富山県の幼稚園における小学校との連携
一特別支援教育に焦点を当てて−
小林 真 ・ 北 野 仁 菜
1)〔要旨〕
本研究では、富山県内の幼稚園を対象に質問紙調査を行い、特別支援教育在中心に小学校と の連携の実態を尋ねた。その結果、富山県の幼稚園における特別支援教育の体制整備は、全国 のレベルよりも低いことが明らかになった。次に、設置形態(公立・私立)による違いを比較 したところ、いくつかの項目で私立幼稚園の方が不十分であることが示された。また特別支援 教育コーディネーターの指名の有無による体制整備・連携の状況を検討したところ、いくつか の項目で指名されている幼稚園の方が連携が進んでいることが示された。最後に小学校との連 携のパターンを5つのクラスターに分けたところ、連携が進んでいる幼稚園とそうでない幼稚 園のパターンが明らかになった。
キーワード:特別支援教育幼稚園幼小連携
I 問題と目的
1 .幼稚園における特別支援教育の現状
特別支援教育においては、早期発見から青年期以降の社会参加に至るまでの一貫した支援を実現することが重 要な課題である。中央教育審議会(2005)は、答申『特別支援教育を推進するための制度の在り方について』の中で、
「LD ・AD H D・高機能自閉症等を含めた障害のある子どもへの対応については、幼児段階での早期発見・早期 支援が重要であることから、幼稚園及び保育所との連携を考慮しながら、幼児段階における特別支援教育の推進 の在り方についても検討が必要である。」と指摘している。
その後、 2007年には学校教育法の一部改正により、幼稚園から高等学校までの特別支援教育制度が開始された。
具体的には、幼児の実態把握や校(園)内委員会の設置、特別支援教育コーデ、イネーター(以下、コーディネーター と略記)の指名など、特別支援教育体制の整備が幼稚園でも義務づけられた。
平成 27年度の『特別支援教育資料』(文部科学省,2016)によれば、特別支援学校の幼稚部に通う幼児は全国で 1,499人に過ぎず、そのうち知的障害のために幼稚部に在席しているのはわずか 62人である。したがって、知的 障害のある幼児の多くは幼稚園・こども園・保育所のいずれか(以下、幼稚園等と略記)に在席していると考えられ る。近年は、児童発達支援センターへの通園と幼稚園等を平行利用している子どももいるため、知的障害児の大 部分と、知的障害を伴わない発達障害児は、そのほとんどが幼稚園等に在席していると判断できる。実際に、郷間・
園尾・宮地・池田・郷間(2008)が保育士と幼稚園教諭を対象に調査を行ったところ、障害児を担当した経験のあ る者は 67.3%、気になる子どもを担当した経験のある者は 88.0%であった。
藤井・小林(2010)は、富山県内の幼稚園・保育所に対していわゆる「気になる子ども」の特徴の自由記述と、
試作段階であった CHEDY(尾崎・小林・阿部・芝田・斎藤,2014)への記入を求めた。その結果、保育者が気にな る子どもと感じている子どもの大部分は、発達障害や知的障害の特徴と重なることが明らかになった。したがって、
1 )越前町立織田小学校
‑3‑
障害であるという診断がない「気になる子ども」には発達障害や知的障害の疑いがあり、保育者が保育をする上 で何らかの困難在感じていることが明らかになった。
これの報告から、幼稚園等に多くの障害児とその疑いのある幼児が在席していることが示された。
また文部科学省(2016)の報告では、私立学校における特別支援教育体制に課題があることも指摘されている。
すなわち、幼稚園等における特別支援教育の体制整備は小学校に比べて遅れており、その傾向は私立幼稚園の方 がより顕著である。文部科学省(2017)の調査による実際の体制整備状況は以下の通りである。幼稚園における校 内委員会の設置は全体で86.8%であるが、公立幼稚園では99.4%、私立幼稚園では43.3%である。幼児の実態把 握については全体: 94.7%、公立: 98.6%、私立:88.1%である。コーディネーターの指名は全体: 87.1%、公立:
99.4%、私立: 44.7%である。個別の指導計画の作成率は全体: 72.6%、公立: 86.3%、私立: 29.3%である。個 別の教育支援計画の作成率は全体で60.5%、公立: 76.2%、私立: 20.2%である。このように、私立幼稚園等にお ける体制整備が大幅に遅れていることがわかる。
