電子の状態遷移により発生する。Judd-Ofeltの理論によ ると4f-4f準位間の双極子遷移の選択則は置換されたラ ンタノイドイオン周りの結晶場の対称性に依存する4,5)。 Eu3+の場合,置換サイトが反転対称性を持てば励起状 態5D 0準位から7F2,4準位などへの電気双極子遷移は禁制 となる。一方,∆ J=0,1 (ただし,0 → 0 は除く) である 磁気双極子遷移の起こる確率は対称性に無関係である。 従ってEu3+が反転対称性を持つサイトに置換されるよ うになると,電気双極子遷移による発光の減少やそれに 伴う磁気双極子遷移の確率増大が期待でき,従来の材料 とは全く異なった発光特性を示すことが期待できる。 これまでにランタノイドの置換サイトの変化による発 光特性の変化の例として,SnO2-SiO2ガラスにEu2O3を 添加した系でのPLスペクトルのSnO2量による変化が報 告されている6)。SnO 2量の増大に伴って5D0から7F2へ の遷移に伴う発光強度の低下,5D 0から7F1による発光強 度の増大が報告されており,この原因としてEu3+が反 1 .はじめに 蛍光 (Photoluminescence,PL) 材料はカラーディスプ レイなどの表示素子,LEDなどの発光素子,波長変換 のための光学素子など広範な応用がなされて来ている。 特にランタノイドを含む酸化物は合成が比較的容易であ る,化学的な安定性が高いという酸化物のメリットと高 輝度かつ単色性の高い発光特性を有するというランタノ イドのメリットを併せ持つ材料として注目されている。 現在までに報告されているランタノイドを用いた蛍光材 料 はEu2O3な ど の ラ ン タ ノ イ ド 酸 化 物 そ の も の や Y2O31),Y 2O2S 2)やSrGa2S43)など希土類酸化物や硫化物 にランタノイドイオンをドープしたものが知られてい る。これらの物質中では発光中心であるランタノイドイ オンは反転対称性のないサイトに配置されることが多 い。 3 価のランタノイドイオンの発光は内殻電子である 4f
藤代 史
*・村上 真崇
**・関本 亮平
*・荒川 智則
*・橋本 拓也
**Materials including lanthanides (Ln) with incomplete 4f shell show luminescence and are utilized for various optical devices. Such luminescence originates from 4f-4f dipole transitions of Ln3+
. According to the theory of selection rule, electric dipole transitions are affected by the site symmetry of the crystal field around Ln3+
and are allowed only for Ln3+
in the site without inversion symmetry. On the other hand, since magnetic dipole transitions have even parity, the transitions can occur among 4f electronic states, regardless of the site symmetry around Ln3+
. Since the selection rule for 4f transitions is determined by the symmetry of the crystal field around Ln3+
, the symmetry of the site where Ln3+
are located can characterize the luminescence. Therefore, for preparation of Ln3+
including materials as a phosphor with desired luminecence, the substitution site of Ln3+
is impotant as well as kind of Ln3+
. In this review, photoluminescence properties of Ln3+
including oxides, in which Ln3+
are substituted for the site of six- or twelve coordinations of oxide ions with invesion symmetry has been discussed.
