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消費者健康情報サービスの実地調査報告

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(1)

消費者健康情報サービスの実地調査報告

野 添 篤 毅 Atsutαhe NOZOE

1.はじめに

 愛知淑徳大学の国外研修制度を利用して,

2000年8月〜9月の期間,米国ピッッバーグ大 学図書館情報学大学院を中心に研究活動を行っ た。この報告は,その間にピッツバーグ市周辺 にある消費者への健康情報サービスを実施して いる機関を,関連授業を行っているピッツバー グ大学図書館情報学大学院Dr. Ellen Detlefsen 準教授(http://www.sis.pitt.edu/〜ellen)と

ともに実地に訪問調査したので,記録の形でま とめたものである。

 ここで述べる消費者健康サービス(Consumer Health Information Service:CHI)とは,以 下のようにまとめることができる。

●利用者としては,

 一患者

 一患者の家族,友人

 一その他,健康情報を必要としている人々   (青少年,老年者,死を迎えっっある人   など)

●求められる情報としては,

 一病気(診断法,治療法,予後など)

 一医薬品  一医師,病院

(質問例としては

 一この病気への一番良い医者は?

 一この病気へのほかの治療法は?

 一この薬はなにか?

 一昨日のTVニュースで見た医療情報にっ   いてもっと詳しく知りたい。)

●提供される情報のタイプは  一図書

 一レファレンス・ブック

 ー医学専門雑誌 (米国ではJAM4,

  NeωEngland Journα10ゾMedicine,

  British Medicαl Journα1, Lαncetなど)

 一ポピュラー雑誌(日本では,『安心』,『健   康』など)

 一パンフレット類(政府機関,学協会,製   薬企業,患者団体,病院)

 一視聴覚資料(ビデオテープ,オーディオ   テープ,CD−ROM)

 一インターネット情報源

●情報サービス機関としては  一病院図書室

 一大学医学図書館

 一公共図書館(一般レファレンス部門,科   学技術部門など)

 一独立の情報コーナー(病院・クリニック,

  ショッピングモール)

 ここでは,このようなCHIサービスを行って いる機関として,実地に訪問した病院,公共図 書館,企業の情報センター,そして大学図書館 での活動を以下に記述する。

*愛知淑徳大学文学部図書館情報学科

 Department of Library and Information Science, Aichi Shukutoku University JOURNAL OF LIBRARY AND INFORMATION SCIENCE, Vol.14, p.99−106(2000)

(2)

JOURNAL OF LIBRARY AND INFORMATION SCIENCE Vol.14(2000)

2.病院図書館/室

a.ピッッバーグ大学がん研究所患者・家族

教育センター(Patient and Family Education  Center, University of Pittsburgh Cancer

Institute)

   (http://www.pci.upmc.edu)

  ピッッバーグ大学のがん専門病院の一隅に 設置された小さな,患者・家族のためがん情 報コーナーである。閲覧資料としては,がん  に関するパンフレットを中心に一般医学図書,

 ビデオテープなどが用意されていて,利用者  に貸し出しも行う。パンフレット類は政府機  関,学協会発行のものである。また,ブック  トラックに図書,パンフレットを載せて,病  院内を巡回するとともに,センターにスタッ  フ不在のときには,室外に置き,自由に利用  できるようにしている。貸し出した資料は,

 あらかじめ返信用のアドレスと切手の貼られ  た封筒が用意されており,これにいれてポス  トに投函すればセンターに返送されるという  大層便利かっ有効な方法を用いている。

  また,米国国立がん研究所のNCIがん情報  データベースPDQ(Physical Data Query)

 を使うこともできる。病院内のスタッフ1人  だけの小さな情報コーナーであるが,活発に  活動している。

b.ピッッバーグ大学UPMC Passavant病院 医学図書館

   (http://www.upmc.edu/passavant/)

 UPMC(正式名称である)はピッツバーグ  大学医療センター(University of Pittsburgh Medical Center)が大学から独立して,14  の系列病院を持った一大医療ネットワークを 形成している。UPMCは医師3,000人を含む,

 総勢約25,000人のスタッフを有する米国有数  の医療機関となっている。ピッツバーグ市は,

 これまでの の町から, 医療 の都市  へと変貌しているのである。

  これらの系列病院の図書室は,ピッツバー

グ大学医学図書館のシステムHealth

Sciences I.ibrary System (HSLS)のネッ トワークに統合されて,電子ジャーナルを含 めたHSLSで提供されるすべてのサービスに アクセスできる。HSLSでは約1,000種の生物 医学系の電子ジャーナルが用意されている。