高平・若槻・佐久間・宮崎・工藤(2015)は、私立幼稚園の教諭92名に対してどのようなことで職務の困難感を 感じているかを調査した。その結果、保育について・子どもとの関係について・軽度発達障害が疑われる子ども への対応などの困難感の得点が高いことが示された。このように、私立幼稚園の教諭が発達障害およびその疑い のある「気になる子ども」への対応に悩んで、いることが明らかとなった。
しかし、幼稚園教育の方向性を定めた『幼稚園教育要領』において、発達障害児や気になる子どもへの対応に 関する指針はほとんど示されていない。現行(平成20年版)の『幼稚園教育要領』(文部科学省,2008)では、第3 章第lの2(2)において障害のある幼児の指導のことがわずかに述べられているだけである。そこでは、障害のあ る幼児は集団生活の中で発達していくこと、特別支援学校等の助言や援助を活用すること、家庭・医療・福祉など と連携して支援するための計画を個別に作成すること、が記されている。しかし私立幼稚園が、実際に特別支援 学校と連携したり個別の指導計画や教育支援計画を立案したりしているのか、その実態は明らかになっていない。
2.特別支援教育における小学校との連携
幼稚園等に障害児や障害が疑われる幼児が在席しているということは、小学校への就学に当たってどの学校に 就学すべきかという問題が生じるということである。 2013年8月に学校教育法施行令の一部改正が発令され、 9 月1日付で施行された。この改正では、同令22条の3に規定する特別支援学校の就学規準に該当する幼児児童生 徒であっても、障害の状態等を踏まえて総合的に就学先を決定するという方針が定められた。つまり、機械的に 特別支援学校に就学させるのではなく、子どもにとって望ましい就学形態は何かを考えるということである。こ のようにインクルーシブ教育に関する制度改正が進んできたため、特別支援教育に関する幼稚園等と小学校の連 携はその重要さが増しているといえよう。
それでは、実際に幼稚園等と小学校の連携は効果的に実施されているのであろうか。大塚(2012)は小学校教諭 23名を対象に調査を行い、幼小連欝の成功度合いについて尋ねた。その結果、まあまあうまくいっているという 回答が6名(26%)、あまりうまくいっていないという回答が10名(44%)、わからないという回答が7名(30%)で あった。また同じ調査で、小学校教諭が 1年生を担任する際に関係機関から伝えて欲しい情報について尋ねたと ころ、具体的な問題行動とその対処方法(13名)、家庭の様子や親の姿勢・考え方(1l名)、当該児童の特徴(10名) という 3つが多く挙げられた。大塚(2012)の調査では、小学校教諭の多くが連携がうまくいっているとは感じて いなかった。それはおそらく、小学校が望む 情報が事前に得られなかったことに起因すると考えられる。
前項で述べたように、幼稚園等における特別支援教育の体制整備はまだ十分ではない。したがって、どのよう な形で、小学校との連携を図ればよいか、幼稚園等の側ではまだ模索中であると考えられる。しかし、一般的には 体制整備が遅れていると考えられる私立幼稚園等で、あっても、小学校と十分な連携をとっている幼稚園も存在す る。したがって、どのような連携が行われているのか、その実態を明らかにしなければ、よりよい連携のあり方
‑4‑
を検討することはできないであろう。
3.本研究の目的
以上の議論を踏まえ、本研究では富山県内の幼稚園を対象として、特別支援教育に関する小学校との連携がど のように行われているのか、その実態を明らかにする。その際に次の3つの観点からデータを解析する。
①私立幼稚園の方が公立幼稚園よりも体制整備が遅れているのか、また小学校との連携が取れていないのかを 検証する。
②園内における特別支援教育の実質的な責任者であるコーディネーターの指名の有無により、体制整備や小学 校との連携のあり方が異なるのかを検証する。
③設置形態(公立・私立)を含めて、小学校との連携にあり方をいくつかのパターンに分類することを試みる(ク ラスター分析)。
この3つの分析を通じて、本研究では幼稚園における特別支援教育体制の整備のあり方についての提言を行う。
I I 研究 1
予備調査1 .目的
本調査で使用する質問紙を作成するため、幼小連携の実態を把握する。そのために、幼稚園・小学校の双方に 対する聴取等を行うο
2.方法
対象者J 私立幼稚園3園の園長、小学校
4