Keywords: CuLa1-x LnxO2 (Ln: lanthanide), Sr1-x EuxTiO3, photoluminescence, site symmetry, 4f transition
ランタノイドイオンサイト制御による新規発光材料の探索
Development of New Oxide Phosphors by Controlling Substitution Site of Lanthanide Ion
Fumito FUJISHIRO
*, Masataka MURAKAMI
**, Ryohei SEKIMOTO
*,
Tomonori ARAKAWA
*and Takuya HASHIMOTO
**(Received October 31, 2011)
* Department of Physics College of Humanities and Sciences, Nihon University 3-25-40 Sakurajousui, Setagaya-ku, Tokyo 156-8550, Japan ** Department of Integrated Sciences in Physics and Biology, College of
Humanities and Sciences, Nihon University 3-25-40 Sakurajousui, Setagaya-ku, Tokyo 156-8550, Japan
* 日本大学文理学部物理学科:
〒156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40
** 日本大学文理学部物理生命システム科学科
転対称性のあるサイトに移動するものと考察されてい る。しかしながら,本PLスペクトルの変化がEu3+のサ イトの変化による直接的な証拠はない。置換サイトが しっかり特定されたPL材料の合成のためには,結晶構 造が確定した物質に固溶を行うのが最適と考えられる。 しかしながら,ランタノイドイオンが反転対称性のある サイトを占めている結晶は少なく,反転対称性を持つサ イトに固溶したランタノイドイオンからの発光の研究例 は少ない。ランタノイドイオンが反転対称性のあるサイ トを占めうる結晶としては,Fig. 1に示すデラフォサイ ト構造およびFig. 2に示すペロブスカイト構造が挙げら れる。これらの図はVESTA7)を用いて描かれた。 一般式AMO2で表現されるデラフォサイト構造は, MO6八面体がc 軸に垂直方向に稜共有で連結し,この一 団がc 軸方向に層状構造をなしている。またダンベル構 造と言われる直線状O-A-Oが層間を連結している。Aは 1 価のカチオン,Mは 3 価カチオンであり,Al,Gaの他 にランタノイドが入ったものもある。Tsuboiらはデラ フォサイト構造をとるCuYO2にEu3+の置換を試み,PL スペクトルを測定,5D 0-7F0,1の遷移が支配的であると報 告した8)。しかしながら,CuYO 2は空間群R 3 m をとるデ ラフォサイト構造以外に,これをmodifyした六方晶構 造も安定であり単相を作製することが難しいこと,Y3+ のイオン半径がEu3+のイオン半径と大きく異なる9)た め,固溶限が低いことが原因となりEu3+の置換サイト の特定には到っていない。
Figure 1 (a) Crystal structure of delafossite-type AMO2 with space group R3m.
(b) MO6 octahedron containing M3+ at the center with site symmetry 3m.
Figure 2 (a) Crystal structure of perovskite-type ABO3 with space group Pm3m.
イト構造単相となっていることがわかった。Fig. 4に回 折パターンから算出した格子定数およびモル体積のEu 量依存性を示す。モル体積がEu量に対して直線的に減 少していることからEuは固溶していることが分かる。 またEu量に対して c軸長は変化がないのに対し,a軸は 単調に減少している。これはEuがLaサイトに置換し, 八面体の大きさが変化しa 軸の減少を起こしたが,O-Cu-Oのダンベル構造には影響が少なかったものと解釈 できる。 Fig. 5にCuLa0.98Eu0.02O2のPLスペクトルを示す。比較 のため反転対称性を持たないサイトにEuが位置してい るEu2O3のPLスペクトルを同時に示した。励起光源に はHe-Cdレ ー ザ ー の 紫 外 光 発 振 線 325nmを 用 い た。 Eu2O3では5D0-7F2の電気双極子遷移に帰属される赤色の 発光が支配的であり,Eu2O3中のEu3+サイトは反転対称 性を持たないことに対応する。CuLa0.98Eu0.02O2では全体 のPL強度が Eu2O3より増大したばかりでなく,赤色では なく橙色の発光を示した。この原因としてはEuの価数 変化およびEuの置換サイトの影響が考えられるが,メ スバウアー測定を実施したところFig. 6に示すように isomer shiftがEuF3に 対 し て0.61mm/s (x=0.1),0.67 mm/s (x=0.2) に観測されたため16),Euは3+である ことが判明した。従って,Eu3+が反転対称性をもつサ イトに置換したため,5D 0-7F1および5D0-7F0に帰属され る発光線の強度が5D 0-7F2より強くなり,橙色の発光を 示したものと考えられる。
Fig. 7にCuLa1-xEuxO2のPLピーク強度のEu組成依存
本研究ではLa3+がEu3+と近いイオン半径を持つこ と,およびCuLaO2もデラフォサイト構造をとる10)こと に注目し,CuLa1-xEuxO2の合成およびEu3+の置換サイ トの同定を試みた。また,本物質のPLスペクトルを測 定,置換サイトの反転対称性の有無がPLスペクトルに 与える影響を調査した11)。また,Eu3+以外のランタノ イドイオンについて,CuLaO2中に置換固溶する可能性 について検討,新たなPL材料としての可能性を評価し た12)。さらにCuLa1-xEuxO2については薄膜化を試み光 学的バンドギャップの測定も行い13),蛍光発生機構につ いての考察も行った。また,デラフォサイト構造以外に ランタノイドイオンが反転対称性のあるサイトに置換し そうな物質としてペロブスカイト構造をとるSrTiO3に 注目し,Eu3+の置換の可能性およびPL特性について調 査した14)。これはSr 2+とEu3+のイオン半径が近いこ と,SrTiO3にEu3+を置換してPL測定を実施した研究 例15)はあるが,置換サイトの特性が出来ていなかった ためである。 2 .CuLa1 −xEuxO2の合成とPL特性
