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アンケート調査に見る中学校電気学習の問題点

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(1)

アンケート調査に見る中学校電気学習の問題点

著者 樫原 俊司, 松村 佳子

雑誌名 教育実践研究指導センター研究紀要

6

ページ 93‑104

発行年 1997‑03‑31

その他のタイトル Some Problems of Electric Teaching through Questionnaires in Lower Secondary School URL http://hdl.handle.net/10105/4342

(2)

樫 原 俊 司

(奈良教育大学大学院理科教育専攻)

松 村 佳 子

(奈良教育大学理科教育研究室)

SomeProblemsofElectricTeachingthroughOuestionnairesin LowerSecondarySchooL

Shunji KASHIHARA

(GraduateStudentofScience Education,NaraUniversityofEducation)

Keiko MATSUMURA

(DepartmentofScienceEducation,NaraUniversity ofEducation)

要旨:中学校理科第1分野「電流」の単元の学習内容について、奈良教育大学学生30名(男子13 名、女子17名)、奈良女子大学学生30名(女子30名)を対象にアンケート調査を行った。また奈 良県内の公立中学校の生徒160名(男子88名、女子72名)を対象に同じ調査を行い、中学生と大 学生との比較において問題点を検討した。その結果、次のことが明らかになった。①電気用語

(概念)に対する「理解していない」意識が、中学生と大学生とで同じ傾向にある。②日常生活 との関連や活用が図られない学習内容は、長期的な記憶として残りにくい。③計算問題中心の電 気学習は、学習者の興味を失わせる原因となっている。さらに、中学生の概念地図の分析から特 に小単元『電流のはたらき』は、学習者にとって学習内容の定着が困難であることがわかった。

キーワード:理科教育、電気学習、概念地図 1.はじめに

中学校理科の第1分野における電気や磁気の学習は、小、中、高等学校、大学と積み上げる体 系をなしている。中学校理科における電気や磁気の学習は、この電磁気学の体系の上からも重要 である。そして、学校教育に携わる者は、学習した基本的知識がさらに深化、発展され、将来は 文化や科学の創造の力となってくれることを願っているものである。

ところが、高等学校で物理を選択しない場合は、小・中学校で電磁気関連の学習を終了する者 も多い。また中学校理科での学習内容が、卒業後の学習者の記憶のなかにどのように位置づけら れているのか、人間形成や卒業後の生活とどのように関わっていくのか解明されていない点も多 い。1)そこで、本調査では、大学生に対するアンケート調査を基に、中学校を卒業した者からみ た電気学習についての問題点を中学校の授業と関達させて探っていきたい。

(3)

2.調査方法 2.1.調査対象

○ 奈良教育大学 教育学部 学生30名(男子13名,女子17名)

○ 奈良女子大学 理学部  学生30名(女子30名)

○ 奈良県内公立中学校160名(男子88名,女子72名)

2.2.調査時期

1996年2月から7月 2.3.調査内容

中学校理科の第1分野の『電流』の単元について、教科書で使用される主な電気用語17個につ き、それぞれ「理解している」「理解していない」を中学生(単元学習終了後)と大学生につい て調査した。また大学生については、さらに「忘れた」という項目とその原因についての設問を 加えた。中学校2学年における電流単元の構成と調査に採用した電気用語は、表1に示す。この 調査対象となった大学生は、旧学習指導要領による単元履修者であり、現行の磁界や電磁誘導の 内容は、中学校3学年時で学習することになって  表1電流の単元と電気用語の配当 いた。それぞれの電気用語について「理解してい

る」か「理解していない」または「忘れた」を選 択回答してもらった。また、大学生からみた、小、

中、高等学校における電磁気学習についての問題 点も同時に調査した。さらに中学生を対象に電流 単元の学習過程で、小単元終了後に4回、概念地 図を作成させ、学習の過程での概念形成上の問題 点について分析した。