校の教員(教頭、通級指導教室担当者など)を対象とした。私立幼稚 園については、私立幼稚園協会(当時)の研究事業で小学校との連携についての研究報告を行ったことのある 園を選んだ。小学校については、特別支援教育士富山支部会の会員に調査について紹介したところ、 4名から 協力が得られた。手続き 幼稚園に対しては聞き取り調査を、小学校に対しては電子メールによる調査を行った。幼稚園について は第2著者が聞き取りを行い、小学校に対するメール調査は第l著者が行った。
調査内容
(1)幼稚園長への聞き取り
−小学校との連携の実態
−障害児や気になる子どもがいるクラスで小学校と交流活動を行う際の配慮点
.幼稚園教諭左小学校教諭の交流
−小学校との連携に関する満足度
.その他
(2)小学校教諭への電子メール調査
−障害のある子どもが小学生と交流する際の事前の情報共有の有無
.交流活動の当日の子どもの様子に合わせた配慮の有無
−就学に向けた連携のあり方 調査時期 2015年6月〜7月
倫理的国慮調査の趣旨を説明し、個別の幼稚園・学校に関する情報は伏せるという条件で了解が得られた協力 者に調査を依頼した。
3.結果
(1)幼稚園長への聞き取りから
‑5‑
以前は小学校との十分な連携が取れていたが、現在は連携が取れていないと回答する幼稚園があり、その園で はそれ以上の聞き取りは行わなかった。連携が取れなくなった理由は、小学校の統廃合による移転、小学校の窓 口となる教員(管理職)の移動によって連携がとりにくくなったことが挙げられた。
小学校との連携で実際に行っている取り組みとしては、子供同士の交流、教員同士の交涜があげられた。連携 が続いている幼稚園からは、幼小連携の体制が整っており、継続した連携があるのでうまくいっているという回 答が寄せられた。
(2)小学校教諭への電子メール調査
気になる子どもについての情報収集としては、交流活動時の様子を見ること、就学時健康診断の様子を見て話 し合うこと、幼・保・小の合同連絡会で、情報交換することが挙げられた。また、幼稚園等によっては就学時健康 診断で子どもの様子をよく見て欲しいという依頼がある場合と、そのような情報が寄せられない場合があること が述べられていた。また、言語障害の通級指導教室を担当する教員は、言葉の指導に関する幼稚園等の巡回相談 で事前に障害児や気になる子どもとの実態を把握していた。
4.考察
予備調査で明らかになったことは、幼稚園等と小学校との子供同士の交流活動はほとんどの学校区で行われて いるが、その機会を障害児や気になる子どもについての情報共有の機会として活用している幼稚園と、そうでな い園があるということである。また、小学校教員が個人的な努力によって情報を収集している実態も示された。
したがって、幼稚園等と小学校の関係や人員配置によっては、かなり多様な連携を行っている可能性があること、
またそれとは逆に、ほとんど連携を行っていない場合もあることが推測される。
これらの情報を元に、本調査では多様な連携の機会を併記し、それぞれの連携を実施しているかどうか複数回 答で尋ねる方法がょいと判断できれる。そして、多様な連携の一つ一つについて、設置形態(公立私立)や体制 整備の状況(コーディネーターの指名の有無)との関連性老検討した方が、幼稚園の実態が把握できると考えられ る。
さらに、多様な連携がどのように組み合わされて実施されているのかを探索的に分類することで、連携に関す る新しい実態が浮かび上がってくると思われる。こうした分類(タイプ分け)によって、各国がのそれぞれの実態 に応じてどのように連携を進めていけばよいかを検討することができるであろう。
m 研究 2 本調査 1 .目的本研究の目的に記した①〜③を検証する。
2.方法
対象者富山県内の幼稚園および幼稚園を基盤に設置された認定こども園 62園(公立 24圏、私立 38園)を対象と した。富山県内の幼稚園および幼保連携型・幼稚園型認定こども園81園(公立27園、私立54園)に調査協力
者E依頼し、そのうち 63園から回答が寄せられた(回収率77.8%)。なお、回収された調査票に無記入の欄が多かっ た l圏在分析の対象から外し、 62園を分析対象とした。
手続き 郵送による質問紙調査を実施した。回答するに当たっては、園長または特別支援教育に関して責任的な 立場にある教員に記入してもらうように依頼した。
調査内容以下の内容について、選択肢式の調査および自由記述式の質問票を用いた。
(1)回答者の属性
(2)特別支援教育体制の整備状況(コーデイネーターの有無、個別の指導計画・教育支援計画の作成状況、連携に 関する満足度)
‑6‑
特別支援教育に関する幼小連携の選択理由
<うまくいっていると思う理由>
−情報の共通理解は以前より実施できるようになった0
