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Chlamydophila(Chlamydia)pneumoniae との重複初感染が疑われた Epstein-Barr virus による伝染性単核症の 1 例

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平成20年 9 月20日

Chlamydophila(Chlamydia)pneumoniae との重複初感染が疑われた Epstein-Barr virus による伝染性単核症の 1 例

1)菊名記念病院内科,2)国際医療福祉大学病院消化器内科

静 間 徹

1)2)

(平成 20 年 1 月 24 日受付)

(平成 20 年 5 月 1 日受理)

Key words :Chlamydophila pneumoniae(Chlamydia pneumoniae),Epstein-Barr virus, infectious mononucleosis

Chlamydophila(Chlamydia)pneumoniae(C. pneumo- niae)は,呼吸器感染症における重要な起炎菌のひと つであり,市中肺炎の 1 割程度に関与1)するとされて いる.一方,成人における Epstein-Barr virus(EBV)

の初感染により,伝染性単核症(infectious mononu- cleosis : IM)を来すことは,よく知られている.しか し,成人におけるC. pneumoniaeと EBV の重複初感染 例の報告は,検索し得た限りではみられていない.今 回,肺炎・胸水を来し,C. pneumoniaeとの重複初感 染が疑われた,EBV による IM 例を経験したので,報 告する.

患者:26 歳,男性.

主訴:発熱,咽頭痛.

既往歴:特記すべきことなし.

生活歴:ペットの飼育はなし.

現病歴:2007 年 8 月 11 日より,咽頭痛が出現した.

翌日より 39℃ 台の発熱を来したが,解熱しないため 当科外来を受診.肝機能障害および胸部 X 線にて右 胸水を認めたため,入院となった.

身体所見:体温 37.2℃.咽頭発赤・両側扁桃腺の腫 大が認められた.頸部リンパ節は触知せず.正常呼吸 音.肝脾は触知せず.

入 院 時 検 査 所 見:WBC 10,200!mm3(リ ン パ 球 51.0%,異型リンパ球 8.0%),CRP 4.6mg!dL と炎症所 見を認めた.末梢血リンパ球 CD4 陽性細胞数は 950! mm3であったが,CD4!CD8 比は 0.30 と低下していた.

IgG・IgM 値は正常範囲で,血清クリオグロブリンも 陰性であった.肝胆道系酵素の上昇(AST 211U!L,

ALT 246U!L,Alp 847U!L,γ-GTP 185U!L)がみら れたが,A・B・C 型肝炎ウイルスマーカーは陰性で,

サイトメガロウイルス(CMV)IgM 抗体は陰性,CMV IgG 抗体が陽性(EIA 価 37.7)であった.EBV viral capsid antigen(VCA)IgM・IgG 抗体はいずれも陽 性で,EBNA 抗体は陰性であった.また,C. pneumoniae IgM・IgA 抗体が陽性であった.なお,C. pneumoniae の抗体価は,ELISA(ヒタザイム C.ニューモニエ:

日立化成)により測定した(Table 1).

画像所見:胸部 CT 検査では,右中下肺野の肺炎像 および右胸水が認められた(Fig. 1a).腹部超音波検 査では,腹水はなく,脾腫および総肝動脈幹(#8)リ ンパ節の腫大が認められた.

入院後経過:肝機能障害については,EBV マーカー や末梢血異型リンパ球の出現・末梢血リンパ球 CD4!

CD8 比の低下などの所見から,EBV による IM と考 えられ,肝庇護剤(glycyrrhizin)を投与した.末梢 血異型リンパ球は,入院時より 3 週間にわたり認めら れ,最高 2,600!mm3であった.肺炎については,尿 中肺炎球菌抗原は陰性で,若年健常人に発症し,喀痰 はないこと,WBC 10,000!mm3以上の増多がみられた もののリンパ球系細胞が 59〜74% を占めていたこと,

胸部聴診上の所見に乏しいことなどから,成人市中肺 炎診療ガイドライン2)に基づく非定型肺炎の疑いがあ り,azithromycin 500mg!日を 3 日間投与した.血液・

喀痰培養では有意な菌は検出されず,入院 3 日後の超 音波検査上,胸水は速やかに減少しており,胸水穿刺 は施行できなかった.入院 1 週間後の胸部 CT 検査で は,肺炎像・胸水は共に消失(Fig. 1b)していたた め,退院となった.

