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(1)

中国における風力発電政策の基礎研究 : 風力発電 の発展と困難に関する社会学的考察

著者 高 瑜

著者別名 GAO Yu

その他のタイトル The Foundational Research on Wind Power Policy in China : Sociological Investigation on the Developments and Difficulties of Wind Power

ページ 1‑227

発行年 2015‑03‑24

学位授与番号 32675甲第351号

学位授与年月日 2015‑03‑24

学位名 博士(政策科学)

学位授与機関 法政大学 (Hosei University)

URL http://doi.org/10.15002/00011752

(2)

法政大学審査学位論文

中国における風力発電政策の基礎研究

――風力発電の発展と困難に関する社会学的考察――

高 瑜

(3)

論文要旨 中国における風力発電政策の基礎研究

――風力発電の発展と困難に関する社会学的考察

人間社会は、エネルギー危機の克服、環境汚染の制御、地球温暖化の防止という三つの 問題を抱えている。再生可能エネルギーを発展させることは、上記のような問題を改善す るために重要な方策である。風力発電は、「先行馬」として、再生可能エネルギーの発展の 先頭に立っており、世界中でも、現在70以上の国で展開されている。ところが、風力発電 の大規模な発展の過程においては、多くの困難が出現した。特に、中国は、風力発電を実 施する「世界大国」として、欧米先進国と比べてより大きい実績を挙げているが、同時に より深刻な困難に直面している。

例えば、中国における風力発電の発展の実績は、二つの「世界第一位」を成し遂げた。二 つの「世界第一位」とは、まず、風力発電機設置済みの総容量が2010年末から今までの累 計で「世界第一位」を維持していることであり、さらに送電網に接続した設置済みの風力 発電機の総容量が2012年6月から今までの累計で「世界第一位」をしめていることである。

これは、世界的に注目されるべき実積であると言えよう。

しかしながら、このような実績を挙げながらも、中国における風力発電の発展は、4つの 代表的困難、すなわち「制御できない発展速度」、「消費の困難」、「接続の困難」、「送電網 の遮断」をはじめ、国の全体の計画目標の実現を妨げる深刻な困難に直面している。これ らの4つの代表的困難によって、風力発電の数量は減少し、風力発電所の経済的損失が増 加した。風力発電の発展において、これらの4つの代表的困難について研究を行うことは、

目下の困難の克服と将来の目標の実現にとって、極めて重要な意義がある。

これまで社会学の領域で中国の風力発電の発展課題が取り上げられたことはほとんどな く、中国の風力発電の発展過程で生じた4つの代表的困難というテーマが中心的に取り上 げられることもなかった。中国の風力発電の発展の4つの代表的困難に関する総合的社会 的要因は、責任企業、国、そして研究者からも看過されてきたのである。即ち、風力発電 システムの中に現れた風力発電政策の成否だけが焦点となり、風力発電システムを含んだ 全体の電力管理体制の大局の影響及び中国の総合的社会的背景のマクロ的影響は、論じら れることがなかった。

そこで本研究は、社会学的視点から、中国における風力発電の発展の4つの代表的困難 の実態と社会的特質を把握し、政策過程を批判的に検討し、電力体制の欠陥と風力発電の 困難との対応関係を分析し、総合的社会的メカニズムの分析枠組みに立脚し、風力発電政 策、電力体制、多様な社会体制という3つの水準で様々な経営システムの統合不足が風力 発電の発展の困難を引き起こしていることを明らかにする。

本論文の研究課題は、次の三つに分節される。

第1に、この4つの代表的困難を事例として、その社会的特質を把握し、「風力発電の発 展政策」過程における「風力発電の政策のミスと風力発電の4つの代表的困難との関係」

(4)

を解明し、多様な角度から問題の改善の可能性を検討することである。

第2に、「制御できない発展速度」・「消費問題」・「接続問題」などの風力発電の3つの 代表的困難を3つの事例として、組織社会学の「戦略分析」論により、「電力管理体制」の 水準において、「風力発電の発展の困難と電力管理体制の欠陥との対応関係」を社会学的に 解明することである。

第3に、「風力発電政策・電力体制・社会条件の複合的影響と風力発電の健全な発展との 因果関係」を解明し、上記のような研究を基盤にして、社会的メカニズムに関する既存の 理論と概念に立脚し、中国における風力発電の発展を規定する総合的社会的メカニズムに 関する理論的枠組みを構築することである。

本論文は次のように構成される。まず第Ⅰ部で、本論文の問題意識、社会的背景、理論 的視点、先行研究との関係などについて考察する(1-2章)。次に第Ⅱ部で、風力発電の4 つの代表的困難を事例として、この4つの事例を実証的に研究し、中国の風力発電が直面 する4つの困難の社会的特質を検討する(3-6章)。最後に第Ⅲ部で、風力発電の発展と困 難をめぐる理論的考察を行い、本研究を結論する(7-8章)。

序章では、中国における風力発電の発展をめぐる問題の所在を指摘し、本論の構成と社会 調査の概要を紹介した。

まず第Ⅰ部第1章では、風力発電の発展をめぐる従来の分析視点の継承すべき視点と限 界を検討し、風力発電の発展問題に関する社会学的研究の空白を指摘した。さらに、風力 発電の技術的特色を巡る風力発電の技術的難点及びこの克服の障害を記述し、巨大な出力 変動の制御問題という風力発電の本質的課題と中国の風力発電の発展にかかわる諸問題と を結びつけて、本研究の課題を設定した。最後に、4つの代表的困難の社会学的把握、風力 発電政策過程の段階的分析、電力体制の欠陥と風力発電の困難との対応関係の社会的分析、

風力発電にかかわる社会的メカニズムの構築のために本研究が採用する視点を提示した。

第2章では、政策推進に関する社会史として、中国における風力発電の発展史をたどって いた。具体的には、まず、モデルの導入段階(1986-1993)、産業化の確立段階 (1994-

2002)という初期の発展段階における発展の実情を回顧し、発展の段階的特徴をまとめた。

次に、競争入札と急速な発展すなわち「巧遅」段階(2003-2007)、風力発電基地の建設と 急速な発展すなわち「拙速」段階(2008-2014)という発展段階における実情を回顧し、

各段階の特徴をまとめた。最後に、風力発電の発展過程と風力発電政策の「成長」との対 応関係を解明した。

続く第Ⅱ部では、風力発電の4つの代表的困難を事例として、この4つの事例を実証的 に研究し、中国の風力発電が直面する4つの困難の社会的特質を検討した。まず第3章で は、4つの代表的困難の第一番目のものとして、「制御できない発展速度」の実態と社会的 特質を把握した。中国の風力発電の発展における第一の代表的困難として、「制御できない 発展速度」の実情を記述し、4つの「不均衡」という「制御できない発展速度」の本質を見 出し、さらに、この4つの「不均衡」に基づいて、「制御できない発展速度」とほかの3つ

(5)

の代表的困難との対応関係を説明した。その上で、風力発電の政策的影響という水準にお いて、この第一番目の困難の原因を解明し、世論の圧力、国家戦略の要求、政府の行為の 変化、「技術的難点」を改善する需要という4点から、「拙速」発展から「健全な発展」ま での可能性を分析した。

第4章では、第二の代表的困難として、「消費の困難」の社会的特質を把握した。すなわ ち、「消費の困難」の加速・深刻・調整に関する実情を記述し、「消費の困難」の現象から、

風力発電の地域問題という「消費の困難」の本質を見出した。次に、風力発電の政策的影 響という水準において、この困難な問題の原因を解明した。最後に、国家送電網会社の努 力、政府の行政力、大気汚染を制御する圧力、風力発電の「技術的難点」を改善する推進 力という4点から、風力発電の「消費の困難」を改善する可能性を分析した。

