幼稚園教育における教材をこう考える
松 丸令 子・久保田 江満子・山 路 純 子
(1982年10月31日受理)
1.は じ め に
幼稚園教育においては,「教材・教具」と言う言葉はなじみが薄いし,私共も敢えて使おうとは していない。それはなぜか一。
幼児期の発達は未分化であり,しかも感情面,社会性の面,知的な面,及び身体面などの側面は 互いに絡み合いながら総合的に発達すると言う事は今更申し述べるまでもない。また,子供はどん なに大人が大人の感覚で, これはよいもの、と選択して物や場を与えたとしても,興味や関心,
欲求がなければ見向こうともしない。従って,小学校教育のように一教科を窓口に,物や場を用意 して触れさせたり考えさせたりする事は適切であるとは言えない。すなわち,子供は,自分を取り 巻くすべてのもの(人的・物的),すべての場・機会にと言った,あらゆる環境との様々なかかわ
りによって成長して行くものである。言いかえれば,子供を取り巻くすべての環境,いえ,子供の 生活そのものが,教師側から言うなら教育の場であると共に教材であると言っても過言ではないと 思うのである。つまり,「教材・教具イコール生活・環境」なのである。
そこで,一つ念頭に置きたいこと,それは,あくまでも子供を主体にした考え方でありたいと言 う事である。子供が自分から動き出すことを待つ環境,いつ,いかなる時でも子供の状態に応じて 行ける環境,そして一人一人の育ちに合わせた環境でなければならない。それには,物的・人的・
更には自然現象・事象・社会事象と,いずれも固定され固定したものでなく動きのある環境・変化 する環境である事が望ましいわけである。
更に問題として浮かび上がって来る事は,吟,この時期の子供(子供たち)にどう対応して行 く事がよいのか.をとらえる教師の確かな目と判断力である。子供の育ちに合わせて変化させて行 く環境・子供と共に創り上げて行く環境こそが, 教材・教具。なのではないかと考えるのである。
下図に示したものは,子供と環境とのかかわりを子供の育ちを追ってとらえたものである。この 姿をベースに以下事例を通して述べて行くことにする。
一子供と環境とのかかわり一
3 歳 児 4 歳 児 5 歳 児
賦 「盆 専 ゆ傘 魯@ 教師 ノ
「竡P蜘
f
「季畢 審 「紫蝉教師㌢ ノ 教師㌢ ㈹ L ===教師の環境へのかかわ 友達 友連 り ・・教材観
友達A児
・児 uこ ひ_O ご
@゜、島 A児遊 恕鵡
←→ 直接的な強いかかわり 遊具 一ウ直接的なやや弱いかか
遊貝 ■■ゆ背後からの間接的なか かわり
2.子供の状態に応じた多様な環境
子供たちが出会う環境を,その時々の子供たちの状態に合わせて変えて行く事が大切である。子 供たちが今何を求めているのか……心の安定を得ようとしているのか,友達とかかわりたいと思っ ているのか,更に遊びを楽しくしようと試みているのか……各々の状態に応じた環境を用意するた
(1}心の安定を得させるために
入園した当初の子供たちは,自分の目の前に広がる環境との出会いに多かれ少なかれ不安感を抱 くものである。興味や関心が強く働き始め,不安な気持ちを断ち切って遊びに夢中になるまで,一 人一人の子供の状態を見守って対応して行かなければならない。どの子供がどんな遊びに喜んで取
り組むかについて教師は知る必要に迫られる。日々の活動する様子を基に室内に遊具を配置し,そ れらに取り組む子供たちにとって質的・量的に十分であるかどうかを確かめて行く。子供たちの行 動を見たり,つぶやきに耳を傾けながら必要と思われる遊具を加えて行くようにし,子供たちが好
きな遊びにたっぷりと浸れるようにし,遊ぶ事の楽しさを心に貯めこませて行くようにする。
一室内の配置図一
出入口
必要に応じてコーナーを作る ・蘂 90 Oままごとコーナー
チわる人数に合わせてコーナーをふやし
