摂食障害傾向測定用質問紙の比較検討 : EAT,BITE およびSRSEDを用いて
著者 佐藤 豪
雑誌名 人文學
号 176
ページ 174(11)‑164(21)
発行年 2004‑12‑20
権利 同志社大学人文学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000007631
摂食障害傾向測定用質問紙の比較検討
──EAT, BITEおよび
SRSED
を用いて──佐 藤 豪
摂食障害は近年増加の一途をたどっており,しばしば難治化して生命の 危険にさらされる例も見られる。摂食障害には多様な要因が関与している と考えられており,その防止はなかなか難しい問題である。そのような状 況にあって摂食障害においても早期発見,早期治療を行うことが難治化さ せないための重要な課題である。摂食障害傾向をスクリーニングするため には身長,体重を測定してBody Mass Indexを算出しチェックするなどの 方法があるが,それらは時間と労力を必要とするために多人数に施行する ことがなかなかむずかしい。
そこで一般人を対象とした摂食障害傾向のスクリーニング用検査として 多くの質問紙が作成され,用いられてきている。その中でもEating Attitude Test(EAT)(Garner and Garfinkel, 1979)やEATの短縮版であるEAT-26
(Garner, Olmsted, Bohr, and Garfinkel, 1982)あるいはBulimic Inventory Test, Edinburgh(BITE)(Henderson and Freeman, 1987)などの質問紙が使 用されることが多い。この2つの質問紙はスクリーニングのための質問紙 として欧米や日本で広範囲に使われて来ている。しかしこれらの摂食障害 症状評価尺度は神経性無食欲症と神経性大食症を別々に評価対象としてい るために,摂食障害全般を対象とするスクリーニングテストとして用いる のには不十分であるとの報告もある(永田・切池・吉野・西脇・竹内・田 中・川北,1989;久松・坪井・筒井・篠田,2000)。そこで永田ら(永田
(174) 11
・切 池・中 西・松 永・川 北,1991)はEAT-26やBITEの 欠 陥 を 補 う べ く,新 た な 質 問 紙 と し てSymptom Rating Scale for Eating Disorders
(SRSED)を作成している。
本研究ではEAT-26, BITE, SRSEDの3種類の質問紙についてその検査 成績の比較を試み,実際にそれらの質問紙によって検出される女子大学生 における摂食障害傾向者の頻度について検討する。特にSRSEDは最近に なって作成された質問紙であることから,質問紙の尺度構成などの点につ いても検討を行う。
方 法
被験者
女子大学生241名(平均年齢19.5歳,標準偏差1.3歳)を対象に調査を 行った。
質問紙
摂食障害傾向の測定には以下の3種類の質問紙を用いた。
Eating Attitude Test-26 EAT-26の日本語版(馬場・坪井,1993)を用 いた。EAT-26は,神経性無食欲症患者の症状評価やスクリーニングを目 的として作成された質問紙である。「摂食制限」,「大食と食事支配」,「肥 満恐怖」の3つの尺度によって構成され26項目よりなる。これらの質問 項目に対して「全くない」から「いつもそう」の6件法で回答を求めた。
総得点は開発者の方法に従って「全くない」,「まれに」,「ときどき」まで は0点とし,「しばしば」,「非常にしばしば」,「いつもそう」をそれぞれ 1,2,3点として合計した。
食行動異常の分類に関しては,Buddeberg, Bernet, Schmid, and Buddeberg
(1996)に従い,得点が9点以下の者を食行動正常群,10〜19点の者を食 12 (173) 摂食障害傾向測定用質問紙の比較検討
行動中程度障害群,20点以上の者を食行動重度障害群に分類した。
Bulimic Inventory Test, Edinburgh BITEの日本語版(中井・濱垣・高 木,1998)を用いた。BITEは神経性大食症のスクリーニングや症状・重 症度評価を目的として作成された質問紙で,症状評価尺度(30項目)と 重症度尺度(6項目)からなる。症状評価尺度は本来「はい」,「いいえ」
の2件法となっているが,本研究ではEATの質問紙の評定と同様にする ために「全くない」から「いつもそう」の6件法で施行した。