第5章では、第三の代表的困難として、「接続の困難」の社会的特質を把握した。すなわ ち、「接続の困難」の発生・拡大・調整に関する実情を記述し、「物理的接続の困難」、「機 能的接続の困難」、「技術的接続の困難」という「接続の困難」の三種類を区別し、定義を 行った。風力発電系統の三種類の未形成という「接続の困難」の本質を見出し、風力発電 の政策的影響における問題の原因を解明し、国家送電網会社の努力、政府の行政力、「技術 的難点」を改善する推進力という3点から、風力発電の「接続の困難」を改善する可能性 を分析した。

第6章では、第四の代表的困難として、「送電網の遮断」事故の社会的特質を把握した。

すなわち、全国における「送電網の遮断」事故の実態及び最も深刻な事故である酒泉風力 発電基地における「送電網の遮断」事故の実態を記述し、社会―技術システム論の視点か ら、関連組織の技術システムの弱さが送電網の遮断事故を引き起こした社会過程と遮断事 故を解決する直接的対策を解明し、「技術」と「社会的な技術」との区別を通じて、「送電 網の遮断」事故の背後にある社会的原因を明らかにした。最後に、技術系統の改善の程度、

政策の作用、関連組織の連携作動という諸点で、送電網の遮断事故を防止する可能性を検 討した。

最後に第Ⅲ部では、風力発電の発展と困難をめぐる理論的考察を行った。まず第7章で は、電力体制において複数の経営システムの経営問題を解明し、電力体制改革の歩みを回 顧し、電力体制の諸欠陥をまとめ、組織社会学における「戦略分析」論の視点から、電力 体制の欠陥と「制御できない発展速度」、「消費の困難」、「接続の困難」という三つの代表 的困難との対応関係を分析した。

第8章では、中国における風力発電の社会的メカニズムに関する理論研究と実証分析を 行った。具体的には、まず、風力発電にかかわる社会的メカニズムの構造を解析し、当該 の社会的メカニズムの構造の変動に影響した力を分析し、社会的メカニズムの構造に立脚 し、風力発電の発展の3つの顕著な特徴をまとめた。次に、Mertonの「構造―機能」論に よって、風力発電にかかわる社会的メカニズムの機能と風力発電の発展との対応関係を分 析した。最後に、中国における風力発電の発展にかかわる複数の経営システムの統合不足

(6)

が二つの文脈で見られることを指摘し、中国における風力発電の発展にかかわる複数の経 営システムの統合の理想的状態及び現実的改善の方向を示し、「取り組みの場」の空洞化と 複数の経営システムの統合不足との対応関係を説明し、当該の社会的メカニズムの経営状 況に基づいて、社会的メカニズムの経営から見た発展の規則性を引き出した。

以上の検討を通じて、本研究は、風力発電政策と電力体制と社会体制という三つの水準 で風力発電の発展と困難に関する社会的要因と社会的特質を論証し、風力発電にかかわる 総合的社会的メカニズムの分析枠組みを構築し、風力発電の発展問題の社会学的研究にお ける基本的視点を示した。

(7)

「中国における風力発電政策の基礎研究

――風力発電の発展と困難に関する社会学的考察」

序章

1 問題の所在 1 2 本論の構成 2 3 調査の概要 5

第Ⅰ部 問題意識の背景と歴史的回顧

第1章 風力発電の発展問題についての社会学研究――問題関心と視点の提示 6 1 中国における風力発電の発展実情の概観 6

1.1風力発電の発展の実績 6 1.2 風力発電の発展の困難 6

2 風力発電の技術的特色と研究課題の設定 8 2.1技術的長所 8

2.2技術的難点 11

2.3 課題としての「難点の克服」 16 2.4 研究課題の設定 17

3 風力発電の発展問題に対する先行研究の問題点 17 3.1 実績の重視と困難の軽視 17

3.2 発展の困難に対する電力管理体制からの影響を見過 18

3.3 政策作用の有効な発揮に対する社会体制からの制約を看過 20

3.4 風力発電の発展問題に対する社会学の研究の空白 20

4 風力発電政策と電力体制と社会条件からの「複合影響」の概観 21 4.1 風力発電の発展に影響する諸要素の種類 21

4.2 発展段階及び発展政策の概要 22

4.3 発展の4つの代表的困難に対する「風力発電政策」からの影響 23

4.4 発展の4つの代表的困難に対する「電力管理体制」からの影響 25

4.5 発展の4つの代表的困難に対する「社会的条件」からの影響 27 5 「風力発電の発展問題」についての理論的視点を展開する可能性 31

5.1 「風力発電の発展問題」の性格の位置づけ: 総合的社会問題 31

5.2 風力発電の発展において「中範囲の理論」及びこの示唆 31 5.3 「社会的メカニズム」論の示唆及びこの応用 33

5.4 主体の行為を把握する「戦略分析」及びこの実証応用 35 5.5 社会・技術システム論及びこの示唆 37

(8)

第2章 中国における風力発電の発展史――政策推進に関する社会史 38 1 初期の発展段階における実情と特徴(1986-2002) 38

1.1 モデルの導入段階(1986-1993) 38 1.2 産業化の確立段階 (1994-2002) 39

2 急速な発展の段階における実情と特徴(2003-2014) 42

2.1 競争入札と速い発展――「巧遅」段階(2003-2007) 42

2.2 風力発電基地が齎した急速な発展――「拙速」段階(2008-2014) 45 3 発展の実積を上げる要因――政策推進の発展史 48

3.1 風力発電の発展過程と風力発電政策の「成長」 48

3.2 風力発電機の製造の国産化に関する政策の推進力 48

3.3 風力発電の価格政策に関する推進力 51

3.4 国の財政補助による支援に関する政策の推進力 53

まとめ 54

第Ⅱ章 風力発電の発展に伴う4つの代表的困難――4つの事例の研究

第3章 制御できない発展「速度」 ――「拙速」と「巧遅」の闘い 55 1 制御できない発展「速度」の実情 55

1.1 間断なく拡大された風力発電基地計画 55

1.2 「大躍進」発展の実情 57

1.3 制御できていない発展「速度」を研究する必要性 59

2 制御できない発展「速度」の本質的特徴――4つの問題群の「構造的対立」60 2.1 「三北」地域の急速な開発と他の地域の開発の後進性 60

2.2 集中型開発の速さと分散型開発の遅さ 61 2.3「ハード」建設と「ソフト」建設の不均衡 62 2.4 調整電源の遅い建設と風力発電所の速い建設 63 3 制御できない発展速度とほかの三つの代表的困難 64 3.1 開発地域の「不均衡」がもたらした負の結果 64 3.2 開発類型の「不均衡」がもたらした負の結果 65

3.3 「ハード」建設と「ソフト」建設の不均衡がもたらした負の結果 66 3.4 調整電源・風力発電所の建設の「不均衡」がもたらした負の結果 67 3.5 制御できない発展速度とほかの三つの代表的困難 68

4 制御できない発展「速度」と政策的影響 69

4.1 審査権限の移管政策と発展「速度」に対する制御の終息(2005-2011) 69 4.2 審査権限の撤回政策と発展「速度」の短期間の調整(2012-2013) 70 4.3 審査権限の再移管と発展「速度」の変化(2014) 71

(9)

