九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
酸化スズ系ガスセンサの感度安定化に関する研究
松浦, 吉展
https://doi.org/10.11501/3060418
出版情報:Kyushu University, 1991, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
第5章 殿化スズ系力スセンサの感度安定化のメカニズム
1i
にJ 緒言
前章ではレニウムとパナジウムが感度安定化に極めて有効な添加剤で あることを明らかにしたり 第2、 3章で述べたように、 実使用センサ(フ
ィールドで高感度化したセンサ)の抵抗変化のうち、 適当な処理により 回復する部分(可逆的な部分)については吸着酸素量の変化がその主因 をなしていることを明らかにしたり 本章では、 レニウムとパナジウムに よる安定化効果が、 いかにして発現するかについて主として酸素吸着や 表面椴去の反応性という観点から検討したu 酸素吸着については昇温脱 離法により、 表面椴素の反応性については昇温還元法により追究したQ
5 - 2 実験方法
P d、 パインダーおよびR e Vの組み合わせによって表5 - 1に不
す6種類(Sl'"'"'S6)の試料を作成したけ S 3は従来の��子であり、
これに対しS 4は、 R e Vぞ添加してガス感度が安定化された素子(第 4章で述べたR e V添加奈子)である。 これらの試料(S l'""S 6) は全く同じ条件下で焼成等を施し熱経歴を同じにしたっ
界温脱離、 昇温還元実験の前に試料(O. 2 g)は、 真空中(主主10-JmmHg) 5500Cまで昇温、 5500Cで30分間真空排気、 5500Cで30分間100 Torr の酸 素を導入し、 そのまま室温まで冷却した。
一温還元実験には図5 - 1に示す昇温脱離装置を使用したヲ キャリヤ ガスには2.039-é1H2とN2の混合ガスを使用した。 その他の条件は昇温 脱離実験(第3章参照)と同じにしたο
5 -3 酸化スズ結晶子に対するR e � Vの影響
S n 0 2系ガスセンサにおけるR e-Vの安定化メカニズムを明らかに するために、 まずS n 0 2の結晶成長に及ぼすR e -V添加の影響を調べ た。 S 3 (従来の素子)とS4 (Re-V添加素子〉の新品センサ(作
動前)およびこれらを4500Cと5500Cでそれぞれ20日間作動した後の
円,tnδ
表5-1 試料に含まれる添加剤
試料 Pd ノくインダー R e-V
S 1 無 無 無
S 2 有 無 無
S 3 有 有 無
S4 有 有 有
S 5 無 有 無
S 6 無 有 有
S n 0 �結晶子径を表 5 - 2に示す。 同様に、 これらの素子の比表面積 を表5 - 3に示した。 S 3とS 4のいずれも作動温度を450C>Cとした場 合には、 結晶子と比表面積の変化は認められないが、 5500Cでは結晶子 の増加と比表面積の減少が認められる。 ま た、 5500Cにおけるこれらの 変化の大きさはS 3とS 4の聞にほとんど差がないことから、 結品成長 に及ぼすR e -V添加の影響は極めて小さいことがわかる。
5 - 4 P d無添加素子に対するR e-Vの安定化効果
次に、 P d無添加素子に対するR e -Vの安定化効果を調べた。 図5 -2にシミュレーシ ョ ン(作動温度450 OC)によるS 5 (バインダー のみ添加〉とS 6 (パイ ン ダ ーとR e --Vを添加)の素子抵抗の経時変 化を示す。 S 5では素子抵抗の低下が認められるがS 6では極めて安定 であった。 この結果はP d添加素子の場合と全く同様であり、 このこと
からR e-Vの安定化効果はP dの有無に依存しないことがわかるつ
ー-88--
図5 - 1 界渦脱統装置
八 , ìド.ンベ IJ;セッケンJj英流111計 C;γCD検出器
。;水銀マノメータ E;屯気炉 [ì;反応管
G;凶方コック 1 1 ;昇渦装置 1 . J . K ;気休淑 L;ドライアイス - エタノールトラップ
M;モレキュラシーブトラップ N;真空ポンプ O . f氏抗測定!目8ft
表5 - 2 S n02の結品子径
( A )
{宇部� ÎJíj �50"Cで20日間 5500Cで20日間
作動後 作動後
S 3 (従来の恭子) 221 223 235
S 4 (Re/V添加素子) 222 221 237
89・
表5 - 3 S n 02 系素子の比表面積
( m:γg )
作動前 �50(Cで20日間 5500Cで20日間j
作動後 作動後
S 3 (従来の素子) 2与. 1 25. 0 22. 3
S 4 (Re/V添加l素子) 24 . 7 24. 9 2 1 . 7
第2章でシミュレーシ ョン実験温度を4500Cとした場合の高感度化に は、 P d土台感、斉IJは関与しないことを明らかにしたが、 これは本節の検討 結果とよく一数する。
5 -5 昇沼脱離の繰り返しにおける安定性
図5-3"-'5-6にそれぞれS 1 "-' S 4の室温から5500Cまでの界 温脱離クロマトグラムを示した。 図中の数字は実験回数である。 いずれ の試料でも300� 5000Cに大きな脱離ピークが認められている。 これま での報告1, 2)で300"-' 4500Cにはほとんど脱離ピークは認められていな かったことと対照的である。 これまでの実験では前処理温度が700�
8000Cと本実験よりかなり高いことから、 試料表面の酸素の吸着が飽和 状態に達しておらず、 300�4500Cで脱離するようなゆるく結合した酸素 があっても昇温過程で再配列がおこり、 より高温側で脱離する酸素種へ 変化したのではないかと考えられる。 s 1 � S 3では実験の繰り返しに よりスペクトルが大きく変化していることが明らかである。 これに対し、
