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技術科における材料力学の取扱いについて

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(1)

技術科における材料力学の取扱いについて

β

 技術研究室片 岡

(1968年10月30日受理)

1. 緒 言

 中学校の技術科の教材の取扱い,並びに指導面においては,材料力学(Strength of Materials)的考察,頂目は殆ど無視されていると言っても過言ではない。しかし近代技 術においてはその研究,設計,生産の過程において常に材料力学的考察,計算及び実験を 繰返して合理的設計,機能的設計,安全性の確保,耐久力の向上,材料の節減に最大限の 注意を払っていることを考えれば,技術科の目標からいって材料力学的処理方法,考え方 を何等かの方法で指導面に反映させなければならぬことは当然すぎることであると思う。

今度の学習指導要領の改訂により当技術科の目標が生産技術より生活技術にその重点が移 されると聞くが,それでも尚その必要性は決して減るものではない。

 ただ授業時数の少いこと,製図・製作,操作,運転などに重点が向けられて理論的な面が 軽視され,また力学的考察が中学生にはや\難解なものと考えられ勝ちなことに起因する と思うが,理科においても更に一層深く取上げると同時に,技術科の設計,製作,操作の実 践的活動を通して教授すればよく理解もできるし,また興味も湧いてくるものと思われる。

 以上の観点より技術科学習の面で材料力学的考察の対象となる部分,およびその取扱い 方,取扱いの程度について若干の考察を試みた。

2.材料力学のうち教材として取上げるのが適当と思われる部門

(1)荷重と応力と歪み

 物体に外力すなわち荷重 (load) が働けば,物体は荷重に応じて変形し,同時に物体 内部には外力に抵抗して,これと大いさ等しく方向反対の抵抗力を生ずる。この抵抗力の 単位面積当りの大きさが応力(stress)と呼ばれ,それに伴って起る単位長さ当りの変形 が歪み(strain)である。通常応力はhg/cm 2,んg/msw 2で表わされ,歪みはnon−dimension のものである。われわれが日常取扱っている物体は木材,金属,流体を問わず,すべて外 力を受ければ必ず材料内部に応力と歪みを生ずる。この応力と歪みがその使用材料あるい は機構上の限界を越えれば材料の永久変形,破断となり人命にも関する重大な災害を及ぼ

(2)

すことがある。非常に進歩した近代技術において極めて安全と思われる機械類が屡U破壊 して貴重な人命を失う事件の内にはこの材料内部の強度上の欠陥,すなわち材料節約,コ スト低減を計る余り弱い材料,過少寸法材料の使用に起因することがまれではない。

 この材料内の応力の値は極めて複雑な計算を必要とすることもあるが,また一方極めて 簡単に中学生にも計算出来る場合もある。義務教育の段階においてもこの近代技術の中に ひそむ危険を知る上からも,また安全教育,人命尊重の立場からもこの応力と歪みという 概念を体得させる機会を持ちたいものである。今盛んにキャンペーンされている交通安全

だけが安全教育ではない。

(2) 応力の種類

 (a)引張応力(tensile stress)

 引張荷重が物体に働くとき物体内部に発生する応力である。これは引張荷重をそれを受 持つ材料の荷重方向に垂直な断面積で割れば簡単に算出される値である。そしてその材料 が耐え得る最大応力,すなわち材料に引張荷重を与えて破断に至るまでの最大荷重を元の 断面積で除した値がその材料の引張強さである。この引張強さの大小によって主としてそ の材料の強さを表わしている。従ってこの引張強さに比べてわれわれが今使用している機 械,家具などの各構成部分にどの位の引張応力が作用しているかを知ることによりそのも

のの安全度の大小を知り得るわけで極めて重要な意義をもつものである。

 (b)圧縮応力(compressive stress)

引張と反対に物体に圧縮力を加えたときその材料内部に発生する応力でその大きさの表示 方法は引張応力と同様である。鋼の如く引張に対しても圧縮に対しても殆ど同じ強さを示 す材料も多いが,中には鋳鉄,コンクリート,石,煉瓦の如く圧縮には強いが引張に対し ては極めて弱い材料も少くない。適切な材料を選ぶことの必要な所以である。鉄筋コンク