5 「拙速」発展から「健全な発展」までの可能性 72 5.1世論の圧力: 社会から良質な発展へのアピール 72 5.2社会背景: 国家戦略の要求 73

5.3 政府の行為の変化:態度の変化と措置の追加 73

5.4「技術的難点」を改善する需要:発展速度と「技術的難点」の関係 75 まとめ 77

第4章 風力発電の「消費の困難」――地元消費と外部消費の両方の困難 78 1 風力発電の「消費の困難」の加速・深刻・調整 78

1.1「消費の困難」に関する実態 78

1.2 風力発電の盲目的な拡張と「消費の困難」との対応関係 81 1.3 風力発電の「消費の困難」を研究する必要性 82

2 風力発電の「消費の困難」に関する本質的特徴 83

2.1 どのような「入口」から風力発電の「消費の困難」に関する本質の研究に着眼す るか 84

2.2 諸省における風力発電の生産・消費の矛盾の相違

―― 一地域一特徴 85 2.3 「三北」地域における風力発電の生産・消費の矛盾

――特色地域の「重点問題」87 2.4 全国における風力発電の生産・消費の矛盾

――「三北」地域と「三華」地域 89 2.5 全国的範囲における風力発電の需給の均衡を如何に実現するか 90

3 風力発電の「消費の困難」の要因と政策的影響 91 3.1 送電網の建設計画の遅れ 91

3.2 調整電源の建設計画の遅れ 93 3.3 風力発電の立地計画の非合理 94

3.4 関連政策の執行失敗がもたらした「連鎖的反応」 97

4 風力発電の「消費の困難」を改善する可能性 99 4.1 国家送電網会社の努力 99

4.2 政府の行政力 103

4.3 大気汚染を制御する圧力 105

4.4 風力発電の「技術的難点」に対して改善の推進力 107 まとめ 108

(10)

第5章 風力発電の「接続の困難」――物理的困難から、技術的困難まで 109 1 風力発電の「接続の困難」の発生・拡大・調整 109

1.1 風力発電の「接続の困難」に関する分類 109 1.2 風力発電の「接続の困難」に関する実情 109 1.3 風力発電の「接続の困難」を研究する必要性 113 2 風力発電の「接続の困難」に関する本質

――風力発電系統の未形成の三種類の統合 114

2.1 どのような研究の「入口」から「接続の困難」の本質的研究に着眼するか 114

2.2 送電網の建設が風力発電所の建設に遅れた「物理的接続の困難」 116

2.3 風力発電の消費の困難がもたらした「機能的接続と物理的接続との複合型困難」

117

2.4 LVRT技術の検査と改造の後進がもたらした「技術的接続の困難」 118

2.5 風力発電の「接続の困難」の改善の方策を如何に考えるか 119 3 風力発電の「接続の困難」の要因と政策的影響 119

3.1 「消費の困難」を改善する政策の不利

――機能的接続の困難 119 3.2 関連技術の標準の制定の後れ

―― 技術的接続の困難 121

3.3 政策の欠点がもたらした「連鎖的反応」

――物理的接続の困難 122 4 風力発電の「接続の困難」を改善する可能性 124

4.1 国家送電網会社の努力 124 4.2 政府の行政力 125

4.3 風力発電の「技術的難点」に対して改善の推進力 127 まとめ 128

第6章 送電網の大規模な遮断の事故

――「技術」と「社会的な技術」の区別 129 1 全国における送電網の遮断事故の実情 129

1.1 全国における送電網遮断事故の頻繁な発生 129

1.2 事故防止の対策及び効果 130

2 酒泉風力発電基地の送電網遮断事故――最も深刻な事故 132

2.1 優利な自然的条件―好条件の地理と豊富な風力資源と広い土地面積 132 2.2 巨大な開発計画と急速な推進情況 133

2.3 開発の急速な推進が齎した送電網遮断事故 136

2.4 送電網遮断事故に対する関連組織主体の対処過程―政府主体と事業主体 137

(11)

3 関連組織の弱い技術システムと風力発電の送電網の遮断事故

-―社会-技術システム論の視点から 138 3.1 社会-技術システム論からの示唆 138

3.2 送電網遮断事故を引き起こした直接的原因 141

――関連組織の弱い技術システム 3.3 送電網遮断事故を解決する直接的対策 142

――関連組織の技術システムの改善 4 送電網遮断事故の背後にある社会的原因 144

―「社会的な技術」と「技術」の区別の視点から 4.1 社会-技術システム論の限界と欠点 144

4.2 「技術」と「社会的な技術」の概念を区別する学問的意義と実践的意義 145 4.3 社会的な技術と送電網遮断事故の社会的原因 146

5 送電網の遮断事故を防止する可能性 147 5.1 技術系統の改善の程度 147

5.2 政策の作用と関連組織の連携作動 148 まとめ 151

第Ⅲ部 理論的分析と政策提言の準備

第7章 中国における風力発電の発展の困難と電力管理体制の欠陥

――風力発電の発展の三つの代表的困難を事例として 152 1 電力体制改革の歩みと現状 152

1.1 電力体制改革の歩み 152

1.2 「中途半端」な電力体制改革の現状 154 2 電力管理体制と複数の事業システムの経営 155

2.1 電力管理体制と風力発電システムの複数の事業システムの経営 155

2.2 電力管理体制の欠陥と風力発電の発展の困難 156

3 電力体制の欠陥は、如何に、風力発電の「消費の困難」をもたらしたか 157

3.1 電力体制の欠陥の与える風力発電の発展への悪影響 157

3.2 関連する法制度の制定において、中国政府が置かれた「構造化された場」 157

3.3 電力管理体制の欠陥が、よい政策の実行を妨げている 158

3.4 風力発電優先購入に対する送電網会社の積極性を妨げる「構造化された場」 160 4 送電網会社の独占的な経営と風力発電の接続の困難 162

4.1 独占された送電網建設と風力発電の「物理的接続の困難」 162 4.2 「 LVRT機能検査」の独占と風力発電の「技術的接続の困難」 163

4.3 独占的な送電事業組織における役割遂行を規定していたミクロ的「利害関心」 164

(12)

5 国有風力発電所の独占経営と制御できない発展「速度」 165

5.1 風力発電所に関する多様な経営主体の表面的競争と国有企業の実質的独占 165

5.2 風力発電所において、国有企業の実質的独占がもたらした利点と弊害 166

5.3 制御できない発展「速度」が国有風力発電所によって直接的に推進された社会過程 167 第8章 中国における風力発電の社会的メカニズに関する理論的研究と実証分析 171 1 風力発電にかかわる社会的メカニズムの概要 171

1.1 当該の社会的メカニズムの定義と特徴 171 1.2 発展実情の分析と研究用具の選択 173

1.3 風力発電にかかわる社会的メカニズムの構造・機能・経営 174 2 風力発電にかかわる社会的メカニズムの構造 175

2.1 風力発電にかかわる社会的メカニズムの主体 175

2.2 風力発電にかかわる社会的メカニズムの客体――主体に支配された社会要素 179 3 当該の社会的メカニズムの構造の変動に影響した力 181

3.1 4種類の「利害関心」の内面化――主体の行為の動機 181 3.2 「学者型」の公務員と「独断型」の官僚との「ゲーム」 184 3.3 「良心型学者」と「官僚型学者」との闘い 185

3.4 「民営企業」と「国有企業」との競争 186

3.5 「利害関心」の分極と「利害調整」の力――主体変動の力 187 4 社会的メカニズムの構造と風力発電の発展の特徴 188

4.1 社会的メカニズムの構造を基盤にして生み出される発展の特徴 188

4.2 国営企業の主力支援を基盤にした国家意志の推進力――国の政治経済の影響力190 4.3 国家のマクロ的な経済政策との密接なつながり――国の経済政策の影響 192 4.4 政策推進の依存――市場の能力の弱さと政府の過度関与 194

5 風力発電にかかわる社会的メカニズムの機能と風力発電の発展 196 5.1 社会体制による正機能の「合力」と風力発電の実績の獲得 196

5.2 地理資源要素による正機能の「合力」と発展の実績の獲得 197

5.3 個人・組織行為による正機能の「合力」と発展の実績の獲得 197

5.4 諸社会的サブメカニズムによる正機能の「合力」と発展の実績の獲得 197 6 当該社会的メカニズムの経営状況と風力発電の発展の規則 198

6.1 欠陥がある経営現状の二表現 199

6.2 経営システムの理想的状態と改善方向 201

6.3 「取り組みの場」の空洞化による風力発電の発展の困難 202

6.4 電力体制・社会体制の制約と複数の経営システムの統合不足 203

6.5 複数の経営システムの状態と発展の規則性 205 まとめ 207

(13)