小 単 元 電 気 用 語

1 馬 流 と電 圧 電 流 回 路 、電 流 、電 圧 並 列 回 路 、直 列 回 路 オ ー ム の 法 則 、抵 抗 直 流 、交 流

2 .電 流 と電 子 真 空 放 電 、陰 極 線 、電 自 由 電 子

3 .電 流 の は た らき ジ ュー ル の 法 則 、電 力 電 磁 石 、恵 磁 諸 藩

3.調査結果と考察

3.1.理解していない電気用語に関する大学生の意識

図1は、それぞれの電気用語について「理解していない」と回答した奈良教育大学学生と奈良 女子大学学生の人数割合(%)について比較したグラフである。調査対象の学生は、文系と理系 の違いはあるものの、どちらの学生でも「理解していない」と答えた電気用語は、「電磁誘導」

や「陰極線」など『電流と電子』『電流のはたらき』に関する小単元に含まれるものの割合が高 い。また、「ジュールの法則」や「オームの法則」などの基本法則に対して、不理解を示してい るのも特徴である。さらに両大学の学生の傾向を比較するため、それぞれの項目についてカイ二 乗(ズ2)検定をした。その結果が表2である。表2で示すように両大学生間では、「電子」「自 由電子」「オームの法則」の項目で、1%の有意水準において、それぞれの有意な差が認められ た。しかし、それ以外の項目では有意な差が見られなかった。このことより、両大学生は小単元

『電流と電子』『電流のはたらき』の内容に関して、理解できていない意識をもつものが多いといっ てもよいであろう。単元目標である電流による発熱作用、磁気作用、電流と磁界の相互作用に関

(4)

電磁誘導 電力量 ジュールの法網 電磁石 抵抗 陰極線 オームの法璃 真空放電 自由電子 交濱 電子 音浣 直列回路 電圧 並列回路 電澹 竜濃回路

0    20   40   60 人数%

80  100

図1 奈良教育大学と奈良女子大学、学生の「理解していない」電気用語 表2 大学間での学生の回答の差

人数(%)

項 目 奈 良 女 子 大 奈 良 教 育 大 差

電 束 回 路 3 3 . 3 3 6 . 7 −3 . 4 N S

電 流 2 6 . 7 2 6 . 7 0 . O N S

並 列 回 路 1 3 . 4 2 0 . 0 −6 . 6 N S

電 圧 2 6 . 7 3 3 . 3 −6 . 6 N S

直 列 回 路 1 3 . 3 1 6 . 6 −3 .3 N S 直 濠 3 3 . 3 5 0 . 0 −1 6 . 7 N S

電 子 1 3 . 3 4 0 . 0 −2 6 . 7 **

交 流 5 3 . 3 6 6 . 7 −1 3 . 4 N S 自 由 電 子 1 3 . 3 4 0 . 0 −2 6 . 7 **

真 空 放 電 6 3 . 3 7 0 . 0 −6 . 7 N S オ ー ム の 法 則 3 0 . 0 6 0 . 0 −3 0 . 0 **

陰 極 線 5 6 . 7 7 3 . 3 −1 6 . 6 N S 抵 抗 2 3 . 3 4 3 . 3 −2 0 . O N S 電 磁 石 6 3 . 3 6 3 . 3 0 . O N S ジ ュ ー ル の 法 則 7 0 . 0 8 3 . 3 −1 3 . 3 N S

電 力 量 6 0 . 0 7 6 . 7 −1 6 . 7 N S 電 磁 誘 導 6 0 . 0 7 0 . 0 −1 0 . O N S

*Pく.05   **Pく.01  df=1

(5)

