ぺい率)×緑化率 1996年7月1日 建ペイ率100%のときは(敷地面積)*(1-0.9)×緑化率 1000m2以上の敷地の場合、敷地面積(1-建ぺい率)×緑化率 2001年7月1日 建ペイ率90%以上のときは(敷地面積)*(1-0.9)×緑化率. 住宅、共用部 b 0.01 住宅、共用部 b 0.01. 2003年12月1日. 新宿区. 1980年6月1日. a 0.03 1000m2未満. a 0.03 -. -. -. -. -. -. -. -. -. -. -. -. 100m2未満. -. -. (敷地面積-建築面積)*緑化率 or (敷地面積)*(1-けんぺい率*0.8)*緑化率. 250以上 ~1000m2未満. -. (敷地面積)*(1-けんぺい率)*緑化率. 250以上 ~1000m2未満 -. -. -. -. -. -. 200m2以上 ~300m2未満. 商業・近商. 0.05 0.05 -. 0.04 0.2 -. 0.04 0.2 -. 0.04 0.2 -. (敷地面積-建築面積)*緑化率. 0.04 0.2. 文京区. 2001年4月1日. (敷地面積-建築面積)*緑化率、接道部は1.5倍換算. 2006年4月1日. (敷地面積-建築面積)*緑化率、接道部は1.5倍換算、うち0.2は屋上参入でも可。. 2005年7月1日. 敷地面積×緑化率. -. 0.03 0.15 -. 0.03 0.15. 台東区. -. 0.01 0.01. 2000年4月1日. -. 0.072 0.2. 江東区 2003年7月1日. 事務所店舗 工場その他・建ぺい率0.8. 0.07. 0.35. 品川区. 敷地面積×緑化率(商業、近商)、 1994年7月1日 敷地面積×(1-けんぺいりつ)×緑化率(一低専、二種住居、準工、工、住居) 敷地面積×緑化率(商業、近商)、 1996年6月28日 敷地面積×(1-けんぺいりつ)×緑化率(一低専、二種住居、準工、工、住居) 敷地面積×緑化率(商業、近商)、 2009年10月1日 敷地面積×(1-けんぺいりつ)×緑化率(一低専、二種住居、準工、工、住居) 1991年10月1日 敷地面積(1-けんぺいりつ)*緑化率. -. 0.05 0.05 -. 0.05 0.05 -. 0.05 0.05 -. 0.02 0.1. 350m2未満. 目黒区. 2008年4月1日. 商業・近商. -. 敷地面積(1-けんぺいりつ)*緑化率. 0.02 0.1 350m2未満. 商業・近商. -. 2009年10月1日 敷地面積(1-けんぺいりつ)*緑化率. 0.02 0.1. 2005年7月1日. 敷地面積×緑化率. 2009年9月1日. 敷地面積×緑化率. 250m2~500m2未満. -. 250m2~500m2未満. -. -. -. -. -. けんぺい率0.8以上. 0.05 0.05. 世田谷区 けんぺい率0.8以上. 0.05 0.05. 渋谷区. 2001年4月1日. (敷地面積-建築面積)*緑化率. 1979年4月1日. 敷地面積(1-けんぺいりつ)*緑化率. 2007年4月1日. 敷地面積(1-けんぺいりつ)*緑化率. -. 0.04 0.2 -. 0.04 0.2. 中野区 -. -. -. 0.04 0.2. 杉並区. 200m2未満. 商業・近商. 敷地面積×0.4×0.2(二住、住居、準工、工)、 敷地面積×0.2×0.2(商業、近商)、防火は0.2×0.1. -. 防火. 敷地面積×0.4×0.2(二低専~準住居)、 1996年5月31日 敷地面積×0.2×0.2(商業、近商)、防火は0.2×0.1. -. 防火. 2006年7月1日. 敷地面積*緑化率. 1986年4月1日. -. 0.0005 0.0005 -. 0.02 0.02. 北区 -. 0.02 0.02 -. 1980年4月1日. -. 敷地面積(1-けんぺいりつ)×緑化率. 0.04 0.2. 荒川区 1000m2未満. 商業・近商. -. 2007年9月27日 敷地面積(1-けんぺいりつ)×緑化率. 0.008 0.04 -. 1980年1月1日. -. -. 敷地面積×緑化率、壁面でも参入可. 