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東アジアにおける経済発展過程の研究

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「東アジアにおける社会の発展過程と社会システムの研究」プロジェクト

東アジアにおける経済発展過程の研究

4 ドラゴンズの発展過程第 1 期―

大 橋 正 和

Economic Development Processes of East Asian Countries:

Case Studies―First Stage Development of 4 Dragons

OHASHI Masakazu The 4 Dragons(Tigers) is a term of the highly free, global and These countries recovered rapidly from the crisis of 1997 Asian crisis and 2008 fi nancial crisis and developed highly digitalized society. developed economies of Singapore, Hong Kong, South Korea, and Taiwan. Hong Kong and Singapore are among the biggest fi nancial centers worldwide, and South Korea and Taiwan are important hubs of global manufacturing. These nations and areas were notable for maintaining exceptionally high growth rates, differing in natural resources, population, culture, and economic policy. The fi rst stage of development system study conduced on the economical point of view. These economies join the ranks of the world’s richest nations. It is necessary to improve productivity and achieve further technological innovation through capital investment, as well as to develop and harness domestic human resources. The factors of labor productivity in light of soft assets are better than Japan. This paper discusses the fi rst stage era of labor force and economical development processes of 4Dragons, which integrates different social systems and frameworks into the economical comprehensive model compared with Japanese Social System.  It provided further observation for applying the different process from the Group Of Eight (G8).

キーワード: 4 ドラゴンズ,経済発展過程,社会システム,労働力,シンガポール,

香港,台湾,韓国

Key Words : 4Dragons, Economic Development Processes, Social Systems, Labor Force, Singapore, Hong Kong, Taiwan, South Korea

中央大学政策文化総合研究所研究員,中央大学総合政策学部教授

Research Fellow, The Institute of Policy and Cultural Studies, Chuo University; Professor, Faculty of Policy Studies, Chuo University

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1 章 はじめに

 4 ドラゴンズ(あるいは 4 タイガース)は,世界でも持続的に経済成長著しい 4 つの国 を指して名付けられた.シンガポール,香港,台湾,韓国の国々である.

 これらの国々は,経済成長が著しいばかりでなくいずれも日本以上の少子化傾向にあり,

産業革命以降の工業化社会での発展過程での著しい人口増加を伴っていない.産業革命を 経た国々は,工業化の過程で人口はほぼ 3 倍から 4 倍に増加している.日本は最後の産業 革命を経た先進国と呼ばれているが明治初めの人口は 3000 万人強であったのが 1967 年に は 1 億人を超え 2000 年頃にはピークの 1 億 3000 万人弱という人口になった.地球上の人 口は,20 世紀初頭には 15 億人,1950 年には 25 億人,2000 年には 60 億人,2010 年には 70 億人という急膨張を経験しているのでなおさら 4 ドラゴンズの経済急成長と人口の関係 は不思議に思える.

 第 1 期での 4 ドラゴンズの国々の概要( 2007 )は以下のようである.

4 ドラゴンズの国々の概要(2007 )

Population(million) Area(km2

Singapore 4.48

( 1/30 of Japan) 704

(Same as 23 Special Wards of Tokyo)

Hong Kong 6.857

( 1/2 of Metropolitan Gov. of Tokyo

1,101

( 1/2 of Metropolitan Gov. of Tokyo Korea

South)

47.82( 2005 )

( 1/3 of Japan

10 万

(Hokkaido)

Taiwan 22.88

( 1/6 of Japan

3.6 万

Kyushu Island)

2008 年 出所:資源協会

 4 ドラゴンズにアジアの金融恐慌のあった 1997 年以降発展を始めたが,本研究では,特 に 21 世紀になってからリーマンショックのあった 2008 年から 2010 年までの発展過程を第 1 期として行った.

2 章 東アジアのドラゴン:シンガポール,香港,韓国,台湾

2‑1 4 つのドラゴン

 アジア諸国特に東アジア諸国は,1997 年の金融恐慌以降,高度な成長を連続的に遂げて

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いる.現在では,日本のアジアに対する貿易は対米貿易の 2 倍を超える量にふくれあがっ ている.最近 4 つのドラゴン(龍)(タイガーと呼ばれることもある)ということをよく耳 にするようになった.4 つのドラゴンとは,韓国,台湾,香港,シンガポールのことである.

 これらの国が,世界の中で占める位置は,1 人当たりのGDPではアジアやBRICsのな かではぬきんでており日本やEU諸国との中間に位置し生活の質の向上がこれら 4 つのド ラゴンの国民の望むところであるのが想像できる.シンガポールは,1 人当たりのGDP 2008 年度に日本を抜き,香港は 3 万ドルに達したというアジアの中では群を抜いて高い数 値を示しているが両国とも国土,人口ともに特殊な国の形態をなしている.

 これら,4 つの急成長している国に共通している特徴は,人口の増加率すなわち合計特 殊出生率が著しく低下していることである.従来の工業化社会の常識では,経済成長が著 しい国は人口の増加を伴うのが常識であったがこれらの国は日本などの先進工業国がたど った発展過程とは異なる構造をしめしていると考えられる.

2‑2 経済の発展過程の特色

 産業革命以降の先進工業国の特色は,産業の発展とともに人口が増大したことにある.

産業革命を経た最後の先進国と呼ばれる日本は,明治以来 100 年で 4 倍増の 1 億 2000 万人 になっている.ロシアは,1750 年から 1850 年の間に人口 4 倍,その他先進諸国の多くは,

産業の発展とともに人口の 4 倍増を経験している.日本は,戦後の高度成長期にも人口は 増え続けていた.本研究ではこれら人口の問題を労働の問題と読み替えて研究を実行した.

2‑3 総合国力とソフト資源

 21 世紀になってソフト資源ということが重要視されるようになった.1 人当たりのGDP が大きな国の多くは大国ではなく,人口の少ない国が多い.ルクセンブルグや北欧の国が 例である.すなわち,20 世紀の国力の概念と 21 世紀の国力の概念は大きく異なると考え るべきである.残念ながら日本は,4 ドラゴンズの発展過程から取り残されて,20 世紀の 工業化社会の成功体験から未だに抜け出せないとともに古い社会の制度,規制などが色濃 く残っておりソフト資源中心の国の体制になっていないと考えられる.

