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WET 21 (Whole Effluent Toxicity: WET) WET 3 BOD 3 WET : Danio rerio : Ceriodaphnia dubia: Pseudokirchneriella subcapitata 3 OECD TG No.212

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Academic year: 2021

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河川整備基金助成事業

「WET 手法を用いた全国一級河川の生態毒性

負荷量分布の調査」

助成番号:23-1215-033

徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部

山本 裕史

平成23年度

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様式6・2 1.調査・試験・研究 [:概要版報告書] 助成番号 助成事業名 所属・助成事業者氏名 23-1215-033 WET 手法を用いた全国一級河川の生態毒性 負荷量分布の調査 徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・ サイエンス研究部・山本裕史 助 成 事 業 の 要 旨 〔目 的〕 国内での排水や河川などの環境水の評価・管理は、現在の水質環境基準や排水規制などをみ ても個別の汚染化学物質をベースにおこなわれていることが多く、近年の新規化学物質数の増 加や複合影響などには十分に対応し切れていない状態である。そこで、環境省では平成 21 年 度から、米国や欧州各国、韓国などで既に導入されている全排水毒性(Whole Effluent Toxicity: WET)手法をもとにした新たな生物応答を用いた排水や環境水の評価・管理手法の構築を目指 して検討が行われてきた。そのことから、研究代表者らは主に徳島県内の一般事業所排水や下 水処理場排水およびその放流先河川に関して検討をおこなってきた。本研究では、これまでに 種々の汚染化学物質濃度測定の実績が多い全国一級河川の河川水について、WET 手法の中で も煩雑ながらも感度が高い魚類・ミジンコ・藻類の 3 種の短期慢性毒性試験を実施して生態 毒性負荷の分布を調べ、原因となる汚染化学物質を考察することを目的とした。 〔内 容〕 日本国内でも利用人口・流域人口が多いことから国土交通省が指定している一級河川の水系 のうち,BOD をはじめ様々な汚染化学物質等の調査報告や流量データが存在する環境基準点 のべ 30 地点以上を対象とした。試験水はできる限り流心で採取し,直ちに冷蔵状態で徳島大 学内の実験室に送付し,ろ過後に試験に飼育水で希釈して試験を実施した。なお、生物試験に ついては、日本の環境省において導入手法のベースとして検討されている米国の WET 手法に 準ずる栄養段階の異なる魚類(ゼブラフィッシュ: Danio rerio)・ミジンコ(ニセネコゼミジ ンコ: Ceriodaphnia dubia)、藻類(ムレミカヅキモ: Pseudokirchneriella subcapitata)の 3 種を用いた短期慢性毒性試験を利用することとした。ゼブラフィッシュは OECD TG No.212 に準拠した胚・仔魚期短期毒性試験で、孵化率と仔魚死亡率を 9 日間観察した。ミジンコは 米国環境保護庁の Test Method No.1002.0 に準拠して 8 日間の繁殖と死亡率を,藻類は OECD TG No. 201 に準拠して 72 時間後の生長阻害率を求めた。 〔結 果〕 全国一級水系のうち北海道から九州まで 40 箇所程度で水試料を採取し、そのうち生態毒性 試験が成立したのは 30 箇所近くの試料に上る。毒性が検出されない地点が多かったが、北海 道の石狩川,関東の利根川,綾瀬川や荒川,近畿の琵琶湖,九州の遠賀川などの試料では毒性 影響が検出された。なお,BOD の年間平均値との相関を調べたところ,毒性影響が検出され た地点が必ずしも BOD が高いというわけではなく,より詳細なモニタリングを継続し,化学 物質評価・管理を実施していく必要がある。また,流量を掛け合わせて,毒性負荷量を算出し たところ,流量の大きい石狩川や利根川などで非常に毒性負荷量が多かった。今後は,利用人 口が多い河川で毒性影響が検出されている地点に絞り,毒性影響の季節変動の把握に加えて, 分画と生態毒性試験を組み合わせた原因物質の特徴化や,化学分析も合わせた毒性物質の同定 を実施する予定である。

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様式6・3 1.調査・試験・研究 [:自己評価シート] 助成番号 助成事業名 所属・助成事業者氏名 23-1215-033 WET 手法を用いた全国一級河川の生態毒性 負荷量分布の調査 徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・ サイエンス研究部・山本裕史 助 成 事 業 実 施 成 果 の 自 己 評 価 〔計画の妥当性〕 研究代表者も深く関与する環境省において検討中の生物応答を用いた排水・環境水の評価・ 管理のうち,利用人口が比較的多い全国の一級河川について,大まかにその毒性影響を把握で きた点では非常に意義深く,今後の制度導入に向けた試金石となる研究だったといえる。研究 は,WET 手法や汚染化学物質を含めた水生生物を用いた様々な毒性試験に精通した研究代表 者のもとで研究補助学生とともに実施され,体制としては妥当であったといえる。しかしなが ら,当初計画における目標地点の 50 地点には及ばす,実施したのが 40 地点程度,有効な結 果が得られたのが 30 地点程度となった。これは,予備試験の実施や,サンプルの移送・保存, ならびに供試生物の状態の維持管理の難しさ,助成金額の減額措置などもあり,やむを得ない ものといえる。 〔当初目標の達成度〕 当初は,目標地点数を 50 地点としたが,これは再現性の高い結果を得るための予備試験の 実施や供試生物の維持管理上の問題,サンプルの移送や保存における時間・コスト・設備の問 題,さらには交通費や備品・消耗品の制限などによってやや目標を下回ったがほぼ達成できた といえる。なお,3 月末で事業はいったん終了したが,引き続き試料採取や実験は継続してお り,合わせて目標に限りなく近いものは得られる予定である。なお,課題としては,1 箇所に つき 1 回のスポット採水を実施したことから,地点数を絞って季節変動の問題を追及すると ともに,次年度では原因物質の特徴化や同定に焦点を当てた研究が採択されたので,合わせて 実施している。 〔事業の効果〕 一部の一級河川の水について,濃縮などをかけない状態でも藻類やミジンコ,魚類に対して 毒性影響を示すことがわかり,石狩川石狩大橋や綾瀬川内匠橋などの地点によってはその影響 が顕著であるところもあった。また,3 種の生物を利用した際にその毒性影響の検出傾向は異 なり,工場排水や下水放流水と同様に多様なスペクトルで測定することの意義も示すことがで きた。今後,化学物質の個別の評価・管理に限界が叫ばれる中で,環境省による制度化が進む 中で本研究の成果がさらに発展し,広く化学物質評価・管理手法として定着していくことが期 待される。研究成果について,すでに第 46 回日本水環境学会年会,世界湖沼会議などで学会 発表を実施済みだが,環境工学論文集への投稿などを検討しているほか,環境化学・毒性学関 連の国際学会でも発表をおこない,広く国内外の研究者と情報を共有していく予定である。 〔河川管理者等との連携状況〕 当該情報の成果については,河川管理者である徳島県や滋賀県等の都道府県,国土交通省河 川国道事務所などと共有し,一部の地点については共同した調査を予定している。

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助成事業者紹介

山本 裕史

現職:徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部准教授(Ph.D)

主な著書:新版 環境工学−持続可能な社会とその創造のために−、(分担執

筆、理工図書、平成 19 年)

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目次

1.緒論

・・・5

1.1 はじめに 1.2 本研究の目的

2.日本の水環境行政と従来のバイオアッセイを用いた環境水調査・研究

・・・8

2.1 わが国の水環境行政の歴史と現状 2.1.1 わが国の水環境行政の歴史 2.1.2 わが国の水環境行政の現状 2.2 諸外国でのバイオアッセイを用いた水環境評価・管理の例 2.2.1 北米 2.2.2 欧州 2.2.3 アジア・オセアニア 2.3 国内での水環境評価・管理へのバイオアッセイ適用事例 2.4 米国の WET 手法の概要 2.4.1 WET 試験方法の概要 2.4.2 毒性同定評価(TIE)と毒性低減評価(TRE)

3.実験方法

・・・17

3.1 本研究で使用した試薬・器具 3.1.1 本研究で使用した試薬 3.1.2 本研究で使用した試薬 3.2 一般水質項目の測定方法 3.2.1 pH、DO、水温、電気伝導度 3.2.2 BOD、アンモニア性窒素 3.3 河川水試料の採取 3.3.1 採取地点の選定 3.3.2 水試料の採取と輸送・保存 3.4 供試生物の飼育方法 3.4.1 入手先 3.4.2 飼育水の製造方法 3.4.3 飼育方法 3.5 WET 手法の短期慢性試験手順 3.5.1 藻類生長阻害試験 3.5.2 ミジンコ繁殖阻害試験 3.5.3 魚類胚・仔魚期短期毒性試験 3.5.4 毒性単位の算出

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4.結果および考察

・・・28

4.1 水質項目の測定結果および BOD・流量データ 4.2 藻類生長阻害試験の結果 4.3 ミジンコ繁殖阻害試験の結果 4.4 魚類胚・仔魚期短期毒性試験結果 4.5 考察

