「 第二次世界大戦期 における
日本 と英米の新聞についての比較文体研究」
岩 本
典子
従来 よ り、第二次大戦期 における新聞に見 られ る戟況報告の言語 ・文体 を様 々な角度か らの比較 研究 とい う形で調査 している。理論的枠組み とし て 「状況 と文体」の関係 を説 く
Mi c hae lHa l l i da y
の機 能主義文法 とRo na l d Ca r t e r
らの唱 え るテ クス ト分析 の手法 を採用 している。現在 は、 日本の新 聞 と英米の新 聞 との共時的な 比較研 究 を試みている。 よく知 られていることで あるが、戦時中の 日本の新 聞は、挙 国一致的国家 体制のため、厳 しい情報統制下 にあ り、事実 を正 確 に報道せず、時に大 きく歪 曲 して、報道す るこ とが求め られていた。た とえば、戦争後期 におい ては、 自国軍の敗退 をも、あたか も勝利 であるか の ような、能動性 を帯 びた レ トリックに基づ く報 道が なされていた。また、最高の賛美や強いニュ ア ンスを表す語童 も多用 されていた。た とえば、
「皇軍精鋭部隊堂々入
塀」「 ○
○島に皇軍の神髄 を 発揮」の ように。要す るに、華美な修飾語旬で装 飾 し、実際 に何が起 こったか ということの本質は、曇 らせているようである。
この時期の新 聞記事 をひ とつのテクス トとして とらえた場合、ジャンル としては、事実 を客観的 に報道す る単 なるニュース記事 とい うよ りは、む しろ
1 i t e r a r yde vi c e
(文芸的趣 向)の濃 い、na r ‑ r at i ve
(物語体 )に近い ものであるといえよう。それ と比較 し、当時の英米の新聞は どうであっ
たのか。た とえば、 日本軍が優勢であった戦争前 期 におけるマニ ラや シンガポールでのイギ リス軍 の対 日本軍‑の敗退や、バ ター ン半島における米 軍の敗退 は どう措写 されていたのであ ろ うか?
データによると、 自国軍の敗退 は敗退 とされ、そ れ に至 る被 害状 況 の描写 も綿 密 で
、de s c r i pt i ve
(記述的)であ るこ とが わか って きた。 日本 の新 聞に見 られた ような顕著 な文芸的技巧 も少 ない。テクス トのジャンル として とらえた場合、 日本の 当時の新聞が
、nar r at i ve
的であったのに対 して、英米の ものは
、pr o s ai c
(散文体 )であ る と特徴 づけ られる。" pr os ai c "
とい う単語 を辞書 で引 くと、「殺風景 な、お もしろ くない、活気 のない、
単調 な、平凡 な、退屈 な、詩的美 しさのない」 と い う訳語が列挙 されているが、まさにその ように、
淡々 としたス タイルの描写であった ことが特徴づ け られる。
この ことは、当時の 日本 における新 聞のプロパ ガンダ的特性が、他 に比 して如何 に高かったか と い うことの裏付 けに もなるであろう。 しか し、そ のことは、 この戦争期 に、検 閲や統制 を受けてい た新 聞にのみ限定的に該当す ることを念 のため強 調 したい。た とえば同時期 において も、検 閲や統
ちゅう
制の範曝外 にあったテクス トや、異 なった時代の テクス トは、また別の文体的特徴 を醸 し出すので ある。
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