① 国力の概念

 経済の発展や国の指標としては国力の概念が重要である.最近では,総合国力という概 念がよく使われるようになった.第 1 に,「経済力」や「国防力」のほか,「文教力」や「協 同力」など多数の分野を網羅しているという点では確かに「総合的」ではあるが,国家の 3 つの「顔」を総合的に把握しようとするものではなく,「国際国家」の能力という観点に 重点を置いて体系化されている.その意味で,おそらく経済企画庁における「総合国力」

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の研究の延長線上にあると思われる.第 2 に,軍事的な要素が重視されている.「国防力」

を「直接軍事力」と「間接軍事力」に,前者をさらに「核力量」と「平常力量」に分けた 上で,例えば「平常力量」に詳細な検討が加えられている.

② 伝統的な国力概念と総合国力

 伝統的な国力概念は,モーゲンソーによる「国力」概念である.モーゲンソーは,力の 資源として,地理,天然資源,工業力,軍備,人口,国民性,国民の士気,外交の質,政 府の質を挙げている.

 さらにクラインは,伝統的な国力概念を計測する試みとして国力方程式を考えた.そこ では,国力Pは以下の式で定義される.

P=(CEM)×(SW

 Cは基本要素(人口,領土),Eは経済力,Mは軍事力,Sが戦略目的,Wが国家意志 である.

 「総合国力」は,「資源」とその「ガバナンス」(資源の育て方,使い方)に分解できる.

あるいは,個別の指標について,「資源」と「ガバナンス」のどちらかに分類できる.「資 源」と「ガバナンス」の両方が合わさって「能力」が発揮される.

「各分野の国力」=「資源」×「ガバナンス」

 人口などは典型的な「資源」であり,容易に増加させることはできない.しかし,人口 をどう使うかは工夫次第の面もあり,「資源」に制約がある状況では「ガバナンス」の改善 が国力強化の鍵となる.

③ ソフトパワー

 国力の要素について,ハードパワーとソフトパワーに区分されることがある.ソフトパ ワーの提唱者であるナイは,ハードパワーを「強制する力」や「買収する力」,ソフトパワ ーを「魅了する力」とした.相手を自発的に自国にとって望ましい行動に向かわせる力が ソフトとされる.この整理によれば,「文化」,「社会」に関する項目の多くはソフトパワー に含まれる.21 世紀には,第 3 次産業の勃興などこのソフトパワーが国力の重要な役割を 示していると考える.

3 章 4 ドラゴンの経済動向・労働について

 4 ドラゴンズについて各国別に少子化による影響を受ける労働力人口と労働力率の推移 について調査し,少子高齢化と労働人口の関係について詳しく調査を行った.さらに,就 業構造と失業の動向,女性労働の状況について詳しく調査した.少子化と女性の労働とは 大きな相関があり各国の状況と現状を詳しく分析した.中華系の国では,女性の働く率は

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日本より高く家庭生活に対する考え方の相違や中流階級でも子供のために外国人のメイド を雇う習慣があるなど文化的背景は日本と大きく異なる.

3‑1 台湾

3‑1‑1 労働力人口と労働力率の推移

 人 材 計 画 省 台 湾 経 済 計 画・開 発 委 員 会 の 統 計 デー タ(Department of Manpower  Planning: Council for Economic Planning and Development 2007 )によると,台湾の 15 歳以上の労働人口は,2006 年は 1816.6 万人,前年比 21.7 万人増と,約 1.2%の伸びを 示している.1996 〜 2006 年の推移を見ると年々増加傾向にあり,1996 年( 1540.1 万人)

と比較すると 2006 年まで 276.5 万人,約 18.0%の増加である.また 2007 および 2008 年の 労 働 人 口 は,2007 年 1,071.3 万 人,2008 年 1,085.3 万 人 で あ る( “International Labor Statistics” Council of Labor Affairs: http://www.cla.gov.tw/cgi‑bin/siteMaker/SM_

theme?page=49c05708 ).

 労働力率の動向を見ると,男女合計では,2006 年は 57.9%,前年より 0.1 ポイント上昇 している.1996 〜 1999 年は,59%から 58%台で推移しているが,2000 年以降は,年平均 57.6%台である.1996 〜 2006 年の労働力率の増減について分析すると,15 歳以上の人口 および労働力人口は,共に増加しているが,労働力率については,低下傾向を示している.

1996 〜 2001 年の増減比較をしてみると,1.8 ポイントの低下である.2002 年以降からは漸 増傾向を示しているが,これは背景に労働力人口の増加が反映しているものと思われる.

男女別の労働力率を概観すると,2008 年は,男性は 67.1%と対前年対比で 0.1 ポイント減 少し,女性は 49.7%で 0.3 ポイント上昇している.2008 年の労働力率を男女別年齢階級別 に見ると,男性の場合,15 〜 24 歳台の若年層が低いのが目立つ.背景には,男女共短大 以上の高等教育への進学率の向上が 1 つの要因として考えられる.とくに男性の場合,高 校卒者は,2006 年では,前年対比で 0.3 ポイント減少しているが,短大卒業者は 1.2 ポイ ント,4 年制大学および大学院卒業者は 1.6 ポイント高い.国立政治大学でのインタビュー 調査によると,台湾では,大学卒業生の 6 割程度,修士課程の修了生の 4 割〜 5 割ほどの 若者が大学院や博士課程への進学を目指していることも要因としてあげることができよう.

 一方,女性の場合の年齢階級別の労働力率を見ると,25 〜 29 歳台が 86.3%と最も高く,

次に,30 〜 34 歳台が 78.2%である.女性の場合も,大学,大学院などへの進学志向の高ま りや,とくに,近年の女性の結婚より仕事に就くことによる経済力の確保など自律性の高 まりが背景要因としてあげられる.