5.結論

・・・40

5.1 まとめ 5.2 今後の課題

参考文献

・・・41

謝辞

・・・46

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1. 緒論

1.1 はじめに 研究代表者らは、河川環境を汚染する微量化学物質のうち界面活性剤や医薬品、化粧品 等の生活関連化学物質に着目し、それらの河川環境中での動態や生態リスクに着目し、平 成 19 年度の貴財団から「生活関連汚染化学物質の河川中動態モデルの作成」1)についての 河川整備基金助成、ならびに平成 22 年度には「防菌防カビ剤の河川環境における動態と生 態リスクの総合的評価」2)についての同助成などを受けて詳細な検討をおこなってきた。 前者では 詳 細な実験 室 内実験や モ デル計算 と 実測濃度 と の比較・キ ャリブレ ー ションによ り、界面活性剤や抗菌剤などの下水道未整備地域での汚染のホットスポットが存在し、水 生生物に対する懸念が大きいことが指摘された 1,3)。また、後者では防菌防カビ剤 8 種につ いて詳細な水生生物に対する毒性試験を実施し、残留性・蓄積性の検討と合わせることで、 トリクロサンやトリクロカルバンの水生生物(主に藻類)に対しての影響が憂慮されるレ ベルにあること、それらについては底質に蓄積して底生生物に対して影響を及ぼす可能性 も合わせて懸念されることを指摘した 2,4)。 しかしその一方で、個別物質について生態リスク評価を実施しても、多種多様な化学物 質が河川環境には存在することから際限がないこと、その複合的影響や、未知もしくは新 規の化学物質の水生生物等への影響は十分に評価・管理されていないという問題点が指摘 されてきた 5)。国内では主として個別物質の化学分析をベースに水質の評価・管理が実施 されており、人の健康の保護に関わる項目 27 種、生活環境の保全に係る項目 10 項目につ いて公共用水域の環境基準が定められていて、そのうち全亜鉛や追加予定のノニルフェノ ールなどについては、水生生物に対する影響も考慮されている。しかしながら河川水や排 水全体としての毒性影響をベースに評価・管理されているわけではない。そのため、平成 21 年度から環境省は欧米や韓国で既に導入されている「排水(・環境水)の生物応答を用 いた評価・管理」の国内導入に向けた本格的な議論を行っている 6)。この際、手本とされ ているのが米国環境保護庁の Whole Effluent Toxicity (WET)のシステム7)であり、このシス テムでは排水や放流先河川の短期慢性毒性試験結果を元にして、個別化学物質の評価・管 理と補完し合うことで排水の毒性評価や削減を行うというものである。そこで研究代表者 らは、平成 21 年度の貴財団からの「WET(総排水毒性)規制の国内導入に向けた徳島県 内事業所排水と放流先河川ミキシングゾーンを対象とした先行的検討」に関する河川整備 基金助成において、徳島県内事業所排水を対象にした短期慢性試験を基本とした水生生物 を用いたバイオアッセイシステムの適用可能性に関する先行的研究を実施した 8)。 環境省による濃縮操作等を伴わない短期慢性試験をベースにした排水の評価・管理シス テム設計が進む 9)一方で、河川水の生態毒性の現状については、急性試験による評価しか されてこなかった。たとえば、富山県立大学の楠井先生らのグループは富山県内の事業所 排水やその放流先についての詳細な調査を様々な水生生物を用いた急性毒性試験によって 評価 10)している。国立環境研究所の畠山先生・菅谷先生らがつくば市近郊河川について藻 類やヌカエビを使ったバイオモニタリングにより除草剤の影響を調べた例 11,12)、岡山大学 の 青山 先 生 ら が農 業 排 水 にバ イ オ モ ニタ リ ン グ を実 施 し た 例 13)、 横 浜国 立 大 学 の浦 野 先

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生・亀屋先生らのグループが固相抽出による濃縮試料について水生生物 3 種について除草 剤等との関与を元に生態毒性を評価した例 14,15)、東京都環境科学研究所の若林先生やの菊 地先生(現神奈川工科大学)らがミジンコ遊泳阻害試験による長年にわたって首都圏河川 のバイオモニタリングを実施した例 16,17)などがあるが、いずれも急性試験をベースにした ものであり、何らかの濃縮操作をおこなうか毒性影響がほとんど検出されないことが多い。 研究代表者らは、生活関連物質評価の一環として、生活排水に汚染された河川に対する短 期慢性毒性試験を実施し、かなりの地点において濃縮操作などなしでミジンコ等への悪影 響を検出している 18)。 以上のことから、本研究課題では全国レベルで大まかな短期慢性毒性試験を適用した場 合の生態毒性レベルを把握することを目標とした。国内では、利用人口が多い河川の水系 については、一級河川に指定され、国土交通省が所管しており、直轄区間以外については 都道府県が管理している。一級河川に指定されている水系は全国にわたって存在し、図 1.1 に示すように 109 水系あり、環境基準点などの水質測定地点は 1,100 地点以上にのぼる。 図 1.1 全国の一級河川の分布図19) 1.2 本研究の目的 本研究では、研究代表者が所属する研究機関(徳島大学)からアクセスがしやすい吉野

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川水系で予備試験を実施した後、北海道から九州に至る主要な一級水系の環境基準点で水 試料を採取し、その生態毒性を調べるとともに、流量を勘案して負荷量の分布を求めるこ とを目的とした。当初の目標はおよそ 50 地点としたが、コストや期間の制限、水生生物の 維持管理の問題から採取したのは予備試験を含めてのべ約 40 地点、実際試験を実施できた のは 30 地点程度である。試験方法については USEPA の淡水生物の短期慢性試験手順をベ ースにした水生生物 3 種(魚類・ミジンコ・藻類)を用いて、ガラス繊維ろ紙でろ過後に 試験を実施した。以上のデータを、各地点での BOD ほか様々な化学分析データと詳細に 比較・検討を実施し、近い将来に排水管理に導入予定の「日本版 WET」と河川水へ適用に 向けた試金石とすることを目指した。

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2.日本の水環境行政と従来のバイオアッセイを用いた環境水調査・研究

2.1 わが国の水環境行政の歴史と現状 2.1.1 わが国の水環境行政の歴史 20) わが国における水環境行政についての歴史を表 2.1 にまとめる。有史以来、人間生活に 伴うし尿や生活排水などの水質汚濁が存在したが、関係住民に対して甚大な健康被害を引 き起こした最初の事例は明治初期の足尾鉱毒事件とされている。その後、産業の近代化、 さらには第二次世界大戦後の復興期には大都市を中心に深刻な水質汚濁が広く見られるよ うになり、水俣病等の発生時期は 1950 年代頃とされている。そのような中、わが国では 1958 年に国によっていわゆる旧水質二法(水質保全法と工場排水規制法)が制定された。 この旧水質二法は、対象地域が限定されていたほか、規制内容についても徹底しておらず、 新潟水俣病、イタイイタイ病などを未然に防止したり、早期に対策をとったりすることで 被害を最小限に食い止めることができなかった。 表 2.1 わが国の水環境行政の歴史 20),21) 年 出来事 1891 国会で足尾問題を討議 1897 足尾銅山鉱毒調査会設置 1940 頃 イタイイタイ病発症 1956 水俣病発見 1958 旧水質二法(水質保全法と工場排水規制法制定) 1965 新潟水俣病 1967 公害対策基本法制定 1970 水質汚濁防止法制定 1971 環境庁発足 1978 瀬戸内海環境保全特別措置法制定、総量規制開始 1984 湖沼水質保全特別措置法制定 1993 環境基本法制定 1999 PRTR 法制定、ダイオキシン特別措置法制定 2001 環境省発足 2003 水質汚濁防止法の改正により水生生物保全の観点からの 項目(全亜鉛)が初めて追加、化審法の改正による水生 生物に対する生態毒性試験の追加 2009 「 WET 手 法 を 活 用 し た 排 水 規 制 手 法 検 討 調 査 」 の ち に 「生物応答を利用した水環境管理手法に関する検討会」 の関連委員会の実施 1960 年代の高度経済成長期には、全国的に前述した水俣病をはじめとした公害問題が広 がり、1967 年には公害対策基本法が成立、1970 年の「公害国会」では水質汚濁防止法が制 定されて現在に近い枠組みになった。その後は、瀬戸内海における赤潮問題に対応して瀬 戸内海環境保全特別措置法などが制定され、総量規制のシステムができ、その動きは東京 湾、伊勢湾、湖沼等の閉鎖性水域にも広がり、窒素やリンの規制開始による富栄養化防止 対策も取られるようになった。近年になって、微量な有害化学物質の増加に伴い、水質環 境基準・排水一律基準の健康項目の拡充やダイオキシン特別措置法の改正がおこなわれて いるほか、PRTR 制度の制定によって第一種指定化学物質 354 種(平成 23 年より 462 種) の排出・移動については事業所が年に 1 回の届出が義務付けられるようになった22)。また、

