• 検索結果がありません。

-電子メール上の相談文から得られた示唆-

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "-電子メール上の相談文から得られた示唆-"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

『山形県立米沢女子短期大学紀要』 第56号 2020年12月刊 別刷

オンラインカウンセリングの効果検証

-電子メール上の相談文から得られた示唆-

Verification of the effectiveness of online counseling in supporting student careers

(Suggestions from the “main complaint” on the email)

後 藤 和 也

GOTO Kazuya

(2)

学生のキャリア支援における オンラインカウンセリングの効果検証

-電子メール上の相談文から得られた示唆-

Verification of the effectiveness of online counseling in supporting student careers

(Suggestions from the “main complaint” on the email)

後 藤 和 也

GOTO Kazuya

〈要旨〉

 本研究は、新型コロナウイルス禍の2020年度前期において実施したオンラインキャリアカウンセリング における利用学生アンケートのうち、「現状の改善度」と「不安感の軽減度」の増減について検証するともに、

前期授業期間中(4月~ 8月)に学生から送信されたメールの相談文をテキスト分析することで、オンラ インカウンセリングの効果を可視化することを目的として行った。その結果、「現状の改善度」と「不安 感の軽減度」の双方に相応の効果が見られた。相談内容についてはキャリア支援センターでも指導してい る類の基本的な事項が多いことが明らかになる一方、その多様化は確認されなかった。今後の課題として は、研究の一般性を高めるとともに、効果測定の指標についてさらなる検討を要する点である。

キーワード:キャリアカウンセリング、キャリア形成支援、オンラインカウンセリング、メールカウンセ リング、テキストマイニング 

1.問題

 米沢女子短期大学(以下「本学」)の強みを挙げるとすれば、小規模な短大であることを活かした「学 生と教職員の距離の近さ」や「親身なキャリア支援」などであろう。なかでも学生のキャリア形成支援に 着目すれば、個別相談や各種ガイダンスの実施などにおいてキャリア支援センターが中心的な役割を担う ほか、担任やゼミ担当教員による進路指導やキャリア教育担当教員によるキャリアカウンセリングなどの 複数の支援体制があり、学生は希望する進路に応じてそれらの支援を選択することができる。

 本研究の対象であるキャリアカウンセリングは、キャリア教育担当教員(筆者)によるキャリア教育・

キャリア形成支援施策に関する他大学調査を経て2019年度に新設された支援制度であり(後藤, 2019a;後 藤, 2019b)、大学におけるキャリア教育の拡充という社会的な要請に対応することも企図している。

 一方、2020年初頭から世界的に感染が拡大した新型コロナウイルスについて、政府は新型インフルエ ンザ特別措置法に基づき、2020年4月7日に東京都をはじめとする7都府県に対して緊急事態宣言を発令さ れ、その後4月16日に全都道府県が緊急事態措置の対象とされた。その結果、多くの大学等が対面での授 業を延期ないしは中止したこともあり、全国的にオンラインによる遠隔授業の実施をするとともに、学 生のキャリア支援も電子メールやビデオ会議システム(Microsoft TeamsZOOMなど)を用いた遠隔での 相談対応が試行的に実施されるに至った1)。本学におけるキャリア支援においては、キャリア支援委員会 を中心に検討を重ね、5月からはキャリア支援センター職員やキャリア教育担当教員による電子メールと

(3)

 以上のように、対面での様々な支援やコミュニケーションが制限される未曽有の状況の中、尽くせる手 は尽くしているというのが実情であるが、遠隔によるキャリア支援については必ずしも効果検証まで至っ ていない。加えて、キャリアカウンセリングは、従前から学生の利便性を勘案し電子メールでの相談も可 能としていたが、対面での支援を希望する学生が大半であったため、電子メールを用いた相談のノウハウ や知見が蓄積しているとはいいがたい。一方で、新型コロナウイルス感染症の再度の感染拡大が懸念され るなか、電子メール等を活用した遠隔でのキャリアカウンセリングへのニーズは今後も高まることが予想 される。従って、その効果等について検証することは極めて重要である。

