海運業コンピュータ会計牽制組織化の研究
海運業コンピュータ会計
牽制組織化の研究
松竹秀雄
1.はじめに
2.コンピュータ導入の目的 3.事務的チェック組織を考える 4.弁証法的に考える
1.は じ め に
「オフコンは融通のきかない偉大なる馬鹿である」ということばがある。
また、「コンピュータは盲腸か」ということばもある。前者は、ハードウェ アが記号的推論を持ってより高い人工知能となって行く過程の相当な期間は,
未だ現代における格言として残り続けるであろう。それは,コンピュータを 最初に生み出したアメリカでもそうであろうが,日本においては一層その感 が強い。アメリカではタイプライターが当然誰でも打てるという前提のもと に英文タイプのキーがついているが,日本ではそうはいかない。近時,漢字 自動変換の技術がかなり進歩したが,日本のワープロではアメリカのように 摘要文の文字(漢字)がそう簡単には出てこない。一事が万事,コンピュー タはソフトウエアなしには偉大なる馬鹿であるが,反面,プログラムとかシ ステムとかいう利用技術がうまく出来上りさえすれば,コンピュータはすば らしい能力を発揮する。
(1)
後者のたとえは,「なにごとも起こらなければ,だれも気にしない」とい
う程の意味であって,それはコンビュータは本当に重要なのか,という問題 提起のシノニムでもあった
O
またアメリカにG 1 G O (Garbage 1 n Garbage Out)
ということばがあるO ごみ屑を投入すれば,ごみ屑が産出される,と いうもので, うかうかすると,コンビュータがむやみに価値少い資料を続々 と吐出すようになりかねないということのたとえである[""コンビュータは 手品師のようにブラックボックスの中で奇跡を生み出すことはできない。人 間の頭脳的分野を論理的に記述し,明確にすることがまず最初に要請される 課題」なのであるOコンビュータをすばらしい能力発揮の機械たらしめるためには,それなり の経営計画にもとづいた計算哲学が必要で、あるO それは,導入の目的そのも のの詮議と,導入以前の問題の総点検と,導入以後におこる諸問題の事前検 討であるO
そういった観点から,コンビュータ導入に関する会計チェック組織をみて 行くこととするO
(注)
( I ) エドワード・ファイゲンパウム,パメラ・マコーダック『第五世代コンビュータ』
TB S ブリタニカ, 1 9 8 3 年 , 7 8
頁( 2 ) 査阪龍哉i" O A 導入の前に読む本」ダイヤモンド社, 1 9 8 1 年 , 4
頁。2 .
コンビュータ導入の目的組織体においてコンビュータ導入の目的たるものは 勿論自社にとって機 械化が効果あるものでなければならなし凡その効果あるものの中で,最大の 効果ありと予測されるものから小さいものへの順位を検討し,最も効果ある ものと関連するものを結んで徐々に,又は会社によっては殆どの事務を一挙 に機械化するということになるが,自社にとって導入の最終の目的は何かを 見定める必要があるO
貨物・旅客・航送車輔等を取扱えば,手作業ではそれぞれについての未収 建とその回収の計算は難渋する部門であろうと思えるが,その未収と回収の 個々について,計算部門の台帳のみで行なっているか,経理帳簿でもその個
海運業コンヒ。ュータ会計牽制組織化の研究
3
個を取扱うかによってコンピュータ導入わ範囲が分れることになろうO 個々 の未収建・回収を計算部門で行ない,経理部門は全体として簡単に行なって いる会社では,無理して経理部門までコンビュータ化する必要はあるまいが,
経理の帳簿で個々の未収を整理する必要があると考える会社にとっては,計 算部門からハイスピードで出力される計算明細を,経理帳簿にのせるために 数百件も手書きするという状態はナンセンス以外の何ものでもないであろう
D