.話し合う機会を複数回もっている。
−幼児の実態を見に来てもらっている。
・気になることがあればすぐに相談できる。
−特別支援学級の見学やコーディネータ一、校長、教頭、幼稚園教諭、保護者との話し合いの機会がある0
・園側の要望を小学校へ伝え、対応してもらっている。
<まあまあうまくいっていると思う理由>
・小学校から入学前のリサーチが多くなった。
・日頃から気になる園児等についてもこまめに話している。
−小学校のほうから実際に見に来たり、話し合いをしたりする機会が増えた0
.幼稚園からも話しやすい雰囲気がある。
−学校見学をお願いするといつでも受け入れてくれ、園にも子供の様子を見学しに来る0
・入学後も気になる子のことについて連絡がある。就学後も見学に行っている。
−入学後はl年生の時のみの情報交換である、その後も継続して育ちを確認したい0
・職員が入れ替わると、引き継ぎ事項がうまく伝わっていないと感じる。
−引き継ぎが教務の先生で、情報が共有されていなし、。
−就学先が複数あり、それぞれの学校によって対応に温度差がある。
<あまりうまくいっていないと思う理由>
−入学が近くなってから対象児について聞き来られることが多い0
・就学先が多く、校区外の小学校とはほとんど連携がない。
−小学校内で気になる子の支援について情報が伝わっていない0
.実際に 1年生を担当する教師に伝わっていない。
−指導要録はあまり読まれていないようである0
.小学校主導で行うことが多い。
Table 1
幼稚園教諭が小学校を訪問する機会の内訳をFig.5に示す。最も多かった のは小学校が企画する交流活動への参加で、次が 運動会などの行事への参加、次いで通常の学級の 授業の見学であった。その他としてあげられたの は、幼小連携についての連絡会への参加、合同学 習会の事前研修会や事後研修会への参加、スタディ メイト(※)体験であった。複数回答であるため、ど の幼稚園がどのような連携をとっているのかがこ (3)幼稚園教諭が小学校在訪問する機会
〈園) 60 50
その
他
幼小交流活動への参加
量動会などの行事参観
学校生活の様子の見学
特別支緩学級の綬業の見学
通常晶子級の担象の見学
20
10
のままではわかりにくい。そこで、小学校との連 携のパターンを探る必要があるといえよう。
公開摂家・研究授集の参観
幼稚園教諭が唱賀校を訪問する機会 Fig.5
※スタディメイトとは、富山県の市町村が小学校に有償ボランティアとしての補助員を派遣する制度である。富山 県内の特別支援学校における実習体験と、富山県教育委員会が主催する講習会という一連のプログラムを終了した 受講生に対して「スタディメイト養成講座修了証」が交付される。こうした地域人材をブールしておき、市町村教 育委員会が地元の小学校に人材を派遣するシステムである。
記入のなかったl園を除く 61圏在分母として実施率を求める、幼!用指導要録を
‑8‑
(4)小学校との情報共有の実態
小学校に持参して小学校で打ち合わせを行う園が22園(36.0%)、小学校側が幼稚園を訪問して打ち合わせを行っ ている園が35園(57.3%)、その他が15闇(24.6%)であった。その他の内訳は、連絡会の際に口頭で伝える、指導 要録は提出するだけで気になる子どもに関しては支援シートを使用する、指導要録を提出する前に事前に連絡会 を行う、などであった。打ち合わせの相手は、教頭が33園(54.1%)、小学校のコーディネーターが28園(45.9%、) 低学年担任が26園(45.6%)で、あった。
障害児や気になる子どもについての指導要録を作成 する際に、保育者が工夫していることの内訳をFig.6 に示す。 Fig.6からわかるように、多くの園で対象児 のよい点・苦手なことや場面・園で行ってきた対応法 を記載していた。この回答から見ると、小学校側が欲 しいと思う情報がかなり記載されているといえよう。
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指導要録を作成する際に工夫していること Fig.6
(5)障害児や気になる子どもが小学校で活動する際に行っている支援小学校で活動する際に行っている支援の内 訳をFig.7に示す。 Fig.7からわかるように、多くの園 で実施していた支援は次の2つであった。予め園児 に活動の内容を伝えている園が44園(71.0%)、小学 校側に園児に関する情報提供を行っている園が43園
(69.3%)で、あった。