S 4ではほとんど変化が認められなかった。 図5-3�5-6の結果を 定量的にまとめ図5 - 7に示した。 縦軸はS n 0 2 1 mo 1に対する酸素
脱離 mol数(室調"-'5 OoC )であり、 横mlllは実験回数である。 図より5
S 1、 S 2、 S 3 の酸素脱離量が実験を繰り返す毎に大きく減少してい
-90 -
グ
100
Hュ
プ0.2% )
1 0
(α〉{)場堀川肝機
o .1
8 0 120
。 4 0
時間(日)
P d 1m添加S n 0 2系ガスセンサの長期安定性に及ぼす レニウムとパナジウムの添加効果
O. 口;Re - V添加素子. -. 圃;Re - V無添加素子 作動温度; 4 5 0 "C (測定時4 0 O"C)
図5-2
この変化は繰り返し実験による活性酸素の減少(酸化 ることがわかる。
およびS n 0 2中の電子濃度の増大(低抵抗化〉を示して 活性の低下)
これに対しR e センサの経時変化に対応していると考えられる。
おり、
( S 4 )、 繰り返し実験を行っても酸素脱離量(活性 -vを添加すると
この結果はR e -V添加i 酸素量)はほとんど変化しないことがわかる。
によりガス感度が安定化したこととよく対応する。
ではシミュレーシ ョ ン実験(温 第3章において、 従来の素子(s 3 )
度4500C)により素子の酸化活性が低下することを明らかにした。 問機 S 4の酸化活性が (R e - V添加素子)についても行い、
な実験をS 4
(図5 - 8)。 酸化活性は活性酸素 極めて安定していることがわかった
この結果は昇温脱離の繰り返 量に依存していると考えられることから、
し実験においてS 4の酸素脱離量がほとんど変化しなかったこととよく (図5 - 7)。
対応する
円叫U
l回目
0.6 2回目
3回目 4回目
0.4
。
%
0.2
(〉巨)絢迫総司祭
5∞ 600 ム∞
温j支( OC )
S 1の酸素の昇温脱離クロマトグラム 図5
-
31回目
0.6 η4 回 同口
一一-一一 3回目 一一一一- 4.回目 O.ム
0.2 (〉g)絢山耳鳴司祭
。
も
100 200 300 400 500 6∞温度( "C )
S 2の酸素の昇温j民間tクロマトグラム
92
図5
-
41回目
同回目nL
0.6
一一一一一 3回目 一一一一- Ll回目 一一一一一一 5回目
0.4
0.2 (〉E)絢俊潟召集
。も
100 200 300 400 500 600沿度( OC )
S 3の酸素の昇温脱離クロマトグラム 図5 - 5
l回目
0.6 2回目
3回目 4回目 5回目 6回目
0.4
0.2
O-GO
(〉巨)拘也総司祭
600 400 500
200 300 100
温度( OC )
S 4の酸素の昇温脱離クロマトグラム
-93 --
図5 - 6
051
・S2
ð S3 1 0 圃S4
8 (N0cm『-oE\NOt-oErO戸):『酬脳裡醤脈経
6
5 6 3 4
2
実験凶数
昇'. �尽脱再f�実験における酸素脱離量 図5 - 7
昇温還元の繰り返しにおける安定性
po 「D
図5- 9 �5-12にそれぞれS1 � S 4の室温から5500CまでのH2 図Ctlの数字は実験回数である。 これらの
による昇温還元副!線を示した。
クロマトグラムの形状は単純でないが山添ら3 )の報告と同様、 大きく2 その境界を矢印で示したが、 低温側(第 つの領域に分けることができる。
高温側(第2段)では上 の曲線はピークあるいは台地状を呈し、
1段)
3. 2---- (室温�5500C )はSl�S4で
昇するのみである。 酸素消費量
SnO+H20 Sn02+H2 一ーヲ炉
。2mo1 / S n 0 2であり、
10 -2 5.8 ×
の反応を仮定すると第1段では表面数層の還元が、 第2段ではさらに内 ( S 1 ) より1回
図5 - 9 部の還元が進行していると考えられている。
目と2回目の第1段の還元ピークの形状が大きく変化していることがわ その後はほとんど変化がなく、 結局3回の昇温還元でピ ークが安定していくことがわかる。 実験回数による昇温還元曲線の変化 かる。 しかし、
94
J \ 。 o iAhAU
S4
S3
(次)時記単純νT
40 20 30
。 1 0
時間(日)
図5
-
8 酸化活性の経時安定住に及ぼすH. e
-
Vの添加!の影傍S3;従来の菜子 s4;ne-Vi�、加素子
「D
(図5
-
1 0、S 4でも認められた S 3、
はS 1と同様に S 2、
5
-
1 2 )。 安定後の各試料の昇温還元曲線を比較すると、 S 1 1 1、S 3、
S 2、
の第1段の還元ピークが2500C付近に現れているのに対し、
S 1よりも低い温度で検出されて 200 oc付近に現れており、
S 4では
この理由としてパラジウムを添加することによって いることがわかる。
S n 0 2中の酸素が活性化されたことや生成した酸化ノミラジウムの還元、
スピルオーバーによる水素吸着速度の増加などが考えられる。
図5
-
1 3に S l---- S 4の昇温還元実験における酸素の全消費量を示す。各試料ともピーク強度が一定になるまで実験を続けたが、 図よりS 4で 一定になるのに他の試料よりも多くの実験 は変化が比較的長くつづき、
回数を必要とすることがわかった。 昇温還元の繰り返しによる各試料の 酸素消費量の変化の序列はS 4 > S 3 > S 1 > S 2であり、 素子の経時