当然,このような会社では経理まで含めることが当初から考慮さるべきであ るO 逆に,経営計画・経営管理という経理的なものを考えて,経理のみをコ ンピュータ化し,その会社にとって最も手数のかかる未収計算と請求書作成 を手作業で行なうことに何の不思議も感じない経営者がいたら,これもナン センスであるO 又,コンビュータの能力には余裕があるのに,子数のかかる 労務員の出来高給与計算・船員給与計算を機械化に含めようとしない会社も ナンセンスといえようO 一般的にいって,コンピュータ化の究極は経営者が 要求する会計情報を如何に築き上げるかということ,即ち経珂まで、合めるこ
とが事務的流れの上からは自然であろうO
一方,ハードウエアの能力について考えると,電卓を使ってみてわかるよ うに
8
ケタまでの計算機で9
ケタ・1 0
ケタの計算をするのは初めから無理で、あるように,低能力の機種を購入してお度・広範囲の計算まで、仕事を拡げよ うとするのもまた無理で、あるO コンピュータ化計画範囲の現在事務呈が数年 先に増大するかどうか,コンビュータ化範囲の現在計画を拡大する可能性が あるかどうか,それぞれの増大量・高度化に対処できる機種を選ぶ必要があ るO
低能力の機械で,それ以上の仕事が出来ないのを拡張性がないというO 従 って,事務機械化計画に当っては,その目的を慎重に検討し,拡張性のある 機種を選ぶことと,最初から拡張性の最大限の機器を導入するか,又は最初 は実態に合わせた必要最少限の機器構成で、出発し,その後にディスプレイ装 置・キーボードなどの所謂端末機を徐々に追加して行くかを検討すべきであ るO 何れの場合も拡張性のある機種(本機)を選ぶことが肝要であるが,何 をしたいのかその目的を明確にしないままで,とにかくコンビュータ化して
みようという考え方をすべきでなく,コンピュータ化して余裕の出てくるであろ う人員を,営業成績向上の為の部署に廻すという全体計画を持つべきである
O
人件費に関する直間比率は,考え方によれば相対的で、あって,一般的に船 員費及び船内荷役・沿岸荷役の労働費は直接人件費で,それ以外の事務員費 は間接人件費であろう
o f
fl.し,営業に関する事務員貨の中でも,貨物・旅客 の営業の純現業的なものは直接人件費とみることも出来ようO 何れにせよ,管理部門の純間接人件費と営業(現業)部門の中の準間接人件費とが事務機 械化によって削減する対象となる
O
従って,機種選定は自社の純間接・準間 接の適用業務に最も適したものを,純技術的な観点から選ぶという意思決定 が大事であるOその意思決定なるものは コンビュータ導入について全体構想の上に立つ ものでなければならない。その全体構想は当然その手E手哉体のトップ自ら行う ことが事務機械化には最も肝要なことであると共に,コンビュータ導入以前 の問題を解決してわくこともまた不可欠の問題であるO
3 .
事務的チェック組織を考える1980年代に入って 2~3 年はコンビュータ犯罪が出始めた時期であった。
銀行内部者によるオンライン利用の不正送金・引出の例があり,キャッシュ カード製作担当者によるキャッシュカード偽造の不正があり,電々公社(現
N TT)
職員が銀行のオンライン回線からデータを盗み取り,キャッシュカ ードを偽造して不正に銀行引出しをする等の出来事があった。しかしそれに類した出来事も民間の一般企業内部に於ては,銀行と異り社 会問題的な事件とはなりにくしミ。不正があっても,企業内部で内々に処理す るのが多いからであるO しかしその発生件数に於てはどうであろうか。 海 運 企業に於て,代理屈をかかえているところでは,滞納する代理屈はあっても 不正を行なう代理屈な少い。その納金額についてのチェック作業が船会社側 に於て厳格に行われるからであるO だから企業に於ける不正は,概ね社内部 者によって行われると考えてよい。社内部者とは,本社事務職と出先の支庖
5 海運業コンピュータ会計牽制手