Symptom Rating Scale for Eating Disorders 永田ら(1989)は,EAT を神経性無食欲症患者,神経性大食症患者,健常者に施行し,EATが神 経性無食欲症の判別には有用であるが,過食に関する項目が少ないため に,神経性大食症の判別には不十分であるという結果を得た。そこでEAT を基本にし,BITEの質問内容を参考にしつつ,日常の診察から得た過食 症者の特徴を考慮して作成したのがSRSEDである。SRSEDは「全くな い」から「いつもそう」の4件法であるが,本研究ではEATの質問紙の 評定と同様にするために「全くない」から「いつもそう」の6件法で施行 した。
Life Health Questionnaire LHQ(菊 池・吾 郷・中 島・野 村・杉 江,
1995)はEAT, BITE, SRSEDの緩衝項目として用いた。神経性無食欲症 には症状のひとつに病態の否認があり,また一般に食行動についてはとり わけ質問紙調査をする場合に社会的のぞましさが影響しやすいと考えられ ている。これらの影響を少なくするためにLHQの質問項目を加えること により,摂食障害についての質問紙という印象の軽減を図った。
摂食障害傾向測定用質問紙の比較検討 (172) 13
結 果
EAT-26の結果
対象者241名の平均点は10.5点,標準偏差は7.5点であった。前述した 得点範囲による重症度分類の結果,正常群は134名(55.6%),中程度障 害群は86名(35.7%),重度障害群は21名(8.7%)であった。
BITEの結果
BITEは開発者の判定方法に従うと,得点が10点未満の者は食行動異 常陰性,10〜19点の者は食行動異常疑陽性,20点以上の者は食行動異常 陽性に重症度分類される。これらの重症度分類のカットオフポイントを,
6件法で質問紙を実施した本研究に適用するために以下の手続きを行っ た。まず,次式により対象者全員の30項目の合計得点を標準化した。
標準化得点={個人得点−平均値(71.93)}/SD(25.06)×10+50 次に,久松ら(2000)が女子大生353名を対象にBITEを施行した際の 平均得点(6.8)と標準偏差(5.0)を用いてカットオフポイントを標準化 した。その結果,10点は56.4点に,20点は76.4点に相当した。これらの カットオフポイントを用いて対象者の重症度分類を行ったところ,陰性 170名(75.9%),疑陽性48名(21.4%),陽性6名(2.7%)であった。
SRSEDの結果
SRSEDについて開発者である永田ら(1991)は,まず女子大生442名
を対象に質問紙を実施した結果について因子分析を行い,次にどの因子が 神経性無食欲症群,神経性大食症群,健常者群を判別するのに有効である かを正準判別分析によって分析している。本研究ではまずSRSEDの尺度 構成が永田ら(1991)の得た結果と同様であるかを確認するために,永田 ら(1991)にならい,主因子法,バリマックス回転による因子分析を行っ 14 (171) 摂食障害傾向測定用質問紙の比較検討
た。共通性の低い2項目を削除し,再度因子分析を行った結果,永田ら
(1991)の結果とほぼ同様の項目から構成される4因子が抽出され,全体 の53.79% を説明した(Table 1)。抽出された各因子について,「過食と食 事による生活支配」,「肥満恐怖」,「食べることへの圧力」の3つの因子に
Table 1 SRSEDの因子分析結果
第1 因子
第2 因子
第3 因子
第4 因子
共通 性 第1因子〈過食と食事による生活支配〉
非常に多くの量を無茶食いしたことがありますか
食べ出したら止められず,お腹が痛くなるほど無茶食いをしたこ とがありますか
毎日の生活が,食べ物のことについやされてしまっていますか 無茶食いするために,はめを外してしまいますか
…もしそうなら,その時惨めな気持ちになりましたか
食べる量をコントロールできないのではないかと心配になりますか いやなときや,つらいとき,たくさん食べてしまいますか 自分の食習慣を恥ずかしいと思いますか
食べ物のことで頭がいっぱいですか
食事に関する問題で,仕事や学校に差し支えが出ていますか 0.795 0.793 0.759 0.728 0.675 0.635 0.568 0.524 0.523 0.509
0.732 0.685 0.679 0.623 0.656 0.647 0.404 0.441 0.293 0.478 第2因子〈肥満恐怖〉
体重が増えるのが恐いと思いますか
少しでも体重が増えると,ずっと増え続けるのではないかと心配 になりますか
あなたは体重にとらわれすぎていると思いますか 普通にご飯を食べた後でも太った気になりますか 体重が増えすぎるのではないかと心配をしますか 食べすぎた後,後悔をしますか
食べたカロリーを使い果たそうと一生懸命に運動していますか いつも胃の中を空っぽにしておきたいと思いますか
下剤を使っていますか