する規則性を兄いださせることについての授業や学習などについて、何らかの問題点があったの ではないかと考えられる。

3.2.中学生の「理解していない」用語と大学生の「わすれた」用語を選んだ割合

中学生にも電流単元の学習終了後に「理解していない」と意識する電気用語を調査した。また 大学生からも特に「忘れた」と意識する電気用語をさらに選択してもらった。表3に集計結果と 図2に中学生と大学生を比較したグラフを示す。表3の人数割合より、中学生の「理解していな い」とする回答が多い用語は、「電磁誘導」「電力量」「ジュールの法則」など電流の磁気作用や 発熱作用などに関連した用語であることがわかる。これは大学生の「理解していない」用語の調 査結果と同じような傾向がみられた。この中学生の「理解していない」と意識された用語が、か なり時間が経過した後には、記憶の中にどのように位置づけられるのかという問題がある。市川 は、「教えたことを、わすれてしまうのは、十分わかっていない証拠である。」2)としている。こ のことに関連して、さらに大学生から特に「忘れた」と意識する電気用語との比較を見ていきた い。表3に示した中学生の「理解していない」用語と大学生の「忘れた」用語との相関をspearman

の順位相関3)でみると、相関係数rs=0.90日(**1%水準)となり両者の間に強い正の相関 関係がみられた。このことから、中学校での「理解していない」と意識された電気の学習内容が、長 期的な記憶として保持されることなく、忘却の過程をたどる可能性が高いことがうかがえる。

電 力 量

ジ ュ ー ル の 法 則  電 磁 石 

!       l       l

l       】      

i       i       [      

i  j  j

】   】   l   l

l 陰 極 線

オ − ム の 法 則 真 空 放 電 自 由 電 子 交 流 電 子 直 流

r ■ l l+ !   l

ー   l

I

I

l

Ai ll

:吾芸L 芸㍑霊)l

I

直 列 回 路 i

l

電 圧 l

並 列 回 路 i

J

電 流 i

電 流 回 路

0   1

i

0    7 0 0   2 0   3 0   4 0   5 0   6

人 数 %

図2 中学生の「理解していない」用語と大学生(奈良教育大学)の「忘れた」用語

(6)

3.3.高等学校での電気に関する単元の履修について 新学習指導要領においては、『物理IA』で単 元「ェネルギーと生活」の中で「電気エネルギー」

という小単元があり、家庭電器製品への応用など、

そして、『物理IB』では「電解と電流」「電子と 原子」を学習するようになっている。『物理Ⅱ』

においては、「電流と磁界」、「電磁誘導と電磁波」、

「波動性と粒子性」が学習内容となっている。4)表 4は、過去7年間の全国の高等学校物理教科書の 需用者数である。この数は、各高校からの物理選 択者数の報告に基づいており、新旧の学習指導要 領の改訂の移行期間(平成6・7年)を除いて、

おおよその全国高等学校での物理履者数がわかる。

平成3〜5年(約32%)平成8〜9年の物理I B

(約29%)と変動は少ないものの、全体から見て 多い値とはいえない。つまり全国のおおよそ70%

近くもの高校生が、電気に関する単元を履修して いないことになる。

表3 中学生と大学生の選択者数の割合 人数割合(%)

中 学 生 (N =16 0 )大 学 生 (N =3 0 ) 理 解 し に くい 忘 れ た

電 流 回 路 3 .1 1 6 .6

電 流 4 .3 1 0 .0

並 列 回 路 4 .3 6 .6

電 圧 5 .0 1 0 .0

直 列 回 路 5 .0 6 .「  ̄

直 流 7 .5 2 0 .0

電 子      8 ,1    1 6 .6

交 流 1 1 .8 3 6 .6

自 由 電 子    1 2 .5 2 3 .3

真 空 放 電 1 3 .7 4 0 .0

オ ー ム の 法 則 1 6 .2      4 3 .3 陰 極 線 2 0 .0      4 6 .6

抵 抗 2 5 .0 2 0 .0

電 磁 石 4 4 .3 ▼1 6 .6

ジ ュ ー ル の 法 卵 4 9 .3 6 3 .3

電 力 量 5 3 .1 6 0 .0

電 磁 誘 導 6 1 .2 6 6 .6

表4 全国高等学校の物理教科書需要者数

年 度 全 国 生 徒 数 物 理 (選 択 ) 物 理 I A 物 理 I B     物 理 丑

平 成 3 年 度  1 卵 L O O O 平 成 叫 摘 ‖  1 ,8 2 2 .3 5 1

6 2 7 ,0 0 0(3 1 .9 1 ) 5 9 8 .2 8 6(3 .鍋 ) 平 成 5 年 度 1 .73 4 .18 8 56 4 .1 4 4(3 .鍋 )