リートでは引張力は主として鉄筋が受持ち,圧縮力は主としてコンクリートに受持たせて いるのはそのよい例である。

 (c)勇断応力(shearing stress)

 これは前二者とはちがい,物体を横に断ち切ろうとするときに発生する応力である。即 ちリベットを両方の板から引張るときリベットの軸に垂直な方向に発生する応力,或はプ

レスで板金を打抜くときその板金内に発生する応力である。強さの表示方法は荷重をその 断ち切られようとする部分の面積で除した値で示される。荷重の方向とそれに耐える面と が同じ方向なのでこれを接線応力(tangential stress)とも言う。これに対して(a)(b)は 荷重方向と面とが垂直なので(a)(b)合せて垂直応力(normal stress)ということもある。

 (d)曲げ応力(bending stress)

(3)

 曲げの力,すなわち曲げモーメントを受ける棒の横断面においては,曲げの内側には断 面に垂直な方向に圧縮応力,外側には引張応力を生じ曲げモーメントに抵抗する。従って 本質的には引張及び圧縮応力と見られるがその応力の分布は一様でなく,中心よりの距離 に比例して外側に行く程大きくなっているので単純に曲げ応力の値を出すことは出来な い。即ち棒に働く曲げモーメントをMkg on,その棒の断面の形状によって定まる断面係数

(modu1us of section)をZ cm 3とすれば最大曲げ応力は断面の最外側で起り,その大きさ σkg/cfi 1よσ=M/Zで計算される。従って同じ曲げモーメントMを受けても棒の断面の形状 を工夫して断面係数Zの大きな形にすれば材料内部に発生する曲げ応力は少くてすむわけ である。断面係数Zを大きくするには同じ断面積,従って同じ量の材料を用いたとして,

丸棒よりは中空丸棒,正方形断面のものより縦長の長方形断面,或は適当な形のアングル 材,更にはアングル材の組合せとした方が遙に大きく,大きな曲げモーメントに耐えられ るわけである。これらの断面係数の計算,或は曲げモーメントを断面係数で除した値が曲 げ応力になるのは何故かということは中学生の段階では理解出来ないかも知れないが直観 的には十分知識として生徒に定着させ得るものと考えられる。断面係数Zの大きい形にす

るには一般的に言って曲げの中立軸より遠い距離に断面積の大部分があった方がよい。

1形鋼,山形鋼,みぞ形鋼,T形鋼などの形鋼,及びこれらの組合せのものが曲げに対して強 さを発揮し同時に材料の節減にもなるわけである。またはり(beam)として用いたときその 擁みについても触れるべきと思う。断面係数Zの大きいもの程擁みは少く(厳密には断面二 次モーメントに反比例する),更に支点の支持方法によって異る。例えば両端支持梁におけ

る中央部の擁みが両端固定梁の中央部の擁みの4倍にも達することは是非触れておき度い 事柄である。例えば木材加工製品の梁においては前者が釘止め後者がほぞ継手に相当する。

 (e)振り応力(torsional stress)

 棒に振り作用が働けばその横断面に沿って,外力の擬りの方向と反対方向に振り応力が 生ずる。本質的には勇断応力と同じで,断面の接線方向に働くがその大きさの分布は一様 でなく,その大きさは棒の中心線よりの距離に比例し外周で最大となる。この振り応力の 表示は擬りモーメント(トルク)をTな卿,極断面係数をZpon 3とすれば,振り応力τd=

T/Z.hg/diで計算される。曲げ応力と同じように同じ振りモーメントに対し,大きな極 断面係をもつ形状にしてやれば発生擦り応力も少くてすむ。それだけ安全性,耐久性も増 大するわけである。それには(d)の場合と同様に中心軸より遠距離のところに断面積の多い もの程大きなZpをもつ。例えば実体軸より中空軸にした方がZpが大きく,従って発生振 り応力が少く,振れ角も少くてすむ。自動車や船舶のプロペラ軸を通して是非触れたいも

のである。

(4)

 以上5種類の応力のうち1種類だけが働く場合を単純応力(simple stress)といい,こ れらが2種類以上が同時に働く場合の応力を組合せ応力(compound stress)という。後 者の例としてフックに働く引張応力と曲げ応力,柱に働く圧縮応力と曲げ応力,梁に働く 曲げ応力と勇断応力,伝動軸やクランク軸に働く曲げ応力と振り応力などがあげられる。