 一般には、大学等のキャリア支援の効果は当該大学等における卒業生の「就職率」が指標とみなされる ことが多い。しかしながら、就職率は景気の動向に大きく左右されるものであり、キャリアカウンセリン グの一義的な効果とするには不適当である。また、就職先の企業規模(大企業・有名企業に就職した割合)

をその効果とみなす場合もあるが、初職への就職の成否という短期的な視点をキャリア支援の効果と位置 付けることには疑問が残る。本来は、「卒業生がどのような良好な雇用機会を獲得できたかという側面と 同時に、卒業生がその後のキャリアをみずから形成していくうえでどの程度の能力を身につけることがで きたかという側面が問われる」(上西, 2007)と考えられる。

 このように、キャリアカウンセリングを含むキャリア支援の「効果」については様々な議論がなされて おり、統一した指標が存在するわけではない。「これまでの研究は実践事例の報告や考察に留まり、キャ リアコンサルティングの効果を定量的に検討した研究がほとんど行われていない」(古田ら, 2017)のであ る。

 また、小坂(2002)によれば、我が国におけるオンラインカウンセリングは1995年に小坂が試行的に実 施したものが最初であるという。渋谷(2006a)によれば、メール活用の最大のメリットは「第三者に相 談する」という敷居を格段に低くした点にある。来談や通院よりも手軽なことに加え、電話と比べても時 間的・物理的制限を受けにくいことがあげられる。

 一方、オンラインカウンセリングについては、従来の心理カウンセリングの領域では忌避される傾向に ある。松田・岡本(2008)は、その理由について「オンラインカウンセリングを提供する側の管理上およ び技術的な問題」「オンラインカウンセリングが対面カウンセリングと同等、もしくはそれ以上の効果を もたらすのかに関する知見の乏しさ」の2点であると指摘する。

 カウンセリングにおける実践に着目すれば、例えば労働者へのカウンセリングを主な事業とする一般社 団法人日本産業カウンセラー協会では、倫理綱領で「オンライン・カウンセリング(インターネット活用 によるeメールカウンセリング、webカメラ併用による電話カウンセリング等をいう)の活用にあたっては、

倫理的、法的、臨床的問題などに関する利点と欠点とを十分に考慮し、慎重に対応する」「オンライン・

カウンセリングは、現状においては、基本的には面接によるカウンセリングを補完するものと位置づけ、

活用技術を十分に習得したうえで使用する」と規定する(一般社団法人日本産業カウンセラー協会倫理綱 領第19条第1項・第2項)。これは、松田・岡本(2008前掲)における後者の指摘に類するものと理解でき よう。

 ただし、近年はビデオ会議システムも一般化しつつあり、対面と遜色のないコミュニケーションが可能 となっている。インターネットの検索サイトであるGoogleを用いて「オンラインカウンセリング」の語で 検索をすると、約24,300,000件のヒット数があり、その多くがオンラインカウンセリングサービスを提供 するEAP企業やカウンセラーのWEBサイトである(2020/06/01確認)。オンラインカウンセリングサービ スが量的に拡大していることがわかる。なお、通信手段を用いた遠隔での支援として、電話を用いたカウ ンセリングの実践例としては、日本いのちの電話2)の知名度が高い。

 海外赴任者へのオンラインカウンセリングの有用性について論じた石村ら(2010)の報告によれば、オ ンラインカウンセリングの利点を①時間の制約がない、②便宜性、③匿名性の3点に整理したうえで、「オ

(4)

ンラインカウンセリングによるカウンセリングは、手紙のやり取りをしている感覚でカウンセラーに相談 することができ、書き言葉ならではの温かみがあるのではないだろうか」と結論付けている。オンライン カウンセリングにおける研究的な議論は未だ続きながらも、その実践が蓄積されているのが現状といえよ う。