平 成 6 年 度 l り 4 0 .0 0 0 5 1 2 .0 0 0 (29 .5 1 ) 1 3 0 −8 69 (7 .鍋 ) 1 0 9 ,0 61 (6 .兆 )

平 成 7 年 度 り 0 0 .0 0 0 2 3 8 ,6 0 9 (1 硝 ) 44 4 ,5 2 5(26 .用 )  2 5 ,16 5 (1 .梢 ) 平 成 8 年 度 1 ,6 5 り 7 7 30 6 ,0 6 4(1 .鍋 ) 48 0 ,0 2 0(2 9 .11 ) 1 9 8 ,7 0 8 (1 2 1 ) 平 成 9 年 度 1 ,5 9 4 ,6 4 5 29 2 ,8 8 9(1 .梢 ) 4 6 5 月0 1(2 9 .2 1 ) 1 9 8 ,3 7 7(12 朋 )

3.4,大学生の電気用語を「忘れた」理由

表3の大学生が「忘れた」とした原因となる理由は何か、資料1に示す設問により、ア〜オに 該当する理由を選択してもらった。理由が複数の場合は、1位から4位まで順位をつけて回答し てもらった。図3は、順位ごとの理由に占める選択肢ア〜オの人数割合をまとめたグラフである。

図3より「忘れた」理由の1位として電気学習の日常生活での活用、利用の少なさが大きな割合 をしめている。認知心理学の記憶理論によると、情報の構造化や既有知識への関連づけが記憶に

とって重要である。5)電気学習と日常生活との関連をはかり、実用的な学習内容の必要性が感じ られる。理由の2位として多くの割合をしめているのが(イ)の「受験、試験が終わったから」

という項目である。これは、授業で得られた知識が内発的興味を引くものでない「受験勉強的知 識」6)となっており、学生にとってその達成目標であった受験が終わった時点で、無意味なもの

(7)

として認識され、忘れ去られているのであろう。これは、今日の受験学習に対する一つの警鐘と もうけとれる。

資料1大学生へのアンケート用紙(設問3)

3.電気用語で「忘れた」とされた方は、その原因と思われる理由について、次のア〜オの 中から選んでください。理由が複数の場合は、順位をつけて答えて下さい

ア、日常生活で利用、活用しなかったから。

ィ、受験、試験が終わったから。

ウ、電気について興味・関心がないから。

工、小、中、高校の授業内容、指導方法に問題があった。

オ、その他(      )

理由1位( )理由2位( )理由3位( )理由4位( )

図3 大学生の「忘れた」理由

3.5.大学生が指摘する電気学習に ついての問題点

「忘れた」理由の3,4位にもみ られた、小・中・高校の授業内容や 指導方法に関する問題点について、

大学生に自由記述の方法でそれぞれ 記述してもらった。その内容を要約 して分類すると図4のようにまとめ られる。

大学生による記述例をあげてみる

と、「概念と実体が結びつかなくて 図4 大学生からみた電気学習についての問題点

(8)

も問題が解ければ理解していると見なす評価は問題がある。」「実際に使われている電気製品の原 理の説明まで学習内容が及ばないので、

学問として生活感覚からずれてしまい、

記憶や印象が薄れる。」などと、電気学 習の概念と実体、日常生活との関連のな

さを指摘したものが多くみられた。

3.6.概念地図法(コンセプトマッピング)

