土の凍上抑制工法と
火山灰土の凍上特性に関する研究
2001
年3
月川 端 伸 一 郎
土の凍上抑制工法と火山灰土の凍上特性に関する研究
2001
年3
月学 位 論 文 内 容 の 要 旨
川 端 伸 一 郎
土 の 凍 上 抑 制 工 法 特 性 と 火 山 灰 土 の 凍 上 特 性 に 関 す る 研 究
寒 冷 地 に お い て 冬 期 に 地 盤 が 隆 起 す る 凍 上 現 象 は , 道 路 構 造 物 を は じ め 各 種 の 構 造 物 に 機 能 低 下 や 損 傷 ・ 破 壊 な ど の 甚 大 な 被 害 を 生 じ さ せ る 。 こ の よ う な 凍 上 被 害 に 対 し て は , 既 に 構 造 物 の 重 要 度 に 応 じ , 幾 つ か の 凍 上 対 策 工 法 が 提 案 さ れ て お り , 中 で も 凍 上 性 の 土 を 非 凍 上 性 の 土 に 置 き 換 え る 置 換 工 法 は , 高 い 信 頼 性 と 適 用 範 囲 の 広 さ か ら 多 く の 構 造 物 に 利 用 さ れ て い る 。 し か し , 置 換 工 法 は 近 年 の 建 設 コ ス ト の 削 減 や 環 境 問 題 か ら 様 々 な 問 題 点 も 取 り 上 げ ら れ て き て い る 。 こ れ は , 置 換 工 法 が 常 に 置 換 対 象 と な っ た 土 の 処 分 地 確 保 や 大 量 の 粗 粒 材 料 を 必 要 と す る た め で あ り , 処 分 地 や 土 取 場 周 辺 の 環 境 保 全 の 面 か ら 時 代 と 共 に 注 目 さ れ 始 め た も の で あ る 。 こ れ に 伴 い , 凍 上 抑 制 工 法 に 関 す る 研 究 は , 新 た な 展 開 を 見 せ は じ め , 置 換 厚 さ の 見 直 し や 天 然 の 粗 粒 材 料 に 代 わ る 代 替 材 料 の 開 発 , 置 換 工 法 以 外 の 凍 上 抑 制 工 法 の 試 行 が 積 極 的 に 行 な わ れ る よ う に な っ て き て い る 。
本 論 文 は , 凍 上 抑 制 工 法 に 関 わ る 問 題 と し て , 材 料 の 凍 上 性 評 価 手 法 や 置 換 対 象 土 の 削 減 を 目 的 と し た 石 灰 に よ る 安 定 処 理 の 凍 上 抑 制 効 果 の 検 討 , な ら び に 構 造 物 の 種 類 に 応 じ た 凍 上 対 策 工 法 の 提 案 な ど を 行 い , 各 種 凍 上 対 策 工 法 の 効 果 と 道 内 に 多 く 存 在 す る 火 山 灰 土 の 凍 上 特 性 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。
本 論 文 は , 全
7
章 で 構 成 さ れ て い る 。第
1
章 で は , 凍 上 抑 制 工 法 の 現 状 と 問 題 点 を 述 べ , 本 研 究 の 目 的 を 示 し た 。 ま た , 既 往 の 研 究 と 本 研 究 の 関 連 性 を 示 し , 本 研 究 が 扱 う 問 題 を 明 確 に し た 。第
2
章 で は , 凍 上 発 生 の メ カ ニ ズ ム や 現 状 の 凍 上 対 策 工 法 , 凍 上 性 の 判 定 方 法 な ど に つ い て 述 べ た 。 さ ら に , 凍 上 抑 制 工 法 と し て 期 待 さ れ る 土 質 安 定 処 理 に つ い て , 主 に 石 灰 安 定 処 理 を 取 り 上 げ , そ の 基 本 的 な 反 応 メ カ ニ ズ ム に つ い て 解 説 し た 。第
3
章 で は ,各 種 火 山 灰 土 を 対 象 に 凍 上 特 性 お よ び 凍 結 融 解 作 用 を 受 け た 場 合 の 材 料 性 状 の 変 化 に つ い て 述 べ , 次 の よ う な 結 果 を 得 た 。1)
従 来 型 の 細 粒 分 含 有 率 と 強 熱 減 量 に よ る 凍 上 性 判 定 で は , 規 定 値 外 に 多 く の 非 凍 上 性 の 火 山 灰 土 が 存 在 す る こ と を 示 し た 。2)
自 然 含 水 比 と 土 粒 子 の 密 度 に よ る 火 山 灰 分 類 を 用 い る と ,自 然 含 水 比 が 低 いVs1
とVs2
に 非 凍 上 性 材 料 が 分 布 す る こ と を 明 ら か に し た 。3)
自 然 含 水 比( ωn)と 最 適 含 水 比( ωopt)の 関 係 よ り 非 凍 上 性 火 山 灰 土 は ωn≒ ωopt, 凍 上 性 は ωn> ωopt の 関 係 に な る こ と を 明 ら か に し , 自 然 含 水 比 と 最 適 含 水 比 の 関 係 を 用 い る こ と に よ り 凍 上 性 の 分 類 が 可 能 で あ る こ と を 示 し た 。4)
火 山 灰 土 の 凍 上 性 判 定 法 と し て ,ωnと ωn/
ωoptの 関 係 に よ る4
つ の 分 類 領 域 を 設 定 し , 簡 易 凍 上 性 評 価 法 を 提 案 し た 。5)
凍 結 ・ 融 解 履 歴 を 与 え た 火 山 灰 土 は ,Marsal
の 破 砕 率 お よ び 細 粒 分 の 増 加 か ら 微 小 で は あ る が , 全 て の 火 山 灰 土 で 粒 子 破 砕 が 確 認 さ れ た 。 し か し , 破 砕 は1
サ イ ク ル 目 の 凍 結 ・ 融 解 作 用 で 生 じ て お り , サ イ ク ル 数 の 増 大 は 破 砕 性 の 増 加 に は 繋 が ら な い こ と を 示 し た 。6) Marsal
の 破 砕 率 は , 自 然 含 水 比 お よ び 土 粒 子 の 密 度 と 相 関 が 見 ら れ , 自 然 含 水 比 が 高 い ほ ど , ま た 土 粒 子 の 密 度 が 小 さ な も の ほ ど 破 砕 が 顕 著 で あ っ た 。 た だ し , 両 指 標 を 単 一 で 使 用 す る に は 例 外 的 な 火 山 灰 土 も あ り ,Vs
分 類 の よ う な 座 標 上 で 破 砕 性 を 捕 ら え る こ と が 有 効 で あ っ た 。第
4
章 で は , 置 換 工 法 に 代 わ る 凍 上 抑 制 工 法 と し て 石 灰 安 定 処 理 に 着 目 し , 凍 上 抑 制 効 果 に 関 わ る 材 料 性 状 を 取 り ま と め た 。 ま た , 第5
章 で は 原 位 置 に お け る 石 灰 安 定 処 理 の 凍 上 抑 制 効 果 を 検 証 し , 以 下 の よ う な 結 果 を 得 た 。1)
安 定 処 理 土 の 凍 上 性 は 強 度 と 相 関 が 高 く ,CBR
を100
程 度 ま で 改 良 す る と 凍 上 率 を5%
以 下 に す る こ と が 可 能 で あ る こ と を 示 し た 。2)
意 識 的 に 粒 子 間 結 合 力 を 減 少 さ せ た 混 合 養 生 が 一 般 的 な 締 固 め 養 生 よ り も 顕 著 に 凍 上 抑 制 効 果 が 現 れ た 。 こ の こ と か ら , 従 来 安 定 処 理 土 の 凍 上 抑 制 因 子 の 一 つ と 考 え ら れ て い た 固 化 効 果 は 凍 上 抑 制 に 直 接 寄 与 し て い な い こ と が 確 認 さ れ た 。 さ ら に , 安 定 処 理 に よ る 透 水 性 の 減 少 傾 向 が 短 期 間 に 一 定 値 に 収 束 す る こ と か ら , 透 水 性 の 変 化 も 固 化 効 果 と 併 せ て 凍 上 抑 制 因 子 と し て は 関 連 が 薄 い こ と を 示 し た 。3)
吸 着 水 量 と 凍 上 量 は 高 い 相 関 関 係 に あ り , 吸 着 水 量 の 減 少 が 凍 上 抑 制 に 寄 与 し て い る こ と を 示 し た 。 ま た , こ れ ら の 関 係 は 養 生 方 法 や 試 料 に よ っ て 異 な っ た 関 係 に な っ て お り , 毛 管 力 や 透 水 性 の 違 い を 理 由 と し て 挙 げ た 。4)
原 位 置 で も 石 灰 安 定 処 理 に 凍 上 抑 制 効 果 が あ り ,凍 上 量 は 添 加 率10
% で 凍 上 抑 制 層 と し て 砂 を 用 い た タ イ プ と 同 値 程 度 に 抑 え ら れ る こ と を 確 認 し た 。5)