技術科で製作したり,操作,分解,組立などをするものには必ず上記5種類の応力が働く はずである。それらの授業の際この応力に対する考察を取入れるならばそれだけ思考力の 向上,安全性への関心を促すことが出来るであろう。

(5)弾性限度(elastic Iimit)

 金属は厳密に言えばすべて完全な弾性体ではなく,荷重が相当小さくても,これを除去 したときも完全には元の長さには戻らず極く僅かの永久歪み(permanent set)が残る。し かしこの永久歪みが極めて小である場合には実用上完全な弾性体と見なして差支えない。

通常初めの長さの0.03%の永久歪みの起る応力を弾1生限度としている。弾性限度以下の応 力ではフックの法則が成立することを理科でもコイルばね,板ばねを例として取上げてい るので技術科では一寸ふれる程度でよいであろう。しかしコイルばね,板ばねの外にうず 巻きばね,振りばね,たけの子ばねが広く利用されていること,更には空気ばねが用いら れていることにも触れたい。

(4) 塑性(p!asticity)

 物体から外力を取去っても元の状態に戻らない性質が塑性であるが理科でも取上げられ ているものの,定義を述べているだけで不十分のように思われる。工業技術として塑性力 学は戦後著しい進歩を遂げ学問分野としても一重要部門をなしている事実を取上げねばな らない。単にそういう性質があるというだけでなく,塑性加工として積極的に応用されて いる事実はどこかの部門で教えられねばならぬ。即ち,鍛造加工,圧延加工,引抜加工,管 材加工,押出し加工,冷間加工,プレス加工,転造加工などとして応用され,4れらの塑性 加工製品は日常生活の必需品としても身近に多くあることを認識させなければならない。

(5)荷重の種類と安全率(factor of safety)

 物体に作用する外力がすなわち荷重(10ad)であり,その動的状態によってつぎのよ うに分類されている。

静荷重(dead load)

繰返荷重(repeated Ioad)

交番荷重(altemated load)

衝撃荷重(impact Ioad)

移動荷重(travelled Ioad)

(5)

また作用点の状態により

    {

     L 集中荷重(concentrated Ioad)

     2.分布荷重(distributed Ioad)

 同じ大きさの外力でもその作用状態により,材料に対しては大いに異なった配慮を払わ ねばならぬ。設計段階においては先ずその部分に作用する荷重を計算または推定し,これ を用いて与えられた形状寸法に対して設計応力adを求め一方材料の許容応力(allowable stress)a・1を設定したときOdi≦σ。1でなければならぬ。これが満たされなければ寸法形 状は変更されなければならない。ここで許容応力とはその材料に対して安全と考えられる 最大応力,更に厳密な表現をすれば与えられた部材に対して最も危険と思われる部分が破 壊することなく安全に加え得る最大の応力である。そして材料の最大強さ(基準強さ)を σ・とするとき,σ,/σ。1= Sが安全率と呼ばれる値である。基準強さの取り方は材料の種類 によって異るが鋼にあっては降伏点(yielding point),ぜい性材料にあっては引張強さ を取る。許容応力は基準強さより遙に小さく取るべきことは勿論であるが,その割合すな わち安全率をいくらに選ぶべきかは設計者の適切な裁量に侯たねばならないがその要点は

荷重の種類 材料の種類 使用の目的

使用中における周囲の状況 設計および工作の精粗

などであって通常第1項,第2項によって決定する場合が多いが,3,4,5に加えて不 慮の事情変化も考え合せて十分高い安全率を考えるべきである。安全率の標準値は次の通

りである。

荷董〉   の種類

全 率

静荷重  鋳鉄,もろい合金類

1    鋼

i木     材

 コンクリート,石材,煉瓦

E

l____       __

4360

動荷重 6〜10

5〜 8

8〜12 15〜20

衝撃荷重

10〜15 9〜12 12〜20

 日本の製品が昔不評をかった原因の一つはコスト低下を計る余り安全率を無視し,これ を切りつめ粗悪材料を使用したり,材料節約に専念したことがあげられている。また最近

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の災害事故の中にも標準安全率を無視した設計に基づく場合が少くない。技術者が設計す るに当っては勿論,その使用者もその製品の美観,性能,効率,コストばかりでなく安全 率ということを常に念頭におかねばならぬことを技術科学習を通して中学生に認識させる