結論 208 参考文献 212 謝辞 220

附 1 4つの代表的困難のための社会的要因関連図 222 附 2 4つの代表的困難を生み出した社会的要因関連表 223

附 3 中国における風力発電の発展の4つの歴史的段階の特徴及び政策の「成長軌跡 」(表)

224 附 4 中国における風力発電の発展の 4 つの代表的困難の実態(表) 225

附 5 中国における風力発電の 4 つの代表的困難の社会的特質(定義、特徴、実質、研究 入 口) 226

附 6 本研究の独自性と貢献 227

(14)

序章

1 問題の所在

中国における風力発電の発展は、三十年間を経てきた歴史的過程の中で、特に、21 世紀 になってから、大規模化の発展段階に進んでいるが、世界的に注目されるべき実積と前代 未聞の困難が共存しているという局面にある。

まず、中国における風力発電の発展は、最近の 5 年半の間に、送電網に接続した設置済み の風力発電設備の総容量が 200 万 kW(2006 年末)から 5258 万 kW(2012 年 6 月)まで、急 拡大した。これは、欧米における風力発電の 15 年間の発展に相当する発展実積である(中 国能源报,20120910)。中国における風力発電の発展の実績は、二つの「世界第一位」を成 し遂げた。二つの「世界第一位」とは、まず、風力発電機の総容量が 2010 年末から今まで の累計で、「世界第一位」を維持していることであり、さらに送電網に接続した風力発電機 の総容量が 2012 年 6 月から今までの累計で、「世界第一位」をしめていることである。こ れは、世界的に注目されるべき実積であると言えよう。

次に、中国における風力発電の発展は、4 つの代表的困難をはじめ、将来において、国の 全体の計画目標の実現1を妨げる深刻な困難に直面している。中国における風力発電の発展 の 4 つの代表的困難は、それぞれ、「制御できない発展速度」と「消費の困難」と「接続の 困難」と「送電網の遮断」である。風力発電の 4 つの代表的困難がもたらした直接的結果 は、風力発電の数量の減少と風力発電所の経済的損失が増加したことである。風力発電の 発展において、この 4 つの代表的困難についての研究は、現在の困難の克服と将来の目標 の実現にとって、極めて重要な意義がある。

本研究の第 1 の目的は、社会学的視点から、中国における風力発電の発展の過程で生じた 4 つの代表的困難の実態と社会的特質を把握することである。第 2 の目的は、風力発電の発 展に関する総合的社会的メカニズムに立脚し、風力発電政策、電力管理体制、社会体制と いう 3 つの水準において、風力発電発展の 4 つの代表的困難に関する総合的社会的要因を 解明することである。第 3 の目的は、4 つの代表的困難を克服し、中国の風力発電の健全な 発展の推進のための政策提言を行うための準備をすることである。

中国における風力発電の 4 つの代表的困難をどのような視点と関心から主題化するかに ついて述べたい。本論文の問題関心(研究課題)は、次の三つに分節される。

第 1 に、この 4 つの代表的困難を事例として、その社会的特質を把握し、「風力発電の発 展政策」過程における「風力発電の政策のミスと風力発電の 4 つの代表的困難との関係」

1 中国政府が制定した「第十二次五カ年計画」においては、風力発電の発電量は、2015年 と2020年に、それぞれ、1900億kwhと3900億kwhという計画目標に達する予定である。

実際には、風力発電の発電量は、2010年と2011年と2012年に、それぞれ、おおよそ、500 億kwhと715億kwhと1008億kwhに達した。つまり、現在の発展の状況は、将来の計 画目標と比べて、大きい差がある。

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を解明し、多様な角度から問題の改善の可能性を検討することである。

第 2 に、風力発電の「消費問題」と「接続問題」と「制御できない発展速度」問題を 3 つの事例として、「電力管理体制」の水準において、「風力発電の発展の困難と電力管理体 制の欠陥の制約との関係」を社会学的に解明することである。

第 3 に、総合的社会的メカニズムの水準において、「風力発電政策・電力体制・社会体制 の総合的影響と風力発電の健全な発展との関係」を解明し、上記のような研究を基盤にし て、中国における風力発電の発展を規定する総合的社会的なメカニズムに関する理論的枠 組みを構築することである。

社会学の領域で中国の風力発電の発展課題が取り上げられたことはほとんどなく、中国の 風力発電の発展過程で生じた 4 つの代表的困難というテーマが中心的に取り上げられるこ ともなかった。中国の風力発電の発展の 4 つの代表的困難に関する総合的社会的要因は、

責任企業、国、そして研究者からも看過されてきたのである。即ち、風力発電システムの 中に現れた風力発電政策の成否だけが注目される焦点となるのみで、風力発電システムを 含んでいる全体の電力管理体制の影響及び総合的社会的条件のマクロ的影響は、看過され てきたのである。

2 本論の構成

本論文は次のように構成される。まず第Ⅰ部で、本論文の問題意識、社会的背景、理論 的視点、先行研究との関係などについて考察する(1-2 章)。次に第Ⅱ部で、風力発電の4 つの代表的困難を事例として、この 4 つの事例を実証的に研究し、中国の風力発電が直面 する 4 つの困難の社会的特質を検討する(3-6 章)。最後に第Ⅲ部で、風力発電の発展と困 難をめぐる理論的考察を行い、本研究を結論する(7-8 章)。

序章では、中国における風力発電の発展をめぐる問題の所在を指摘し、本論の構成と社会 調査の概要を紹介した。

まず第Ⅰ部第 1 章では、風力発電の発展をめぐる従来の分析視点の継承すべき視点と限 界を検討し、風力発電の発展問題に関する社会学的研究の空白を指摘した。さらに、風力 発電の技術的特色を巡る風力発電の技術的難点及びこの克服の障害を記述し、巨大な出力 変動の制御問題という風力発電の本質的課題と中国の風力発電の発展にかかわる諸問題と を結びつけて、本研究の課題を設定した。最後に、4 つの代表的困難の社会学的把握、風力 発電政策過程の段階的分析、電力体制の欠陥と風力発電の困難との対応関係の社会的分析、

風力発電にかかわる社会的メカニズムの構築のために本研究が採用する視点を提示した。

第 2 章では、政策推進に関する社会史として、中国における風力発電の発展史をたどって いた。具体的には、まず、モデルの導入段階(1986-1993)、産業化の確立段階 (1994-

2002)という初期の発展段階における発展の実情を回顧し、発展の段階的特徴をまとめた。

次に、競争入札と急速な発展すなわち「巧遅」段階(2003-2007)、風力発電基地の建設と 急速な発展すなわち「拙速」段階(2008-2014)という発展段階における実情を回顧し、

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各段階の特徴をまとめた。最後に、風力発電の発展過程と風力発電政策の「成長」との対 応関係を解明した。

続く第Ⅱ部では、風力発電の 4 つの代表的困難を事例として、この 4 つの事例を実証的 に研究し、中国の風力発電が直面する 4 つの困難の社会的特質を検討した。まず第 3 章で は、4 つの代表的困難の第一番目のものとして、「制御できない発展速度」の社会的特質を 把握した。中国の風力発電の発展における第一の代表的困難として、「制御できない発展速 度」の実情を記述し、4 つの「不均衡」という「制御できない発展速度」の本質を見出し、

さらに、この 4 つの「不均衡」に基づいて、「制御できない発展速度」とほかの 3 つの代表 的困難との対応関係を説明した。その上で、風力発電の政策的影響という水準において、