原 位 置 で 実 測 さ れ た 凍 結 深 さ は 砂 と 比 較 す る と 現 状 土 を 用 い た タ イ プ が20cm
程 度 浅 い 位 置 に 存 在 し , 凍 上 性 の 土 を 石 灰 安 定 処 理 す る こ と に よ り 凍 上 抑 制 層 の 層 厚 を 減 ず る こ と が 可 能 で あ る こ と を 示 し た 。第
6
章 で は ,特 殊 な 凍 結 環 境 に あ る 農 業 用 施 設 に 対 す る 凍 上 対 策 工 法 の 提 案 を 目 的 に , 各 種 農 業 用 施 設 の 原 位 置 観 測 デ ー タ か ら 凍 結 環 境 と 断 熱 工 法 の 有 効 性 を 検 証 し , 次 の よ う な 結 果 を 得 た 。1)
畜 舎 に 対 し て 基 礎 断 熱 併 用 ス カ ー ト 断 熱 工 法 を 施 工 し た 結 果 , 凍 結 深 さ の 抑 制 に 効 果 が あ る こ と を 確 認 し た 。 し か し , 一 般 建 築 物 に 比 べ る と 施 設 内 部 か ら の 熱 供 給 条 件 の 違 い に よ っ て , 畜 舎 の 凍 結 深 度 が 深 部 ま で 達 す る こ と を 明 ら か に し た 。2)
施 設 区 分 に よ り 内 部 の 凍 結 環 境 が 異 な る こ と を 明 確 に し た 。 ま た , 施 設 の 使 用 方 法 に よ っ て も 凍 結 環 境 が 大 き く 異 な る こ と を 示 し , そ の 要 因 と し て 敷 き 藁 の 断 熱 効 果 を 挙 げ た 。3)
規 制 緩 和 の 対 象 と な る 施 設 区 分 Ⅰ の 畜 舎 に 対 し て , 畜 舎 特 有 の 使 用 方 法 な ど を 考 慮 に 入 れ た 独 自 の 凍 上 対 策 工 法 を 提 案 し た 。第
7
章 で は , 凍 結 環 境 下 で の 材 料 特 性 や 各 種 凍 上 対 策 工 法 の 効 果 に つ い て 総 括 し , 今 後 さ ら に 多 様 化 す る と 考 え ら れ る 凍 上 対 策 工 法 の 課 題 を 提 起 し た 。土 の 凍 上 抑 制 工 法 と 火 山 灰 土 の 凍 上 特 性 に 関 す る 研 究 目 次
第 1 章 序 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1 1-1
研 究 の 背 景 と 目 的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1-2
凍 上 問 題 に 関 す る 既 往 の 研 究1-2-1
凍 上 現 象 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 1-2-2
凍 上 量 予 測 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 1-2-3
凍 上 性 の 評 価 と 凍 上 対 策 工 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 1-3
本 論 文 の 構 成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
第1
章 の 参 考 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
第 2 章 凍 上 現 象 と 凍 上 対 策 工 法 の 現 状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
16
2-1
凍 上 の 発 生 機 構 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
2-2
凍 結 深 さ の 推 定 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
2-3
凍 上 対 策 工 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
2-3-1
置 換 工 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
2-3-2
断 熱 工 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
2-3-3
遮 水 工 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
2-3-4
土 質 安 定 処 理 工 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
2-3-4-1
土 質 安 定 処 理 の 種 類 と 適 用 範 囲 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
2-3-4-2
石 灰 安 定 処 理 の 基 本 的 原 理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
2-3-4-2a
消 化 吸 水 反 応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
2-3-4-2b
イ オ ン 交 換 反 応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
2-3-4-2c
ポ ゾ ラ ン 反 応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
2-3-4-2d
炭 酸 化 反 応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
2-3-4-3
石 灰 安 定 処 理 の 強 度 増 加 に 及 ぼ す 諸 要 因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
2-4
凍 上 性 の 評 価 手 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
2-4-1
土 質 に よ る 凍 上 性 判 定 手 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
2-4-2
凍 上 試 験 に よ る 凍 上 性 判 定 手 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
2-4-2a
排 水 工 指 針 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
2-4-2b
日 本 道 路 公 団 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
2-4-2c
本 研 究 で 用 い た 凍 上 試 験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
第
2
章 の 参 考 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
第 3 章 粗 粒 火 山 灰 土 の 地 盤 材 料 と し て の 凍 上 特 性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
3-1
緒 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 3-2
粗 粒 火 山 灰 土 の 凍 上 性3-2-1
は じ め に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
3-2-2
試 験 試 料 と 実 験 方 法
3-2-2a
試 験 試 料 の 概 要 と 試 料 分 類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
3-2-2b
実 験 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
3-2-3
試 験 結 果 と 考 察
3-2-3a
従 来 型 の 凍 上 性 簡 易 判 定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
3-2-3b
火 山 灰 分 類 と 凍 上 性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
3-2-3c 締 固 め 特 性 と 凍 上 性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53