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3‑1‑2 少子高齢化と労働供給

 台湾における少子化を合計特殊出生率で見ると,1976 年 3.08 であったものが 2006 年に は 1.15 と著しく低下している.急速な低下は,とくに 90 年代末から目立っている(http://

www.moi.gov.tw/stat/english/index.asp).2005 年および 2006 年の日本の合計特殊出生率 は 1.24,1.32 である(厚生労働省『平成 19 年人口動態統計』).また,韓国は 1.13( 2006 年)である.日本,韓国と比較しても台湾の少子化が急速に進行していることがわかる.

また,高齢化については,65 歳以上の人口比は,2005 年の 9.7%が 2010 年には 10.8 %と 二 桁 の 水 準 に 上 っ て い る( “International Labor Statistics” Council of Labor Affairs:

http://www.cla.gov.tw/cgi‑bin/siteMaker/SM_theme?page=49c05708 ).

 日本の場合,総人口に占める 65 歳以上の人口は,2010 年では 22.6%( 2005 年 19.9%)

で,日本の高齢化率と比較すると台湾は半分である.台湾においても少子化,高齢化は確 実に進行しているが,台湾経済計画・開発委員会の将来の見通しによれば,2007 年以降の 10 年後,20 年後の合計特殊出生率は 1.10 と変化なく推移していき,また,65 歳以上の人 口も 10 年後の 2017 年は,13.81%,20 年後の 2027 年では,22.4%の水準に達するとして いる.日本の 2006 年の 20%台の水準に到達するのは,2025 年( 20.26%)としている.

2000 年以降,台湾の出生率の低下と,また高齢化も 80 年代から進んできているが,これ らの人口構成要因が労働力に直接影響を及ぼしているという状況にはなってはいない.台 湾においては,政府の政策のありかた如何によるが,今後 10 年後,20 年後の労働力につ いては不足するということにはならないというのが一般的な見通しである.労働問題審議 会(Council of Labor Affairs)によると,2004 〜 2008 年の労働力率の伸びを見ると,年 間約 1.4 〜 1.5 ポイント上昇している.その要因は労働力人口が増えていることによる.な かでも男性の労働力率がやや減少傾向を示しているのに対し,女性の労働力率は漸増傾向 にある.女性の社会進出がうかがえる.

 学歴別の労働力率を見ると,前年対比で男性は,短期大学卒で 82.4%から 83.6%,大学 および大学院卒では,59.9%から 61.5%と,それぞれ 1.2,1.6 ポイント増加している(2006 年).女性の場合も,短期大学卒は,71.2%から 71.7%,大学および大学院卒は,56.9%か ら 58.8%とそれぞれ 0.5,1.9 ポイント高くなっている.労働審議会の年次報告(Council of Labor affairs: Yearly Bulletin)による 2007 〜 2009 年の全労働力に占める学歴別の労 働力率は,短大卒が 2007 年 38.2%,2008 年 40.0%,2009 年 42.1%である.さらに大学お よび大学院卒は,2007 年 21.1%,2007 年 23.1%,2009 年 25.0%と,ここ 3 年間のデータ を見ても労働力の高学歴化の傾向が強まっている.このような労働力率が高学歴者層にお いて上昇傾向に転じてきたのは,2000 年以降である.年齢階級別の視点から分析すると,

男女共 15 〜 19 歳および 20 〜 24 歳層では年々低下している.若年層の労働力率の低下要

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因は,高学歴化志向の高まりによるものと,女性の場合は,結婚志向より仕事志向の高ま りによるものと推察される.

3‑1‑3 就業構造と失業の動向

 2007 年の就業者数を性別・年齢階級別に見ると,就業者数は 1,029.4 万人,男性就業者 の割合は 64.5%,女性が 47.6%である.2006 年対比で 0.2 ポイント上昇した.とくに女性 の就業者を年齢階級別に見ると,2009 年の産業別就業者構成比の産業構造は,第一次産業 の就業者数 5.3%,第二次産業就業者 27.1%,第三次産業就業者 67.5%である.先進国と 同様,第一次産業の就業者数は,2001 年の 71.6 万人から,2009 年においては 54.3 万人と 17.3 万人と 94 年間で約 24%の大幅な減少率を示している.第二次産業就業者は,2001 年 の 259.4 万人から 279 万人と 19.6 万人の増加で,増加率は 7.6 %である.他方,第三次産 業就業者数は,2001 年の 607.3 万人から 2009 年には 694.1 万人と 86.8 万人増え,約 14.3

%の増加である.台湾においても第三次産業就業者が堅調に増加していることがうかがえる.

 2009 年における就業者数を産業(業種)別に見ると,製造業が最も多く,279 万人 27.1

%である.次いで,流通業の 173.5 万人 16.9%である.両業種とも前年対比で,製造業 は−1.2,流通業は−2.0 ポイントと減少している.ここでも不況の影響を受けていること が推測できる.2009 年において前年対比で,やや増加傾向を示している業種としては,ホ テル・飲食業,金融・保険,情報通信関係業種である.2009 年では,前述の業種を除いて 概ね全業種は世界的不況の影響を受けて就業率は低下している.

 職業別就業者の職業動向は,製造および機械操作など従事者が約 3 割強,技術職・専門 補佐職の従事者,サービス・販売従事者がそれぞれ約 2 割,事務従事者約 1 割強とこれら 4 種の職業従事者が 8 割を占めている( 2009 年).2000 年からの推移傾向は,製造関係作 業者が年々小幅な減少傾向にある反面,技術職・専門補佐職やサービス・販売従事者は増 加傾向にある.また,専門的職業従事者は 1999 年との比較で 2009 年は 52%と増加幅が目 立つ(http://www.cla.gov.tw/cgi‑bin/siteMaker/SM_theme?page=49c05708 ).

  2007 年 の 労 働 審 議 会 の デー タ(“International Labor Statistics” Council of labor Affairs)から女性の年齢階級別の雇用率を見ると,女性雇用者の最も多くを占めるのは 25

〜 29 歳で 76.7%,以下 30 〜 34 歳 72.0%,35 〜 39 歳 69.6%,40 〜 44 歳 67.3%,20 〜 24 歳 50.9%の順である.ここでも女性の大学・大学院などへの高等教育への進学志向の影響 が,女性の就業構造に少なからず影響を及ぼしていることが推察される.また,中高年層 の雇用率が高いことも特徴である.その背景は,台湾政府の労働力確保政策として,①定 年年齢の延長 ②定年後の労働市場への参与奨励 ③家庭にいる女性の労働市場への参与 奨励 がとられていることがあげられる.