粘土コーナー ままごとコーナー たり用具を分けたりする。
油粘土 國 積。木。サ.棲獺
劒凵@ 惚〆ビニール製大型積み木
O粘土コーナー
s安定な状態にある子供を誘う。
n積み木コーナー
22 子供たちが乗って遊ぶ事の出来る大型の
㎝ 66㎝ 積み木を人数に合わせて2〜3セット用 意する。
絵本コーナー
∠乙△2㎝ O絵本コーナー
画 プラスチンク・組み木コーナー 不安定な子供をひざに乗せながら読んで
圖園日 △趣ク{詐1』
必要に応じて
聞かせる。
n組み木コーナー
齔l遊びをするうちに少しずつかかわり コーナーを作る が持てるようにさせて行く。
遊具を使って遊ぶ楽しさを本当に知り始める頃になると, 友達に邪魔されずとっぷりと浸り切っ て遊びたいと思うようになる。そのためには室内の遊びのコーナーをはっきりと位置づけて行く必 要が出て来る。活動量の程度に合わせて,動きの多い遊びは室内の中央に空間を広く取るようにし,
動きの少ない遊びは壁面を利用して位置づけて行くようにする。そのうち,子供たちは,教師に
「家を作って。」と要求して来る。この家は自分だけが入れるような,気小さな家.を意味している のであり,周囲を囲って欲しいと言う事を要求しているのである。この時期には,ままごとの柵や 木製のスタンドなどを使って子供たちの要求に応えて行くようにし,段ボール紙などで家の入口を 囲ったりして行く。子供たちは,時々その家から顔を出し,おもしろそうな物を見つけるとそれら を泊分の家、に運んで来ては,誰にも邪魔をされない状態の中でたっぷりと遊びの満足感に浸る。
こうした気家、は子供たちが次に友達を求めて行動するようになるまで遊びの拠点となり,職ふと
ころ、ともなる。次第に,この家には出入口や窓が作られ,他の活動とのかかわりを求めるように
なる。
(2)要求に即応してやるために
安定して遊ぶようになる頃,子供たちは友達の遊びに関心を示すようになって来る。おもしろそ うなお面を被っていたりすると,必ず「作って。」と要求して来る。そうした要求に即座に応えてや らなければ,遊びの楽しさを味わう機会を逸してしまう事にもなる。子供たちの心に芽生え始めた 意欲を大切に育てて行くために,教師は活動を予想した準備をして置かなければならない。
一材料の準備一
お面用の
ひも ベルト
J空箱
飼畢蝿 ● カッターE劉講1』ホッチキス
プ 平◎リ ア国
│◎歪
z乍 画用紙 を尭○△
◎ づ な紙いろいろ
拳 働 (教師用の用具入れ)
(材料ワゴン)
子供たちが,同じ物を身に着けて遊びながら友達とのかかわりを広げて行くようになる頃,教師 は用意した材料を使って手早く要求に応じて行く。子供たちは,各々にイメージを持って教師がど のような物を作り上げてくれるだろうかと言う期待を持って教師の手元を見つめている。「ウサギ ちゃんのお面作って。」「私のは赤い目で,笑っているウサギにして。」「耳の所にリボンを付けて。」
………q供の頭の大きさに合わせて予め作って置いたベルトに切り抜いた絵をジョイントで止めて 行く。今の段階では,教師に一方的に頼って作ってもらってはいるが,その貯め込みがいつの間に か自分でも作って見ようと言う姿へと変化して行く。これらを身に着けると,今まで「入れて。」と 何度頼んでも加えてもらえなかった遊びにもスムーズに入って行けるから不思議である。ままごと 遊びが,ウサギの家・パンダの家・恐竜の家・コウモリの家などと共通のイメージを持って遊びが 展開されて行くようになる。
一いろいろなお面一
〈製作過程〉
山の動物 恐竜の仲間 1 予め用意の冠台 水の中の動物
│. (多麹
ζ墾織2.画用紙に要求の絵を描き切り抜く。
3 1,2をジョイントで止 めて出来上がり。
1
(3)遊びやすくするために一遊具・用具の整理一
