績 松 葉 集 第四﹂︵題策︶
七六五四三ニー
百 首 和 歌 奥 書 松 葉 集 奥 書 四 十 八 願 之 和 歌 嵯 峨 之 記
壽昌院母君をいためる言葉
予 か おとうと重継をいためること葉 家とうしめのおとうとをいためる言葉﹄オ
Lヲ
績松葉集第四 131
績 松 葉 集 第 四
(内題︶
績松葉集第四
138
百 首 和 歌 奥 書
タイ ソコ ヒロ
右 をしたひて・難波津のよしあしも・わきまへぬ・しれものs・渚にさまよひ・足すりをして・い ナキサ 百首の題は・和寄の浦の・わたの底を・きはめ玉を拾ひ給ひけん・人くのよみをかれし・跡
ハマ ヨシノさごをうかち・濱ちとり・あとをなんつくる事・人わらへならんかし・よしゑやし・芳野山の春
九つのちまたには・しつかなる栖を・もLニオとむるにも・所えす・市の中には・をうかなる身の スミカ の白雲も・風にさそはれ・龍田の川の・秋のにしきも・波にとsまる・世にしもあらす・されは
カクレカ チリ
・
隠
家もなし・六の塵に・まとひぬるうちにも・かのすきものに・心を入る時は・をのつからし
シツカ ヒロ
はらくも・静なるに似たり・せはき住居の・内にしても・はるかなる海山を思ひ・廣からぬ家ヘ
カキネ ウヘ ウツ
の・垣根には・植ぬ草木の・花を見・四つの時にしたかひて・移りかはる・鳥の音を聞にも・目 わ
たるためしそ知るs・人しれぬおもひをも・我とひとしき友もなけれは・誰にかは語らん・是
ケブリ ハレ カネ
にこそかつは・むねの煙も・晴ぬへきわさなれ・折にふれたる・月をめてぬとて・ねよとの鐘も
聞入すLニウ・いたつらに夜をふかす・すさひに・一首二首を・つらね・しちのはしかき・事つく
るまs・百にもをよひはへるならし
モ シホ
藻
塩 草 かきあつぬめることわさは を の かしsなるあまのさえつり 二〇莞
﹂三オ L三ウ
松 葉 集 奥 書
ルイシそれ名所集・あまた有といへとも・今の代にあまねく人のもてあつかふは・類字名所和歌集也・
ホツケウシヤウタク カキヌキ
此 書
先年・法橋昌琢・二十一代集の名所の吾・ことく書抜て・八巻の集を書出せり・それより以
ソウセキホゥシ チョクセソメィショシゥ ノゥイン ルイジユ ケンホウ ウタ前・宗碩法師・勅撰名所集を書集り・又能因の寄枕・類聚名所和歌・建保百首・其外謡枕・名所 クラ集様ミ有へけれとも・家ミの倉の中・箱の底におさまりて・なへての人の・見る事あたはす・しかあ
れは・廿一代集の外の名所の寄・見及ふにしたかひて・是を書付・十六巻の書となして・松葉集
と名付る所・右しかりL穿されは名所なるへき寄取出ても・國のしれさるたくひ多し・八雲御抄・
フ ホク ホへ
或 は 藻
塩草・夫木なとを見合せ・粗国の名あるにまかせて書入侍る・我はかせになりて・物定め
タふ ウツシしたるにはあらす・唯古き集・又は古人書をかれたる抄ともを・書写あつむるはかり也・あるひ
セツ アヤマ
アラタ ナヲ ソモく メイリヤク ことはり聞えかたき嵜も・わか了簡に及はされは・力なく本のまs・書写し侍る・後に見ん人あ ケソ は同名あり・或は一名に国の説ミ有・又書誤りて・あらぬ名所にしなしたる・歌もあらんかし・又 やまりを改め・ちかひたるを直されん・師を頼むのみ・抑此集を書あつむる初め・明暦申の年・夏 ワスレカタ なき方より・仰せことありて・はけみいとなむかことし・それより此かたいもやすくせす・朝タ ナホ のころほひ・ふと思ひよりて・をしまつきに﹂国ウむかひ・かたはし書付るに・あたかもやむこと
の身をたすくるうちにも・此事忘難くて・むねのやすらかなる隙もなし・我そのうつはものにも
あたらすして・かくはけます事・をのか心のうちに・主人ありていはく・聞及ふ名所の数もおほ
ヨミ サカヒ シル
からす・又嵜人の讃をかれし・所くのことの葉にこそ・ゆきて見ぬ境をも・宿なから知たよりな
績松葉集第四 135
れ・濱ちとり跡つけをきて・老のなみの立居に・物忘れしやすき・たすけにもせよとなり・物うく ヲキテ
