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平成29 年 6 月 9 日

一帯一路サミットを前に操業開始したミャンマー中国原油パイプライン

今年4 月 10 日、中国を訪問したミャ ンマーのティン・チョー大統領は、中 国の習近平国家主席と会談し、中国の 進める「一帯一路」構想への支持を表 明するとともに、5 月の「一帯一路」 国際サミットにアウン・サン・スー・ チー国家顧問が出席することを明らか にした。さらに両首脳は、マラッカ海 峡を迂回して、ミャンマーから中国に 中東・アフリカ原油を輸送するパイプ ライン(中緬原油管道)の操業開始に合意し、中国石油天然ガス集団公司(CNPC)と、 駐中国ミャンマー大使による輸送協定調印に立ち会った。同日夜には、パイプラインの起点

であるミャンマーのMaday 島の石油ターミナルで14 万トンタンカー United Dynamic が、

原油のオフローディング作業を開始し、5 月 19 日には中国側の雲南省瑞麗に原油が到着し た。これにより、2006 年 10 月の基本合意から約 12 年、2010 年 6 月の着工式から約 7 年の 歳月を経て、ようやくこの巨大プロジェクトの操業が本格的にスタートすることになった。 原油パイプラインと並行して建設された天然ガスパイプライン(中緬天然気管道)は、 すでに2013 年 7 月から操業を開始しており、原油パイプラインの操業開始は 4 年近く遅れ た。今後、同パイプラインの原油を処理するために建設された雲南製油所と、石油製品供 給網の稼動を待って、ミャンマー・中国の原油・天然ガスパイプライン(中緬原油和天然気 管道)事業は一応の完成をみることになる。ただこの間、両国関係やミャンマーの政治体 制、中国の経済状況は大きく変化しており、もともと中国が計画していた重慶製油所の建 設の実施も定かではない。また、「一帯一路」構想が全面に打ち出されるようになり、同 パイプラインは単にマラッカ海峡迂回という意義を超え、インドを睨みながらベンガル湾 沿岸地域へ進出する中国の戦略的事業として位置づけられるものとなりそうである。 マラッカ海峡を迂回してパイプラインで内陸部に原油を輸送するという構想は、中国で 原油の輸入が増加し始めた1990 年代から石油研究者が発表していた。中国の原油輸入拡大 を背景に具体化してきたミャンマーパイプラインの計画から操業開始までを概観する。 1.中国の原油輸入拡大 中国の油田開発は、中華人民共和国成立当初から旧ソ連が支援し、原油生産は1949 年の 2017年度

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1. 中国の原油輸入拡大 2. 中東・アフリカ原油の輸入 3. マラッカ海峡迂回ルート 4. 先行したミャンマー・中国ガスパイプライン 5. ミャンマー中国原油パイプライン 6. 雲南製油所の建設 7. 雲南省石油製品パイプライン 8. 重慶製油所 9. ミャンマー国内の Dawei 製油所計画

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12 万トンから 1959 年には 373 万トンにまで拡大した。1960 年以降は中ソ論争に伴うソ連 技術陣の撤退で、自力での開発を余儀なくされたが、大慶油田では大規模な労働力を投入 する「会戦方式」が成功した。その後も勝利など大型油田が開発され、1963 年末の全国人 民代表大会では石油自給の基本的達成が宣言された。文化大革命期も石油重視政策は不変 で、下放技術者の登用もあり、大慶、勝利、大港、吉林、カラマイなどの各油田で原油の 増産が進み、原油生産量は文革が始まる1965 年の 1,000 万トン程度から、1970 年に 3,000 万トン、文革終焉の1978 年には 1 億トンを突破した。中国は原油輸出で稼いだ外貨を、宝 山製鉄所など国内産業基盤の整備に充てた。 1980 年代から 1990 年代にかけて、中国は油田開発を海外企業に開放し、海洋油田や新 規油田の開発を進め、1996 年には原油生産量が 1.5 億トンを突破した。大慶や勝利といっ た東部の大型油田の生産が頭打ちとなる一方で、改革・開放政策による経済の急速な発展の ため、エネルギーや石化原料の需要が急増し、1996 年には中国は原油の純輸入国へ転じた (石油製品を含めた石油全体では、1993 年に純輸入国となった)。当時、中国の最大の原 油輸入先はインドネシアであった。 中国は、大慶など東部油田群の生産を安定した水準で維持しつつ、増進回収(EOR)な どの技術の適用で回収率を高め、増産が期待できるタリムなど西部油田群を重点的に開発 する「穏定東部、加速西部」戦略を進めた結果、2000 年には原油生産量が 1.6 億トンに達 した。しかしながら、石油需要がそれを遥かに上回るスピードで拡大したため、2000 年に 原油輸入量は7,000 万トンを突破した。この頃、カザフスタンなど中央アジアからの原油 パイプライン建設計画が具体化に向けて動き出し、ロシアからのパイプライン建設につい て、初期の交渉がスタートしていた。また、1999 年 12 月には江沢民国家主席がサウジア ラビアを訪問してサウジ原油の輸入拡大に合意した。 その後も中国の原油輸入量はすさまじい勢いで増加し、2004 年に 1 億トン、2009 年に 2 億トン、2014 年には 3 億トンを突破した(図 1 参照)。 図1.中国の原油輸出入の推移