Fhiu n叫υ
15
i回目 2回目 3回目 4回目
10
Rd
(〉E)絢迫総司祭
。。 - - 1∞ 20D 3∞ 4∞ 500 6∞
温度( OC )
S 1の昇温還元クロマトグラム 図5 - 9
15
l回目
-ーー ー ー ーー - 2回目 3回目
10 一一一一- 4,回目
戸hd
%
(〉E)絢迫税召集
5∞ 6∞
3∞ 4∞
温度( OC )
S 2の昇温還元クロマトグラム
-96
nU 1Ei
図5 -
15
i回目
ーーーーー-- 2回目
3回目 4回目 5回目
10
。。 Fh) (〉E)絢迫鵠召集
600 400 500
200 3∞
j品)Jf. (OC)
S 3の昇混還元クロマトグラム 図5 -
1回目
同口回円Jh
3回目
一一一一一一 4回目
5回目
6回目
一一一一一一 7回目
%
15
〉E 10
絢セミ 召鵠
集 FhJV
5∞ 6∞
3∞ 4∞
2∞
温度( OC )
S 4の昇温還元クロマトグラム
97
1 2 図5 -
o S1
・S2 ムS3
Å S4 6
A
(向
0 c m
'
一 O
E\向。
酬椛鎚伽淀
� A一一一
ム�ムー ム
3 一 O EN'
O
【〉
2 4 「hd 6 7
尖験lil1数 3
昇混還元実験における酸素の消費量 図5 - 1 3
センサが使用される雰囲気では、 l政清 安定性との相関は認められない。
酸素が関与する表面反応、がおこるのに対して、 本実験では格子酸素の一 このような条件下で 部が関与するような苛酷な反応条件になっており、
はR e -V添加効果はないものと思われるの
R e -Vの 担持情造と役割j
ウー
にd
S 2、
R e-V無添加素子( s 1、
昇温Jm荷ffiの繰り返し実験の結果、
の酸素脱離量は実験を繰り返す毎に大きく減少するのに対し、 添 S 3 )
では繰り返し実験を行ってもほとんど変化しないことが
加奈子( s 4 )
( 5 - 5節)。 本節ではこのR e -V添加効果発現の理 明らかになった
由について考察する。
S 4 の比表面積とS n 0 2結晶子径 (R e -V、 パインダーのいずれも無添加)、
(R e -V、 バインダーのいずれも添加) 表5-4にS 2
ー98
表5-4 Sn02 系素子の比表面積とSn 0 2 結晶子径
試料 (ノくインダ一、 R e --V) 比表面積(m2/g) 結晶子径は)
S 2 (無 、 無) 11. 5 225
S 4 (有 、 有) 24. 7 222
を示した( S 4は表5 - 2、 5 - 3の一部を再掲した)。 結品子径につ いては両者の!日lにほとんど差が認められないが、 比表而績は著しく呉な り、 S 4はS 2に比べて21:'í以上.大きいことがわかるけ R e -V添加に よる比表町桁への影響は1mt見できること( 5 - 3節)を考えあわせると、
s 4の比表ïíïi桁の土佐)JU分はパインダーによるものと思われる。 これらの 値から、 S n ()ど粒子表而が( 1 1 0 )而で成り立っていると仮定して
R eとVの表而濃度を惟算した。 R eとVがS n 0 2とバインダーいず れの上にも非選択的に担持されると仮定した場合、 S n 0 2の表面 S n
原子に対するR e 、 V原子の比率はそれぞれ8. 14 : 1と16. 7: 1であ
り、 S n 0 2_上にのみ選択がjに担持されると仮定した場合にはそれぞれ
3. 69 : 1 、 7. 59 : 1であったり いずれの場合もS n数に比べてR e、 V 数は少なく、 表面単分子層を形成するよりはるかにノトさい担持量である。
したがって、 これらの添加物はS n ( ) �上にまばらに吸着した形で存在 するか島状の凝集体として存在すると推測される。
S 4のX線問折測定を行った結果、 Sn 0 2の回折ピークには全く変 化がみられず、 またR eとVに関する回折ピークも認められなかった。
しかし、 R e-V添加l後には素子を空気中6000Cで焼成していること(2 -2節参照)や素子の作動調度(350---550't)を考えると、 これらの添 加物は酸化物として存在している可能性が極めて強い。
- 99 -
なかでもV205は V酸化物はVOからV�O!'iまで酸化物相が存在し、
2. 5 x 10-1 0 a tm程度4)と小さいことから、
その平衡酸素圧が4000Cでも
セ ン サの実使用条件下では 添加Vは大部分がV205として存在している V205表面上では1個の気相の酸素分子が固相の2個 ものと忠われる。
この 機構としては次式のように、 表面酸素空孔が2個以上隣接している点に の酸素イオンと容易に交換することが知られており、 広田ら5 )は、
OHV OHV o 2
・V -V
十 一一争
このことから (VはV4 +をあらわす)。
気相酸素が取り込まれるとした
図5- 1 4に示すようにV酸化物上の V添加素子)では、
(R e
S 4
S n 0 2への酸素吸着を がS n 0 �上へ拡散し、
(吸着酸素) 酸素イオン
V205がいわば気相酸素の取り込み口と 円滑に行うことが考えられる。
V204,__,V�()5 して働き、S n 0 2へ酸素を供給するものと考えられる。
3 V20 tt+ 2 V:J07+ 1/2
R e . V酸化物
9L
、「少 oo 、心。。
+-', よ_!_ ;- nLノ/\
-吸着酸素"ヤ
。 の問にはV 60 1:J fì, 7)やV:1 () 781 U)などが知られており、
V行Ol�l+ 1/2 O2→2 V 307、
1/2 0 2 →V 60 1:3、
V酸化物の Sn02
S n 0 2上に担持されたR e , 酸素供給体としての役割
-100 -.