む シソ つましき折節もあれと・此掟いなみかたくて・をこたらすなしもて行まsに﹂エオ・五かへりの春
秋をへて・ようつおさまるみつのとし・やsこと成ぬ・此主人たれといふ事をしらす・臣又おな
カケホウシし・或人影法師にむかひていはく・汝は我はしれは走る・とsまれはとsまる・いかんそ我とひ
としくするや・かけほうしのいはく・わかなすわさにあらす・待人ありて・そのたよりをえてす マコトる事也・又其人もその人のまsならす・なさしむる方ありて・なさしむるわさと見えたり・誠な
ギヤウヂユザグハ イ ギ ウテナる哉・行住坐臥共に・我心のまsの威儀ならす・心は量の鏡におなし・むかふかたちをまちて影 ウツ
を
移す・来らさる時は移らす・此松葉集いつこより来りて・心の鏡にうつりけん・おほつかなし
・しか﹂●有に・我国六十よこくの名所の歌書あつむるつゐてに・一首つs寄のやうにもあらぬ事
ともを・かつつsり書付る事侍き・人来りて名所の嵜あつめらるsは・我人の為さも侍らまし・
フ カソ ミヘナレ コ ライ
み つ
から不堪の身として・多くの歌よみつらねらるsは何の用そや・又耳馴ぬ名所よむ事・古来
の いましめ也かたーおそれ有へし・名聞におほsれてあらぬ心のはゆるにや・さにこそあめ
スカタユフピ タロリれ・しかしなから我詞たくみに・姿優美ならましかは・名聞の便ともし侍らまし・ロハはやうより アメ
此
すき心のすたりやらて・かくつたなくあやしき言の葉を・すsうに書とsむる事・天つちの神
もゆるされてよ・老﹂穿のなくさによみ侍る也・人に見する事にしもあらす・是そ浮身の思出な フウゾクらんかし・さりともかつてよまさるには・ひとしかるへからす・其故は和国の風俗として・神代 イタよりはしまりて末の世に至るまて・たかきもつたなきも・さかしきもをうかなるも・もてあそふ カバヅ
ヲロカ 事と聞えたり・鶯蛙の聲すら・寄をよまさるはなしといへり・いはんや人と生れて・そのたくひ
に
をとらんや・さるに心さしなき人は・いやしき身・愚なる心には・中ノ\思ひもかけぬ道と思
シツ ウツ
へり・数ならぬ山人あやしき賎のをたまきも・三十ひともしをつらねて・移りかはる折ミの・空
に 心 を い
くの仏も・なとかあはれみをたれ給はさらん・此世のすさひ後の世・はたたのもしく・終にほた ツヰ くゐ・身のうきにも思ひをのふるよすかとせは・ようつ神もよろこひ・其人を守り給ひ・もろ マモ たましめ・世渡るいとなみの中にも・かくろへ﹂六ウ事をもいひあらはして・つみとかを い の 道 に い ハチ あらまほしく・言よからぬさきらにて・池水のいひやる方もなく・岸うつ波の・みたりかはしく キシ たらん・されはやつかれこときの・をうか成ともからも・なへてもてあそふ世にしも
そしりをもかへりみす・恥をもわすれて・こちなき筆にまかせ侍るならし・にゐはりのつくく
おもへは・あら小田をかへすく・はsかりある・田子のしわさにこそ﹂芽
六 字 堂 宗 恵 万
治
三庚
子
八月上旬﹂七ウ
四 十 八 願 和 歌 南 無 阿 弥 陀 佛 そ れ 人 の す か た キエハツ にうかひ出る事は・五つのいましめをまたくしけるたねとかや・されはわくらは
に 此 世 に 生 り・あるは廿とせ三十に及ふも・盛なる花の日数もまたて・あらしのさそふたくひもおほかり. サカハ れ来ても・いとけなき時・うたかたのあはとのみ消果るもあり.やsおさくしくな
績松葉集第四
Z37
我 又 い か
なるすくせのむくひにや・よのつねよりも身よはくわつらはしくて・春の日をむなしく
ヲク イクタピ
ものかれて・四そちあまりの霜をいたsくまて・なからへきぬるは有難きにはあらすや・又佛の カタ 送り・たれこめて秋の風をいたみ﹂︵オ侍し事・幾度といふ数をしらす・かろきをしのきをもきを
ナキツ ツボ法にあふ事・わたつみの沖津塩あひに・咲てふ花よりも・なをまれなるをしへを・心のまsにき
s・ことに御法もあまたわかれし中に・芦間の月のさはりおほき・我らこときの・つたなくをろ テウセ ヒクハン
か