E織化の研究チェック組織はこの二つについて行われる必要
「通常の事務作業に於ける情報の 流れは,図のように上下又は左右に動くものとして把握されている
O
直接業馬場暁著「電子計算機概論;によれば,
‑営業所事務職とであって,
がある
O
又は作られたデータは,
務者の段階でキャッチされ,
トップに達するまでに中間でふるいに掛けられ,修正 され,凝縮されて上昇して行く O このふるいに掛ける 役目のものが中間管理者であるもところが
i
このピラ ミッド型の情報システムも,電子計算機が次第にその 利 用 範 囲 を 拡 大 し て 行 っ た 場 合 , 変 更 を 余 儀 な く さ すべて電子計算機に れることになる。情報の加工は,直接業務者
よって行われるので,直接業務者は自分達が入手したデータは今までのよう に中間管理者に渡すのではなく,電子計算機に直接インプットしてしまうこ とになる
D
そしてトップの経営者は中間管理者から要約された情報を入手す るのではなく,直接電子計算機から必要とする情報を直接聞き出すことがで きるのであるO だから,↑吉報の流れ、だけについて言えば,中間管理者は 不要なものとなる
3
電子計算機
ここでは,情報の流れについてだ と断り書きしてあるD 多 け言えば,
元的に,放射並列型にアウトプット
O
経 営 者¥ ¥ ¥ 1
10 モ
職一~ O
~
されるという手順からいえばそのよ また しかし,実務上はそう
j j i
純なものではなく,うに見れないこともない。
組織上はそうあってはならないものである。私がオンラインによる犯罪が出 始めた時期に,事務のコンビュータ化を企画したとき,最初に時間をかけて 考えたのは,管理者としてのチェック・承認印をどの時点で押すかという問 題であった。次図にみる通常の事務作業のように伝票に承認印を捺印し終っ てから,専門のオペレータにコンビュータ入力させるという仕組みにしたと まさかという不正をどうして見破れるのか。万に一つを除いて何事もな き,
デ ー タ 処 理 結 果 (正式書類)
'
ゆ起 票 と
承 認 デ ー タ 処 理 取 引 の 流 れ
く 正 常 に 事 務 は 流 れ て 行 く だ ろ う が , 万 に 一 つ の 不 正 可 能 性 を ど う 事 前 に 防
A、 止するか。不正惹起可能性は少なければ少ない程,皆無であればある程, ~
不 正 誘 惑 を 遠 ざ け て し ま う こ と に な る の で あ る か 社の為にもなると同時に,
らそれは直接業務者の為にもなるわけであるO
タイプされた数字に対して,頭から正しい数字と思いこむ悲 普通の場合,
し い 習 性 を わ れ わ れ は 身 に つ け て し ま っ て な い か 。 そ し て , 中 間 管 理 者 は か ん じ ん な こ と に 対 し て ア ウ ト サ イ ダ ー に な っ て よ い の か 。 経 営 体 の 組 織 と し むしろ中間管理者により重要な役目 ては,事務をコンビュータ化する場合,
を果させるべきではないのか。
このような問題に関して,南沢宣郎著「これからの会計システム
1 1
によれ「
・H ・H ・‑・何しろ長いコードをふったり打つのでどうしても入力エラーが
ギ
hF出 ま す 。 前 に 述 べ た よ う に エ ラ ー リ ス ト を 渡 さ れ て 一 々 チ ェ ッ ク 訂 正 す る 会 コンビュータ部署の方も毎日毎日それで悩まされ 計部署の方も大変ですが,
ます。それを干艮本的になくすためには前にふれたリアルタイム・システムと しかも後で詳しく述べるようなコンヒ。ユータから打出されたものを会計t
そ れ を 管 理 者 が み て 印 鑑 を お し て 会 社 と し て の 正 式 書 類 と す る と い っ た 方 法 を と ら な い 限 り 仲 々 難 し い と い え ま す 」 と あ るO