2.目的

 そこで本研究では、上述の議論を踏まえつつオンラインカウンセリングの効果を検証するため、第1に、

オンラインカウンセリング利用学生に協力を依頼したアンケート調査のうち、「現状の改善度」と「不安 感の軽減度」の自己評価について検証する。第2に、2020年度前期の授業期間中(4月~ 8月)にオンライ ンカウンセリングを利用した学生から送信されたメールの相談文に着目し、テキストマイニングによる分 析を行う。以上により、本学のオンラインカウンセリングの効果を可視化することを目的とする。

 なお、本研究では以下の課題を設定する。

仮説1.オンラインカウンセリングは学生にとって、現状の改善や不安感の逓減をもたらす。

仮説2.オンラインカウンセリングでは学生から多様な内容の相談がなされる。

3.方法

3-1.調査協力者と実施時期

 2020年度前期授業期間中(2020年4月~ 8月)に電子メールでのキャリアカウンセリングを利用した短 大生48名(すべて女子学生)を調査協力者とした。

3-2.調査材料

 上述の学生から送信された電子メールの合計142件のメール本文と、利用者アンケートの結果を調査材 料とした。

3-3.調査手続き

 まず、キャリアカウンセリングの利用に際し利用学生がGooglefoam上で回答する「キャリアカウンセリ ング利用に関するアンケート」のうち、学生の自己評価である「現状の改善度」と「利用前後の不安感」

の結果について統計的な検定を行った。次に、テキストマイニングを用いてメール本文全体の傾向等につ いて分析した。テキストマイニングは、自由記述におけるテキストから自動的に語を取り出し、頻出語を 確認した上で、それらの語の共起関係を探ることを通して、恣意的になりやすい手作業を極力廃した分析・

要約が可能な手法である。これにより、多数のデータを概観し、客観的に全体的な傾向を把握することが 可能となることに加え、分析者の恣意的・主観的な解釈となってしまう危険性を回避することができる。

テキストマイニングには、フリーソフトであるHKcoder(樋口, 2014)を用いた。

 参考まで、「キャリアカウンセリング利用に関するアンケート」の回答内容について図表1に示す。当該 アンケートはGooglefoamを利用しており、学生は自由意思に基づきWEB上から回答する。氏名の記入は 求めず、教員側から回答者個人が特定できない仕様としている。なお、当該アンケートの提出は任意とし ている。

(5)

        図表1 相談記録における回答項目(2020年度前期)

学科名

・国語国文学科 ・英語英文学科 ・日本史学科 ・社会情報学科 学年

・1年生 ・2年生 利用月

・4月~8月

※新型コロナウイルス感染症対応により前期授業期間は8月まで 利用回数

・1回目 ・2回目以降 利用経路

・掲示物 ・キャリアガイダンス ・友人経由

・キャリセン経由 ・教員経由  ・担当教員の授業経由

・その他(自由記述)

利用目的

・進路に関する全般的な相談 ・採用書類の添削や面接練習

・キャリセン等以外のアドバイス ・専門家のアドバイス

・ほかに相談する相手がいない 利用を通して悩み・現状は改善したか

・「改善した」~「改善しなかった」の5件法 利用前後の不安感

・不安度について10点満点で評価 感想・意見等

・自由記述 希望進路

・民間企業への就職 ・公務員試験 ・4年制大学への編入 ・未定 キャリアカウンセリングの実施方法

・対面 ・電子メール ・WEB面接

3-4.倫理的配慮

 学生への倫理的配慮として、オンラインカウンセリングの利用に際し、匿名性は担保したうえでデータ を研究に活用することについて事前に書面にて説明し、オンラインカウンセリングの利用をもって同意を 得たものと判断した。

4.結果

4-1.学生における自己評価

(1)キャリアカウンセリングの利用に伴う現状の改善度

 キャリアカウンリングを利用した学生に対し回答を依頼しているアンケート中の「キャリアカウンセリ ングの利用により悩み等が解決したか」における自己評価について、オンラインカウンセリングの利用者 のみの結果(n=15)について図表2に示す。すべての回答者が「改善した」「やや改善した」と回答しており、

あくまで自己評価であるが、多くの学生にとってキャリアカウンセリングの有用性が実感されたようであ る。

(6)

       図表2 現状の改善度(n=15)