なる者をもとくたすけいまそかる・弥陀超世の悲願にあひたてまつる事・何ことか是にひとし
タイガゥ クハソモソ
かるへき・抑弥随の四十八願の題号・かつうけ給りしまs・願文の﹂八ウ下に・かたはかりのやう
に・三十あまり一もしをつらね侍し・海よりふかき願文を・あさきこと葉のえにまかせ侍る事・
つくは山・は山しけ山・しけき木の・その一葉にも及ふましきを・かつは佛の御心にもおそれ・
オつふ
か つは人の耳をは〜からすしもあらねと・か\る御法を聞うる事︒なをさりならすは思ひなから冷
ツレナ キシ
高 砂 の 尾 上 に た
てる松の難面き心に・住江の岸に生る草の・忘やすきまs・かくつsくるうちに
ヲン トナへも・仏のおほひなる恩をも思ひ出・御名を唱んたよりにもならんと也・もろくのくるしみは此
身をかきりとし・なかき世L穿うへなきたのしみを・うけん事のうれしさ・つsむへきたりとも
せ
はく・身にあまるよろこひを・寛永はたちのとし︒夏の日そこはかとなく︒筆をそめ侍るもの
ならし
ム サンアクシユ
元 三 悪 趣
聞もうき三瀬川をはよそにしてちかひの海に浮ひぬる哉 二〇八〇
フキヤウ
不 更 悪 趣 わ た つ み
の中にし流れ行水の又にこり江になとか帰らん 一δ益
シツカイコンジキ
悉 皆 金 色 東路のみちのく山に咲花の色より外の身やは有へき﹂九ウ
ム ウ コウシユ
無 有 好 醜
津の国の難波入江にあらはこそよしあしといふ形をもみめ
シユクミヤウツウ
宿命通
旅枕なかき眠の夢さめて思ひ出まし世ぐの古さと
テン ゲン
天 眼 通
うは玉の心のやみの晴ぬれは見残す方も夏の夜の月
テン ニ
天 耳 通 四
方山にすさふをきけは静なる心に遠き松風もなし
タ シン
他 心 通 世 の 人 の 心 のくまも見えつへし忍ふの山の道に入なは﹄oオ
ジン ソク
神足通
足
たsぬうき世の人を憐みておこちすかひも深きかそいろ
フ キ サウネン
不 起 想 念
置まよふ霜も日影に消ぬれは松の緑のあらはれにけり
ヂユシヤウヂヤウジユ
住正定聚 麻
の中にましる蓬もなかりけりすくなる法の心のみして
ヱ89 績松葉集第四
クハウミヤウムリヤウ
光明無量
月日にもこゆるといへははかりなき光を何にたくへてもみん
ジユミヤウムリヤウ
壽 命 元 量 かきりなき命と聞もたのもしな鶴の林のむかし思へは﹄︒ウ
シヤウモソムシユ
聲聞無数
足よはき車に法の人をたにいくらともなく渡す彼國
ニンテンチヤウジニ
人 天 長 壽 千
尋ある薗に生ぬる陰みれはいつれも長き齢成けり
リ シヨフ ゼン
離 諸 不 善 生 れ
んとねかふ心はにしの山さかなき名をもたsぬ所に
シロプチシヨウヤウ
諸 佛 称 揚
いちしるき我大君の御名なれはあたにも誰かとなへあくへき
ネソフチワウシャウ
念佛往生 弥 随 頼 むしめちか原のさしも草さしももれしな深き誓にLニオ
ライカウイソゼウ
来 迎引接 む か へ来ん仏を拝むうれしさの涙や玉のをはり成らん
シキシヨトクホン
殖 諸 徳 本
雨露の恵みを頼みうふる木のつゐには花のさかさらめやも
ク ソクシヨサゥ
具 足
諸相
極楽に生る〜人の三十あまりふたつのすかたそなへぬはなし
ヒチシ フ シヨ
必 至 補 魔
今しはと冬籠する梅の花春へになるも程はあらしな
ク ヤウシヨプチ
供 養 諸 佛 水 を む す ひ 花 を 手 折 て 御 仏 に た てまつるさへうとき此世にL一ヲ
ク グ ニョイ
倶 具 如 意
御佛にそなふるけをもことくに心のまsと聞そ嬉しき
セチイチサイチ
説一切智
まことある心の月もいつみなる信太の杜の千枝あきらかに
トクコンガウシン
得 金剛身 天 地
をうこかし山をぬくよりも法の力や猶まさるらん
マンモチゴソジヤウ
萬 物 嚴 浄
あやしくも妙に七つの寳もてつくれる国に行て生れん
ケンダウヂヤウジユ
見 道 場 樹
初瀬山春咲花をなかめても波かくらくそ思ひやらるsL三オ
トクペソサイチ
得 辮 才 智
説のふること葉の花のさきくある御法をうへきことをしそ思
.Z41 績松葉集第四