図5-14
o 2→3 V 205の各反応の-ðHOはいずれも約12 kcal/O原子 である ことが報告されている1 0)0 これに対して、 S n 0 2の-ðHOは70.4 kca
1/0原子11 ) とかなり大きく、 上記のV添加効果に対する考察と矛盾 え)'(なし'\0
一方、 Reの酸化物には2'-""'7仙のものが知られている。 Re酸化物 の安定性は際素圧と温度に大きく依存し、 酸素圧が高い場合には(約
JO-5alm以上) R e 2 0 7が最も安定とされている12)。 R e2()7の-ðHU は42.5 kcal/O原子13) であり、 S
n 0 2よりも小さいことから、 V と同様、 酸素供給体としての効果が期待される。
4-4節では、 ReとVを共に添加した素子はR eあるいはVを単独 で添加した素子よりもガス感度がより安定化することを述べた。 このこ とは感度安定化に対するReとVの相互作用を示唆しているが、 Reあ るいはVを単独で添加しでも安定化効果が著しいこと、 またRe -V添 加l素子とR eあるいはVを単独添加した素子との安定性がそれほど大き く違わないことから、 この相互作用についての考察は省いた。
5 - 7 本章のまとめ
センサ素子にR e -Vを添加してもS n 0 2の結品成長にはほとんど;12 響がないことがわかった。 また、 P d先l�添加素子でもP d添加素子と同 様、 Re-Vの安定化効果が認められる。
昇温m�古f�の繰り返し実験の結果、 R e -Vを添加していない素子(S
1、 S 2、 S 3 )の酸素脱荷ft霊が実験を繰り返す毎に大きく減少してい ることがわかった。 この変化は活性酸素の減少(酸化活性の低下)およ
びS n 0 2中の電子濃度の増大(低抵抗化)を示しており、 センサの経 時変化に対応していると考えられる。 これに対し、 S 4では繰り返し実 験を行っても酸素脱離量はほとんど変化しないことがわかった。 この結 果は、 Re-V添加によりガス感度が安定したこととよく対応する。
R eやVの酸化物が酸素供給体の役割を果たし、 S n 0 2への酸素吸着 を円滑におこさせる作用があるものと推定した。
昇温還元実験の場合、 S4(Re-V添加素子)では酸素消費量の変
101
化がS 1、 S 2、 S 3のいずれの試料よりも大きく、 素子の経時安定性 との相関は認められない。
文 献
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1 3 ) 日本化学会編 " 化学使覧(基礎編II )
P. 827.
- 102
第6章 酸化スズ系ガスセンサ上の吸着酸素種の帰属
6 - 1 緒言
第3章において、 可逆的経時変化の主原因が吸着酸素量の減少である ことを明らかにした。 前章では、 レニウムとバナジウムの安定化効果の メカニズムを検討し 、 昇温脱離の繰り返し実験における脱離酸素量(吸 着酸素量)の変化とセンサの経時的な感度変化がよく対応していること すなわちR e V添加素子では、 この脱離駿素量の変化が小さいことを 明らかにした1 本章では、 電子スピン共鳴法C E S R )を用いて素子表 面上に吸着している酸素種を検出し、 その熱安定性を調べることにより センサの実俺用温度(3 5 0 "-J 5 5 0 oc )における吸着酸素種の帰属を行ったり
なお、 金属酸化物上の吸着酸素に関する従来の研究と電子スピン共鳴法 の測定原理等は、 それぞれAPPENDIX- [、 日に記した(本章末)。
6 - 2 実験方法
E S R 測定に使用した試料の前処理は図6- 1に示す装置で行ったυ
ガス溜機能をもった試料管( G )に試料を装着し、 真空中( � 10 3 mmH日) 5000Cまで昇温、 5000Cで30分間真空排気、 5000Cで30分間100Torrの酸素
を導入、再び5000Cで30分間真空排気した後、 室温まで冷却し、 試料の前 処理をした。 E S R測定装置はF E 1 X G (日本電子)を使用し、 測定 は室温で行ったっ
試料は、 前章で検討した試料CSl---S6)のうちS 1 (P d、 パイ ンダ一、 Re Vのいずれも無添加)とS 4 (P d、 パインダ一、 R e
Vのいずれも添加)を使用した。
6- 3 ESRによる吸着酸素種の帰属
前処理後、 S 1とS 4に室温"-J1 0 0 OCで酸素吸着を行うと、 それぞれ 図6 - 2、 6 - 3 aに示すスペクトルが得られた。 これらは基本的に同
じスペクトルであったことから、 シミュレーシ ョンの結果は図6- 2の みに示した。 このスペクトル(シグナルS )は、 g 1=2.0257, g 2=
-_ 103 -
ー ー ーーーーー三テ
日押印
図6 - 1 試料の処理装置( E S R測定)
A;トラップ B;真空ポンプ C , D, E ;気休潟 F;真空計 G;サンプル H;界温装置
1 ;水銀マノメータ
-104-
r試料
2. 0083, g:1 = 2. 0024の三方向性スペクトルで、 これまで報告されてい
るo 2ーの値とよく一致していることからo 2ーであると結論 されたl , 2F3)o o 2-の存在状態はMeriaudeau等の170を用いた実験からO 2ーはS n上 に等価に存在していると報告されており�J )、 本実験においても各スペク
トルが弱し、ながらも2 本に分裂していたこと(A1=不明I A 2 = O. 99G,
A 3 = O. 64G)から、 このO 2ーは 1佃のS n上に|吸着していることが結論 される。 前処理後、 S 1を500tから酸素中で冷却するとこれまで報止 されたことのない図6-4 aのスペクトルが得られた。
同様なスペクトルはS 4についても得られた(区16-3 b)。 シミュレ ーシ ョ ンによって解析を行ったところ、 このスペクトルには3種のシグ ナルAI B, C (図6-4 c )が重なっていることが推定された。
gユ
g3
Jn, AN JWE hV同M
〆 E・
g之
^=0.99gauss
x 7900
\11ttyW
x 7900
図6-2 S n Oz 系素子(S 1 )上に吸着した OzーのE S Rスペクトノレ
試料の処理条件;前処理後、 lOOOCで酸素(10 Torr)を 10分間導入し、そのまま室温まで冷却して1分間真空排気.
105 -_
( b )
x 320
( a )
x 500
5OG H
図6-3 S n Oz 系素子( S 4 )上に吸着した O2一(a )と0一( b )のE S Rスベクトル
試料の処理条件: (a)は図6 - 2と同じ .