による中学生の電気学習の分析   水蒸気が海 実際の中学校の電気学習の授業のなか から蜜へのぼる で、「理解していない」と意識された用

語は、概念(事物・現象に共通に含まれ ている規則性)7)の理解が生徒にとって

図5 簡単な概念地図の例 表5 調査した単元の時間配分

「啓林館中学校教科書、理科1分野下」

①電流と電圧(10時間)‥・・・

②電流と電子(2時間)・・・・・・

・ポストテスト1 ポストテスト2

③電流のはたらき a電流による発熱(3時間)‥・ポストテスト3 b電流と磁界(6時間)…・ ポストテスト4 困難であったかどうかを調査した。学習者の概

念構造の評価の方法として概念地図(Concept Map)(Novak eta1.,1984)を用いた。この 概念地図は、事物と事物、考え方と考え方、あ るいは人と人の間に成り立っ関係について、私 たちがどのように理解しているのかを探る手法 である。8)

作成方法は、各々の概念につけられている言 葉(概念ラベル)とそのつながりを表すつなぎ 言葉(結合語)を用いて図式で視覚的に表した ものである。図5に簡単な概念地図の例を示 す。9)図5では、「川」と「海」の2つの概念が

「流れていく」という結合語でつながれ(リン ク結合)ており、1つの命題(言語的知識)10)

をっくっている。結合語やリンクは個人特有の ものであり、それらを分析することにより、生 徒一人ひとりが概念と概念の問に認めている関

表6 使用した概念ラベル

1 . ポ ス トテ ス ト1  電 流 、電 圧 、 電 気 抵 抗 、 金 属 、 電子 、原 子 、交 流  ̄ 直 流

2 . ポ ス トテ ス ト2  電 流 、 陰 極線 、 自由電 子 真 空 放 電 、原 子 、電 子 金 属

3 . ポ ス トテ ス ト3  電 流 、電 圧 、電 気 抵 抗 、 電 子 、 電力 、 時 間 、 発熱 量

4 . ポス トテ ス ト4  電 流 、 電圧 、電 磁 誘 導 、

誘 導 電 流 、磁 力 、磁 界

磁 力 線

(9)

表7 電気用語と概念リンクの設定

教 科 書 の 定 義 電 気用 語 概 念 リ ン ク

コ イ ルの 中 の磁 界 を変 化 させ る と電 磁 誘 導 が起 こ る 電 磁 誘 導 ( 電 磁 誘 導 一磁 界)

電 流 が まわ りに磁 界 を作 る働 きを利 用 した もの 電 磁 石 (電流 一磁 界 )

電 流 に よ って 発 生 す る熱 量   Q =0 . 241E T ジ ュ ー ル の 法 (発熱 量 一電 流 )

電 力 量 は、 電 力 と時 間 の積 で あ る。 電 力量 (電 力 一時 間 )

金 属 線 を 流 れ る電 流 は、 そ の両 端 の電 圧 に比 例 す る。 オ ー ム の 法則 ( 電 流 一電 圧 一 抵抗)

金 属 中 で 自由 に動 き回 って い る電 子 。 自由電 子 (金属 一 自由電 子)

電 力 は、 電 圧 と電 流 の積 で表 さ れ る。 P =E I 電 力 ( 電 圧 一電 流 一電力 )

陰 極 線 は、 電 子 の流 れ で あ る。 陰 極線 (陰極 線 一電 子 )

電 流 の流 れ に くさ の度 合 い を表 す量 。 抵 抗 (抵 抗 一電 流 )

向 き と強 さが 周 期 的 に変 化 す る電 流 。 交 流 (交 流 ⊥電 流 )

電 流 を 流 そ う とす る働 き の強 さ を電 圧 とい う。 電 流 ( 電 流 一電 圧)

向 き と強 さが 変 わ らな い電 流 。 直 流 (直流 一電 流 )

係のあり方を明らかにすることができる。

今回は、単元学習前の調査(プレテスト)は実施せず、4つの小単元学習後の調査(ポストテ スト)から、リンクの有無、結合語の正誤判断を行い、それぞれの小単元終了後においての概念 形成の実態を分析した。