チ ベンム グウ
智弁元窮
とく法の心こと葉もをのつからかきりなき身と成そかしこき
ひアツケソシフかハウ
徹 見 十 方 天
地も八隅に見てる国くもくまなくみゆる法の光に
メウカウガフシヤウ
妙 香 合 成 か
ほり来る池の蓮の追風にさそな涼しき道そしらるs
ソククハウニウナン
鰯 光 柔 頓 氷 ゐし池の心もうちとけぬ光のとけき春にあひつsL三ウ
モソミヤウトクニソ
聞名得忍 軒 に 生る忍ふの草もむつましや後の世にうる名そと思へは
テソエヨジヤウナン
縛 女 成 男 女 郎 花
かりの色香は枯果て月さやかなる男山かな
モンミヤウボンキヤウ
聞名梵行
濁りぬる心の水も底すみて清くをこなふ身とそ成へき
キヤウアイ
聞名敬愛 世 に
越し名を聞からに月影のおほろけにやは人のあふかん
エ プクズイネン
衣 服 随 念 彼国のたちぬはぬてふから衣心にかけて身にそきるへき﹂三オ
〇
ジヤウジエケラク
常受快楽
花鳥の聲も匂ひもこと更に浮世の外の春の明ほの
ケンシヨフチト
見 諸 仏 土
いさきよき国はあまねく打むかふ鏡に移る影を見ること
モンミヤウクコン
聞名具根 い か
にしてかたわ車と見えぬへき法の教にめくりあふ身は
トクチヤウ
聞名得定
御名を聞人の心を種としてさとりの花のひらくへき哉
シヤウソソキケ
生 尊 貴 家
梓弓やことなき身と成ぬへし此世に又も帰らましかはL三ウ
グ ソクトクホン
具 足 徳 本 ひ た ふるに頼みをかくる斗也うふるわさをは弥陥に任て
モンミヤウケンプチ
聞名見佛 い
つしかに雲も霞も晴る夜の星を見ること仏をそみる
ズイイ モンホウ
随 意聞法 浮 木
よりあひかたきてふ御法をも亀井の水の絶す聞哉
モソミヤウぐタイ
聞名不退
一筋
に 思 ひ そ め にしけの色の又白糸に帰るものかは
トクサンボウニソ
得
三法
忍
吹 風 の
ひsく梢の紅葉sも散ての後そ静成けるL一穿
後の世をねかふごsうもなかりけり
南 無 阿 み た 仏 の聲の外には ﹂ニウ三二八 三二七
嵯 峨名月之記 績松葉集第四
143
ハ ツキ クモ
春 過 夏 暮
て
・
八月も十日あまりになりぬ・秋の雨うちそsきて・曇りかちなるそらに・月の名に
もやたかはんと・人みないふかしく思へるに・十四日の月・山の端高くさし出るころいとはなや
かなり あすの夜の名におふ空のさやけさを か ね
てしらする月の影かな 三二九
カイチヤウ サハ ヒロ
る・かしこを過て・藤の木の茶屋とやらんも・かたはかりにて・すむ人はなし・年ふりたる榎の エ ともいとかろく・草むらを分行まsに・都のさかひに・一筋植たる竹の・秋をもしらてほこりた スチウへ りきて・今夜の月を見はやさんとおもひめくらし・友とする人・二三人いさなひて・出たつ足も フタリミタリ かくて明行空のけしき猶よし・けふは嵯峨の御佛開帳の日なり・又大澤・廣沢にL三オさまよひあ 木 の 出けんと・むかしゆかしく・又是もいつかは・薪にくたかるへき時を待らんと覚ゆ松のL三ウみや・ タキふ ・おほきやかなるに・はひまとはる\枝も・いとこちたくねちけたる・いつの世に諸友に生
ヲカ フモト タウバ タウ
双
の岡の麓寺とよみしは・今の仁和寺にやあらん・塔婆高くそひえ・何くれの堂やしろ・軒をな
ヤス ヵりらへいとゆsしく見ゆ・安井の里をゆくに・民の子とものくるしけに・わさ田苅ほし・をくての
イナハ イボ アハレ ニ
稲
葉もる・かりほの庵も哀に・里の名にも似ぬわさかなと思ひやらる・髪にかなめの地蔵とてあ
コウボウ シ エン コシり・弘法大師の御作となんいふ・その寺の縁に腰をかけてやすむに・此あるしのあま・もと見し トフ
人なれは・いまたありやと問に・うちよりさたすきたる女の出てこたふ・年は﹂一穿より侍れと・
トナリ トキハ
いまたなからへ侍りて・隣の里へものして侍るなといへは・あはさる事ほいなくて立出ぬ・常盤
の 里 を
過るに・かしらに物いたsきたる人の来るをみれは・しれる人也・年ひさしく見さりけれ