CuLa1-xEuxO2はCu2O,La2O3 ,Eu2O3を原料とする固 相反応法により合成した。Cuの価数を 1+に保持する ために,焼結を酸素分圧10-4atm以下のN 2ガス気流中 で実施することを留意すれば,簡便に合成することが可 能である。Fig. 3に合成したx=0.00~0.20の試料のX線 回折パターンを示す。x = 0.00 で La2O3のシグナルが僅 かに観測されたものの,それ以外の試料ではデラフォサ X -ra y in tensi ty (a rb . uni t) 80 60 40 20 2θ (deg.) 00 3 10 1 01 2 00 6 10 4 01 5 10 7 11 0 11 3 018 116 20 5 02 1 20 2 02 4 10 10 00 12 01 11 02 7 11 9 208 211 12 2 10 13 214 0210 0114 , 11 12 , 00 15 , 20 11 21 7 300 12 5 CuLaO2 x= 0.01 x= 0.02 x= 0.05 x= 0.10 x= 0.15 x= 0.20 90 89 88 87 30 0 21 7 CuLaO2 x= 0.02 x= 0.01 x= 0.05 x= 0.10 x= 0.15 x= 0.20
(a)
(b)
Figure 3 (a) X-ray diffraction patterns of CuLa1-xEuxO2. Almost all peaks can be identified as hexagonal CuLa1-xEuxO2. Solid circle
44 43
M
ol
ar v
olu
m
e
(cm
3/m
ol)
0.20 0.15 0.10 0.05 0Eu content, x
1.715 1.710 1.705 1.700c (
nm
)
0.390 0.385 0.380 0.375a (
nm
)
(a)
(b)
Figure 4 Dependence of lattice constants and molar volume of CuLa1-xEuxO2 on x.
140 120 100 80 60 40 20 0500 550 600 650 700 Wavelength (nm) x 20 5 D 1 - 7 F 0 CuLa0.98Eu0.02O2 5D 1 - 7 F 1 5D 1 - 7 F 2 5D 0 - 7 F0 5D 0 - 7 F 1 5 D 0 - 7 F 2 5D 0 - 7 F3 5D 0 - 7 F 4 20 15 10 5 0 700 650 600 550 500 5D 0 - 7 F 2 5D 0 - 7 F4 Eu2O3 5D 0 - 7 F 3 5 D 0 - 7 F 1 5D 0 - 7 F 0
(a)
(b)
PL
in
te
nsi
ty (a
rb
. u
ni
t)
Figure 5 Photoluminescence spectra and their photographs of (a) Eu2O3 and (b) CuLa0.98Eu0.02O2 at room
temperature. In the (b), a shoulder peak of separated the 5D
0 - 7F1 transition is represented by
電気双極子遷移による発光強度はEu組成の増大に伴っ て徐々に向上した。これはEu組成の増大に伴い,八面 体の中心であるOhサイトから少々ずれた位置にEu3+が 配置するようになるためと考えられる。 3 .CuLa0.98Ln0.02O(Ln:ランタノイドイオン)2 の 合成とPL特性 CuLaO2のLaのイオン半径は他のランタノイドイオン のイオン半径に近く,一般式CuLa1-xLnxO(Ln:ランタ2 ノイドイオン)の合成が期待できる。また,Eu3+以外の ランタノイドイオンも4f-4f遷移を伴う蛍光を発生する ことが報告されており,同一の結晶構造から様々な発光 が観測されることが予想できる。
Fig. 9に 本 研 究 で 合 成 し た CuLa0.98Ln0.02O2(Ln:La, Pr, Sm, Eu, Tb, Dy, Ho, Er, Tm)のX線回折パターンお
よび比較対象として合成したY2O3:Ln(2mol%)のX線 回折パターンを示す。CuLaO2で微小なLa2O3のピーク が観測された以外は単相試料の合成に成功した。X線回 折パターンから格子定数を算出し,モル体積を計算した 結果をFig. 10に示す。両者ともにイオン半径の増大に 伴ってモル体積の増加が観測され,ランタノイドイオン が格子中に入っていることがわかった。CuLa0.98Ln0.02O2 中ではランタノイドは反転対称性のある八面体の中心 Ohに配置しており,Y2O3中では反転対称性のないサイ トに置換していると考えられる。 Fig. 11にCuLa0.98Ln0.02O2のPLスペクトルを示す。ど の物質からもランタノイドイオンの4f-4f遷移に起因す 性を示す。PL強度は x=0.02で最高となり,これ以上 Eu量を増やすと濃度消光のため発光強度は減少した。 また,Fig. 8に594nm (5D 0-7F1) の発光強度で規格化した PLスペクトル形状のEu組成依存性を示す。Eu濃度に よるPL形状の変化はほとんど見られないが,5D 0-7F2の 100 95 -15 -10 -5 0 5 10 15
Velocity (mm/s)
CuLa0.9Eu0.1O2 100 95 CuLa0.8Eu0.2O2T
rans
m
ita
nc
e
(%
)
Figure 6 151Eu Mössbauer spectrum of CuLa
1-xEuxO2 (x=0.1, 0.2) at room temperature. 700 600 500 400 300 200 100 0
)ti
nu
.b
ra(
yti
sn
et
ni
LP
det
ar
get
nI
0.20 0.15 0.10 0.05Eu content, x
5D 0 -7F0 -7F1 -7F2 -7F3 -7F4Figure 7 Integrated photoluminescence intensity of each 4f transition against x.