0.793 0.781 0.751 0.692 0.661 0.643 0.429 0.412 0.308
0.669 0.706 0.638 0.561 0.563 0.544 0.276 0.392 0.225 第3因子〈食べることへの圧力〉
みんなが少しでも多くあなたに食べさせようとしていますか みんなから非常にやせていると思われていますか
あなたがもっと食べるよう,家族が望んでいるように思いますか みんなからやせているといわれますか
0.718 0.701 0.701 0.649
0.598 0.612 0.525 0.535 第4因子〈嘔吐〉
食後,嘔吐しますか
食後,嘔吐したい衝動に駆られますか
まる1日,全く食事をとらないことがありますか
0.732 0.691 0.483
0.583 0.716 0.252 固有値
寄与率 5.261 20.23
4.608 17.72
2.255 8.68
1.861 7.15 53.79 因子負荷量0.300以上を示す 摂食障害傾向測定用質問紙の比較検討 (170) 15
おいては永田らと同様の解釈が可能であった。永田らの抽出した「嘔吐/
下剤」の因子では,その因子に含まれる項目である「下剤を使っています か」が,本調査では「肥満恐怖」の因子に負荷していた。そこで第4因子 は「嘔吐」と解釈した。
次に,因子分析の結果明らかになった各因子の信頼性を検討するため に,各因子毎に属する項目群について主成分分析を行った。各尺度の第1 主成分の寄与率は50% 以上と高く,「肥満恐怖」以外は第2主成分以下の 固有値が1未満であった。「肥満恐怖」尺度の固有値の推移をみると,第 1主成分から順に,4.54, 1.09, 0.79となっており,第1主成分と第2主成 分の固有値の間に大きな落差があり,「肥満恐怖」においても,第1主成 分のみが意味のある因子であることが示唆された。またこれらの因子につ いてのα係数を求めたところ,第1因子から順に0.91, 0.87, 0.79, 0.72で あった。したがってこれらの因子分析によって抽出された尺度は永田ら
(1991)の研究とほぼ一致していた。永田ら(1991)は,「過食と食事によ る生活支配」と「食べることへの圧力」の2尺度がスクリーニングとして 有用であり,2尺度の合計得点が23点以上である者を摂食障害群として 分類できたとの結果を報告している。そこでBITEと同様の手順でSRSED の得点を標準化し,2つの尺度の合計得点から対象者を分類した結果,摂 食障害群は47名(19.7%)であった。
各摂食障害症状評価尺度の比較
EATで重度障害と判定された者(21名)のうち,BITEで陽性と判別 された者は6名であった。つまり,BITEで陽性と判定されたものは,全 員EATにおいても重度障害と判定されていた。またSRSEDで摂食障害 と判定されたもの(47名)のうち,EATで重度障害と判定されたものは 16名であった。同じくSRSEDで重度障害と判定された者のうち,BITE で陽性と判定されたものは5名であった。
16 (169) 摂食障害傾向測定用質問紙の比較検討
次に各質問紙が評価している摂食に関連した態度,行動,認知の問題を 比較するために,各質問紙間の相関係数(Table 2)と,各下位尺度間の 相関(Table 3)を求めた。
各摂食障害評価尺度の相関を見ると,それぞれの尺度間には有意な相関 が認められた。EATとBITEの下位尺度の相関を見ると,EATの「肥満 恐怖」と「大食と食事支配」はBITEの「症状評価尺度」,「重症度尺度」
とそれぞれ有意な相関が見られた。とりわけEATの「大食と食事支配」
Table 2 各摂食障害評価尺度間の相関
尺 度 名 1)EAT
総計
2)SRSED 総計
3)BITE症状
評価尺度
4)BITE重 症度尺度
1)EAT総計
2)SRSED総計
3)BITE症状評価尺度
4)BITE重症度尺度
−
−
−
−
0.80
−
−
−
0.70 0.90
−
−
0.36 0.55 0.53
−
全て1% 水準で有意
Table 3 3つの摂食障害質問紙の各下位尺度間の相関
質問紙名 EAT BITE SRSED
尺度名 2)大食と食事支配 3)摂食制限
4)症状評価尺度 5)重症度尺度
る生活支配 6)過食と食事によ 7)肥満恐怖
圧力 8)食べることへの 9)嘔吐
EAT EAT EAT
1)肥満恐怖 2)大食と食事支配 3)摂食制限
0.46
−
− 0.17 0.19
− 0.55 0.78
− 0.34 0.37
− 0.51 0.80
− 0.74 0.48
−
− 0.16 0.59
0.19 0.56 0.13 BITE
BITE
4)症状評価尺度 5)重症度尺度
−
−
−
−
−
− 0.53
− 0.94 0.50
0.68 0.45
−
