ディーゼルを虐待死させて京都議定書を守れるか?
著者 小川 英之
雑誌名 第7回技術セミナー「燃料・燃焼制御によるディー ゼル燃焼の低エミッション化の研究動向」
ページ 1‑50
発行年 2006‑01‑14
権利 同志社大学エネルギー変換研究センター
URL http://doi.org/10.14988/re.2017.0000015744
1 Hokkaido University
同志社大学 学術フロンティア推進事業 技術セミナー
(2006.1. 14)
燃料・燃焼制御によるディーゼル燃焼の低エミッション化の研究動向
ディーゼルを虐待死させて 京都議定書を守れるのか?
北海道大学大学院工学研究科 小 川 英 之
2 Hokkaido University
ディーゼルエンジンを取り巻く環境
ー 企業戦士の悲哀 ー
3 Hokkaido University
ディーゼルエンジンは豚の胃袋を持つ
これは,粗食に耐えてよく働くという 最高級の賛辞であるが・・・・・・,
どこかの国の企業戦士が家庭に帰っ たときの状況によく似ていませんか?
汚い,臭いとののしられる
ディーゼルエンジンは地上の星!
小さなものから大きなものまで動かす力!
熱効率: 50% に迫る!
4 Hokkaido University
ガソリンエンジンは,草を決して食べない 肉食動物というなら・・・
ディーゼルエンジンは,好き嫌いをしない 草食動物である.
・・・・・・・でも決して雑食ではない.
そして,燃料電池は,松坂牛のステーキ しか食べない肉食動物である.
ガソリン,ディーゼル,そして燃料電池
5 Hokkaido University
ガソリンエンジンが燃料として求めるもの 高いオクタン価(火が着きづらい)
高い蒸発性
・・・・これらは絶対必須
ディーゼルエンジンが燃料として求めるもの ある程度の着火性
液体燃料
・・・・これらがお好み 燃料電池は,問答無用!
高純度の水素だけ
燃料として求められる性状
6 Hokkaido University
虐待を受ける子供とディーゼルエンジン
ディーゼルエンジンは虐待を受けている子供のよう 親はしつけだと言って子供に虐待を加える
=
ろくに整備をしないまま,過積載をしてしまう子供は虐待に耐えかねて粗相をしてしまう
=
黒い煙を吐いてしまう子供は叱りつけられる
=
ディーゼルNO作戦が始まる親は虐待に気がついていない
=
過積載の罪悪に気がついていない=
実害を考えない厳しい規制は虐待では?
7 Hokkaido University
ディーゼルエンジンは丈夫で長持ち
トラックの平均寿命:150万 km
維持整備に対する意識の低さ
しかし,これが仇になる!
規制浸透の遅れ 既販車対策の重要さ
8 Hokkaido University
もう一つ長所が仇になること
熱効率が高い
排気温度が低い
排気後処理における触媒が働きづらい
9 Hokkaido University
1990
年代に何が起きたか?20 世紀末の選択 ― ディーゼルの悲劇 ―
乗用車用IDIディーゼルエンジンの優位性低下
ディーゼルNO作戦開始(日本)
ディーゼル乗用車の飛躍的増加(欧州)
・ 直接噴射型ガソリンエンジンの実用化
・ ディーゼルに対する本格的排気規制 (短期・長期規制) の開始
・ 高性能小型高速DIディーゼルエンジンの出現
・ ガソリンハイブリッド車の出現
・ 原油価格の低値安定
ディーゼル乗用車を売らない販売戦略?
燃費意識の欠落
・ 軽油とガソリンの小売価格差の減少 (税制の改正)
10 Hokkaido University
自動車メーカの回答:
日本でなぜディーゼル乗用車が売られなくなったか?
なぜ売らないのか?
なぜ儲からないのか?
ヨーロッパに売っているではないか?
本当に地球に優しいものを作る技術者倫理 売らないから,買えない 儲からないから,売らない
排気規制への適合に対するコスト増 異なる規制モード,規制値がネック
売れないからである 詭弁!
儲けよりも,正義感!