3-2-3d
新 し い 火 山 灰 土 の 凍 上 性 簡 易 判 定 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59
3-2-4
ま と め ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
3-3
凍 結 融 解 履 歴 が 粗 粒 火 山 灰 土 の 粒 子 性 状 に 与 え る 影 響3-3-1
は じ め に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62 3-3-2
試 験 試 料 と 実 験 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62 3-3-3
結 果 と 考 察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63 3-3-4
ま と め ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・69 3-4
結 び ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・69
第3
章 の 参 考 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71
第 4 章 石 灰 安 定 処 理 土 の 凍 上 抑 制 効 果 に 関 わ る 材 料 特 性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・
73 4-1
緒 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74 4-2
石 灰 安 定 処 理 土 の 強 度 特 性 と 凍 上 抑 制 効 果4-2-1
は じ め に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74 4-2-2 試 験 試 料 と 実 験 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75 4-2-3
安 定 処 理 土 の 一 軸 圧 縮 強 度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77 4-2-4
凍 上 抑 制 効 果 と 強 度 特 性 の 関 係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82 4-2-5
ま と め ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・86 4-3
水 分 特 性 の 変 化 が 石 灰 安 定 処 理 土 の 凍 上 性 に 与 え る 影 響4-3-1
は じ め に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・87
4-3-2
水 分 特 性 と 凍 上 性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・87
4-3-3
試 験 試 料 と 試 験 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・88
4-3-4
結 果 と 考 察4-3-4-1
石 灰 安 定 処 理 の 凍 上 抑 制 効 果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90 4-3-4-2
透 水 係 数 の 経 時 変 化 と 凍 上 量 の 関 係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91 4-3-4-3
p F 特 性 と 凍 上 性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・92 4-3-4-3a
早 期 段 階 の 反 応 に よ る p F 特 性 の 変 化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・92 4-3-4-3b
養 生 方 法 の 違 い に よ る 影 響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93 4-3-4-4c
試 料 の 違 い に よ る 影 響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95 4-3-4-4d
凍 上 性 と 水 分 特 性 の 関 連 性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95 4-3-5
ま と め ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97 4-4
結 び ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・98
第4
章 の 参 考 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・99
第 5 章 原 位 置 試 験 に よ る 石 灰 安 定 処 理 の 凍 上 抑 制 効 果 の 検 証 ・・・・・・・・・・・・
101 5-1
は じ め に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・102 5-2
試 験 工 区 の 概 要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・102 5-3
観 測 内 容 と 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・103 5-4
試 験 年 度 の 気 象 状 況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・103 5-5
凍 結 深 さ と 土 中 温 度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・105 5-5-1
凍 結 深 さ の 推 定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・107 5-6
凍 上 抑 制 効 果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・108 5-7
ま と め ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・111
第5
章 の 参 考 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112
第 6 章 農 業 用 施 設 に お け る 凍 上 抑 制 工 法 と そ の 効 果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
113 6-1
は じ め に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・114 6-1-1
一 般 建 築 物 に お け る 凍 上 対 策 と 畜 舎 建 築 の 現 状 ・・・・・・・・・・・・・・・・114 6-2 施 設 区 分 と 実 験 対 象 施 設 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 6-3
観 測 内 容 と 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・120 6-4
結 果 と 考 察6-4-1
各 調 査 地 点 の 気 象 状 況 と 土 質 性 状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・124
6-4-2
基 礎 断 熱 併 用 ス カ ー ト 断 熱 工 法 の 効 果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・125
6-4-3
施 設 区 分 の 違 い に よ る 内 部 の 凍 結 環 境 と 積 雪 の 断 熱 効 果 ・・・・・・・・127
6-4-4
使 用 目 的 の 違 い に よ る 凍 結 環 境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・128