それ以外の支援は、実施している闘とそうでない園 のばらつきが多かった。この点については、設置形態 や閏内体制の整備状況との関連性を探る必要があろ Fig.7 障害児や気になる子どもが小学校で
活動する際に行っている支援
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(6)障害児・気になる子どもの就学の際に行っている支援小学校の事前見学を行っている園が18園(29.0%、) 要請があれば行うようにしている園が25園(40.3%)、行っていない園が16園(25.8%)、無回答が3園(4.8%)であっ た。入学式のリハーサルの依頼については、行っている園がl園(1.6%)、要請があれば行うようにしている園が
14園(22.6%)、行っていない園が44園(71.0%)、無回答が3園(4.8%)であった。
設置形態による体制整備・連携の違いの検討
私立幼稚園の方が特別支援教育体制の整備が遅れているのか、また小学校との連携が取れていないのかを検討 するため、それぞれの設問の選択肢と設置形態のクロス集計表を作成し、
x 2
検定と残差分析を行った。(1)特別支援教育の体制整備状況 1項目だけで設置形態の違いが見られた。個別の指導計画を作成しているのは、
公立で20園(90.9%)、私立で12園(31.6%)で、あった。 x2(4)=17.62(pく.001)となり、残差分析の結果から公立幼稚 園の方が作成率が高いことが示された。コーディネーターの指名率・個別の教育支援計画の作成率、および小学 校との連携の満足度には違いが見られなかった。
(2)幼稚園教諭が小学校在訪問する機会 2つの選択肢で設置形態による違いが示された。特別支援学級の授業の 見学については、公立幼稚園で実施している園は24圏中13圏(54.2%)であるのに対して私立幼稚園では38圏中 8園(21.1%)で、あった。ど(1)=7.20(pく.01)で有意となり、残差分析の結果から公立幼稚園の方が有意に実施率が 高いことが示された。行事への参加については、公立幼稚園では22園(91.7%)であるのに対して私立幼稚園では
‑9‑
26園(68.4%)で、あった。ど(1)=4.55(pく.05)で有意となり、残差分析の結果から公立幼稚園の方が有意に実施率が 高いことが示された。
(3)小学校とのJ情報共有の実態小学校との情報共有の実態については、公立幼稚園と私立幼稚園の聞に違いは見 られなかった。
(4)障害児や気になる子どもが小学校で活動する際に行っている支援 それぞれの選択肢を検討じたところ、予 め園児に活動の内容を伝えている園は公立で22園(91.7%)であるのに対して私立では22園(57.9%)であった。
ど(1)=6.59(pく.01)で有意となり、残差分析の結果から公立幼稚園の方が有意に実施率が高いことが示された。
(5)障害児・気になる子どもの就学の際に行っている支援小学校との情報共有の実態については、公立幼稚園と 私立幼稚園の聞に違いは見られなかった。
設置形態による体制整備・連携の状況を検討したととろ、いくつかの点で私立幼稚園の方が不十分な面が見ら れた。特に小学校の特別支援学級の見学や、小学校との交流活動のの際に障害児や気になる子どもとに対して行 う配慮が少ない傾向にあった。公立幼稚園に通園する学区が小学校区と重なっている場合が多く、建物も近接し ていることが多いために、比較的連携がとりやすいと考えられる。
コーディネーターの指名による体制整備・連携の違いの検討
コーディネーターの指名の有無によって、特別支援教育の体制の整備や小学校との連携に違いが見られるのか を検討するため、それぞれの設問とコーディネーターの指名の有無によるクロス集計表を作成し、
x 2
検定と残差 分析を行った。(1)特別支援教育の体制整備状況記入漏れがあった3圏在除く 59圏在分母として整備の実施状況を集計した。個 別の教育支援計画を作成しているのは、指名している園で18園(46.2%)、指名していない園で2園(10.0%)で、あっ た。 x2(1)=1.11 (pく.01)となり、残差分析の結果から指名している園の方が作成率が高いことが示された。個別の 指導計画の作成率と、幼小連携の満足度には違いが見られなかった。
(2)幼稚園教諭が小学校在訪問する機会 それぞれの選択肢を検討したところ、 4つの選択肢で指名の有無によ る違いが見られた。まず通常の学級の見学については、指名している園では30園(75.0%)、指名していない園で は10園(45.5%)で、あった。ど(1)=5.41(pく05)となり、残差分析の結果から指名している園の方が実施率が高いこ