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 失業者は,2001 年から 2008 年にかけて 40 〜 50 万人( 4 〜 5%)で推移している.とく に 1998 〜 2000 年には 3%弱であったものが,2001 年 4.6%,2002 年 5.2%,2003 年 5.0%

と高い水準で推移している.2006,2007 年は 3.9%の水準に低下したが,2008 年に 4.1%

と再び上昇した.男女別では,男性の失業率は女性よりも高位で推移しており,最高率を 示した 2002 年は,男性では 5.9%,女性は 4.1%( 1996 年以降の最高値は,2003 年の 4.3

%)である.男性は 4.4%,女性は 3.8%である.年齢階級別にみると,20 〜 24 歳が 11.89

%,次いで 15 〜 19 歳 11.42%,25 〜 29 歳 6.38%と若年層の働き手が上位を占めている.

3‑1‑4 女性労働の状況

 台湾の女性労働力率は,2008 年は 49.7%であり,日本の 48.4%,韓国 50.0%と比較する と,ほぼ平均では日本と同じ水準にある.年齢階級別の労働力率は,前述したように,25

〜 29 歳台が最も高い割合( 81.8%)を示している.この年齢階級層は,シンガポール,香 港でも 86.5%,87.5%と高い水準にある.韓国,日本は同じ年齢階級ではそれぞれ 69.3%,

76.1%と,共に最も高い数値を示している.

 労働力率の年齢階級別の分類は日台両国では若干異なるが,日本の女性の年齢階級別労 働力率( 2008 年)と比較すると,日本の場合 30 〜 34 歳(労働力率 65.1%)の両サイドの 年齢階級,すなわち,25 〜 29 歳( 76.1%),35 〜 39 歳( 64.9%)の二つの山を持つM カーブを描くが,台湾では日本のM型カーブのボトムに該当する 25 〜 34 歳の労働力率 は,M型カーブを描かない.反面,40 歳以上の中高年層は,日本と比較して低い水準にあ り,台湾での中高年層の労働力化は進んでいない.台湾においては,とくに 40 〜 50 歳台 の中年女性の労働市場への参加促進が主要課題である.サービス産業の発展が期待される ところから,この分野における中年層も含めて女性労働の雇用創出がより期待できよう.

 女性の労働市場への参加を促進する新たな就業形態であるテレワークへの関心度は,官 民共に低い.日本の場合,少子化,高齢化による労働力不足の解決方法としての女性労働 力の活用という観点から,出産・育児や介護によって労働市場からの離脱を防ぐというこ とに主眼を置くことから,さらにはライフ・ワーク・バランスの実現というコンセプトの もとにテレワーク(とくに在宅勤務形態)の促進を官民あげて目指しているが,台湾では,

託児制度や祖父母の支援により公私共に充実していることから,出産・育児によって働く ことが損なわれるという環境は少ない.従って,働く意欲さえあれば,就業機会は得られ る可能性が大きい.テレワーク(とくに在宅勤務形態)に対する関心度が低い要因は,こ のように女性が働きやすい社会的環境が備わっているところによるものもあると推察でき よう.なお,今日の台湾の女性は,子供を持つということに対しては消極的な考えを抱い ていることも背景にあるといえる.

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3‑2 韓国

3‑2‑1 労働力人口と労働力率の推移

 韓国国家統計局(Korea National Statistical Offi ce: http://www.nso.go.kr/)によると,

韓国における労働力人口は,2007 年では 2,421.6 万人,2009 年( 8 月)2,452.5 万人,2010 年( 8 月)2,483.6 万人である.前年対比で 1.6%,1.3%の微増である.男女別の労働力人 口の構成比は,最新年度データ( 2010 年 8 月)では男性は 58.5%,女性は 41.5%である.

男女別の労働力率は,2010 年( 8 月)においては,男性が 73.1%,女性が 49.6%で,2000 年以降,男性は 70%台,女性は 40 〜 50%前後で推移している.韓国の労働力率は,日本

(男性 73.1%,女性 48.4%( 2010 年))および台湾(男性 67.1%女性 49.7%( 2008 年))と の差異が僅少な水準といえる.2000 年以降 時系列的には労働力人口および労働力率につ いては,男女共に大幅な変化はなく平準化傾向を示している.性別年齢階級別の労働力率 は,2008 年では,男性は,15 〜 19 歳,20 〜 24 歳でそれぞれ 5.6%,43.9%で若年層は低 い.女性は,同じ年齢階級層で,各々 7.5%,54.6%である.韓国においても,近年,大学 などへの進学による高学歴化により労働市場への参加の年齢構成が上昇している.他方,

65 歳以上の労働力率は 41.8%である.台湾,香港,シンガポール,および日本と比較して 高齢者の労働参加率はかなり高い.台湾の 65 歳以上の労働力率 11.7%と比べるとはるかに 高く,日本の 29.7%( 2007 年)と比較しても 10 ポイント以上も凌いだ数値である.2006 年以降,政府では政策的に高齢者雇用促進を図っており,この成果が今後の韓国の 65 歳以 上の労働市場への参加を促すかどうかが注目される.

3‑2‑2 少子高齢化と労働供給

 韓国においても人口の少子高齢化という人口構成における変化は,当然,労働力にも影 響を及ぼしている.合計特殊出生率も 2006 年は 1.13,2008 年 1.19 と 2006 年と 2009 年を くらべると,0.6 ポイント増加しているが,2000 年 1.30,2001 年 1.17,2002 年 1.19,2003 年 1.16 と時系列的には低下ないし若干のアップ傾向にある.また,高齢化( 65 歳)人口 は,2005 年は 442.9 万人,2010 年 534.9 万人で人口比でそれぞれ 9.3%,11.0%である.2000 年の 340.5 万人から 10 年間で 199.4 万人と 5 年間で約 59%増加している(“International Labor Statistics” Council of Labor Affairs: http://www.cla.gov.tw/cgi‑bin/siteMaker/

SM_theme?page=49c05708 ).