ことは広い意味の安全教育,人命尊重の教育にもつながる重要な事項である。

(6)材料の硬さ(hardness)

 材料力学という立場からはや\離れるが他の項目同様に同じ材料の強さのいう面から取 上げるべき項目であろう。

 理科の鉱物で出てくるモースの硬さ1〜10がただ硬さの順序を表わす数値であり,硬さ 10のダイヤモンドが硬さ5のリンカイ石の2倍のかたさをもつというものではなく,すな わちこの数値は比例関係の直線的なものでないことを先ず認識させ,このような硬さの基 準は技術部門では全く不十分な数値であることを体得させる必要がある。

 つぎに工学部門で用いられている最も基本的な硬さであるブリネル硬さ (Brinel!har−

dness)について学ばせ更に時間的に許せば簡単な自作装置により実際に生徒に測定させ たいものである。すなわち直径DmmO)鋼球をある荷重P勾で材料表面に押付けたとき,材 料表面に生じたくぼみの表面積Fη㎡をくぼみの直径dnuを測定することによりHB=P/F

で測定させる。

    恥一景㍉言h一πD(D一篇,一.−d、)−

       h:くぼみの深さ ma

 勿論これでは鋼より硬いものには適用出来ないから,ダ イヤモンド円錐の圧子でくぼみの表面積を深さhより測定 する形式のロックウェル硬さ(Rockwell hard ness), ダ

イヤモンドの4角錐の圧子をもち,菱形のくぼみの表面積をその対角線の長さから求めて 測定するヴィッカース硬さ(Vickers hardness)などが用いられること,並びに先端に 丸味をつけたダイヤモンドをもつハンマをある一定の高さから材料表面に落下させ,その

とき反擾高さの大小により硬さを測定するシ。ア硬さ(Shore hardness)などが用いら れていることにも触れておけば更に一段と興味も深まることと思う。また木材の硬さもブ

リネル硬さで比較されることを知らせ,各種材料につき実測させれば材料の性質を体得す る意味で極めて有意義のことと思われる。更に軸頸,歯車,カムなどの表面のみ硬さを高 め心部には強靱性(toughness)をもたせておく所謂,表面硬化法(case hardening)

が盛んに用いられていることも教える必要があろう。

(7)材料の疲れ(fatigue of materials)

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 材料に外力を作用せしめたとき内部に発生する応力がその材料の耐え得る最大応力を越 えれば材料は破壊される。しかし最大応力以下の応力でも応力を取去ったり,働かせたり 所謂繰返し作用をさせると遂には材料は破壊される。更に一層小さな応力で繰返せば前よ

り多くの回数で材料は破壊される。この現象が材料の疲れ(fatigue)である。繰返し応 力を順に小さくして行き,その各々の破壊に至るまでの回数を測定すれば遂には殆ど無限 大の回数で疲れによる破壊現象の起らない最大の応力が求められる。

この応力を疲れ限度(fatigue limit)とよんでいる。繰返し荷重のかかる部材に対して は静的強度よりもこの疲れ限度を重視しなければならぬ。この疲れ限度の値は同一材料に 対しても加わる荷重の種類(引張,曲げ,振りなど)によっても異なるので荷重の種類を 見究めねばならない。また断面形状の急変部,例えば段付き部,ピン穴,キー溝などの存 在により疲れ限度はひどく低下する。一方疲れ限度の向上の方法として表面のみを硬化さ せるcase hardeningはきわめて有効な方法である。鋼にあっては107回繰返し荷重を与 えても破壊しないときは更に繰返し荷重を継続しても破壊することはほとんどないが,軽 合金類の疲れ試験の結果では,はっきりした疲れ限度を示さず応力を小さくすればする程 耐えうる回数が増加する。

 最近の航空機,鉄道車輌,自動車など交通機関の事故の大半は運転者の不注意,気象条 件の急変によるが,中にはこの材料の疲れに起因するものも決して少くない。身近な問題 であるだけに中学時代に是非学習内容に入れたい項目である。