6-5
ま と め ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・133
第
6
章 の 参 考 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・134
第 7 章 結 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・135
謝 辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・140
研 究 業 績 目 録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・142
第 1 章 序論
第 1 章 序 論
1-1 研 究 の 背 景 と 目 的
凍 上 現 象 を 簡 易 に 表 現 す れ ば , 土 の 凍 結 に よ る 体 積 膨 張 現 象 で あ る 。 た だ し , 土 粒 子 自 体 が 凍 結 に よ り 体 積 膨 張 を 起 こ す こ と は 無 く , 全 て は 土 中 の 水 分 に 起 因 し た 現 象 で あ る 。 水 分 の 相 変 化 に よ る 体 積 膨 張 に 関 し て は , 周 知 の よ う に 水 は 氷 に 変 化 す る 過 程 で 約
9
% の 体 積 膨 張 を 起 こ す 。 し か し , こ の よ う な 直 感 的 に も 理 解 で き る 現 象 で 凍 上 の 全 て を 説 明 す る こ と は 困 難 で あ り , 凍 上 発 生 の メ カ ニ ズ ム の 解 明 に は 多 く の 研 究 者 が 長 い 時 間 を 費 や し な が ら も 未 知 の 領 域 が 多 く 残 っ た 現 象 で あ る 。凍 上 を 物 理 的 現 象 と し て そ の メ カ ニ ズ ム の 解 明 研 究 が 理 学 の 分 野 で 進 む 一 方 , 工 学 的 な ア プ ロ ー チ は , 地 盤 凍 結 工 法 に 代 表 さ れ る 凍 土 の 利 用 技 術 と 寒 冷 地 に お け る 凍 上 抑 制 技 術 の 集 約 で あ る 。 凍 土 は 低 強 度 の コ ン ク リ ー ト 並 み の 強 度 を 有 し , か つ 遮 水 性 に 優 れ た 材 料 で あ る 。 こ の 特 性 を 生 か し , 地 盤 中 に 一 時 的 な 止 水 壁 や 耐 力 壁 を 築 造 し 利 用 す る 技 術 が ト ン ネ ル 建 設 な ど に 広 く 応 用 さ れ て い る 。 こ の よ う な 地 盤 凍 結 工 法 が 建 設 技 術 の 一 端 を 担 い 社 会 基 盤 整 備 が 進 む 一 方 で , 寒 冷 地 で は 冬 期 間 の 凍 上 現 象 に よ り , 構 造 物 の 破 壊 や 機 能 低 下 な ど の 被 害 が 生 じ て き た 。 そ の 代 表 的 な 構 造 物 は 道 路 で あ り , 寒 冷 地 の 凍 上 抑 制 技 術 の 歴 史 は , 道 路 の 凍 上 対 策 の 歴 史 と い っ て も 過 言 で は な い 。
日 本 で 初 め て 凍 上 問 題 が 取 り 上 げ ら れ た の は , 昭 和 初 期 の 旧 満 州 鉄 道 の 工 事 に 関 連 し て 作 ら れ た 耐 寒 対 策 委 員 会 や 昭 和
14
年 旧 札 幌 鉄 道 局 に 凍 上 対 策 委 員 会 が で き て か ら で あ る 1)。こ の 当 時 は ,鉄 道 を 中 心 と し た 基 盤 整 備 が 進 ん だ 時 代 で あ っ た こ と か ら , 凍 上 問 題 も 鉄 道 建 設 上 の 問 題 と し て 扱 わ れ て き た 。 し か し , そ の 後 は 交 通 形 態 の 変 化 に よ る 現 代 ま で の モ ー タ リ ゼ ー シ ョ ン の 急 速 な 進 展 が 凍 上 問 題 を 道 路 を 中 心 と し た も の に 変 え て い っ た 。国 内 で 道 路 の 凍 上 問 題 が 表 面 化 し た 背 景 に は , 戦 後 に 冬 期 間 の 交 通 確 保 の た め 精 力 的 に 除 雪 を 進 め た こ と に あ る 。 北 海 道 で は , 昭 和
20
年 の 札 幌 - 小 樽 , 札 幌 - 真 駒 内 の128km
の 除 雪 か ら 始 ま り ,僅 か5
年 後 の 昭 和25
年 に は ,冬 期 交 通 可 能 な 道 路 延 長 が3,000km
に ま で 達 し た 2)。 こ の よ う な 除 雪 は , 従 来 ま で 数m
の 積 雪 下 で 地 盤 凍 結 を 免 れ て い た 路 床 土 を 著 し く 凍 結 さ せ , そ の 結 果 , 凍 上 現 象 が に わ か に 表 面 化 す る こ と と な っ た 。国 内 で 凍 上 問 題 の 解 決 が 急 務 と さ れ た 時 代 よ り ,や や 先 行 し た 形 で
1930
年 代 に は ,Taber
3)やBeskow
4)に よ っ て 凍 上 の 理 論 体 系 が 作 ら れ て い た 。 し た が っ て , 国 内 の 道 路 凍 上 問 題 の 解 決 に も , こ れ ら の 理 論 を 基 に し た 対 策 技 術 へ の 応 用 と し て 道 内 各 地 で 凍 結 深 さ の 実 測 や 被 害 調 査 が 精 力 的 に 行 わ れ た 5)。 北 海 道 開 発 局 を 中 心 と し た こ れ ら の調 査 結 果 に よ り , 昭 和
30
年 代 後 半 ま で に ほ ぼ 現 在 の 凍 上 対 策 工 法 の 原 型 が 出 来 上 が り 置 換 工 法 す な わ ち , 凍 上 性 の 土 を 理 論 最 大 凍 結 深 さ 程 度 ま で 非 凍 上 性 の 土 に 置 き 換 え る 工 法 が 凍 上 対 策 の 主 流 と な っ た 。 こ の 工 法 が 国 内 で 確 立 さ れ た こ と に よ り , 凍 上 の 被 害 数 は 激 減 す る こ と に な る 。 前 述 し た 凍 上 の メ カ ニ ズ ム に 関 す る 研 究 や 凍 土 の 利 用 技 術 が 時 代 と 共 に 進 展 す る 反 面 , 凍 上 抑 制 工 法 に 関 す る 研 究 が こ の 時 代 を 期 に 収 束 し た と も 言 え る 。 現 在 ま で 凍 上 抑 制 工 法 の 研 究 に 注 目 が 集 ま ら な か っ た 理 由 に は , 置 換 工 法 の 信 頼 性 の 高 さ が 挙 げ ら れ る 。 置 換 工 法 は , 凍 上 の 本 質 的 な 土 質 の 部 分 を 改 善 す る 手 法 で あ る た め , 十 分 な 材 料 選 定 と 置 換 厚 さ を 決 定 す れ ば , 凍 上 を ほ ぼ ゼ ロ に 抑 え る こ と が 可 能 で あ る 。 こ の よ う な 信 頼 性 の 高 さ か ら , 一 時 期 を 境 に 凍 上 問 題 を 解 決 済 み の 問 題 と 扱 う 向 き も あ っ た 。 し か し , 近 年 の 建 設 コ ス ト の 削 減 や 環 境 問 題 か ら 置 換 工 法 に 対 す る 問 題 点 も 幾 つ か 挙 げ ら れ る よ う に な っ て き た 。瀬 在 ら 6)は , 高 速 道 路 で 生 じ た 凍 上 箇 所 の
9
割 が 切 土 に 集 中 し て お り , 盛 土 で 生 じ た 箇 所 の 約 半 数 は3m
以 下 の 低 盛 土 で 被 害 が 集 中 し て い る こ と を 報 告 し て い る 。 こ の よ う な 調 査 か ら , 現 在 一 律 に 設 計 さ れ て い る 置 換 工 法 に 対 し て 現 場 条 件 を 加 味 し た 置 換 率 の 変 更 へ と 積 極 的 な 研 究 が 成 さ れ 始 め て い る 7),8)。ま た , 置 換 工 法 は 大 量 の 掘 削 土 を 生 じ さ せ る こ と か ら 掘 削 残 土 の 処 分 問 題 や 同 時 に 置 換 土 と し て 使 用 さ れ る 良 質 な 粗 粒 土 ( 砕 石 や 砂 ) の 枯 渇 も 懸 念 さ れ て い る 。 上 述 の 置 換 率 の 見 直 し な ど も 掘 削 土 の 削 減 な ど コ ス ト 面 か ら も 有 効 な 手 法 で あ る 。 さ ら に 近 年 で は , 置 換 材 料 の 代 替 と し て コ ン ク リ ー ト 廃 材 9),10),11)や 廃 タ イ ヤ 12),13),14), 廃 ビ ニ ー ル ペ レ ッ ト 15),16)な ど を 利 用 し た 研 究 例 も 報 告 さ れ て お り ,凍 上 対 策 と し て 新 た な 展 開 を 見 せ て い る 。
