小児インフルエンザ菌性髄膜炎の抗菌療法に関する検討
1)
千葉大学大学院医学研究院小児病態学,
2)千葉県こども病院感染症科,
3)千葉市立青葉病院小児科,
4)
千葉市立海浜病院小児科,千葉県健康福祉部
*星野 直
1)2)石和田稔彦
1)阿部 克昭
1)2)荻田 純子
1)深沢 千絵
1)須藤扶佐代
1)稲見由紀子
1)菱木はるか
1)会沢 治朗
1)3)石川 信泰
3)黒崎 知道
4)中村 明
2)*河野 陽一
1)(平成 18 年 7 月 26 日受付)
(平成 18 年 10 月 18 日受理)
Key words : meningitis, Haemophilus influenzae type b, antimicrobial therapy, child
要 旨
過去 11 年間のインフルエンザ菌性髄膜炎患者 41 例について,抗菌療法を中心とした検討を行った.起炎 菌株は全て血清型 b 型(Hib)であった.治療開始時の選択抗菌薬は ceftriaxone(CTRX)が最多の 23 例 であり,以下 ampicillin+cefotaxime(CTX)9 例,CTRX+panipenem ! betamipron 5 例,CTX 2 例の順 であった.治療開始後の変更例を含めると,全 41 例中 31 例が主に CTRX により治療されていた.急性期 の DIC などを除く頭蓋内合併症は 8 例(19.5%)で認められ,硬膜下水腫が 4 例,硬膜下膿瘍が 3 例,梗塞 が 1 例であった.死亡例はなかったが,後遺症は 7 例(17.1%)で認められ,難聴,てんかん,半身麻痺,
発達遅滞が各 1 例と硬膜下腹腔シャント残存 3 例であった.いずれも治療抗菌薬への感受性が良好であった にも拘わらず,合併症・後遺症を生じていた.2001 年以降に CTX の MIC が 0.12〜1 µ g ! mL と高値を示す 株が 5 例より分離され,うち 3 例で CTRX の MIC も 0.12〜0.5µg! mL と上昇していたが,全例が CTRX の 投与により完治した.現時点では薬剤耐性化に伴う治療失敗例はなく,現行の CTRX 中心の抗菌療法は引 き続き有効と考える.しかし,Hib における第 3 世代セフェム耐性化は進行しており,今後の動向により新 規併用療法や既存薬の適応拡大なども考慮する必要がある.
〔感染症誌 81:51〜58,2007〕
序 文
近年,小児インフルエンザ菌性髄膜炎において, β ラ ク タ マ ー ゼ 非 産 生 ampicillin(ABPC)耐 性 株
(BLNAR)の分離頻度が増加している
1).BLNAR で は,髄 膜 炎 治 療 の 中 心 的 抗 菌 薬 で あ る ceftriaxone
(CTRX)や cefotaxime(CTX)に対する耐性化が進 行しており,治療上深刻な問題となることが懸念され る.そこで,過去 11 年間のインフルエンザ菌性髄膜 炎例について検討し,主として現行および今後の抗菌 療法に関する考察を行った.
対象と方法
1995 年 1 月から 2005 月 12 月の 11 年間に,千葉県 こども病院(21 例),千葉大学医学部附属病院(3 例),
千葉市立海浜病院(13 例),千葉市立青葉病院(4 例)
の 4 施設で入院治療を行ったインフルエンザ菌性髄膜 炎患者全 41 例を対象に,治療内容,治療成績,起炎 菌の抗菌薬感受性,CTX 低感受性株分離例,合併症・
後遺症併発例などについて検討した.病院ごとの症例 数は括弧内に示した.
抗菌薬感受性は,日本化学療法学会標準法に準拠し た微量液体希釈法により最小発育阻止濃度(MIC)を 測定し,β ラクタマーゼ産生能は nitrocefin test によ り判定した.BLNAR は抗菌薬感受性により定義し, β ラ ク タ マ ー ゼ 陰 性 か つ 米 国 臨 床 検 査 標 準 委 員 会
(CLSI)の基準で中等度耐性に相当する ABPC の MIC が 2µg! mL 以上を示した株とした.
結 果
1.全体像
全 41 例の臨床像の大要を表に示した(Table 1).
内訳は男児 27 例,女児 14 例で,平均年齢は 2 歳 0 カ
原 著別刷請求先:(〒266―0007)千葉市緑区辺田町 579―1
千葉県こども病院感染症科 星野 直
Table 1 Background,therapy,and clinicalefficacy in 41 casesofHib meningitis.