とっぷりと自分の遊びに浸っていた子供たちは,友達とのかかわりを求めて次第に動き始めるよ うになると,室内には遊具・用具が散れ,遊びにまとまりが無く雑然となって来る。この時期こそ,
今まで使っていた物,またこれからの展開に必要となって来るであろう物……と言った遊具・用具 の整理や見直しをして行かなければならない。まず,一人遊びに適していた小さな積み木やプロッ ク類を徐々に片付けて行く。友達とのかかわりを求めながらも,遊びがうまく行かないと友達に背 を向け逃避の場としてしまう子供が出て来てしまうからである。しかし,時期的には一人一人の発 達を見定めながら整理をして行くようにする。更に,友達とのかかわりが出来るようになり,共通 の遊びの場が持てるようになって来ると,今までのように遊具・用具の量が必要でなくなる。一つ の遊具・用具を仲間の友達と一緒に使うことの楽しさを覚えたからである。今,この子供たちの遊 びにはどの程度の量が必要かを常に考えて出し入れをして行くようにする。
子供たちの動きを追って行くと,物が散乱するにつれて活動も停滞して行くと言う様子を見る事 が多い。雑然とした中では思考もストップしてしまうのではないかと思われる。子供たちが始めは 喜んで取り組んでいた活動も,時間が経つと無人のコーナーと化してしまう事がある。この活動は,
その後再び戻って来る事がないと思われた時には,隅に寄せるなり片付けてしまうなどして,今高 まりを見せて展開している活動の方の場を広げて行くようにする。
また,同時に展開する遊びと遊びの間の区切りも大切な意味を持って来る。教師の眼から見てそ の境界が分らなくなる程に遊具が広がる時には,各々の遊びには行き詰まりが生じている時である。
雑然としている場は,誰でも足を踏み入れる事が許される事にもなり,いつの間にか,仲間として 相手をつなぎ止める力も弱まって来ているのである。
以上述べたように,一つ一つの活動を大切に育てて行くために,教師は絶えず整理をして行くよ うな環境作りを心掛けて行く必要がある。活動と活動の間に落ちているままごとの食べ物,捨てた 紙,基地ごっこで崩れた積み木……子供たちが,自分たちの手で整理しながら遊ぶようになるまで,
教師の手で整理し活動の展開を容易にさせて行くような配慮をして行かなければならない。
一活動の展開図一 3歳児・7月
9:00〜 10:00
△ふらふら
/ノワ\\ 麗藩難灘築 動物の家 製作コーナー
製作コーナー △①②
③⑦⑨ ,一 @④
蝋魂ブ金。,/謳△
9:20〜
(盤、、箏⑤
O積み木のコーナーでの遊びが大きく広がる。
\
厨鯉濁\溌冷ノ1ムバト蔽,臨歯③
ノ o基地がバスに変わり,海へ遠足に出かける ネど交わり合う姿が見られる。
Oままごとコーナーの子供がいなくなり活動 が停滞したため隅へ寄せる。
働友達関係を確かめ合うために
遊具・用具の量を減らして行く事によって,子供たちの間には新たな衝突の場を生み出す事にも なる。どうしても必要となる物が,少ししかない時にはどうしたら良いかと言う場に立たされる。
ある子供はそれを力つくで自分の物にしようとする。ある子供は,顔ではニッコリと笑顔を作り
「ゴメンネ。」と言って強引に自分の方に引き寄せてしまう。次第に「一緒に使おうよ。」と言う言葉 も聞かれるようにもなる。このように,量的に不足して来ると,子供たちは様々な知恵を働かせ,
自分が楽しく遊ぶための努力をするようになる。安定を得た後での遊具・用具の量的な減少は,友 達といかにかかわって行くかと言う葛藤の場を生み出す事にもなり,時期を見計い子供の心の動き を読み取りながら教師は常に環境を変化させて行かなければならない。
次の事例は,不足した状態が作り出した葛藤の場面である。
尋 事例一5枚の布団一3歳児・9月