− 0.48 0.44 SRSED
SRSED SRSED
6)過食と食事による生活支配 7)肥満恐怖
8)食べることへの圧力
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
− 0.63
−
−
−
−
− 0.52 0.32 0.17
5% 水準で有意な相関を表示(太字は1% 水準で有意なものを示す)
摂食障害傾向測定用質問紙の比較検討 (168) 17
はBITEの「症状評価尺度」と高い相関があった。しかしEATの「摂食 制限」の尺度はBITEの「症状評価尺度」,「重症度尺度」のいずれとも有 意な相関が見られなかった。
EATとSRSEDの 相 関 で は,EATの「肥 満 恐 怖」はSRSEDの「過 食 と食事による生活支配」,「肥満恐怖」と相関があり,特に両質問紙の「肥 満恐怖」間に高い相関が見られた。またEATの「大食と食事支配」は SRSEDの「過食と食事による生活支配」,「肥満恐怖」,「嘔吐」と相関が あり,とりわけEATの「大食と食事支配」とSRSEDの「過食と食事に よる生活支配」に高い相関が見られた。EATの「摂食制限」はSRSED の「食べることへの圧力」と相関がみられた。
BITEとSRSEDの相関を見ると,BITEの「症状評価尺度」はSRSED の「過食と食事による生活支配」,「肥満恐怖」,「嘔吐」と相関があり,同 様 にBITEの「重 症 度 尺 度」はSRSEDの「過 食 と 食 事 に よ る 生 活 支 配」,「肥満恐怖」,「嘔吐」と相関があった。しかしSRSEDの「食べるこ とへの圧力」の尺度はBITEのいずれの尺度とも有意な相関が見られなか った。
考 察
女子大学生における摂食障害傾向者の頻度
本調査における摂食障害傾向者の頻度を,女子大学生を対象にした先行 研究の結果と比較すると,BITEの結果は同様であったが,EATの結果は 異なるものとなった。EATについて,本調査における平均得点は10.50 点で標準偏差は7.50点であった。馬場・坪井(1993)が女子大学生を対 象にEATを施行した結果,平均得点は6.69点で標準偏差は6.33点であ り,本調査の平均得点の方が高かった。そこで重症度分類の割合に注目 18 (167) 摂食障害傾向測定用質問紙の比較検討
し,久松ら(2000)が女子大学生を対象にEATを施行した結果と比較す ると,久松ら(2000)の重度障害群の割合は5.1% であり,本調査の8.7
%という結果と近かった。しかし中程度障害群の割合は久松ら(2000)が
17% であり,本調査の35.7% と比べると,本調査の方が久松ら(2000)
の2倍近い値となった。このような相違の原因を解明することは本調査の 結果のみでは困難であるが,馬場・坪井(1993)の研究と本研究では調査 時期に10年の相違があり,最近のほうがより摂食障害傾向が増加の傾向 をたどっていることと関連があることが推察される。また重度障害群では 久松ら(2000)の結果より本調査の結果のほうがやや多いという結果であ ったが,中程度障害群の割合が2倍近い値となったことは注目に値する。
これは調査時期にさほど大きなズレがあるわけではないが,食習慣の乱れ や摂食障害の部分症状を示すものが増加傾向にある可能性を示唆してい る。この点についてはさらに検討を重ねてゆく必要があると考えられる。
BITEについて,本調査における重症度分類は陰性170名(75.9%),疑陽 性48名(21.4%),陽性6名(2.7%)であった。中井ら(1998)はBITE を女子短大生214名に施行した結果,重症度分類では陰性133名(62.1
%),疑陽性70名(32.7%),陽性11名(5.0%)であったと報告し て い る。本調査では得点を標準化して用いているが,重症度分類の割合は中井 ら(1998)の結果とほぼ近いものであった。
各摂食障害症状評価尺度の比較
各摂食障害症状評価尺度間には有意な相関が認められたが,各下位尺度 間で相関を求めるとそれぞれの下位尺度間で異なる結果が得られた。BITE はEATの摂食制限尺度との相関が認められなかった。またSRSEDの食 べることへの圧力との相関も認められなかった。このことからBITEでは 減食,摂食制限などの行動や「周囲からもっと食べるよう望まれている」
という心性を測定することが困難であることが示唆された。
摂食障害傾向測定用質問紙の比較検討 (166) 19
EATとBITEの相関を見ると,BITEの症状評価尺度と重症度尺度は,
EATの「肥満恐怖」,「大食と食事支配」尺度と相関が認められた。また EATとSRSEDの相関を見ると,EATの各下位尺度はSRSEDのいずれ かの下位尺度と有意な相関が認められた。またBITEで陽性と判別された 者は,全員EATにおいても重度障害と判定されていた。このことからEAT