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入口規制である化審法でも水生生物に対する生態毒性試験が義務付けられたほか、後述す る水質環境基準にも水生生物保全を目的とした全亜鉛の項目が追加されている。 2.1.2 わが国の水質環境基準の現状 現在、わが国の水環境管理では、水質汚濁防止法に基づいて汚水を排出する施設(特定 施設)を設置する工場・事業場(特定事業場)から公共用水域へ排出される排出水に対し て、排 出基 準が定 めら れてい て、 適合し ない 排水を 排出 した場 合は 水質汚 濁防 止法第 12 条第 1 項に基づき、懲役 6 ヶ月以下の懲役または 50 万円以下の罰金という直罰制度になっ ている。一方で、公共用水域に対しては、行政目標として「維持されることが望ましい基準」 である水質環境基準が設定されている。その内訳としては、表 2.2 に示す人の健康の保護 に関する環境基準(健康項目)として水銀やカドミウムなど 27 項目、ならびに要監視項目 26 項目が全国一律で指定されている。一方、表 2.3 に示す生活環境の保全に関する環境基 準(生活環境項目)については、水道用水、工業用水、水産、水浴、農業用水などの水域 の利用目的に応じて、AA から E までの 6 段階に分けて、水素イオン濃度(pH)や生物化学 的酸素要求量(BOD)など 10 項目について設定されている。前述したように、平成 15 年に 水生生物保全を目的とした全亜鉛が項目に追加され、ノニルフェノールについても追加予 定であることなど、現時点でいくつかの物質について水生生物保全など様々な観点から改 正に関する検討が進められている。 表 2.2 わが国の水質環境基準(健康項目)21) 有害物質の種類 許容限度 カドミウム 0.003 mg/L 全シアン 検出されないこと 鉛 0.01 mg/L 六価クロム 0.05 mg/L 砒素 0.01 mg/L 総水銀 0.0005 mg/L アルキル水銀 検出されないこと ポリ塩化ビフェニル(PCB) 検出されないこと ジクロロメタン 0.02 mg/L 四塩化炭素 0.002 mg/L 1,2-ジクロロエタン 0.004 mg/L 1,1-ジクロロエチレン 0.1 mg/L シス-1,2-ジクロロエチレン 0.04 mg/L 1,1,1-トリクロロエタン 1 mg/L 1,1,2-トリクロロエタン 0.006 mg/L トリクロロエチレン 0.03 mg/L テトラクロロエチレン 0.01 mg/L 1,3-ジクロロプロペン 0.002 mg/L チウラム 0.006 mg/L シマジン 0.003 mg/L チオベンカルブ 0.02 mg/L ベンゼン 0.01 mg/L セレン及びその化合物 0.01 mg/L 硝酸および亜硝酸 10 mg/L ほう素及びその化合物 0.8 mg/L ふっ素及びその化合物 1 mg/L 1,4-ジオキサン 0.05 mg/L

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表 2.3 わが国の河川に対する水質環境基準(生活環境項目)21) 項目 類型 利用目的の 適応性 基準値 水素イオン濃度 (pH) 生物化学的酸素 要求量(BOD) 浮遊物質量 (SS) 溶存酸素量 (DO) 大腸菌群数 AA 水 道 1 級 自 然 環 境 保 全 及 び A 以 下 の 欄 に 掲 げ る も の 6.5 以上 8.5 以下 1 mg/L 以下 25 mg/L 以下 7.5 mg/L 以上 50MPN/ 100mL 以下 A 水 道 2 級 水 産 1 級 水 浴 及 び B 以 下 の 欄 に 掲 げ る も の 6.5 以上 8.5 以下 2 mg/L 以下 25 mg/L 以下 7.5 mg/L 以上 1,000MPN/ 100mL 以下 B 水 道 3 級 水 産 2 級 及 び C 以 下 の 欄 に 掲 げ る も の 6.5 以上 8.5 以下 3 mg/L 以下 25 mg/L 以下 5 mg/L 以上 5,000MPN/ 100mL 以下 C 水 産 3 級 工 業 用 水 1 級 及 び D 以 下 の 欄 に 掲 げ る も の 6.5 以上 8.5 以下 5 mg/L 以下 50 mg/L 以下 5 mg/L 以上 − D 工 業 用 水 2 級 農 業 用 水 及 び E の 欄 に 掲 げ る も の 6.0 以上 8.5 以下 8 mg/L 以下 100 mg/L 以下 2 mg/L 以上 − E 工 業 用 水 3 級 環 境 保 全 6.0 以上 8.5 以下 10 mg/L 以下 ご み 等 の 浮 遊 が 認 め ら れ な い こ と 。 2 mg/L 以上 − 項目 類型 水生生物の生息状況の適応性 基準値 全亜鉛 生物A イワナ、サケマス等比較的低温域を好む水生生物及びこれらの餌生 物が生息する水域 0.03mg/L 以下 生物特A 生物Aの水域のうち、生物Aの欄に掲げる水生生物の産卵場(繁殖 場)又は幼稚仔の生育場として特に保全が必要な水域 0.03mg/L 以下 生物B コイ、フナ等比較的高温域を好む水生生物及びこれらの餌生物が生 息する水域 0.03mg/L 以下 生物特B 生物A又は生物Bの水域のうち、生物Bの欄に掲げる水生生物の産 卵場(繁殖場)又は幼稚仔の生育場として特に保全が必要な水域 0.03mg/L 以下 しかし なが ら、わ が国 の環境 基本 法の目 的に は、「人 の 健康の 保護 」と「 生活 環境の保 全」は含まれているが、「水生生物など生態系の保護」という概念が含まれていないてん根 本的問題は解消されていない。水生生物保全のための全亜鉛の項目もあくまでも生活環境 項目の一つとして組み込まれている点がポイントである。また、表 2.2 に示すように個別 物質の基準は 27 項目に限られており、現在使われている化学物質が数万物質とも言われて いる中で、事業者の自主管理対象になっている PRTR 法の第 1 種指定化学物質 462 種を含 めたとしても、まだまだ未知の物質が存在して人の健康・水生生物の生息・繁殖に影響を 及ぼす可能性があることが指摘されている。そういった観点から、環境省における「今後 の水環境保全の在り方について」の検討会が実施され、その取りまとめ 23)の中でも、底層 DO、透明度、大腸菌等の国民の実感に合った環境基準設定を目指すことと合わせて、水環 境全体のリスク低減を図る手法として、現在の枠組みを補完する役割として生物応答を利

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用した排水・環境水管理手法(Whole Effluent Toxicity:WET 手法)の有効性検討が挙げら れている。実際、環境省としても平成 21 年度からその検討を開始しており、制度・運用、 技術面双方で詳細な検討が行われている 6,7)。 2.2 諸外国でのバイオアッセイを用いた水環境評価・管理の例 2.2.1 北米 米国では、戦後の 1950 年代から 60 年代における急激な鉱工業や農業の高度化に伴って 全国的に水質汚濁が深刻になっていく中で、ミシガン州やカリフォルニア州などの州レベ ルで排水や環境水のモニタリング手法としてバイオアッセイが用いられるようになった。 米国連邦政府は 1972 年に Water Quality Act(水質法)、1977 年に Clean Water Act(水浄化 法)を制定し、環境保護庁(USEPA)では「fishable and swimmable (魚釣りをしたり泳いだ りすることのできる)」な水環境を復元するため、汚濁物質排出削減計画(NPDES)を導入し て毒性物質の排出抑制と水質基準の設定を実施してきた 24)。1980 年代当初に事業所排水や 下水処理水に適用された毒性試験の結果、多くの排水中に毒性影響が観察されることがわ かったために、1985 年に USEPA は正式に Whole Effluent Toxicity(全排水毒性または全排 水影響)試験を導入することとして、「水質に基づく毒性制御の技術指針文書」(TSD) を発行して、WET が米国全体に広がった25,26)。その位置づけは、個別物質の化学分析によ る評価や、生物相調査を補完するという役割であり、いずれが欠けても毒性物質の有効な 削減はできない。その後、様々な試験方法や導入方法に関する詳細なレビューを実施し、 1995 年には WET 試験方法が公布されて、2002 年に現在の改訂版 25)が公布されて排水や放 流先河川、ならびに一般の河川のバイオモニタリングに広く用いられている。 図 2.1 効果的な水環境中からの毒性物質削減のためのアプローチ27) 試験法については、表 2.4 に記載されているように、淡水と海水について、急性と短期 慢性毒性試験がそれぞれ記載されているが、近年は急性試験での影響が検出されないこと や排水工程では海水よりも淡水が多いことから、ほとんどの州では淡水の短期慢性試験で

個別化学物質

(化学分析)

WET手法

(バイオアッセイ)

生態学的評価

(生物相調査)

○ヒト健康保護 △毒性学的作用機序 ×生物利用可能性 ×物質間相互作用 ○毒性把握 ○未知物質に対処 ×ヒト健康保護 ×環境中での残留・蓄積性 ○実際の影響測定 ○未知発生源の影響検知 ×流量影響 ×原因同定

個別化学物質

(化学分析)

WET手法

(バイオアッセイ)

生態学的評価

(生物相調査)