11 Hokkaido University
ディーゼルエンジンの明るい現状
ー もはや出力でもガソリンを凌ぐ ー
12 Hokkaido University
ディーゼル機関とガソリン機関の熱効率の変遷
50
10 20 30 40
正味熱効率
[%]
1900 1925 1950 1975 2000 2025 1875
ディーゼルエンジン
ガソリンエンジン
0
年 代
13 Hokkaido University
各種動力源の熱効率
ガソリン
舶用ディーゼル
1 10 100 104 105
出力 [kW]
10 20 30 40 50
熱効率[%]
将来ディーゼル
小型ディーゼル 燃料
電池
103
14 Hokkaido University
ディーゼル機関とガソリン機関の比出力の変遷
1900 1925 1950 1975 2000
年 代
10 20 30 40 50
2025 60
0
ガソリンエンジン
ディー
ゼルエンジン
比出力
[kW/L]
15 Hokkaido University
ディーゼルとガソリンの性能比較 ー ターボの効果 ー
2000 4000 6000
トルク
[kN • m]
回転速度 [rpm]
出力
[kW]
ガソリン ディーゼ
(ター ル
ボなし)
ディーゼル(ターボ付)
ディーゼル(VGターボ付)
16 Hokkaido University
日米欧のディーゼル乗用車事情
ー 廃絶するのは日本だけ ー
17 Hokkaido University
世界地域ごとのディーゼル車シェアー
18 Hokkaido University
欧州の乗用車におけるガソリンとディーゼルの棲み分け
高級 スポーツ性
ディーゼル 高級
スポーツ性
ディーゼル
ガソリン
ガソリン ガソリン
小型
ガソリン
小型
現 在 将 来
19 Hokkaido University
欧州におけるディーゼル乗用車生産台数と地球温暖化対策
20 Hokkaido University
ダイムラークライスラーが米国にディーゼル乗用車を投入
21 Hokkaido University
カルロス・ゴーンの決断
平成17年 11月26日 朝日新聞 より
22 Hokkaido University
最新ディーゼルエンジン
ー さりげなく驚愕の新技術 ー
23 Hokkaido University
長期(97-02)
新長期(05- ) 新短期(03-04)
DPNR DPF
EGR
インタークーラーターボ
コモンレール 0.25
排ガス規制達成のための新技術
0.18
0.027
PM [g/(kW•h)]
2.0 3.38 4.5
NOx [g/(kW•h)]
後処理なしの限界線
SCR
ポスト 新長期
酸化触媒
24 Hokkaido University
驚愕のコモンレール
Qpilot: 1 mm3/st Qmain: 19 mm3/st
0.5 ms 0
4 8
Solenoid current (A)
0 100
200 Nozzle lift (µm)
10 20
30 Injection rate (mm3/ms)
0
25 Hokkaido University
コモンレールによる多段噴射とその効用
パイロット噴射
(黒煙低減)
プレ噴射 (騒音低減)
初期噴射量制御
(騒音,NOx低減) 高圧噴射
(PM低減,燃費改善)
後噴射
(PM低減) ポスト噴射 (後処理制御)
噴射率
圧縮行程 上死点 膨張行程
クランク角度
26 Hokkaido University
通常ディーゼル燃焼と予混合圧縮着火燃焼の併用
従来ディーゼル燃焼 + 後処理
予混合圧縮着火燃焼
トルク
[kN·m]
回転速度
[rpm]
27 Hokkaido University
HCCIと通常ディーゼル燃焼を併用するための噴霧とピストン位置
40˚BTDC 30˚BTDC 20˚BTDC
125˚
28 Hokkaido University
10 8 6 4
0 2
1800 2600
Equivalence ratio, φ
Temperature [K]
NOx Soot
1400 2200
Unburned B
低酸素・低温ディーゼル燃焼 ー 超高 EGR による無煙化 ー
・ 低温化によるスート生成の抑制
・ 着火遅れ増加による予混合化 予混合圧縮着火燃焼
・ 通常燃焼との併用
上死点近傍噴射
高EGRによる着火遅れの 確保とノッキングの回避
Knocking
・ ノッキング
A
スートとNOxのφ-Tマップ
低酸素・低温ディーゼル燃焼 早期噴射の限界
C
C: スーパークリーン領域 要は,いかにスーパークリーン領域を広い運転条件で実現できるか
29 Hokkaido University
ディーゼルこそハイブリッド
•
ディーゼル + ハイブリッド究極のパワーソースシステム
•
ターボチャージャーの泣き所,加速時の排出 ガス改善が可能•
後処理が困難な低負荷運転を回避可能30 Hokkaido University
各種自動車の車両効率と総合効率
50
総合効率
(Well to wheel) [%]
CNG車 ガソリン車
0 10 20 30 40 50 60
10 20 30 40
従来ディーゼル車 TCIディーゼル車
ガソリンHEV
ディーゼルHEV 当面の目標
将来目標
将来予測
FCV/CHG
FC-HEV/CHG
0
車両効率 (Tank to wheel) [%]
31 Hokkaido University