退院後経過:入院時の血清学的所見から,C. pneu- moniae肺炎の可能性が否定できず,退院後に clarithro-

別刷請求先:(〒329―2763)栃木県那須塩原市井口 537―3 国際医療福祉大学病院消化器内科 静間 徹

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感染症学雑誌 第82巻 第 5 号 Fig. 1 Computed tomography showed pneumonia ofthe

rightlowerlobe and synpneumonicpleuraleffusion on admission (a).The pneumonia and pleuraleffusion were no longerapparentatone week afteradmission (b).

a

b

Table 1 Changesin the immunologicalfindings 7 weeksafter

admission 3 weeksafter

admission admission

(- )ID 0.7 (+ )ID 1.0

(+ )ID 1.5 EBV VCA IgM

(+ )ID 2.2 (+ )ID 2.3

(+ )ID 2.7 EBV VCA IgG

(- ) (- )

(- ) EBNA

×40

×40 M.pneumoniae(PA)

×4

×4 M.pneumoniae(CF)

(± )ID 1.07 (+ )ID 1.45

(+ )ID 2.18 C.pneumoniaeIgM

(++ )ID 3.46 (+ + )ID 3.38

(+ )ID 1.85 C.pneumoniaeIgA

(+ )ID 1.43 (+ )ID 1.40

(± )ID 0.89 C.pneumoniaeIgG

mycin 400mg!日を 7 日間投与した.初診時から 7 週 間後には,EBV VCA IgM 抗体は陰性化し,肝胆道 系酵素値も全て正常化したが,EBNA 抗体は陰性の ままであった.また,末梢血リンパ球 CD4!CD8 比は,

1.10 と正常範囲となっていた.C. pneumoniae抗体に ついては,初診時から 3 週間後には IgG 抗体が陽性 化した.また,7 週間後には IgM 抗体がインデック

ス値(ID)1.07(判定±)となり,IgA 抗体は ID1.61 の上昇がみられた(Table 1).これらのマーカーの推 移から,EBV の初感染による IM に,C. pneumoniae の初感染が重複したものと考えられた.

自験例では,初診時に右肺炎像・胸水,肝機能障害 が認められていたが,急性肺炎においても肝機能障害 を 来 す こ と は 希 で は な く,肺 炎 球 菌 やMycoplasma

(M.)pneumoniae肺炎においても肝機能障害を併発 する3)ことが知られている.なお,C. pneumoniae感染 に併発した肝機能障害に関する報告は少ないが,C.

pneumoniae肺 炎 症 例 中,血 清 AST・ALT 上 昇 例 が 各々 31%・20% で認められ,AST 上昇の頻度はM.

pneumoniae肺炎例と有意差はなかったとの報告4)や,

M. pneumoniae肺炎例に比較し,有意に血清 AST 値 が高かったとする報告5)もみられている.また,動物 モデルでは,C. pneumoniaeが Kupffer cell 内で増殖す ることが報告6)されており,ヒトにおける感染時に,一 過性の肝機能障害を来す可能性も考えられる.しかし 自験例においては,C. pneumoniae感染による肝機能 への修飾は完全には否定できないものの,EBV の初 感染による IM の結果,肝機能障害が併発したものと 考えられた.

なお,C. pneumoniae感染症の診断法には,分離培 養法・遺伝子検出法(PCR など)の他,血清学的診 断では,micro-immunofluorescence(MIF)法などが 推奨7)されているが,MIF 法は検査が煩雑で,検査可 能な施設が限られているなどの制約があり,スクリー ニング検査としては保険適応のある ELISA が汎用さ れている.自験例でも,ELISA(ヒタザイム C.ニュー モニエ:日立化成)にて抗体価を測定しているが,初 感染の指標1)としては,1)IgM 抗体が ID1.6 以上,2)

ペア血清による IgA 抗体の ID1.0 以上の上昇,3)ペ ア血清による IgG 抗体の ID1.35 以上の上昇,が挙げ られている.しかし,IgM 抗体の偽陽性7)などの問題 もあり,ワンポイントでの初感染の判定は困難7)とさ れている.自験例では,入院時・3 週間後・7 週間後 の 3 ポイントで ID を測定しており,IgM 抗体は ID

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C. pneumoniaeとの重複初感染が疑われた伝染性単核症 453

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2.18 から,7 週間後には 1.07(判定±)となっていた こと,IgA 抗体が ID1.61 の上昇を来したこと,IgG 抗体が ID0.89(判定±)から,3 週間後には陽性化し ていたことから,C. pneumoniaeの初感染の可能性が 高いものと推測された.また,C. pneumoniaeと EBV の先行感染後にリウマチ因子陽性となった小児例8)や,

M. pneumoniaeと EBV の重複感染例9)の報告はみられ るものの,C. pneumoniaeと EBV の重複初感染の成人 報告例は,検索し得た限りではみられていない.

なお,自験例における自覚症状は,発熱・咽頭痛で あり,発症 2 日後には当科を受診しているが,これら の自覚症状は,C. pneumoniaeと EBV のいずれの感染 でもみられる症状であり,さらに,C. pneumoniaeの 潜伏期間は 3〜4 週間1),EBV では 4〜7 週間10)とされ ていることから,先行感染がいずれかは不明である.