この第一番目の困難の原因を解明し、世論の圧力、国家戦略の要求、政府の行為の変化、「技 術的難点」を改善する需要という 4 点から、「拙速」発展から「健全な発展」までの可能性 を分析した。

第 4 章では、第二の代表的困難として、「消費の困難」の社会的特質を把握した。すなわ ち、「消費の困難」の加速・深刻・調整に関する実情を記述し、「消費の困難」の現象から、

風力発電の地域問題という「消費の困難」の本質を見出した。次に、風力発電の政策的影 響という水準において、この困難な問題の原因を解明した。最後に、国家送電網会社の努 力、政府の行政力、大気汚染を制御する圧力、風力発電の「技術的難点」を改善する推進 力という 4 点から、風力発電の「消費の困難」を改善する可能性を分析した。

第 5 章では、第三の代表的困難として、「接続の困難」の社会的特質を把握した。すなわ ち、「接続の困難」の発生・拡大・調整に関する実情を記述し、「物理的接続の困難」、「機 能的接続の困難」、「技術的接続の困難」という「接続の困難」の三種類を区別し、定義を 行った。風力発電系統の三種類の未形成という「接続の困難」の本質を見出し、風力発電 の政策的影響における問題の原因を解明し、国家送電網会社の努力、政府の行政力、「技術 的難点」を改善する推進力という 3 点から、風力発電の「接続の困難」を改善する可能性 を分析した。

第 6 章では、第四の代表的困難として、「送電網の遮断」事故の社会的特質を把握した。

すなわち、全国における「送電網の遮断」事故の実態及び最も深刻な事故である酒泉風力 発電基地における「送電網の遮断」事故の実態を記述し、社会―技術システム論の視点か ら、関連組織の技術システムの弱さが送電網の遮断事故を引き起こした社会過程と遮断事 故を解決する直接的対策を解明し、「技術」と「社会的な技術」との区別を通じて、「送電 網の遮断」事故の背後にある社会的原因を明らかにした。最後に、技術系統の改善の程度、

政策の作用、関連組織の連携作動という諸点で、送電網の遮断事故を防止する可能性を検 討した。

最後に第Ⅲ部では、風力発電の発展と困難をめぐる理論的考察を行った。まず第 7 章で は、電力体制において複数の経営システムの経営問題を解明し、電力体制改革の歩みを回 顧し、電力体制の諸欠陥をまとめ、組織社会学における「戦略分析」論の視点から、電力

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体制の欠陥と「制御できない発展速度」、「消費の困難」、「接続の困難」という三つの代表 的困難との対応関係を分析した。

第 8 章では、中国における風力発電の社会的メカニズムに関する理論研究と実証分析を 行った。具体的には、まず、風力発電にかかわる社会的メカニズムの構造を解析し、当該 の社会的メカニズムの構造の変動に影響した力を分析し、社会的メカニズムの構造に立脚 し、風力発電の発展の 3 つの顕著な特徴をまとめた。次に、Merton の「構造―機能」論に よって、風力発電にかかわる社会的メカニズムの機能と風力発電の発展との対応関係を分 析した。最後に、中国における風力発電の発展にかかわる複数の経営システムの統合不足 が二つの文脈で見られることを指摘し、中国における風力発電の発展にかかわる複数の経 営システムの統合の理想的状態及び現実的改善の方向を示し、「取り組みの場」の空洞化と 複数の経営システムの統合不足との対応関係を説明し、当該の社会的メカニズムの経営状 況に基づいて、社会的メカニズムの経営から見た発展の規則性を引き出した。

最後に、本研究の課題がどの程度達成されたか確認し、さらに今後の課題を提示し、結 論とする。

3 調査の概要

筆者は、中国の風力発電の発展問題を社会学的に研究するために、2011 年 5 月から 2013 年 9 月まで、北京、河北、内蒙古で、5 回の社会調査を行った。第 1 回の調査は、2011 年 5 月下旬から 2011 年 6 月上旬、第 2 回の調査は、2011 年 8 月中旬から 2011 年 9 月上旬、第 3 回の調査は 2011 年 12 月上旬に展開された。第 4 回の調査は、2012 年 8 月中旬に展開さ れ、第 5 回の調査は、2013 年 8 月下旬から 9 月中旬にかけて行った。その中、第 1 回―第 4 回の社会調査の主な内容は、北京で専門家の聞き取り調査を行ったことであるが、第 5 回 の社会調査の主な内容は、北京で専門家の聞き取り調査を実施するとともに、河北、内蒙 古で、風力発電所・風力発電が送電網に接続する LVRT 機能の検査機関への見学と現場の聞 き取りといった現場での参与観察を行ったことである。

本研究が分析の対象とするのは、文献や行政資料といった文書資料のほか、調査によって 得られた質的データである。本研究における中国の風力発電の発展困難の実証研究と事例 研究は、次の聞き取り調査、現場観察、ドキュメント分析などの調査方法で得られたデー タに基づいて、行われた。具体的には、下記のような三つのものである。

第 1 に、北京と他の地方では、表 0.1 に纏められた調査対象として、専門家の聞き取り調 査を実施した。

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表 0.1 中国における聞き取り調査の主要対象者

行政関連

·中国環境保護部

·国家発展改革委員会のエネルギー研究所

·中国国務院発展研究中心

·国家エネルギー局

企業関連

•内蒙古の巴音風力発電所

•国家送電網会社のエネルギー研究院

•国家送電網会社の中国電力科学研究院の新エネルギー研究所

•国家レベルの LVRT 機能検査基地

業界協会 •中国資源総合利用協会再生可能エネルギー専門委員会 研究機関 •中国再生可能エネルギー学会

NGO Greenpeace. Beijing office

第 2 に、現場の参与観察を実施した。具体的には、内蒙古での巴音風力発電所を見学した り、河北省張家口市での風力発電の LVRT 機能の検査機関を現場で観察したりした。

第 3 に、ドキュメント分析を行った。詳しくは(1)中国政府の公開公文、政府のコンピュ ータウェブサイト、国家発展改革委員会のエネルギー研究所が作成した「中国における風 力発電発展の報告」から収集した資料,(2)中国水電水利規画設計総院が作成した中国の風 力発電の建設状況の統計,(3)聞き取り調査の対象者から得られた書面資料,(4)新聞記事な どの資料を分析した。

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第Ⅰ章 風力発電の発展問題についての社会学研究

――問題関心と視点の提示 1 中国における風力発電の発展実情の概観

1.1 風力発電の発展の実績

中国における風力発電の発展実情には、大きな実績と困難の共存という二つの局面が見出 される。まず、発展の実績を述べてみたい。

中国における風力発電の発展の実績は、二つの「世界第一位」をおもに指している。二つ の「世界第一位」とは、まず、風力発電機の設置済みの総容量が累計で 2010 年末から現在 まで、「世界第一位」を維持していることであり、さらに送電網に接続した風力発電機の総 容量でも 2012 年 6 月から現在まで、「世界第一位」を占めていることである(表1−1参照)。

中国における風力発電の発展は、2007 年初頭からの 5 年半の間に、送電網に接続した風 力発電設備の総容量が 200 万 kw(2006 年末)から 5258 万 kw(2012 年 6 月)まで、急拡大 した。これは、欧米における風力発電の 15 年間の発展に相当する実積である。

つまり、風力発電の発展の実績に関する特徴は、短時間で、世界的に注目される急速な 増設を成し遂げたことである。短時間で世界に注目される実積をあげるとともに、前代未 聞の困難も出現したが、それは、風力発電の発展の「拙速主義」がもたらした結果である。