(2)相談前後における不安感のスケーリング

 キャリアカウンセリング利用前後の学生に生じた心理的不安感の動きを確認すべく、相談前後の不安 感についてそれぞれ10段階で自己評価を行ってもらい(渡部, 2016)、対応のあるt検定を行った。結果 について図表3に示す。キャリアカウンセリングの利用前後における不安感について利用前(M=7.400, SD=2.17)と比べて利用後(M=3.867, SD=1.41)が有意に低下していた(t(14)=5.29, p=.000)。このこ とから、あくまで学生の自己評価となるが、オンラインカウンセリングの利用を通して自身の不安感が逓 減したことが分かった。以上により仮説1は支持された。

図表3 2020年度前期の利用前後における不安感のスケーリング(n=15)

4-2.電子メール本文における記載内容の分析

(1)テキストデータの頻度分析

 まず、電子メールの記述内容について前処理を実行し、頻出の150語について出現回数順に文章の単純 集計を行った。なお、自由記述の内容は氏名などの個人情報は除いたうえで学生の記載のまま修正等は行 っていない。結果について図表4に示す。

(7)

        図表4 自由記述における抽出語

 使用頻度が高い語としては、「思う」(168回)、「お願い」(115回)、「ありがとう」(91回)、「考える」(78 回)、「志望」(63回)などの語である。

 実際にこれらの語がどのような文脈で使用されていたのかを拾い出すと、最も頻度が高かった「思う」

については「~私もそこの部分は不安には思っています」「WEB説明会を開催している企業を調べて参加 してみようと思います」「夏までの内定獲得を目標に頑張りたいと思います」など、現状に思いをはせる 内容や今後の行動を示唆する内容が殆どであった。「お願い」については「(採用時書類等の)添削をよろ しくお願いします」など教員に指導を依頼する意味合いでの使用が大半であった。「ありがとう」につい ては、迅速な対応ありがとうございます」「非常に丁寧に回答してくださりありがとうございます」など、

教員の対応に対する謝辞の意味合いで使用されていた。このように頻度高く使用されていた語の上位1番 目から3番目までを概観すると、オンラインカウンセリングを利用した学生については、相談により解決 したい事柄(採用時書類の添削など)がある程度明確化されており、カウンセリングを経て今後の行動に 関する指針を得ることができ、教員に対して感謝の念を抱いている様子がうかがえる。

 さらに、以下ではオンラインカウンセリングの利用動機やその効果等を連想させるいくつかの語に着目 していく。

(8)

. 自分(63回)

 「ありがとうございます!とても助かります!自分で、考え直してみます!」「前のメールで編入は考え ていないと言いましたが、あれから自分自身でももう一度悩んでみて、編入もありかなと思い始めました

丁寧なご指導ありがとうございます。teamsの方も読ませていただきました。自分に合ったテキストをさ らに探していきたいと思います。民間のESも、資料を参考に自分なりに書いてみます。」などの使用であ り、オンラインカウンセリングを通して目の前の課題を自己解決しようとする様子や、自己洞察が促され たことがうかがえる。

b. 企業(55回)

 「明日に控えた第1志望企業の個別企業説明会及び1次選考会へ持参する履歴書を添削していただきたい のです。」「「公務員」の具体的仕事内容が未だにはっきりと掴めていないため、教えていただきたいです。

また、「民間企業」に関しても以前勧められたのですがあまりピンと来ていないのが現状です。」「私は公 務員試験も受けようと考えているのですが、その場合民間企業の内定はいつぐらいまでにとっておくべき でしょうか。」などの使用であり、オンラインカウンセリングの利用動機として履歴書等の採用時書類の 添削や民間企業における仕事内容や就職活動の在り方など、キャリアガイダンスでも説明しているであろ う基本的事項が多く含まれていることがうかがえる。特に、オンラインカウンセリングの場合はメールで 相談できるという気軽さゆえか、「ちょっと調べればわかること」についての質問が多いのが特徴である(例 えば「事務局は土日も休みですか?」「先生の研究室はどこですか?」など)。