0.2 0.2 -. -. 中高層集合住宅以外. 1989年9月30日 敷地面積(1-けんぺい率)×緑化率、壁面でも参入可. 0.05 0.25. 板橋区 -. 住宅、けんぺい率100%未満 中高層集合住宅以外 (控除率0、緑化率0.25). -. 1995年10月1日 敷地面積×(1-控除率)×(1-建ぺい率)*緑化率. 0.05. 0.25 1000m2未満. -. -. 1977年10月1日 敷地面積(1-けんぺいりつ)*緑化率. 0.06 0.3. 練馬区 2008年6月1日. (敷地面積-建築面積)*緑化率、 (敷地面積)*(1-けんぺい率*0.8)×緑化率. 2003年7月1日. 敷地面積(1-建ぺい率)×緑化率. 2009年7月1日. 敷地面積(1-建ぺい率)×緑化率. -. -. 300m2以下. -. 1000m2未満. -. 1000m2未満. -. -. 0.108 0.3 -. 0.04 0.2. 足立区 -. 0.04 0.2. 葛飾区. -. 2005年10月1日 敷地面積(1-建ぺい率)×緑化率. 0.04 0.2. ※総合設計制度を除く. 13.

(17) 表 7 接道緑化・ 接道緑化・建物緑化における 建物緑化における緑化率算定式 における緑化率算定式と 緑化率算定式と推定における 推定における緑化率設定 における緑化率設定 接道緑化 自治体. 施行日. 算定式・条件等 東京都. 2001年4月1日 1000m2以上、接道長割合. 建物緑化. 推定における緑化率設定 引用敷地の規模 引用区分 緑化率 1000m2以上 ~3000m2未満. 工場店舗事務所等. 算定式 敷地面積1000m2以上 屋上の面積×緑化率. 推定における 緑化率設定. 0.2. 0.5 1979年7月1日. -. 1000m2未満. -. -. 事務所店舗工場その他. 1990年4月1日 接道長割合. -. -. -. -. 0.3. 港区 1000m2未満. 事務所店舗工場その他. 2003年12月1日 接道長割合. 0.3 1000m2未満. 事務所店舗工場その他. 2009年10月1日 接道長割合. 0.3 500m2未満. 敷地面積1000m2以上 屋上の面積×緑化率. 0.2. 事務所店舗工場その他. 1992年4月1日 接道長割合. -. -. -. -. 0.2 500m2未満. 新宿区. 事務所店舗工場その他. 1996年7月1日 接道長割合. 0.2 500m2未満. 事務所店舗工場その他. 2001年7月1日 接道長割合. 0.2. 文京区. 台東区. 敷地面積1000m2以上 屋上利用可能面積×緑化率. 1980年6月1日. -. -. -. 2001年4月1日. -. -. -. 2006年4月1日. -. -. 2005年7月1日. -. 250m2以上 ~1000m2未満. 2000年4月1日 接道長割合. 敷地面積300m2以上 建物面積×緑化率. 0.2 -. -. 0.2. 事務所店舗工場その他 -. -. 0.3. 江東区 250m2以上 ~1000m2未満. 2003年7月1日 接道長割合. 事務所店舗工場その他 (敷地面積)*(けんぺい率)*緑化率. 0.2. 0.3 500m2未満. 事務所店舗工場. 1994年7月1日 接道長割合. -. -. -. -. 0.2 500m2未満. 品川区. 事務所店舗工場. 1996年6月28日 接道長割合. 0.2 500m2未満. 事務所店舗工場. 2009年10月1日 接道長割合. 0.2 1000m2未満. 敷地面積1000m2以上 建築面積×緑化率. 0.2. 事務所店舗工場その他. 1991年10月1日 接道長割合. -. -. 0.3 1000m2未満. 目黒区. 2008年4月1日 接道長割合. 工場事務所店舗 診療所駐車場社寺など. 敷地面積500m2以上 屋上の面積×緑化率. 0.2. 敷地面積500m2以上 ~1000m2未満 屋上の面積×緑化率. 0.2. 0.3 1000m2未満 2009年10月1日 接道長割合. 工場事務所店舗 診療所駐車場社寺など. 0.3 2005年7月1日. -. -. 