( b )は前処理後、 50000で酸素(10 Torr)を10分間
導入し、そのまま室温まで冷却して1分間真空排気.
図6- 4 cのシグナルを重ね合わせたシグナルが図6- 4 bであり、 図 6 - 4 aとよく一致していることがわかる。 各シグナルのパラメーター を表6- 1にまとめた。 一方、 前処理後のS 1にN20を!吸着させると、
強度は図6-2の場合ほど強くはなかったがシグナルAが現れることが わかった(図6-5)0 N20が金属酸化物上の還元点にトラップされ た電子と反応してOーを与えること4 )を考えあわせると、 シグナルAは oーであると考えられる。 一方、 シグナルB、 Cは等方性であり、 それ ぞれ2�3個のS nと相互作用しているラジカルと考えられる(表6-
1 )。 このうちシグナルBはS n 0 2表面にトラップされた電子( e t -)
であり、 シグナルCは格子中のFセンターにトラップされている電子
-106-
30G ト一一→J 1
シミュレーション
ョーシ一 レ 一
ユ ?,LV
と、 一、
、ン ペ.J
Ah‘、hu
,,ム 71tilt-4 ・
-\1 ‘1
1u 一/
ーl・
ll lトLυvーしMW:
』 』
‘1Et-- - .,t, ,.t、,
JV 八 B C L レ レ レ ハ11 リ 斗/
斗/ 斗J juvググ
グ -J シシシ 山
図6-4 S n Oz 系素子(S 1 )上に吸着した oー のE S Rスベクトルとそのシミュレーシ ョ ン
(試料の処理条件は図6 - 3 bと同じ)
ではないかと考えられる。
( e f -)
吸着酸素種の熱安定性 6-4
図6 - 6にo 2ーおよびOーの吸着処理後、 各温度で1分間排気し、 室 の排気温 I。は室温のESRシグナル強度を表す。
-- 107 --
温まで冷却した時のESRスペクトルの相対強度( 1 / 1 0) ここで、
度依存性を示した。
表6- 1 S Il 02 系素子( S 1 ) 上に吸着した 0 のESRのパラメーター
シグナルA
gl=2.0301 g 値 g�=1.9992
gl=1.9806
八1 = 1 ]ち A(ガウス) 八� = 1 2 5 A;{ = 1 1 7
×2
?
ーへJラOG ト一一→
H
シグナルB
g iso =2.0030
Al討0=1 2 3
図6-5 N201吸着後のESRスペクトル
シグナルC
g i so = 2 . 00 1 3
八i出oて 2
試料; S 1 . 前処理後、 2 0 OOCでN2 0 (lOOTo r r)を 3 0分間導入 →2 0 OOCで1 5分間真空排気 →室温まで冷却
-108 -
ー00
•
• 口
ロ圃⑦ 凸圃・
1.0 ー
(OH\同)
。
。
。
。
•
•
届
0.5ト 圃
M O H
•
• 。
四
。 。斗
ハリ ハリ ハり
400 300
100 200
脱離温度/OC
0-の熱安定性 .:54 O2- 口:S102-,
SlおよびS4上に吸着したO2-、
.:S40-,
0:S10-,
図6
-
6図6-6より明らかにo 2ーの方がOーに比べて低温で脱離することがわ S 1とS 4上で熱安定性に差はほとんど認められず、
o 2ーの場合、
かる。
S 1とS 4上で熱安定
。ーの場合は、
� 1500Cで大部分が脱離した。
100
性に若干の差がみられるが、 いずれの試料でも30üoC以下で大部分が脱 これらの脱離温度にくらべて実使用条件下での素子温度はかな 離した。
これらのo 2 したがって、
2-2-4節参照)。
り高い(350� 5500C、
や0一種が使用条件下でのS n 0 2表面に存在するとは考えにくい。 実使 これらよりも熱安定性が高い5)とされているo 2ーとして 用条件下では、
大部分の吸着酸素が存在し、 可燃性ガスとの表面反応に用いられている 可能性が高いと考えられる。
本章のまとめ 6
-
5S 4上にo 2-の S 4を5000Cから酸素中で冷却す
S 1、
前処理後、 室温� 1000Cで酸素吸着を行うと、
S 1、
前処理後、
吸着が確認された。
-109-
ると、 これまで報告されたことのないESRスペク卜ルが得られた。 シ ミュレーシ ョンによって解析を行ったところ、 このスペクトルには3種 のシグナルが重なっていることが推定された。 これらのシグナルは、 そ れぞれ2個のS n上に等価に配位したO一、 S n 0 2表面にトラップされ た電子、 格子中のFセンターにトラップされている電子であることを考 察した。 さらに、 o 2ーと0-の熱安定性を検討した結果、 1)0 2ーの場 合、 S1とS4上で熱安定性に差はほとんど認められず、100 �150oC で大部分が脱離する、 2) 0ーの場合は、 S1とS4上で熱安定性に若 干の差がみられるが、 いずれの試料でも300nc以下で大部分が脱離する ことがりjらかになった。 これらの脱離μj立にくらべて実際の素子部u立が 十分に高いことからこれらのO2ーやOーが実使用条件下で安定に存在す るとは考えがたく、 実使用条件下において存在するl吸着酸素は大部分が
o 2ーではないかと推論した。
APPENDIX-I 金属酸化物上のl吸着酸素に関する従来の研究
一般に、 金属酸化物上のl吸着酸素槌としてはO2,, O2-,, 0-および
o 2ーがある。 これらのうち、 o 2は物理吸着であり電気伝導度には影響 しない。 o 2ーはエネルギー的にはO2より安定であり、 o 2から容易かっ 安定に生成する。 o2ーはπy軌道に不対電子を1個持つのでESR活性 であり、 3つのz値を持つ異方性スペクトルを与える。 このスペクトル が検出されたのは1960年後半 Lunsford 6)、 Tench 7)らによる。o 2ー には end-on 型と side-on 型の2秘があり、 一般に酸化物上では後者 がほとんどである。 これまでに M g 08)、 Z n 0 D)、 T i 0210)、