A男・B男・C子の3人は,お互いに気の合う仲間であり,良く一緒に遊んでいる。3人とも各 各にお気に入りのクマやウサギの動物帽子を被るとままごとコーナーに入り, 覧動物のおうちこっ こ、をして遊んでいた。戸棚から布団を出して来て,本来は人形の物であるのだが,自分たちが休 む事になった。ところが,布団は5枚しかない。1枚は敷き,もう1枚を掛け布団にしたいのだが うまく行かない。C子が敷布団を広げて寝ようとする間に,さっと1枚を取って行ってしまうA男,
「コケコッコー,朝ですよ。」と大声で起こしその間に2枚を自分の物にしようと知恵を働かすB男,
いつもはのんびりやのC子もモタモタしてはいられず必死に布団を獲得しようと努力していた。い つものように,子供たちの満足する量の布団があったとしたら,このような場面に出会う事もなか
ったと思う。体と体でどうして行ったら良いかを知って行こうとする姿の中に,様々な思考過程が 展開されて行ったのであった。その後,3人は,大き目の布団2枚を長く並べて敷き,各々が1枚 ずつ布団を掛けると仲良く並んで休むと言う事で解決をして行った。
気持ちを安定させて遊べるようになって来た子供たちには,このような場に接する機会を作るよ うに遊具・用具を整えて行かなければならない。
3.子供がイメージを生み,ふくらませて行くための環境
友達とのかかわりが増すにつれて,様々なごっこ遊びが展開するようになる。この遊びを進めて 行く上での大きな条件となるものは, そのものらしく、 似ている、と言う事である。そのもの らしい,雰囲気に合った物がその場にあるならば,子供たちはより楽しく遊びを進めて行く事が出 来る。こうした子供たちのイメージをふくらませて行くための遊具や用具も重要な意味を持って来
る。
(1}そのものになり切って遊ぶために
4歳児の子供たちは,非常に想像性が豊かになる時期であり,自分が憧れる者になって見たいと 言う欲求が強くなる。金紙で作った冠ひとつでも,子供たちは王様にもお姫様にもなる事が出来る。
こうした時期に入って来た時,子供たちが実際に身に着ける事の出来るマントやドレスを用意して 出して置く事によって心から遊びを楽しむ事が出来るようになる。
一「小人の森」の遊びから一
↓^
^ 実際に着られるドレス おしろ
臼 《 呂
ご
m チュールで
天使の羽 ・ チ・ウの羽に
一 【 1
o / Q
魔法使いのマント
曹
(2)ダイナミックにかかわり合って遊ぶために
想像的に深まる時期を過ぎる頃,子供たちは,一人のリーダーを核として群れて遊ぶ時期を迎え る。いろいろなかかわりをしながら,友達関係を確かなものにして行こうとする。誰となら遊びが うまく行くか,誰のアイディアをもらえば遊びがより楽しくなって行くのかを模索しているような 時期である。このような時には,お互いに力を出し合いながらかかわり合う場を求めるようになっ て来る。子供たちが力を出し切れるような大きな活動の場を作って行けるように教師は考慮して行 かなければならない。
事例一船ごっこ一4歳児・6月
年長組の作った潜水鑑に乗せてもらった4歳児の子供たちは,自分たちでも大きな船を作りたい と思い始めていた。こうした活動の流れを予想し
一大きな船に乗る一 て,子供たちが使うであろうと思われる物を準備
して置いた。それを見つけたD男は,友達を集め
Fご
\ポール紙の
みんなが乗れる船を作ろうと呼びかけた。クラス 望遠鏡
木r台
は,ひとつの大きな渦が巻き始めたかのように, 薮認 趣 D男を中心に力を合わせて大きな木工台を部屋に
μ 「」
^び込んだのである。仲間としての結びつきは,
/護葉瓢の
この大きな木工台がつなぎとなり,いろいろな子 巧飴・梯子 供たちがかかわりを求あて動き始めて来た。
一遊びの場が決まり,遊びに必要な物を作る一