し
伝票とか原始帳票とし,
の 省 力 化 並 び に 誤 差 解 消 と い う 面 か ら 説 (入力)
インプット この本では,
こ の 方 法 は 同 時 に 不 正 防 止 の き め 手 で も あ る と 考 え ら れ き起こしであるが,
「……コンピュータ会計でもその通りにするわけです。まず必要な極く るD
コ ン ピ ュ ー タ は 記 憶 装 置 に 貯 え た 勘 定 仕 わずかのキイワードを入力します。
完結し 訳のやり方その他の知識により会計判断や情報の追加補填を行ない,
あ る い は 勘 定 仕 訳 日 記 帳 の 形 で 所 定 フ ォ ー ム に 打 出 し ま す 。 係 もし誤っていれば訂正やり直しをします。そし て そ の コ ン ビ ュ ー タ か ら 打 出 し た 会 計 伝 票 あ る い は 勘 定 仕 訳 日 記 帳 を 上 司 に た会計伝票,
員はそれを目訪;チェックし,
7
提出し捺印承認をうけて初めて会社の正式書類とするシステムにするわけで す。こうしますと従来の転記的な場合と違い,コンピュータから出たものを 正式書類とするわけですから,コンビュータ内のデータと正式書類とは全く
海運業コンビュータ会計牽制組織化の研究
前述のチェックリストの作業も全く無くな すべての業務 せ ん (当然,
あ
n
ノ 宇 品 れ ソ︐ カ
ロ ユ ヘ
主 防 副
﹂
し す 致 一 ま り
「こういったシステムは単に会計の場合だけでなく,
で次第に行われつつあります。これをコンピュータ・アシステッド・インブ (C A 1)方式といいます」。次の図がこれであるO
ット
ト
複写控なしでもよい (コンビュータ内に記憶
されているから)
息 。
( 目 検)・誤りがあれば、打泣し・
4
砂( 捺 印)・上司に提出、捺印承認・
斗 ' ⑮
│ 正 式 書 類 │ 完 成
吋
・
v
第三者 ( f
抑l えば得意先)他
│ 漢字 日本文で 口 i 見 り
' ( 解 明
l()
( 目 検)・誤りがあれば書ii' Iし・
司レ
⑮ ( 捺 印)・上司に提出、捺印承認・
寸 '
l
正 式 書 類 │ 完 成
吋 砂第三者(例えば得意先)他
上図の左側は例えば,人聞が従来,会計伝票を発行している図。耳で聞いたり見たりの,
キイに当る項目内容
Aに,自分の頭の内にある知識 Bを加え,経理規程で、決った勘定仕訳
一一一ー出力形式で勘定仕訳伝票という正式書類A+B
を吉く。この人間のやり方はいわゆ るリアルタイム・システムといえる。コンピュータの場合は,上図右側の図解を見ればb'わかりの通り,ほとんど左側と同じ である。ただ違うのは按写して控をとらなくても,コンビュータ内に磁気記録的控がある
というくらいである。
このような内容を理解すれば,チェツクシステムを厳重に行なうための組 織化を如何に行なうべきかは自ずから考え出されるであろう。
さて,コンビュータに入力(インプット)するのは直接業務者であるが,
中間管理者をどのようにそのシステムの中に組み込んだらよいかであるO こ れは,業務の分析による事務的流れの再構築の問題であり,同時に社内事務 上の牽制組織の問題とも関連し,又,同時に中間管理者を手作業当時よりも 如何に有効に,そして価値ある存在たらしめるかという人材再開発の問題で もあるO
詳細については後で述べることとするが,手作業事務に於て一般的には第 1図のように,主任者は自らも一つの 業務を受持ちつつ 部下数人の事務を 検閲するO これを 一応縦割り方式と 表現するとすれば,コンビュータを用い る計算事務に於て,横割り方式に変更
J
,¥; ~i r
)1出来ないかということの検討である
O
つまり,手作業当時の検閲者Aを,コ ンビュータ業務自体の歯車の中に位置せしめて,
A. B
・C
・D
の基本計算 をB