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中国経済の成長が鈍化し新常態突入が宣言された2015 年以降も、原油輸入量の増加は一 向に衰える気配はなく、2016 年の原油輸入量は 3.8 億トンに達した。2017 年に入っても、 第1 四半期の輸入が前年同期比 15%増の 1.5 億トンを記録し、このまま推移すれば通年で 4 億トンを突破する勢いである。 一方、中国の石油製品需要は横ばいとなり、一部の製品需要は減少し、特に軽油は輸入 が減少し輸出が増加している。2014 年は石油製品の輸出入がほぼ均衡し、2015 年には若干、 輸出が輸入を上回った。中国の石油製品が純輸出となったのは24 年ぶりのことである。こ の傾向は、2016 年になってさらに明確になり、石油製品の純輸出量は 2,000 万トンを上回 った。こうしたなかにあっても、原油輸入量が増加し続ける背景には、原油価格低迷で生 産コストの高い老朽油田および、小規模油田が生産停止を余儀なくされていることや、原 油価格の低迷を好機として原油備蓄を積み増していること、さらには、独立系石油精製企 業が輸入を増やしていることなどがあるとみられる。 こうした動きを、石油の対外依存度としてみると、図2 のような推移になる。対外依存 度が30%に近づいた 2001 年、朱鎔基首相は第 10 次 5 カ年計画のなかで、石油の需給アン バランスが日増しに突出してきているとし、石油の戦略備蓄制度を早期に確立するとの方 針を打ち出した。中国が5 カ年計画に石油戦略備蓄を盛り込んだのはこれが最初である。 その後、中国は2004 年 3 月から第 1 期国家備蓄基地整備計画を開始して 2008 年までに 4 カ所の建設を完了した。2009 年からは第 2 期建設を進め、第 3 期も計画している。 図2.中国の石油対外依存度の推移 2.中東・アフリカ原油の輸入 中国の原油輸入先を、地域別・国別に整理すると以下のようになる。 輸入が増加してきた初期段階(1993–1998 年)は、それまで輸入の中心であったインド ネシアの比率が低下し、代わりに中東原油の比率が41.6%から 60.6%に上昇した。アジア の比率はその後も減少を続け、現在では4%程度しかない。 1998 年以降は、サウジアラビアなど中東地域からの輸入拡大とともに、アンゴラやコン

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ゴ、中国が開発に成功したスーダン(分割後は南スーダン)などのアフリカ地域、パイプ ラインが建設されたロシアやカザフスタンなど CIS、さらにベネズエラやブラジルなど南 米からの輸入量も急増し、中東原油の比率は概ね50%前後で推移している(図 3 参照)。 このように中国の原油輸入先の多様化は、かなりの成果をあげており、中東原油の比率 が80%以上の日本や韓国と比べると、中国の中東依存度はかなり低く、輸入が急増してい るなかにあっても一定範囲に収めることに成功している。中国は、年間2 億トンの原油を 生産する世界有数の産油国であり、現在でも需要の1/3 は国産原油で賄っていることを考 慮に入れると、非産油国である日本や韓国との差はさらに開くことになる。 図3.中国の原油輸入の地域別構成比 中国の中東依存度が上昇しなかった背景は、2000 年頃から急増したイラン原油の輸入が、 西側諸国によるイランへの経済制裁で2012 年以降は抑制されたこと、1990 年代前半から の代表的な輸入先の1 つであるイエメンの原油生産が戦乱で激減したこと、そしてなによ りも、ロシアにシェアを奪われたサウジ原油の輸入量が、2012 年にピークを記録して以降、 横ばいから減少気味に推移していることが挙げられる。 しかし、ロシアに対中原油供給トップの座を明け渡した世界最大の原油輸出国のサウジ アラビアは、世界最大の輸入国となる見込みの中国に対して、強力な販売攻勢をかけてい