(8)応力集中(stress cocentration)

 材料断面の急激な変化のある点,例えば穴,切欠き,溝,キー溝,角肩,ねじなどの部 分には局部的に大きな応力が誘起される。この現象が応力集中と呼ばれるもので,機械部 分として避けられない場合が可成り多く,予め断面に変化のない場合の何倍位の応力が誘 起されるかを考慮して設計する必要がある。この割合は応力集中係数と呼ばれ3ぐらいの 値に達することもある。この応力集中と前記の疲れが重って思わぬ事故となることは技術 者のしばしば経験することで,人命事故にまで発展することが少くない。これと本質的に は同種であるが材料が腐食作用を受け乍ら高応力の繰返し作用を受けるときは材料の疲れ 限度が著しく低下される。これを腐食疲れという。ある実験によれば鋼が海水に浸って繰 返し応力を受けるとき疲れ限度は50%以上も低下するという。

(9)衝撃強さ(impact strength)

 材料の衝撃に対する抵抗力,すなわち粘り強さやもろさを判定する値で衝撃強さという。

実際には破壊に費された仕事,あるいはそのとき材料が吸収するエネルギを試験片断面積 で除した値で示し,これを衝撃値とよぶ。従ってこの値は応力とは次元が異なり勿刎卿2

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の単位をもつ。材料の粘り強さは引張試験における伸びや絞りあるいは仕事量から判断で きるが材料によっては普常は粘り強いが切欠きなどがあると著るしくもろくなるものもあ るのでこの数値が材料の粘り強さ,もろさを表わす基準となっている。これには試験機の 種類によりシャルピー衝撃値,アイゾット衝撃値の2種類がある。

 3.部門別および学年別による取扱い方

 設計・製図,木材加工,金属加工および機械の各部門毎に他教科とも関連させ乍らその 扱い方を考えてみよう。電気および栽培については少くとも中学校で取上げる範囲におい

ては取入れる余地がないと思われるので除外する。

(1) 設計・製図

 第1学年においては図面の読み取り方,表示方法,用具の使用法,基礎的製図方法の習 得が主目標となっているので材料力学はあまり関係がない。

 第2学年においては既に第1学年の木材加工部門において,本立,庭いすその他を製作 することになっているので当然考案設計の段階において機能,構造,材料の研究をしなけ ればならない。そのとき荷重の種類材料の強さ,硬さを取上げたい。従って第2学年の 設計・製図においては更に深い取上げ方をしたい。引張強さ,勢断強さ,圧縮強さ,曲げ 強さ,これに対応して引張応力,圧縮応力,勢断応力,曲げ応力,曲げに対する断面係数 に関すること(数値としてでなく断面係数の大きい形状の方が曲げに強いこと,断面係数 の大きな形状にするには中心線より遠くに多くの断面積をもつような形にすること,実体 丸棒と中空丸棒との比較,正方形断面と長方形断面との比較など),許容応力,安全率,

衝撃強さ,応力集中,硬さの測定比較などが教材として取上げらるべきである。

(2) 木材加工

 第1学年の木材加工の実習例としては本立,庭いすなどであるが前述の設計・製図の所 で述べたような材料力学考慮を習得させる必要がある。設計・製図部門と木材加工部門と 分けて並べたが現場では一貫して指導される場合が多いので何れの部門で扱ってもよいで あろう。ただ実物を対象として教えたい。

 第2学年の実習例としては簡単な机,腰掛などで,のみきざみやほぞつぎなどの工作法 を含むものが上げられている。これらのものはその工作法において第1学年のものより複 雑であるばかりでなく,材料力学的な考察も一層必要となってくる。特に木材においては 材料力学的に言って荷重の方向と繊維方向との関係によって強さが著るしく異ること,強 さの不均一性,含水率の変化による強さの変化,膨張,収縮,反りなど金属材料と可成り 異った材料力学的性質をもっていることをよく体得させると共にその対策を習得させる必

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要がある。取上げる内容としては(1)の第2学年の所で述べた事と重複するが引張応力,圧 縮応力,勢断応力,曲げ応力,断面係数,許容応力,安全率,応力集中,硬さ,衝撃値,