る蛍光が観測され,光の三原色を揃えることができた。
特にFig. 12およびFig. 13に示す通り,LnがEuの場合
およびSmの場合はY2O3中に各々のランタノイドイオン を固溶させた場合と異なるPLスペクトルが観測され た。LnがEuの場合,Y2O3では電気双極子遷移である 5D 0-7F2が強く観測され,赤色の蛍光を示す。これに対 してCuLaO2中に置換した場合は本遷移に伴う蛍光が弱 くなり,磁気双極子遷移である5D 0-7F1および本来禁制 である5D 0-7F0が強くなり橙色の蛍光が観測された。Sm をY2O3に置換した場合は磁気双極子遷移および電気双 極子遷移両方に起因する4G 5/2-6H5/2,7/2および電気双極子 遷移に起因する4G 5/2-6H9/2の両者が観測された。CuLaO2 に置換した場合は全体的なPL強度の増加および4G 5/2 -6H 9/2のピーク強度の相対的な低下が観測された。ピー ク強度の低下はSmが反転対称性のある Ohサイトに置換 されたことが原因であると考えられる。 以上より,デラフォサイト構造をとるCuLaO2にラン タノイドイオンをLaの2mol%だけ置換することにより Y2O3に置換するよりも高輝度のPLスペクトルを得るこ とができること,発光波長はランタノイドが反転対称性 PL in tensi ty (a rb . uni t) 700 680 660 640 620 600 580 560 Wavelength (nm) CuLa1–xEuxO2 R el at iv e PL inten si ty 0.20 0.15 0.10 0.05 0 Eu content, x 5 D0 -7F2
(b)
620 600 5 D 0 -7 F2 (a)Figure 8 Photoluminescence spectra of CuLa1-xEuxO2 normalized at 594 nm. In the inset, (a) the magnified spectra between 600
and 630 nm, and (b) the relative peak intensity of the 5D
0 - 7F2 transition are shown.
X-ra y intensit y (a rb. unit) 80 60 40 20 2θ (deg.) 003 10 1 01 2 006 104 015 107 00 9 110 11 3 01 8 02 1 116 024 11 10 205 0012 0 11 1 027 1 19 208 21 1 12 2 101 3 21 4 01 14 1 11 2 00 15 20 11 217 3 00 20 2 02 10 12 5 Tm3+ Er3+ Ho3+ Dy3+ Tb3+ Eu3+ Sm3+ Pr3+ CuLaO2 CuLa0.98Ln0.02O2 80 60 40 20 2θ (deg.) Y2O3 Pr3+ Sm3+ Eu3+ Tb3+ Dy3+ Ho3+ Er3+ Tm3+ 211 222 400 411 420332 422 431 512 440 433 523602 54 1 622 631 4 44 Y2O3: Ln3+ 61 5 80 0 74 1 802 65 3 66 0 813662 804833921 815 736 543 640 552 642 (a) (b)
Figure 9 XRD patterns of (a) CuLa0.98Ln0.02O2 and (b) Y2O3:Ln3+. (a) Almost all peaks could be indexed as hexagonal delaffosite
structure. Peak denoted by open circle in CuLaO2 could be indexed as La2O3. (b) All peaks could be indexed as cubic
43.8 43.7 43.6 43.5 CuLa0.98Ln0.02O2 44.3 44.2 44.1 44.0 1.00 0.98 0.96 0.94 0.92 0.90 0.88 Y2O3: Ln3+
Mo
la
r v
ol
um
e (
cm
3/m
ol)
Ionic radius (Å)
(a)
(b)
Figure 10 Molar volumes of (a) CuLa0.98Ln0.02O2 and (b) Y2O3:Ln3+.