 若年層( 15 〜 24 歳)は,2000 年の 229.8 万人から 2005 年では 203.4 万人と 26.4 万人減 少し,2007 年は 167.1 万人と 62.7 万人と 27%減少している.

 韓国国家統計局(Korea National Statistical Offi ce)よると,女性の労働市場への参 加率は 2009 年,2010 年は,それぞれ 49.3%,49.6%と 2 年間 50%台前後で推移している.

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失業率は男性の場合,女性より高い比率で推移している.2009 年は 3.7%,2010 年(8 月)

が 3.3%である.失業率の推移をみると,2000 〜 2001 年の 4%台をピークにその後は低下 している.

3‑2‑3 雇用状況

 2000 〜 2007 年では就業者数が増加しており,ここ 8 年間は好調に推移している.2009 年,2010 年の最近年次の就業者数の推移を見ると,2009 年 2,362 万人,2010 年 2,400.5 万 人である.ここ 2001 年から 10 年間の推移は,2001 年 2,157.2 万人であるところから,11.3 ポイント上昇している.産業別就業構造は,電気・運輸・情報通信・金融業などサービス 業種や製造業の就業者は増加している.2009,2010 年の電気・運輸・情報通信・金融サー ビス業の就業者は,274.1 万人,282.2 万人で前年対比では 8.1 万人と 3%増えている.流 通・飲食サービス業の就業者は 2009/2010 対比では 1.7%減少している.

 韓国においても高学歴が進んでおり,2007 年の韓国国家統計局によると,学歴別の労働 力率は,高校卒が 65.2%,短大・大学卒が 78.1%である.2000 年では,高校卒が 64.7%,

短大・大学卒が 77.4%であり,時系列的にみて比率の増減は僅かである.女性の場合,男 性とは異なり 2000 〜 2007 年では,緩慢ではあるが大学卒の労働力率は上昇している(2007 年 62.4%,2006 年 62.3%,2005 年 60.3%,2004 年 60.1%,2003 年 58.3%,2002 年 59.2

%,2001 年 58.5%,2000 年 58.3%).就業者は,2007 年では,高校卒の就業者が 977.8 万 人と最も多く,次いで大学卒(短大も含む)821.2 万人である.男女別に大学卒(短大を含 む)の就業者数を見ると,男性 519.9 万人,女性は 301.3 万人である.大学卒総数(短大 卒)を含むに占める比率は,男性 63.3%,女性 36.7%である.台湾の就業者の学歴別構成 では,2006 年は男性 34.8%,女性 39.9%(短期大学,大学,大学院卒)であり,男性の場 合,高学歴者の就業者の比率は韓国が著しく高いが,女性は,ほぼ同水準といえよう.

 職業別に見ると,2008 年は,販売・サービス職が 23.47%と最も多く,次いで事務職 14.86

%,技能職・機械操作・作業・組立て職が 10.88%,次いで技術専門職の 10.77%の順である.

3‑2‑4 女性労働の状況

 韓国の女性も日本と同様,出産・育児の時期には仕事を辞め,子育て期間が終了したと ころで再就職するという,いわゆる労働力率が「M型」カーブを描く.年齢階級別に 2008 年の労働力率を見ると,25 〜 29 歳( 69.3%)と 35 〜 39 歳( 58.5%)の二つのピークの 間に 30 〜 34 歳のボトム( 53.3%)が位置してM型となっている.日本も同じ年齢階級の 30 〜 34 歳,35 〜 39 歳の労働力率はボトム( 2008 年 65.1%,64.9%)を示している.30

〜 34 歳のボトムの労働力率は,2006 年は 53.1%,2005 年は 50.2%,2000 年は 48.8%であ

(11)

る.年々,ボトムの比率が上昇している.近年,出産・育児によって労働市場から離れる 状況が改善されつつあることがうかがえる.

 女性の高学歴化の進展は,20 歳未満( 15 〜 19 歳)の労働市場への参加を大幅に低下さ せた( 2008 年 9.4%,2007 年 8.1%,2005 年 10.3%,2003 年 11.4%).25 〜 29 歳台の 20 代後半の女性の労働力率は年々上がっており,2008 年 69.3%,2007 年 68.2%である.8 年 前の 2000 年と比較すると 12.3 ポイント上昇している.また,40 歳代の労働力率も 2008 年 40 〜 44 歳 65.9%,45 〜 49 歳 65.8%と 6 割以上の女性が労働市場に参加している.韓国 以外,台湾,シンガポール,香港もほぼ同じように 40 歳台において 6 割以上の労働力率を 示している.韓国においても産業構造におけるサービス産業化が拡大しつつある.それに 伴い就業形態の多様化が進展し,女性の就業機会が拡大する傾向がある.女性労働が非正 規労働への安易な労働力供給源として位置づけられることなく,重要な人材資源として活 用されることが期待される.

3‑3 シンガポール

3‑3‑1 経済動向と雇用・労働

 欧米の景気回復が必ずしも明るい兆しがみえない状況において,アジア経済は,中国を 筆頭に全般に拡大ないし回復傾向を示している.米国に端を発する世界金融危機の影響を 受けて減速した韓国,台湾,シンガポール,香港など 4 ドラゴンと称される諸国の実質 GDPは 2009 年,前期比でプラスに転じ景気回復を裏付けるものになっている(「世界の潮 流 2010 Ⅰ:2010 年上半期世界経済報告」内閣府政策統括官室,平成 22 年 5 月).

 シンガポール政府は,今後の経済成長の新たな産業分野として情報通信技術などを基盤 とした産業育成に力を入れている.政府は周辺諸国の低コスト攻勢の競争に対応しつつ,

2015 年までに情報通信技術の中核的な存在としてNGNII(Next Genaration National

Infocomm Infrastructure)の実現に向けて動き出し,将来の雇用創出に期待している

(Digital Review of Asia Pacifi c 2009 2010 ‘sg’ Singapore).