る。例えば今年3 月、Saudi Aramco は中国兵器工業集団公司(NORINCO)との間で、

遼寧省盤錦の石油精製・石油化学統合プロジェクト推進に関する覚書に調印した。Aramco の関係者によれば、これは中国におけるサウジアラビアの原油シェア拡大に向けた確固た る意志の現れとのこと。すでに完成した福建製油所や青島製油所に続き、今後、ミャンマ ーパイプライン建設に伴う雲南製油所の稼動開始、さらに河北省唐山市曹妃甸や遼寧省盤 錦への製油所の新設計画など、サウジアラビアが参画する中国の製油所プロジェクトは数 多い。一方の中国も、Aramco の株式公開における香港市場への上場や中国企業の投資な ど、並々ならぬ関心をもっており、この先のサウジ原油の輸入拡大に繋がる材料には事欠 かない。 西側諸国による経済制裁で抑制されていたイラン原油の輸入についても、米国政府の対

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応に若干の不透明感は残るものの、2016 年の中国への輸入量は過去最大を更新し、イラン の製油所増強・近代化計画や油田開発に中国が協力することで、原油輸入量はさらに増加 するとみられる。 1990 年代までインドネシアと並んで中国への原油輸入先のトップであったオマーンか らの輸入量も増加を続けている。供給余力に限界があるものの、ホルムズ海峡を通らずに 輸送可能なオマーン原油は、今後も安定的に輸入されるものとみられる。 イラク戦争で激減したイラク原油も、IS 支配地域から離れた南部油田の操業が順調で、 2009 年以降、中国向けの輸出量が急増した。OPEC 減産合意に一定同調しながらも、膨れ あがった債務や破壊されたインフラを前に、外貨を稼ぎ出す生産能力を無駄には出来ない

というのがイラクの本音であり、中国はAl–Ahdab 油田や Rumaila 油田、Halfaya 油田の

開発やインフラ再建に参加し、イラク原油の輸入を進めるものとみられる。2017 年に入っ

ても、イラクは過去最大を更新した2016 年実績を20%上回る原油を中国に輸出している。

UAE からの輸入も 2004 年頃から急増し、現在 1,200 万トンに達している。アブダビ ADNOC は、1931 年に契約した原油生産量 160 万 BPD という巨大油田の ADCO 鉱区に

ついて40 年間の新たな契約に向けて交渉を続けていたが、2017 年になり CNPC へ 8%、

中国華信能源有限公司(CEFC China Energy)へ 4%の権益を譲渡することに合意した。

中国の権益比率は合計12%に達し、40%の外資枠のなかで最大の権益獲得に成功した(他Total と BP が各 10%、国際石油開発帝石が 5%、韓国 GS Energy が 3%)。中国は、ホ ルムズ海峡を迂回するフジャイラへの原油パイプライン・石油ターミナル建設に参加し ており、安定的に供給可能なUAE 原油に期待している。 これをマラッカ海峡ルートでの輸入先としてみれば、アフリカ原油も加わる。中東・アフ リカ両地区の合計で、中国への原油輸入量の約65%を占める。 中国は、アンゴラに対して内戦終結前から政府要人を送って関係を強化し、内戦終結の 2002 年以降は、経済協力をテコに原油を確保することで、中国にとってアンゴラは、ロシ ア、サウジアラビアに次ぐ第3 位の原油供給国となっている。スーダンやリビアからの輸 入が減少して、相対的にアフリカの地位は低下しているが、中国は今後もアンゴラを中心 に相当量の原油を輸入していくものとみられる。 3.マラッカ海峡迂回ルート 中国の原油輸入先を概観すると、中東をメインに、アフリカ、CIS、米大陸も加わると いった構図になる。このうち旧ソ連圏は陸続きなので、パイプラインや列車での輸送が可 能であるが、他はすべてタンカー輸送に頼ることになる。特に中東とアフリカの原油は基 本的にマラッカ海峡を通過するルートで輸送されている。 マラッカ海峡を迂回する中国への輸送ルートとして、ミャンマールートを含め、以下の ような構想が、今までに提案されてきた。 タイの横断パイプライン構想 タイでは横断パイプラインの建設計画が何度か浮上した。2003 年 10 月にタイ政府は、

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を東南アジアの石油貿易ハブにするとの構想の推進を決定した。計画では、アンダマン海