○ヒト健康保護 △毒性学的作用機序 ×生物利用可能性 ×物質間相互作用 ○毒性把握 ○未知物質に対処 ×ヒト健康保護 ×環境中での残留・蓄積性 ○実際の影響測定 ○未知発生源の影響検知 ×流量影響 ×原因同定

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ある No.1000.0∼1003.0 にあたるニセネコゼミジンコ(Ceriodaphnia dubia)の繁殖阻害試験 およびファットヘッドミノー(Pimephales promelas)の胚・仔魚期試験、さらには単細胞緑藻 のムレミカヅキモ(Pseudokirchneriella subcapitata)が用いられることが多い。 表 2.4 米国 EPA に承認されている WET 試験方法 25,27) EPA No. 供試生物 エンドポイント 淡水生物,急性 2002.0 ニセネコゼミジンコ (Ceriodaphnia dubia) 致死 2021.0 オオミジンコ(Daphnia magna)ほか 致死 2000.0 ファットヘッドミノー (Pimephales promelas)ほか 致死 2019.0 ニジマス(Oncorhynchus mykiss)ほか 致死 海水生物,急性 2007.0 アミ(Americamysis bahia) 致死 2004.0 シープヘッドミノー(Cyprinodon variegatus) 致死 2006.0 トウゴロウイワシ(Menidia beryllina) 致死 淡水生物,慢性 1000.0 ファットヘッドミノー (Pimephales promelas) 胚生存、成長 1001.0 ファットヘッドミノー (Pimephales promelas) 胚・稚魚生存・奇形 1002.0 ニセネコゼミジンコ (Ceriodaphnia dubia) 繁殖阻害、致死 1003.0 緑藻類(Pseudokirchneriella subcapitata) 生長阻害 海水生物,慢性 1004.0 シープヘッドミノー(Cyprinodon variegatus) 胚生存、成長 1005.0 シープヘッドミノー(Cyprinodon variegatus) 胚・稚魚生存・奇形 1006.0 トウゴロウイワシ(Menidia beryllina) 胚生存、成長 1007.0 アミ(Americamysis bahia) 成長、産仔数 1008.0 ウニ(Arbacia punctulata) 繁殖阻害 米国ではこの WET 手法を放流先河川や流域での毒性物質管理に利用しているケースも 多い。たとえば、カリフォルニア州では、殺虫剤等の農薬が河川水のニセネコゼミジンコ やヨコエビ(Hyallela azteca)に対する毒性に大きく寄与することがわかり、その制御に有効 活用されている 28, 29)。また、同州では、農薬類のほか、雨天時流出水の毒性原因の推定30) などにも広く利用されている。 一方、同じ北米のカナダでも、古くから排水や環境水のバイオモニタリングによって毒 性物質の制御が行われてきた。カナダの特徴は、漁業法によって、漁業資源の保護のため に魚類(ニジマス)を用いた毒性試験が排水規制に導入された点と、毒性物質を排出する 業種として紙パルプ業と金属鉱業に絞られている点 31)である。また、カナダ政府やケベッ ク州政府がセントローレンス川流域の生態系を保全するために「セントローレンス川アク ションプラン(行動計画)」を 1988 年に作成し、その第一目標として「流域にある 50 事業 所排水中の有害物質量を 90%削減すること」を掲げ、有害物質を評価する指標としてバイ オアッセイが用いられてきたという点 32)も興味深い。またさらに、特徴的なのは、カナダ 環 境 庁 ( Environment Canada) が 1999 年 に 作 成 し た 環 境 影 響 評 価 (Environmental Effect Monitoring)の枠組みであり、バイオアッセイによる排水の評価・管理にとどまらず、放流 先の魚類の生殖腺や肝臓への影響調査や底生生物の生物相調査を含む詳細なバイオモニタ リングが全業種に義務付けられている点 33,34)であり、バイオアッセイによるモニタリング の先を行く先進的取り組みといえる。

2.2.2 欧州

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に基づいて、EU 加盟各国が 2015 年までに水質目標を達成するために必要な各河川流域の 管理計画と対策計画を作成できるように、大規模な水質モニタリングプログラムを実行す ることを義務付けている 35)。このプログラムの中では、化学的だけでなく生物学的に良好 な水質を維持するために、規制やモニタリングを目的として以前よりも頻繁にバイオアッ セイが使われるようになってきた 36)。しかしながら、北米と異なり欧州各国の中で、バイ オアッセイを恒常的に法規制に取り入れているのはドイツとフランスに留まる 32)。 ドイツでは、排水令によって個別の化学物質に対する規制を補完する目的で全排水に対 する毒性試験を義務付けており、1976 年から魚類・ミジンコ・藻類・発光バクテリアなど を用いた急性・慢性試験のほかに、変異原性試験(umu テスト)などを公定法に定めて(表 2.5)実施されてきた。特に魚類(Leudiscus idus: コイ科の一種)の急性試験結果に応じて 課徴金が課せられることになっている 32)。 表 2.5 ドイツの排水令で用いられる事業所排水に対する毒性試験法 32, 41) 供試生物 時間 エンドポイント 魚類(コイの一種)Leudiscus idus 48 h 致死 ミジンコ Daphnia magna 24 h 遊泳阻害 細菌 Vibrio fischeri (発光細菌試験) 0.5 h 発光阻害 藻類 Scenedesmus subspicatus 72 h 生長阻害(バイオマス) 変異原性 Salmonella typhimurium (umu テスト) 2 h フランスでは、同様に魚類・ミジンコ・藻類、バクテリアを使った急性・慢性試験が採 用されているが、通常はモニタリングに用いられることが多く、認可時に一部使われるレ ベルである。ただ、フランスでは、ミジンコの急性毒性試験結果が他の一般的な水質項目 とともに課税の基準として用いられているのが特徴である 32)。他にはノルウェーなどで一 部規制に用いられているほかは、英国、オランダ、スペイン、ベルギー、デンマーク、ス ウェーデン等の EU 加盟諸国でバイオアッセイはモニタリングツールとして広く使われて いるものの、直接排水規制に用いられることは少ない 36)。 なお、研究ツールとしてバイオアッセイを河川水等に利用した例としては、ニセネコゼ ミジンコの繁殖試験をイタリアのポー川流域の評価に利用された報告 37)、ライン川流域の オ オミ ジ ン コ 等の バ イ オ アッ セ イ 結 果と 毒 性 物 質濃 度 を 比 較検 討 し た 例 38)な ど 数多 く 存 在する。一方、英国では河川中のローチ等の魚が主にメス化等の性ホルモンかく乱を引き 起こしていることが大きな話題になっており、詳細なバイオモニタリング調査も実施され ている 39,40)。 2.2.3 アジア・オセアニア オーストラリアでは州が、ニュージーランドでは国家が権限を持っているという違いは あるが、ともに事業所排水の放流先河川の状況に応じて、柔軟に放流先でのバイオモニタ リングから、排水許可申請時でのバイオアッセイの利用などが課せられている 36)。また、 オーストラリアにおいては、ニセネコゼミジンコを用いたバイオアッセイによる流域管理

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が米国 WET 導入の 1990 年代後半から利用されているなど、水環境管理への経験も深い42)。 アジア諸国には途上国が多く、排水規制や水質基準の整備が進んでいない国が多い。そ の中で、隣国の韓国環境省は 2006 年から 10 年間の水環境管理マスタープラン43)を作成し、 「Clean Water, Eco River 2015」をスローガンに排水規制などの抜本的見直しを実施してき た。そのプロセスにおいて生物影響を水質環境基準に盛り込み、その評価手法としてオオ ミジンコを用いた急性毒性試験(24 時間)が簡便で有効であるとして、2011 年から導入し て効果を挙げている 44)。また、オオミジンコを利用した事業所排水や下水放流水の放流先 河川での評価に関する研究も広く行われている 45)。そのほかでは、中国南部の経済発展が 目覚しい珠江デルタ流域においても、毒性物質の同定手法として一部バイオアッセイが利 用されている 46)。 2.3 国内での水環境評価・管理へのバイオアッセイ適用事例 一方、国内での水環境評価・管理へのバイオアッセイの適用例はこれまであまり多くな かった。最も古い研究例としては、山口大学の浮田ら 47)が、1970 年代に瀬戸内海西部の工 場排水をウニやモノアラガイの卵やメダカを用いて評価している。その後の主な研究につ いては第 1 章で簡単に紹介したが、ここに再度要点を紹介しておく。バイオモニタリング に関する研究の先駆者になったのが、国立環境研究所の畠山博士や菅谷博士らで、1980 年 代後半から 1990 年代前半にかけて霞ヶ浦に流れ込む河川水のウキクサやヌカエビに対す る毒性影響と、農薬類の寄与について詳細なフィールド調査と実験室内研究を実施して成 果を挙げている 11,12,48-50)。富山県立大学の楠井先生らのグループは、1990 年代初頭に富山 県内の神通川流域の 18 箇所の一般事業所と 2 箇所の下水処理放流水の計 20 箇所の排水に 対してメダカ、ミジンコ、藻類、発光細菌、ヒドラなどを用いて急性毒性で評価している 10)。その結果、調査した事業所のうち 17 箇所から何らかの毒性影響が検出されたと報告し ている。 1990 年代には多くの研究者が水道原水としての河川水や下水処理場の処理水の中に含 まれる変異原性に着目し、in vitro の系で研究をおこなってきた。横浜国立大学の浦野先生 ら 51,52)は、Ames 試験や umu 試験を固相抽出カートリッジなどで濃縮した下水処理水など に対して適用し、変異原性を検出している。その後、亀屋先生らとともに、同様に相模川 等の河川水を濃縮して水生生物 3 種のバッテリーを用いた急性毒性試験で評価をおこなっ ている 14,15)ほか、メダカの行動監視によるバイオモニタリングも提案している53)。 ほかにも、岡山大学の青山先生らは、児島湾に流れ込む農業排水にバイオモニタリング を行ったり 13)、滋賀県立大学の須戸先生らとの共同でミジンコ致死影響試験を適用したり する 54)など、広くバイオモニタリング手法の普及に貢献してきた。当時、同じ岡山大学の 小野先生も廃棄物埋立処分場浸出水の評価にメダカを用いた成果を発表 55)している。また、 神奈川工科大学の菊地先生らも、古くからミジンコ遊泳阻害試験を用いて中川などの首都 圏河川や利根川上流のバイオモニタリングを実施して報告 16,17)している。近年では、国立 環境研究所の白石博士らが組み換え酵母を使って女性ホルモン様作用などの内分泌かく乱 に着目して河川水の調査・研究をしているという例 56)も見られる。

