長崎市に於ける
テレビジョン影響調査結果
と そ の 考 察
吉 村 喜 好
調 査 目 的
テレビの影響調査に関しては,最近非常に大がかりな,しかも精巧な方法を通じて幾多のも のが発表されている。例えば一昨年から昨年にかけて行われた文部省の「テレビジ・ン影響調 査や,毎日,朝日,読売の調査室を中心として行われた「新聞綜合調査」の一環としての「テ レビの影響」などがそれである。又地方に於いても各地に林立した民放テレビ局に於てはそれ ぞれ独自の立場から,視聴の実態を科学的調査を行っている。
長崎県に於いては,昭和33年12月末,NHK, NBCのテレビ局が設置されるや,正に瞭原 の火の如く各家庭に受像機の設竃が進み34年7,月末現在で既に,テレビ設置に於いては半年以 上先輩県である熊本,鹿児島を抜き,九州に於いては福岡に次いで第2位の設置台数をしめ,
現在に至っている。
しかして既存の諸調査の結果からみても,初期に於ける,テレビの与える影響は,それ以後 の場合と若干異る様想を示している部分があることが示されている。そこで我々は長崎市に於 ける初期のテレビ設置が,家庭の成入,児童に如何なる影響を及ぼしているかを調査せると共 に,それに対し設置時間の経過がどの様な適応の過程を通過しているかをしらべてみたいと考 え,以下の様な調査を行ったわけである。
調 査 方 法
1.調査の型式 質問紙法 2.調査の対象
長崎市内小中学校中,中心地区代表校,周辺地区代表校として小中校夫々10校,6校を選んだ 小学校 西浦上,城山,坂本,戸町,南大浦,伊良林,飽の浦,小榊,磨屋,佐古 (IO校)
中学校 西浦上,長崎,淵,丸尾,梅崎,桜馬場(6校)
小学校は各学年のテレビ所有家庭の児童を各学年第1組の左端より17名,中学校を同様にし て各学年20名を選んだ。
一35一
上記生徒,児童の父母(小学校1,020名,中学校360名)1,380名, とその児童生徒(但し 小学校の3年以下の児童は調査対象から除外す)LO40名,総計2,420名を調査対象とした。
父母用 児童生徒用 回収率 調査率 質問紙 83% 89%
番組表 78%
調査世帯 (1)戸主の職業別 (2)学 歴 別
職 業
商 業
工 業
農 林 水 産 業
自 由 業
会 社 員
公 務 員
教 員
そ の 他
計
回収数 249 92 43 56 456 99 52 51 1,098
% 23
8 4 5
41 9 5 5 100
学 歴
高 小 卒
中 学 卒
旧 中 卒
高 専 卒
大 学 卒
計
回収劃%
304 85 398 184 127 1.098
28 8 36 17 11 ユ00
3,調査期聞
昭和34年6月24日から 1週間 4.調査人員
長崎大学学芸学部視聴覚研究室学生ユ2名
5.調査表
調査表は,父母対象の第1表,児童生徒対象 の第π表,
調査表の内容の概況の次の様なものである。
第1表(父母用)
(3)受像機設置期間別
設 置 後
!, 2 ケ 月 3, 4 ケ 月 5, 6 ケ 月 7 ケ 月 以 上
計
回収数 207 272 215 404 1,098
% 19 25 19 37 100
と父母,児童生徒共用の番組表の第皿表,の3つを用いた。
児童名,父母名,:職業,学歴,家族構成,購入動機
(1)父母自身について
§ 1.
§2.
§3.
§4.
§5.
§6.
§7.
§8.
計画視聴について
子供の家庭学習時の視聴について 面白い番組とその利用
ラジオ聴取の変化(聴取時間,時刻,内容等変化)
新聞購読の変化(時間,時刻,内容の変化)
映画観覧の変化(回数内容の変化)
単行本購読の変化(時間,内容の変化)
食事の変化(時間,時刻,団簗等の変化)
§9.就寝帰宅,外出の変化 §10. テレビの来客について
(2)父母が見た子供の変化
§ 1.
§2.
§3.
家庭学習の変化(時間,時刻,内客等変化)
子供の日常生活(子供の帰宅,言葉の影響,登場人物の真似,家族との話し合 い,両親に対する質問,手伝い,態度行動,友人が出来たか子供の最近初めた遊
びの有無)
他のマス,メディアに対する変化(ラジオ,本,新聞,映画等に対する行動の変化)
(3)父母が子供に見せたいと思う番組,みせたくないと思う番組とその理由,
第班表(児童生徒用)
§ 1.