つ ぎ に , 凍 上 対 策 が 道 路 を 軸 と し て 発 展 し て き た こ と を 述 べ た が , 他 の 構 造 物 に も 凍 上 の 被 害 は 広 く 観 察 さ れ て い る 。 し か し , 道 路 の よ う に 一 定 条 件 で 除 雪 が 行 わ れ る よ う な 構 造 物 と 異 な り , 特 に 多 雪 地 域 の 構 造 物 で は 除 雪 環 境 な ど に よ っ て 凍 上 の 被 害 形 態 も 大 き く 変 化 し て く る 。 そ の た め , 一 律 の 対 策 を 施 す こ と が 難 し く , 単 純 な 置 換 工 法 の 適 用 な ど は , 状 況 に よ っ て 過 剰 設 計 に 成 り 得 る 可 能 性 も 強 い 。 基 本 的 に 置 換 工 法 は , 凍 上 を 完 全 に 抑 制 す る 手 法 で あ り , 構 造 物 の ニ ー ズ や 重 要 度 に よ っ て は , 地 盤 の 凍 上 性 を 低 減 さ せ る 程 度 の 補 助 的 な 抑 制 工 法 が 適 す る 場 合 も あ る 。 し か し , 現 状 で は , 構 造 物 の 種 類 や 使 用 環 境 に 応 じ た 凍 上 対 策 工 法 の 提 案 な ど は さ れ て お ら ず , 今 後 様 々 な 手 法 で の 凍 上 抑 制 工 法 の 提 案 が 望 ま れ る と こ ろ で あ る 。
本 論 文 は , 凍 上 抑 制 工 法 に 関 わ る 問 題 と し て , 材 料 の 凍 上 性 評 価 手 法 や 凍 上 性 土 の 有 効 利 用 を 目 的 と し た 石 灰 に よ る 凍 上 抑 制 効 果 の 検 討 , な ら び に 構 造 物 の 種 類 に 応 じ た 凍 上 対 策 工 法 の 提 案 な ど を 行 い , 各 種 凍 上 対 策 工 法 の 効 果 に つ い て 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。
1-2 凍 上 問 題 に 関 す る 既 往 の 研 究
1-2-1 凍 上 現 象
自 然 界 に お け る 凍 上 現 象 は , 冬 季 に 地 盤 内 の 温 度 が 低 下 し , 間 隙 水 が 凍 結 す る こ と に 起 因 し て 発 生 す る 。た だ し ,水 - 氷 へ の 相 変 化 に よ る 体 積 膨 張 率 は
9
% 程 度 で あ り , 冬 季 間 に 数10cm
に も 及 ぶ よ う な 地 盤 隆 起 を 単 な る 水 の 相 変 化 か ら 説 明 す る こ と は で き な い 。 凍 上 に よ り 隆 起 し た 地 盤 を 掘 削 す る と , 幾 重 に も 層 状 に 形 成 さ れ た 氷 晶 ( ア イ ス レ ン ズ ) が 確 認 で き , そ れ ら 氷 の 総 量 は 凍 結 前 に 存 在 し た 水 分 量 を 遥 か に 超 え る 量 に な っ て い る 。 す な わ ち , 凍 上 現 象 と は ア イ ス レ ン ズ を 形 成 す る 過 程 で 未 凍 結 部 分 か ら 水 分 の 供 給 を 受 け た 場 合 に 生 じ る 現 象 で あ り , 水 分 供 給 を 受 け な が ら 成 長 し た ア イ ス レ ン ズ が 幾 重 に も 形 成 さ れ る こ と に よ り , 大 き な 体 積 膨 張 を 生 じ さ せ る 。地 盤 の 凍 結 は , 冬 期 間 の 凍 上 に よ る 地 盤 隆 起 や 初 冬 に 見 ら れ る 霜 柱 な ど 身 近 な 現 象 と し て 古 く か ら 人 々 に 知 ら れ て い た 。 し か し , 土 質 工 学 が
18
世 紀 のCoulomb
の 土 圧 論 に 始 ま り ,Terzaghi (1925)
に よ っ て 近 代 土 質 工 学 と し て 体 系 付 け ら れ た こ と を 考 え る と , 凍 上 研 究 の 歴 史 は そ れ ほ ど 古 く は な い 。 初 め て 凍 上 を 理 論 的 観 点 か ら 述 べ ら れ た も の は1930
年 代 のTaber
3)やBeskow
4)の 研 究 か ら で あ り , 凍 上 が 土 中 に 発 生 す る ア イ ス レ ン ズ に 起 因 し た も の と し て , 水 分 の 移 動 と 氷 晶 生 成 の メ カ ニ ズ ム を 論 じ た 。 特 にTaber
は , 凍 結 時 に 体 積 収 縮 を 起 こ す よ う な ベ ン ゼ ン な ど 数 種 の 液 体 で 置 換 し た 土 に お い て も 凍 上 を 確 認 し , 凍 上 が 水 分 の 相 変 化 に よ る 膨 張 現 象 で は な い こ と を 示 し た 。 ま た ,Beskow
は 平 均 粒 径 と 凍 上 性 の 関 係 か ら 凍 上 を 起 こ し や す い 粒 径 と し て ,0.005
~
0.002mm
の 範 囲 を 示 し た 。Casagrande
17)は ,0.002mm
以 下 の 粒 子 含 有 量 と 凍 上 性 の 関 係 に 着 目 し , 凍 上 速 度 か ら 凍 上 性 の 判 定 方 法 を 提 案 し た 。 ま た ,Casagrande
17)が 示 し た 凍 上 速 度 の 判 定 を 元 にKaplar
18)は 各 種 の 土 質 と 凍 上 性 の 関 係 を 取 り ま と め た 。 凍 上 性 と 粒 径 の 関 係 な ど が 明 ら か に さ れ る 一 方 で , 凍 上 研 究 の 当 初 か ら 精 力 的 に 最 大 凍 上 力 の 研 究 が さ れ る よ う に な り , こ の 過 程 でEverett
とHaynes
19)に よ っ て 凍 上 機 構 の 説 明 に 毛 管 力 が 使 わ れ る よ う に な っ た 。 し か し , そ の 後 に 毛 管 力 理 論 で 得 ら れ る 凍 上 力 が 実 際 の 凍 上 力 よ り も 著 し く 小 さ い こ と をRadd
とOertle
20)が 実 験 的 証 明 し た た め , こ の 理 論 は 否 定 さ れ た 。 他 の 凍 上 理 論 と し て ,Takagi
21)に よ る 吸 着 水 膜 理 論 は ア イ ス レ ン ズ の 成 長 に よ る 吸 着 水 膜 の 減 少 を 水 膜 の 厚 み を 保 と う と す る 機 構 か ら 凍 上 力 や 吸 水 力 を 説 明 し た 。 た だ し , 吸 着 水 膜 理 論 だ け で 実 際 の 凍 上 現 象 を 説 明 す る こ と は 難 し い 点 も 多 く , 更 な る 理 論 の 展 開 が 必 要 と さ れ て い る 。ま た ,
Miller
22)は ア イ ス レ ン ズ が 土 中 の0
℃ 位 置( 凍 結 面 )で は な く ,や や 低 温 側 で 成 長 す る こ と を 確 認 し , ア イ ス レ ン ズ と 凍 結 面 と の 領 域 を フ ロ ー ズ ン フ リ ン ジ と 名 付 け た 。 現 在 で は , フ ロ ー ズ ン フ リ ン ジ 内 の 水 分 挙 動 が 凍 上 機 構 の 解 明 の 鍵 と さ れ て おり , 幾 つ か の 仮 説 が 提 案 さ れ て い る 。
Gilpin
23)は 不 凍 水 膜 を 通 っ て ア イ ス レ ン ズ へ の 水 分 供 給 が さ れ る も の と し , 温 度 低 下 に よ る 不 凍 水 膜 の 圧 力 変 化 で 水 分 移 動 を 説 明 し た 。Miller
24)は ア イ ス レ ン ズ の 成 長 に よ る 部 分 的 な 不 凍 水 膜 の 厚 さ の 変 化 を 水 分 移 動 の 説 明 に 用 い た 。ま た ,O’Neill
とMiller
25)は 両 仮 説 を 複 合 し て 水 分 移 動 モ デ ル を 提 案 し た 。現 時 点 で は ,ア イ ス レ ン ズ 直 下 に あ る 厚 さ お よ そ10
~20nm