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最後に、同じ国立環境研究所の鑪迫博士らは、長く製紙・パルプ排水やその放流先のバ イオアッセイに着目し、北米の例などを参考に様々な工場で毒性削減評価なども実施して きた 57)。現在も事業所排水に様々なバイオアッセイを適用する事例 9,58,59)に深く関与して おり、近年は米国の Whole Effluent Toxicity (WET)の制度を日本に広く紹介するなど60)、ま さに WET に関する第一人者となっている。平成 21 年度からは上記の韓国の事例なども後 押しして、環境省による検討委員会(座長:須藤隆一先生)がようやく開催されるなど、 本格的な検討がおこなわれている。 2.4 米国の WET 手法の概要 2.4.1 WET 試験方法の概要 先述したように、米国の WET 試験は 1985 年に導入が開始され、USEPA によりガイダン ス文書が発行された。その後、改正等が加えられ、現在使われているのは 2002 年に発行さ れたガイダンス文書 25)に基づくものである。WET 試験法の概要については先に解説した (表 2.4)ので省略するが、特徴として急性毒性試験に加えて亜慢性毒性試験を基本にし ていること、ミキシングゾーンの考え方を導入していること、直罰性ではないこと、毒性 削減評価(TRE)や毒性同定評価(TIE)などを実施することなどがある 9,60)。ミキシングゾー ンについては、平成 21 年度の報告書 8)を参考されたい。TRE/TIE については、本研究課題 と直接関係ないが、以下に簡単に説明だけ加える。 2.4.2 毒性削減評価(TRE)と毒性同定評価(TIE) 米国において WET 試験を導入して排水の判断基準を設定した場合、基準を超過する排 水はその毒性の削減が義務付けられる。EPA によって、その際の一連の手順が毒性削減評 価(TRE : Toxicity Reduction Evaluation)として示されている。また、TRE の中で特に毒性原 因物質を探索する手法が毒性同定評価(TIE : Toxicity Identification Evaluation) と呼ばれる。 TRE は「排水の毒性原因の特定、発生源の分離、毒性制御のための代替法の効率的評価、 排水の毒性削減効果の確認を目的として段階的に実施される発生源を対象とした一連の調 査」と定義される。EPA の指針文書 26,61)によると、図 2.2 のように段階 1 から段階 6 まで の段階的なアプローチをすることになっている。一方、TIE は排水毒性の原因物質(群)を 探索する一連の手順であり、①毒性物質特徴化、②毒性物質同定、③毒性物質確認という 3 つのフェーズから構成される。

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図 2.2 段階的 TRE(毒性低減評価)・TIE(毒性同定評価)のフロー図 27) 毒性削減評価(TRE) データ収集 流入・流出水の 監視データ 施設および プロセス概要 使用化学物質の評価 施設の運転管理方法の評価 処理システムの評価 毒性の削減 はできたか? フォローアップと確認 YES 毒性同定評価(TIE) 毒性発生源調査 NO 最終流出水の 処理評価 WET試験にて毒性確認 発生源制御/処理 プロセス流出水の 評価 使用化学物質の評価 毒性削減方法評価 フォローアップと確認 1. 毒性物質の特徴化 2. 毒性物質の同定 3. 毒性物質の確認 毒性原因物質 アプローチ 毒性処理 アプローチ 第 1段階2段階3段階4段階5段階6段階 毒性削減評価(TRE) データ収集 流入・流出水の 監視データ 施設および プロセス概要 使用化学物質の評価 施設の運転管理方法の評価 処理システムの評価 毒性の削減 はできたか? フォローアップと確認 YES 毒性同定評価(TIE) 毒性発生源調査 NO 最終流出水の 処理評価 WET試験にて毒性確認 発生源制御/処理 プロセス流出水の 評価 使用化学物質の評価 毒性削減方法評価 フォローアップと確認 1. 毒性物質の特徴化 2. 毒性物質の同定 3. 毒性物質の確認 毒性原因物質 アプローチ 毒性処理 アプローチ 第 1段階2段階3段階4段階5段階6段階

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3. 実験方法

3.1 本研究で使用した試薬・器具 3.1.1 本研究で使用した試薬 本研究で用いた試薬の品目をそれぞれの用途、製造元、純度・グレードを表 3.1 に示す。 本研究では、藻類用の培地、参考として残留塩素、窒素、リンなどを測定した際に試薬を 用いた。用いた試薬の大半は特級もしくは同等のグレードのものを和光純薬工業(Osaka、 Japan)から購入して使用した。 表 3.1 本研究で用いた試薬 品名 用途 グレード 製造元 純度 MgCl2・6H2O 藻類培地用 試薬特級 Wako 98.0% CaCl2・2H2O 藻類培地用 試薬特級 Wako 99.0∼103% NaNO3 藻類培地用 試薬特級 Wako 99.0% MgSO4・7H2O 藻類培地用・ミジンコ 硬度添加水用 試薬特級 Wako 99.5% K2HPO4 藻類培地用 試薬特級 Wako 99.0% NaHCO3 藻類培地用・ミジンコ 硬度添加水用 試薬特級 Wako 99.5∼ 100% H3BO3 藻類培地用 試薬特級 Wako 99.5% MnCl2・4H2O 藻類培地用 試薬特級 Wako 99.0% ZnCl2 藻類培地用 試薬特級 Wako 98.0% FeCl3・6H2O 藻類培地用 試薬特級 Wako 99.0% CoCl2・6H2O 藻類培地用 試薬特級 Wako 99.0% Na2MoO4・2H2O 藻類培地用 試薬特級 Wako 99.0% CuCl2・2H2O 藻類培地用 試薬特級 Wako 99.0% Na2EDTA・2H2O 藻類培地用・アンモニ ア性窒素測定用 試薬特級 Dojindo 99.5% Na2SeO4 藻類培地用 和光一級 Wako 97.0% CaSO4・2H2O ミジンコ硬度 添加水用 試薬一級 Wako KCl ミジンコ硬度 添加水用 試薬特級 Wako >99.5% NaCl 魚類エサ(アルテミ ア)孵化用 日本薬局方 Kanto >99.5% ニトロプルシドナトリ ウム Na2Fe(CN)5NO・ 2H2O アンモニア性窒素 測定用 試薬特級 Wako >99% クエン酸ナトリウム Na3C6H5O7・2H2O アンモニア性窒素 測定用 試薬特級 Wako >99% Na3PO4・12H2O アンモニア性窒素 測定用 試薬特級 Wako >99% フェノール(C6H5OH) アンモニア性窒素 測定用 試薬特級 Wako >99% NH4Cl アンモニア性窒素 測定用 試薬特級 Nacalai >98.5% NaOH アンモニア性窒素 測定用 試薬特級 Wako 97% NaClO アンモニア性窒素 測定用 化学用 Wako >5% as Cl

