平成30年度
函館白百合学園高等学校 推薦入学試験問題
国 語
平成30年1月18日(木)実施
注意事項 1. 試験時間は45分です。
2. 問題は 一 から 四 まであり,14ページまで印刷してあります。
3. 答えはすべて別紙の解答用紙に記入し,解答用紙だけ提出しなさい。
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一次の問いに答えなさい。
問一次の線のカタカナを漢字に直しなさい。
①シズクが落ちる。②目のサッカクに気がつく。
③スデに会議は終わった。④真理をツイキュウする。
⑤自然のソウゾウ物。⑥物語の続きをソウゾウする。
⑦部品をコウカンする。⑧コウカンがもてる態度。
問二次の線の漢字の読みをひらがなで答えなさい。
①生地を裁つ。②犯罪を裁く。
③覆面パトカー。④ゴミの山を覆い隠す。
問三次の□に後の漢字を入れて、四字熟語をそれぞれ完成させなさい。
①意味□□②□網□尽
打若長古人一深因
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問四次のに後の語を入れて慣用句を完成させなさい。ただし、答えは漢字と送り仮名に直して答えること。
①心が〔意味…うれしくて、心がうきうきする。〕
②心を〔意味…隠し事やわだかまりをなくす。〕
③心を〔意味…とても心配する。心を悩ます。〕
ウツイタメルヒラクハズムウバワレル
問五次の故事成語の意味として最も適当なものを、ア~オからそれぞれ選びなさい。
①頭角を現す②蛍雪の功
ア苦労して勉強すること。イ似たり寄ったりで大差のないこと。ウ規律やまとまりのない人々の集まりのこと。エ才能や学問などが、他の人よりすぐれていて目立つようになること。オ人より先に物事を行えば、有利な立場に立つことができるということ。
問六次の漢字(行書)を楷書で書いたとき、「泳」と総画数が同じになるものを一つ選び、楷書で答えなさい。
若
紀初材次の文章は、ある男が地方の仕事先で、ある女が子どもを抱いて門の下に立っているのを見かけたことに続く場面である。これを読ん
で、後の問いに答えなさい。
(男は)こちらに連れておいでこのちごの顔の、いと 1をかしげなりければ、目をとどめて、「その子、こちゐて来」といひければ、この女寄り来たり。近く
大きくおなりになったころにて見るに、いとをかしげなりければ、「 2ゆめ、こと男したまふな。我にあひたまへ。おほきになりたまはむほどに、まゐり来む」
思い出となる品そして、といひて、「これを形見にしたまへ」とて、帯を解きて取らせけり。さて、この子のしたりける帯を解きて取りて、持たりける
手紙にひき結んで、(ちごに)立ち去った文にひき結ひて、持たせていぬ。
恋愛を好む者(このようなことを)この子、とし六、七ばかりありけり。この男、色好みなりける人なれば、言ふになむあり〔3〕。これを、この子は
忘れず思ひもたりけり。男は、 4はやう忘れにけり。
(「大和物語」)
問
一線1「をかしげなりければ」の解釈として最も適当なものを、ア~エから選びなさい。
ア
おもしろそうだったので
イかわいらしかったので
ウおもしろそうだったならば
エかわいらしかったならば
二
こ
こ
ゆ
問二線2「ゆめ、こと男したまふな」の解釈として最も適当なものを、ア~エから選びなさい。
ア必ず、他の男をお連れになってください。
イぜひ、他の男を夫となさってください。
ウ決して、他の男と結婚なさってはいけません。
エ絶対に、他の男からものをいただいてはいけません。
問三〔3〕にあてはまる語を、ア~エから選びなさい。
ア
