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「無料」の力を利用した寄付行動の促進

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Academic year: 2021

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「無料」の力を利用した寄付行動の促進

1170485 六車 透八 高知工科大学マネジメント学部

1.概要

本論文では、「無料」という価格表示が人の行動にある程度 の影響を及ぼすとして、その影響が人の寄付行動にどのよう に作用するのかを検証したものである。「無料」という言葉は 人の思考に何らかの作用をもたらし、それがその人の行動に なんらかの変化を生み出している。それを人の寄付行動に限 定して実験をし、その結果の分析と結論を独自に出したもの である。

2. 動機

ある時、自分が「無料」であるものによく惹かれることに 気づき、それが他人にも同じように当てはまるのかを考え出 したのが始まりであった。調べたところ以下のような実例が 紹介されていた。それは、アマゾンのサービスで、一定額注 文した場合送料が「無料」になるというものだ。これによっ て全国のアマゾンの売り上げが伸びたのだ。しかし、同時期 にフランスで行ったサービスでは送料を「無料」にせず、1 フラン(20 円程度)にしていた。その結果、フランスでの売 り上げだけが伸び悩むという結果になった。以上から、「無料」

という言葉は人の行動選択に何らかの影響を及ぼすことが分 かった。なら、その影響を何かに利用することができないか を考えた。そこから、寄付行動への働きかけに応用できるの ではないかと考えた。

3. 目的

本研究では、人の寄付行動に「無料」がどの程度の影響を 与えるのかを実験にて検証する。

4. 研究方法

本研究は経済学のゲーム理論の一つである「独裁者ゲーム」

を用いて、2つの実験を行い、その結果を比較・分析する。

一回の実験でおよそ 20 人の被検者をランダムに二人一組の ペアにし、ゲームを行う。被験者にはペアの相手が誰なのか は分からないようになっており、実験中のペアの変更はでき

ないようになっている。2つの実験は z-Tree という経済実験 用のソフトウェアを用いてプログラムを行った。

実験 A:「独裁者ゲーム」

実験 A では、寄付行動に模した「独裁者ゲーム」を、「無料」

の効果を使わずに行った。

実験詳細

実験は二人のプレイヤーA とプレイヤーB の二人一組で行 う。この二人のプレイヤーで 1000 円を分け合ってもらう。お 金の分け方は以下のようにして決まる。

・二人のプレイヤーのうち、プレイヤーA は 1000 円のうちい くらをプレイヤーB に渡すかを選択する。

・その決定に基づいて二人のお金の配分が決まる。

・プレイヤーB は意思決定を行わない。

・プレイヤーA が相手に渡す金額を決定する際には 0 円、100 円、200 円、300 円、400 円、500 円、600 円、700 円、800 円、

900 円、1000 円の 11 種類の中から選ぶ。

プレイヤーA の意思決定画面

・これによって得たお金は報酬として、その金額を受け取る ことができる。

(2)