3‑3‑2 少子化・高齢化の進展

 高齢化が進むに従い,労働力人口も約 4 分の 1( 27%)は 50 歳以上( 2009 )の年齢人 口で占められ,その比率は過去 10 年間で約 17%上昇した.反対に,30 代の就業者は 31%

から 26%に減少,さらに 30 代未満の若年層では 25%から 20%と減少している.また,中 位の労働力年齢が 1999 年では 38 歳であったものが,2009 年では 41 歳と 3 歳ほど上がっ ている.シンガポール政府の高齢化問題委員会の報告によると,65 歳以上の人口に占める 割合は,2005 年の 12 分の 1 から,2030 年には 5 分の 1,すなわち,総人口の 20%を占め

(12)

ると予測している.高齢化に関しては,シンガポール政府としても 2030 年までの重要課題 として位置づけている.(http://www.gov.sg/government/web/content/govsg/classic/Info_

N_Policy/ip_fi n

 少子化対策についても各国共,国をあげて取り組んでいる.日本では 2010 年度より子供 手当法(「平成 22 年度における子供手当ての支給に関する法律」2010 年度のみの時限立法)

が施行され,15 歳までの子供 1 人につき月額 13,000 円が保護者に支給されることになった のは周知のとおりである.

 シンガポールの出生率は,30 年以上低下し続けており,シンガポールの労働力の 25%が 50 歳以上である.合計特殊出生率は,1.28(2008 年)である.日本の合計特殊出生率 1.37 と比べるとさらに低い状況である.合計特出生率が 2.1 の水準を下回ることから,長期的 には人口の縮小が憂慮されている.出生率に与えるマイナス要因は,独身者の上昇,世帯 サイズの減少,結婚年齢や出産年齢が上昇とされている.これらの対応として,シンガポ ール政府では,ワーク・ライフ・バランス,保育支援,財政支援が重要とされ,さらには,

政府関連企業や公的機関,政府各省庁の独身公務員などの大卒の独身女性を対象に,社交 やお見合いサービスの機会を提供する機関(社会開発ユニット)による結婚奨励策の支援 が実施されている.(内閣府政策統括官(「アジア地域(韓国,シンガポール,日本)にお ける少子化社会対策の比較調査研究」平成 21 年 3 月:2010 年 8 月 16 日参照)(http://

www8.cao.go.jp/shoushi/cyousa/cyousa20/hikaku/pdf/b‑1.pdf)

 現 地 で イ ン タ ビ ュ ー を 行 っ たDr. Ang Peng Hwa(Professor, Nanyang Technology University & Director, Singapore Internet Research Center)およびDr. Shirley Sun Hsio‑Li

Assistant Professor, School of Humanities and School Science 両氏共,シンガポー ルの少子化減少への対応は,海外からの労働者を雇用することで十分賄うことができると している.国をあげて海外労働者特に高度な能力を持った知識人の活用を奨励している.

一方で,工事などの労働者の入国には,家族の呼び寄せの禁止,永住の禁止等の制限を加 えている.

3‑3‑3 労働市場の動向と労働力人口の推移

 アジア地域の経済回復に伴いシンガポールの労働市場も,情報通信など高付加価値産業 の興隆に伴い,労働力の質の向上を求める要請が強くなっている.2008 〜 2009 年にかけ てシンガポールの労働力人口の伸びは,2006 〜 2007 年 6.0%,2007 〜 2008 年 8.5%であ ったが,2008 〜 2009 年( 6 月期調査)は 3.1%と低下し,過去 4 年間の伸びにアクセルが かかっている状況である.その要因は,米国に端を発するグローバルな経済不況がシンガ ポール経済にも影響を及ぼし,なかでもシンガポール経済を支える外国人労働者の減少が

(13)

あげられる.シンガポールの場合,日本,韓国,台湾,香港など東アジアのなかでは外国 人労働者への依存度が極めて高く,2008 年に労働力率の 22%を占めていた外国人労働者 は,2009 年には 3.2%に激減している.他方,シンガポールの人口増加を反映してシンガ ポール籍住民(華人が主体)の労働力率は,2007 年 2.0%,2008 年,2.7%から 2009 年に は 3.2%と上昇している.2009 年 6 月時点における労働力人口は,シンガポール籍住民の 労働者 303 万人,外国人労働者は 104 万人の構成となっている.

 15 歳以上の労働力率は 65.4%( 2009 年 6 月現在)であるが,前年 2008 年との対比では 0.2%減少している.シンガポール籍住民の労働力率の低下の原因は,景気悪化の期間中に 15 〜 24 歳の若者が労働市場への参入よりも進学への道を選ぶ傾向が強まったことがあげ られよう.他方,55 〜 64 歳の中高年の労働力率は,10 年前の 1999 年( 6 月期)の 45.2

%,2008 年(同期)59.3%と比較して,2009 年(同期)60.6%と上昇している.中高年層 の労働力率が高い比率を示しているのは,就業能力の向上や継続して就業するよう奨励策 を進めたからであると思われる.また,長期的観点から見ると,より高い学歴を有する中 高年労働者が増えたことも中高年労働力率の高まりに少なからず影響を及ぼしていると思 われる.

 女性労働力率を年齢階級別に 25 〜 29 歳,30 〜 34 歳の結婚・育児期に当てはめて見る と,25 〜 29 歳では 1999 年,2008 年,2009 年の 3 カ年の推移は,80.8%,84.5%,85.5%,

30 〜 34 歳では,69.3%,80.5%,79.9%と上昇傾向が見られる.とくに 30 〜 34 歳の育児 期にあたると見られる年齢階級においては,2009 年には前年対比で−0.9 ポイント下がっ ているが,10 年前の 1999 年と比較して 10.6 ポイント上昇している.

3‑3‑4 職業教育訓練

 「 2009 シンガポール労働力報告(Ministry of Manpower)」よると,15 〜 65 歳の労働 者のうち 28%は,12 か月以上の職業教育訓練機関で研修教育を受けている( 2009 年 6 月 現在).2008 年度の参加率 32%との対比では下がっているが,これは不況による失業者の 職業教育訓練参加率が増加したが,就業者(employed residents)の参加が減少したこと によるものと思われる.2009 年の職業教育訓練の参加傾向を見ると,20 〜 29 歳の若年労 働者が多い.一般的な傾向としては,生産現場で働くベテランや清掃関係,肉体労働従事 者,機械設備操作従事者,組立工など,高い専門技術を必要としない労働者の職業訓練参 加率は高まっている.専門技能者の職業訓練参加率は低下傾向にあるが,傾向としては高 付加価値を生み出す職業従事者の職業訓練への参加意欲は継続して高い.