けりイけるウけれエけろ
問
四線4「はやう」の読みを現代仮名遣いで答えなさい。
問
五この文章の内容に合うものとして最も適当なものを、ア~エから選びなさい。
ア幼いころ男に見そめられた少女は、大きくなってもずっとそれを覚えていた。
イ男は少女に真剣に求婚し、大人になったら迎えに来ると言ってその通りにした。
ウ幼い少女に求婚した男は、その証としてお互いの帯を交換しようと提案した。
エ男は少女が大人になったらその母親と結婚したいと思っていた。
問六「大和物語」は平安時代に書かれた物語である。同じ平安時代の作品を、ア~エから選びなさい。
ア徒然草イ平家物語ウ竹取物語エ奥の細道
次の文章は井上ひさし『四十一番の少年』の冒頭部分である。少年時代を母の病気のため、児童養護施設のナザレト・ホームで過ごし
た利雄は「四十一番」という番号を与えられた。ホームの同室の昌吉は「十五番」であった。利雄は、自分よりかなり年上の昌吉の命令に
絶対服従の毎日だった。二十数年ぶりに利雄はナザレト・ホームを訪れる。以下の文章を読み、後の問いに答えなさい。
長い、といってもその坂道は百米 メートルあるかなしだった。ひと息に登ればいいのに、 1利雄は途中で何度も立ち止まり、そのたびに汗ですっ
かり柔らかくなったハンカチを引っ張り出し、坂の上を見あげながら顎の下を拭いた。
この程度の坂を登るのに、何度も息を入れなければならないような年齢ではまだなかった。彼の動作には、お化け屋敷の前で入ろうか、
入るのよそうかとうろうろする臆病な少年のためらいや、悪い成績表を貰ったために家の高い敷き居をどうやって越そうかとあれこれ思案
している不出来な子どもの 2逡巡 しゅんじゅんがあった。つまり、利雄は坂の上が怖いのである。できるだけ何度も立ち止まって、坂の上に立つ時を先 に延 のばしているのだ。
それなら行かなければよいようなものだが、彼の耳には坂の上から十五番の少年が自分を呼んでいる声が聞こえるような気がする。かつ
て、坂の上では、十五番に呼ばれたら、どんなことがあってもすぐに返事をし駆けつけるのが何よりも大切な心得だった。あれから二十数
年経った今でも、利雄の気持の底には十五番へのこの 3犬のような忠誠心が残っているらしく、それが彼を坂の上へ引きずりあげて行く。 坂道の右側は A土砂崩れを防ぐための石とコンクリの石壁になっている。それが途中から B芝生に変った。利雄は立ち止まって、右手に展 ひら
けた景色を眺めた。坂下の道が白い一本の線となってはるか彼方、S市の市街まで伸びていた。その道と、ときには平行し、ときには交差
しながら、緑色のゆるやかな流れがやはり市街の方へ続いている。その緑色の帯は燕川といい、このS平野では大きい方に数えられる川で
ある。
はじめのうち、利雄は燕川の C蛇行ぶりを無心に眼で追っていたが、不意に視線をそらせ、こんどは坂の左側の松林の方へ眼を移しなが
ら、また坂を登りはじめた。
松林の中には、二十数年前と同じように、石像の聖母マリアや聖ヨゼフが、坂道を登ってくる者に慈愛の目差しを向けて立っていた。利
雄たちが坂の上で暮していたころは、これらの石像はまだ新しくペンキの色も鮮やかだったが、いまはだいぶ色も褪 あせ、聖母マリアの鼻の
三
あたりなどはペンキが剥げ落ちて、地の白色が出、聖母は鼻の先に白粉を塗りすぎた女のように見えた。 聖母の隣りに、子どもの肩にやさしく手を置いた司祭服 スータンの神父の石像があった。台石には「ナザレト・ホーム」と彫った金属板が填 はめこ んである。これも彼には憶えのある石像だった。仲間とこれに石を投げ、命中率を競っているのをホームの修道士に見つけられ、 4まる一
