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精神看護学実習前後における看護学生の意識変化に関する研究

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(1)

石原 和子1〉,今中 悦子2),大熊 恵子3)

田辺 裕子4),二之宮実知子4),鷹居樹八子5)

要 旨  看護学2年次生の精神保健授業の課題レポートのシュヴィングの体験書「精神病者の魂への道」

に記述された内容をKJ法に基づいて否定的要因と肯定的要因に抽出した.3年次に進学してからの精神看 護学の実習を通して,否定的要因と肯定的要因にどのような変化をもたらしたかを明らかにするために質 問紙法による調査を行った.さらに,学生のエゴグラム(egogramS〉や自尊感情(Self−eSteem)との関係 についても検討した.

 実習前後の平均値において,否定的要因である不安,患者恐怖は実習後に有意に低くなった.一方,肯 定的要因の援助的欲求も実習後に低くなった.しかし,興味(関心)は,実習後に高くなった.さらに,学 生のエゴグラムや自尊感情と否定的要因と肯定的要因との関係について分析した.学生のエゴグラムでは 実習の前後における変化は見られなかったが,自尊感情の消極的自尊感情は実習後の平均値が有意に高く なった.実習後に援助的欲求が低くなったことと消極的自尊感情が高くなったことの関係において,実習 体験を通して学生は自己洞察を深める機会になっていたと推察された.

      長崎大医療技短大紀13:59−65,1999 Key Words 精神看護学実習、学生の意識、エゴグラム、自尊感情、自己洞察

はじめに 1.研究目的

 先行研究で看護学生は,精神看護学に対する正確な知 識を得ることで,精神障害者に対するイメージを学生が 肯定的に受け止められるようになったこと1)・2)・3)や精神 看護学実習の体験を通して,精神科に対する不安が軽減

し,援助欲求が高まったという知見が得られた4).看護 学生2年次の精神保健の授業で「ノーマライゼーション

について」とシュヴィングの体験書「精神病者の魂への 道」5)の個人ワークを課している.

 今回は,シュヴィングの体験書「精神病者の魂への道」

で記述された課題レポートの内容をKJ法に基づいて分 類した.その結果,否定的要因と肯定的要因の記述が抽 出された.否定的要因の記述内容は,①不安,②患者恐 怖,肯定的要因の記述内容は,③興味(関心),④援助 的欲求,⑤精神看護への希望に関するものに分類された.

 そこで,3年次の精神看護学実習の体験を通して,否 定的要因と肯定的要因にどのような変化をもたらすかを 明らかにするために質問紙法による調査を行った.さら に,学生のエゴグラムや自尊感情の関係についても検討

した.

1 精神看護学実習前後における学生の意識の変化を明  らかにする.

2 精神看護学実習前後の意識と学生のエゴグラム及び  自尊感情の関係について検討する.

1.文献レビュー

1)自尊感情(self−esteem)の定義

  自尊感情とは,人が持っている自尊心,自己受容  などを含め,自分自身についての感じ方をさしてい  る.自己概念と結びついている自己の価値と能力の  感覚一感情一である6).

自尊感情の測定尺度について

  ローゼンバーグ(Rosenberg,M.,1965)は,「測  定できる持続する個人的属性」としてとらえ,その  典型には,質問紙法が用いられている.回答者は,

 態度あるいは行動を記述する叙述を与えられ,真偽  あるいは多肢選択の解答によって,準備された正答  表との一致あるいは不一致によって採点される7).

1 2 3 4 5

長崎大学医療技術短期大学部 看護学科 香川医学大学 看護学科

聖路加看護大学大学院博士前期課程

長崎大学医学部附属病院 看護部精神科神経科病棟 大分医科大学医学原研究科看護学専攻修士課程

(2)

2)エゴグラム(egograms)

  バーン(Beme,E.,1950年代)の交流分析理論に   よる自我状態を数量化しグラフ化するための質問紙  法である.交流分析理論は精神分析理論を基礎に自  我状態を3つに分類している8)、

表1.シュヴィングの「精神病者の魂への道」

   講読後のKJ法による分類

(1)P一親(parent)の自我状態1親から取り入れた部   分で,さらに2つに分類れる.

①C:P一(criticalparent)批判的親:良心や理想と関  係し,自分の価値観を主張する部分.強すぎると  支配的,命令的になる.

②NP一(nurturingparent)養育的親:保護的で人の  世話をする部分.強すぎるとお節介になりやすい.