・C
・D
の3
人に分担させ,B. C. D
の最終段階計算をA
が分担する (第2
図)。この場合B ・ C.D
とA
との事務的接合が間隙なくシステム化出来第 2図,川{
基本計算
第
3
図臨i i i (
基本計算
れば,コンビュータ計算能力の 高速化と相侠って事務の能率化 と業務の牽制化を達成する道が 聞けるのではないか。事務の能 率化という面では,恐らく第
3
図のように構成員 1名を他の部 署に回すということが可能になると忠われるO
ここで、,「事務的接合」というこ
海運業コンピュータ会計牽制手
H織化の研究9
とばを使ったがB
・C
とA
との間の事務が円滑に 且つ点検されつつバト ンタッチされるということでなければならない。この場合の事務のバトンタ ッチは,陸上競技のバトンタッチと同じく,その上手下手によって差の出て くることが考えられるO 陸上競技の場合は,受け手がバトンを受けるのは,距離のない1線ではなく,ある制限された距離(巾)があるO その一定距離 内を前走者と後走者とが併行して走りながらバトンタッチを終るのであるが,
事務の受渡しに於てもこの要領 を導入し
B
とC
からの基本計パトンタッチ許容距離
算を受取った段階で Aはその 内容に一歩ふみこんで点検しつ つ最終段階計算に入って行くという一見重複ともみれるやり方を,コンヒ。ユ ータ事務に於ける牽制組織として考えてみる必要があろうO 例えば,貨物又 は旅客の審査事務に於て計算の 一覧表上,横列的に 1港毎の運 賃又は納金運賃額(イ), 歩 金 額、(ロ),単位当り手数料(ハ)再入力
(ニ)がBによってコンピュー タ第 1次入力され,その基本計 算段階が終ったとする
D
それを 受けた主任Aは, 1i
巷の納金計 算書の審査を行うのに Bが入 力した数字をコンビュータ記憶 装置からディスプレイ (画面)に引出して点検し,且つ縦列的に納金運賃額 (イ),歩合額(ロ),単位当り手数料(ハ) (ニ)の機械的再入力,及び別の単位当 りの(ホ) (へ)手数料を新たに入力して,入力を終った全項目合計の正当 計算額と1
港代理屈の原計算額とを比較した計算書を出力して,1 i
巷の計 算を終るというような方法であるO
こうすることによって,入力の確認が確 実に行われ,同時に牽制の目的も果せるということになるO この 1港の航海 毎 の 計 算 書 は ヶ 月 分 を 合 計 出 力 す れ ば , 経 理 の 貨 物 又 は 旅 客 の 月 計 と なり,その数字によって必要な振替伝票を出力せしめ,経理首脳の承認印によ って正式の証滋となる
O
さで,もう一つ出先営業所をもっ会社に於ては,コンビュータ化の前にチ ェック手H織を是非完成しておきたい。それぞれの会社によって規模・内容が 異るので一概には言えないが,結論からいえば,毎月末現在に於て出先から
提出される収支報告の現金・預金残高と,本社経理の本支庖勘定(又は営業所 勘定或は仮払金など)の残額との一致,出先の計算による月末未収金残高と 本社経理の出先毎未収金残高との一致が必ず確認されなければならない。又,
できれば本社が出先営業所に対する入金請求予定額であるところの(現金+
預金+未回収金)の報告を出先の長から提出せしめて自主的な収支報告の点 検と本社への未精算総額を確認せしめ,それによる経理的責任をもたせ,且 つ会社としては確実な牽制組織を確立するようにコンビュータ化以前に手を 打っておく必要があると考えられるO
(注)
(1)馬場暁 r電子計算機概論』三省堂印刷版,
1 9 7 7
年。( 2 )
前掲書,29
頁。( 3 )
前掲書,29‑30
頁。( 4 )
南津宣郎『これからの会計システム』税務研究会出版局,1 9 8 1
年。 (5) 前掲書, 24頁。(6) 前掲書, 56頁。 (7)前掲書, 56頁。
( 8 )
前掲書,74‑75
頁。4 .