日、食事差止めの罰を受けたことがあったが、この石像の神父はナザレト・ホームを経営しているナザレト修道会の創始者だから、これは
叱られて当然だった。
石像の傍を通り過ぎると、もう坂の上は近い。坂の上を仰ぐと、蒼空を背景として、ぽつんと棒の先のようなものが利雄の目に写った。咄嗟 とっさ
には、その棒の先のようなものが何かわからなかった。だが、登るにつれて、その下の部分が顕 あらわれてきた。水平線の彼方から近づいて来る
船が、まず、マストの先から見えてくるのと同じ理屈である。
棒の先のようなものは十字架だった。更に登るとその十字架が尖塔の上に立てられていることが判り、そして、また登ると、その尖塔の
下に御聖堂 おみどうが見えてきた。利雄はようやく、坂の上に立った。
坂下では、そよともそよがなかった風が、そこでは、たったいま冷蔵庫から取り出しましたとでもいうようなひんやりした風となってふ
んだんにそよいでいた。
利雄はポロシャツの前を摘 つまんで涼風を呼び込みながら、坂の上一帯を眺め廻して、思わず、
「変っちまったなぁ」
と呟いた。
(中略)
「 5橋本君!……橋本君じゃないですか?」 御聖堂の左手の建物の窓から、四十五、六の小柄な修道士が利雄に声を掛けた。縁 ふちなし眼鏡の奥で目を丸く見張っている。
利雄はひと目見て、それが桑原修道士だとわかった。利雄たちがホームに居たころは、桑原もまだ修道志願士で、よく一緒に野球をやっ
たものだった。
「そうです、橋本ですよ、桑原先生」
「やっぱりね」
桑原は何度も頷 うなずき、
「じつはさっきからずっと君を見てたんですがね、まさかと思って、なかなか声を掛けられないでいたんです。さ、どうぞ、どうぞ」
と、玄関を指した。
玄関で靴紐をほどきながら、こんなはずではなかったのに、と彼は思った。 6ホームに上りこむつもりはなかったはずだ。S市に仕事で来
たついでに、三年暮したこの丘のあたりをひと廻りしてみようと気まぐれに思いついて、ふらりと出かけて来ただけではなかったのか。ホ
ームでの生活には辛いことが多すぎた。いまさらそれを思い出したくはなかった。今の生活も結構辛いのだ。その上、辛かった過去を引っ
張り出して何になろう。辛さが二倍三倍に殖えるだけではないか。ちらりと丘の上を眺め、ああ、おれもむかしここに居たことがあったっ
け、と他愛のない感傷に浸ることが出来ればそれで充分で、いわばこれは及び腰の感傷小旅行のつもりだった。しかし、 7十五番の声や昔
の顔が、利雄の及び腰を簡単に吹き飛ばしてしまった。
※送り仮名を一部改めています。
問
一線1とあるが、利雄が「途中で何度も立ち止ま」った理由を端的に表現している一文(二十字以内)の最初の五字を書き抜き
なさい。(句読点を含む。)
問
二線2「逡巡」を国語辞典で引くと次のような説明がある。その説明の()の部分に入る四字の語を文中から書き抜きなさ
い。
しりごみ・() 問
三線3「犬のような忠誠心」とは、誰に対するどのような気持ちか、四十字以内で説明しなさい。
問
四線4「まる一日、食事差止めの罰を受けた」とあるが、それはなぜか、四十字程度で説明しなさい。
問
五線5「橋本君!……橋本君じゃないですか?」と言った時の、桑原修道士の気持ちが表れている部分を、十字で書き抜きなさ
い。
問
六線6「ホームに上りこむつもりはなかった」とあるが、それはどうしてか、五十字以内で説明しなさい。
問
七線7「十五番の声や昔の顔が、利雄の及び腰を簡単に吹き飛ばしてしまった。」とあるが、そのことが具体的に描かれている段
落の最初の五字を書き抜きなさい。
問
八線A~Cの漢字の読みを書きなさい。