側の南部Phangnga とタイ湾に面する Nakhon Si Thammarat の間に、230km のパイプラ

インを敷設し、石油貯蔵設備や製油所も建設するというものであった。この計画には、PTT と協力協定を交わしたSinochem や CNPC が関心を示したが、中国がミャンマールートの パイプライン計画に傾いたため、タイ政府は2005 年 4 月に、中国の参加が望めないとして 計画の延期を発表した。その後、タイ政府はこの構想を、2011 年頃から再び取り上げるよ うになり、ASEAN エネルギー会議などで投資を呼びかけた。 タイのクラ運河構想 中国は、「一路一帯」戦略とアジアインフラ投資銀行(AIIB)設立を背景に巨大インフ ラプロジェクト建設構想を進めようとしているが、クラ運河(Kra-Canal)建設という遠 大なメガプロジェクトも浮上してきている。距離は102km、幅 400m で、建設期間は 10 年、投資額は280 億ドルに達するという。タイに運河を建設して、アンダマン海とタイ湾 を結んで南シナ海に出るとの構想は200 年以上前からあるが、最短距離のクラ地峡経由の ルートでも距離が100km あり、工事には膨大な時間と資金が必要になる。これを突破する ために、原子力を使った掘削が真剣に論議されたことさえある。 マレーシアの横断パイプライン構想 マラッカ海峡を迂回するルートとして、タイと同様に、マレーシアにもマレー半島横断 パイプライン構想があり、2007 年 5 月に Trans-Peninsula Petroleum(TPP)がパイプライ

ン建設の契約に署名した。マレーシアRanhill・インドネシア Tripatra、Bakrie and Brothers

が建設を行い、サウジアラビア Al-Banader International が原油供給、マレーシア SKS

Ventures、Merapoh Resources・イラン NIOC が精製事業を行うとの計画で、2007 年 10

月には、Merapoh Resources が、中国 CNPC 傘下の吉化北京銷售公司への石油製品 20 万

BPD の 20 年間供給で覚書を交わした。計画では、北西海岸の Kedah 州 Yan から Perak

州を経て北東のKelantan 州 Bachok に至る総延長 312km、各輸送能力が 200 万 BPD のパ

イプライン3 系列を段階的に敷設するとともに、Yan・Bachok・Kelantan 州 Jeli への、貯

蔵能力合計6,000 万バレル(最終的に 1.8 億バレルに拡張)の原油タンク建設、Yan・Bachok

に精製能力45 万 BPD の製油所を建設するとしていた。 Merapoh と Kedah 州政府は、Yan

Sungai Limau Hydrocarbon Hub(Sulihh)に精製能力 35 万 BPD の製油所を建設する

ことで合意し、韓国SKEC に発注する計画としていた。しかしながら、2012 年 5 月に Kedah

州知事は、同計画が大幅に遅れていることを認めた。同計画は国民戦線政権下にあっては、

Yan Petroleum Industrial Zone として推進されていたが、2008 年以降は、Sulihh 計画とし

て全マレーシア・イスラム党(PAS)の宣伝材料に近いものになっていたようで、これが遅

延の原因となった。2013 年に国民戦線が Kedah 州の政権に復帰すると、ZIPY 計画として

復活し、2014 年 4 月、計画再開に向け、中国能源華城実業投資有限公司(China Energy)

70%の権益を取得する契約に調印した。

そして2016 年 11 月、VR4U Power が出資する Konsortium Asia Petrohub(KAP)コン

ソーシアムが、Yan 開発プロジェクトを進めると発表した。KAP には中国の海南振戎能源

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コンプレックスと名付けられた新製油所を3 年程度で建設し、原油を中東・アフリカから 輸入し、石油製品を中国・日本・韓国・台湾に輸出しさらに、パイプラインや鉄道、居住 区も建設するとの計画とした。製油所はKedah 州だけではなく、パイプラインの東側終点 であるKelantan 州や隣国のタイを含め計 5 カ所での建設を検討する。 パキスタンGwadar から中国新疆へのパイプライン構想 パキスタンは、イラン国境に近い天然の良港、Gwadar の開発を進めているが、Gwadar は、鉄道や道路で中国の新疆ウイグル自治区に繋がる中国パキスタン経済回廊(CPEC) のパキスタン側の起点であり、中国は、重質原油を処理する製油所の建設や同製油所から 中国への石油製品の輸出を検討している。両国はかねてより、Gwadar を起点に中国新疆 に至る戦略的石油パイプラインを敷設し、マラッカ海峡を迂回するルートで中東原油を輸 送する構想を協議してきた。中国はGwadar 港の運営権(2015 年から 40 年間)を獲得し ており、一帯一路戦略を展開するうえで、港湾拡張や中東原油の輸入ターミナル・LNG タ ーミナル・パイプライン建設を検討するなど、Gwadar を、中東と中国を結ぶ一大エネル ギー回廊のハブと位置づけている。 4.先行したミャンマー・中国ガスパイプライン ミャンマーでは、1990 年代に Yadana・Yetagun 両天然ガス田が相次いで開発され、タ イ向けにパイプラインで天然ガスが供給されていたが、2000 年に韓国の大宇インターナシ ョナルが、有望な天然ガス鉱区である沖合A-1 鉱区の探査契約に調印した。 A-1 鉱区には、 インド国営ONGC Videsh・GAIL の 2 社もインドへの天然ガス供給源として関心を示し、