弁証法的に考える良いしきたり,良い仕手旦みなどといわれるものは,先人が築きあげた尊い 遺産である
D
新しい機構,新しい方法に切替えるときには,充分に過去の良いものはとり入れる工夫をするのが望まい
h
海運業コンビュータ会計牽制組織化の研究 11
たとえば,伝票会計制度について考えてみると,従来の伝統的帳簿付けの 方法に比して
i
借方・貸方に各々複数の勘定科目が立つ複合仕訳がその性 質 上 出 来 ず 1勘定1伝票式にしなければならない」関係上,一覧性に於て 劣るというハンデイがあるにしても3
枚複写のプ番上を綴って勘定仕訳日 記帳とし2
枚目を科目別補助簿に用い3
枚目を起票者(課)用として,月次決算を行うについて格段のスピード処理が可能となったばかりでなく,
「未収金
J i
未 払 金J i
立 替 金J i
預 り 金J i
仮払金」などは,複写6
枚 制 の貸借両方伝票を利用することで,未収金の入金,未払金の払出等の伝票も 最初のワンライテイングシステムによって既に用意されているという素晴ら しい効果をもつものであったO
これは外国にはなく,日本人南津宣郎氏(元,小野田セメント(株)勤務)によって昭和
2 8
年頃発案され,わが国内に徐々 に広まった方法であるO このほか同氏は,帳面の上に伝票をズラして貼りつ けて伝票を書くと自然に下の帳面に複写記入される方式(ズラシ止め会計) やi
伝票切断貼りつけ会計」など数々の経理処理を考案し,実施された。伝統的
帳簿付け 正 反¥ 伝票
会計市
1 1
従来の伝統的帳簿付けの方法をテー ゼとすれば,伝票会計制度はアンチテ ーゼである
D
これを経理のコンビュー タ化に方そではどう考えたらよいだろう か。先ず¥伝票会計制のマイナス点を考えてみようO
(1)借方伝票・貸方伝票と 1勘定 1伝票式であるから,伝統的な振替伝票に 比して伝票面での一覧性に欠けるO 例えば,未収金の振込入金があって,
振込手数料が受取人払の場合,伝統的な振皆伝票では次のように記入され る
O
借 銀 行 預 金 振 込 手 数 料
方
9 9 9
,200
円800
円貸 方
未収金(入金)
1
,000
,000
円と ころが , 伝 票 会計に 於 て は別 々 の伝 票 に 記 す る た め
3
枚の伝票とな るO
② 貸 方 伝 票
未収金(入金)
1
,0 0 0
,0 0 0
円@ 借 方 伝 票
銀行預金
999 , 2 0 0
円 の 借 方 伝 票振込手数料
8 0 0
円そ の た め , 取 引 毎 に 貸 借 一 致 を チ ェ ッ ク す る こ と が 出 来 な い と い う の が 最 も大きい欠点、である
O
( 2 )
前項と同じ理由によって,伝統的帳面式が随時一覧できるのに比して,必要な(:ころを一々めくって採さなければならないという欠点があるO
さて,伝票会計制には,これ以外にマイナス点を見出すことは難しいとい ってよ
Po
ということは それ以外の点に於ては伝統的帳簿付けに勝るとい うことになるO 即 ち , 月 次 決 算 処 理 が 早 い こ と , ワ ン ラ イ テ イ ン グ シ ス テ ム で未収・未払の入金又は払出の伝票も事前に用意することができることなど,数 々 の 長 所 が あ る 。 伝 票 会 計 が わ が 国 だ け と は い っ て も , 現 実 に 相 当 普 及 し て い る と い う こ と は , そ の 長 所 ・ 短 所 を 差 引 き し て 尚 且 つ 伝 統 的 帳 簿 付 け に 勝 る と い う 評 価 を 下 し て よ い と い う こ と で あ る
O
伝 統 的 帳 簿 付 け の 方 法 が
( 日 計 表 ‑ ‑ ‑ ‑ み ⑤ 月 次 決 算 書
①伝票起票一→②仕訳日記帳=三③総勘定元帳‑‑‑
一~④補助簿