とが示された。特別支援学級の見学については、指名している園では17園(42.5%)、指名していない園では4園 (18.2%)で、あった。ど(1)=3.75(pく.05となり、指名している園の方が実施率が高いことが示された。行事へ の参加については、指名している園では34園(85.0%)、指名していない園では 14園(43.8%)であったo x20)=3.71 (.05くpく.10)で有意傾向となり、念のために残差分析を実施したところ、指名している園の方が実施率 が高い傾向にあった(.05くPく 10)。幼小の交流活動への参加については、指名している園で38園(95.0%)、指名し ていない園で18園(81.8%)であった。いずれも高い割合であるが、指名している園の方が実施率が高い傾向にあっ た(.05<p<.10。)
(3)小学校との情報共有の実態小学校との情報共有の実態については、公立幼稚園と私立幼稚園の聞に違いは見 られなかった。
(4)障害児や気になる子ともが小学校で、活動する際に行っている支援 それぞれの選択肢を検討したところ、小学 校側に園児の情報を提供するという支援で指名している園では31園(77.5%)、指名していない園では2園(9.1%) であった。ど(1)=3.52(.05くPく1O)で有意傾向となり、念のために残差分析を実施したところ、指名している園の 方が実施率が高い傾向にあった(.05くPく.10)。それ以外の支援に違いは見られなかった。
(5)障害児・気になる子どもの就学の際に行っている支援小学校との情報共有の実態については、コーディネー ターの指名の有無による違いは見られなかった。
コーディネーターを指名Lている園の方が、いくつかの点で体制整備や連携が進んでいることが示された。や
n u
はり、特別支援教育の実質的な主務者を園務分掌の中に位置づけている園の方が、責任を持って連携に取り組む ことができると思われる。
連携のあり方のタイプ別の検討
小学校との連携のしかたにどのようなタイプがあるかを検討するため、「(3)幼稚園教諭が小学校在訪問する機 会」の6つの選択肢への回答パターンの類似度によって幼稚園を分類した。 6つの選択肢のそれぞれについて
O
をつけた場合をl点、付けなかった場合を0点と得点化し、平方ユークリッド距離を用いたWard法によるクラス ター分析を行った。その結果得られたデンドログ、ラムをFig.8に示す。デンドログラムを概観し、 4ないし5クラ スターに分類することが適当であると判断されたため、 4クラスター解と 5クラスター解を求め、 6つの選択肢 の回答状況を検討した。その結果、 5クラスター解が解釈しやすいと判断したので、以下では幼稚園を5つのタ イプに分けて、小学校との連携の実態を検討する。
各クラスターの内訳は、第1クラスターは13園(公立: 5園、私立8園)、第2クラスターも 13園(公立: 4圏、 私立: 9園)、第3クラスターは10園(公立: 4園、私立: 6園)、第4クラスターは13園(公立: 9園、私立:
4園)、第5クラスターは13園(公立: 1園、私立12園)で、あった。 Fig.8からわかるように、 C L 1とC L 5が大 きく 1つのクラスターに結合され、 CL 2〜C L 4が別のクラスターに結 合されている。
次に各クラスターの連携の特徴を検討するため、 6つの選択肢のそれぞ れについて5つのクラスターと回答
c o
をつけたかどうか)をクロス集計し、ど検定と残差分析を行った。
選択肢1(通常の学級の授業を見学する)については、 x2(4)=41.96(p<.OO1) となり、クラスターによる連携の違いが有意となった。残差分析の結果、
クラスター 1
・
5に属する園ではこの連携を実施していない園が多く、逆 にクラスター 2・
4に属する全ての園がこの連携を実施していた。遺書周辺(特別支援学級の授業を見学する)については、 x2(4)=37.oo(p<.OO1) で有意となった。残差分析の結果、クラスター1
・
5に属する園ではこの 連携を実施していない園が多く、逆にクラスター4に属する全ての園がこ の連携老実施していた。選択肢3(公開授業の見学)についてはど(4)=22.91(pく.001)で有意となっ た。残差分析の結果、クラスター5に属する園ではこの連携を実施してい ない園が多く、クラスター2に属する園も連携を実施しない傾向にあった (.05<p<.1 O)。逆にクラスター4に属する全ての園がこの連携を実施してい た。