41 Cases
24±15,median 20 Age(months)
boys:27,girls:14 Gender
allisolateswere type b Serotype
-10:23 13.0±4.0
Duration ofantimicrobialtherapy
(day) 11-14 : 9
15-21 : 5 22-: 4 Day 2.8±1.7 Startofantimicrobialtherapy
from onsetofthe disease
38/3 Dexamethasone therapy yes/no
8(19.5%)
Complications
7(17.1%)
Sequalae
0 Death
月であり,全分離株が血清型 b 型(Haemophlus influen- zae type b;以下 Hib)であった.抗菌療法は平均 13 日間施行されていたが,10 日間の 23 例が最多で,41 例中 32 例において 2 週間以内の施行期間であった.3 週間を超える抗菌療法が 4 例で認められたが,これら の例はいずれも頭蓋内合併症あるいは結果として後遺 症を伴っていた.抗菌療法の開始病日は,発熱から平 均 2.8 日目(1〜15 日)であった.デキサメタゾン療 法は 3 例を除く 38 例で併用されていた.頭蓋内合併 症 は 8 例(19.5%)に,後 遺 症 は 7 例(17.1%)に 認 めたが,死亡例は認めなかった.
2.抗菌療法
治 療 開 始 時 の 選 択 抗 菌 薬 は,単 剤 投 与 が 26 例
(CTRX 23 例,CTX 2 例,meropenem[MEPM]1 例),2 剤併用が 15 例(ABPC+CTX 9 例,CTRX+
panipenem! betamipron[PAPM! BP]5 例,CTX+
PAPM ! BP 1 例)であった(Fig. 1).ABPC 投与例は 全て 1998 年以前の症例であった.
治療開始翌日の髄液培養は CTRX 単独投与の 1 例 で陽性であったが(翌々日は陰性),残る 40 例は全て 陰性であった.経過中の抗菌薬の変更は 19 例で行わ れ て お り,そ の 初 期 治 療 薬 は ABPC+CTX 9 例,
CTRX+PAPM! BP 5 例,CTRX 2 例,そして CTX,
MEPM,CTX+PAPM! BP が 各 1 例 で,変 更 後 は CTRX 9 例,CTX 8 例,MEPM,chloramphenicol が 各 1 例であった.すなわち,2 剤併用で治療を開始し たが,起炎菌が判明した時点で単剤投与に変更した症 例が 15 例を占めた.個々の症例で最も長期間投与さ れた主要抗菌薬は CTRX が 32 例および CTX が 9 例 であり,いずれも第 3 世代セフェム系薬であった.
各抗菌薬の投与量は,CTRX 100mg! kg! 日,1 例
で 150mg! kg! 日に増量(分 2),CTX 200mg! kg! 日
(分 4),MEPM 120mg ! kg ! 日(分 3),PAPM ! BP 160 mg! kg! 日(分 4),ABPC 200mg! kg! 日,症例によ り 300mg! kg! 日(分 4)であった.
3.抗菌薬感受性
分離 Hib 株の ABPC 耐性別各種抗菌薬感受性分布 と MIC
50,MIC
90を図に示した(Fig. 2).年代により 測定対象抗菌薬が異なるため,各抗菌薬の測定検体数 は異なっている.
BLNAR は 3 株(7.3%)で,すべて 2002 年以降 に 分離されていた. β ラクタマーゼ産生株は 12 株(29%)
であった.最も良好な抗菌力を示したのは,測定数は 少 な い が tazobactam! piperacillin(TAZ! PIPC)と piperacillin(PIPC)であり,次いで CTRX,norflox- acin,さらに MEPM,CTX と続いていた.
抗 菌 薬 感 受 性 の 経 年 的 変 化 を 確 認 す る 目 的 で,
ABPC , clavulanate ! amoxicillin ( CVA ! AMPC ),
CTX,および CTRX の 4 薬剤については分離菌株を 2000 年 ま で の 19 株 と 2001 年 以 降 22 株 の 2 群 に 分 け,MIC 累積百分率を比較した(Fig. 3).抗菌力の 経 年 的 低 下 は,ABPC,CVA! AMPC と 比 較 し て CTX,CTRX においてより明瞭であった.