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3.1.2 本研究で使用した実験器具 本研究で用いた器具については、表 3.2 に示す通りである。藻類を用いた生長阻害試験 での細胞数は、分光光度計(U-2001、HITACHI)を使って求められる吸光度と細胞数を生 物顕微鏡と血球計算盤を用いて目視で計数した値で校正して用いた。また、藻類の飼育に は照明付インキュベーター(FLI-160 型)および振とう器(MMS-110 型)(ともに東京理化 機器株式会社 EYELA 社製)を用いた。その他、飼育方法や試験手順の詳細については後 述する。 表 3.2 本研究で用いた実験器具 品名 用途 規格ほか メ ン ブ レ ン フ ィ ル ター 藻 類 生 長 阻 害 試 験 前 処 理 ・ 滅菌用 ミニザルト RC15 孔径 0.2 µm 三角フラスコ 藻類生長阻害試験用 IWAKI,100 mL シリコ栓 藻類生長阻害試験用 ASONE, C-30 往復振とう器 藻類生長阻害試験用 東京理化機器製 MMS-110 照 明 付 イ ン キ ュ ベ ーター 藻類生長阻害試験用 東京理化機器製 FLI-160 トーマ血球計算盤 藻類細胞数測定用 エルマ販売株式会社製 スナップカップ ミジンコ繁殖試験用 マルエム No.40 ライトビューアー ミジンコ繁殖試験用 Hakuba 7000Pro スナップカップ 魚 類 胚 仔 魚 期 短 期 毒 性 試 験 用 マルエム No.50 生物顕微鏡 藻類細胞数測定用ほか カートン光学 CBZ-300 粒状活性炭 飼育水製造 三菱カルゴン社製 F300 活 性 炭 カ ー ト リ ッ ジ 飼育水製造 環境テクノス社製 円 筒 型 ポ リ プ ロ ピ レンカートリッジ 飼育水製造 Advantec 社製孔径 1.0 µm UV ランプ 飼育水製造 環境テクノス社製 オーブン 飼育水製造用活性炭精製用 ADVANTEC,FS-620 ガ ラ ス 繊 維 ろ 紙 GF/F 飼育水ほかのろ過 Whatman 社製平均孔径 0.7 µm 高圧蒸気滅菌器 藻類生長阻害試験用 TOMY BS-245 分光光度計 藻類細胞数測定用ほか HITACHI,U-2001 Direct-Q 超純水製造装置 MILLIPORE,ZRQS7005Y pH・DO メーター 現地水質測定・BOD 測定用 HORIBA,D-55

ポ ー タ ブ ル DO/ 電 気伝導度計 現地水質測定用 HACH, HQ-40d 3.2 一般水質項目の測定方法 3.2.1 pH、 DO、 水温、電気伝導度 一般的な水質項目についてはポータブル水質計を用いておこなった。pH は HORIBA 製 の D-55 を、DO、 水温、電気伝導度は HACH 社製の HQ40d18 を用いて放流先河川もしく は排水の採取時に測定した。なお、河川の流量については、国土交通省の水文水質データ ベース 62)をもとに、水位と流量の関係式を各地点で求め、リアルタイム水位データを流量 に換算した。

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3.2.2 BOD・アンモニア性窒素 BOD などは環境基準点であることから、国土交通省が毎年前年度の月に 1 度の測定値の 平均値と 75 パーセント値を公表している 17)ので、それを参考にした。また、参考のため にアンモニア性窒素をインドフェノール青法 63)を利用して測定した。簡単に説明すると、 リン酸ナトリウムとクエン酸ナトリウム溶液中にニトロプルシドナトリウム・フェノール 溶液を入れて発色し、635 nm の吸収波長で分光光度計を用いて測定した。なお、標準溶液 は塩化アンモニウム溶液を利用した。 3.3 河川水試料の採取 3.3.1 採取地点の選定 まず、予備試験については、研究代表者の所属機関から近い環境基準点である吉野川高 瀬橋(徳島県石井町)ほか、吉野川水系宮川内谷川の矢武大橋(徳島県上板町)、同飯尾川 の加茂野橋付近(徳島市)、同田宮川の蔵本公園付近(徳島市)などとした。本試験につい ては、北海道から九州まで、主に利用人口の多い水系を中心に選定をおこない、国土交通 省の全国一級河川の BOD 値を示す地図 17)を参考に 30 地点から採取し、そのうち 27 地点 から有効な結果が得られた。採取地点の位置を表す地図を図 3.1 に示す。また、採取地点 付近の写真を地方ごとに図 3.2∼3.9 に示す。 図 3.1 対象とした全国一級河川の採水地点の位置17) 石狩川・石狩大橋 茨戸川・樽川と の合流地点 北上川・狐禅寺 吉田川・鹿島台 広瀬川・三橋 阿武隈川・黒岩 利根川・水郷大橋 利根川・栗橋 綾瀬川・内匠橋 荒川・笹目橋 多摩川・田園調布堰 矢作川・米津大橋 庄内川・枇杷島橋 木曽川・濃尾大橋 琵琶湖・ 愛知川沖 野洲川・服部大橋 桂川・宮前橋 吉野川・ 高瀬橋 那賀川・ 那賀川橋 土器川・ 丸亀橋 芦田川・ 山手橋 太田川・ 玖村 緑川・ 上杉堰 重信川・ 出合橋 遠賀川・ 日の出橋 筑後川・ 瀬の下 淀川・枚方大橋 大和川・ 浅香取水口 猪名川・ 利倉 加古川・ 国包 飯尾川・ 加茂野橋 石狩川・石狩大橋 茨戸川・樽川と の合流地点 北上川・狐禅寺 吉田川・鹿島台 広瀬川・三橋 阿武隈川・黒岩 利根川・水郷大橋 利根川・栗橋 綾瀬川・内匠橋 荒川・笹目橋 多摩川・田園調布堰 矢作川・米津大橋 庄内川・枇杷島橋 木曽川・濃尾大橋 琵琶湖・ 愛知川沖 野洲川・服部大橋 桂川・宮前橋 吉野川・ 高瀬橋 那賀川・ 那賀川橋 土器川・ 丸亀橋 芦田川・ 山手橋 太田川・ 玖村 緑川・ 上杉堰 重信川・ 出合橋 遠賀川・ 日の出橋 筑後川・ 瀬の下 淀川・枚方大橋 大和川・ 浅香取水口 猪名川・ 利倉 加古川・ 国包 飯尾川・ 加茂野橋

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図 3.2 に写真を示すように、北海道からは利用人口の多い石狩川水系本流の代表的環境 基準点である石狩大橋付近(北海道江別市)と、その派流の茨戸川の樽川との合流地点(北 海道石狩市)の 2 地点とした。前者は周辺に製紙工場が立地しており、河口からの距離が 十分(30 km 以上)であるために感潮域ではないと仮定して選定したが、感潮する場合もある ことがわかっている。後者は札幌市ほかの下水放流水の寄与が大きく、BOD 年平均値が北 海道内でも最も高い地点の一つである。 図 3.2 北海道地方の採水地点付近の写真(左から茨戸川、石狩川) 東北は、図 3.3 に示すように仙台から比較的アクセスしやすい北上川の狐禅寺付近(岩 手県奥州市)、鳴瀬川水系吉田川の鹿島台付近(宮城県松島町)、名取川水系広瀬川の三橋 水道橋付近(宮城県仙台市若林区)、阿武隈川の黒岩付近(福島県福島市)の 4 地点とした。 北上川と阿武隈川は太平洋側に注ぎ込む東北の二大河川であり、それぞれ岩手県と福島県 の 人 口 が 集 ま る 地 帯 か ら 宮 城 県 に 流 れ 込 む 。 吉 田 川 は 比 較 的 こ の 付 近 の 一 級 河 川 の 中 で BOD が高いことから選定した(日没後に撮影したため鮮明な写真は撮れず)。広瀬川につ いては、言うまでもなく仙台市で利用され、その下水放流水の一部が流れ込む河川である。 図 3.3 東北地方の採水地点付近の写真(左から北上川、広瀬川、阿武隈川) 関東地方は図 3.4 に示すように利根川の水郷大橋(千葉県香取市)と栗橋(埼玉県久喜 市・茨城県古河市)、利根川水系綾瀬川の内匠橋付近(東京都足立区)、荒川の笹目橋付近 (東京都練馬区・埼玉県和光市)、多摩川の田園調布堰付近(東京都世田谷区・神奈川県川 崎市)の 5 地点とした。利根川水系は首都圏の主要な河川で、言うまでもなく利用人口の 最も多い河川の一つであり、その代表的な環境基準点 2 つを選定した。また、綾瀬川は BOD のワーストであった時期が多いことから選定したほか、利根川と並んで利用人口が多く、 自流に対する下水の比率が非常に高い河川として有名な多摩川の代表的な環境基準点であ

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る田園調布堰も選定した。合わせて、埼玉県の代表的河川で BOD 等の汚染度の高い荒川 も選定した。 図 3.4 関東地方の採水地点付近の写真(上段左から利根川水郷大橋、利根川栗橋、綾瀬川、 下段左から荒川、多摩川) 中部地方は図 3.5 に示すように名古屋市から比較的アクセスしやすい木曽川の濃尾大橋 付近(愛知県一宮市)、庄内川枇杷島橋付近(愛知県清洲市)、矢作川米津大橋付近(愛知 県西尾市)の3地点とした。木曽川は東海地方を代表する木曽三川のうち最も延長が長く、 流域面積も大きい代表的河川であることから選定した。名古屋市近郊での利用人口が多く 汚染度の高い庄内川、ならびに三河地方での利用人口が多い矢作川を合わせて選定した。 図 3.5 中部地方の採水地点付近の写真(左から木曽川、庄内川、矢作川) 近畿地方は図 3.6 に示すように琵琶湖・淀川水系の野洲川の服部大橋付近(滋賀県野洲 市)、琵琶湖の愛知川沖付近(滋賀県東近江市)、桂川の宮前橋付近(京都市伏見区)、淀川 の枚方大橋付近(大阪府枚方市)の 4 地点ならびに同じ淀川水系の猪名川の利倉付近(兵 庫県尼崎市)、大和川の浅香取水口付近(大阪府堺市)、加古川の国包付近(兵庫県加古川 市)とした。琵琶湖に注ぎ込む河川と琵琶湖の環境基準点の 1 地点を選定するとともに、 京都市およびその近郊の下水放流水の寄与が懸念される桂川の宮前橋付近と、京都・大阪