250m2以上 ~1000m2未満. 事務所店舗工場その他. -. -. -. -. 世田谷区 2009年9月1日 接道長割合. 敷地面積1000m2以上 建ぺい率80%以上屋上の面積×緑化率. 0.25. 0.3. 渋谷区. 2001年4月1日. -. -. 1979年4月1日. -. -. 建物面積×緑化率. 0.2 -. -. 中野区 -. 住宅. 2007年4月1日 接道長割合. 屋上の面積×緑化率. 0.2. 0.4. 杉並区. 2006年7月1日. 接道長割合 (緑化率=敷地面積×1/1000). 1986年4月1日. -. -. -. -. -. -. -. 0.048(敷地面積48m2とし計算). -. 事務所店舗工場 駐車場その他. 北区 1000m2未満 1996年5月31日 接道長割合. 0.3 1980年4月1日. -. -. -. 2007年9月27日. -. -. -. -. 1980年1月1日. -. -. -. -. 1989年9月30日. -. -. -. -. 1995年10月1日. -. -. -. -. 1977年10月1日. -. -. 2008年6月1日. -. -. 2003年7月1日. -. 荒川区. 板橋区. -. -. 練馬区 屋上の面積×緑化率. -. 工場店舗等 上記以外の施設. 足立区 1000m2未満 2009年7月1日 敷地面積500m2以上、接道長割合. 0.2. 敷地面積1000m2以上 屋上の面積×緑化率 敷地面積1000m2以上 屋上の面積×緑化率. 5000m2未満. 0.3. 葛飾区. 0.2 工場店舗等 上記以外の施設. 1000m2未満 2005年10月1日 敷地面積1000m2以上、接道長割合. 5000m2未満. 0.3. 0.2. ※総合設計制度を除く ※荒川区では 15 戸以上の集合住宅にて建物緑化義務(2007 年)に追加されたが ここでは敷地面積要件のある建築行為のみとするため省略した。. 14.

(18) 表 8 緑化基準タイプ 緑化基準タイプ分析 タイプ分析 基本統計量. ln(公示地価) 地積 最寄駅までの距離 東京駅までの距離 自治体公園面積率 容積率 東京都政策実施後ダミー 地上緑化ダミー 接道緑化ダミー 建物緑化ダミー 地上緑化強度指標 接道緑化強度指標 建物緑化強度指標 年ダミー 区ダミー サンプル数. 平均 標準偏差 13.333 1.009 310.411 1,349.257 663.887 573.743 9,480.382 4,357.681 4.886 2.802 303.362 202.986 0.366 0.482 0.367 0.482 0.194 0.396 0.112 0.316 0.014 0.090 0.258 2.688 0.005 0.016 yes yes 44945. 最小 0 1 0 5 0.45 0 0 0 0 0 0 0 0. 最大 17.47 126956 4500 20232.8 15 6150 1 1 1 1 1 30 0.1. 表 9 緑化基準タイプ 緑化基準タイプ分析 タイプ分析 推定結果. 被説明変数:ln(公示地価) 係数 標準誤差 地積 9.460E-06 0.000 *** 最寄駅までの距離 -1.608E-04 0.000 *** 東京駅までの距離 -1.370E-05 0.000 *** 自治体公園面積率 0.031 0.003 *** 容積率 0.002 0.000 *** 東京都政策実施後ダミー 1.497 0.024 *** 地上緑化ダミー 0.059 0.010 *** 接道緑化ダミー -0.067 0.009 *** 建物緑化ダミー -0.061 0.013 *** 地上緑化強度指標 -2.359 0.419 *** 接道緑化強度指標 0.068 0.014 *** 建物緑化強度指標 1.618 0.227 *** 年ダミー yes 区ダミー yes 定数項 11.3192 0.0480512 *** サンプル数 44945 決定係数 0.8557 *,**,***はそれぞれ有意水準1%、5%、10%を満たしていることを示す。. 15.