C. 面接(41回)

 「〇〇大が面接が厳しいみたいなので不安です。」「自分のやりたいことが分からず、先のことを考えら れなくてエントリーする会社を決めることができません。それに加え私は、面接がとても苦手でこれから 面接があることを考えると、エントリーをすることが億劫に感じてしまいます。」「来週の月曜日、〇月〇 日に一般企業のweb面接を予定しています。そこで、先生にエントリーシートの添削と面接練習をお願い したいと思っております。」などの使用であった。キャリアガイダンスやキャリア支援センターの個別相 談を通して面接対策は数多く実施されているところであるが、学生の就職活動や編入試験面接に対する不 安感は大きく、面接指導のニーズが高いことがうかがえる。

d. 地域(34回)

 「貴学は地域に根ざした大学として、ダブルホーム事業や地域文化事業など地域連携の取り組みが盛ん におこなわれているため、間接的ではありますが地域貢献に携わりたいと思い志望いたしました」「貴社 では、地域行事への参加や青年育成のための活動など、幅広く地域活性化への取り組みをされているとお 伺いしました。私は、学生時代、テニス、ソフトボール、駅伝、書道や英会話など、様々経験してきまし た。その体力と、未知の分野に対するバイタリティを生かし、地域の皆様との関係をより良いものにする 活動のため、尽力していきたいです。」「私が貴金庫を志望する理由は、金融を通し、地域の方々のお役に 立ちたいと考えたからです。地域に寄り添い、非営利法人として、人々の生活をより豊かなものにする事 に、他の金融機関に無い魅力を感じました」などの使用であった。これらの多くは企業の採用選考の際に 作成を要するエントリーシートの記載内容であり、本学学生の働く動機として、「地域貢献」が一つのキ ーワードであることが示唆される。ただし、学生がエントリーシート作成や面接試験に直面した結果、一 種の話のネタとして「地域」という語を使用している可能性もあることから、慎重な分析が求められる語 でもある。

(9)

e. ES(エントリーシート)(14回)

 「〇〇信用金庫のESはホームページからネットでの入力が可能なのですが、趣味特技やアルバイト経験 等の欄もあり、どこまでですます調で書くべきなのか、単語のみで答えるべきなのか悩んでいます」「 在はES書きやSPIなどの対策をしている段階で止まってしまっています。Wed上で開催されている企業説 明会などには参加していますが、ここまできてしまうとハローワークなどにも確認の範囲を広げるべきで なのでしょうか…?」「民間のESも、資料を参考に自分なりに書いてみます。完成したら点検していただ けますでしょうか?」などの使用であった。ES作成に関するキャリアガイダンスは数多く実施されてい るが、当該ガイダンスを未受講のためか受講しても習得するのが難しいためか、オンラインカウンセリン グを利用する多くの学生はESの作成に頭を悩ませているようである。

(2)抽出語における共起ネットワーク分析

 続いて、特に高い確率で出現した抽出語と他の語の関係性を明らかにすべく、共起ネットワーク分析を 行った。共起ネットワーク分析とは、抽出された「語」同士がどのように似通った文脈で使用されている かをネットワーク図で確認する手法である。最小出現数を20、描画する共起関係は60までとして作成した 結果について、図表5に示す。

 以下では、共起関係をグループ分けしたうえで結果について概観する。

図表5 自由記述における共起ネットワーク図

(10)

. グループA

 グループで最も頻度が高い「自分」と「考える」の距離が近いことから、学生が直面している課題や悩 みについてある程度自分の問題として考えた結果、オンラインカウンセリングの相談につながっているこ とがうかがえる。また、仕事と人が関連づけられていることや、企業説明会への参加などについて語られ ていることがわかる。

b. グループB

 就職活動や公務員試験に関する不安が語られている。キャリア決定上の諸々の不安からキャリアカウン セリングの利用に至ったことがうかがえる。

C. グループC

 企業等に提出する採用時書類における記載内容に対する添削を依頼する語である。メールにES等のデ ータを添付することで、Wordの添削機能を用いた返信が可能となることから、オンラインカウンセリン グでニーズの高い相談内容の一つである。