はBITEやSRSEDで評価されている摂食に関連した問題をとらえうるも
のと考えられた。
SRSEDの各下位尺度とEATの下位尺度,BITEの間には有意な相関が
見られ,SRSEDは永田ら(1991)が意図したように神経性無食欲症,神 経性大食症両方の摂食に関連した態度,行動,認知の問題をとらえうるも のと考えられた。
以上のことから,神経性無食欲症と神経性大食症の両方をスクリーニン グの対象としたとき,BITEを単独で使用することは不十分であると考え られた。また今回の調査では3種類の質問紙を同一の被験者に実施したと ころ,BITEに無回答項目のあった者が最も多かった。無回答の項目に偏 りは見られなかったが,久松ら(2000)や中井ら(1998)の指摘する通り BITEには質問内容に理解しがたい項目があることが示唆され,わかりや す い 内 容 で の 改 訳 が 必 要 と 思 わ れ た。一 方EATの 下 位 尺 度 とBITE,
SRSEDの間には相関が認められ,EATは神経性無食欲症,神経性大食症
の両方を対象としたスクリーニングに使用できることが示唆された。
摂食障害質問紙については,日本で使用されているものの多くが,外国 で作成されたものの翻訳であり,永田ら(1991)によるSRSEDもEAT やBITEを参照したものとなっている。そのためにしばしば質問内容に理 解しがたいものがあったり,やや日本で施行するにあたって妥当性に問題 があると考えられる項目もある。そのような点を改善しつつ,より広範に 日本人に適用できる質問紙の作成が望まれる。
20 (165) 摂食障害傾向測定用質問紙の比較検討
引用文献
馬場謙一・坪井さとみ 1993 EAT-26の有効性 厚生省特定疾患神経性食思不振 症調査研究班 平成4年度研究報告書,80−86.
Buddeberg, F. B., Bernet, R., Schmid, J., & Buddeberg, C. 1996 Relationship between disturbed eating behavior and other psychosomatic symptoms in adolescents.Psy- chotherapy and Psychosomatics, 65, 319−326.
Garner, D. M., & Garfinkel, P. E. 1979 The eating attitude test : An index of the symptoms of anorexia nervosa.Psychological Medicine, 9, 273−279.
Garner, D. M. Olmsted, M. P., Bohr, Y., & Garfinkel, P. E. 1982 The eating attitudes test : Psychometric features and clinical correlates. Psychological Medicine, 12, 871−878.
Henderson, M., & Freeman, C. P. 1987 A self-rating scale for bulimia : The BITE . British Journal of Psychiatry, 150, 18−24.
久松由華・坪井康次・筒井末春・篠田知璋 2000 一般女子大学生に対する摂食 障害の一 次スクリーニング法についての検討 心身医学,40, 326−331.
菊池長徳・吾郷晋浩・中島節夫・野村 忍・杉江 征 1995 ストレスの評価に 関する研究 労働省作業関連疾患対策研究班 平成6年度研究報告書,1−
29.
永田利彦・切池信夫・中西重祐・松永寿人・川北幸男 1991 新しい摂食障害症 状評価尺度Symptom Rating Scale for Eating Disorders(SRSED)の開発とそ の適用 精神科診断学,2, 247−258.
永田利彦・切池信夫・吉野祥一・西脇新一・竹内伸江・田中美苑・川北幸男 1989 Anorexia Nervosa, Bulimia患者におけるEating Attitude Testの信頼性と 妥当性 臨床精神医学,18, 1279−1286.
中井勝男・濱垣誠司・高木隆郎 1998 大食症質問表Bulimic Inventory Test, Ed-
inburgh(BITE)の有用性と神経性大食症の実態調査 精神医学,40, 711−
716.
後 記
本研究における調査の実施にあたり,広田法子さんの協力を得たことを記し,
氏のご協力に感謝の意を表します。
摂食障害傾向測定用質問紙の比較検討 (164) 21