それぞれ20%と 10%の権益を獲得した。大宇連合は A-1 鉱区の Shwe・Shwe Phyu 両天然

ガス田の発見に成功し、続いて2004 年に権益を獲得した隣接する A-3 鉱区でも Mya 天然

ガス田を発見した。大宇が英Gaffney, Cline & Associates(GCA)から受け取った報告書

によれば、3 天然ガス田の原始埋蔵量は、韓国企業が発見した海外ガス田としては最大規 模の5.4 兆-9.1 兆 cf で、可採埋蔵量は 4.5 兆-7.7 兆 cf に達すると推定された。 A-1 鉱区の開発に中国勢は参加しておらず、当初、この天然ガス田を巡っては、生産し た天然ガスをLNG として輸出するのかパイプラインで輸出するのか、主要供給先として、 韓国とするのかパートナーとして参加しているインドとするのか、といったことが協議さ れた。インド向けパイプラインのルートも、海底ルートでインドへ向かうのか、陸上を北 上してインド北東部に向かうのか、バングラディシュを経由してインドに入るのかの3 案 が検討され、詳細FS を Snamprogetti に発注した。最終的には、ミャンマー・バングラデ ィシュ・インド3 国を跨ぐパイプライン建設に同意の方向で交渉が進んでいった。 しかし、2006 年 1 月になり、水面下で動いていた中国 CNPC が、ミャンマー政府と 201512 月に、A-1 天然ガス田から 30 年間、約 6 兆 5000 億 cf の天然ガス供給の覚書に調印 したことが明らかになった。こうした中国の動きに対し、インドや韓国は、ミャンマーが インドへの天然ガス販売を拒否しているわけではないとして、引き続き、インド向けパイ プライン計画の検討を進め、2016 年 2 月には、SUZ Tractebel を技術コンサルに指名した。

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表1.ミャンマー中国原油ガスパイプラインの進捗 しかし結局、ミャンマー当局は、2006 年 3 月に中国へのガスパイプライン計画を進める方 針を明らかにした。その後、ミャンマー・中国間のパイプライン建設の協議は着々と進み、 2007 年 1 月には、原油パイプラインを含めた基幹パイプライン敷設に向けた FS の実施で 合意した。さらに同年3 月、ミャンマー政府は、A-1・A-3 両天然ガス田で生産する天然ガ スの全量を中国に売却する方針を固めたことが明らかになり、インドへの供給計画は完全 に消滅した。

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こうしたミャンマー政府の決定を受けて、大宇は中国と組むことを選択し、2008 年 5 月

