• 検索結果がありません。

第2部 声の実態調査

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "第2部 声の実態調査"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

第2部  声の実態調査 

第 1 部では、コンテクストの共有における声の重要性について述べ、声のノンバーバル 要素の存在意義について示してきた。第 2 部では、声の実態調査を行い、声のノンバーバ ル要素の重要性について検証する。 

 

第4章  研究の内容  第1節  仮説の設定

 

本論文の問題意識は、声のノンバーバル要素の重要性にある。前章において論じたよう に、声によるメッセージ伝達が正確に伝わったか否かについては、バーバル要素のみなら ず、ノンバーバル要素にも依存している。この両要素に対する意識について一般人と声優 で比較すると、次のように考えることができる。 

一般的には、声から得る情報としてバーバルの意味を聞き取ろうとする。これに対して、

声による想いの伝達を求められる声優の場合は、声のノンバーバル要素を常に重視して捉 え、多くの情報を得ようとする。例えば、世代や年齢によって異なる体内に気を入れる位 置や深さの相違、独特の抑揚などを観察し、相手の内面的な想いを読み取り、置かれてい る状況を把握しようとする。声のノンバーバル要素を重視し、ノンバーバル要素に含まれ るバーバルとは異なる情報を得ようとするのである。そして、それを自らが演じる際、日 常において観測し、蓄積した情報に基づいて、背景に多様な想いを包含するスキルを用い て異なる役を演じているということができる。すなわち、声のノンバーバル要素をコント ロールするスキルによって他者に正確に想いを伝達していると仮定することができる。以 上に基づき、本研究の仮説を次のように設定する。 

「スキルを具備する声は想いを伝達する」 

本研究では想いを伝達するスキルに焦点を当て、本仮説を調査設計に基づき、実施する。 

 

第2節  調査設計 

Mehrabian による実験と本研究 

仮説実証に重要な先行研究としてノンバーバル要素の重要性を実証した研究がある。

Mehrabianは、言語で何か言う一方で、顔の表情、姿勢と位置、声の調子、または身振りに よって正反対のことを表現する、という実験を行った。すなわち、ノンバーバル要素によ って伝えられる、快−不快、覚醒−不覚醒、支配−服従、好意−嫌悪という尺度で、バー バルとノンバーバルの矛盾について個別に測定した(1986,p.95)。具体的には、言語のメ ッセージと、声の調子、顔の表情、身振りとが矛盾して発せられた時の受けとめ方にどの ように影響を及ぼすかについての検証である。検証の結果、言葉は否定的であるが声の調 子が肯定的な場合は全体としては肯定的になり、言語以外のキューが言語の約 12 倍の力を 持っていることが明らかになった。等式の割合は、話の内容などの言語情報が 7%、口調や

(2)

話の早さなどの聴覚情報が 38%、見た目などの視覚情報が 55%であった。この割合から、

「7-38-55 のルール」、また、「言語情報=Verbal」「聴覚情報=Vocal」「視覚情報=Visual」

の頭文字を取って「3Vの法則」ともいわれ、研究者はもちろん一般企業のコミュニケーシ ョンにおいても活用されている。ここで示されていた 3Vの関係は、Bugental(1970)の実 験においても実証されている1。 

「顔による感情表現は、声に比べてメッセージ全体に与える影響が大きく、声による感 情表現は、言語よりも影響力が大きく、特に声の調子が自然で、信用できそうだと判断さ れた場合に、その影響力は著しくなる。さらに伝えられた共感を総合的に判断する際、言 語というキューよりも、言語によらないものの方がインパクトは大きいことを明らかにし た(1986,p.98)。」 

Mehrabian の研究対象は、「言語」「聴覚」「視覚」の要素がメッセージの伝達にどのよ うな影響を与えるかであった。その結果、「視覚情報」が最も影響力が高く、次に「聴覚 情報」、影響力が最も低かったのは、「言語情報」であった。 

本研究は、Mehrabian が行なった「言語」「聴覚」「視覚」の要素のうち、メッセージの 伝達力が最も低かった「言語」、すなわち、「バーバル」と声に内包されるノンバーバル 要素に注目し、ノンバーバル要素がメッセージの伝達にどのような影響力を持つかを明ら かにすることを意図している。特にバーバルと共に発信される声のノンバーバル要素が、