ヲトロ ヲモ チ クサと・さまてかたちも衰へす・住人さへや面かはりせぬと・むかしいひけん思ひ出らる・千種の花 ヘイチヤウ
いろくに咲みたれて・なまめきたるも・見すくしかたくて・妥かしこ立やすらふに・閑帳やあ
らんと・いそきあへるも心あはたsし
ゆく道のほたしなりけり女郎華﹂六ウ
こ〜ろのさかの野ははるかにて 三三〇
セイリヤウシ ソソキヤウ トシ ケ
からうして清涼寺にいたりぬ・かの尊形を年経ておかみ奉るに・いとうれしくたうとく・身の毛
ムカシ シユジヤウ
シ ユ ツ シ
ヤウ プ
いよたつて・ぬかつく事やs久し・昔仏衆生の為の故に・西天に出生し玉ひし時・御母まや夫人
タウリ コヒ タテマツ ビ シユカツマ シヤクセンタン
の た
めに・切利天にあからせ給しを・世の人轡忍ひ奉りしに・砒首靖磨・赤栴檀をもて・生身の
リシヤウサイト ネ ハン
佛 になそらへて・作れる御かたちなり・されは利生済度の月の光もかきりあるにや・浬梁の雲にい
ツル ハヤシ ケプリ ヰントらせ給ひしに・此如来はもろともに・鶴の林の姻と﹂一芽も立さらせ給はす・印度よりもろこしに クワサイ ホノホ
わ
カク たり・それより我国につたはりおはします・又この寺ちかき比の火災にも・炎の中をのかれ出さ
せ sために・縁ふかき御仏にておはしますよと・たのもしく有難く・涙もとsまらす・友人も袖を ナミタ たまひて・御つsかなくわたらせいまそかる事・とにも角にも末の世の・われらこときのもの
績松葉集第四
145
セイカ シしほりあへり・東の方に・かり屋の有けるを人にとへは・栖霞寺となん・光君のいかめしう作ら ソソ ザ
せ 玉 ふ
・
御 堂 ヰソ カソテウ なといへるも・此寺のいにしへならんかし・三尊のあみたならひて座し玉ふ﹂夢・
是もゆへある佛の作らせ玉ふと人の語る・さて二尊院へまうてぬ・そのかみ漢朝より・此国へは
ブチキヤウシヤカ ミ ダ レイザウ トキしめて佛経釈迦・弥陀の・異像をわたされしに・時いまた至らさりけるにや・説ひろむる人もな
ホウザウ
カキ プリ かりけれは・此寺の寳蔵に・年久しく埋れさせ玉ふとなん・今は二尊の御かたち・いとたうとく
たsせ玉ふこそ・むかししられて有難けれ・それより北にあたりて・竹垣ひろくしわたして・古
ギ ワウキ エヨ スミ ァソヂ ワキ ミ ヅ シ
たる寺あり・妓王妓女の住たる跡となん・立入て見めくるに・阿弥陀を安置せり・脇に御厨子あ
ヒ ク ニ シヨヂ
ホ
り・内より比丘尼の出来て・御戸をひらきけるに・昔﹄八オのあま君・所持の本尊ノ下に・四人の ンソン
シユシヨウ キヤウカありし姿・いと殊勝に・ならひおはせり・友の中に・宗貞といへるか・狂寄をなんよみける
妓 王 妓 女とちこもりたる柴の戸も プリ いまは佛の御寺とそなる 三三
折
ケウ から雨の降出たるに・いとs物さひしく・内に比丘尼のひとりふたり・打しはふきたるも・哀
に お ほ え て るに・大沢にたとり行・池の見わたしいと廣く・めくりに松・柏・かえて・桂な﹂六ウとやうの・ カシバ ヵツラ ・しめりたる心ちして侍るに・此寄になん興をさかせて・人みなわらふ・空もやs晴 年 けは・心もさはやき罪もほろひぬへし・是やかの八のくとくの池に・七の宝もて作られたる樹 タカラ ウヘキ ふりたる木とも・枝をさし出葉をましへて・風にふかれたる音・さsら波の汀によせ帰る聲き
ク クウムシヤウム ガ
に
・
ヲキ ふく風の音は・苦空無常無我の・御法をのふるとかやもおもへはよそならす・はちすの花は 散 果 て ヲモタカ コナキ カツミ ・たち葉に露の置あまりたるに・つらぬきとめぬ玉の散か\れるを・浮葉の上にうけとめ
ア シ
たるも・うれしけにみゆ・沢潟・小水葱・勝見・芦・名もしらぬみくさに・花のしろく咲るを・
ウキ 遠 か た 人
にとはまほしく・さらぬ浮草のさL一穿まく生ましれるか・波にたsよふを見て
大 澤 の池の波間のうきぬなは
うきぬしつむは世のならひかも 三三ニ
ジ ヤ ウ シ ヤ ヒ チ
スイ ヱ シヤヂヤウリ