 Passavant病院図書館は医療従事者へのサー ビスとともに,医療情報を必要とする全ての 患者,家族そして地域の人々への情報サービ スConsumer Health Information Program を実行している。このサービスを受けたい人 は,手紙,電話,e−mailで質問することがで き,図書館員は個々の質問について,どのよ うに情報を見っけ出すかについて回答する。

 図書室には,一般向けの医学図書(貸出不 可)から専門医学教科書,雑誌,ニュースレ ターのほか,パンフレット類のコレクション を完備している。パンフレット類は5,500点 が収集,主題別にファイルされ,自家製デー

タベースが作られている。(写真①)

 利用者は,図書室内のターミナルから MEDLINEなどのデータベースにもアクセス できる。また医師は,MD Consultant(医 師用Web版の総合情報サービス)のPatient Education Handoutsによって,患者教育用 に,その患者の疾患にっいての説明書を出力 し,そこに医師のコメントをつけて患者に手 渡すことができる。

 専任図書館員1名とアシスタント1名の小 さな図書室であるが,機能的に活動している。

図書室は医師ラウンジとドアで接しており,

24時間の利用が可能である。(写真②)

c.UPMC Shadyside Hospital, Hopwood Library

  (http://www.hsls.pitt.edu/chi/)

  この病院図書室には,サブタイトルとして a health resource center for patients

and families と名付けられているように,

 医療従事者用の部分と,図書室の入口部分の 患者,家族のための図書室に分けられている。

(3)

        写真①

患者用部分は改装されたばかりで,資料は揃っ ていなかったが,図書,パンフレット,雑誌

ビデオと患者用ターミナルが置かれている。

d. HSLS Health Information for the  Consumer

   (http://www.hsls.pitt.edu/chi/)

  ピッッバーグ大学医学図書館システム  (HSLS)では米国国立医学図書館(NLM)

の一般の人々への健康情報提供プロジェクト の援助を受けて,ピッツバーグ地域の一般住 民へのインターネットによる医療情報提供サー

   HSLS−Health lnforrnation for t...

        写真②

ビスを行なっている。ホームページ(図1)

で見ると,NLMのMEDLINEplusで提供さ

れている情報と同様の,疾患,辞書,医薬品,

検査,団体機関,医師などの情報が得られる サイトにリンクされている。また,Evidence based medicineに関連するサイトヘアクセ スができる。UPMCの14の系列病院の図書 室からこのシステムを利用することができる。

 このNLMのプロジェクトは全米31州,49 の個所で医学図書館,公共図書館,などを中 心に活動している。

http://….hsls.pitt.gdu/chi/

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Health lnformation for the Public Prqj㏄t

㎞ded by the National Library of Medicine

Medicine in the News

図1 ピッツバーグ大学医学図書館システム(HSLS)の消費者健康情報Webページ

(4)

JOURNAL OF LIBRARY AND INFORMATION SCENCE Vol.14(2000)

3.公共図書館

a.カーネギー図書館科学技術部門(Carnegie Library of Pittsburgh)

   (http://www.clpgh.org/clp/)

  カーネギー図書館は当初カーネギー財団に  よって創立された私立の公共図書館であった が,現在はピッッバーグ地域で18のブランチ  を持つ公共図書館の中央館となっている。カー  ネギー図書館の1部局である自然科学部門は,

 40万冊の図書,42万冊の製本雑誌,その他  テクニカル・レポート,政府出版物,特許,

2,000itのカレント雑誌のコレクションを持っ  ている。ここでは特に医学・医療に関する資  料収集,レファレンスサービスにも力を入れ,

 参考図書が非常に充実している。また,医療・

 健康に関わる一般書も利用の高いものにっい  ては複数部数購入している。また,Lαncet,

 Nature, Scienceといった専門雑誌から  Preventionといった啓蒙的な健康雑誌も揃え  てある。(写真③)

  レファレンス・サービスが充実しており,

 電話,手紙,e−mail,来館などで受付,年間  95,000件(1998年)を処理している。この中

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には医学,医療関係の質問も数多く,以前ピッ ツバーグ大学医学図書館に在籍した図書館員 がレファレンス・ライブラリアンとして活動