感情伝達にどれくらい影響するか、さらに発話者が表現したい感情をどれくらい正確に評 価者に伝達することができるか、について検証する。言い換えれば、発話者のバーバル情 報とノンバーバル情報がどのように評価者に影響を与えるかについて調査を行う。 

これらを検証するため、発話者の声に対する認識が声にノンバーバル情報としての感情 をどのように付加することができるかに相関していると考えられるため、調査の前提とし て、発話者が声についてどのように認識しているかを分析する。 

 

      Mehrabian   本研究  言語(バーバル)

対象      聴覚       視覚

目的    矛盾するメッセージの伝達にお ける影響力について検証

バーバル      発話者    声(ノンバーバル)   

      評価者  発話者の声のノンバーバル要素による感 情伝達について検証

図表 4-2-1.Mehrabian の研究と本研究の比較   

図表 4-2-1 に Mehrabian の研究と本研究の相違点を示した。Mehrabian が行なった研究で は、バーバル情報と視覚を含めた広範囲なノンバーバル情報の意味が矛盾している場合の 影響力についての検証であるが、本研究では対象を声に絞り、声に内包されるバーバル情 報とノンバーバル情報の伝達の程度について検証を次のような方法で行う。 

(3)

第一は、日常頻繁に使う中立的な意味を表す「おはようございます」というバーバルに、

ノンバーバル要素として、「喜」「怒」「悲」の感情を示す声により、相手に意図した感 情を伝達することができるかの検証である。発話者は、プロの声優と一般の大人と小学生 によって検証する。日頃から声におけるノンバーバル要素をコントロールして感情移入し ている声優と、一般の人たちのノンバーバル要素の活用のスキルに相違があるかを聴取実 験によって比較する。 

第二は、日常人前ではあまり頻繁に使われない「好意」「嫌悪」という相矛盾する感情を 示す 2 つのバーバル、「愛してる」「あなたが大嫌いです」に対し、対応する感情(好き な人に向かって)と矛盾する感情(嫌いな人に向かって)をノンバーバル要素に込めて発 話し、意図したとおりに他者に感情伝達することができるかについて、聴取実験を試みた。

本調査も第一の調査同様の発話者によって行い、声優と一般の人の感情伝達を比較するこ とを試みる。 

これら 2 つの調査を比較することによって、日常的なバーバルと、通常前面に表出する ことの少ない、「好意」と「嫌悪」を示すバーバルとで、ノンバーバル要素に込める感情の 伝達に相違があることを検証した。実験方法は、はじめに、自分の声に対する意識調査と してアンケートを行い、自己の声に対する意識と他者の声に対する認識を明確にする。次 に「中立」の状態で使うバーバルに、3 つの感情をこめて発話したものと、日常頻繁ではな い「好意」と「嫌悪」を示すバーバルに、感情が相矛盾する感情をノンバーバル表現に込 めて発話してもらったものを録音し、その音声サンプリングを分析することで、声にどれ くらい指示通りの感情をこめることが出来るかを検証する。 

本研究では、これらの音声サンプリングを評価者に聞かせ、どれくらい正確に感情を聞 き取ることが出来るかを検証する。音声サンプリングが正確に感情を伝達することができ れば、評価者に正確に感情を伝達することができるということを明らかにする。 

 

第3節  方法論 

1  調査設計の基本的考え方 

本調査では、スキルを具備する声が想いを伝達する過程に明らかに相違があることを実 証することとした。声の実態調査設計の基本的考え方は、具体的に示すと次の通りである。 

一般の人は、幼少期からの喜びや悲しみをはじめとする多様な感情を内在化している状 態ではあるが、それを他者に伝達するために必要となる表現力、すなわちスキルがない状 態であると想定される。そこでスキルの訓練を受けていない一般の人々とスキルの訓練を 専門的に受けている声優とを比較し、その相違をノンバーバル要素について明確化するこ とが本調査の目的である。 

声の実態調査は、3 つの段階によって行った。第一段階の調査 1 は、声に対するアンケー ト調査によって、一般の人たちの声に対する認識が低いことを明らかにするものである。