の李明博大統領訪中の際、CNPC との間で中国へのパイプライン敷設による天然ガス輸送

に合意した。また、インド勢も参加を表明した。同パイプラインの権益比率は、CNPC が

50.9%と過半を獲得し、MOGE が 7.37%、大宇が 25.04%、ONGC が 8.35%、GAIL と Kogas

が各4.17%を獲得した。

同パイプラインは2013 年 6 月に完成し、同年 10 月に幹線ルートが操業を開始した。同

パイプラインの天然ガス輸送能力は120 億 m3/年、総延長はミャンマー区間が 793km、中

国区間が1,727km の計 2.520km で、ミャンマーRakhine 州 Kyaukpyu を起点に Mandalay

などを経て雲南省瑞麗市の58 号境界石から中国に入り、貴州省安順、貴陽、都匀、広西自 治区の河池、柳州を経て貴港に至る。幹線のラインパイプは口径1,016mm、圧力 10MPa、 全線でX70/X80 級鋼管が使用された。天然ガスの販売価格は 7.72 ドル/mBtu。 同パイプラインと西気東輸は1,620km の中貴(寧夏自治区中衛–貴州省貴陽)パイプラ インを通じて繋がり、天然ガスを相互に融通することが可能となっている。 中貴ラインは、 寧夏、甘粛、陝西、四川、重慶、貴州を経由して貴陽市に至り、天然ガスの輸送能力は150m3/年。また、重慶両江新区の相国寺に西南地区初の地下天然ガス貯蔵設備が建設され た。ここに、新疆ガス区、長慶ガス区、四川ガス区ともリンクした、中国の天然ガスパイ プライン網の基本が完成した。 5.ミャンマー中国原油パイプライン 中国は、マラッカ海峡を迂回するため、ミャンマーから中国西南地区に原油をパイプラ イン輸送することを計画し、2005 年 7 月にミャンマー政府と原油パイプライン建設の覚書 に調印して計画がスタートした。これと並行して、天然ガスパイプラインも建設すること になり、2007 年 1 月に CNPC と MOGE が、原油/天然ガスパイプライン(中緬原油和天 然気管道)建設のFS 実施で合意した。原油の輸送能力は 2,200 万トン/年(当初は 1,200 万トン/年で稼働開始)。2009 年 6 月に、CNPC とミャンマーのエネルギー省が契約に調 印し、10 月に、両社が原油パイプライン権利・義務協定に調印して、CNPC 傘下の東南亜 原油管道有限公司(SEAOP)が原油パイプラインを建設・運営することになった。CNPC が50.9%と MOGE が 49.1%を出資する合弁事業として運営されている。 2010 年 6 月、国交樹立 60 年記念式典に参加した温家宝首相が、原油/天然ガスパイプラ インの着工式に出席した。原油パイプラインはミャンマー国内が延長771km で、西海岸の

Kyaukryu 港(Maday 島)を起点に、Rakhine 州、Magway 管区、Mandalay 管区、Shan

州を経て雲南省瑞麗に至る。CNPC は Maday 島に 30 万トンの超大型タンカーからの原油 積卸埠頭と60 万 m3の貯蔵施設を建設し、パイプラインが通過する中部のMandalay 近郊 では製油所建設も計画している。ミャンマーは1,381 万ドル/年、原油 1 トンあたり 1 ドル の使用料を受けとる。中国区間における原油パイプラインは延長 1,632km で、2010 年 9 月に雲南省安寧(昆明)で建設工事がスタートした。 これに伴い、PetroChina は雲南製油所を建設することとし、サウジアラビア Aramco が 2011 年 3 月に同製油所建設に参画するとともに、同製油所向け原油供給の長期契約にも調 印した。また、安寧で生産した石油製品を輸送する石油製品パイプラインの建設も進めら

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れている。 同原油パイプラインは、2015 年1 月28 日に試験操業がスタートし記念式典が開催され、 同24 日には Maday 島の Myanmarese 港深海ターミナルに 30 万トンのタンカーが入港し て原油を受け入れ、30 日に開港式典が行われた。 しかし、同パイプラインの操業開始は2017 年 4 月まで、大きくずれ込むこととなった。 ここ数年、中国とミャンマーの協力関係に秋風が吹き始めたといわれ、水力発電所の建設 凍結とともに、この原油パイプラインの稼動が遅れていることが、その兆候とされること もあった。ミャンマーは同パイプラインの操業にあたって、通過料金のほかに原油に対す る5%の税を要求したとされ、これに反対する CNPC とミャンマー財務省との間で、何度 か交渉が行われたが、決着しなかったという。 中国としては、遅れていた雲南製油所が完成したこと、さらになによりも一帯一路サミ ットを控え、ベンガル湾とインド洋を結合する象徴的な同プロジェクトをぜひとも操業さ せておきたいと考えるのは当然のことである。また、スー・チー氏率いる現政権も、中国 の力が必要になることは十分に理解しており、政権発足後に最初の外相会談の相手は中国 を選んだ。 ティン・チョー大統領の訪中の際、輸送契約への調印が行われ、4 月 10 日から同パイプ ラインが正式に稼動を開始し、初の原油が、5月19日に雲南省瑞麗市から中国に到着した。 図4.ミャンマーからの原油/ガスパイプラインと中国国内ルート

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6.雲南製油所の建設

原油パイプラインの操業開始により、PetroChina、サウジアラビア国営 Saudi Aramco、

雲天化集団有限公司の合弁会社である中石油雲南石化有限公司(PetroChina Yunnan

Petrochemical Company Limited)の建設した製油所も、6 月から 8 月にかけて各精製ユニ ットの試運転を行ない、年末までに本格操業に入ることになった。