子供たちは,各々自分の座る場を確保しようと努力するようになる。高い所は,キャプテンのD 男の席であり,他の子供たちはなかなか座る事が出来ない。次に重要となる位置は,上段の後部に あり望遠鏡を使って見張りをする席である。ここには,D男と非常に気の合う仲間であるE男が座 る。他の子供たちは仲間に入るために, 覧船ごっこ、に必要な物を工夫して作っては身に着けて船
に乗り込んで行った。F子は,アクアラングの装置を作った。背中にはプラスチックパックを使った 酸素ボンベを背負い,足には段ボールを利用した水かきを付けた。D男も身支度の出来た子供を仲 間として受け入れて行った。
一かかわりが広がり,共通のイメージを持って遊びが展開する一
D男は最近G男を非常に意識し始めていた。D男のグループのメンバーではなかったが,自分に ない物を感じていたのである。G男の創造力は,遊びを魅力的に発展させて行く事が出来たから である。クラスの中で自分の思うままに振舞う事が出来るD男に,このように友達の良さに気づく 力が育って来た事は成長であると思うし,この大きな船が,2人を結びつけ仲間として活動出来る 場を作れるのではないかと予想する。G男とD男のかかわり合う機会が出来るのを待った。更に広
くしようと言う動きが再び起こった時,G男の「海賊船で探検に行こう。」と言う言葉をD男が受け 入れ活動に方向づけがなされた。活動にはテーマが出来,共通のイメージのもとに 海賊船ごっこ。
が展開して行った。
このように,仲間意識が育つ時期には,友達とのかかわりが広く持てるような開放された活動の 場が必要となる。どこからでも誰でも加わる事が出来る室内での位置も活動の展開には大きな意味 を持って来る。
(3}知的欲求を満足させるために
友達関係が安定したものになり,相手といかにかかわって行くかについて大きな力を払う必要が なくなって来る頃から,子供たちはその力を創造的思考場面に注ぐようになって来る。5歳児の特 徴的姿である。この時期になると,指先は器用に動くようになり,自分の頭に描いた物を容易に作
り上げて行く事が出来るようになり,より精巧に根気強く取り組む姿が見られる。気小人の町作り。
気パノラマごっこ、 世界の人形作り.などがその例である。よく考え工夫して作る友達の近くに 座りこんで,ヒントとして自分の物にうまく取り入れている姿も見られるようになる。子供たちが 要求するであろうと思われる材料などを製作の籠の中には常に準備して置く事が必要となる。
子供たちは,今までの平面的な視野を立体的に変化させて行くようになり,物の持つ性質なども 活動の中に取り入れて行くようになる。試したり考えたり,工夫したり試したりを繰り返しながら 自分の考えに近づけて行くために努力して行くようになる。また,何かの基準を持って現象を比較 してとらえる力も育ち,不思議だと言う疑問からもっと良く知りたいと言う知的欲求も芽生えて来 るので活動は深まりを見せるようになる。このような活動の中で,教師は子供たちが要求するであ ろうと思う物を出してやったり準備して置くなどしてかかわって行く。そして,子供と共に考え,
乗り越えて行くための努力をしたり,助言をして行くようにする。子供が一人深まって行くような 時期における,教師の間接的なかかわりや見守りが,この時期の重要な働きかけとなって来るので
ある。
事例一カップニ マホウガ アルノカナー5歳児・7月
夏が来ると,子供たちは自然に水を求めるようになる。H男たちは空箱で作った船を小さな池に 浮かばせようとしていた。材料の籠の中に,アイスクリームのカップと電池を入れて置き,子供た ちがどのように取り組んで行くか見守った。
取 り 組 ん で 行 く 様子 準備する環境及び教師のかかわり
。いろいろな波を起こしながら安 試 す ・。子供たちが使っている材料の中に性質の違う物
定性を確かめる。 を入れて置く。軽い物なら必ず浮くが,その物
。材料の中から電池やカップを見 だけでは沈んでしまう物を浮かばせるための工