(2)A一(adult)大人の自我状態:客観的,冷静にも   のごとを判断する部分.知性や理性と関係する,

  強すぎると情緒的に乏しい状態になりやすい.

(3)c一(child)子供の自我状態:本能的な直感や情緒   と関連した部分で,幼少の頃身につけた行動様式や   感情の表現と言える.これは2つに分けられる.

①FC一(freechild)自由な子供二社会規範にとらわれ  ない本能的で快感を求めて行動する部分.強すぎ  るとわがままで自己中心的になりやすい.

②AC一(adaptedchild)順応した子供:自分の感情や  欲求を抑えたいわゆる「いい子」の部分.嫌なこ   とを嫌といえず,自発性にかける傾向をもつ.質  問項目は合計で50項目ある.

n.研究対象及び方法

1.研究対象:N大学医療技術短期大学部看護学科  3年次生80名

2.研究期間:平成10年4月〜平成11年3月 3.研究方法:質問紙法

1)事前準備1課題レポートのKJ法による分類

 研究対象者が2年次生の時に精神保健授業の課題とし て与えたシュヴィングの著書「精神病者の魂への道」の 講読後に提出して貰ったレポートの記述内容をKJ法に より,キーワードを抽出し,それを数項目に分類集約し たアンケート用紙を作成した.<表一1>

1 不安(病棟環境、患者イメージ)

・閉鎖的、隔離的で別世界の雰囲気

・柵があり牢獄のようなイメージ

・暗い、冷たい、静かなイメージ 息がつまりそうなイメージ

・動物園のようなイメージ

・まるで罪人のように扱われているイメージ

・部屋に鍵がかけられ、他人に怯えられる存在にあるような悲しいイメージ

・社会からの孤立

・真実の人間の姿に触れることの不安

・相手のすべてを受け入れることができるか不安である 2.患者恐怖

・怖い、恐ろしい、不気味

・患者の拘束

・深く傷つけられたうつろで、仮面のように暗い

・危険人物

・人の心の脆さ

・狂暴な人がいて独房に入れられた人間のようだ

・マスコミなどの報道が偏見を生んでいる 3 興味(関心)

・人の心は複雑で大変だからこそ興味(関心)があり、やりがいがある

・精神内界の目に見えない病気を援助するのに魅力がある

・心を治療することは、一筋縄ではないが興味(関心)を持っている

・看護の最も本質的な分野を追求することはとても難しいが、興味(関 心)がつきないところである

・精神病の心の中を知ってみたい 4.援助的欲求

・話しかけるのでなくじっと見守ったことが患者の心を癒した

・シュヴイングのアプローチに強く胸を打たれ、看護の奥深さに魅力を 感じた

・心と心の触れ合いの大切さを思った

・人の心を癒せる看護者になりたい

・なぐさめや同情でなく受け身の姿勢で共感的態度で接したい

・人間関係を確立するため共感的態度で接する

・患者が頼ってくる看護者になりたい

・相手の身になって感じ、相手の二一ズを直感的に把握する態度を身に つけたい

・時間を共有することの大切さを学んだ

・そばにいて「沈黙」という優しさで接し、信頼感と安心感を与えるた めに傾聴・共感・理解・受容の態度や姿勢で関わりたい

・患者との信頼関係を築けるように自己を見つめ自己を振り返るる姿勢 をもちたい

・患者のすべてを受け止め根気づよく、諦めず、あせらず、関心を示し、

決して逃げない ようにしたい

・心の病は「心」が一番の薬であろう

・一人の人間として向き合えばよい

・人の凍ってしまった心は、温かい心で必ず解けていくんだということ

・相手の気持ちを理解したコミュニケーションの大切さ

・心の叫びを聴いてほしい人を探していたのであろう、患者はとても淋 しかった真正面から立ち向かっていかねばと思う

・真っ白な気持ちで接していきたい 5 精神科看護への希望

・将来は米国のイルカ療法チームに参加したい

・心理学・心身医学に興味があったが先ず自分自身を見直すことから始 めたい

・将来精神科または心療内科の看護を目指したい

・将来の自分の進むべき目標を見つけることができた

・根気のいる仕事であり、幅広い領域の勉強をしたい

・精神看護を通して自分なりの看護観を培いたい

表2.ローゼンバーグ(Rosenberg,M.)の    自尊感情尺度(評定は4段階で行う)

2)実習直前=アンケートの実施

 研究対象の3年次生の精神看護学実習実施直前にアン ケート調査を実施した.アンケートには,シュヴィング 課題レポートから作成したアンケート用紙,エゴグラム 質問用紙,ローゼンバーグの自尊感情尺度の測定用紙の