4.合併症・後遺症
全 41 例中 9 例でのべ 15 件の合併症・後遺症を認め た(Table 2).さらに,合併症・後遺症併発群と非併 発群の間で,平均年齢(Fig. 4-a),および適合抗菌薬 による治療開始病日(Fig. 4-b)を,t 検定により比較 した.平均年齢は前者が 1 歳 0 カ月,後者が 2 歳 2 カ 月であり,合併群がより低年齢であった(p=0.026).
また,治療開始病日は,前者が 4.9 病日,後者が 2.3 病日であり,併発群で遅延していた(p=0.010).
入院した時点で既に存在した DIC や SIADH など を除く頭蓋内合併症は 8 例(19.5%)に認めており,
内訳は硬膜下水腫 4 例,硬膜下膿瘍 3 例,脳梗塞 1 例 であった.硬膜下水腫・膿瘍合併例のうち 3 例では硬 膜 下 腹 腔 シ ャ ン ト 設 置 を 要 し た.後 遺 症 は 7 例
(17.1%)で,難聴,てんかん,半身麻痺,精神発達 遅滞が各 1 例と硬膜下腹腔シャント残存 3 例が認めら れた.このうち 6 例は合併症併発例であった.これら 合併症・後遺症群 9 例で使用した抗菌薬は,いずれも 起炎菌に対し良好な抗菌力を示していた.
5.CTX 低感受性株
2001 年以降に CTX 低感受性株(MIC 0.12〜1 µ g !
mL)が 5 例で分離された(Table 3).この 5 株のな
かには BLNAR の全 3 株も含まれており,CTRX の
MIC も 0.12〜0.5µg! mL と 高 値 を 示 し た.全 例 が
CTRX を主体とした 10〜11 日間の抗菌療法により完
治した.
Fig. 1 Flow chartoftherapy and clinicalefficacy of41 casesofHib meningitis. CTRX:ceftriaxone,CTX:cefotaxime,MEPM:meropenem,ABPC:ampicillin, PAPM/BP:panipenem/betamipron,CP:chloramphenicol
考 察
Hib 性全身感染症は,ワクチンによる高い発症阻止 効果が証明された疾患であり,Hib ワクチンが既に定 期接種化された米国における発症頻度は激減してい る
2).本邦ではワクチンの治験が終了し,その有効性・
安全性は確認されているが
3),現時点では未導入であ り,定期接種化までには更に年月を要すると思われる.
ワクチン導入の遅れのために,全身感染症分離 Hib 株における BLNAR の増加という問題に直面せざる を得なくなってきている.2000 年以降,呼吸器感染 症由来インフルエンザ菌では BLNAR 分離頻度の急 激な増加が報告されているが
4)5),Hib を主体とする髄 膜炎由来株でも同様の増加傾向が認められている.
BLNAR の遺伝子変異部位である penicillin-biding- protein(PBP)3 をコードする ftsI 遺伝子の解析によ ると,その分離頻度は 2000〜2004 年で 22.2% であり,
さらに重要なことは観察期間内に急増傾向を示した点 である
1).今回,BLNAR は全分離株の 7.3% に留まっ たが,2000 年以降に限定すればその頻度は 13.6% で ある.第 3 世代セフェム系薬のインフルエンザ菌に対 する主な結合部位は PBP3 であるため,BLNAR では その耐性化が顕著に現れる
6).主に無莢膜株を対象と した臨床分離株の検討でも,2000 年以降の抗菌力の 低下は ABPC,CVA! AMPC よりも CTX,CTRX な どの第 3 世代セフェム系薬で顕著であった
7).この傾 向は,髄膜炎由来 b 型株を対象とした本検討におい ても同様であった.このような Hib における BLNAR の増加は,診療現場における治療薬選択を混乱させる 一因となっている.
今回の検討で最も優れた MIC 値分布を示した抗菌 薬 は PIPC お よ び TAZ! PIPC で あ っ た.PIPC は
PBP2 との結合性をも有しており,β ラクタム系薬で は例外的に BLNAR に対し低い MIC 値を示す
8).私 どもはこの点に着目し,BLNAR を含むインフルエン ザ菌性下気道感染症における 2 剤の臨床的有用性を確 認・報告した
9).
PIPC,TAZ! PIPC の髄液移行性は良好とされ
10),髄 膜炎に対する有効性も期待される.しかし,Hib では β ラクタマーゼ産生菌を高頻度に認めるため
1), β ラ クタマーゼ阻害作用のない PIPC は初期治療薬として は危険性が大きい.TAZ! PIPC は,PIPC と β ラクタ マーゼ阻害剤との合剤であり,2 種の耐性機構を併せ 持 つ β ラ ク タ マ ー ゼ 産 生 CVA ! AMPC 耐 性 株
(BLPACR)に対しても良好な抗菌力を有している.