プレイヤーA の結果画面

プレイヤーB の結果画面

実験 B:「無料」の効果を加えた「独裁者ゲーム」

実験 B は実験 A の「独裁者ゲーム」に、「無料」の品物の 提供を新たに入れて行う。

実験詳細

実験は二人のプレイヤーA とプレイヤーB の二人一組で行う。

この二人のプレイヤーで 1000 円を分け合ってもらう。お金の 分け方は以下のようにして決まる。

・二人のプレイヤーのうち、プレイヤーA は 1000 円のうちい くらをプレイヤーB に渡すかを選択する。

・その決定に基づいて二人のお金の配分が決まる。

・プレイヤーB は意思決定を行わない。

・プレイヤーA が相手に渡す金額を決定する際には 0 円、100 円、200 円、300 円、400 円、500 円、600 円、700 円、800 円、

900 円、1000 円の 11 種類の中から選ぶ。

・プレイヤーA の側で意思決定をした人の中で、プレイヤーB に 300 円以上渡した場合パインアメを3個渡す。

・これによって得たお金は報酬としてもらえる。

パインアメ

なお実験 A,B ともに、実験参加に際しての参加報酬として 800 円を実験中の報酬とは別に渡す。

実験の被験者の属性を知る上で、被験者には各実験終了後 に、被験者情報用紙に、「座席番号」、「学部・学群」、「性別」

を記載してもらっている。

実験手順

(1)実験開始前

実験室に集まった被験者にくじを引いてもらい、それに定 めた席についてもらい、そこで実験に参加してもらう。各席 の前面、両側面を区切り、他の被験者から見えないようにし、

被験者同士での会話を一切禁止した。人数が奇数の場合、実 験の性質上一名の被験者に実験を辞退してもらう。その選定 の仕方として、くじに外れくじを混ぜておきそれを引いたも のを実験辞退者とする。その際足を運んでもらったお礼とし て、参加報酬 500 円を渡す。

(3)

(2)実験説明

被験者に実験説明書を配布し、実験者が内容を読み上げ、

その後の質疑応答の時間を設けた。

(3)実験開始

実験者の合図の後に実験を開始する。被験者のパソコンに、

被験者ごとの意思決定画面が表示される。各被験者は、意思 決定を選択し、全員の意思決定が終わり次第、結果画面が各 被験者の画面に表示される。

(4)実験終了

結果画面が表示されたら、実験を終了し、その後報酬計算 をし、それぞれの被験者に実験によって獲得した謝金報酬を 支払い、実験のすべての工程を終了した。

5. 実験結果

以下の結果に出るのはすべてプレイヤーA の選択を集計し たものである。またグラフは、各金額選択した全体の割合を 出している。

実験 A の結果

実験 A の結果は、0 円が 54.166%、100 円が 8.333%、200 円 が 12.5%、400 円が 8.333%、500 円が 12.5%、1000 円が 4.166%

となり、他は選択されなかった。

実験 B の結果

実験 B の結果は、0 円が 56%、100 円が 4%、200 円が 4%、300 円が 16%、400 円が 4%、500 円が 12%、800 円が、4%となり、

他は選択されなかった。

6. 結論

実験 A と実験 B ともにプレイヤーB にお金を分け与えない 選択をするものが多い。その中で実験 A では 100 円、200 円 を分け与えるものが 10%前後いる。一方で、300 円以上でパイ ンアメが「無料」で付いてくるという条件を加えた実験 B で は、100 円、200 円の割合が減り、その分 300 円の割合が増え ているのが分かる。これは、「無料」の効果により、プレイヤ ーA の選択に変化が起き、選択する金額を引き上げたといえ る。ただし、逆にこの「無料」の効果により 400 円を出して いたものが減少していることも分かる。つまり、「無料」効果 によって金額を引き下げてしまっているともいえる。ただ、

500 円を出していた人達は変動しおらず金額の引き下げの影 響は、金額を引き上げる影響に比べて小さいといえる。

0 10 20 30 40 50 60

割合

金額

実験AにおけるプレイヤーAの金額選択の 割合

0 10 20 30 40 50 60

割合

金額

実験BにおけるプレイヤーAの金額選択の

割合

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各実験でのプレイヤーA の意思決定の割合

この実験結果から、「無料」のおまけ配布による寄付行動の 促進戦略は、少なくとも人の寄付行動の際の寄付金額の引き 上げに微量ながら効果を発揮しているといえる。

ただし、この実験では新規の寄付行動(寄付行動をするつ もりのない人に寄付させる)を獲得するまでには至らなかっ た。この、新規の寄付行動を促すには、「無料」で渡す商品の 価値を上げる等の新たな戦略が必要であると思われる。

7. 参考文献

『予想通りに不合理 行動経済学が明かす「あなた がそれを選ぶわけ」』ダン・アリエリー著 熊谷淳子 訳 早川書房

0 10 20 30 40 50 60

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

割合

金額

A B

参照

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