3種類を用いた.<表一2>

1.全体的に見れば、私は(これでいいと)今の自分に満足している。

2.ときどき自分はいいところがなくてだめな人間だと感じる。

3.自分にはいいところがたくさんあると思う。

4.たいていのことなら人に負けないくらいうまくやれる自信がある。

5.自分には誇れるところがないと感じる。

6.ときどき自分はまったく役に立たない人間だと感じることがある。

7.人と比べても劣らないだけの価値のある人間だと思う。

8.もう少し自分のことを尊敬できたらいいのにと思う。

9.全体的にみて、自分は不出来な人間(失敗者)だという気がする。

10.自分の考え方や行動に自信(確信)を持っている。

(3)

3)実習直後=アンケートの実施

 精神看護学実習(2週間〉終了の最終日に,実習前と 同様のアンケート調査を再度実施した,

化なし,24名(38.0%)において増大した.精神看護へ の希望では,38名(47.5%)において変化なし,35名

(43.8%)において増大したという結果であったが、その 変化量に有意差はなかった.<表一4〉

皿.データ収集法と評定法

 実習前および後に学生から回収したアンケート用紙か らデータを収集し,パソコンによる分析を行った.集計・

分析用のソフトとして(株)管理工学研究所製のリレー ショナルデータベースソフト「桐V5」を用いた.

表3.否定的要因と肯定的要因の実習前後の変化

 N=80

       援助的  精神

      不 安 患者恐怖 興味(関心) 欲 求  看護希望 実習前   平均値  2,1   1.g   3.0    4.3   2.6   標準偏差値  0.639  0,724  0.641   L56且  0.745

1 課題レポートのKJ法分類によるアンケートは,否 定的要因のグループとして,①不安・②患者恐怖の2 つの項目を設定し,肯定的要因のグループとして,③ 興味(関心)・④援助的欲求・⑤精神看護への希望の3 つの項目を設定し,それぞれの項目を4段階の評定基 準を設定し,数値データに変換可能とした.

評定段階基準:1=無し 2ニやや有り        3=有り 4=強く有り

実習後   平均値   L3   1.2   3.4    3,5   3.0   標準偏差値  0.494  0.418  0.745   0.547  0.684

表4.否定的要因と肯定的要因の実習前後における   変化の割合

 N=80 *P<0.05

      援助的  精神

 実習後   不 安* 患者恐怖*興味(関心) 欲 求  看護希望

変化なし  32.5%  33.8%  38.8%  57.5%  47,5%

減少した   67,5%   66,3%   15.0%   12.5%   8,8%

増加した   0.0%   0.0%  462%  38.0%  43.8%

2 エゴグラム質問紙法は,エゴグラム・チェックリスト の50項目の質問に対して,はい(○),どちらともつかな い(△),いいえ(×〉の3段階評定とした.

3 ローゼンバーグの自尊感情尺度は,10の質問項目そ れぞれに対して4段階評定とした.

評定段階基準:「はい」=1 少し「はい」=2        少し「いいえ」=3 「いいえ」=4

2.実習前後におけるエゴグラムついて

 実習前後のエゴグラムを平均値でみると批判的親

(CP)の自我状態が実習後にわずかに低くなり,大人の 自我状態(A)がわずかに高くなっているものの他の養 育的親(NP)の自我状態,自由な子供(FC)の自我状 態,順応した子供(AC)の自我状態には,変化は見ら れなかった.<表一5>

4 有意差の検定はX2検定を用いて,P<0.05を有意差 ありと判定した.

表5.実習前後におけるエゴグラムの変化

N;80

5 数値は,小数点以下2位で四捨五入し,1位までを 有効とした.ただし,標準偏差値は小数点以下3位ま でを有効とした.

エゴグラム

CPNPAFCAC

実習前 平均値     g,2  16.5  12.2  14.8   7.6   標準偏差値  3.602  2.489  2.874  3.031  4,331

実習後 平均値    8.6  16.5  12.7  14.8   7.5   標準偏差値   3.700  2,381  3.047  2.994  4。587

】V.研究結果

1.実習前後における否定的要因と肯定的要因の変化に  ついて

 実習前後の変化を平均値でみた場合は,実習後に否定 的要因の不安,患者恐怖は低くなった.肯定的要因の援 助的欲求も低くなった.一方,実習後に高くなったのは 肯定的要因の興味(関心)であった.〈表一3>