Sn0211)およびCe0212)上のO2ーがside-on 型であることが確かめ られている。
。ーを与えるものとしては、 分子状酸素(0 2)、 格子酸素( 0 2-)、
表面水酸基( 0 H-)および盟酸化窒素( N 20)の4種が報告されてい
-- 11 0
るけ OーのE S Rスペク ト ルが確実となったのは最近のことである 。 上 記の4種のうち、 分子状酸素からのOーの生成がES Rによっ て確認さ
れているのはv � 0 1) // S i 0 2 1 :J, 1 4 ) 1 ') )、V 2 0 5 - C r 2 0 :J ,/ S i 0 2 1 6,
1 7) '\ P t // A 1 L 0 :l 1 � )、 M 0 () ::J // A 1 2 () 3 1 9 )などである。 電子分光 法の場合は、 o 2-'\ 0 H 一等の共存のため容易ではなく測定例も少な い
20,μ10 昇温脱離法では種々の金属酸化物について岩本、 清山ら1 , ど, 2 2,
2 :1)を中心に多くの報告がある24-27)。 この場合、 吸着種は脱離ピーク
の温度や脱離の順番、 脱離次数等で推定されて い るn 例えば、 NiOに ついては350C、 3350Cおよび4250Cの脱離ピークは、 それぞれO::!'\ O�
およびOーの脱離に相当するとされている28)、 この他に分子状酸素から のOーの生成はホール効果29)や化学滴定.10 )の測定によっても推定され ているリ
格子酸素からのoーの生成を確認し た 例としてはLuns[ordら:1 1)の報 告があるυ 彼らはZ n 0を4500Cで排気するとo ーに帰属 さ れるE S Rス ベク ト ルを認めているの 表面水酸基から のo ーの生成はC é1 0、 :vr日O について、 E S R :)ピパユ}やESCA3'11によって確認されてい る 。 また、
亜酸化窒素からのOーの生成はZ n () ;1 I J、 \1g0日J、 V 2 (ハ./ S i 0ョ
1 :� )、 y1 u 0 3 .,/ S i 0 2 1 :1 , :J 6 )、 羽T():)/ S j O�37)、 V205-P2()弓/
S i ( 2 38) 上にお いて、 い ずれもE S Rによって篠認されているの
o 2ーは酸化物上の酸素吸着に対してしばしば、 その生成が仮定される が電子状態の確認がされ た ことは ほ と んどなく、 また;格子酸素 イ オ ンと の区別も明確でないことが多いの
APPENDIX-II 電子スピン共鳴法
E S Rについては、 桑田ら3 g)、 石津4 0 )、 桜井4 1 )などの優れ た 解説
書があり、 ここではこれらを概観し た υ 電子スピン共鳴法(Electron Spin Resonance) とは、 不対電子を含む試料 (常磁性物質)を数1000ガ
ウスの磁場中において、 電子スピンの低いエネルギー状態、から高いエネ
ー 111・
ルギー状態への遷移によるマイクロ波の吸収を観測するもので、 不対電 子を検出するための最も有効な方法である。 ESRにより、 不対電子を
含む分子種や不対電子の密度および量を決定するごとができる。
[E S Rの原理]
図6-7のように電子がスピン 運動(自動運転)をしていたとする と、 実線の矢印の方向に磁気モーメ ントを生じる。 普通の状態ではこの 磁気モーメントの向きは無秩序であ り, エネルギー状態もスピンの向き によって変わらない。 しかし、 外昔日
〆fTJ J!JJ動Æ:
磁場がかかると磁気モーメントが磁 図6 - 7 泌気モーメントと電流 場の方向に向くもの(β, スピン量
子数S=-1/2)と逆方向に向くもの(α, スピン量子数S=1/2)の2通 りが生じ、 エネルギーも低いfjlj者の準位と高い後者の準位に分かれる (ゼーマン効果)。 例えば、 低いエネルギー準位にある電子にムEのエ ネルギーを与えると、 電子はそのエネルギーを吸収し(共鳴)、 高いエ ネルギー単位に遷移する。 このエネルギー差ムEは、 次式で与えられる。
ムE=gβH 。 ( 6 - 1 )
ここで、 gはg因子または Spectroscopic splitting factor と呼ばれ、
l個の不対電子が周囲の環境からまったく独立して存在している場合に は g= 2. 00232 の値をとる。 βは電子の軌道運動によって生じた磁気 モーメント(ボーア磁子)、 Hoは外部磁場を表す。 このムEに相当す るエネルギーは実際の測定においては電磁場によって与えられ、 光のエ ネルギー( hν)が6 - 1式のgβH 。に等しくなるとき、 S= -1/2の 準位にある電子は光のエネルギーを吸収してS=十1/2の準位に遷移する。
すなわち、 ESRの生ずる共鳴条件では
-112-
hν =gβH。 ( 6 -2 )
が成立する。 ここでhはプランクの定数である。
一般に、 遊離基内部には核磁気モーメントを持つ原子が含まれ、 不対
電子にはこれらの核が作る局所磁場δHが外部磁場Hoに加わり合計Ho 十δHの強さの磁場として感じられる。 磁気モーメントは外部磁場によっ て空間量子化され、 そのスピンIに従い2 1 + 1通りのエネルギー単位 をとる。 この場合、 電子に加わる局所磁場も2 1 + 1通りになるの この ように、 核の磁気モーメントによる局所磁場が原因となって共鳴吸収の 起こる磁場が分かれることを超微細構造( h f s )という。 不対電子を 含む分子種や不対電子の密度および量は、 この超微細構造を解析するこ とにより決定される。
[E S R測定装置]
ESR測定装置の概略を図6 - 8に示す。 マイクロ波の照射源として ガンオシレーターが用いられ、 位相をそろえた後、 導波管によって試料 まで誘導される。 磁場とキャビティ ー内には、 100 kHz の磁場変調を行 うためのコイルが巻かれている。 クリスタルで検波した後、 増幅し、 記 録される。 実際のESR信号は、 磁場変化に対するES R吸収強度の微 分変化量として表される。