中石油雲南石化公司へPetroChina が 51%、Saudi Aramco が 39%、雲天化集団有限公司

10%を出資し、昆明市安寧にミャンマー原油パイプラインで輸送される軽質/中質原油 (クウェート原油50%、サウジの軽質油と中質油が各25%)を処理する製油所を建設した。 同製油所建設は、2012 年 6 月に環境保護部が環境影響調査を、2013 年 1 月に NDRC が FS を認可した。その際の原油処理能力は 1,000 万トン/年で、二次処理設備は、残油接触 流動分解設備(RFCCU、330 万トン/年)、連続触媒再生式接触改質設備(CCRU、200 万トン/年)、重質軽油水素化分解設備(180 万トン/年)、残油水素化脱硫設備(400 万 トン/年)、180 万 t/y のナフサ水素化精製設備(180 万トン/年)、FCC ガソリン水素化 精製設備(120 万トン/年)、ジェット燃料水素化精製設備(40 万トン/年)、軽油水素化 精製設備(380 万トン/年)、ガス分離設備(40 万トン/年)、MTBE 設備(6 万トン/年)、 硫黄回収設備(SRU、27 万トン/年)、芳香族抽出設備(30 万トン/年)、異性化設備(20 万トン/年)、の水素製造(12 万 m3/h)と水素精製設備(PSA 法、10 万 m3/h)、ポリ プロピレンプラント(PP、15 万トン/年)からなる。 同プロジェクトは順調に進むとみられていたが、2013 年 5 月に同製油所がパラキシレンPX)を生産するのではないかという懸念から、激しい反対運動が起きた。これに対して、 雲南石化公司の胡兢克社長が会見し、同製油所は、石油製品を生産する燃料型製油所であ り、PX を生産する計画はないと明言し、同プロジェクトの計画に関する環境影響報告書 と規制当局からの認可回答文書を公開した。これにより反対運動は沈静化し、雲南石化は 7 月から建設に着手した。 その後、2014 年 4 月になり、PetroChina と安寧市は、同製油所で生産する石油製品を国 五(EURO-Ⅴ相当)規格とするために、建設中の精製ユニットを最適化する必要があると し、原油処理能力を1,000 万トン/年から 1,300 万トン/年に引き上げ、FCC ガソリンエー テル化設備の新設や、RFCCU と残油水素化脱硫設備を除く二次処理設備の能力の引上げ、 さらに減圧残油など残油有効利用のためディレードコーカー(DCU)追加などの計画変更 に関する報告書を発表した。 同報告では、当初計画より生産量を引上げ、ガソリン 335.4 万トン/年、ジェット燃料 150 万トン/年、軽油を 547.1 万トン/年、ベンゼン 12.8 万トン/ 年、混合キシレン53.1 万トン/年、LPG44.9 万トン/年、プロピレン 4.3 万トン/年、硫黄 31 万トン/年、石油コークス 29.7 万トン/年に修正した。二次処理設備は、RFCCU と残油 水素化脱硫設備以外は、CCRU 240 万トン/年、HCU210 万トン/年、FCC ガソリン水素 化精製設備 140 万トン/年、ジェット燃料水素化精製設備 140 万トン/年、軽油水素化精 製設備 460 万トン/年、ガス分離設備 55 万トン/年、MTBE 設備 8 万トン/年、SRU 12 万トン/年が 2 基、6 万トン/年が 2 基、芳香族抽出設備 70 万トン/年、異性化設備 70 万 トン/年、水素製造 17 万 m3/h、水素精製設備 11 万 m3/h に引き上げられ、FCC ガソリ ンエーテル化設備(50 万トン/年)と DCU(120 万トン/年)が追加された。

(12)

表2. 雲南製油所の概要

(13)