§2.
§3.
§4.
家庭学習の変化(時間,時刻,やり方の変化等)
他のマスミディアに対する変化(新聞,雑誌,ラジオ,映画に対する態度の変化)
その他の日常生活の変化(戸内外でのあそびの時間,就寝時間,新しい友人が出 来たか,家庭での団簗,運動の好悪,運動をよくするようになったか,体に対す
る影響等)
好きな番組,嫌いな番組とその理由,
第皿表(番組表)
一週間にわたる,NHK, NBCのテレビ番組が印刷してあり,これに § 1.家族全員,また近所の人と見た番組
§2.子供達だけでみた番組 §3.子供一人でみた番組
§4.以上から子供,父母の全視聴覚,平均視聴時間 を問うた
調査結果の概要と考察
調査内容が多岐に渡っているので,全般に渡っての考察は紙数の都合上不可能であるので家 庭学習へ及ぼした影響と家庭視聴の仕方,視聴時間に限って考察してみる事とする。
1.家庭学習に及ぼした影響
§ 1.家庭学習に於ける父母の態度
第1表 第1表で示す通り,その約半数がみないよう
にしているのであり,誓い賭砂さくしてみ獺聾贈章寛鍛し麓ll讐に
ており,全然無関心な視聴は1割にすぎない。
% 10% 35% 45%
初期に於いては,大半の家庭が子供の勉強に気
を使っている事が知られる。普通のまX見ている理由について更に研べてみると,子供は大し
一37一
て気にしていない(38%)近所の人が来るので仕方ないからG5タ6)良い番組があるので是非 みたいから(ユ5%)がその主な理由になっている。此の子供が大して気にしないという項目
(38%)は全体からみると3,8%に当るので大した数ではないが此等の家庭は,部屋数が広か ったり,特別な勉強部屋を持っている子供達で,直接影響を受けることの少い子供達とみてよ いと思われる。
以上の結果を更に学年別(小学1,2年,3,4年,5,6年,中学生の4段階)及び設置期問別 にみると「音を小さくして」は高学年程比率が高く・中学生と小学1・2年の間に於いては設置 7ケ月以上で約12%,設置1,2ケ,月で約20%7の差がある,つまり高学年の子供の家庭程父母 は,テレビに細かい神経を使っていることがわかる。ところが全然「みないようにしている」
のは「小さくしている」と全く逆に低学年程しかも設置期聞の短いもの程多くなっている。こ れには次の様なことが考えられるであろう。即ち,その1つは低学年や設置期間の短いもので は子供自体が,完全にこれに食われてしまい,家庭学習など殆んどやらないといった状態にな ったのではないかと思われる,それで父母は,特にスヰッチを切るという大英断を敢えてしな ければならなくなった事と思われる。一方高学年になると当然家庭学習は必須の仕事となって くるので,どうしてもやらざるを得なくなり,テレビをつけていてもやれる,という習慣がつ いてくるのではないだろうか更に此れに設置期間が長くなるにつれて,慣れの現象が生じ,更 にその習慣に肥車が加えられたものと思われる。
その外,この初期のテレビ購入者は,中流家庭以上が多いと見なけれぽならない(被聴者家 庭戸主の学歴調査参照),従って,子供の教育は比較的関心が強いのが当然である。テレビは 買ったが,それが子供の学習に悪影響を及ぼすのをどうしたらよいかは,新しいテレビ所有家 庭の問題として浮び上ってきているのではないだろうか,その結果が此の様に全体の8割まで が子供の学習的テレビは「音を少さくする」か「みないようにしている」という態度をとった
ものに相異ない。
§ 2.学習時間及時刻の変化
第2表で示す通り全体の6.2貸下の人々に は変化はないが,32%が勉強時間に変化を来
していることは注目すべきである。常識でも 考えられる通り,「短くなった」が24%で」長
くなった」の8%を遙:かに凌駕している。
NBCの34年度調査に於いても「低下した」
28.7%でほゴ同じ様な結果を出している。し かし「長くなった」が若干でもいることは今 まで殆んど家庭学習をやっていなかった子供 達ですら,テレビを後でみる為,前もって勉 強をといった事で勉強の習慣がついたのでは
勉強の時間 第2表 :父母調査 蹟百\警
長くなった
変りない
短くなった
無 答
L2年
2 69
ユ9
10 3.4年
5 60 27 8
5碑中学
12 10 60 60
23i25
515
面倒
81
62 24 6
第3表
蕪F警
長な つ くた
し2ケ月 7ケ月
1,2年3,4年5.6年
2 5 8
2 6116
中学 4%
13%
ないかと考えられる。予予3表で示すように「長くなった」は1,2ケ,月よりも7ケ月以上長く テレビをもっている家庭でしかも上半年程多くなってきている事は,テレビを使い方一つでは 必ずしも家庭学習にマイナスの影響ばかり与へるものではないと思われる。
ところが此処で問題になるのは,子供自身の此の質問に対する解答が,父母のそれと喰い違 っている点である。
第4表で示す様に・3・4年では長くなった24 第4表勉強時間(児童調査)
%に対し短くなった27%で大差がない,これが 父母調査の方では(第2表) 「長くなった」は 僅か5%で「短くなった」は同じく27%であ り,全体的にも相当な異りになってきている。
此のことは,34年3月に行った長崎大学附属小 学校の「テレビ調査」①でも「長くなった」
長くなった かわらない
みじかくなった
無 答
3,4年
24 42 27 7
5.6年
22 64 10 4
中学生 13%
64 22
ユ.