Jえn'j'j・{j弘
1:' '1'1;えn
( DI'PII.TCNQ.Li
やi'vln:ふ(MgO))
( a )
14い
,,l、 IO 、、,,,図6-8 ESR測定装置の概略図( a )と空洞共振器(キャビティー)( b )の概略図41 )
内べυ唱E『ム噌,BA
文 献
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-116-
第7章 本研究の総括
センサの長期安定性は実用上、 極めて重要であり特にガ ス 漏れ警報器 などの防災機器においては致命的な問題となる場合がある。 従来の S n o 2系ガ ス センサを使用したガス漏れ警報器は、 地下街レストラ ンの厨 房のような水素やアルコ ール等の雑ガ スを多量に発生し、 高温多湿な条 件下で作動させると、 センサの感度変化により水素やアルコ ールなどに 対する警報濃度が経時的に低下するいわゆる高感度化現象をおこした。 その結果、 警報器の誤動作が 多発して大き な 問題とな ったυ これが本研 究を開始した直接の動機であるυ 本研究ではこのような感度変化を徹底 的に改良し、 S n 0 �系ガ スセンサの信頼性をより向上させることを 目 的とした。
第 2 章では、 高感度化現象の 実態調査お よびフィ ー ルドでおこるセン サの感度変化を実験室で再現させる手法すなわちシミュレーシ ョ ン法の
検討を行った。 このシミュレーシ ョンはセンサの長期安定性の評価や改
善法をさぐることを目的とする。 高感度化現象の実態を明らかにするた めフィールドで3年間使用されて感度変化したセンサを調べた結果、 1 ) 素子抵抗が空気中(R .'\ 1 R) およ び被検ガ ス 中 (RH:!) い ず れで も新品セ
ンサの値に比べて著しく低下する、 2 )空気中の素子抵抗(R八1 R)が極 大値を示す温度が高温側へシフトする、 3)3500C以上の作動温度域で の水素感度(R八1 R,/ R H 2)が増大することが明らかとなった。 雑ガ ス
に対するガ ス 漏れ警報器の出力応答挙動から、 レ ス トラン営業時間中の センサの作動温度は、 清浄な雰囲気中での作動温度(35OoC )よりも100 oc以上高い450--5500Cの範囲で変動すると予想される。 このような温度 上昇 が 高感度化の原因となっている可能性があることから、 素子温度を 高温に保持するというシミュレーシ ョン試験法を検討した。 その結果、
新品センサを素子温度4500Cで長期間( 90--144日)清浄空気中に保持す ると(以下、 単にシミ ュレーション試験と呼ぶ) 、 素子抵抗( R A 1 Rお よびRH 2 ) が低下し、 高感度化したセンサで見られる上記の特徴が ほと
んど再現することが明らかになった。 さらに、この試験によってS n 0 2
--117 -
結晶子径は変化しないことおよびι記の素子抵抗変化が素子に添加した P d増感剤とは無関係におこることを確認した。 シミュレーシ ョン試験
により低抵抗化したセンサ素子を室温において加湿空気中(水蒸気圧 15. 8および37.0 mmHg)に放置すると、 素子抵抗が増加し約40日後 には 新品センサのレベ ル にほほ 完全に回復することを認めた。 これまで 高感度化現象に伴う素子抵抗の低下には、 清浄空気中での作動( 35 OoC ) で回復する部分(可逆的変化)と回復しない部分(不可逆的変化)があ り、 不可逆的変化はS n 0 2の粒子成長とP dの有効表面積の減少に起
因するとされている。 本検討の結果は、 4500Cでの履歴温庭では可逆的 変化分のみあらわれることを示している。 上記の試験法はフィールドで 3年間使用されて高感度化したセンサの挙動をよく再現しており、 高感
度化現象のシミュレーシ ョン試験法として適当である。
第3章では、 S n 0ヱ系ガスセンサにおける感度変化の主として可逆 的な部分の原因究明を行ったり 前章の倹討結果より、 シミュレーシ ョ ン
実験温度を4500Cに設定し、 センサの抵抗や感度の経時変化と対応する 表面状態の変化を昇温脱離法により追跡したい その結果、 450;)Cでの保 持時間経過とともにセンサ素子からの酸素の脱離開始渇庭が高温側にシ
フトし、 20 0 ,_, 5 0 0 ÜC域での脱離酸素量が減少することが明らかになっ たり これは素子の酸化活性か低下することと良く一致するとともに、 素子抵 抗の低下や水素感度増大などをよく説明できる。 一方、 経過時間ととも に、 3000C以上の温度域における水の脱離量(吸着水量)ち減少するが、
その挙動はR八1 Rのピーク温度(空気中の素子抵抗が極大値を示す温度) や水素感度などの変化と相関しないことがわかった。 これらのことから 高感度化現象に対しては、 吸着殿素量の減少が主因をなし、 吸着水量の 減少は直接関与していないと結論した。 第2章でシミュレーシ ョン実験 後のセンサは、 室温において加湿空気中に放置することにより諸特性が シミュレーシ ョン実験前のレベルまでほぼ完全に回復することを述べた門 これについて検討した結果、 加湿空気中への放置によって吸着水量が増 加し、 シミュレーシ ョン実験前のレベルまでほぼ完全に回復することが わかった。 加湿空気中での放置が素子抵抗の増大をともなうことなどか
. 118--
ら、 酸素吸着-を促進するような水蒸気の吸着形態が存在するものと考え られ、 吸着式を推定したu
第4章では、 添加剤によるS n 0 2系ガスセンサの感度安定化と実用 的観点から安定化したセンサ素-子の各種ガスに対する検知特性および各 種雑ガスに対する安定性等を検討した川 経時安定性に及ほ‘す第2成分あ るいは第3成分の影響を調べた結果、 レニウムとパナジウムが感度安定 化 に有効な添加物で あ ることがわかったり これらの添 加物は水素加速試 験による素子抵抗変化に対して著しい抑制効果を示し、 特に1. 46 mol % レニウムと0.71 mol%ノくナジウムを共に添加した素子( R e V添加素 子)の安定性は極めて良好であった。 また、 この素子の実使用条件下で の長期安定性についても水素加速試験と同様、 極めて良好な結果を得た。