曲げの働らく梁の固定梁と自由支持梁との相違(これは木工製品で何故釘付けでなく重要 部分は各種のほぞ継手が使われたかに関連して)などであろう。

 尚われわれ日本人の住む家屋,家具類は大部分木造,木製であるので構造力学的な工夫 例えばすじかい,方杖,ひうち梁,ひうち土台,小屋組,梁,桁,柱などの力学的使用目 的,特質などの内容も理科教材と重複するかも知れないが是非ふれたい事柄である。

 (5)金属加工

 第1学年で取扱う材料はすずめっき鋼板,亜鉛めっき鋼板,黄銅板,銅板,アルミニウ ウム板の薄板金作業である。ちり取り,筆洗,角形容器などが実習例となっているので,

金属材料の種類によって,弾性限度の著しい相違,曲げ強さ,勢断強さ,硬さなどが学習 対象となろう。曲げによって生ずるそり,ひずみ,スプリングバック,最小曲げ半径,板取

りの方向など塑性力学的事柄が中心となる。尚現在現場では,銅板,黄銅板は高価なこと,

アルミニウム板はハンダ付けが困難なことなどの理由で,用いられる材料は殆どが亜鉛め っき鋼板であるが,最近日常生活の中にはアルミニウム製品と共にステーンレス鋼板加工 製品が急速に普及してきたので,生活技術を重視する意味においても加工し易い亜鉛めっ

き鋼板加工の後に両者の板金加工の教材を取入れる必要があろう。著しく強度の強いステ ーンレス鋼板を取扱うことは単一材料のみを取扱う場合に比べ,金属材料に対する認識を 高め,また興味をそSり同時に材料力学的関心を深める効果も大いに期待し得るものと思 われる。AI板加工としては塑性加工(例えばへら絞りによるコツプ製作)が適当であうろ。

 第2学年で取扱う材料は軟鋼板,軟鋼棒などを材料として,パス,ノギス,マイクロメ ータ,トースカン,Vブロックなどの測定具を用い,切断,穴あけ,やすりがけ,旋削,

研削,ねじ切りなどをボール盤,旋盤,研削盤をを使用してブックエンド,ぶんちんを作 ることが例示されている。目標とするところは金属加工を通して考案設計の能力を高める と共に技術と生産との関係,生活の向上と技術の発展に努める態度を養うことにある。製 作するもの自体が極めて単純なものであるため,材料力学的考察の直接的対象となるのは 材料の勇断強さ,曲げ強さ,硬さ位である。間接的には切削理論が材料力学と関連する。

被削性は,切削抵抗,切削効率,仕上面のあらさなどの要素によって判断される。材料の 強さと被削性との関係は互に影響する要因,即ち切削速度,切込み,刃先角,すくい角,

逃げ角,切削剤等が複雑に影響し合うので完全な切削理論は確立されていないと言ってよ い。しかし材料の勇断角,刃物のすくい角が最も大きな影響をもつことから材料の勇断強 さが一番関連深いものと思われる。切削のしくみ(切削理論)を取上げる際単にすくい

(10)

角,逃げ角,刃先角などの双物の形状に関することだけでなく材料の勢断強さと関連して 勢断角も取げたい。一般に切粉の発生状況より見て勇断角の大きいもの程被削性は良いと 言える。またたがね作業,切断作業はその材料の勢断強さによってその作業の難易が決ま

ることは勿論で取上げる必要がある。

(4)機 械

 第2学年で取扱う機械実習例は自転車,裁縫ミシン,農業機械などでこれらを整備する のに必要な技術の基礎的事項を,取上げる機械に即して指導すると共に機械の材料,機械 要素について学習させることが目標とされている。特に材料力学的考察は取上げられてい ない。しかし機械の最も重要な使命は動力を発生させ,これを伝達させあるいは動力の形 態をかえて有効な仕事をさせることである。この目的達成には力学的考察がその根底にな ければならぬ。それが単に故障の点検,分解,組立,調整,洗浄,給油などの整備技能の 体得のみに終っては,科学技術に関する教養を高め近代技術に関する理解を与えるという 技術科本来の目標を達成することはできない。勿論材料力学的考察を離れても,整備実習