(19) 図 1 緑化基準タイプ 緑化基準タイプの タイプの地価の 地価の変化率に 変化率に対する効果 する効果. 表 10 緑化基準タイプ 緑化基準タイプ別 タイプ別の地価の 地価の変化率に 変化率に対する効果 する効果( 効果(自治体例) 自治体例) 港区 新宿区 文京区 台東区 江東区 品川区 目黒区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区. 地上緑化効果 0.05891 0.05929 0.05903 -0.11048 0.05872 0.05903 0.05915 0.05891 0.05910 0.05891 0.05820 0.05924 0.05929 0.05904 0.05862 0.05891 0.05910. 地上緑化強度 0.00020 0.00004 0.00015 0.07200 0.00028 0.00015 0.00010 0.00020 0.00012 0.00020 0.00050 0.00006 0.00004 0.00015 0.00032 0.00020 0.00012. 接道緑化効果 -0.06713 -0.06715. 接道緑化強度 0.0012 0.0008. -0.06713 -0.06717 -0.06711 -0.06713. 0.0012 0.0006 0.0015 0.0012. -0.06707 -0.06394 -0.06715. 0.0020 0.0480 0.0009. -0.06717 -0.06719. 0.0006 0.0003. 16. 建物緑化効果 -0.06022 -0.06022. 建物緑化強度 0.0002 0.0002. -0.05957 -0.06022 -0.06022 -0.05989 -0.06014 -0.06022 -0.06022. 0.0006 0.0002 0.0002 0.0004 0.00025 0.0002 0.0002. -0.05957 -0.06022 -0.06022. 0.0006 0.0002 0.0002. 効果計 -0.06843 -0.06808 0.05903 -0.17005 -0.06862 -0.06836 -0.06785 -0.06835 -0.00112 -0.06838 -0.00573 -0.00791 0.05929 0.05904 -0.00095 -0.06847 -0.06831.

(20) 7.まとめ まとめ. 本研究では緑化計画書制度が地価に与える影響について分析した。 第一には、4章の分析にて緑化計画書制度導入は地価に対し概ね負の影響を与えることを示し、各自治体 においても差があることを示した。第二には、5章の分析にて敷地面積要件は狭くなるほど地価に負の影響 を与えることを示した。この分析は、現行制度の緑化基準タイプ及び緑化率を前提とした場合の敷地面積 要件と地価との関係を示している。第三には、6章の分析にて緑化基準タイプ及びその緑化基準タイプ強度 は、各タイプによって地価に与える影響が異なることを示した。地上緑化においては敷地面積要件及びそ の制度強度が強いほど地価に負の影響を与え、接道緑化、建物緑化においては、敷地面積要件及びその制 度強度が強いほど地価に対して正の影響を与えることを示した。よって、5章と6章の分析結果を総合する と、6章の分析より敷地面積要件の地価に与える影響は緑化基準タイプによって異なることを示しているが、 地上緑化効果、接道緑化効果の合計と敷地面積要件との関係が5章の結果によく表れたことが推測される。 地上緑化は仮説どおり小さいと思われる外部性の影響よりも、規制敷地住民に対しては基準を超えると 地価に対して負の影響をあたえることが分析結果に表れた。接道緑化、建物緑化は規制敷地住民に対して は地上緑化と同じであるものの、外部性のほうがその効果より卓越し、強度を強めるほど地価に対し正の 効果があることが分析結果に表れた。つまり、外部性の小さいと思われる地上緑化よりも、外部性の大き いと思われる接道緑化、建物緑化が地価に対して正の影響を与えることが示された。 本研究の踏まえた政策提言は、緑化計画書制度のような緑化義務制度を行う際、敷地面積要件や緑化基 準タイプの地価に与える影響を科学的な分析によって考慮したうえで政策設計を行うことである。特に地 上緑化は、現行の制度強度では地価に対して正の効果を与えているが、敷地面積要件や緑化率の強度を大 きくするほど、地価に負の影響があるため、制度設定時は制度効果を試算しながら慎重に行うべきである。 接道緑化、建物緑化は現行制度では制度強度が足りないことから、敷地面積要件や緑化率をより厳しく設 定すべきである。 また、今回の分析ではその効果を分けて検証することを行わなかったが、制度によって生じるコストの 影響やコスト軽減策としての補助金政策、税制優遇政策等が政策決定に大きな影響を及ぼすと考えられる。 加えて、制度による緑の実物量の変化を用い、制度による緑の実物量と地価との関係を分析することで、 この制度における緑の外部性を計測することが可能となる。緑の実物量についてはデータの制約もあり、 本研究に含めることができなかったが、今後データの蓄積を期待したい。外部性の計測は補助金政策、税 制優遇政策の政策根拠となっていることから、検証することは大きな意義があると考えられる。 今後の課題としては、コストや補助金政策、緑の実物量を説明変数に加え、緑化推進制度の政策根拠の 検証ならびにその効果を分析し、制度設計に加え制度導入根拠にも反映させることのできる分析を行うこ とである。. 17.