盛 者 ものにわかるも程なし・たのしみかなしみ行かふといへる・誠にしかなり・此世のみにあらす・ マコト 必衰のことはりなれは・世にさかへおこる人も久しからす・會者定離のならひなれは・あふ
カイ カミヒ サウテン シツ ナイリ
三 界 六 道 を
めくる衆生・うかへる時は・上非想天まてものほり・沈む時は・しも泥梨の底にいた
ジヤウヂユ ジヤウド シヤウコン ル テンリンヱる・いつくか常住の所ならん・おなし池の面を・浄土の荘嚴に見なし・あるひは流﹄九ウ韓輪廻に タマコレなそらふるも・唯是一つ心のわさにや有らん・廣沢に来てみれは・北は山ちかくそはたち・西は
ツ ヘミ ヤナキ カケ マコト ベン
堤 に 植 カサ きあへるに・風のをとかはり・雲のあし飛かことくして・又降くる音いとしきり也・池にそふて トプ プリ まはりて一里となん・所の入いひつたふる・汀にわらうたあや莚なとしきつs・並居て・うそふ ムシロ ナミヰ たる柳の陰ふかく・東南ははれたり・誠に月の名ところとなんいひつへし・池の廣さ三返
しき物から・うき世の眠もさむる心ちす・さりとも曇りもはてし・けふは髪に暮して・夜もすか ネフリ きて内へよひ入ぬ・水鳥の波に﹂二゜オきをふ聲・離にすたくむしの音・雨の折にあひて・かしかま マヵキ つくれる家あり・笠やとりにとて立よるに・あるし心ありて・杉の板戸をしあけ・さうじをひら
ら月をめてはやとたのむも・おほつかなくいたうふりけれは
ひろ沢のいける我世のおもひ出に
ごよひの月の曇らすもかな 三三三
雨 は 猶 を や
みもやらす・こsに友真といふか讃る
月見んと千ぐにごsろをくたき来て
績松葉集第四
147
帰るもおしき廣澤のなみ﹂二〇ウ 三三四
メウシソシ
都ちかきあたりにと・先此宿りを・たつ妙心寺のほとりに・しれる人のかり行て・しほれる衣の袖
モリ
を り・ひしりすこしてよなといひて・かたはしうたふ・かくしつs日没の鐘・おとろくしう聞え ニチモチ カネ りくふ・あなしの法師・麦飯なといへるもいとめつらかにもてはやす・けふはいたうつかれにけ ムキイヒ ひろけ・足あらひなとして・やつこのもてりけるかれいひを・あやしきうつはものに盛て・と
て・雨は晴けれと・空いとくらく・道もいまたいふせけれは・そこを出てひんかしへ帰りくる ハレ
に
・山きははかつく露て・雲間にもれ出る﹂三オ月いとさやかなり・かsらましかは・彼池にて サ クワン みましものをと・返すく口おし・月の曇らすもかなといひけんは・さもあらんかし・晴間をた
にしはし待やらて・たへぬ心の淺さを・さりとていかsはし侍らん・作願をして行する心のあら
シソニヨ グハンギヤウグ ソクましかは・真如の月は出つへし・願行具足せされは・まことの道にはいたりかたしとなん・し ミヤウガウ シヤウジユ
ム ヰ ネチハン かはあれとも・あか仏のたうときは・衆生のなすへき願も行も・六字の名號のうちに.成就せさ せ 給 ふ て
・
罪 深きわれら衆生にあたへ・一念にとなふる人をして・彼無為浬築の國にL三ウむかヘ
チカとり給はんとの御誓ひいと有難く・誰もくなをさりに思ふへき事かは・西の京を過来るに・右
フ セウ アツ スダレりひたりの家居に・貴鐘をならし・夜念佛の声きこゆる・残る暑さにや・門をもさsて・簾かけ
トモシピ フウフ
わ
たし・はしちかく燈ほそくかsけ・五人七人・をのかしsあつまりて申もあり・又夫婦年老た
ヲヤ オクフカる親なと・奥深く入て申所もあり・人みな石木ならねは・いつれかは後世のかなしからぬ・すヘ
ヨ タエ フチホゥトゥセン
て 十 籐 町 のあひたに・念仏の聲絶す・まことに是佛法東漸のことはり・いちしるきわさなりL三オ
ヲシ キヤウタウメツジン ガ イ ジ ピ アイミソ ドクル シキヤウ シ ヂユヒヤクサ トカ エヨライ キソヂソ中にも弥陥の教へは経道滅尽・我以慈悲哀慰・特留此経・止住百歳と説れし・如来の金言・いと
オホ
ヒ ル ホ タ ル
ノキ トビ
た
のもしく覚ゆ・昼のことてれるひかりに・秋の螢の忍ひかねて・小家の軒の下を飛行を・扇を