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の中間で水道への取水と下水の放流が連続する地域に位置する枚方大橋付近でも採取した。 図 3.6 近 畿地方の採 水地点 付近 の写真(上 段左から琵琶湖、野洲 川、桂川、中 断段左から淀 川、猪名川、下段左から大和川、加古川) 中国・四国地方は図 3.7 に示す芦田川の山手橋付近(広島県福山市)と太田川の玖村付 近(広島市)、それに前述した吉野川の高瀬橋付近、図 3.8 に示す那賀川の那賀川橋付近(徳 島県阿南市)、土器川の丸亀橋付近(香川県丸亀市)、重信川の出合橋付近(愛媛県松山市) を合わせた 6 地点とした。広島県の 2 河川については、それぞれ福山市および広島市の中 心部を流れる一級河川であり、利用人口も多いことから選定した。なお、研究代表者の所 属機関から近い吉野川と那賀川のほか、香川県内の一級河川である土器川、四国一の都市 である松山市を流れる重信川でも採取した。 図 3.7 中国地方の採水地点付近の写真(左から芦田川、太田川)

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図 3.8 四 国地方の採 水地点 付近 の写真(上 段左から吉野川、那賀 川、下段左 から土器川 、重 信川) 最後に、九州については、図 3.9 に示す遠賀川の日の出橋付近(福岡県直方市)、筑後川 の瀬の下付近(福岡県久留米市)、緑川の上杉堰付近(熊本県熊本市)の 3 地点とした。遠 賀川は旧筑豊炭田を流れる河川で、北九州付近での利水が多い河川である。筑後川は工業 都市である福岡県久留米市や佐賀県鳥栖市などを流れて、有明海に注ぐ九州で最も流域面 積の大きい河川である。緑川は熊本市南部を流れ、比較的 BOD が高いことから選定した。 図 3.9 九州地方の採水地点付近の写真(左から遠賀川、筑後川、緑川) 3.3.2 水試料の採取と輸送・保存 水試料は、橋などがある場合は出来る限り流心に近い場所から採水用バケツもしくはや かんを共洗い後、十分量採取して泡立てないように静かにガロン瓶に目いっぱいまで入れ た。なお橋等がない場合は岸から採水容器をできるだけ遠くまで投げて、採水をおこなっ た。その後ガロン瓶は冷暗所で保存して、近くの宅配便営業所や郵便局等から徳島大学ま で冷蔵便で送付した。大学に到着後は速やかに冷蔵庫内において 4℃で保存し、使用直前 にガラス繊維ろ紙(Whatman 社製 GF/F, 孔径 0.7 μm)でろ過して試験に供した。

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3.4 供試生物の飼育方法 3.4.1 入手先

それぞれ、単細胞緑藻のムレミカヅキモ(Psedokirchneriella subcapitata、NIES-35 株)、 甲殻類のニセネコゼミジンコ(Ceriodaphnia dubia)、魚類のゼブラフィッシュ(Danio rerio) は、茨城県つくば市にある国立環境研究所内の藻類は微生物保存施設、他の 2 種は水生生 物飼育施設から有償で譲渡を受けた。これを徳島大学総合科学部の環境化学実験室内で少 なくとも3ヶ月以上継代飼育してから、実験に供した。 3.4.2 飼育水の製造方法 飼育水は、活性炭カートリッジ(環境テクノス社製)の後に直径 5 cm、長さ約 30 cm の アクリル製カラムに粒子状活性炭 F300 番(三菱化学カルゴン社製、Tokyo、Japan)を充填 して通水し、ポリプロピレン製円筒型のフィルター(Advantech 社製、孔径 1.0 µm)でろ 過し、最後に紫外線ランプ(環境テクノス社製)を照射する連続システムにおいて有機物 および塩素を除去したものを使用した。粒子状活炭は、1週間撹拌ながら蒸留水で汚れを 洗い落とし、揮発性の有害な有機物質を除去する為に 150℃のオーブンで乾燥させた後に 使用した。 3.4.3 飼育方法 まず、単細胞緑藻のムレミカヅキモ(Psedokirchneriella subcapitata)は、飼育・曝露の 際の培地として「USEPA WET テストメソッド No.1003.0」64)に記載されている組成を Milli Q(Direct-Q システム、日本ミリポア株式会社)で希釈して用いた。そして、照明付きイ ンキュベーター(東京理化器械社製 FLI-160)内を 24±1℃に設定し、5000 lx の連続照射で シリコセンで蓋をした 100 mL 三角フラスコ内でおよそ 4 日に 1 回の割合で継代培養した。 培地の組成を表 3.3 に示す。 表 3.3 藻類培地の組成64) ストック溶液 化合物名 500 mL の MilliQ 水に溶解する量 1. Macronutrients A MgCl2・6H2O 6.08 g CaCl2・2H2O 2.20 g NaNO3 12.75 g B MgSO4・7H2O 7.35 g C K2HPO4 0.522 g D NaHCO3 7.50 g 2. Micronutrients H3BO3 92.8 mg MnCl2・4H2O 208.0 mg ZnCl2 1.64 mg FeCl3・6H2O 79.9 mg CoCl2・6H2O 0.714 mg Na2MoO4・2H2O 3.63 mg CuCl2・2H2O 0.006 mg Na2EDTA・2H2O 150.0 mg Na2SeO4 1.196 mg

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ニセネコゼミジンコ(Ceriodaphnia dubia)は、親虫が体長 0.9∼1.0 mm、仔虫が体長 0.1 mm 程度の小型のミジンコで、化審法等の通常の化学物質の毒性試験に広く用いられてオ オミジンコ(Daphnia magna)よりかなり小さい。ニセネコゼミジンコはオオミジンコに比べ てライフサイクルが短く、比較的短期で慢性試験が実施できるという特長があるため、米 国 や カ ナ ダ に お い て は 重 宝 さ れ て い る 。 ニ セ ネ コ ゼ ミ ジ ン コ に は 1 日 に 1 度 、 約 0.1 mgC/day・匹の洗浄済みクロレラ(エコジェノミクス株式会社製、福岡県久留米市)と補 助飼料の YCT(Yeast-Cerophyl-Trout Chow の略で同じくエコジェノミクス株式会社)を与 えた 65)。なお、ニセネコゼミジンコは北米での環境に適合しており、硬度が 200 程度の硬 水を好む。国内では、このような硬度の河川水はないため、十分低硬度に馴化させる必要 がある。研究代表者が所属する徳島大学の施設では、飼育水の硬度が 40 程度であるため、 USEPA、3.4.2 節で述べた方法で作成した水に、「US-EPA WET テストメソッド No.1002.0」 65)に示す硬度調整水のストック(表 3.4)を脱イオン水から作成して硬度が 90 程度になる ように添加した。室内は年間を通じて 25±1℃に設定し、16 時間明、8 時間暗の周期になる ように室内照明を調節した。試験前にはスナップカップに入れてライトビューアーにかざ して産仔数を確認し、その数が比較的多いものを選別してシングルカルチャーを十分量作 成し、試験の準備をおこなった。 表 3.4 ミジンコ用硬度調整水の組成65)

Water Type Reagent added (mg/L) Approximate final Water Quality NaHCO3 CaSO4・2H2O MgSO4 KCl pH Hardness Alkalinity

Very soft 12 7.5 7.5 0.5 6.4-6.8 10-13 10-13 Soft 48 30 30 2.0 7.2-7.6 40-48 30-35 Moderately hard 96 60 60 4.0 7.4-7.8 80-100 57-64 Hard 192 120 120 8.0 7.6-8.0 160-180 110-120 Very hard 384 240 240 16.0 8.0-8.4 280-320 225-245 魚類は、米国で一般的なファットヘッドミノー(Pimephales promelas)や、日本など東アジ アで一般的なヒメダカ(Oryzias latipes)ではなく、欧州で一般的な東南アジア原産のゼブ ラフィッシュ(Danio rerio)を用いた。いずれも、OECD 指定魚種ではあるが、胚仔魚期の毒 性試験を短期間に実施するには、できるだけ孵化が早く、採卵が簡便な魚類が望ましい。 その観点からは、ゼブラフィッシュは孵化日数が 2∼3 日と、ファットヘッドミノー(4∼6 日)やヒメダカ(7∼10 日)に比べて格段に短いほか、ヒメダカのように排卵後に雌のお 腹に粘着糸で付着したものを取り外す必要もない。卵の共食いに注意する必要があるほか、 産卵サイクルを定期的に保つことができれば、十分な量の卵を一度に採取できる点も優れ ていることから、ゼブラフィッシュを選定した。 ゼ ブ ラ フ ィ ッ シ ュ の 餌 は ヒ メ ダ カ 同 様 に ブ ラ イ ン シ ュ リ ン プ (Artemia salina)の 耐 久 卵 を太平洋貿易株式会社(東京都)から購入し、2 L の 1.6%食塩水の中に約 2 g 入れて約 24 時間曝気・撹拌して孵化させて作成したものを 1 日 2 ないし 3 回給餌した。給餌量は孵化 したアルテミアを飼育水で洗浄後、200 mL の飼育水に再溶解させ、4 L の水槽に対してお よそ 10 mL 与えた。飼育施設は年間を通じて 25±1℃に設定し、16 時間明、8 時間暗の周期 になるように室内照明を調節した室内で継代飼育した。産卵ペアはオスとメスを隔離し、