選択肢4(学校生活の様子の見学)については、 x2(4)=3s.11(p<.OO1)で有 意となった。残差分析の結果、クラスター1・2に属する園はこの連携老 実施しておらず、逆にクラスター3に属する全ての園がこの連携を実施していた。
選択肢5(行事への参加)については、 x2(4)=52.77(p<.OO1)で有意となった。残差分析の結果、クラスター1
・
2・3に属する聞はこの連携を実施する傾向にあった。クラスター 3については自由度調整済み残差が有意傾向 であったが、 10圏全てがこの連携を行っていた。
選択肢6(幼小の交流活動への参加)については、 x2(4)=16.24(p<.01)で有意となった。残差分析の結果、
スター5に属する園でこの連携老実施していない園があった。
Table 2に、それぞれの統計量と各クラスターの特徴を示す。残差分析の結果から、クラスター4に属する園は、
一
ク フ
11 小学校との連携に関する
デンドログラム
Cl4
Cl2
Fig.8
幼稚園教諭が小学校を頻繁に訪問して連携していることが明らかになった。クラスター lに属する園はほとんど 行事への参加のみ実施している。クラスター5は、全体的に連携が少ない。 Fig.8に見られるように、クラスター
lと5が大きく lつのグ、ルーフ。になっており、この2群は全体的に小学校との連携が少ないといえる。
クラスター2と3はいず、れも行事への参加は必ず実施している。クラスター2に属する幼稚園はさらに通常の 学級の見学を行っており、クラスター3の幼稚園は学校生活の見学を行っている点が異なっている。しかしどち らも中程度の連携を行っており、この 2つが比較的近い距離で結合され、さらに最も連携を行っている第 4クラ スターと一緒になって大きなグ、ループを形成している。すなわち、連携が頻繁〜中程度の幼稚園と連携が少ない
〜ほとんど行われていない幼稚園の2つである。
す議t域紛ま普島'):J,えう言叩<(J)事著書鷺
クラスターによって設置形態に違いがあるかどうかを検討したところ、ど(4)=11.03(pく.05)となった。残差分 析の結果から、クラスター 4には公立幼稚園が多く、クラスター 5には私立幼稚園が多いことが明らかになった。
クラスター 4は多様な交流を行っているグ、ルーフ。で、あり、クラスター 5は連携が乏しいグループである。私立幼 稚園でもクラスター 3
・
4に含まれている園もそれなりにあるが、一部の園はほとんど連携を行っていないこと が明らかになった。なぜ連携を行わない(行えない)のかについては、今後の検討課題である。' I V .
全体的考察 1 .本研究のまとめ本研究では、富山県内の幼稚園を対象とした調査を行い、 78%近い回収率で回答を得たので、この調査結果は 概ね富山県内の現状を反映していると考えられる。調査の趣旨を考えると、特別支援教育に熱心に取り組んでい る幼稚園からはおそらく回答が返送されていると思われる。したがって無回答であった幼稚園については、体制 整備や幼小連携が十分で、はない可能性が高い。この点在考慮すると、富山県内の幼稚園における特別支援教育は 全国的な動向に比べるとまだ十分に実現されているとは言いがたい。
本研究では、私立幼稚園に体制整備の遅れや小学校との連携不足が見られるかを検討した。調査への協力が得 られた幼稚園に関しては、公立幼稚園と私立幼稚園の聞にそれほど、顕著な相違は見られなかった。ただしいくつ かの点では、私立幼稚園の方が連携の程度が少ないことが明らかになった。
本研究ではまた、コーディネーターの指名の有無による違いについても検討を行った。指名の有無による大き な違いはなかったが、いくつかの点でコーデ、イネーターを定めている幼稚園の方が連携が進んでいることが示さ れた。したがって、特別支援教育のキーパーソンとして、コーディネーターを指名することには意味があるとい えよう。
本研究では独自の視点として、クラスター分析による小学校との連携のパターンの探索を試みた。クラスター
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分析は距離行列やクラスター結合に様々なバリエーションがあるため、本研究で報告した5クラスター解はあく までも試案である。しかし、連携のパターンを大きくとらえるには有効であったと判断できる。すなわち、連携 が少ないクラスター5と、行事での交流するだけのクラスター lを結合することで、「連携が少ない幼稚園」とい うグ、ループρを設定することができた。連携のパターンを分類することによって、なぜ連携が少ない幼稚園がある のか、連携が多い幼稚園はどのように連携を進めているのか、といった研究上の問題提起ができたと思われる。