すなわち、スキルにおける一般の人の意識を確認するための調査である。 

(4)

第二段階の調査 2 として、音声収集をし、音声を波形データにすることによって、声に おける感情表出を読み取る。さらに、声優と一般人の声の波形データでノンバーバル要素 の、強弱、ボリューム、スピードなどの物理的なコントロールを比較することにより、ス キルの実態を明らかにする。すなわち、声優と一般人の物理的コントロールができるスキ ルを波形データに基づき比較し、明確にするものである。 

  第三段階調査 3 では、評価者が、収集した声のノンバーバル要素から、「喜んで」「怒っ て」「悲しんで」などの感情表出を読み取ることができるか、ヒアリング調査を行い、声優 と一般人のスキルの違いを明らかにする。実証方法として、音調、すなわち、ヴォーカリ ックスと呼ばれる周辺言語が、バーバルな意味を除いた周囲が聞き取れる音声が生む刺激 要因の中で、極めて多種多様な感情の音声的刺激要因を実証するために、多くの観客に対 し、意思伝達ができるとされている声優の協力を求め、一般人の発話者との比較によって、

仮説の実証を行う。Erickson 他(2004,pp.269-270)のヒアリング調査から、実際に悲しみ を経験しながら発話された原音声より、それを模倣して発話した音声の方がより悲しそう に聞こえると知覚されたという報告に基づいて、原音声ではなく、模倣による感情移入し た音声で実験することにする。声による感情表出の実態を調べるために、調査協力者とし て、指示したように発話をしてもらう発話者と、発話者の音声を聞いてそれを評価しても らう評価者を集めた。発話者には、日常的に使う挨拶文などを特定の感情を込めて発話し てもらい、それらの音声を収録した。評価者には、収録した音声を聞かせ、どのような感 情が込められていると感じたかを回答してもらった。その結果として、発話者の込めた感 情がどれだけ正しく評価者に伝わったかを集計した。この時、特定の感情を表すものでは ないバーバルと、特定の感情を表しているバーバルとを用いた 2 つの調査を行った。 

 

2  調査の概要 

第一段階の声に対するアンケート調査の協力者は、小学生から 60 歳代の一般人、計203 名2とし、声に対する認識レベルを確認した。第二段階の声のサンプリング調査の発話者 は、声に対するアンケート調査の協力者のうち、後の第三段階の調査で音声を聞かせる際 の評価者の負荷を考慮し、声の物理的な変化が十分につけられない人を削除して、相対的 に変化が明確にみられる、比較的感情表出ができていると思われる、10 歳代後半から 50 歳 代の大人 10 名(各年代から男女各 1 名)と、声優(以下Pと略す)4 名(男女各 2 名)計 14 名とした3。 

発話内容は 5 つの言葉を選択した。そのうち、「おはようございます」、「ありがとうござ いました」、「またお会いしましょう」は、日常使っている言葉であることから特定の感情 を表すものではないバーバルとして選択した。また、特別な強い感情が伴わなければ日常 あまり使わない言葉として、バーバル自体が感情を表している「愛してる」、「あなたが大 嫌いです」を選択した。この 5 つの単語を以下の 15 通りの指示に従い、発話してもらった ものを音声波形にして比較した。 

(5)

①高く  ②低く  ③大きく  ④小さく  ⑤はやく 

⑥ゆっくり  ⑦温かく  ⑧冷たく  ⑨好きな人にいうように  ⑩嫌いな人にいうように 

⑪喜んで  ⑫怒って  ⑬悲しんで ⑭普通に  ⑮間を取って         図表 4-3-1.声のノンバーバル要素における 15 通りの指示 

 

①から⑥までは技術的な指示であり、⑦から⑮は感情を表す表現である。この 15 通りの ノンバーバル要素をチェックすることで、一般人の声のノンバーバル要素のコントロール のスキルを実証するため、波形データを分析した。その結果、P の波形からは 15 通りのノ ンバーバル要素の変化が明確にできたが、一般人の波形からは 15 通りのノンバーバル要素 の変化がほとんど区別できないことが示された。さらに、音声波形では、声の物理的な変 化(「高く」、「低く」など)は明確に示されるが、感情が込められているか否かを十分に読 み取ることには限界があるため、第三段階の声のヒアリング調査を行うこととした。評価 者に音声を聞かせ、どの感情で発話しているかを判断してもらうことにした。発話者は、