 実習前に対する実習後の変化をみると,否定的要因で は,54名(67,5%)において不安が有意に減少し,53名

(66.3%)において患者恐怖が有意に減少した.一方,

肯定的要因の実習後の変化では、興味(関心〉が,31名

(38.8%)において変化なし,37名(46.2%)において 増大した.援助的欲求では,46名(57.5%)において変

3.エゴグラムと肯定的要因・否定的要因の関係について 1)大人の自我状態(A)との関係

 エゴグラムについて、大人の自我状態(A)を高(13 以上〉、中(12〜5)、低(4以下)に分類した場合に,高 11名,中63名,低6名であった.5つの要因との関係を

みると,否定的要因の不安は、大人の自我状態(A)の 高い学生の方が低い学生よりも高く,患者恐怖は大人の

自我状態(A)の高い学生が低くかった.一方,肯定的 要因の興味(関心)や精神看護への希望では,大人の自 我状態(A)の高い学生の方が高かった.<表一6>

2)批判的親(CP)の自我状態との関係

批判的親(CP)の自我状態を,高(13以上)・中(12

(4)

〜5)・低(4以下)に分類した場合に,高14名,中54 名,低12名であった.5つの要因の関係をみると,否定 的要因の不安は批判的親(CP)の自我状態が高い学生 の方が,低い学生よりも高く,患者恐怖は批判的親

(CP)の自我状態が高い学生が低くかった.一方,肯定 的要因の援助や希望では,批判的親(CP)の自我状態 の高い学生が高かったが,精神看護への希望は低くなっ ていた.<表一7〉

高くなっていた.<表一9>

表9.自由な子供(FC)の自我状態との関係

N=80

FC前後差  FC前後差    患者興味援助的精神科

分類  人数  分類範囲  平均値  不安 恐怖  (関心)欲 求看護希望

高  16名  +18以上  18,5  1.3  1,1  3.9   3.8   3.3 中  56名  +11〜+17 14.6  1、4  1.2  3.3  3.4  3.9

低8名+10以下8.31,1L33,33.63.1

表6.大人の自我状態(A)との関係

N=80

 A前後差   A前後差     患者  興味  援助的 精神 分類 分類範囲   人数   不安  恐怖  1関心) 欲 求 看護希望

高+13以上 11 1,4 1.23.8 3,7 3,3

中    +5〜+12     63     1.3     1.2     3,3     3.5     13.0

低+4以下 6L21.33.3 3.7 2.9 表7.批判的親(CP)の自我状態との関係 N=80CP前後差    CP前後差       患者  興味  援助的 分類  人数 分類範囲 平均値 不安  恐怖 (関心)欲 求

高14名+13以上13.7L21.03.43.6 中54名+5〜+128.5 1.41.23.83、6

低  12名  +4以下   2.8  1.2  1,3  3.4  3.3 精神 看護希望

2.9 3.0 3.1

3)養育的親(NP)の自我状態との関係

養育的親(NP)の自我状態を高(19以上)・中(18〜13)・

低(12以下)に分類した場合に,高14名,中60名,低6 名であった.5つの要因の関係をみると,否定的要因の 不安は養育的親(NP)の自我状態が高い学生は,低い 学生よりも高く,患者恐怖は養育的親(NP)の自我状 態が高い学生が低かった.一方,肯定的要因の興味(関 心),援助的要求,精神看護への希望は,養育的親

(NP)の自我状態の高い学生が全てにおいて高くなって いた.<表一8>

5)順応した子供(AC)の自我状態との関係

 順応した子供(AC)の自我状態を高(13以上)・中

(12〜5)・低(4以下)に分類した場合に,高14名,中 43名,低23名であった.5つの要因の関係をみると,否 定的要因の不安は順応した子供(AC)の自我状態の高 い学生が低い学生よりも低く,患者恐怖は順応した子供

(AC)の自我状態の高い学生がわずかに高かった.一方,

肯定的要因の興味(関心),援助的要求,精神看護への 希望は,順応した子供(AC)の自我状態の高い学生が 全てにおいて高くなっていた.<表一10>

N=80

表10.順応した子供(AC)の自我状態との関係

表8.養育的親(NP)の自我状態との関係

Nニ80

AC前後差     AC前後差        患者  興味 援助的 精神

分類 人数 分類範囲 平均値 不安恐怖(関心)欲求看護希望

NP前後差     NP前後差      患者  興 味 援助的  精神 分類  人数 分類範囲 平均値  不安 恐怖  (関心)欲 求 看護希望

高  14名  刊3以上  15.2  1,3  1.2  3,4  3.7  3.1 中 43名 +5〜+12 7.6  1.3 13  3.4  3.6  3.0 低  23名  +4以下   2.4  1.3  1.1  3.3  3,3  2.9

高14名+19以L 19.51,35LO3.63.73,4

中  60名 +13〜+18  16.3 L32  L2  3,4  3,5 3.0

低6名+12以下10,61,33L23.23.02.