している。

写真③

 館全体としてのレファレンス・サービスには Telephone Ready−Reference Unit(TRRU)

と称す電話レファレンス・サービス・センター が設置されている。ここには良く受ける質問 トピックスにっいて,館の担当部門,図書の 請求記号,そして関連するWeb siteが整理,

リストされ,利用者はWeb上(図2 Library Subject Guideline)からもアクセス可能と なっている。

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図2 カーネギー図書館サブジェクト・ガイド

(5)

b.Northland公共図書館

   (http://www.clpgh.org/ein/northland/)

  ピッッバーグ市を含むアルゲニー郡にある 典型的な地域の公共図書館である。規模とし  ては図書16万冊,雑誌350種で,その他ビデ  オ,コンピュータ・マニュアル,ソフトウェ  ア,CD−ROMなどとともに,インターネッ  ト・夕一ミナルが20台近く設置されている。

  この公共図書館の特徴は,4つのトピック  にコレクションの焦点が当てられていること  である。すなわち,4っのトピックとは,健

康,旅行,投資,コンピュータである。この 地域は,比較的豊かな階層が住んでいるため,

住民の関心がこのようなテーマに集まるので あろう。(写真④⑤)

写真④

写真⑥

 旅行にっいては,世界中の国,地域の情報 に関する図書,ビデオが集められ貸出される。

また,株などの投資が盛んな米国の状況を反 映して,企業に関するディレクトリなどの参 考図書を充実させている。

 健康についても関心は高く,図書,ビデオが 混在して排架されている。また,UC Berleeley WellneSS Letter, Johns Hophins Medicαl Letterといった質の高く,著名なニュースレ

ター,そして参考図書を完備している。そし てこれらのトピックにっいてのインターネッ ト・サイトについてのリーフレットも用意さ れ(図3),自由にターミナルから種々の情 報を見ることができる。(写真⑥⑦)

写真⑤

写真⑦

(6)

JOURNAL OF LIBRARY AND INFORMATION SCIENCE Vol.14 (2000)

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図3 健康関連のインターネットサイト・パンフレット

4.独立の情報コーナー

a.HealthPLACE (Highmark Blue Cross

Blue Shield Division)

(http://www.highmark.com/healthplace/)

HealthPLACEは全米有数の健康保険会社 であるブルークロス/ブルーシールドがピッ ッバーグ地区で展開している地域住民への健 康情報サービスである。ここでは,ピッツバー

グ市街地の同社のオフィスの一隅に情報セン ターを作って,保険の利用者,一般の人々が 気軽に医療情報に接する事ができる。(写真

⑧)

写真⑧

(7)

 HealthPLACEの活動の中心は,医療・健 康についてのセミナーの開催である。ビジネ スセンターを含めて,9ケ所にセンターが置 かれ,糖尿病,よりよい食事,リラクゼーショ

ン,禁煙,ヨガなど幅広いテーマのクラスが 常時行われている。また,インターネットに よる情報サービス,コンサルテーションも行 われている。(図4)

 図書館とは異なり,企業からの情報サービ スであるが,地域に密着して,住民の健康状 態の向上を目指している活動といえる。

5.まとめ

 ピッツバーグ地域の病院図書室,公共図書館,

企業におけるCHIサービスの実態を記録した。

米国におけるCHIサービスは,このような地域 の情報サービス機関と,全国レベルでの政府機 関,そして各種の学協会などからのサービスが 有機的に行われている。

とくに政府機関としては,米国厚生省に属す る米国国立医学図書館(NLM)が展開してい るWeb版医療情報サービスMEDLINE plusはそ

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図4 HealthPLACEのセミナー・リスト

(8)

」OURNAL OF mRARY AND INFORMATION SCENCE Vol.14 (2000)

の利用が急速に高まっている。また,医薬品の臨 床試験についてのWebサービスClinicalTrials.

gOVも登場している。

このように米国では,政府機関,学協会,大 学図書館,病院図書室,公共図書館,企業など が,印刷物とディジタル媒体を駆使して,質の 高い医療,健康情報を一般住民に伝達しようと 努力している。

写真⑨ ワシントンD.C.の地下鉄で見かけた     乳がん予防ポスター(米国がん協会,

    スペイン語)

参照

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