表 1-1 中国における風力発電の発展の実績

事項/年度 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 送電網に接続した設置

済みの風力発電設備の 総容量

1147 万 kW 1767 万 kW 3131 万 kW 4784 万 kW 6266 万 kW 世界第 1 位 設置済みの風力発電設

備の総容量

1200 万 kW 2580 万 kW 世界第 2 位

4473 万 kW 世界第 1 位

6236 万 kW 世界第 1 位

7532 万kW 世界第 1 位 出典:筆者作成

1.2 風力発電の発展の困難

中国における風力発電の「未来」の順調な発展を実現するために、目前に迫る困難と未来 の発展を妨げている問題を研究し、克服することは、過去の実績に満足することより、も っと重要であり現実的な意義がある。本論文が注目する風力発電をめぐる諸困難を概観し てみよう。

中国における風力発電の発展には、4 つの代表的困難をはじめ、将来的に、国の全体の計 画目標の実現を妨げうる深刻な困難が見出される。中国における風力発電の発展にかかわ る顕在化した 4 つの代表的困難とは、「制御できない発展速度」、「接続の困難」、「消費の困 難」、「送電網の遮断」である。風力発電量の 4 つの代表的困難がもたらした帰結は、風力

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発電の数量の減少と風力発電所の経済的損失が増加したことである。

あ)「制御できない発展速度」

「制御できない発展速度」とは、ウインド・ファームの建設速度に関するものである。ウ インド・ファームの建設量は、政府計画が定めた所期目標をより早期に実現したのだが、

その速度が送電網の建設速度と調和しないという状態を引き起こしたことである。ウイン ド・ファームの建設に関する「制御できない発展速度」とは、送電網の建設速度と調整電 源の建設速度、風力発電の消費の計画速度、風力発電の接続についての標準の制定の速度 が、ウインド・ファームの盲目的拡張の速度に遅れたことである。

ウインド・ファームの建設に関する「制御できない発展速度」が、風力発電の「接続の困 難」と「消費の困難」と「送電網の遮断の事故」という深刻な帰結を直接的に引き起こし たのである。

い)「接続の困難」

「接続の困難」、即ち、「送電網への接続の困難」とは、「風力発電所と送電網との物理的距 離」、風力発電の消費の困難がもたらした「機能的接続の障害」、LVRT 技術の欠如がもたら した「技術的接続の障害」という三つの制約によって、風力発電所の風力発電機が送電網 に接続し難くなったことである。

「接続の困難」の状況の相違点によると、「接続の困難」は「物理的接続の困難」と「技術 的接続の困難」と「機能的接続の困難」という三つの種類に区別できる。

「物理的接続の困難」とは、送電網の建設速度が風力発電所の建設速度におくれているた め、風力発電所が送電網に接続できないことである。「技術的接続の困難」とは、風力発電 の大規模な送電網遮断事故の後で、国の規定により、風力発電機が LVRT 機能の技術的検査 を受けなければならなくなり、この検査を受けなければ、送電網への接続の資格がないた め、送電網に接続できないことである。「機能的接続の困難」とは、風力発電の消費の困難 ゆえに、風力発電所と送電網との物理的距離がゼロでも、棄風によって風力発電所と送電 網の機能的未接続がもたされたことである。

中国における風力発電の「送電網への接続の困難」については、2007 年から 2011 年まで、

送電網に接続できなかった比率が 30%近くに達し、先進国の 10%の比率と比べて、とても 深刻な局面に置かれている。

う)「消費の困難」

「消費の困難」、即ち、「風力発電の消費の困難」とは、地元消費の能力が不足しているた め、或いは、対外輸送の送電網の建設が遅れているために、地元以外の外部地域で地元の 余分な風力発電が消費できないという事態のことを指す。

このような「消費の困難」の存在は、全体の送電網の安全な運営を維持するために、風

(21)

力発電所の風力発電機の一部の運転を停止するという「棄風」の方法で、風力発電機の発 電を禁止せざるをえないという状況を生み出す。

「棄風」の比率が高ければ、風力発電設備を使用する時間が低くなり、「棄風」がもたらし た直接的経済損失が多くなる。つまり、「棄風」の比率が高いほど、風力発電の「消費の困 難」はより深刻な状態と判断できる。

中国における「風力発電の消費の困難」については、2011 年と 2012 年に、「棄風」の比 率が、それぞれ 16%と 20%に達し、直接的経済損失が、およそ 66 億人民元と 100 億人民 元に達した。

え)「送電網の遮断」

「送電網の遮断」とは、ある故障のゆえに、風力発電機がつながっている送電網の系統電 圧が低くなっていたときに、LVRT 機能を備えていなかった風力発電機が、低電圧を乗り切 ることができず、送電網につなげたまま運転し続けることができなかったために、最終的 に、送電網から遮断し、送電網の遮断の事故を引き起こしたことである。

このうち、「風力発電機の LVRT 機能」とは、送電網側とか風力発電所側での故障のため に、風力発電所がつながっている送電網の系統電圧が低くなっていたときに、一定の電圧 の範囲内で、風力発電機が、送電網につながったまま運転し続ける機能である。この LVRT 機能は、英語で、Low Voltage Ride-Through(LVRT)であり、日本語では、「低電圧を乗り 切る機能」である。

「送電網の遮断」は、風力発電の出力の損失を引き起こしたり、送電網の安全な運営を脅 したりする。さらに、このような「送電網の遮断」が、大規模かつ頻繁に発生すれば、「送 電網の遮断」の事故がもたらす悪影響は、もっと深刻になる。中国における風力発電の送 電網の遮断事故は、2010 年に 80 回起きたが、2011 年 1 月から 2011 年 8 月にかけては、193 回も起きた。一回の事故で 50 万 KW 以上の出力の損失を引き起こした送電網の遮断事故は、

2010 年に 1 回起きたが、同じ規模の遮断事故は、2011 年 1 月から 2011 年 8 月にかけては、

12 回起きた。これらの大規模な「送電網の遮断」の事故は、頻繁に発生し、送電網の安全 な運営を脅していた。

2 風力発電の技術的特色と研究課題の設定

以上においては、中国の風力発電をめぐって顕在化している諸困難について記述したが、

これらの困難が生み出される根底には風力発電のどのような特色があるかを確認しておこ う。

2.1 技術的長所

風力発電の技術的長所については、一般的な状況と中国の特有な実情に即し、伝統的エ ネルギー及び原子力発電の特徴と比較しながら、検討してみたい。

(22)

あ)枯渇しない持続的エネルギー

再生可能エネルギーの代表格である風力発電は、勿論、枯渇しないエネルギーとして持 続的利用が可能だという再生可能エネルギーの最も顕著な長所を有している。風力発電は、

自然エネルギーとしての「風」の力を利用し大きな風車を回すことによって発電する。地 球上で、「風」が消失しない限り、風車を回す「エネルギー」は永久に存在する。だから、

風力発電は、枯渇しない持続性を有するエネルギーである。これは、風力発電の第一番目 の技術的長所である。

さらに、非持続的エネルギーという特色を有する伝統エネルギー(石油や石炭など)の 短所は、枯渇してしまうことである。世界中の人類は、伝統エネルギーの枯渇というエネ ルギー危機に直面しているが、中国人民も、例外ではない。石油と石炭を代表とする伝統 エネルギーの枯渇問題については、中国も直面している。

中国のエネルギー資源は豊富とはいえず、主要エネルギー資源の中国国内の可採年数 (R/P)は石炭 41 年、天然ガス 32 年、石油 11 年と推定されている1。エネルギーの専門家は 2030 年頃に中国の石油の輸入依存度は 7 割程度、天然ガスの輸入依存度は 4 割程度に高ま ると見ている2。つまり、中国の伝統エネルギーの枯渇問題及びエネルギーの国内需給ギャ ップは、中国が風力発電の技術的長所を大規模に利用することの必要性と緊急性の根拠に なっている。