26)と 言 わ れ て い る 不 凍 水 膜 を 介 し て 水 分 供 給 が さ れ る こ と は 確 か と 考 え ら れ る が , そ の 水 分 の 移 動 機 構 を 物 理 的 な モ デ ル と し て 説 明 す る に は 至 っ て い な い 。1-2-2 凍 上 量 予 測
凍 上 機 構 が 物 理 的 モ デ ル と し て 完 成 に 至 っ て い な い な が ら も , 幾 つ か の 工 学 的 な 凍 上 量 予 測 の ア プ ロ ー チ が さ れ て い る 。特 に
LNG
やLPG
等 の 地 下 貯 蔵 に よ っ て 生 じ る タ ン ク 周 辺 地 盤 の 凍 結 に 対 し て , 設 計 に 適 用 で き る 凍 上 量 の 予 測 が 必 要 で あ っ た 。LNG
等 の 地 下 タ ン ク は ,地 下 水 位 以 下 の 大 深 度 が 対 象 と な る た め 飽 和 地 盤 で あ る こ と や 自 然 凍 結 と 異 な り 供 給 さ れ る 熱 量 が 想 定 し や す い 条 件 に は あ る 。し か し ,LNG
タ ン ク の 出 現 以 前 は , タ ン ク 設 計 に 用 い る こ と が で き る 実 用 的 な 凍 上 理 論 は 存 在 し な か っ た 。世 界 で 最 初 に 実 用 的 な 凍 上 量 の 定 量 予 測 を 可 能 に し た の は 高 志 27)で あ り ,土 の 凍 上 率 を 次 式 で 表 現 し た 。
U
U
00
01
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・(1-1
)こ こ に , ζ : 凍 結 膨 張 率 , σ : 凍 結 面 に 作 用 す る 有 効 応 力 , U : 凍 結 進 行 速 度 ζ0, σ0, U0は 室 内 凍 上 試 験 か ら 求 め ら れ る 定 数
凍 上 機 構 か ら は , 凍 上 を 支 配 す る 因 子 は 凍 結 速 度 U で は な く , 凍 結 面 の 温 度 勾 配 で あ る と の 考 え 方 が 一 般 的 で あ り , 高 志 の 式 は 物 理 現 象 を 厳 密 に 説 明 す る も の で は な い と い わ れ て い る 。 し か し , 凍 結 速 度 は 凍 結 面 の 温 度 勾 配 と も 関 連 し て お り , 実 タ ン ク の 周 辺 地 盤 の 凍 上 現 象 を 精 度 良 く 推 定 で き る こ と か ら , こ の 理 論 は 工 学 的 に 高 く 評 価 さ れ て い る 。 な お , 高 志 の 式 は
LNG
タ ン ク の 設 計 や 地 盤 凍 結 工 法 に お け る 凍 上 量 や 凍 土 圧 の 予 測 に 広 く 用 い ら れ て お り ,LNG
地 下 式 貯 槽 指 針 28)に も 採 用 さ れ て い る 。他 の 凍 上 予 測 理 論 と し て は ,
Konrad
とMorgenstern
に よ るSP( Segregation Potential )
理 論 が 存 在 す る 29),30),31)。Konrad
ら は , 多 く の 実 験 か ら 凍 上 量 を 予 測 す る 式 と し て 次 式 を 導 い た 。T grad SP
V
0
0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・(1-2
)こ こ に ,
V
0: 凍 結 面 へ の 吸 水 速 度 ,grad T
: フ ロ ー ズ ン フ リ ン ジ 内 の 温 度 勾 配 ,SP
0: 土 の 凍 上 性 に 依 存 し た 比 例 定 数SP
0で 表 現 さ れ る 土 の 凍 上 性 は ,物 理 的 に 表 現 が 困 難 な 性 質 を 実 験 に よ っ て 工 学 的 に 置 き 換 え た 指 標 と さ れ て い る 。SP
0 は 上 載 荷 重 や 凍 結 面 で の 間 隙 水 圧 , フ ロ ー ズ ン フ リ ン ジ の 温 度 低 下 速 度 に 依 存 す る た め , 物 理 的 な 定 数 と し て は 成 立 し な い 。SP
は 普 遍 的 な 物 理 定 数 に は 成 り 得 な い も の の , 原 位 置 で の こ の 理 論 の 適 用 例 で は 観 測 結 果 と 比 較 的 良 い 一 致 を 示 す こ と が 確 認 さ れ て い る 。Nixon
32)や 福 田 33)は , 野 外 で の 精 密 な 凍 上 試 験 に よ っ て ,SP
理 論 を 検 証 し 実 際 現 象 に 一 致 す る こ と を 示 し た 。 さ ら に 福 田 34)ら は ,自 然 環 境 下 に あ る 原 地 盤 の 温 度 分 布 と 凍 上 量 を 計 測 し ,そ れ ら の 結 果 か ら 求 め たSP
に よ る 予 測 値 が 実 際 の 凍 上 量 と 一 致 す る こ と を 示 し た 。 ま た , 了 戒 と 伊 藤 ら はSP
理 論 が 凍 結 速 度 が 非 常 に 小 さ な 場 合 の 飽 和 土 や , さ ら に 不 飽 和 土 に つ い て も 工 学 的 に 利 用 可 能 で あ る こ と を 示 し , 吸 水 速 度 が 有 効 応 力 に 逆 比 例 す る こ と を 示 し た35),36)。 し か し , 国 内 外 で も
SP
理 論 を 用 い た 実 際 の 解 析 は , 例 が 少 な い こ と や 室 内 試験 で 正 確 な フ リ ン ジ 内 の 温 度 勾 配 を 調 べ る こ と が 難 し い こ と な ど 幾 つ か の 問 題 も あ る 。 凍 上 量 の 予 測 は , 一 部 の 人 工 凍 結 地 盤 な ど で は 可 能 で あ る 。 し か し , 自 然 凍 結 地 盤 で は , 対 象 と な る 層 が 不 飽 和 土 で あ る こ と や 地 下 水 位 な ど の 想 定 が 難 し い こ と , さ ら に 気 象 条 件 で あ る 凍 結 条 件 を ど の よ う に 設 定 す る か な ど , 解 決 し な け れ ば な ら な い 問 題 が 多 く , 工 学 的 に 利 用 可 能 な 予 測 手 法 の 確 立 ま で に は 至 っ て い な い 。
1-2-3 凍 上 性 の 評 価 と 凍 上 対 策 工 法
凍 上 性 の 評 価 に は , 粒 度 組 成 や コ ン シ ス テ ン シ ー な ど 土 の 物 性 値 か ら 判 定 す る 手 法 と 凍 上 試 験 に よ っ て 直 接 的 に 評 価 す る
2
種 類 の 方 法 が あ る 。Beskow
4)が 粒 径 と 凍 上 性 の 関 係 を 示 し た よ う に ,Casagrande
17) も0.02mm
以 下 の 粒 子 を3
% 以 上 含 む 土 が 凍 上 し や す い こ と を 示 し て い る 。Willis
1)は コ ン シ ス テ ン シ ー 限 界 と 凍 上 性 の 関 係 を ま と め て い る 。 現 在 各 国 で 提 案 さ れ て い る 土 質 に よ る 凍 上 性 判 定 の 多 く が 粒 度 組 成 も し く は 粒 度 組 成 と コ ン シ ス テ ン シ ー か ら 行 わ れ て い る 。1989
年 に 国 際 土 質 工 学 会 のTC8
が 報 告 し た 土 質 か ら の 凍 上 性 判 定 も こ れ ら の 指 標 が 同 様 に 用 い ら れ て い る 37)。 国 内 で も 道 路 土 工-
排 水 工 指 針-
38)に は 凍 上 を 起 こ し に く い 材 料 と し て 粒 度 組 成 か ら の 判 定 基 準 が 存 在 す る 。凍 上 試 験 は , 人 工 的 な 凍 結 地 盤 の 解 析 や 研 究 レ ベ ル の 特 殊 な 試 験 を 除 き , 材 料 の 凍 上 性 を グ レ ー ド 分 け す る た め の 定 性 的 な 試 験 が 多 い 。 先 に 述 べ た よ う に , 土 の 凍 上 性 は ,凍 結 条 件 ,有 効 応 力 ,給 排 水 条 件 な ど に よ っ て 変 化 す る 。こ れ ら を 加 味 し た 上 で ,