24.5%「かわらない」56.5%「みじかくなった」19%で,この場合はむしろ勉強時間は長くな ったといっている。設置期間別にみると(第5表)小学3,4年は変化がみられないが,小学5,
6年と中学生には変化がみられ,それは設置期間は短いと勉強時間も短いけれど,月がたつう ちに徐々に勉強時間が長くなっていく傾向にある。
第5表 勉強時間児童生徒調査 一 学年
\一_ へ
項噛\騨
長くなった かわらない
みじかくなった
無 答
小学3,4年
7ケ月 以上
25 44 29
5.6 ケ月 22 33 31
2114
3.4 ケ月 21 46 23 10
1.2 ケ月 28 44 26 2
小 学5,6年
7ケ月 以上
25 63 10
5.6 ケ月 24 69 4
3,4 ケ月 18 66 13
1.2 ケ月 22 60 16
中 学 生
2 3 3
7ケ月 以上
20 60 20 210
5,6 ケ月 13
66 20 1
3,4 ケ月 12 68 19
工
1.2 ケ月
6%
59 28 7
大人は子供の勉強時間は「短くなった」という者が多いのに不拘,子供は,余り勉強時間が
「短くなった」と考えていないのは,一つは子供が現実はテレビに勉強時間を食われていると
・・
、反省から,価値的に誇張した解答したとも考へられる。しかし,第5表で示す通りに設置 期間別にみる真,特に小学校高学年及び中学生の場合は一般に高学年になる程,しかも,設置 期間が長くなる程次第に,勉強時間が長くなり,「勉強時間が短くなった」が減少している結 果からみても必ずしも,児童生徒のこれらの「てらい」だけで解決される問題ではないようで
ある。
それで今一つの考え:方は,父母自身も,何時も勉強していた筈の夜の7時8時の時問テレビ を見ているので勉強する時間が短くなったに相違ないといった,一般的な予想の上に解答を行 ったかもしれない。つまり子供は,テレビをみるために,その他の時間即ち,父母の目につき にくい時間に勉強するようになったのではないかという考え:方が起って来ると思う。此の結果
一39一
について文部省の33年度の調査②をみてみると第6表の通りである。
此の結果は・本調査の父母調査の様に極端に 第6表 勉強の時間(本人)文部省調査 悲観的結果でもないし,又調査の児童生徒調査
程楽観的でもなく,その中間の価を示している とみられる。本調査との此の様な相違が出て来 たのは,本調査の場合は,長崎市に於いて,テ レビ受像開始直後の設置者が被調査者である関 係上,テレビ所有者のレベルが,全国調査のぞ
墳自\讐
ふ え た
かわらない
へ っ た
無 答
3 年 14 57 23 6
5 年 14 62 19 5
計 14%
59 22 5
れより幾分高いといった処から来ていると思われる,即ち,本調査の被調査者である児童生徒 は,全国平均よりも能力的にみて上位とみられるので,勉強時間が比較的に増えた,本調査の 父母の結果がそれと反対に悲観的であるのは,それだけ,テレビの悪影響に対して神経をとが
らしている結果だともいえよう。
このことは次の第7表第8 表が示す勉強の時刻の変化で も一応考えられる。父母の場 合。児童生徒の何れの場合に おいても,変化量がその50%
に達している。特に早くなっ たが多いことは,帰校後すぐ
第7表勉強の時刻(父母調査)
廊一洗
早くなった
変りない
おそくなった
無 答
L2年
35 54 6
3.4年
31 49 11
5 9
5.6年
35 36 18 11
中 学 27 48 2Q 5
全 体 32%
46 14 8
勉強にとりか\って,後でゆっくりテレビを見 ようとする計画らしいことが考えられる。これ は父母児童生徒調査何れも殆んど一致した結果
が出てはいるが,帰ってすぐ勉強にか\るのは 実際勉強時間は長くても,短かく父母には感じ るのではあるまいか。
第8表 勉強の時刻(児童生徒調査)