Figure 11 PL spectra of (a) CuLaO2 and CuLa0.98Ln0.02O2 with Ln3+=Pr3+, Sm3+ and Eu3+. (b) that with Ln3+=Tb3+, Dy3+, Ho3+,
Er3+ and Tm3+, at room temperature. Integrated PL intensities ( I
PL) between 380 and 730 nm are listed. LS terms are
represented at each peak.
PL inte nsity (a rb . un its) 700 650 600 550 500 450 400 Wavelength (nm) CuLaO2 Pr3+ (IPL= 14) Sm3+ (IPL= 270) Eu3+ (IPL= 440) 3 P0 - 3 H 4 1 D 2 - 3 H4 3 P0 - 3 H6 4 G 5/2 - 6 H5/2 4 G5/2 - 6 H7/2 4 G5/2 - 6 H9/2 5 D 0 - 7 F0 5 D 0 - 7 F1 5 D 0 - 7 F2 5 D 0 - 7 F3 5 D 0 - 7 F4 700 650 600 550 500 450 400 Wavelength (nm) Tb3+ (IPL= 120) Dy3+ (IPL= 28) Ho3+ (IPL= 18) Er3+ (IPL= 74) Tm3+ (IPL= 2) 5 D 4 - 7 F6 5 D 4 - 7 F5 5 D 4 - 7 F4 5 D 4 - 7 F3 4 F9/2 - 6 H 15/2 4 F9/2 - 6 H 13/2 4 F9/2 - 6 H 11/2 5 S2 - 5 I8 5 F5 - 5 I8 4 S3/2 - 4 I15/2 4 F9/2 - 4 I15/2 1 G 4 - 3 H 6 1 G4 - 3 H 4
(a)
(b)
5
D
0-
7F
2 5D
0-
7F
1 5D
0-
7F
3 5D
0-
7F
4 5D
0-
7F
0CuLa
0.98Eu
0.02O
2(I
PL= 440)
700 650 600 550 500 450 400Wavelength (nm)
5D
0-
7F
2 5D
0-
7F
4Y
2O
3: Eu
3+(I
PL= 34)
PL
in
te
nsi
ty (a
rb
. u
ni
t)
(a)
(b)
CuLa
0.98Sm
0.02O
2(I
PL= 270)
4G
5/ 2-
6H
5/ 2 4G
5/ 2-
6H
7/ 2 4G
5/ 2-
6H
9/ 2 700 650 600 550 500 450 400Wavelength (nm)
Y
2O
3: Sm
3+(I
PL= 4.4)
4G
5/ 2-
6H
5/ 2 4G
5/ 2-
6H
7/ 2 4G
5/ 2-
6H
9/ 2PL
in
te
nsi
ty (a
rb
. u
ni
t)
(a)
(b)
Figure 12 PL spectra of (a) CuLa0.98Eu0.02O2 and (b) Y2O3:Eu3+ at room temperature. Integrated PL intensities (IPL) are listed and LS
terms are represented at each peak.
Figure 13 PL spectra of (a) CuLa0.98Sm0.02O2 and (b) Y2O3:Sm3+ at room temperature. Integrated PL intensities (IPL) are listed and
た。これは薄膜の元素組成がセラミックスのものと変わ らないことを示している。またSEMからは薄膜の方が 平滑であることがわかった。また薄膜X線回折を測定し たところ,Fig. 15に示すように室温の堆積でもCuLaO2 のピークが観測され,多結晶薄膜が形成されていること がわかった。 Fig. 16に薄膜およびCuLa0.98Eu0.02O2セラミックスの PLスペクトルを示す。強度は弱いものの,薄膜はセラ ミックスと同じPLスペクトルを示し,同じ結晶性を 持っていることが示された。本薄膜の光吸収スペクトル および直接遷移を仮定して光学的バンドギャップを求め た結果をFig. 17に示す。光学的バンドギャップは2.85eV (~435nm) と従来報告されている2.34eV (~529nm)17), 2.5eV (~496nm)18)より高い値となり,CuLaO 2の室温で の発光帯570nmを観測波長とした励起スペクトルの立 ち上がり (~450nm)19)とほぼ一致する値となった。 5 .CuLa1 −xLnxO2のPL強度の増大機構 CuLa1-xLnxO2は従来材料であるY2O3にランタノイド イオンをドープしたものよりもPL強度が高い。しかし ながら,磁気双極子遷移確率は電気双極子遷移確率より 低いのが通常であるため,CuLa1-xLnxO2の高いPLを説 明するには新たな発光機構モデルが必要である。我々が 提案するモデルの模式図をFig. 18に示す。上下実線の 矢印は光の吸収 (上)・放出 (下) を伴うエネルギーの移 動を,CTSは酸化物イオンからランタノイドイオンへの 電荷移動吸収による励起状態(Charge Transfer State:
CTS)を示す。4feおよび4fgはランタノイドの4f電子準 を持つサイトに置換されることを反映して,電気双極子 遷移に基づく発光より磁気双極子遷移に基づく発光が強 くなることが示された。しかしながら,CuLaO2中に置 換したランタノイドイオンが高いPL強度を示す理由は 不明であった。本研究では薄膜の合成によるバンド ギャップの測定および励起スペクトル測定によって CuLa1-xLnxO2よりの蛍光発生機構の解明を試みた。 4 .CuLa0.98Eu0.02O2薄膜合成およびバンドギャップ 測定 PLの機構の解明にはCuLa0.98Eu0.02O2の光学的バンド ギャップの情報が必要不可欠である。しかしながら,本 物質のバンドギャップは粉末の拡散反射スペクトル17) や密度汎関数法による計算18)により評価されており, 直接光吸収スペクトルから見積もられている値はない。 これは良質な光吸収スペクトルを得るには薄膜化が必要 ではあるが,本物質の薄膜化は行われていなかったた めである。本研究ではパルスレーザー堆積法により CuLa0.98Eu0.02O2の薄膜化を試みた。 ターゲットにCuLa0.98Eu0.02O2セラミックスを用い,パ ルスレーザーには10HzのNd3+-YAGレーザーの第三高 調波 (355nm) を用いた。基板は SiO2ガラスを加熱しな いで用いた。その結果,3 時間で約 500nmの膜厚を持つ 薄膜が合成できた。Fig. 14に得られた薄膜の表面SEM お よ びEDX測 定 結 果 を 示 す。 比 較 と し て CuLa0.98Eu0.02O2セラミックスの表面SEMおよび EDX測 定結果を併せて示す。EDX測定では両者とも Cu,La,O のピークが観測され,それぞれの相対強度比は一致し X-ra y intens ity ( arb. unit) 6 4 2 0 Energy (keV) CuLa0.98Eu0.02O2 film ceramic C Kα O Kα C u Lα Si Kα Al Kα L a Lα L a Lβ L a Lβ 2 L a Lγ
Figure 14 Energy-dispersive X-ray (EDX) spectra of CuLa0.98Eu0.02O2 film and ceramic target. In the inset, scanning electron
位の励起状態および基底状態を示す。 CuLa0.98Eu0.02O2の光学的バンドギャップは薄膜の吸収 ス ペ ク ト ル か ら2.85eVと 求 め ら れ て お り He-Cdレ ー ザーによりバンド間励起が可能なので,Fig. 18の点線 の矢印のように伝導帯に励起された電子のエネルギーが 4feへ移動し,発光することが考えられる。もう一つ考 えられる機構はCTSへの励起エネルギーが,破線の矢 印のように4 feへ移動し発光するというものである。ど ちらの機構が適しているかを調査するためにCuLa0.98 Sm0.02O2およびCuLa0.98Eu0.02O2の励起スペクトルを測定 した。Fig. 19に結果を示す。両者ともバンドギャップ よりも高エネルギーである330nm付近に支配的なピー クが観測され,伝導帯からのエネルギー移動よりもCTS からのエネルギー移動がPL強度増大の原因として適し ていることが示された。LaO6八面体ではO2-イオンの 2p軌道の電子雲はLa3+との結合方向に分布しており,
X-ra
y in
tensit
y
(a
rb.
unit)
40 35 30 25 20 15 102θ (deg.)
003
10
1
film
ceramic
012
006
104
01
5
CuLa
0.98Eu
0.02O
2Figure 15 X-ray diffraction patterns of CuLa0.98Eu0.02O2 film and ceramic target. The pattern of the film was obtained by the
grazing incidence mode with the angle of incidence of 1°.