(14)

3‑3‑5 雇用状況

1 )性別・年齢階級別雇用状況

 雇用市場の不況から,25 〜 64 歳までの雇用者数は低下傾向にある.雇用者数の割合は,

2009 年 6 月の統計によると,前年の 77.0%から 75.8%に落ち込んでいる.とくに働き盛り の男性の 25 歳から 54 歳の落ち込みが目立つ(2008 年 81.4%,2009 年 80.1%).2008 年/

2009 年対比で男性雇用者および女性雇用者の割合は,男性雇用者は 93.0%から 91.6%,女 性雇用者は 70.4%から 69.4%と低下している.男性雇用者の場合,2003 年の 90.5%と比べ れば雇用者数の落ち込みの割合は,なお高いといえる.女性雇用者の場合は,25 歳から 54 歳の雇用の割合は落ち込みが激しい 2001 年の 55.4%と比較すれば,低下率は低くなってい る.教育面での改善効果や女性に対する社会の変化によるものと推察できる.

2 )失業状況

 シンガポール籍住民の失業者および失業率は,2009 年( 6 月期)11.6 万人,5.9%であ る.1999 年以降では,2003 年と同率で最も高い割合を示している.前年対比を見ると 2008 年/ 2009 年対比では,4.0%から 5.9%と悪化している.とくに 15 〜 24 歳の若年層では,

2008 年度が 9.2%であったが,2009 年( 6 月期)は 13.0%と失業増加が目立つ.若年層の 場合,就職した後も職探しを続け,転職が多い.過去 2 年間の転職率を年齢階級別に見る と,上位から 15 〜 24 歳 24.1%,25 〜 29 歳 26.6%,30 〜 34 歳 22.1%である.(http://

www.mom.gov.sg/Documents/statistics‑publications/manpower‑supply/report‑

labour‑2009/mrsd_2009LabourForce.pdf)

3‑4 香港

3‑4‑1 少子高齢化の進展と経済への影響

 香港の合計特殊出生率は,0.9 に低下した( 2001 年).人口置換水準が 2.1 とされる合計 特殊出生率の水準から大幅に落ち込んでいる.高齢化の波も迫っている.2031 年には,4 分の 1 にあたる人口が 65 歳以上に達すると予測され,今後,香港の働き盛りの労働力の減 少 が 憂 慮 さ れ て い る.(http://www.info.gov.hk/info/population/eng/pdf/summary_eng.

pdf

 香港の 65 歳以上の人口に占める割合の推移と予測(1980 〜 2050 年)を見ると,1980 年 6.5%,1990 年 8.5%,2000 年 11.0%,2050 年 12.2%,2010 年 12.9%,2025 年 22.1%,2050 年 32.6%である.2050 年の予測では,香港をはじめ韓国(34.2%),台湾(35.9%)は,日 本(37.8%)と同じように,65 歳以上の人口が,ほぼ 30%台を占め,3 ヶ国共日本と同様,

人口の 3 分の 1 は 65 歳以上の年齢層が占めることになる.(Council of Labor Affairs

(15)

International Statistics: http://www.cla.gov.tw/cgi‑bin/siteMaker/SM_theme?page=

49c05708 )

 現地でインタビューを行ったDr. John Y. C. Fung (Director, Information Technology Resourc Center, Dr. Louis Leung (Professor, Center Director, Communication Research, Chinese University of Hong Kong), Dr. Leung Lai‑kuen Grace (Instructor, School of Journalism & Communication, Chinese University of Hong Kong)に よ る と,各家庭には東南アジア(特にフィリピン)からのメイドを家庭で雇用し,家事全般の みならず,子育て,老人介護に至るまで任せているとのことであった.上流階級だけでは なく一般家庭でもメイドを自宅に住まわせているとのことである.中には,メイドを 2 名 以上も雇用しており,保育園等の費用よりもメイドを雇用するほうが安いとのことである

(メイド雇用は月額 3 万円程度(住込)).シンガポール同様,海外からの安価な労働力を積 極的に取り入れ,活用している.

3‑4‑2 経済動向と雇用・労働

 香港経済は,世界金融危機による低迷から緩やかであるが回復しつつある.2008 年から 2009 年にかけてのGDP(域内総生産)伸び率はマイナス成長であったが,2010 年のGDP は 2 〜 2.5%の成長が見込めるとの予測がされている.2010 年の香港経済は,アジアの金 融センターとして金融産業の戦略的展開を目指すとともに,アジアにおける情報や物流拠 点として戦略展開を図っている.経済回復の明るい展望に支えられて,2010 年の初頭の労 働市場はやや明るい観測でスタートしている.(http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2 009&d=1231&f=business_1231_024.shtml) 

 失業状況も改善しつつあり,2010 年においては,第 1 四半期 2.2%の失業率は,第 2 四 半期には 2.0%と低下した.香港経済の好転は,失業率の低下に寄与している.とくに建設 業界,運輸業界においてはその恩恵は大きい(HK Economic Report, 13 Aug. 2010 ).