もてとりて・わらはのもてるさいてにつsみて・是も家つとのためとても帰りぬ・ふたsひすめ
ホリカバ ハシ ヤスるとよまれたる・堀川の橋を渡るに月見る人いとおほかり・かくてをのか家に帰りて身を休め心 ネヤをしつめて・けふの見し所く・更におもしろく思ひ出らる・うたsすみわたる月に﹄=ヲ閨へも
ネソス フツヵウ ァサマ
いらて・念珠つまくり・口には仏号となふるも・心は見ぬ浦山にかよふこそ淺間しけれ・二千里
リンワウ
ヒ
ヲ サカビ
の
れ・むさし野の草の原の月は・入へき山もなく・さはるへき梢もなくて・心のまsに見てまし・ コスエ まし物を・中にもゆかしきは・さらしなや媛捨山こそなくさめかねつといへるも・猶心にくけ ヲバステ 外と・作られたるもけにさらんかし・輪王の代ならましかは・卑夫と成ても・遠き境をかけら
スぐフク ヨシノ タケ カミヂ
今 夜 た れ 篠 吹 風
を身にしめてといへる・芳野の嵩こそさそさひしからん・ことに神路山に出ん月
カツラキ トヨラは・心﹂三オのやみもはれつへし・葛城や豊等の寺のえの葉井は・いとおほつかなく人も・いへる
カモ ヒ エ ヨ カワ ヒ ヲ カふミを・鴨の長明かこまかにかけるにそ見る心ちす・程ちかき所にも・大比叡や・横川・比良・鏡の
クモ ヲ シマ山は・猶曇りなからん・雄嶋松嶋には・あまたにも心ありけにきこゆ・清見か関に・旅ねすらん
フ ジ タヵネ キエ ミ ホ イ セ
人 は たうらやましく・夜もすから富士の高根に雲消なは・三保の浦松も見えわたりぬへし・伊勢の
キヨ ナキサ ミナト フキアケ
海や・清き渚と・いへるこそ名にもしるけれ・すへて懸しきかたのおほかる・ゆらの湊・吹上の
ハ
モウサウ ネソ じ 濱・吹飯のうら・あは﹂三ウとはるかに・淡路潟・あかしも・須磨も・をのかうらくさまくいひ マ フケイ アハヂ カタ ス マ
セイシ ホ サチ を・忘るsにこそ・一心の阿弥陀仏を念したてまつる・夜も更行に・窓にさし入月いとあかく・ フケユク マド つsくるも・わりなき心のすさひにや・かつは妄想の念にさへられて・一大事の忘れましき事
心もすみ渡りけれは・是そあみた佛の右にたsせ玉ふ・勢至菩薩にておはしましけるよと思ひ出
られて 我頼むほとけにそふるひかりそと
績松葉集第四 ヱ49
きけはうれしき月の影かな﹂二四オ 三三五
クハソセヲソポ サチ ジヤウド
ニ チリン
観 世 音 菩 薩 は 浄 土
にありては・仏の左にたsせたまひ・世にあらはれては・日輪とならせ給ふ・
ヨルヒル アンヤウカイ ジ ヒ
此
二菩
薩
夜昼・まよひの衆生につきそひて・安養界に道引給はんとの・大慈悲の御つもりにょり
ホングハン
て
・
今 此
弥陀の本願にあひ奉る事・よろこひてもく猶あまりあることになんと思へは・身もす
ヲト ビジリタチsうに踊るやうにおほえて・たうとき聖達の・よみをかれし・古き吾をなん書付たるを取出て・
人 のきかくもおもはゆけれは・いと忍ひてかすかにうたふそのうた﹄西ウ
カ バイサソ
歌 唄
讃 空也上人
一た
ひも南無阿弥随佛といふ人の 蓬 の 上 に の ほらぬはなし 三三六 菩提寺眺恥虫くひ
しるへある時にたにゆけこくらくの
道
にまとへる世の中の人 三三七
僧都源信 我
た にもまつ極楽にむまれなは
しるもしらぬもみなむかへてん 三三八
クヰミヤウジソジブハウムゲクハウニヨライ
闘 命 蓋 十 方 元 碍 光 如来L言オ 蹄 命 蓋 十 方 元 碍 光如来 蹄 命 蓋 十 方 元 碍 光如来
行
基 菩 薩
かりそめに宿かる我そいまさらに ものなおもひそ佛とをなれ
永
観
律師
い にしへにいかなる契りありてかは 弥施につかふる身となりにけん 慈 鎮 和尚 人も見るも我身を見るもこはいかにL二主ウ
なむあみたふつ南無阿弥陀佛
ナ ム フ カ シ ギクハウニヨヲイ
南 無 不 可 思 議 光 如 来 南 無 不 可 思 議 光 如 来 南 無 不 可 思 議 光 如 来
源
空 上 人
身はこsにまた有なからこくらくの
シヤウジユ
聖衆の数に入そうれしき