(21) 謝辞 本稿の作成にあたり、主査の中川雅之客員教授には問題提起から分析手法にいたるまで大変有益なご指 導をいただきました。また、副査の黒川剛教授、丸山亜希子助教授、鶴田大輔客員准教授には適切な助言 を数多くいただきました。また、プログラムディレクターの福井秀夫教授、北野大樹准教授、安藤至大客 員准教授をはじめ、関係教員及び学生の皆様からも大変貴重なご意見をいただきました。ここに記して感 謝申し上げます。 なお、本稿は個人的な見解を示すものであり、筆者の所属機関の見解を示すものではありません。また、 誤りは全て筆者の責任であることをお断りいたします。 参考文献 ・愛甲・崎山・庄子(2008)「ヘドニック法による住宅地の価格形成における公園緑地の効果に関する 研究」,ランドスケープ研究, 71(5), 727-730 ・高・浅見(2000)「戸建住宅地におけるミクロな住環境要素の外部効果」,季刊住宅都市経済,2000年秋号 28-35 ・肥田野・亀田(1997)「ヘドニック・アプローチによる住宅地における緑と建築物の外部性評価」,日本 都市計画学会学術研究論文集,第32回,457-462 ・谷下・長谷川・清水(2009)「景観規制が戸建住宅価格に及ぼす影響-東京都世田谷区を対象とした ヘドニック法による検証-」,計画行政32(2),71-79 ・「緑確保の総合的な方針」(2010),東京都 ・御手洗(2007)「緑化政策における建築物緑化規制の費用便益分析の構築の試み」ランドスケープ研究 70(5),631-636 ・御手洗・越澤(2006)「我が国における建築物の緑化義務を課する法制度に関する比較研究」 日本都市計画学会都市計画論文集,No41-3,619-624 ・矢澤・金本(1992)「ヘドニックアプローチにおける変数選択」,環境科学会誌,5(1),45-55 使用データ 使用データ等 データ等 ・土地情報システム 公示地価(1972年から1982年)(国土交通省) ・数値情報ダウンロードサービス 公示地価(1983年から2011年)(国土交通省国土政策局国土情報課) ・東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)アドレスマッチングプログラム ・公園調書(1972年から2011年)(東京都建設局) ・東京における自然の保護と回復に関する条例・同施行規則" ・港区みどりを守る条例施行規則・同施行規則 ・新宿区みどりの条例・同施行規則 ・文京区みどりの保護条例・同施行規則 ・台東区みどりの条例・同施行規則 ・墨田区集合住宅の建築に係る居住環境の整備及び管理に関する条例 ・江東区みどりの条例・同施行規則 ・品川区みどりの条例・同施行規則 ・目黒区みどりの条例・同施行規則 ・世田谷区自然的環境の保護及び回復に関する条例 18.

(22) ・世田谷区みどりの基本条例・同施行規則 ・渋谷区みどりの確保に関する条例・同施行規則 ・中野区みどりの保護と育成に関する条例・同施行規則 ・杉並区みどりの条例・同施行規則 ・豊島区みどりの条例 ・北区みどりの条例・同施行規則 ・荒川区みどりの保護条例・同施行規則 ・東京都板橋区緑化の推進に関する条例・同施行規則 ・練馬区みどりを保護し回復する条例 ・練馬区みどりを愛し守りはぐくむ条例・同施行規則 ・足立区緑の保護育成条例・同施行規則 ・葛飾区緑の保護と育成に関する条例・同施行規則 ・江戸川区住宅等整備事業における基準等に関する条例. 19.

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参照

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