d. グループD

 オンラインカウンセリングを利用する際の依頼や、教員に対する謝辞である。社会常識としては当然の ことかもしれないが、学生から送信されるメールの多くにはこうした気遣いの語が多く見られ、学生の社 会性の高さや気遣いを感じることができる。一方で、数は少ないながらも友達に送るLINEのように、枕 の言葉がなく突然本文が展開されるようなメールもあり、一部の学生に対してはメール作成のマナーとい った指導が必要であるとも示唆される。

e. グループE

 グループDと同様、教員の宛名・所属などに関する語である。

 以上により、多くの相談がなされているものの、個人の「生き方」を模索するような内容の相談は見ら れず、対面でのキャリアカウンセリングの経験を踏まえれば、本研究の限りではオンラインカウンセリン グ上の悩みは多様化しているとまで判断はできないことから、仮説2は支持されなかった。

5.考察と今後の課題 5-1.考察

 本研究は、第1に、オンラインカウンセリング利用学生に協力を依頼したアンケート調査のうち、「現 状の改善度」と「不安感の軽減度」についての自己評価について検証し、第2に、2020年度前期の授業期 間中(4月~ 8月)にオンラインカウンセリングで学生から送信されたメールの相談文に着目することで、

質的な側面からオンラインカウンセリングの効果を検証することを目的として行った。その結果、明らか となったのは以下の2点である。

 第1に、オンラインカウンセリングであっても、本研究の対象である学生は「自身の悩みや現状は解決 した」「自身の不安感は低下した」と感じている。このことから、オンラインカウンセリングにおける効 果が示唆された。

 第2に、学生からの相談内容は、就職活動のやり方やESの書き方、面接に向けての対策など、比較的基 本的と思われるものが多い。これらはキャリア支援センター主催のガイダンスなどで頻度高く取り扱われ

(11)

 以上が研究面における示唆となるが、半期の間オンラインカウンセリングを担当した教員として実践面 の示唆についても述べたい。

 上述したように、オンラインカウンセリングの効用については様々な議論がなされている。例えば「カ タルシス効果」(自己を綴ることによるうっ積感情の吐露)や「自己問題の概念化」(綴る作業は語るより、

さらに自らを整理していく作業が加わり、自分自身を客観視できる)、「つながっている安心感の維持」な どである(渋谷, 2006b)。これらは学生とメールをやり取りする中での実感とも一致するものである。し かしながら、文字データのみのコミュニケーションにおけるすれ違い(ディスコミュニケーション)の問 題(太田, 2006)や、クライエントの依存性を増長する恐れ(渋谷2006a前掲)などには最大限の注意が必 要となる。実際に、筆者からの返信に対して連絡が途絶えてしまったケース(この場合、筆者からの返信 に納得して相談が終結したのか、何かしらの不満がありこれ以上の相談はしたくないという意思表示なの かが不明となる)があったほか、上述のとおり、少し調べればわかる自明のことを質問してくるケースも 散見された。キャリアカウンセリングはあくまで教育的観点から行われるべきキャリア形成支援の一形態 であることを鑑みれば、学生の成長を促す活動であることが求められる。従って、教員側が安易に「正解」

を示すなど、学生の主体性や成長を妨げる働きかけや指導は慎むべきであろう。

5-2.今後の課題

 最後に、今後の課題について述べる。

 第1に、本研究は本学における事例について論考したものであり、安易に一般化することはできない。

ただし、このことは、本学のキャリア支援における固有の問題に対応するための有用なデータとして活用 可能であるとも解釈できる。

 第2に、本研究の対象である「キャリアカウンセリングに関する利用者アンケート」の回答については 学生の自由意思に委ねているため、キャリアカウンセリングに好意的な学生が回答する傾向があるなどの バイアスがあることは否定できない。今後は当該アンケートの回答率を高めるための工夫が必要である。