第二段階の声のサンプリング調査で収集した音声に 3 年生から 6 年生までの小学生 6 名(男 女各 3 名)を加え、計 20 名とした。それぞれの年代における声の特質に着目するものでは なく、年齢による差異を超えて、評価者にどのように声による想いの伝達ができるかを検 証するためである。音声内容も、特定の感情を表すものではないバーバルは「おはようご ざいます」のみに絞り込むことにした。(以降、大人と小学生の発話者を総称して、一般人 発話者と呼ぶ)声のヒアリング調査の内容は、次の通りである。 

 

声のヒアリング調査の内容 

評価者  評価者として、10 歳代から 60 歳代の男女、計 114 名。 

調査の  内容 

具体的には、以下の 2 つの調査を行った。2 つの調査の調査協力者は共通であり、上 述した発話者、評価者である。 

    調査1     

特定の感情を表すものでないバーバル「おはようございます」に、「喜んで」、 

「怒って」、「悲しんで」の感情を込めて発話した 60 サンプル(文1種類×感情 3 種 類×発話者 20 名)の音声をランダムに並び替えて評価者に聞いてもらい、それぞれ が「喜んで」、「怒って」、「悲しんで」のどの感情が込められていると感じたかを選 択してもらった。この時、どうしても判断がつかない場合は「どれでもない」を選 択することも許した。 

    調査2   

感情を表すバーバル「愛してる」及び「あなたが大嫌いです」が、「好きな人に」、「嫌 いな人に」向けて、それぞれの感情を込めて発話した 80 サンプル(文 2 種類×感情 2 種類×発話者 20 名)の音声をランダムに並び替えて評価者に聞かせ、それぞれが

「好きな人」、「嫌いな人」のどちらに向かって発話したと感じたかを選択させた。

どうしても判断がつかなければ「どちらとも感じない」を選択することも許した。

図表 4-3-2.声のヒアリング調査の内容 

(6)

第 4 章  脚注

1Bugental,D.C.,Kawan,J.W.,and Love,L.R.Perception of contradictory mesning conveyed  by verbal and nonverbal channels.Journal of Personality and Social 

Psychology,1970,16,647-655参照 

この他の研究においても Mehrabian 同様の表情写真を用いた視覚的な研究とほぼ同じ結果 を報告されている。しかし、重野(2003)によると、音声による感情表現についての研究 は、認知実験や音声分析とで研究結果に相違が出ているという指摘がなされている。 

重野(1988)の実験結果では、音声に含まれた感情認知の正解率は、視覚(表情)におけ る表情配置と類似した配置を示すと分析の結果実証されている(2003,pp.156-157)。さら に重野は次のように指摘している。「音声分析の研究では、感情を適切に表現できる基本的 な要因(基本周波数、スペクトル、時間的特徴、イントネーション、持続時間)などにお ける分析がなされてきた。しかし、認知実験と音声分析の結果には、分析資料の違いなど によって結果に変動が大きいことが認められている(2003,p. 157)。」 

2日本最大の研究報告書である国立国語研究所が 2006 年 3 月に出版した『日本語話し言葉コ ーパスの構築法』の被験者数は 200 人であることから、調査サンプル数を決定した。

3 第二段階の調査 2 と第三段階の調査 3 の発話者は同一人物とした。

参照

関連したドキュメント

事前調査を行う者の要件の新設 ■

※調査回収難度が高い60歳以上の回収数を増やすために追加調査を実施した。追加調査は株式会社マクロ

( 同様に、行為者には、一つの生命侵害の認識しか認められないため、一つの故意犯しか認められないことになると思われる。

    pr¯ am¯ an.ya    pram¯ an.abh¯uta. 結果的にジネーンドラブッディの解釈は,

1.実態調査を通して、市民協働課からある一定の啓発があったため、 (事業報告書を提出するこ と)

に、のと )で第のド(次する ケJのる、にに自えめ堕TJイ¥予E階F。第

105 の2―2 法第 105 条の2《輸入者に対する調査の事前通知等》において準 用する国税通則法第 74 条の9から第 74 条の