4.実習前後における自尊感情の変化について  自尊感情の測定尺度は10項目で構成されており,積極 的自尊感情群(3,4,7,10の4項目)と消極的自尊感情 群(1,2,5,6,8,9の6項目)に分かれる.積極 的自尊感情と消極的自尊感情の実習前後における全学生 の平均値の変化を見た場合、積極的自尊感情群には変化 がなかったものの、消極的自尊感情群は6項目全てが高

くなった.

 つまり,実習の体験を通して学生は自己を客観的に見 つめる、すなわち自己洞察をする機会となったものと推 察された.<表一11>

表11.実習前後における自尊感情の変化 4)自由な子供(FC)の自我状態との関係

 自由な子供(FC)の自我状態を高(18以上)・中(17

〜11)・低(10以下)に分類した場合に,高16名,中56 名,低8名であった.5つの要因の関係をみると,否定 的要因の不安は自由な子供(FC)の自我状態の高い学 生が低い学生よりも高く,患者恐怖は自由な子供(FC)

の自我状態の高い学生が低くなった.一方,肯定的要因 の興味(関心),援助的要求,精神看護への希望は,自 由な子供(FC)の自我状態の高い学生が全てにおいて

N=80  *Pく0.〔)5

自尊感情尺度 合計  1  2  3  4  5‡ 6宰 7  8 野 10 実習前 合計 1,865 194 184 241 197 141 156 236 170 126 220

1人平均値  2.4 2,4 2.3 3.0 2.5 1.8 2,0 3.0 2.1 1.6 2,8

実習後 合計 2,263 200 210 245 197 261 248 238 177 268 219 1人平均値  2.8 2,5 2.6 3.1 2,5 3.3 3.1 3 0 2.2 3.4 2.7

(5)

V.考 察 に減少していた.

1.実習前後の意識の変化

 実習前後の意識の変化を平均値で見ると,実習後有意 に低くなったものが否定的要因の不安,患者恐怖であっ た.実習の体験を通して全学生の67。5%に不安が軽減さ れ,66.3%に患者恐怖が軽減されていた.これは実習に おける生活療法としての生活環境の調整,生活指導上の 方針,作業やレクリェーションヘの参加を患者と共に体 験することによって,患者の健康的な部分に触れること ができたのではないかと推察される.

 このことは,「10回の授業よりも1回の実習が大きな 勉強になった」という実習後の学生のレポートから実習

によって精神に健康障害を持つ人を自分たちと同じ人間 として認知できたものと思われた.一方,肯定的要因で は実習後に低くなったのは援助的欲求で,実習後に高く なったのは興味(関心)であった.これらの割合を見る と援助的欲求は全学生の57.5%に変化がなく,高くなっ たのは38.0%であった.興味(関心)は全学生の46.2%

実習後に高くなっていた.これらの結果は,先行研究4)

で精神病者に対する学生の意識は実習を通して否定的要 因である不安や患者恐怖は減少するという研究報告があ るが,今回の我々の研究においても実証された.しかし,

実習後に援助的欲求が低くなることにおいては,先行研 究4)と結果が異なっていたことであった.我々の研究の 新しい知見として得られた結果は,実習後の援助的欲求 の低下と学生の自尊感情との関係であった.つまり,消 極的自尊感情が実習後に高くなったことの関係で考える と,実習が学生の自己洞察を深める機会になっていたと いうことが推察された.

2 精神看護学実習の前後における学生の意識は,肯定 的要因の興味(関心)に関する意識が実習後に高くなっ ていたが,援助的欲求は実習後に低くなった.

3 精神看護学実習前後におけるエゴグラムの平均値の 変化に有意差はなかった.

4 精神看護学実習前後の自尊感情の変化は,実習後に 消極的自尊感情の平均値が高くなった.このことは,

実習後の援助的欲求が低くなったことの関係にあった.

つまり,精神看護学実習の体験によって,学生は自己 洞察する機会を得たものと推察された.