い)環境保護の面での有利さ

風力発電は、自然エネルギーとしての「風」の力を利用して電気を作るから、風力発電 機は電力を作る過程の中で、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出しない。さらに、

風力発電は、スモッグという形での大気汚染の原因となる微小粒子状物質「PM2.5」を排出 せずに、また原発による汚染の原因となる放射性物質を排出せずに、作られる電気である。

だから、風力発電は、地球温暖化防止と大気汚染制御と原発事故減少に対して有効なグリ ーン電力である。一言で言えば、風力発電の技術は、環境に対して優しい技術であるが、

これは、風力発電の第二番目の技術的長所である。

ただし、風力発電は別のタイプの環境問題、すなわち、騒音問題、バード・ストライク 問題、緑地破壊問題を引き起こす可能性がある。これらの問題に対しては、有効な軽減策 が可能である。

中国の一次エネルギー消費の内訳は、2008 年時点で石炭が 14 億 630 万億 TOE3(構成比 70.2%)、石油が 3 億 7,570 万 TOE(18.8%)、天然ガスが 7,260 万 TOE(3.6%)、水力が 1 億 3,240 万 TOE(6.6%)、原子力が 1,550 万 TOE(0.8%)となっており、依然として石

1 2009 年BP統計、【中国レポート:第1 回】「中国のエネルギー需給と石油産業」、2009年 210

2 竹原 美佳、「中国のエネルギー安定供給戦略」、

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/61915.html

3「TOE」の意味は、石油換算トンである。

(23)

炭の比率が圧倒的に高い4。世界中、二酸化炭素排出量の最も多い国は、中国である(参照 図 1-1)。風力発電は、二酸化炭素などの温室効果ガス排出量の低減効果がある。さらに、

中国の「PM2.5」による大気汚染は、周知のとおり、前代未聞の深刻な程度に至っている。

風力発電は、「PM2.5」のゼロ排出効果がある。つまり、中国の伝統エネルギーの環境汚染 問題及び原子力安全問題は、環境保護の面で有利であるという風力発電の技術的長所をき わだたせ、それを大規模に利用する背景的要因となっている。

図1-1 世界諸国の二酸化炭素排出量

出典:JCCCP (Japan Center for Climate Change Actions)

う)設置コストの低下と経済性の上昇

風力発電の発電コストは、再生可能エネルギーのもう一つの代表といえる太陽光発電よ り、かなり低い(参照図 1-2)。そのため、風力発電は事業化が比較的容易である。さらに、

風力発電の大規模な発展に従って、風力発電の設置コストは年々下がっており、風力発電 の経済性が年々上昇している。これは、風力発電の第三番目の技術的長所である。

図 1-2 各エネルギーの発電コスト

出典:「エネルギー・環境会議コスト等検証委員会報告書」

4 2009 年BP統計、【中国レポート:第1 回】「中国のエネルギー需給と石油産業」、2009年2

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例えば、風車は大型になるほど割安になり、出力あたりのコストが下がる。現在では 1,500kW から 2,000kW の大型風車が登場している。 設置費用は地形や電力系統、道路など の状況によって大きく異なるが、一般的には約 24~37 万円/kW 程度かかるため、1,000kW の風車の設置には、約 2.4 億円~3.7 億円の初期投資が必要になる5(参照表 1-2)。

表 1-2 大型風力発電機の設置コスト

定格出力 基数 価格 設置コスト

1650kW 15 基 約 60 億円 24.0 万円/kW 1500kW 1 基 2 億 3000 万円 15.3 万円/kW 1000kW 10 基 約 30 億円 30.0 万円/kW 750kW 2 基 約 3 億 0000 万円 25.0 万円/kW 750kW 1 基 約 1 億 8000 万円 24.0 万円/kW 400kW 1 基 約 1 億 5000 万円 37.5 万円/kW

出典:NEDO 新エネルギーガイドブック

風力発電設備の国産化と風力発電の大規模な発展に従って、中国における風力発電の設 置コストは、間断なく下がってきた。「中国風力発電報告 2012 年次」のデータにより、中 国における風力発電の平均的な設置コストは、2011 年に、7000-8000 人民元/kW まで下が った。アメリカにおける風力発電の平均な設置コストは、2011 年に、2100$/kW(約 12000 人民元/kW)に達した6。つまり、設置コストの低下と経済性の上昇という風力発電の技術的 長所は、風力発電が伝統エネルギーを次第に取って代わるための「余地」と「可能性」を 提供している。

2.2 技術的難点

風力発電の技術的難点については、伝統的エネルギー及び原子力発電との対比を通じて、

一般的な状況と中国の特有な実情という二点に即して、検討してみよう。

2.21 一般的な技術的難点

本論文では、風力発電の一般的な技術的難点として、出力変動の巨大性と調整電源に対 する風力発電の依存性と予測の困難さという三つを指摘したい。

あ)出力変動の巨大性

風力発電機を回す「力」は、自然資源としての「風」である。風力発電の出力は、気象 条件によって大きく変動するため、電力品質(周波数、電圧)への影響が生じうる。風速

5小森規雄、「再生可能エネルギーの基礎知識――風力発電技術4課」、日本風力開発株式会社

6「美国风电发展现状分析」、2014 年 3 月、

http://www.sjjw.gov.cn/Web/ArtDetail.aspx?id=727&cid=87

(25)

や風向が変化することなどにより、出力が大きく変動するのである7。「風」の強弱は、風力 発電設備が作る風力発電の出力の多少を決定する。自由な「風」は常に一定の力で自由に 吹いている。特に、自由な「風」は、日や時間によって強く吹くこともあれば全く吹かな いこともある。「風」の強弱を調整することができないために、風力発電はどうしても安定 性に欠けてしまう。即ち、「風」の強弱の変化に従って、風力発電の出力は、いつも巨大な 変動が存在している。出力電力の不安定・不確実性は、風力発電の第一番目の普遍的技術 的短所である(参照図 1-3)。

風力発電の巨大な変動に関する根拠は、どのようなものであろうか。①季節によって風 況が異なり、例えば、地域によっては、夏季は発電量が少なく、冬季は多い傾向が見られ る。風力発電の設備利用率は、季節性の特徴がある。中国の「三北」地域と日本の北海道 地域における風力出力の巨大な変動は、この季節性の特徴を有している。②一日ごとの異 なる時間によって風況が異なる。例えば、昼間は発電力が少なく、夜間は多い傾向が見ら れる。風力発電の設備利用率は、一日ごとに変化するという特徴がある(参照図 1-3)。即 ち、風力出力は、一日ごとの昼間と夜間の巨大な変動という特徴を有している。③太陽光 発電との比較をしてみれば、風力発電の出力変動は、太陽光発電より、もっと巨大である。

出力が上昇しすぎる面と出力が低下してしまう面との両面の比較を通じて、一日ごとの風 力発電の出力変動は、太陽光発電の出力変動より、一般にもっと顕著である(参照図 1-4)。

図:1-3【風力発電の出力変動例】 図 1-4 【太陽光発電の出力変動例】

出典:北海道電力株式会社 出典:北海道電力株式会社

い)調整の必要性と調整の困難

巨大な出力変動にどう対処するのかということは、風力発電の成否を左右する本質的課 題である。それは技術的課題であると同時に経営組織にとっての課題でもあり、制度・政 策にとっての課題でもある。風力発電の巨大な出力変動は、深刻に、送電網の安全を脅か したり、電力の供給を停止したりする。だから、風力発電の巨大な出力変動を調整するこ とが、必要となる。では、如何にして、風力発電の巨大な出力変動を調整したらよいか。

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風力発電の巨大な出力変動を調整するのは、主に、調整電源の増加と広域的平滑化という 二種類の方法がある。