次に 、 R e V添加素子と無添加素子の各種ガスに対する検知特性およ び各種雑ガスに対する安定性を比較検討した結果、 温湿度特性、 ガス感
度特性、 ガス応答性および殺虫剤に対する耐久性は両者の間にほとんど 差が認めらず問題のないことかわかった。 まfこ、 S 0・ノ、 フロン、 ヘア
スプレーの各試験では無添加素子の素子抵抗はおおむね低下したが、
R e - V添加素子の場合、 素子抵抗の変化か小さく、 これらの雑ガスに 対する耐久性が改善されてし1ることがわかったυ 以上、 感度安定化に対 するレニウム、 バナジウムの有効性とこれらの添加物が他のセンサ特性 に全く問題を与えないことが明らかになったの
第5章では、 第2章と第3章の検討結果に基づいてレニウムとバナジ
ウムの安定化効果のメカニズムを検討したd R e Vの添加はP dの有 無にかかわらずS n 0 2系素子の抵抗やガス感度を安定化するがS n 0 2 の結品成長にはほとんど影響を与えないの このことから、 R e - Vの添 加はS n 0:;粒子の表面状態とくに吸着状態を安定化するものと考えら れる。 昇温脱離の繰り返し実験の結果、 R e -Vを添加していない素子 (S 1、 S 2、 S 3 )では酸素脱離量が実験を繰り返す毎に大きく減少 し、 この変化がセンサでみられる経時変化すなわち活性酸素の減少(酸 化活性の低下〉およびS n 0 2中の電子濃度の増大(低抵抗化)に対応 していることがわかった。 これに対し、 R e -Vを添加したS 4では繰
nuu
り返し実験を行っても酸素脱離量はほとんど変化せず、 素子の抵抗やガ ス感度の安定化と極めてよく 対応する結果が得られたυ R e V添加後 には素子を空気 中 6000Cで焼成して いる ことや素子の作動損度 ( 350�
5500C) を考え ると、 これらの添加物は 酸化物 (R e 207、 Vゴ() 5 )と
して存在している可能性か強い。 V:� ( ) :ï表面上.では気相 の酸素分子が回
相の酸素イオン ( 吸着酸素 ) に 容易に変化する ことが知られている こと やR e 207とV :� 0 5の熱力学データなどから、 これらの殿化物が酸素供 給体として働き、 S n ()どへの酸素吸着を円滑におこさせる作用がある
ものと推定したf 一方、 昇温還元実験では、 s 4 (R e V添加素一子) では酸素消費量の変化かS 1、 S 2、 S 3のいずれの試料よりも大きく、
素子の経時安定性との相関は認められなかったυ これはセンサの実使用 条件と本実験条件の間に大きな差が あ ったことによるものと思われる。
第6章では電子スピン共鳴( E S R )法 に よって素子表面上に吸着し
ている活性酸素種を検出し、 日夜着酸素の帰属を行ったり 真空中500UCま で昇混、 5000Cで30分間真空排気、 500')Cで30分間100 Torrの酸素を導 入、 再び500(Cで30分間主主排気した後、 空温まで冷却して試料を前処 理した後、 室温'"'-' 100lCで酸素吸着を行うとs 1 (P d、 パイン夕、一、
R e V のいずれも無添加) 、 S 4 (P d、 パインタ一 、 R e Vのい
ずれも添加)上にo 2ーの 吸着が篠認されたυ 前処理後、 S 1、 S 4を 5000Cから酸素中で冷却すると、 これまで報告されたことのないESR
スペクトルが得られた。 シミュレーシ ョンによっ て 解析を行ったところ\
こ の スペク トルに は3 種の シクナルが重な っている ことが推定された。 これらのシグナルは、 それぞれ2個のS n上に等価に配位したO一、
S n 0 2表面にトラップされた電子、 格子中のFセンターにトラップさ
れている電子であ ることを考察した。 さ らに、 O 2-とO ーの熱安定性を 検討した結果、 1) 0 2ーの場合、 S 1とS 4ーとで熱安定性に差はほとん
ど認められず、 10 0 -., 1 5 0 ocで大部分が脱離する 、 2) 0ーの場合は、
S 1とS 4 上で熱安定性に若干の差がみ られるが、 いずれの試料でも
3000C以下で大部分が脱離することが明らかになった。 これらの脱離温 度にくらべて実使用条件下での素子温度は高い こと ( 3 5 0 -., 5 5 0 oc )およ
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びo �ーはo 2ーやOーよりも熱安定性が高し1とされていることを考えあわ せ 、 実使用条件下において存在する 吸着酸素の大部分は o 2ーであると推 論した。
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謝 辞
本研究は、 九州大学総合理工学研究科教授 山添 界先生の御指導と 御鞭撞に負うことが極めて多く、 ここに深甚の謝意を表しますの
また、 本研究をまとめるに当り、 九州大学工学部 加藤昭夫教授、 同 総合理工学研究科 荒井弘通教授、 森永健次教授、 北海道大学触媒化学 研究センター 岩本正和教授には有益な御教示をいただき、 深く感謝い
たしますっ
本研究の遂行に当り、 九州大学名誉教授 清山哲郎先生には有益な御 示唆と多くの御厚意をいただきました。 ここに厚く御礼申し上げます。
さらに、 本研究を発表するに当り、 多くの御配慮をいただいたフィガ ロ技研(株)取締役社長 松浦俊二氏、 同常務取締役 高畠 敬氏、 同 取締役 梶山裕久氏に感謝の意を表しますの
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