しかし,大量使用時の体内動態については不明な点も 多く,髄膜炎における使用の可否は今後の症例の集積 を待って判断する必要がある.現状では,Hib に対し て優れた抗菌力と高い髄液移行率を併せ持つ CTRX
11)が依然として第一次選択抗菌薬と考えられる.この認 識の下に私どもは現在も CTRX を Hib 性髄膜炎治療 の中心に据えている.
Hib を含む通常の髄膜炎起炎菌は,髄液検体に対し 培養法と共にラテックス凝集法による抗原検出と沈渣 のグラム染色塗抹検査を併用することで,30 分から 1 時間以内で高い診断精度をもって同定可能である
12). したがって,大部分の症例では初期治療の段階から起 炎菌に応じた抗菌薬の単剤投与が可能である.
Hib 性髄膜炎に対する抗菌薬投与期間は 10〜14 日 間が推奨されている
13).私どもは,治療開始 24 時間 後の 2 度目の髄液培養で陰性が確認され,臨床経過・
血液検査データの改善が良好であれば,現状では 10
日間で十分であると考えている.今回は 41 例中 31 例
Fig. 2 Percent distribution of MICs of 10 antimicrobial agents against clinical isolates of Hib. ABPC:ampicillin, CVA/AMPC:clavulanate/amoxicillin,PIPC:piperacillin,TAZ/PIPC:tazobactam/piperacillin,CTX:cefotaxime, CTRX:ceftriaxone, PAPM/BP:panipenem/betamipron, MEPM:meropenem, NFLX:norfloxacin, CP:
chloramphenicol. BLNAS:β-lactamase-nonproducing ampicillin-sensitive strain, BLPAR:β-lactamase-producing ampicillin-resistantstrain,BLNAR:β-lactamase-nonproducing ampicillin-resistantstrain
Fig. 3 Comparison ofcumulative MICsof4 β-lactam agentsagainstclinicalisolatesofHib between 1995-2000 and 2001-2005.
ABPC:ampicillin,CVA/AMPC:clavulanate/amoxicillin,CTX:cefotaxime,and CTRX:ceftriaxone.
Table 2 Detailsof9 caseswith complicationsand/ orsequalae.SDE:subduraleffusion,SDEm:subduralempyema,S-P shunt: subdural-peritonealshunt.CTRX:ceftriaxone,ABPC:ampicillin,CTX:cefotaxime,MEPM:meropenem,CP:chloramphenicol
MIC(μg/mL)
Dexamethas- one(day)
StartofAnti- bioticsDay Antibiotics
(day)
Sequelae Complications
Age Year Case
MEPM CTRX CTX
ABPC
ND
<
_ 0.03
<
_ 0.03 0.25
4 15
CTRX(10)
deafness
― 2y4m 1995 1.
ND ND
<
_ 0.03 0.25
4 ABPC+CTX(1)- 5
CTX(9)
S-P shunt SDE
6m 1995 2.
ND ND
<
_ 0.03
>
_ 16* 2
ABPC+CTX(1)- 1 CTX(26)
― SDE
3m 1995 3.
ND
<
_ 0.03
<
_ 0.03
<
_ 0.13 4
5 CTRX(22)
S-P shunt SDEm
5m 1997 4.
ND ND
<
_ 0.03
<
_ 0.13 2
ABPC+CTX(1)- 6 CTX(12)
― SDE
1y2m 1998 5.
ND
<
_ 0.03
<
_ 0.03
>
_ 16* 4
2 CTRX(10)
hemiplegia infarction
1y9m 1999 6.
<
_ 0.06
<
_ 0.03
<
_ 0.03 4*
2 3
MEPM(6)- CTRX(20)- CTRX+CP(5)
mental retardation SDEm
1y2m 2000 7.
<
_ 0.06
<
_ 0.03 ND#
1 2
CTRX(14)- 5 CP(14)
epilepsy SDEm
1y2m 2003† 8.
<
_ 0.06
<
_ 0.03
<
_ 0.03
>
_ 16* 2
2 CTRX(18)
S-P shunt SDE
2m 2005 9.
4.9
(18.8)
1y0m Mean
†:Second CSF culture waspositive
*:β-lactamase-producing strain
#ND:notdone
で CTRX が選択されていたが,このうち後遺症無し に完治した 28 例における抗菌薬投与期間は平均 11.1
日であった.