という純直列型の作業であるのに比して,伝票会計制(次頁)は,準放射並 列 型 と も い え る 方 法 に 進 化 し て い る と み て よ い で あ ろ うO
海運業コンビュータ会計牽古
J I
キH織化の研究1 3
(日計表)J
②仕訳日記帳一一→③総勘定元帳一一→④月次計算書①伝票記票〈
1
補 助 簿これに対して,コンビュータ処理の場合は 次のように放射並列型であっ て,機械内部で電磁的に勘定科目・
項目等毎にバラバラにし,分類し,
記帳するという作業を行うものであ るO
さて,コンヒ。ュータ会計を行うに
出 力 ノ 経 理 伝 票 記璽入力~f士訳日記帳 一小,、一一て一一一→勘定明細元帳
¥ 、 月 次 決 算 書
ついて,伝統的な入金伝票・出金伝票を利用するというのも一方法であるが,
一覧性という点から,振替伝票式のみとするのが単純で、ょいと考える。そし て
3
に 於 て 述 べ た チ ェ ツ ク シ ス テ ム と 共 に , 時 間 を か け て 考 え た の は , コンビュータ会計のみで実施すれば,結果として伝票会計制度に勝るという ことになるにしても,貸借伝票(6
枚市1 ] )
を利用して,未収の入金(貸方) 伝票,未払の払出(借方)伝票(それぞれ複写3
枚が残る)をワンライティ ングシステムで用意し,その中の1枚は経理処理済印を押して担当者に入金 連絡書(又は払出連絡書)として活用するという伝票会計制の素晴らしい長 所を手放してしまうのが実に惜しくもあるし,何とか持ち続けられないか,ということであった。仰々しく表現すれば,アンチテーゼ(否定)としての 伝票会計制の長所を手放したままでコンビュータ化したものは,果して否定 の否定によって一層高次の段階に於て統一するアウフヘーベン(止揚)と称 し得るか,ということである。
その方法について,手がるに, しかも自然に行なえるものとして,次の二 つのやり方を提出するO
(1)請求入金書
請求書は,多数の旅行業者などに対して使うものであって
2
部複写式 が一般的であるが,コンビュータ化時点でアウトプット(出力)する連続 票式の請求書を3
部複写とし,その1
部を入金書として経理(又は担当課が保管するO 入金あった際は,これを経理伝票の附票として承認印が終る まで証窓的に用い,その後これを計算担当者に入金連絡書として交付するO
こうすることによって,未収金に関するものとしては概ねこれで足ること になるが,会社により 1枚制の入金連絡書が必要なところでは,同様式の 印刷を予め行なっておればよい。
3
枚(複写)制 1 枚告iJ① 請 求 控
② 請 求 書
③ 入 金 書 ・ ‑入金書
( 2 )
経理伝票の正副票計算の過程で連続出力する請求書と異り,単票として「未払金
J i
仮払 金J i
立替金J i
預り金」など連絡票又は証恐的使用のできる附票をほし いものに対しては,正副(複写)票を普通の振替伝票と同じフォームで印 刷用意すればよし L 似し,複写の副票は入金証 f.~ 又は入金述絡書として,正式の振替伝票と兄間違わないために,白紙とし,それに数字・文字を複 写プリントするものとするO
正副(複写)票│ 正 票
① 振 替 伝 票
│
振替伝票② 副 票
この場合,正票を使用するか,正副票を使用するかは,経理課自らで判断 すればよい。
伝統的
/ 正
帳簿付けコンビュータ会計
このようにすれば, コンビュー タ経理が,基本的な簿記の記入を 行なう伝統的経理処理と,それを 超えるものとしての伝票会計制と の両方を併せて,否定の否定によ って統一されたジンテーゼ(合)
海運業コンヒ。ユータ会計牽帝 J I
キH織化の研究1 5
の段階に進んだものと見倣してよいであろうと思う。そして,これらは,一覧性をもっという意味に於て伝統的経理,スピード 処理が出来るという意味に於て伝票会計制の夫々のプラス面を併せもつ方法 であると同時に,ワンライテイングシステムによる事務的照合の能率化を伴 いつつ,且つその能率化を伴うが故に,すぐれた牽制系