漏一輻3・4年
早くなった 43
変 り な い 43 おそくなった
無 答
l1
3
5.6年
38 52 10 0
中学生 26%
50 23
1
1951年忌シカゴでの調査③でも,テレビをみる前に学習したもの69%,テレビを先にみてそ れから学習したもの7%という結果を発表しており,テレビは,家庭学習の時刻を変化させた ことはアメリカでも日本でも同一であるらしい。
§ 3. 家庭学習の状態
結果は第9表第10表に示す通りであるが,父母調査の方は,無答が多いので,第10表の児童 調査の方が信頼が置けると思う,それによると,仕方に変化があったのは3296でその殆んどが
「決めてするようになった」これは,テレビが時間的に定っているので必然的に,決めてせざ
るを得なくなったわけで,従って時間に対する観念が強くなって来たことは当然予想されると
思われる。
第9表 学習の仕方(父母調査)
項 上 学年
今までのように決めてしている 〜
今までのようにきめてしていない
決めてするようになった 決めてしないようになった
無 答
1,2年13、4年 25
14 12 3
25 14 11
2
46 48
5.6年
30 11
12 6 41
中学生 全体
30 22 15
28 16 13
3 4
30 41
以上で時間的に規則正し くするようになったのは喜 ばしい事であるが,学習中 の精神状態に動揺を来して いるのであればその学習に はかなり問題がある。
第11表第12表に示すよう に,確かにテレビがあると
第10表 学習の仕方(児童調査)
項 目 学年
今までのように決めてしている 〜一
今までのように決めてしていない
決めてするようになった 決めてしないようになった
無 答
3.4年
30 22 30 13 5
5.6年
42 19 30 5 4
中学生 35 27 27 5
6
学習に落着がなくなることは事 実であろう。 この事に対する 対策は,家庭において特に考へ
てゆかなければならないと思う が,第12表で示す通り僅かでは あるが,設置期問の経過に伴 い,気にしなくなってきている
第11表 学習のようす(:父母)
「面一警二 落着ない 変らない
熱心になった
無 答
L2年
21 59 4 16
3.4年
25 45 8
22
5.6年
25 51 11
13
中 学 23 56 7 14
全体
23%
53 8
16
のではないだろうか,此処でも,此の的な現実の環境に対する適応といった事に期待しなけれ ばならないかも知れない。子供の学習時に於ける環境に静寂なことを求める事が理想であって も今日の社会に於いては,一時代前の様に簡単に,その様な場を持つということが不可能にな ってきてるのではないだろうか,とすれば,此の密な喧騒の中に於いても学習に没頭出来る子 供達が出来上っても不思議ではないわけである。将来の人間性の異りは,此の様なところがら 生じて来るのかも知れない。
第12表 学習中テレビが(児童生徒)
学年 \\ 小学3.4年
設置期間17ケ月
〜一〜1以上
気になる
気にならない
無 答
56 38 6
5.6 ケ月 53 39 8
3,4 ケ月 44 48 8
1.2 ケ月 67 28 5
小学5、6年
7ケ月5.6 以上 ケ月.
42 13 49
9 63 24
3翔協
39 5Q 54
7 50
0
中 学. 生
7ケ月 以上
34 66 0
5歪月13淘協
32 54 14
37 62
1
45%
55 0
一41一
2.家庭視聴の仕方
第13表 (父母調査)
40%
45%
。0
R0
Q0
158Q/。
平均
y0%
12ゐ ゐ
3.SQん
残置期固 密言霜美轟= 漁百妻覇=
・人恥五轄ゾよ月q六目凶昌二痴矯毎 全学年 S昌平灼
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