)ti
nu
.b
ra(
yti
sn
et
ni
LP
800 750 700 650 600 550 500Wavelength (nm)
CuLa
0.98Eu
0.02O
2ceramic
film
x 190
5 D 0 - 7 F0 5 D 0 - 7 F2 5 D 0 - 7 F1 5 D 0 - 7 F3 5 D 0 - 7 F4x 1
La3+の電子雲との重なりが大きくなっているものと考え られる。そのためCTSへの遷移確率が大きくなり,高 いPL強度の原因となっていると考えられる。 6 .Sr1 −xEuxTiO3の合成およびPL特性 デラフォサイト構造以外にランタノイドが反転対称性 のあるサイトに固溶する可能性のある結晶構造としてペ ロブスカイト構造が挙げられる。この内,SrTiO3は透 明であり発光材料の母体としてランタノイドイオンの置 換が研究されている。しかしながら,本質的に固溶限が 小さいことに加えて合成方法が固相反応法を採用してい る研究が多く,均質な試料合成ができているか問題が あった。
本研究ではSrCO3をクエン酸,Eu2O3を硝酸,Ti金属
をアンモニアと過酸化水素水の混合溶液で溶解させたも のを液相で混合し,エチレングリコールを加えて高分子 化したものを燃焼させ,得られた前駆体を800℃で熱処 理しプレス成型の後1300℃で焼結して合成した。本方 法では液相経由でカチオン組成を均一にしたものを用い ているので,1300℃での合成が可能となり Sr2TiO4やSr- Sr-3Ti2O7などの異相が生じないことが期待でき,実際にx =0.00-0.01までX線回折パターンに不純物が検出されな かった。
Fig. 20 (a) にSr0.99Eu0.01TiO3のPLスペクトルを示す。 Fig. 20 (b) に示すCuLa0.99Eu0.01O2と同様,5D0-7F1の磁気 双極子遷移による発光が5D 0-7F2の電気双極子遷移によ る発光より強く観測され,Euが反転対称性のあるサイ トに固溶されていることが示唆された。Fig. 20 (c) に Eu2O3のPLスペクトルを示す。5D0-7F2の発光が支配的 でありEuが反転対称性のないサイトに位置しているこ とがわかる。従来までに報告されているSrTiO3:Eu3+の 蛍光スペクトルの一例をFig. 20 (d) に示す。明らかに Eu2O3の発光線とほとんど一致しており,この試料の場 合,結晶構造内ではなく粒界にEu2O3が析出しているも のと考えられる。 10 8 6 4 2 0 Absorption coeffi cient α (x 10 4 cm -1 ) 800 700 600 500 400 300 Wavelength (nm) CuLa0.98Eu0.02O2 film 100 80 60 40 20 0 {α (x 10 4 cm -1 )} 2 4.0 3.6 3.2 2.8 2.4 2.0 1.6
Photon energy (eV)
Figure 17 Optical absorption spectra of CuLa0.98Eu0.02O2 film. In the inset, a plot of α2 vs photon energy is shown.
Figure 18 Scheme of possible energy transfer mechanism. CTS stands for charge transfer state of Ln3+. 4f
e
and 4fg denote excited 4f electron states and
ground one, respectively. Dotted arrow shows the energy transfer from conduction band of CuLaO2
to 4fe. Dashed arrow represents energy transfer
7 .結論 ランタノイドイオンを反転対称性のあるサイトに固溶 させることにより,電気双極子遷移による発光を抑え, 磁気双極子遷移による発光を相対的に増加させることに より,従来報告されていない発光特性を持つ酸化物の合 成に成功した。デラフォサイト構造をとる酸化物につい ては希土類イオンを変えることにより様々な色の発光を 出すことに成功した。薄膜合成にも成功し光学的バンド ギャップの値を評価するとともに,高いPL強度がCTS への遷移確率の増大に起因するモデルを提案した。また 液相合成法を用いてペロブスカイト構造をとる酸化物中 へのラントノイドイオンの固溶に成功し,電気双極子遷 移を抑えて磁気双極子遷移が強調されたPLスペクトル が得られることが示された。 PLE λob.= 564 nm PL λex.= 325 nm CuLa0.98Sm0.02O2 700 600 500 400 300 Wavelength (nm) PLE λob.= 594 nm PL λex.= 325 nm CuLa0.98Eu0.02O2 PL in te ns ity ( ar b. u ni t)
(a)
(b)
Figure 19 PL and PLE spectra of (a) CuLa0.98Sm0.02O2 and (b) CuLa0.98Eu0.02O2 at room temperature. Excitation wavelength (λex.)
and observed one (λob.) are shown.