調査した単元の時間配分とポストテストとの対応を表5に示す。中学2年生5クラス(160名)

に対し、表5の学習内容で、同時進行の授業をおこない、教科書記載の6種類の実験もすべて行っ た。ポストテストは、小単元終了後すぐに実施し、参考資料等を使わさせずに記述させた。

採用した概念ラベルは表6に示すとおりである。各小単元ごとに教科書の太字用語からそれぞ れ7〜8個抽出した。ただし、「オームの法則」などは、ラベルの結合状態から理解状況を判断 したいため概念ラベルとして採用していない。また、表7は「理解していない」用語の調査と概 念地図調査を比較対応させるために、教科書記述の定義を基準として、それぞれの電気用語に対 応した概念ラベルのリンクを設定したものである。例えば、教科書「導線を流れる電流が磁界を つくる。」11)の定義から、電気用語「電磁石」を「理解している」は、(電流一磁界)の2つの概 念ラベル問をリンク結合させているもの、「理解していない」は、その2つの概念ラベル問をリ

ンク結合していないものと解釈した。

3.7.概念地図からみた学習困難な電気用語

被験者が使ったラベル数は、授業後のポストテストであるためか、ほとんど与えられた全ラベ ルを使用していた。全生徒の概念地図から表7に基づいて、特定の概念ラベル問のリンク結合の 有無の数を調べた。

図6は、表7の概念ラベル問の結合が無かったものを抽出し、全人数に占める割合を示した。こ のグラフは、それぞれの電気用語に対して「理解していない」人数割合を示しているとみること ができる。図6より、「電磁誘導」「電磁石」「ジュールの法則」で正しく結べなかった者の割合 が60%を超えており、該当する命題の理解が困難であったことを示す。

ところで、概念地図の中には、ラベル間をリンク結合しているものの、そのつながりを表す言 葉(結合語)が誤っている場合がある。一一般に、概念地図を評価するとき、リンクを設けたこと

がすなわち学習者がその命題関係を理解していると見なされている。しかし、さらにそれぞれの

(10)

「1 ̄ 、 ̄uuPMm ̄、 ̄

.                            ..                                        ︑       . ..  ︑                    ..   .︳            .︐

電磁誘導 電磁石 ジュールの法則 電力量 オームの法則 自由電子 電力 陰極線 抵抗 交潅 電流 直流

0%    20%

図6 リンク結合のなかった電気用語の人数割合 リンクについて結合語の意味を分析する

ことにより、学習評価法としての妥当性 を高めることができる。12)資料2は、生 徒の概念地図に見られた、結合語の誤答 例を示したものである。このようにリン クの有無に加え、結合語の正誤を判断し て生徒の理解のしかたを分析した。

図7は、表7に基づいて特定のラベル問 にリンク結合がみられた概念地図を抽出 し、結合語の正誤の人数割合を表したも のである。結合語の正誤を評価に加味し たとき、正しくその概念の結合関係を言 語表現できなかった誤答者の割合は、

資料2 結合語の誤答例

「オームの法則」29%,「抵抗」27%,「交流」54%,「直流」57%であった。前述の中学生「理解 していない」電気用語とこの概念地図とを比較した結果、「電磁誘導」「電磁石」「ジュールの法 則」が理解困難という同様の傾向を示している。つまり「理解していない」という意識は、電気 学習の過程における概念構造が形成されていないことに起因して生じてくることがわかった。

3.8.グループ化した概念地図例

学習者の概念地図の中には、複数のラベルの結合が2つ以上のグループに分裂して表現された

(11)