また,自験例では,入院時に末梢血リンパ球 CD4! CD8 比の低下がみられたが,CD4 陽性細胞の絶対数 の低下はなく,回復期には CD4!CD8 比は正常化して おり,EBV による IM 例の末梢血リンパ球サブセッ トを解析した過去の報告11)とも一致していた.また,

末梢血に異型リンパ球(最高 2,600!mm3)が出現して いたことからも,EBV が標的細胞である B 細胞に感 染し,cytotoxic T 細胞の活性化・CD8 陽性 T 細胞の 増多を来し11),末梢血リンパ球 CD4!CD8 比の低下が 認められた可能性が考えられる.したがって,自験例 では,同時に複数の感染症が惹起されるような免疫抑 制状態にあったとは言えず,C. pneumoniaeは,M. pneu-

moniaeや肺炎球菌との重複感染が少なくない1)ことが

知られているものの,EBV との重複初感染例は報告 がないことから,C. pneumoniaeと EBV 感染症が相互 に関連して発症したとは考えにくく,同時期に偶然,

初感染が成立した可能性が高いと推測された.

なお,自験例では,IM および肺炎・胸水が認めら れていたが,胸水貯留を来した EBV の既往感染患者 においては,EBV の再活性化によって,高率に胸水 中より EBV-DNA が検出されるとの報告12)もみられて いる.しかし,EBV の初感染による IM に,肺病変・

胸水を併発することは希13)〜15)であり,平井らは,1954〜

98 年までに肺炎と胸水を併発した EBV による IM 例 は,17 例(本邦例 2 例)であったと報告14)している.

また,IM において胸水を併発する成因としては,肺 門リンパ節の腫大による奇静脈の圧迫・うっ滞や,胸 膜へのリンパ球の浸潤などが推測されている13)14)が,

IM 発症時における胸水貯留についての知見は少な く,機序も不明な点が多い.なお,これまでの胸水を 併発した IM 報告例では,抗生物質が投与された症 例13)を除き,胸水の消失までに発症から数週間〜2 か 月を要することが多いと報告14)されている.自験例で

は,抗生物質投与後に急速に胸水が減少しており,CT 検査でも,加療後 1 週間以内に肺炎像と共に胸水は消 失している.また,成人のC. pneumoniae肺炎では,20〜

30% 程度16)17)に胸水が併発することが報告されてお り,自験例における右胸水の貯留については,肺炎像 と共に,C. pneumoniae感染によって出現した可能性 が高いものと考えられた.

文 献

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感染症学雑誌 第82巻 第 5 号 Epstein-Barr virus in the pathogenesis of pleu-

ral effusion. Eur Respir J 2005;26:662―6.

13)高倉康人,小林 裕,高橋由希子,近山 達,池 田元美,魚嶋伸彦,他:胸水を伴った伝染性単 核球症.臨血 1996;37:719―24.

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16)伊藤功朗,石田 直,橋本 徹,有田真知子,大 澤 真,橘 洋 正,他:Chlamydia pneumoniae肺 炎,オウム病,マイコプラズマ肺炎の胸部 X 線 所見の比較検討.感染症誌 2000;74:954―60.

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A Case of Infectious Mononucleosis with Suspected Primary Coinfection with Chlamydophila(Chlamydia)pneumoniaeand Epstein-Barr Virus

Toru SHIZUMA1)2)

1)Department of Internal Medicine, Kikuna Memorial Hospital,

2)Department of Gastroenterology, International University of Health and Welfare Hospital

A 26-year-old male was hospitalized with fever and pharyngeal pain. Liver dysfunction and an increase in the percentage of atypical lymphocytes in the peripheral blood were detected. Computed tomography showed pneumonia involving the right lung and synpneumonic pleural effusion. Serum immunological tests showed positive results for Epstein-Barr virus (EBV) viral capsid antigen (VCA) IgM and IgG antibodies and Chlamydophila(Chlamydia)pneumoniae (C. pneumoniae) IgM and IgA antibodies on admission. The pneumonia and pleural effusion were no longer detectable after a week of treatment with starting azithromycin. At 7 weeks after admission, the liver function test results returned to within normal limits, the serum became negative for EBV VCA IgM antibody, the C. pneumoniae IgM antibody titer decreased, and the C. pneumo- niae IgA and IgG antibody titers increased. This case was suspected to have infectious mononucleosis caused by primary coinfection withC. pneumoniaeand EBV.

〔J.J.A. Inf. D. 82:451〜454, 2008〕

Tabl e 1 Changes i n  t he  i mmunol ogi c al f i ndi ngs 7  weeks af t er admi s s i on3 weeksafteradmissionadmission (- ) I D  0

参照

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