土 の 凍 上 性 を 固 有 の 物 性 値 と し て 表 現 す る こ と は 非 常 に 難 し く , 凍 上 判 定 試 験 の 多 く は , あ る 試 験 条 件 下 で 凍 上 の 可 能 性 の 強 弱 を 調 べ る も の で あ る 。 ま た , 寒 冷 地 な ど の 自 然 凍 結 を 対 象 と し た 工 学 的 な 判 定 は , 置 換 工 法 に 代 表 さ れ る よ う な 凍 上 対 策 工 の 必 要 性 判 定 の た め に 用 い ら れ る も の で あ り , 凍 上 対 策 の 選 定 や 設 計 法 に 直 接 利 用 さ れ る も の で は な い 。 国 内 で は , 伊 福 部 2)が
Taber
3)の 試 験 法 を 参 考 に し て 材 料 の 凍 上 性 判 定 の た め の 実 験 を 行 い , 昭 和30
年 代 活 発 に 行 わ れ た 火 山 灰 土 の 凍 上 性 判 定 の た め の 凍 上 試 験 方 法 を 示 し た 。こ の 試 験 方 法 は 現 在 も 利 用 さ れ て お り ,道 路 土 工-
排 水 工 指 針-
36) や 北 海 道 開 発 局 ,日 本 道 路 公 団 39)で 仕 様 書 な ど に 記 載 さ れ て い る 。ま た ,日 本 道 路 公 団 37)で は , 独 自 の 凍 上 試 験 法 と し てCBR
モ ー ル ド を 用 い た 凍 上 試 験 が あ り , 凍 上 性 と 同 時 に 凍 上 後 のCBR
も 求 め る こ と が で き る 試 験 法 を 提 案 し て い る 。 し か し , 近 年 こ れ ら 国 内 に 存 在 す る 凍 上 試 験 に 対 し て , 試 験 精 度 や 試 験 条 件 の 問 題 点 な ど が 指 摘 さ れ 始 め ,新 し い 試 験 方 法 の 提 案 な ど も 成 さ れ る よ う に な っ て い る 40),41)。材 料 判 定 試 験 と し て 特 色 が あ る も の に は ,ASTM
に 記 載 さ れ て い る ス プ リ ッ ト タ イ プ の リ ン グ モ ー ル ド を 用 い る 試 験 法 が あ る 42)。 こ れ は ,6
段 に 分 か れ た リ ン グ 型 の モ ー ル ド を 積 み 重 ね , 凍 上 時 に 生 じ る 周 面 摩 擦 を 低 減 さ せ る 方 法 で あ る 。 し か し , こ の よ う な 試 験 法 は 稀 で あ り 大 多 数 の 試 験 は , ア ク リ ル 製 の 円 筒 モ ー ル ド に 試 料 を 入 れ る タ イ プ で あ る 。 寒 冷 地 に お け る 凍 上 対 策 の 主 流 は , 置 換 工 法 で あ る 。 置 換 工 法 の 採 用 に は , 上 述 の 凍 上 試 験 な ど に よ り 凍 上 性 を 判 定 し ,凍 結 対 象 深 さ ま で の 土 質 が 凍 上 性 を 示 し た 場 合 , 凍 結 深 さ を 推 定 し て 非 凍 上 性 の 土 に 置 き 換 え が な さ れ る 。 し た が っ て , 置 換 工 法 に お い て は , 材 料 判 定 と 凍 結 深 さ の 推 定 が 最 も 重 要 で あ る 。 地 盤 の 凍 結 深 さ の 推 定 に は , 土 の 熱 伝 導 率 な ど の 熱 的 性 質 を 把 握 す る 必 要 が あ る 。 熱 伝 導 率 の 推 定 法 と し て は , 有 名 な も の にKersten
やJohansen
の 実 験 式 が あ る 。Kersten
43)は19
種 類 の 土 と 砕 石 の 実 験 か ら 含 水 比 と 乾 燥 密 度 の 関 数 と し て 凍 土 と 未 凍 土 の 熱 伝 導 率 を 求 め る 式 を 提 案 し た 。 ま たJohansen
44)は , 飽 和 度 , 間 隙 比 , 石 英 含 有 量 な ど か ら 熱 伝 導 率 を 求 め る 実 験 式 を 導 い た 。Faraouki
45)に よ る とJohansen
の 式 は ,0.1
以 上 の 飽 和 度 で 土 質 や 凍 結 条 件 に 関 わ ら ず 良 い 結 果 を 示 す と さ れ ,Kersten
の 式 は 飽 和 度 が 低 い 細 粒 土 や 石 英 量 の 異 な る 粗 粒 土 に は 適 合 し な い と さ れ て い る 。凍 結 深 さ の 推 定 に は , 土 の 熱 定 数 を 決 定 し た 上 で , 修 正
Berggren
式(Aldrich
式)
46) が 用 い ら れ る 。こ れ は ,湖 沼 の 氷 層 生 成 に つ い て 熱 伝 導 論 よ り 解 析 を 行 っ たStefan
やNeumann
の 解 法 を 舗 装 体 の よ う な 多 層 地 盤 に 応 用 し た も の で あ る 。ど の 理 論 も ,マ イ ナ ス の 熱 を 受 け る 一 端 ( 地 盤 の 場 合 は 地 表 面 ) が 瞬 時 に あ る マ イ ナ ス 温 度 に な っ た 時 の 凍 結 厚 さ を 推 定 す る も の で あ り , 本 来 は 地 表 面 温 度 に よ り 解 析 が 行 な わ れ る の が 理 想 的 で あ る 。し か し ,実 用 上 は 外 気 温 デ ー タ を 解 析 に 用 い て い る 。こ の 点 に つ い て は , 理 論 上 多 少 の 問 題 は あ る が , 伊 福 部 2)に よ る 道 内 数 十 箇 所 の 実 測 例 で は 最 大 凍 結 深 さと 推 定 値 は , 良 い 一 致 を 示 し 工 学 的 に 問 題 が な い こ と を 確 認 し て い る 。 ま た , 武 市 ら
47)は
AMeDAS
デ ー タ を 用 い て 道 内 数 ヶ 所 の 実 測 凍 結 深 さ と 推 定 値 を 比 較 し , 最 大 凍 結 深 が 推 定 値 と 良 く 一 致 す る こ と を 示 し た 。 さ ら に , 従 来 の 方 法 で は , 最 大 凍 結 深 の 推 定 に は 適 す る が , 凍 結 進 行 過 程 の 予 測 を 過 小 評 価 す る 点 に つ い て 熱 比 の 補 正 に よ っ て 推 定 精 度 が 上 が る こ と を 示 し て い る 。 置 き 換 え 深 さ の 決 定 は , 推 定 さ れ た 凍 結 深 さ を100
% と し た 場 合 の70
~100
% の 範 囲 で 定 め ら れ る 。70
% ま で の 置 き 換 え 深 さ の 低 減 に つ い て は ,伊 福 部 2)に よ る 砂 利 道 の 観 測 で80
% 以 深 に 進 行 し た 凍 結 に よ る 地 表 面 の 凍 上 が 全 凍 上 量 の1
% 程 度 で あ っ た と の 報 告 を 基 に し て い る 。 現 在 , 国 内 の ア ス フ ァ ル ト 舗 装 要 綱 48)に は , 理 論 最 大 凍 結 深 さ の70
% の 値 が 置 き 換 え 深 さ と し て 採 用 さ れ て い る 。 道 路 の 凍 上 対 策 の よ う に 常 時 除 雪 が 行 な わ れ る 個 所 の 凍 結 深 さ の 推 定 は , 上 述 の 手 法 が 用 い ら れ る が 構 造 物 の 種 類 や 地 域 に よ っ て は , 積 雪 に よ る 凍 結 深 さ の 減 少 が 考 え ら れ る 場 合 が あ る 。福 田 49)は ,積 雪 下 の 凍 結 深 さ を 測 定 し20cm
以 上 の 自 然 積 雪 が 継 続 し て あ っ た 場 合 , 凍 結 面 は 地 表 面 近 く に 停 滞 し 地 盤 内 の 凍 結 が 殆 ど 起 こ ら な い と し た 。ま た ,Takeichi
50)ら は ,圧 雪 面 が 残 る 軽 交 通 道 路 に 対 し て ,圧 雪 面 下 で の 凍 結 深 さ の 推 定 法 を 提 案 し て い る 。 こ の よ う な , 積 雪 の 断 熱 性 を 考 慮 し た 凍 結 深 さ の 推 定 法 は , 道 路 以 外 に も 各 種 の 構 造 物 の 設 計 に 応 用 が 可 能 で あ り , 一 般 建 築 物 な ど へ の 適 用 が 期 待 で き る 。 他 の 置 換 率 の 低 減 法 と し て は , 横 田 7)ら が 地 下 水 位 の 深 さ と 凍 上 量 の 関 係 を 実 際 の 盛 土 に よ っ て 観 測 し , 地 下 水 位 ま で の 距 離 が 遠 く な る と 凍 上 量 が 減 少 す る こ と を 報 告 し て い る 。地 下 水 位 と 凍 上 性 の 関 係 は ,Beskow