を通して機械のしくみ,動力の発生,伝達を知ることは出来るが,これらを構成する機械 要素の個々については,つねにそこに発生する応力を考えなければ機械として成立しない

ことを十分認識させる必要がある。

 各構成部品について取上げるのが適当と思われる主な事項を上げれば  引張応カ……チェーン,スポーク,引上げ棒,プレー一キのリンク,各種ボルト  曲げ応力・…・・上,下,立パイプ,前ホーク,バックホーク,クランク  断面係数・…・曲げ荷重をうけるすべての部品

 圧縮応カ……単純圧縮は殆どないが立パイプ

 擬り応力・…・・クランク軸,ハブ,コイルばね(以上すべて曲げとの連立応力)

 安全率・・…すべての部品に関連する。

 応力集中……上に同じ

 疲労……上に同じ

 第3学年で取上げる実習例は主として内燃機関の整備と操作運転に関する基礎的技術を 習得させるとともに,機械要素や機構に関す理解を深め,またこれらの学習を通して機械 技術の特性並びに機械の発達と生活の向上や産業の発展との関係を知らせ,作業を一層精 密,確実に進め,安全に留意する態度を養うことが目標とされている。内容として0う機械

の要素と機構,(イ)原動機の種類,(ウ)内燃機関の構造と作用,(X)潤滑油,(オ)故障の点検,(カ)

分解・組立・調整,㈲起動。運転・停止,(ク)洗浄・給油,(b)燃料,(コ)機械と生活や産業と

の関係の10項目に分れ,これを全部で25時間という短時間で授業することが標準とされて

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いるが豊富,多岐,複雑で生徒に定着させ,所期の目的を達することは中々至難の業であ る。今度の学習指導要領の改正で第3学年における35時間割当てられていた総合実習が省 かれるので若干の余猶が出来ると思われるが電気と共に技術料の核心とも言える部分であ るので十分の時間を取りたい。しかもこのモータリゼーションの時代にあって好むと好ま ざるに拘らずこの内燃機関に関する技術習得は義務教育時代に身につけさせ,近代技術に 対する親近感,関心を高め,積極的に取組む正しい態度を養うことは技術科の最重要目標

の一つである。

 材料力学的に見ても第2学年の教材である自転車やミシンに比べれば遙に過酷な荷重,

衝撃応力,繰返し応力,熱応力を受けるので取上げるべき部分も非常に多いが,中学生対 象として適当と思われるものについて以下列挙してみよう。内容が複雑であるので機械の 要素,部品毎に取上げることにする。

 ピストン……頭部平板の曲げ,熱応力,熱変形(スリットピストン), ピン穴部の補強        アンバストラットピストン)

 ピストンリング……曲げ応力(シリンダ壁面に一様な圧力で接触するために取られてい        る工夫の説明)

 ピストンピン…・曲げ応力,勇断応力

 連接棒……圧縮応力,曲げ応力,特に曲げ応力を少くするためH,1型断面として断        面係数の増大を計っていること,疲れ限度,衝撃強さ

 クランクシャフト……曲げ応力,振り応力,振り振動,応力集中,疲れ限度  シリンダヘッド……締付用ボルトにかかる引張応力,トルクレンチの必要な理由  吸込弁,排気弁……衝撃引張り応力,繰返し荷重,疲れ限度,硬さ

 カムおよびカム軸一一一…硬さ,振り応力,表面硬化

 スプリングma……バルブスプリングでは曲げ応力と挨り応力の連立応力,疲れによる破        壊

       板ばねでは曲げ応力,振りばねでは振り応力  歯車類……曲げ応力,応力集中,疲れ,表面硬化

 はずみ車……引張応力

 チェーン……引張応力,勢断応力

 4. 他教科特に理科教材との関連

 中学校理科では矛2学年,第1分野の「力と仕事」の単元において最後に「ものの変形 と力」, 「材料の強さ」などの題目で取扱われることに現行指導要領で決められている。

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内容は教科書によって幾分程度の差があるが,余りにも抽象的な説明に止まり,具体例,

数値的な取扱いが軽視されているように思える。弾性,塑性,フックの法則,材料の使い 方を略述しているにすぎず,他の物理的な内容,音,熱,光,電気において可成り深く,