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メスよりもやや若いオスとを 5 日に 1 度、夜の消灯前に覆いをしてペアリングし、次の日 の朝に覆いを取り除くことで光が刺激になって産卵を促した。水槽内にガラスビーズを敷 き詰めて親魚による受精卵の捕食を防ぎ、回収して実体顕微鏡下で状態がよく受精後 4 時 間以内の胚を選定し、試験に使用した。 以上の水生生物の飼育は USEPA のガイドラインの他に日本環境毒性学会編の『生態影 響試験ハンドブック』66)を参考にした。それぞれの種の写真 67,68)を以下の図 3.10 に示す。 図 3.10 本研究において利用した試験生物 (左からムレミカヅキモ、ニセネコゼミジンコ、ゼブラフィッシュ) 3.5 WET 手法の短期慢性試験手順 3.5.1 藻類生長阻害試験

藻類生長阻害試験は、USEPA WET テストメソッド「No.1003.0 Green Alga, Selenastrum Capricorntum, Growth Test」64)お よ び OECD テ ス ト ガ イ ド ラ イ ン No.201, Green Alga, Inhibition Test69)に準拠し、単細胞緑藻類のムレミカヅキモ(Psedokirchneriella subcapitata: 旧名が Selenastrum Capricorntum)を用いて、25℃に設定したインキュベーター内で連続照 射(照度 5000 lx)、往復振とう(120 rpm)で行なった。試験の初期細胞濃度は約 104 cells/mL に調整し、培地は US-EPA テストガイドライン No.100337)に記載されている培地を用いた。 公比は 2 で 3 濃度区(24∼97 %)各 3 連と blank の 6 連をシリコセンで蓋をした 100 mL 三角フラスコ内で行ない、24 時間ごとに分光光度計を用いて 450 nm の吸光度を測定する ことで細胞数を求めた。なお、前述したように藻類の細胞数は定期的に血球計算盤に一定 数に入れたものを生物顕微鏡で目視により計数し、換算を実施した。細胞数の増加率をも とに算出した blank の生長率曲線を基準として、各サンプル中の生長率の減少割合、つま り生長阻害率を求め、日本環境毒性学会が提供する解析ソフト Ecotox-Statics Ver.2.6(大分 大学の吉岡先生によって開発されたもの 70))を用いて 0h-72h の NOEC (最大無影響濃度) および EC10(10%影響濃度)を算出した。 3.5.2 ミジンコ繁殖阻害試験

ミジンコ繁殖阻害試験は、USEPA WET テストメソッド「No.1002.0 Daphnid, Ceriodaphnia dubia, Survival and Reproduction Test」65)と、Environment Canada「Test Method: Test of Reproduction and Survival Using the Cladoceran Ceriodaphnia dubia」71)、『生態影響試験ハン ドブック』日本環境毒性学会編66)に準拠し、ニセネコゼミジンコ(Ceriodaphnia dubia)を 用いて 25℃に設定した実験室で行なった。先に述べたようにニセネコゼミジンコは、オオ

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ミジンコ(Daphnia magna)と比べると、寿命が 3 週間と短い。今回は短期間で慢性影響の 評価ができる上、試験期間がオオミジンコに比べて短いためにサンプル劣化が防ぐことが できることからニセネコゼミジンコを供試生物として用いた。試験は、30 mL のスナップ カップを使用し、産仔数の多い生後 24 時間以内の仔虫を用いて公比 2 で希釈した河川水を 3 濃度区(25∼100 %)と blank を用意し、各 10 連を半止水式(2 日に 1 回全換水)で 8 日 間の曝露試験を行った。ニセネコミジンコは、生後 3∼4 日目から仔虫を産むため、毎日産 まれた仔虫の数を 3 腹目(通常 6∼7 日間)まで数え、8 日間の間に産んだ仔虫の合計を各 濃度ごとに藻類同様に Ecotox-Statics Ver.2.670)を用いて統計処理(多重検定:Dunnett 法を 利用)し、blank と比較して仔虫に有意な影響がなかった最大無影響濃度(NOEC)、及び 7 日間に死んだ親ミジンコの死亡数も毎日観察し、親ミジンコの 20%致死濃度(LC20)をパ ーセントで算出した。

3.5.3 魚類胚・仔魚期短期毒性試験

魚類胚・仔魚期短期毒性試験は、OECD テストガイドライン No.212, 「Fish, Short-term Toxicity Test on Embryo and Sac-fry Stages」 72)に準拠し、参考として US-EPA テストガイド ライン「Fathead minnow, Pimephales promelas, Larval Survival and Growth Test」73)も用いた。 ゼブラフィッシュ(Danio rerio)を用いて 25℃に設定した実験室で行なった。なお、魚種 の選定については前述したので省略する。試験はスナップカップを使用し、産卵後 4 時間 以内の受精卵(胚)を用いて公比 2 で希釈した放流水を 3 濃度区(25∼100 %)と blank を 用意し、各 10 ないし 15 個×3 連で半止水式(2 日に 1 回全換水)で曝露期間を 9 日までと した。胚の孵化や致死を毎日顕微鏡もしくは目視で観察した。上記の藻類・ミジンコ同様 に Ecotox-Statics Ver.2.670)を用いて blank と孵化率及び致死率に有意な差を生じる最小影響 濃度(LOEC)を求め、その 1 濃度区分下の濃度を NOEC とした。また、合わせて 20%影響濃 度(EC20)も算出した

3.5.4 毒性単位(TU)の算出

藻類、ミジンコ、魚類について算出した慢性毒性の NOEC に基づき、それぞれその逆数 である毒性単位(Toxicity Unit: TU)を以下の式により算出した。

TUc = 100/NOEC (3.4)

この TUc は、排水が各水生生物に対して影響を及ぼさないようになるまで希釈するために 必要な希釈倍率ともいえ、米国ほかではこの TU の値をもとに WET 規制を実施している 26,27)

表 2.3  わが国の河川に対する水質環境基準(生活環境項目) 21)  項目  類型  利用目的の 適応性  基準値  水素イオン濃度 (pH)  生物化学的酸素 要求量(BOD) 浮遊物質量 (SS)  溶存酸素量 (DO)  大腸菌群数 AA  水 道 1 級   自 然 環 境 保 全 及 び A 以 下 の 欄 に 掲 げ る も の   6.5 以上 8.5 以下  1 mg/L 以下  25 mg/L 以下  7.5 mg/L 以上  50MPN/  100mL 以下 A  水 道 2 級
図 2.2  段階的 TRE(毒性低減評価)・TIE(毒性同定評価)のフロー図 27)毒性削減評価(TRE)データ収集流入・流出水の監視データ施設およびプロセス概要使用化学物質の評価施設の運転管理方法の評価処理システムの評価毒性の削減はできたか?フォローアップと確認YES毒性同定評価(TIE)毒性発生源調査NO最終流出水の処理評価WET試験にて毒性確認発生源制御/処理プロセス流出水の評価使用化学物質の評価毒性削減方法評価フォローアップと確認1
図 3.2 に写真を示すように、北海道からは利用人口の多い石狩川水系本流の代表的環境 基準点である石狩大橋付近(北海道江別市)と、その派流の茨戸川の樽川との合流地点(北 海道石狩市)の 2 地点とした。前者は周辺に製紙工場が立地しており、河口からの距離が 十分(30 km 以上)であるために感潮域ではないと仮定して選定したが、感潮する場合もある ことがわかっている。後者は札幌市ほかの下水放流水の寄与が大きく、BOD 年平均値が北 海道内でも最も高い地点の一つである。  図 3.2  北海道地方の採水地点付近
図 3.8  四 国地方の採 水地点 付近 の写真(上 段左から吉野川、那賀 川、下段左 から土器川 、重 信川)  最後に、九州については、図 3.9 に示す遠賀川の日の出橋付近(福岡県直方市)、筑後川 の瀬の下付近(福岡県久留米市)、緑川の上杉堰付近(熊本県熊本市)の 3 地点とした。遠 賀川は旧筑豊炭田を流れる河川で、北九州付近での利水が多い河川である。筑後川は工業 都市である福岡県久留米市や佐賀県鳥栖市などを流れて、有明海に注ぐ九州で最も流域面 積の大きい河川である。緑川は熊本市南部を流れ、比較的
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