蓮
生 法 師
おもひたつこsろはかりをしるへにて
我とはゆかぬ道とこそきけ﹂美オ
湛
空 上 人 六 の 道
いくあくりしてあひぬらむ 三四〇 三三九
三 巴
三四二
三四三
績松葉集第四 151
十聲一こゑすてぬちかひに 三四四
ナ ム
シ シ ンクヰミヤウワアミタフチ
南 無 至 心 闘 命 阿 弥陀仏 南 無 至 心 闘 命 阿 弥陀仏 南 無 至 心 闘 命 阿 弥随仏 親鷺上人 生 れ来て南無阿弥陀仏にあふ事を 寝 てもさめてもよろこひぬへし 三四五 蓮 如
上人﹂二×ウ
弥陀の名を聞うることの有ならは
なむあみた仏とたのめみな人 三四六
善 知 識
トナ
阿
弥随佛と唱ふる人のこsろこそ
木
にもきさまぬ弥陀のた\ちよ 三四七
ツヘミ テイゴ ネフリ マ キ
す て に
時もりの・打なす鼓も聞え・寺くのかね月も・停午に及ひぬ・眠の出るまsに・真木の
板
戸をさして内に入・かくはかりおしと思ふ夜をなといひて・もときあへる人もあらむかし・所
くありきこうしにたれは・跡さきも﹂二莞しらて・いねたる秋の夜も名のみにや・ねさめの枕に
鳥の聲を聞て
かけの尾のなかしてふ夜のこよひたに をのか帰音に月そかたふく 三四八
とよみて・とかくするほとに・夜明にけり・けふも又暮ぬへきにこそ
南呂中旬記之
六字堂 古示寅心L一一七ウ
壽昌院はs君をいためること葉
モチ
母 公 世
をさらせ玉ふてけれは・つれくと山中にこもらせいまそかると聞し・時はみな月望はか
ロスニ セミ スオりになん・所は北山陰・木sの梢しけりて・あけたては蝉のおりはへ鳴・くれない涼しき風吹
て・螢高く飛かふ・草むらの露のよすかにも・こsろをいたましめ玉ふらんと・をしはかるもな
ザイゴチウシヤウ
を
心あさくや・彼在五中將の・くれかたき夏の日くらしなかむれはのことの葉・思ひ出侍し・や
つ か れ に アツ いとねんごろなりけれは・まうてとふ﹂云オらひぬへきを・身もわつらはしく・てる日に
つちもさけて・いと暑きころをひなれは・ほいにもあらてやみぬ・せめての心はせをのへて物く
るおしき三十一もしを・書つけたてまつるものならし
なけかしな影かたふきている月は
世 のならはしのみしか夜のそら三四九
は やしのかね下の弦L二︵ウ 予
かおとうと重継をいためること葉 績松葉集第四
ヱ58
浮 世
の夢の中に・心をつくす事・なをさりならす・あら玉の年たちふる比より・待遠にのみ花を
コスエ ノ
思 ひ
・
寒 カ 帰るあらしに・をそく咲ぬへき梢をくやみ・やs春雨にほころひぬる折しもは・さらぬ
野山にまとひ・色にそみ香にめてs・たはふれさまよふも・いくはくの日数そや・咲て七日とは
い ふめれと・嶺のあらし松の風にさそはれぬれは・心ならす散過ぬ・秋は月を思ふとて・しるヘ
ヤミ
ハ
ナヤ なき闇にたとりて・山の端に待出る影をなかめ・酒さかなと﹂二穿りあへす・曉の雲をなけきぬ・ アカツキ
人 の
世も是に過す・いとけなきむかしは・たらちめの親のまもりによりて・人と成し此かた・身
ヨク リ ハヂをたてんとし・欲にふけり利にまとひ・人にあらそひ・恥をそれ・にくみかなしひ・心の中のく ヲクるしみやむひまもなく・月をわたり日を送りて・四十除年の霜雪をかさねぬ・いつを身の待事と
サカリ ヲウセウフチヤウ
せ も世をのとかに思ふ時なし・髪に予かおとうと・重継とて・よはひ三十あまり三とせのL=九ウ春秋 ヨ シゲック んや・月花は猶定まれる盛あり・人間老少不定なれはしらす・今日にしもやあらん・しはらく
モト ラウ
を む か へぬ
・
はらからおほき中に・父母の許につかへて・薪水の労をほとこし侍りしに・いにし
ヤ ヨイ ヲキ
弥 生
の末・六日のあした・心ちわつらはしき事もなく・つとに起て・かしこ髪うそふき・見めく
ネフル イキタエ オヤサイシ ケソソクりしに・此世のえんやつきけん・眠かことくして息絶ぬ・親妻子春属足をそらに・まとひあつま ニヨり・よひいけく・面に水そsきなと事をつくしけれと・よみかへるへき心ちもせす・是そ此如