火力発電や水力発電やガス発電などの調整電源は、風力発電の出力変動を平滑化できる。

風力発電と調整電源との協力は、電力系統の安全を維持することができるが、風力発電だ けでは、電力系統の安全な運営を維持できない。逆に、伝統エネルギー電気の代表として の火力発電は、ほかの電源に依存しないまま、単独での存在を維持することができる。例 えば、ある地域の電力系統の中で、唯一種類の電源として、火力発電が存在する場合には、

単独で存在したり、単独で運営したりできる。調整電源としての小型火力発電所は、人為 的な出力調整が可能である。風力発電は、出力変動の巨大性があるので、電力系統の安全 な運営を維持するために、また風力発電の出力変動を平滑化するために、ほかの電源の協 力に依存しなければならない。

広域化による調整と平滑化は、風力発電の出力変動を調整するもう一つの方法である。

さらに、広域化による平滑化は、発電側の平滑化と消費側の平滑化とがありうる。

A 地域の風力発電は、送電網を通じて、B 地域や C 地域などのほかの地域に送ったら、広 域化の範囲で、消費されるが、この方法は、A 地域の風力発電の出力変動を平滑できる。し かし、広域化の調整と平滑化は、送電網の延長と送電網の質の上昇に依存しなければなら ない。つまり、風力出力の広域化の調整は、広域の地域を結ぶ送電網の建設の増加を必要 にすることでもあり、一般的な送電網からスマート送電網(Interactive Smart Grid)へ のグレードアップを必要にすることでもある。これは、広域化による消費側の平滑化であ る。

また風力発電所の側でも、ある程度の出力の平滑化や負荷追従を行う場合がある。スペ インと周辺国間では電力取引所での取引を用いた輸出入によって変動の一部を調整する例 が見られる8。風力出力の巨大な変動において、連系が拡大すると互いに打ち消しあうこと によって、風力発電全体に対する変動率が低下する効果がある。複数の風力発電サイトが 連系すると、変動がお互いに打ち消しあい,定格出力合計に対する変動率は低下する傾向 が見られる。これは、広域化による発電側の平滑化効果である。

要するに、風力出力に対して調整の困難(他の電源への依存、送電網のグレードアップ、

風力発電所連系の拡大)は、風力発電の第二番目の普遍的技術的短所である。

う)予測の困難

風力出力を精確に予測するのは、とても難しい。風力発電の発展が進む欧米でも、風力 出力を精確に予測することは困難である。風力発電の発展が進む欧米における翌日予測の 平均二乗誤差率(%RMSE)は、10%程度である。

さらに、誤差付き(10%の誤差率)の予測をうまく展開したくても、短時間の出力急変

8 Wikipedia―風力発電

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB

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は、シミュレーションによる予測技術のみで予測することは困難であり、各種計測データ を活用することが重要となる9。風力発電の導入が進む欧米では、風力発電所自体の実績デ ータを収集することに加え、ウインド・ファームの周辺観測網を整備することにより風況 急変シグナルを事前に検知し、出力予測の高精度化に活用するシステムや、風力発電所や 周辺の気象観察値とシミュレーションを用いて風力発電の出力変動が一時間以内に一定値 以上となる確率を予測するシステムなどが存在する10

2.22 中国特有の気候風土に根ざした技術的難点と経済状況のもたらす複雑さ

風力発電に関する中国特有の技術的難点は、中国特有の気候風土と経済状況にも根ざし ている。中国特有の技術的難点とは、風力発電の適地と電力の大量需要地域とのギャップ、

調整電源の不十分さ、出力予測の高い誤差、輸入技術の欠点、中国の経済成長が非常に急 速なことという5つを主に指している。

あ)風力発電の適地と電力の大量需要地域とのギャプ

一番豊富な風力資源を有する、中国における風力発電の適地は、東北地域(遼寧省・吉 林省・黒竜江省を含む)と西北地域(甘粛・新彊を含む)と華北地域(山東省・河北省を 含む)という「三北」地域である。しかし、中国における「三北」地域は、経済発展の後 進性を有しているから、地元社会で、「過剰」の風力発電を消費できない。「三北」地域は、

風力発電の大量生産地域であるが、電力の大量需要地域ではない。

中国における電力の大量需要地域は、華東地域(上海・江蘇省・山東省等の6省を含む)

と華南地域(広東・福建等の4省を含む)と華中地域(湖南省・河南省・湖北省を含む)

という「三華」地域である。しかし、「三北」地域と比べて、「三華」地域の風力資源は豊 富ではないから、風力発電の大規模かつ集中的開発に適していない。即ち、「三華」地域は、

電力の大量需要地域であるが、風力発電の大量生産地域ではない。

一言で言えば、中国の風力発電は、風力発電の適地と電力の大量需要地域とのギャップ が風力発電の「消費の困難」をもたらしやすいという特徴を有している。したがって、こ の特徴から、如何に風力発電の「消費の困難」をうまく解決するかという中国特有の風力 発電の技術的難点がもたらされるのでる。

い)調整電源の不十分さ――品質と種類と数量

中国における風力出力の変動を平滑化する調整電源は、主に火力発電と水力発電である。

つまり、調整電源の種類が不足している。さらに、火力発電と水力発電は、良質な調整電 源ではない。火力発電は、空気と環境を汚染する。また、冬になると、中国の北部地方に おける火力発電は、暖房と給電という二つの機能を最優先で発揮しなければならないため に、風力発電の出力の変動を平滑化する機能を十分に発揮しにくい。水力発電は、季節性

9 高木哲郎、「気象予測システムと風力発電の出力予測システム」、「風力発電と電力系統の融和」

表 0.1 中国における聞き取り調査の主要対象者 行政関連 ·中国環境保護部 ·国家発展改革委員会のエネルギー研究所 ·中国国務院発展研究中心 ·国家エネルギー局 企業関連 •内蒙古の巴音風力発電所 •国家送電網会社のエネルギー研究院 •国家送電網会社の中国電力科学研究院の新エネルギー研究所 •国家レベルの LVRT 機能検査基地 業界協会 •中国資源総合利用協会再生可能エネルギー専門委員会 研究機関 •中国再生可能エネルギー学会
表 2-3 五回の(陸地)特許権風力発電プロジェクト 出典: 「2008 年中国風電発展報告」の資料より筆者作成期別年度特許権風力発電プロジェクト入札価格( 人 民 元/kWh) 開発会社 設 備 容量第 1期2003年江蘇如東風力発電所Ⅰ0.4365華睿会社100MW広東惠来石碑山風力発電所0.5013広東粤電会社100MW第 2期2004年江蘇如東風力発電所Ⅱ0.5190龍源電力会社150MW吉林通榆団結風力発電所0.5090華能新能源、龍源電力会社400MW内モンゴル輝騰錫勒風力発電所北京国際電力会社
表 4-1 2011 年に、全国における各省レベルと地域レベルの送電網のうち、風力発電設備 を利用する時間に関する統計 国家送電網会社の平均値(時間) 1928 華北送電網(平 均値) 1982 西北送電網(平均値) 1924 東北送電網(平均値) 1816 京津唐 2214 陕西 1779 内蒙古の东部 1863 冀南 1908 甘粛 1824 遼寧 1802 山西 2113 寧夏 1926 吉林 1610 内蒙古の西部 1829 新疆 2317 黒竜江 2008 山東 2028 華中送電網(平 均値)
表 4-5 2011 年に「三北地域」における風力発電の「棄風」状況に関する統計 (省 地域)送電 網 風力発電の総量(億kWh) 「棄風」により損失した風力発電の総 量(億 kWh) 「棄風」率(%) 東北送電網 237.37 50.54 17.55% 黒竜江 43.94 7.44 14.48% 吉林 39.87 6.96 14.86% 遼寧 66.06 6.56 9.03% 内蒙古の東部 87.5 29.58 25.26% 華北送電網 278.71 44.22 13.69% 河北 87.65 3.61
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参照

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2021年5月31日