つける。 夫へと誘う。
一 一 ● o −
X 一一一一一P
。「アイスカップの中に入れると 1考 え る1し曹__賜 輪_電一_1
。今までの思考に甑ゆらぎ、を与え,そこからい
浮くよ。」 ろいうな発想が導き出せるようにして行く。
。「1本なら浮くけれど2本入れ
ると駄目だ。」
。「静かに入れればいいんじゃな 試 す 。「〜してはどうかな。」「〜するかもしれない。」
いかな。」 という子供と言葉を交わしながら考えて行く。
。カップに2本以上乗せられない 行きづまる 。アイスカップではどうしても2本の電池は乗せ
事に気づく。 られない事を認識させると共に一緒に考えて行
く。
。「そうだ/貸物船にしよう。」 蓬麺亟をi藍! 。荷物を上に積まずカップの底に付けてみてはど うか話し合う中から気づかせて行く。
。「見て/2個だって浮くよ。」 次々と試す 。もっとふやして行けないかどうか疑問を投げか
ける。
一
。「3本にするともう少しで転覆
しそうだ。」 。友達と比べたりしながら,カップの持つ浮力の
「4本だとやっぱり沈んじゃう 序禰罵1 限界に気づかせて行く。
一_ 一 _1
ね。」 。1本の電池を静かに水に入れ沈んで行く様子を
見ながら,カップに付けるとなぜ浮くかと言う
。「重いからかな。」 疑問をぶつけて見る。
。「違うよ,2個の方が重いし,
r冒一冒一■卿■一鱒聯「1考 え る1L...一 _一一一一3
それにカップまでも付いてるも 。子供たちが,いろいろな意見や考えを出し合う
の。」 のを受け止めながら聞いて行くようにする。
。「Hくんなら分かるかな,呼ん 行きづまる で来よう。」
。「きっと,カップにまほうがあ 画塾冤1
るのかな。」 。カップが浮く力となっている事に気づき,カッ
プをふやして行く試しをするのに合わせ,いろ
一
。カップの数をふやして試す。 試 す いうなカップを用意して出すようにする。
5歳児になると,何かの基準を持ち比較しようとする力も育って来る。いろいろな試し遊びをす る中で,教師の共に考えて行こうとする姿勢と小さな働きかけや助言が,活動を更に深めたり発展さ せて行く事が出来ることが分かる。
4.ま と め
入園当初の子供たちが,環境になれ安定して遊びに取り組んで行けるように,教師は母親の代わ りともなって,好んで取り組むであろう遊びへと誘う。次第に園生活にもなれて来ると,友達との かかわりを求めて動き出すようになる。そこで教師は遊びの場を広げて行くために背後から働きか けて行く。このように,子供の育ちに合わせて教師のかかわり方も,環境の考え方も変化させて行 くのである。
それは,環境そのものも,教師側から一方的に与えるのではなく,子供が興味・関心・欲求や好 奇心又は必要性のために主体的に取り組んで行く事を願い,子供の立場から見たり考えたりして行 く事を待っているからである。子供たち自らが遊具・用具とかかわって遊ぶ中で,様々な経験をし て伸びて行くのである。しかし,遊具・用具は決して形として出来上がっているものばかりではな
く,子供の活動に合わせて作り上げて行く,素材的なものが多く含まれる。
更に,友達も教師も環境の一要素であることを忘れてはならないし,大自然そのものもそうであ る。そうした環境の中で,子供たちが安定を得たり,友達や教師とのかかわり方を知ったりして,
楽しい遊びを作り出して行くのである。教師の働きかけ方も直接的から間接的へと,子供の発達を よく押え子供たちの生活に合わせて変化させて行かなければ,子供の心から遊離してしまうであろ
う。
以上縷々述べて来たが,幼稚園教育における教材・教具とは,子供を取り巻く環境のすべてであ り,子供の生活そのものである。そして,子供たちに主体的に取り組ませるその環境こそ,子供の 育ちに合わせて,子供と共に絶えず創り上げ創り変えて行く教材・教具であると考えている。