おわりに

 実習の前後で,学生の精神に健康障害を持つ人に対す る意識が変化していたことが明らかになった.つまり,

実習体験を通して否定的要因の不安,患者恐怖が軽減さ れ,興味(関心)が高まったことである.精神看護学実 習は,「精神障害者の精神の健康回復への援助およびそ の過程を通して自己洞察する能力を養う」という目的が ある.実習後の消極的自尊感情が高くなったことと援助 的欲求が低くなったことの関係において,学生は自分の 能力・性格などを客観的に認知する力が育成されたもの と推察された.今後も学生が精神に健康障害を持つ人の 理解と同時に自己洞察を深められるように実習のあり方

を模索していきたいと考えている.

2.実習前後のエゴグラム及び自尊感情の変化  実習前後のエゴクラムの変化を平均値でみると批判的 親の自我状態(CP)が実習後に低くなっており,大人 の自我状態(A)が高くなっているものの有意差はなかっ

た.

一方,学生の自尊感情では,消極的自尊感情が実習後に 有意に高くなっていた,2週間の実習を通して学生は自 己の内面を見つめる力が育成されていた.具体的には,

「普通(常識的)に接することが大変に難しかった」と か,「精神に障害を持つ人の看護は難しくて自分には合 わないと思った」といったようなレポートから推測して,

興味(関心)はあるが実際に自分が看護をするとなると 遠慮したいという気持ちがあるものと推察された.

V[.結  論

1 精神看護学実習の前後における学生の意識は,不安 や患者恐怖の否定的要因に関する意識が実習後に有意

(6)

<文献〉

1 森千鶴:看護学生の精神障害者に対する意識調査,

精神科看護,28:73−79,1989.

2 森千鶴:精神障害者への理解を深める授業について の考察,精神科看護,33:77−84,1990.

3 森千鶴:「精神が障害された人への看護」の授業の展 開とその評価,看護教育,31(12):793−800,1990.

4 森千鶴、佐藤みつ子:精神看護学実習前と後の看護 学生の意識の変化,精神科看護,63−68,1992.

5 シュヴィング:精神病者の魂への道,小川信男,船 渡川佐知子訳,みすず書房,東京,1996,pp11−12。

6 遠藤辰雄、井上祥治、蘭千壽編:セルフ・エスティー ムの心理学一自己価値の探求一,ナカニシヤ出版,京 都,1997,PP19.

7 遠藤辰雄,井上祥治,蘭千壽編1セルフ・エステー  ムの心理学一自己価値の探求一,ナカニシヤ出版,京

都,1997,pp26−27.

8 中島美知子,白井幸子:死と闘う人々に学ぶ一交流 分析を用いての試み一,医学書院,東京,1982,

 pp24−32.

(7)

A Study of Changes in the Awareness of tho Studont Nurses  beforc and after taking classes on Psychiatric Nursing 

Kazuko ISIHARA*), Etsuko IMANAKA'), Keiko OKUMA*)  Yuko TANABE"), Michiko NIMOMIYA'), Kiyako TAKAl*) 

1)  2)  3)  4)  5) 

Department of Nursing, the School of Allied Medical Sciences, Nagasaki University  Department of Nursing, the School of Medicine, Kagawa University 

Master's Program at St. Luke's College of Nursing 

Psychiatric & Neurological ward, Department of Nursing, Nagasaki University School of Medicine  Clinics 

Oita Medical University Master's Program in Nursing 

and 

Abstract Positive and negative factors were determined using the KJ method described in the re‑

port "Ein Weg zur Seele des Gersteskranken" by Schwmg based on the findings of a mental health  class taken by the second‑year students in the nursing departrnent of the School of Allied Medical  Sciences Nagasaki University. In the third‑year, changes in positive and negative factors after  classes on psychiatric nursing were identified based on a questionnaire survey of the same students,  and the self‑esteem of the students was also evaluated. After the classes, the mean scores of anxi‑

ety and fear in patients, which are negative factors, and of the desire to assist the patients, which  is a positive factor, significantly decreased, however, interest in the patients, which is a positive  factor, increased. Concerning the relationship between the positive and the negative factors based  on egograms and the self‑esteem of the students, egograms showed no changes before or after the  above classes, however, the degree of passive self‑esteem significantly increased after the classes. 

The association between the decreased desire to assist patients and the increased degree of 

passive self‑esteern suggests that these psychiatric nursing classes enabled the students to deepen 

their self‑insight into the nurse‑patient relationship. . 

Bull Sch. Allied Med. Sci., Nagasaki Univ. 13: 59‑65, 1999 

参照

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