本検討では 41 例のうち合併症は 8 例,後遺症は 7
Fig. 4 Comparison ofage(a)and day ofstarting antimicrobialtherapy(b)between 9 complicated caseswith 32 uncomplicated cases.
AntimicrobialTx
(day)
MIC(μg/mL)
Age
Year CTX CTRX ABPC MEPM
CTRX+PAPM/BP(1)
-CTRX(10)
ND#
>
_ 16* 0.06 0.25 3y11m 2001
CTRX(10)
ND# 2 0.5 1 1y4m 2003
CTRX(10)
0.25 2 0.25 1 8m 2004
CTRX(10)
0.25 4 0.12 0.5 3m 2004
CTX+PAPM/BP(1)
-CTRX(9)
<
_ 0.06 1
<
_ 0.03 0.12 4y3m 2005
Note :There were no complicationsorsequalae
*β-lactamase-producing strain
#notdone
Table 3 Detailsof5 casesisolating the strain with declined suscepti- bility ofcefotaxime.CTX:cefotaxime,CTRX:ceftriaxone, ABPC:ampicillin,MEPM:meropenem,PAPM/BP:
panipenem/betamipron.
例の合計 9 例で認められた.うち 1 例で治療開始翌日 の髄液培養が陽性であったが,翌々日には陰性化して いた.この症例を含め,いずれの症例の治療薬も分離 菌に対する抗菌力は良好であった.また,2001 年以 降 に 出 現 し た CTX 低 感 受 性 株 分 離 例 は,全 例 が CTRX により完治していた.したがって,BLNAR の 増加や第 3 世代セフェム系薬の低感受性化に伴う治療 失敗例は,本検討では認められなかったと考えている.
むしろ,合併症・後遺症併発例の背景からは,他の要 因の関与が疑われる.すなわち,平均年齢が 1 歳と低 年齢であった点(非併発例 2 歳 1 カ月),ならびに抗 菌療法の平均開始病日が 4.9 日と遅れていた点(同 2.3 日)である.乳幼児は,全身感染症の発症を阻止する のに十分な Hib 抗体価を有しておらず,髄膜炎難治 化との関連性も示唆されている
14).
私どもは,2003 年に分離菌の CTRX の MIC が 0.5 µg! mL と高値を示す症例を経験した.幸い,CTRX の 投 与 量 を 100mg! kg! 日 か ら 150mg! kg! 日 に 増 量 し,後遺症なく完治することができた
15).しかし,今 後第 3 世代セフェム系薬の感受性低下がさらに進行す れば,現行の治療では treatment failure を生じる可 能性が高くなる.このような場合の一次選択抗菌薬と して CTRX 増量法の他に,BLNAR,BLPACR に対 する抗菌力が良好で,かつ第 3 世代セフェム系薬と PBP への結合部位を異にする MEPM,TAZ ! PIPC と CTRX との併用療法が考えられる.少数株での検討 であるが,CTRX と MEPM の併用は BLNAR に対し て in vitro の相乗効果が確認されている
16).この他,
小児に対する使用制限はあるものの,静注用フルオロ
キノロン系薬である ciprofloxacin の使用も今後候補
に挙がるであろう.そして,なによりも優先すべきこ とは,各 β ラクタム系薬に高度耐性を示す BLNAR が増加し,Hib 髄膜炎に対する治療戦略の大幅な見直 しを余儀なくされる前に,Hib ワクチンの定期接種化 を急ぐことである.
文 献
1
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Studies of Treatment for Haemophilus influenzae Type b Meningitis in Children
Tadashi HOSHINO
1)2), Naruhiko ISHIWADA
1), Katsuaki ABE
1)2), Junko OGITA
1), Chie FUKASAWA
1), Fusayo SUDO
1), Yukiko INAMI
1), Haruka HISHIKI
1), Jiro AIZAWA
1)3), Nobuyasu ISHIKAWA
3),
Tomomichi KUROSAKI
4), Akira NAKAMURA
2)*& Yoichi KOHNO
1)1)
Department of Pediatrics, Chiba University Graduate School of Medicine,
2)
Division of Infectious Diseases, Chiba Childrenʼs Hospital,
3)
Division of Pediatrics, Chiba Municipal Aoba Hospital,
4)
Division of Pediatrics, Chiba Municipal Kaihin Hospital,
*