定性的でなく定量的数値的取扱いをしているのに比較すれば,いかにもttつけたり とい った感じを受ける。「生活や産業の基礎となる自然科学的な事実や原理の理解を深め,こ れを活動する能力を伸ばし,さらに新しいものをつくり出そうとする態度を養う」という 理科教育の一つの目標から言っても更に程度を高めてほしい項目である。 材料力学的現 象,問題は身近かな日常生活に枚挙にいとまがない程数多く見られる。家屋建築,家具,

家庭機械,交通機械,運搬機械,どの部門においても材料力学配慮がなされ,それぞれの 機能,耐久性,安全性を計っているのに,義務教育の段階で何故古典的な光,音,熱,電 気などの純物理的内容にのみ重点をおくのか理解に苦しむ。今度の指導要領の改訂で,特 に理科では小学,申学を通じて内容を紋り応用面は省略する傾向であると聞くが,古典的 な理科内容のみでは新しいものを作り出そうとする創造性を高める上から言っても,また この科学技術時代に対応する態度を養う上から言っても欠けるところがないであろうか。

 材料力学的内容に関する項目として少くとも現在扱われているもの以外に,応力と歪 み,応力の種類とその表示法,安全率,材料の疲れ,応力集中などの項目を加えてはどう だろうか。それによって技術科教育の場面においても十分な教育目的が果せるであろう。

 5.結 語

 昭和37年に発足した技術家庭科は施設設備の不足,教員組織の急場しのぎの対策による 貧弱さなどのため,その教育効果が大いに懸念されたが,関係官庁や現場第一線に立つ教 員の努力により漸く軌道に乗り,その効果も徐々に現われようとしている。技術教育を通 しての人格の調和的発達という思想は古くからあり,諸外国では可成り以前から実施され ていたが,わが国においても歴史的社会的必然性の上に必修教科として発足したものであ

った。所謂職業予備教育としてでなく,普通教育としての技術教育,科学技術を専門家の 独占に終らしめず,真に民主的な社会を実現するためには国民ひとりひとりが一般的技術 的知性を持たねばならぬという発想からであり,科学技術時代といわれる現代において,

とくに強調されてくる。抽象的論理的思考が不得手で教室の授業に脱落しがちな生徒達 に,技術的実践的活動の場を与え,彼等をして生気あふれる学校生活を経験させ得たこと も一つの大きな収獲であったと言わねばならない。

 しかし普通教育としての技術教育は実質陶冶としての技術・技能の習得以外に形式陶冶 としての創造的思考力の育成という目標をもっている。ここに考察して来た材料力学は後

(13)

者の創造的思考力育成のための基礎的事項の一つとして考えたい。勿論材料力学的内容の すべてを網羅する必要はいささかもないが,少くとも本研究で取上げた事項は最低限の基 礎的事項として習得させ,能力陶治の基本的教材の一つとすべきものと考える。

      ABSTRACT

On the Treatment of Strength of Materials in Industrial Arts Education,

      Hisashi Kataoka

       (Faculty of Education, Ibaraki University)

  Strength of materials has been almost negrected in Industrial Arts education. But it is one

・fth・m・・t imp・・tant p・・b1・m・1・・ngi・ee・i・g. It i・apPli・d wid。1y, f。, i。,tan,e, t。 m。,hi。。

d・・ig…t・ength・a1・u1・ti・n, inve・tig・ti・n・f・af・ty,・avi・g・f m・t・・i。1, et。. Th。,ef。,e,

strength of mater三a!s must be treated in Industrial Arts education.

The c・・t・nt・f・t・ength・f m・t・・i・1・, whi・h m・・t b・t・e・t・d i・」uni・・high sch。。1。, and its extent are shown in this study. The content is consisted of stress and strain, kinds of stress

(t・n・i1・・t・ess…mp・e・si・e・t・e・・,・h・a・i・g・t・e・・, b・ndi・g・tress, t・rsi・nal。tress),。1。,ti。

1董mit・Plasti・ity・fact…f・af・ty,・11・w・bl・・t・ess, f・tig…fm。teri・1、,、t,ess c。ncent。ati。n

and hardness.

参照

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