これからの排気浄化の主役
ー 排気後処理 ー
32 Hokkaido University
酸化触媒(PMキャタコンバーター)
33 Hokkaido University
酸化触媒付きDPF
2NO + O2 → 2NO2
2NO2 + C →
CO2 + 2NO
34 Hokkaido University
画期的な
NOx•PM
同時浄化システム ―DPNR
Exhaust Gas Flow
NOx storage reduction catalyst
Diesel Particulate Filter
Enlarged View
NOx Storage Reduction Catalyst
Diesel Particulate Filter Exhaust
Gas
35 Hokkaido University
DPNR
によるNOx•PM
同時浄化のメカニズムNOx
Lean Rich
PM
Reduction of NOx HC
CO
H2O N2
NO+O*
Pt
CO2
Filter substrate
O* O*
CO2
Pt PM
Filter substrate Storage of NOx
NO O2
NO2+O*
Filter substrate Pt
NO+O2 CO2
Pt O*
PM NO2
Filter substrate
NOx Storage Catalyst
Continuous oxidation Continuous oxidation
NOx Storage Catalyst
36 Hokkaido University
スーパークリーンディーゼルのシステム構成
Intake air
EGR cooler
Exhaust gas Exhaust port injector
EGR valve
Air fuel ratio sensor
Diesel throttle
Pressure difference sensor
Gas temperature sensor
New common rail system
DPNR catalytic converter
Oxidation catalytic converter
37 Hokkaido University
これからのJE05モード(重量車: 3.5 t以上)
38 Hokkaido University
実害を考えたNOx規制を!
•
大切なことは環境基準を満たすことではなく,実 害を出さないことである•
実害 =NO
2直接(
沿道)
・・・・ 実害小?光化学スモッグ
(
広域)
酸性雨
(
地球的規模) ・・・・
寄与度小•
沿道対策には渋滞緩和,道路構造の改善など が重要•
光化学スモッグには,非メタンHC対策も不可欠•
NOx対策は常にコストアップとCO2増加に直結39 Hokkaido University
新たなる試練
― ナノ微粒子 ―
40 Hokkaido University
ナノ微粒子の特性と健康影響
呼吸器系
・ 健康影響
― ナノ微粒子(50 nm以下): 肺胞部への吸入による沈着率が高い
ディーゼル排気微粒子の粒径分布と沈着率
JCAPⅡホームページより
41 Hokkaido University
解明されつつあるナノ微粒子の正体
•
大部分が揮発成分である新長期規制対応エンジンでは微量?
寿命が短い?
•
主成分は燃料または潤滑油に近い炭化水素 発がん性・有害性は低い?
•
酸化触媒により激減する*今後の検討結果を待つべき
42 Hokkaido University
21 世紀初頭は,
まだまだ石油が中心
43 Hokkaido University
エネルギー供給見通し
2000
生産量(石油換算百万トン)
1000 2000 3000
0
風力
2100 2080
2060 2040
2020
天然ガス 石油
石炭 水力
光電池
原子力 バイオマス
新開発
年 代
44 Hokkaido University
エネルギー供給見通し−21世紀の燃料は?
少なくとも 2030 年までは石油の時代は続く
可採埋蔵量の増加 > 需要の増加
45 Hokkaido University
ディーゼルエンジンと燃料
ー 適材適所の重要性 ー
46 Hokkaido University
燃料の製造と
CO
2製油所で燃料1
L
を製造する際のCO
2発生量277 g : 150 g
ガソリン 軽油
* ガソリンを
400
万KL
減らし,軽油を400
万KL (
軽油需要量の約10%)
増やすと製油所から のCO
2排出量は最小となる.現状より
170
万トンのCO
2削減可能47 Hokkaido University
軽油の性状改善
現状軽油に求められる性状
微粒子低減
• 芳香族分,いおう分の低減
• 蒸留温度の低減(軽質化)
後処理(酸化触媒, NOx 吸蔵還元)
• いおう濃度 <
10 ppm (Sulfur free)
48 Hokkaido University
燃料の適材適所利用
• 直留灯油留分をディーゼル用に
• 軽油の重質留分を重油の品質改善に
• 重油から分解灯油(暖房用)の生産
• 天然ガスの暖房への利用
49 Hokkaido University
今後の課題とまとめ
ー さりげなさの重要性 ー
50 Hokkaido University
エンジン燃焼技術
排気浄化技術 燃料製造技術
三本の矢
制御技術
・自動車会社,石油会社,化学会社の相互協力
・適切な行政指導
・国民の正しい理解