電磁誘導 電磁石 ジュールの法則 電力量 オームの法則 自由電子 電力 陰極線 抵抗 交流 電流 直濃

0%  20% …人数%= … 1…

図7 リンク結合のある中での、結合語の正誤割合 ものがみられた。図8は、教師が作成したポスト

テスト3の概念地図である。今回表4のようなラ ベル設定をすると、適切なリンク結合ができれば 図8に示すように分かれることはなく、間接的に 連結することができる。ポストテスト3で見られ た中学生の概念地図の1例を図9に示す。図9の 例は、ラベルが2つのグループに分かれたように リンクされている。この概念地図は、「オームの 法則」と「電流による発熱」との統合が、学習者 の中で図られなかったことを表しているものと推 察できる。また、図10の例では、「電流」と「磁 界」の関係が理解できず、磁界だけのグループ、

図8 教師の作成した概念地図 電流関係のグループに分かれている。学習の過程

でのこのような概念地図の出現は図11に示すとおり、ポストテスト3・4の『電流のはたらき』

の小単元で増えている。配当時間を含めて、授業設計の再考の必要性が感じられた。

4.おわりに

本調査の結果から、以下のことが明らかとなった。

大学生の電気学習に対する「理解していない」「忘れた」という意識は、中学校の授業過程にお ける概念構造の不形成に起因するものである。そしてその傾向は「電流による発熱」や「電流と

(12)

図9 グループ化した概念地図例(ポストテスト3)

図10 グループ化した概念地図例(ポストテスト4)

ポストテスト1  ポストテスト2  ポストテスト3  ポストテスト4

図11各テストにおける分離した概念地図の人数割合 磁界」に関連した概念に多く見られた。

電気学習の問題点として以下のことがあげられる。

(訂電気学習の日常生活での活用、利用が少ないこと。

②実験が少なく、計算問題中心の授業展開になりがちであること。

(診概念と実体が結びつきにくいこと。

④電気学習の動機づけが受験勉強知識の獲得のためとなり、生徒の興味を引くものになっていな

(13)

いこと。

⑤『電流と電圧』、『竃流と電子』、『電流のはたらき』と小単元が進むごとに、新たな概念の統 合ができない生徒の増加傾向が見られること。

学習内容が長期的な記憶として保持されるためには、電気学習と日常生活との関連をはかり、概 念と実体の結びつきを重視した教材や指導方法も検討すべきであると思われる。また、小単元が 進むごとに学習内容を理解できない生徒の増加傾向に対する解決策としては、配当時間を含めた、

授業設計の再考も必要であると感じられた。

今後は、中学校理科で電気学習を終えるものが多いことを心に留め、概念地図法によって得ら れたデークーをもとに電気教材の選定、授業展開の構成を考えていきたい。

最後に、本調査をまとめるにあたりごていねいなアドバイスをいただきました杉村健教授、調 査にご協力いただきました、松村竹子教授、松山豊樹助教授、石田文童教諭に厚く感謝の意を表

します。

参考文献

1)堀 哲夫;『「理科教育学とは何か』、pp124、東洋館出版社、1994年

2)市川伸一;『学習を支える認知カウンセリング』、pp23−24、プレーン出版、1993年 3)服部 環・海保博之;『心理データー解析』、pp56、福村出版、1996年

4)文部省、『高等学校学習指導要領解説、理科編、理数編』、実教出版株式会社、pp26−64、

1989年

5)駒林邦男;『学ぶ意欲を育てる授業・抑える授業』、pp83、あゆみ出版、1994年 6)同上

7)福岡敏行・広瀬聡子;「CONCEPT MAPによる概念の分析(I)」横浜国立大学教育実践 研究指導センターNo.5、pp81−91、1989年

8)リチャード・ホワイト/リチャード・ガンストン、中山迅他訳『子どもの学びを探る』東洋 館出版、pp32−65、1995年

9)同上 10)同上

11)大木通則;『理科1分野下』、文部省検定済教科書、pp34、啓林館、1993年

12)大辻 永・赤堀侃司;「リンクの意味分析による概念構造図の評価観点とその妥当性」、『科 学教育研究』Vol.18 Nn4、−pp167−180、1994年

参照

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