5D 0 - 7 F2 5D 0 - 7 F1 Sr0.99Eu0.01TiO3 5D 0 - 7 F4 5D 0 - 7 F4 5D 0 - 7 F2 5D 0 - 7 F0 5D 0 - 7 F1 5D 0 - 7 F3 CuLa0.99Eu0.01O2 5D 0 - 7 F2 5D 0 - 7 F4 Eu2O3
(c)
(b)
(a)
PL in te nsity ( ar b. u ni t) 700 650 600 550 500 Wavelength (nm) SrTiO3: Eu3+ 5D 0 - 7 F2 5D 0 - 7 F4 5D 0 - 7 F1 (Battisha et al.15))(d)
Figure 20 PL spectra of (a) Sr0.99Eu0.01TiO3, (b) CuLa0.99Eu0.01O2 and (c)
Eu2O3 at room temperature. Excitation source is 325 nm of
He-Cd laser. PL spectra of SrTiO3: Eu3+, which was reported in
いた。メスバウアースペクトル測定・解析には東邦大学・高 橋正教授にご協力いただいた。本研究は文部科学省私立大学 戦略的研究基盤形成支援事業「構造制御および電子状態制御 に基づく新物質の開発 (S0901022)」の補助で実施された。 謝辞 本研究で光学測定・薄膜合成に便宜をはかっていただいた 日本大学文理学部物理学科・望月章介教授に感謝する。また 薄膜の解析には東京工業大学・吉本護教授にご助力をいただ
1) K. R. Reddy, K. Annapurna and S. Buddhudu, Mat. Res. Bull. 31 (1996) 1355-9.
2) G. Wakefield, E. Holland, P. J. Dobson and J. L. Hutchison, Adv. Mat. 13 (2001) 1557-60.
3) M. Nagata, S. Okamoto, K. Tanaka, T. Sakai, H. Kawasaki and A. Tamaki, J. Lumin. 130 (2010) 2040-6.
4) B. R. Judd, Phys. Rev. 127 (1962) 750-61. 5) G. S. Ofelt, J. Chem. Phys. 37 (1962) 511-20.
6) M. Nogami, T. Enomoto, T. Hayakawa, J. Lumin. 97 (2002) 147-52.
7) K. Momma and F. Izumi, J. Appl. Crystallogr. 41 (2008) 653-8.
8) N. Tsuboi, T. Hoshino, H. Ohara, T. Suzuki, S. Kobayashi, K. Kato and F. Kaneko, J. Phys. Chem. Solids 66 (2005) 2134–8.
9) R. D. Shannon, Acta Crystallogr. A 32 (1976) 751-67. 10) R. D. Shannon, D. B. Rogers and C. T. Prewitt, Inorg. Chem.
10 (1971) 713–8.
11) F. Fujishiro, M. Murakami, T. Hashimoto and M. Taka-) F. Fujishiro, M. Murakami, T. Hashimoto and M. Taka- F. Fujishiro, M. Murakami, T. Hashimoto and M. Taka-参考文献
hashi, J. Ceram. Soc. Jpn. 118 (2010) 1217-20. 12) F. Fujishiro, R. Sekimoto and T. Hashimoto, J. Lumin. doi:10.1016/j.jlumin.2011.10.031.
13) F. Fujishiro, R. Sekimoto and T. Hashimoto, Mat. Lett. 65 (2011) 2492–4.
14) F. Fujishiro, T. Arakawa and T. Hashimoto, Mat. Lett. 65 (2011) 1819–21.
15) I. K. Battisha, A. Speghini, S. Polizzi, F. Agnoli, M. Betti-) I. K. Battisha, A. Speghini, S. Polizzi, F. Agnoli, M. Betti- I. K. Battisha, A. Speghini, S. Polizzi, F. Agnoli, M. Betti-nelli, Mat. Lett. 57 (2002) 183-7.
16) M. Yoshimoto, H. Koinuma, T. Hashimoto, J. Tanaka, S. Tanabe and N. Soga, Phys. C 181 (1991) 284-8.
17) N. Koriche, A. Bouguelia and M. Trari, Inter. J. Hydrog. Energy 31 (2006) 1196-203.
18) M. N. Huda, Y. Yan, A. Walsh, S.-H. Wei and M. A. Jassim, Phys. Rev. B 80 (2009) 035205-1-7.
19) A. Jacob, C. Parent, P. Boutinaud, G. L. Flem, J. P. Dou-) A. Jacob, C. Parent, P. Boutinaud, G. L. Flem, J. P. Dou- A. Jacob, C. Parent, P. Boutinaud, G. L. Flem, J. P. Dou-merc, A. Ammar, M. Elazhari and M. Elaatmani, Solid State Commun. 103 (1997) 529-32.