4) に よ っ て も 示 さ れ て お り , 載 荷 圧 力 が 小 さ く 無 視 で き れ ば 凍 上 速 度 は 地 下 水 位 ま で の 距 離 に 反 比 例 す る と し て い る 。 し た が っ て , 横 田 ら の 研 究 の よ う に 盛 土 高 さ に よ っ て 置 換 率 を 変 化 さ せ る よ う な 手 法 が , 現 在 一 律 の 置 換 率 で 設 計 さ れ る 手 法 に 比 べ コ ス ト 面 か ら も 有 効 な 手 段 に な る と 考 え ら れ る 。諸 外 国 に お け る 置 換 工 法 の 設 計 法 と し て は ,米 国 51)で の 置 換 率80
% ,や ス イ ス 52)で は 凍 結 深 さ90cm
ま で は100
% と し ,そ れ 以 上 は 経 済 的 な 理 由 か ら 次 第 に 置 換 率 を 低 減 さ せ る 手 法 が 用 い ら れ て い る 。置 換 工 法 以 外 の 凍 上 対 策 と し て は , ジ オ テ キ ス タ イ ル ( 不 織 布 ) な ど を 用 い た 遮 水 工 法 や 断 熱 工 法 , 薬 剤 な ど に よ る 土 質 の 改 善 な ど が あ る 。 ジ オ テ キ ス タ イ ル に よ る 遮 水 工 法 の 効 果 は ,土 谷 53),
Bell
54),Henry
55)な ど に よ っ て 報 告 さ れ て い る 。舗 装 内 に 断 熱 材 を 敷 設 し 凍 結 深 さ を 抑 制 す る 断 熱 工 法 は , 伊 福 部 56)やKubo
57)に よ っ て 凍 結 深 さ の 減 少 が 確 認 さ れ て い る 。 た だ し , 断 熱 工 法 は 人 為 的 作 業 が 多 く コ ス ト 面 か ら も 置 換 工 法 よ り も 割 高 に な る こ と が 多 い た め , 道 路 の 凍 上 対 策 と し て は そ れ ほ ど 多 く 採 用 さ れ て い な い 。こ れ に 対 し ,建 築 物 基 礎 へ の 断 熱 工 法 の 利 用 は ,藤 村 58)ら に よ っ て 積 極 的 な 研 究 が 行 な わ れ ,す で に 設 計 マ ニ ュ ア ル 59)も 作 ら れ て い る 。薬 剤 に よ る 土 質 改 善 は 主 と し て セ メ ン ト や 石 灰 に よ る 土 質 安 定 処 理 で あ り , 従 来 強 度 増 加 を 目 的 と し て 行な っ て き た 安 定 処 理 の 凍 上 抑 制 効 果 を 利 用 し た も の で あ る 。 安 定 処 理 土 の 凍 上 抑 制 効 果 に 関 す る 研 究 は ,
Thompson
60),Fukuda
61), 石 田 62),63),64)の ほ か , 幾 つ か の 研 究 報 告 が さ れ て い る 65),66),67),68),69),70),71),72),73)。 そ の 多 く は , 室 内 試 験 に よ っ て セ メ ン ト や 石 灰 に よ る 安 定 処 理 の 凍 上 抑 制 効 果 を 確 認 し た 内 容 で あ り , 原 位 置 で の 研 究 報 告 は そ れ ほ ど 多 く 存 在 し な い 。Fukuda
61) は ,セ メ ン ト 安 定 処 理 土 に つ い て 室 内 お よ び 屋 外 で の 試 験 を 行 い 凍 上 抑 制 効 果 を 確 認 し た 。 久 保 田 67)や 松 尾 70), 川 端 73)な ど は 実 際 の 舗 装 構 造 内 に 安 定 処 理 層 を 設 け 凍 上 抑 制 効 果 を 検 証 し て い る 。安 定 処 理 に よ る 凍 上 抑 制 は , す べ て の 研 究 報 告 に お い て そ の 効 果 が 確 認 さ れ て い る が , 実 務 に 積 極 的 に 利 用 さ れ る に は 至 っ て お ら ず , 長 期 安 定 性 や 経 済 性 , 実 際 の 施 工 方 法 な ど 幾 つ か の 課 題 を 残 し て い る 。1-3 本 論 文 の 構 成
本 論 文 は , 各 種 凍 上 対 策 の 効 果 と そ れ ら に 用 い る 材 料 特 性 を 明 ら か に す る た め , 以 下 に 述 べ る 内 容 で 構 成 さ れ て い る 。
第
2
章 で は , 凍 上 発 生 の メ カ ニ ズ ム や 現 状 の 凍 上 対 策 工 法 , 凍 上 性 の 判 定 方 法 な ど に つ い て 述 べ る 。 さ ら に , 凍 上 抑 制 工 法 と し て 期 待 さ れ る 土 質 安 定 処 理 に つ い て , 主 に 石 灰 安 定 処 理 を 取 り 上 げ , そ の 基 本 的 な 反 応 メ カ ニ ズ ム に つ い て 解 説 す る 。第
3
章 で は ,火 山 灰 土 を 対 象 に 簡 易 な 凍 上 性 判 定 法 お よ び 凍 結 融 解 作 用 を 受 け た 場 合 の 材 料 特 性 に つ い て 述 べ る 。 火 山 灰 土 は 北 海 道 内 に 広 く 分 布 し て お り , 様 々 な 土 工 材 料 に 用 い ら れ て い る 。 特 に , 良 質 な 火 山 灰 土 は 置 換 材 料 と し て も 多 く 使 用 さ れ , 砂 や 砕 石 に 代 わ る 材 料 と し て 位 置 付 け ら れ て い る 。 し か し , 火 山 灰 土 の 工 学 的 性 質 を 簡 易 な 指 標 か ら 判 定 す る こ と は 難 し く , 特 に 凍 上 性 は 一 般 的 な 粗 粒 土 の よ う な 細 粒 分 含 有 率 に よ る 判 定 が 困 難 で あ る 。 そ こ で , 現 在 の 火 山 灰 土 の 凍 上 性 簡 易 判 定 法 の 問 題 点 を 指 摘 し , 各 種 土 質 パ ラ メ ー タ と 凍 上 性 の 関 係 か ら 新 た な 凍 上 性 簡 易 判 定 方 法 を 提 案 す る 。 さ ら に , 凍 結 融 解 作 用 が 火 山 灰 土 の 粒 子 破 砕 性 に 与 え る 影 響 を 検 討 し , 凍 上 性 と 併 せ て 凍 結 を キ ー ワ ー ド に 道 内 火 山 灰 土 の 材 料 特 性 を 取 り ま と め る 。第
4
章 で は , 置 換 工 法 に 代 わ る 凍 上 抑 制 工 法 と し て 石 灰 安 定 処 理 に 着 目 し , 抑 制 効 果 に 関 わ る 材 料 特 性 を 述 べ る 。 こ の 章 で は , 安 定 処 理 土 の 処 理 効 果 の 確 認 と し て 一 般 的 な 強 度 特 性 を 取 り 上 げ , 一 軸 圧 縮 強 度 やCBR
と 凍 上 性 の 関 係 か ら 石 灰 安 定 処 理 の 凍 上 抑 制 効 果 を 検 証 す る 。 ま た , こ れ ま で 明 確 に さ れ て い な い 安 定 処 理 に よ る 凍 上 抑 制 の 機 構 を 解 明 す る た め , 透 水 性 や pF
試 験 等 か ら の 水 分 特 性 の 変 化 か ら 凍 上 抑 制 効 果 に 与 え る 影 響 因 子 を 特 定 す る 。 こ れ ら の 検 討 に よ り , 凍 上 抑 制 を 目 的 と し た 安 定 処 理 の 効 果 的 な 処 理 方 法 の 提 案 を 行 な う 。第
5
章 で は , 原 位 置 に お け る 石 灰 安 定 処 理 の 凍 上 抑 制 効 果 を 検 証 す る 。 検 証 は 実 物大 の 舗 装 体 を 構 築 し , 石 灰 添 加 率 を 変 化 さ せ た 安 定 処 理 工 区 と 従 来 の 置 換 工 法 の 比 較 か ら , 抑 制 効 果 を 確 認 す る 。 ま た , 得 ら れ た 結 果 か ら 実 施 工 に お け る 施 工 上 の 問 題 点 を 考 察 す る 。
第
6
章 で は ,施 設 内 部 か ら の 凍 結 が 問 題 と な る 農 業 用 施 設 に 対 す る 有 効 な 凍 上 対 策 工 法 の 提 案 を 目 的 と し , 各 種 施 設 の 原 位 置 観 測 デ ー タ か ら 凍 結 環 境 の 調 査 と 断 熱 工 法 の 有 効 性 を 検 証 す る 。 こ の 検 討 に は , 施 設 の 使 用 環 境 や 構 造 上 の 特 殊 性 , 積 雪 の 有 無 な ど を 考 慮 し , 様 々 な 条 件 下 に お け る 凍 上 対 策 法 を 提 案 す る 。第