デンドログラムと集計表を利用すれば、様々なレベルの幼稚園が10数園ずつ存在していることが可視化される。
そのことによって、自分たちの幼稚園の取り組みが富山県内でどのレベルにあるかを客観視することができる。
たとえば、行事の時だけ小学校と交流していることについて「十分に交流している」と考えていた幼稚園がある とすれば、もっと進んでいる幼稚園の存在に気づき、どのように連携を深めていけばよいかを考えるきっかけに なると思われる。
2.今後の課題
本研究では、全体的に見ると私立幼稚園の方が連携の程度が少ないことが明らかになった。さらにクラスター 分析の結果から、小学校との連携が少ないグループに属しているのはほとんどが私立幼稚園であることが明らか になった。私立幼稚園は、独自の教育方針を持ち、県・市町村教育委員会からの直接的な指導が行われにくい。
したがって体制の整備や小学校との連携は、理事長や園長が特別支援教育を推進する意思を強く持っているかど うかに左右される。つまり、私立幼稚園の中に特別支援教育・幼小連携を推進している園と、ほとんど取り組ん でいない園があるということである。日本の子どもたちの将来を考えた場合、私立学校の独自性は尊重しつつも、
教育内容を一定レベル以上に保っておく必要がある。したがって、私学振興の中に特別支援教育の視点をもっと 取り入れていく必要があるといえよう。さらに今後の課題として、何が小学校との連携を阻害しているのか、阻 害する要因を明らかにするための研究が必要であろう。
本研究ではまた、コーディネーターの指名の有無による特別支援教育の実態も検討した。たしかに幼稚園内に おいては、教職員全員による共通理解の下で特別支援教育が行われるべきである。しかし、小学校を始めとした 外部諸機関との連携を考えれば、主務者が明確で、あった方が連絡調整が容易であると思われる。その意味で、コー ディネーターを指名するという園長の責務は重要なのである。この点
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関しては、教育行政の側からの働きかけ が必要だと思われる。クラスター分析の結果から、連携が充実している幼稚園とそうでない幼稚園があることが明らかになった。そ こで、なぜ連携が進んでいるのかという、促進要因を明らかにすることも大切である。連携が進んでいるグルー プには確かに公立幼稚園が多いが、私立幼稚園も数圏が含まれている。したがって今後は、特別支援教育の推進 や小学校との連携に積極的な私立幼稚園の取り組みを、どのようにしたら他の私立幼稚園に広げていくことがで きるかを考えていく必要がある。特に管理職を対象とした研修も行い、持続的に連携を進められるような方策を 考えていく必要がある。
引用文献
中央教育審議会2005『特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)』
藤井千愛・小林真2010保育者による「気になる子ども」の評価一「気になる子ども」と発達障害との関連性 と やま発達福祉学年報, l,41‑48.
郷間英世・園尾奈津実・宮地知美・池田友美・郷間安美子 2008幼稚園・保育園における「気になる子」に対す る保育場の困難さについての調査研究京都教育大学紀要,113,81‑89.
文部科学省2008幼稚園教育要領 文部科学省2016特別支援教育資料
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文部科学省 2017平成 28年度特別支援教育体制整備状況調査結果について
大塚類 2012 「気になる子ども」に対する保育者の専門性一幼小連携における課題に着目して一 千葉大学教育学 部紀要, 60,117‑181.
高平小百合・若槻芳浩・佐久間裕之・宮崎豊・工藤亘 2015私立幼稚園における職務上の困難一新任時と現在の 分析一 論叢 2015(玉川大学教育学部紀要), 97‑113.
付記
本研究は、平成 27年度富山大学人間発達科学部特別研究論文として第 2著者(北野)が提出した論文を元に、
第1著者(小林)の責任でデータの再分析を行い、新たに執筆したものである。
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