3‑4‑3 労働市場動向と労働力人口

 世界的な不況の波を受けて,香港の労働市場も 2008 年第 4 四半期から 2009 年の前半に かけて不活発な状況を呈していたが,後半より上向き傾向を示すように推移している.香 港統計(http://www.yearbook.gov.hk/2009/en/index.html)によると,香港の労働力人口 は 368 万人で性別の構成比は男性が 53.4%,女性は 46.6%である.2008 年対比で 0.8%の 伸びを示している.また,香港特別行政区政府の報告(HK Economic Report, 13August, 2010: http://www.hkeconomy.gov.hk/en/pdf/er_10q2_ch5.pdf)によると,2005 〜 2009 年 第 2 四半期までの約 5 年間の労働は,ほぼ 60%で推移している.同期間を性別で見ると,

(16)

男性は約 70%,女性は 51 〜 53%台である.日本と香港を 2008 年のデータで比較すると,

日本の場合,男性 72.8%,女性 48.4%(総務省統計局「労働力調査」),香港の場合,男性 60.9%,女性 53.1%で,男性は日本の方が若干高く,女性は低い.前掲香港統計の直近デ ータ( 2009 年第 2 四半期)で女性の労働力率を年齢階級別で見ると,高学齢期の 20 〜 29 歳では 60.7%,結婚・出産期および子育て期の 25 〜 29 歳では 86.2%,30 〜 39 歳で 76.3

%である.2005 から 5 カ年の推移も前者で 86 〜 87%台,後者も 75 〜 77%台で推移して いる.日本の女性の場合,2005 〜 2008 年の 4 年間の推移は,25 〜 29 歳で 75 〜 76%,30

〜 34 歳および 35 〜 39 歳ともに 63 〜 65%で推移している.香港の女性の方が結婚・出 産・育児の年齢期における労働参加率が高い.

3‑4‑4 雇用状況

 2008 年のリーマン・ブラザースの破綻に始まる世界的経済不況により,2009 年前半の雇 用市場は不活発である.2009 年は僅かながら回復基調を示しているとはいえ,2008 年の就 業者数約 351.9 万人は,2009 年には 348 万人と 3.9 万人落ち込んでいる( 2009 香港政府年 報:http://www.yearbook.gov.hk/2009/en/index.html).

 97 年のアジア金融危機,さらに 2001 年の世界経済の低迷から失業率は急速に上昇化し た( 2000 年 4.9%,2001 年 6.2%,2003 年 7.2%:香港貿易経済代表部).また,2005 年か ら 2008 年にかけて失業率( 3.3 〜 4.1%:seasonally unemployment rate)は低下傾向を 示している.2009 年には 5.1 〜 5.4%と再び上昇し,2009 年第 2 四半期は 4.6%と低下し,

2009 年第 1 四半期より 0.2 ポイント再上昇している(香港特別行政区政府:http://www.

hkeconomy.gov.hk/).

 上述資料(2009 香港政府年報)によると,産業別就業者数の割合は,88%はサービス業 に従事している.内訳で見ると,輸出/輸入業,卸・小売業およびホテル旅館・飲食業関 係が 32.8%,公務員・公共サービスが 25.1%,金融保険,不動産,ビジネス・コンサルテ ィングサービス 18.2%,交通,倉庫,郵便・配送,情報通信サービス 11.8%である.製造 業は 3.8%に過ぎずその 5 分の 1 は,食品関係である.

 なお今日,香港から本土への人材流出が問題視されている.とくに高度な専門能力や技 能を持つ人材の流出が香港における金融や情報通信技術関係など付加価値の高い産業育成 発展にマイナス影響を与えかねないと憂慮されている.反面,中国本土からの労働者の大 半は,専門能力のない者も多い.人材の流出・移住に関連して,就業機会を拡大するため に新たな産業構築が期待されている.なかでも情報通信技術分野において香港特別行政区 政府は,1998 年The Digital 21 Strategyのビジョンを掲げ,香港を情報通信技術の中核 都市とすべく産業面からのみならず社会的インフラと活用の面から情報通信技術の育成・

(17)

普及活動を行っている(Digital Review of Asia Pacifi c 2009 2010, ‘hk’ Hong Kong).前 述のインタビューから,少子化,高齢化による労働力不足は,本国からの多大な労働力に 期待できるので問題外とのことである.

4 章 まとめ

 4 ドラゴンズの各国は,日本よりさらに少子化が進行しているが,この 4 ヶ国とも経済 成長著しい国で,少子化を迎える背景には,韓国は,政策的課題,台湾・香港は,同族意 識を中心とした文化宗教的背景があると考えられる.経済発展に伴い若い世代では旧来の 儒教精神や習慣は急速に薄れていると推測される.さらに,各国とも結婚年齢の上昇や女 性の労働の問題などで独特の文化的背景があると考えられる.

 これら少子化の大きな原因のひとつに教育の高度化と教育費の負担があげられる.

 しかし,21 世紀における持続型社会のための社会システムを考えなくてはならないとき に,経済が成長して個人の所得が上がり「豊かさ」の実感を,物やエネルギーを消費する ことに費やすばかりでなく次の世代のための社会を考え日本が経験したことのない国の発 展過程を見守り日本が経験したことをフィードバックすることが重要である.そして,そ こから日本が学ぶべきことも多くあると考える.グローバル化の進んだ新しい国際秩序の 中で新しい発展過程と日本の役割を見直す一助になればと願う.特に,香港・台湾は,国 連などの国際比較には記載されていないことが多く,今後,さらに詳しい研究がなされる ことが期待される.

謝辞

 本研究は,政策文化総合研究所のプロジェクトの基礎となる研究でありこの研究を東アジアの発 展過程の第 1 期の研究の基盤とした.資源協会における文部科学省受託研究「資源の総合利用に関 する調査研究」をベースとして,4 ドラゴンズに関する 2 回にわたる調査委員会(委員長:大橋正 和)の研究成果をベースに構成されている.研究に際して,援助を頂いた財団法人新技術振興渡辺記 念会と調査委員会の委員の皆様の協力について,ここに記して深甚なる謝意を表する.

参 考 文 献 大橋正和,『公共iDCc−社会』,工学図書,2003

大橋正和・堀眞由美編著,『ネットワーク社会経済論』,紀伊國屋書店,2005

大橋正和監修,『次世代XML Webサービスとシチズン・セントリックの考え方』,紀伊國屋書店,2005 大橋正和,Social Designとしての持続可能な社会システムの考え方―資源の持続的な活用と学術の

新しい体系―」 ,総合政策研究 Vol.18,pp.135 156,2010

大橋正和,「現代社会の変容と東アジアの発展過程について― 4ドラゴンズの社会構造について―」,中 央大学政策文化総合研究所年報 第 17 号,pp.113 136,2013

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参照

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