 第3に、本研究におけるキャリアカウンセリングの効果として「キャリアカウンセリングにおける満足度」

と「不安感の軽減度」等おける学生に自己評価を評価の指標としたが、今後は学生における「決定した進 路」や「就職等満足度」等との接続を図るなど、より適切な効果の指標の設定を模索する必要がある。

謝辞

 「キャリアカウンセリングに関する利用者アンケート」の回答にご協力いただいた学生の皆さんに、こ の場をお借りして感謝の意を表します。

注記

1)県内では、山形大学が4月よりオンライン会議システムを活用した就職支援(「Web相談」および「Web 面接対策」を実施している(山形大学WEBサイト「【就職活動中のみなさんへ】オンライン会議システ ムを活用した就職支援(「Web相談」および「Web面接対策」)について(https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/

employment/news/20200327_01/)2020/06/01取得」。

2)日本いのちの電話連盟のWEBサイトによれば、「いのちの電話」の活動は、1953年に英国のロンドン で開始された自殺予防のための電話相談に端を発しているという。わが国では1971年10月に開設され、

2019年現在、連盟加盟センターは50センターとなり、約6,100名の相談員が活動しているという。2018 年の相談件数は636,288件にのぼる(日本いのちの電話連盟WEBサイト「日本いのちの電話連盟とは」

https://www.inochinodenwa.org/about.php)2020/06/01取得)

(12)

【引用文献】

・石村光資郎、田中暢子、加藤千恵子、土田賢省、後藤武秀(2010)「オンラインカウンセリングによる 海外赴任者のメンタルヘルスの改善に関する考察」『工業技術:東洋大学工業技術研究所報告』第32号、

PP.72-75

・上西充子編著(2007)「大学のキャリア支援:実践事例と省察」経営書院

・大多和二郎(2006)「メールカウンセリングを理解するために」武藤清栄・渋谷英雄編著『メールカウ ンセリング その理論・技法の習得と実際』川島書店

・後藤和也(2019a)「A短期大学におけるキャリア支援体制の構築-検討過程における他大学の現状調査結 果に着目して-」日本ビジネス実務学会『ビジネス実務論集』No.37. PP.109-115

・後藤和也(2019b)「米沢女子短期大学キャリアカウンセリング制度における利用傾向と課題」『山形県 立米沢女子短期大学紀要』(第55号)PP.19-24

・小坂守孝(2002)「電子メールによる相談活動の時代変遷」『現代のエスプリ メールカウンセリング』

至文堂

・渋谷英雄(2006a)「メールカウンセリングとはなにか」武藤清栄・渋谷英雄編著『メールカウンセリン グ その理論・技法の習得と実際』川島書店

・渋谷英雄(2006b)「メールカウンセリングの理論」武藤清栄・渋谷英雄編著『メールカウンセリング  その理論・技法の習得と実際』川島書店

・樋口耕一(2014)『社会調査のための計量テキスト分析』ナカニシヤ出版

・古田克利、辻彰彦、松尾智晶(2017)「キャリアコンサルタント国家資格の有無が相談満足度に与える 影響-大学キャリア・センターにおける就職相談場面に着目して-」『産業カウンセリング研究』第19 巻第1号 PP.31-42

・松田英子・岡本悠(2008)「教育相談におけるオンラインカウンセリングの利用可能性に関する展望」『メ ディア教育研究』第5巻第2号 PP.111-119

・渡部昌平(2016)「はじめてのナラティブ/社会構成主義キャリア・カウンセリング」川島書店

参照

関連したドキュメント

う東京電力自らPDCAを回して業 務を継続的に改善することは望まし

帰ってから “Crossing the Mississippi” を読み返してみると,「ミ

父親が入会されることも多くなっています。月に 1 回の頻度で、交流会を SEED テラスに

基準の電力は,原則として次のいずれかを基準として決定するも

これからはしっかりかもうと 思います。かむことは、そこ まで大事じゃないと思って いたけど、毒消し効果があ

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から

・私は小さい頃は人見知りの激しい子どもでした。しかし、当時の担任の先生が遊びを

都調査において、稲わら等のバイオ燃焼については、検出された元素数が少なか