この国五対応の計画変更に対し、2015 年 9 月に環境保護部から環境影響報告と異なる設

計を行ったとの指摘を受け、建設工事が一時中止されたため、2015 年内とされていた完成

はさらに遅延して2016 年 7 月になった。

各ユニットのうち、重質軽油/ナフサ水素化精製および CCRU/芳香族抽出までの一貫設

備にはHoneywell UOP、残油脱硫設備には Chevron Lummus、硫黄回収には Technip の

技術を導入した。また、エンジニアリングは、中国石油集団東北煉化工程公司(CNPCNE) 吉林設計院、寰球化工工程公司(HQCEC)などが実施した。 また、PP プラント(15 万トン/年)は、出資者である雲天化集団の設立した雲南雲天化石 化有限公司が、W.R. Grace(Dow Chemical から買収)からの技術ライセンスを受けて建 設した。 7.雲南省石油製品パイプライン 雲南製油所建設に伴い、PetroChina は雲南省に 3 系列の石油製品パイプラインを建設す る計画を進めている。 北東(安寧-昆明-曲靖)、北西(安寧-楚雄-大理-保山)、南方(安寧-玉溪-蒙自-文山)3 ルートの石油製品パイプライン建設が計画され、うち、北東ルートは 2017 年 3 月に全 線が通じた。北東ルートは総延長226.8km で、安寧市を起点に安寧-昆明-曲靖を結ぶ。支 線として昆明市尋甸県の昆明分輸センターを起点に昆明分輸終点センターまでの81km を 建設中。 北西(安寧-楚雄-大理-保山)、南方(安寧-玉溪-蒙自-文山)と各ルートの支線建設も進 んでいる。北西ラインは総延長486km、支線として大理市祥雲県の大理分輸センターを起 点に麗江市則古村の麗江終点センターまでの総延長215km を建設する。 南方ラインは、総延長 515km、支線として玉溪分油センターを起点に、玉溪-峨山-元江-墨江-寧洱-を経て普洱終点センターまでの 310km を建設する。 なお、この地域では、Sinopec も西南石油製品パイプライン建設を進めており、第 1 期 として広東省茂名から雲南省昆明に至る幹線(総延長1,740km)と、広西自治区黎塘市か ら南寧市に至る支線を2006 年に建設した。これに続いて、広西壮族自治区の北海分公司か ら百色市を経て昆明市までの延長700km の石油製品パイプラインを 2016 年 6 月から稼働 しており、この地域での石油製品販売を巡って競合が激化するとみられる。 8.重慶製油所 雲南省を含め重慶市、貴州省など西南部の内陸には大型製油所が無いが、PetroChina は ミャンマー原油パイプラインの最終地点を重慶市としており、当初は重慶長寿化工園区に 製油所を建設する計画としていた。 同製油所建設計画は、2007 年 4 月に重慶市が発表し、7 月に PetroChina の劉宏斌副総裁 が長寿化工園区に建設すると発表したもので、原油処理能力は1,000 万トン/年。生産した 石油製品(500 万-650 万トン/年)は、万州地区に建設する貯蔵ターミナルに貯蔵し、重慶市 のほか四川、湖南、湖北など長江沿いの各省で販売する。このため、達州−長寿−忠県−湖

(14)

北を結ぶ延長200km の石油製品パイプラインも建設する。 重慶長寿化工園区は、重慶市中心部から52km 離れた長江北岸の長寿区西部にあり、面 積15km2と長江上流地域では最大、中国全土でも最大級の天然ガス化学工業区である。現 在、四川ビニロン廠、揚子アセチル化工公司、重慶化医集団・長寿化工有限責任公司、長 風化工廠などがビニロン、酢酸、クロロプレンゴム、カ性ソーダなどを生産している。 9.ミャンマー国内の Dawei 製油所計画

ミャンマーの Tanintharyi 管区 Dawei 経済特別区で、中国珠海振戎公司(Zhuhai

Zhenrong)傘下の広東振戎能源有限公司(Guangdong Zhenrong Energy)が、製油所建

設プロジェクトを計画しており、2016 年 4 月にミャンマー投資委員会(MIC)が承認した。

同社は、2014 年 11 月に同事業について中国 NDRC の承認を取得、2015 年 1 月にミャン

マー政府に事業認可を申請した。

同事業は、中国の推進する一帯一路戦略の一環で、広東振戎がミャンマー国防省系企業

のミャンマー連邦経済特別会社(UMEHL:The Union of Myanmar Economic Holdings

Limited)および、民間企業の Htoo Group、ミャンマー・エネルギー省系の Yangon Engineering Group とともに進めている。事業権益は広東振戎が 70%を保有している。 2011 年の覚書調印当初は 2015 年内の完成を目指していたが、環境問題の懸念から一部 で反対運動が起きるなどしたこともあり、遅延していた。原油処理能力は 500 万トン/年 で、製品グレードは中国の国四(Euro IV 相当)規格を満たし、製品はミャンマー市場に 供給するとしている。 <参考資料> 中国の石油産業と石油化学工業 各年版(東西貿易通信社)

East & West Report 各号(東西貿易通信社)

以上

本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析

したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected]

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本調査は経済産業省の「平成29年度石油精製に係る諸外国における技術動向・規制動向等の調査・分析事業」 としてJPEC が実施しています。

表 1.ミャンマー中国原油ガスパイプラインの進捗  しかし結局、ミャンマー当局は、 2006 年 3 月に中国へのガスパイプライン計画を進める方 針を明らかにした。その後、ミャンマー・中国間のパイプライン建設の協議は着々と進み、 2007 年 1 月には、原油パイプラインを含めた基幹パイプライン敷設に向けた FS の実施で 合意した。さらに同年 3 月、ミャンマー政府は、A-1・A-3 両天然ガス田で生産する天然ガ スの全量を中国に売却する方針を固めたことが明らかになり、インドへの供給計画は完全 に消滅した
図 5.  雲南製油所の精製ユニット構成

参照

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