『文化財保護提要』の活用
著者 角田 芳昭
雑誌名 阡陵 : 関西大学博物館彙報
巻 30
ページ 5‑16
発行年 1995‑03‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00024185
「 文化財保護提要」の活用
文化財保護の諸制度を正しく理解するための 関係法令・通達等をはじめ、その実情を知るた めの各種参考資料を収録したものが「文化財保 護提要』であり昭和45年1月発行された。文化 庁監修であり、加除式書籍のA5判である。
この内容とするところは文化財保護行政の実 勢上必要な法令・通達・判例、その他の関係資 粍を収録しているもので、改正及び法令、通知 があり次第、「第一法規出版株式会社」より印刷 され送付されてくる。近年本学でも博物館が設 立され、一般公開を行なっているので見学者よ り諸々の文化財関係の法令や国宝、重要文化財 等についての質問を受けることがある。そこで 担当者としても質閉に回答できるよう知識を収 得しておかなければならない為研修・研鑽のつ もりで『文化財保護提要」を概観した。この中 のいくつかを紹介したい。
「文化財保護提要」は文化財保護行政の実勢 上必要な法令、通達、判例、その他関係資料を 全2巻に集録したもので、つねに新しい内容が 必要なため加除式である。
目次は次のとおりとなっている。
・文化財保護法
・文化財保護法施行令
・文化財保護審議会令
•国宝及び重要文化財指定基準
• 国宝又は重要文化財指定書規則
• 国宝、重要文化財又は重要有形民俗文化財の 管理に関する届出書等に関する規則
•国宝又は重要文化財の現状変更等の許可申請 等に関する規則
•国宝又は重要文化財の修理の届出に関する規 則
•国宝、重要文化財等の管理、修理等に関する 技術的指導に閲する規則
• 国宝、重要文化財又は璽要有形民俗文化財の 出品又は公開の申出及び費用負担に関する規 則
角 田 芳 昭
•国宝、重要文化財又は重要有形民俗文化財売 渡申出書に関する規則
•重要無形文化財の指定並びに保持者及び保持 団体の認定の基準
・ビ本芸術文化振興会法及び施行令
•重要有形民俗文化財指定基準
・埋蔵文化財の発堀又は遺跡の発見の届出等に 関する規則
•特別史跡名勝天然記念物及び史跡名勝天然記 念物指定基準
・重要伝統的建造物群保存地区選定基準
・選定保存技術の選定並びに保存者及び保存団 体の認定の基準
・銃砲刀剣類所持等取締法
・文化庁文化財補助金交付規則
・市町村における文化財保護事務の範囲につい て
・文化財の保護のための条例の制定等の場合の 報告に関する規則
• 関係法令
・文化財関係の判例
・資料編
以上が主な項目であり、これらの法規につい て特に関係の深い法令について披露してみたい。
・文化財保護法
この法律の目的は日本の文化財を保存し、且 つその活用をはかり、もって国民の文化的向上 に資するとともに、世界文化の進歩に貢献する ことを目的としたものであり、第2条に文化財 の定義がある。これは文化財の根幹をなすもの であるので記しておく。
1. 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、
古文書その他の有形の文化的所産で我が国に とって歴史上又は芸術上に価値の高いもの
(これらのものと一体をなしてその価値を形 成している土地その他の物件を含む)並びに 考古資料及びその他の学術上価値の高い歴史 資料 (以下
I
有形文化財」という。)‑ 5 ‑
2. 演劇、音楽、上芸技術その他の無形の文化 財所産で我が国にとって歴史上又は芸術上価 値の高いもの(以下
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無形文化財」という。)3. 衣食住、生産、信仰、年中行事等に関する 風俗慣習、民俗芸能及びこれらに用いられる 衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の 生活の推移の理解のため欠くことのできない
もの(以下「民俗文イはオ」という。)
4. 貝づか、古墳、都城跡、旧宅その他の遺跡 で我が国にとって歴史上又は学術上価値の高 いもの、庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その 他の名勝地で我が国にとって芸術上又は観賞 上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁植 地及び渡来地を含む。)植物(自生地を含む。)
及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じてい る土地を含む。)で我が国にとって学術上価値 の高いもの(以下「記念物」という。)
5. 周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形 成している伝統的な建造物群で価値の高いも の(以下「伝統的建造物群」という。)
以上が文化財の定義であり第27条に、文部大 臣はこのうちから特に重要なものを重要文化財 に指定することができると規定している。また 第2項に文部大臣は重要文化財のうち世界文化 の見地から価値の高いもので、たぐいない国民 の宝たるものを国宝に指定することができると 規定している。この指定があると官報に告示さ れるとともに所有者に通知される。そして指定 されると管理義務が生じ、貸出及び所有者の変 更がみだりにできないことになり、文化庁長官
に届出なければならない。
第44条には重要文化財は輸出してはならない と規定している。第46条には重要文化財を有償 で譲り渡そうとする者は、譲り渡しの相手方、
予定対価の額、その他の省令で定める事項を記 載し、まず文化庁長官に売渡しの申出をしなけ ればならないという規定があり、みだりに売渡 しが出来ないことになっている。
次に「(旧)重要美術品等ノ保存二関スル法律
J
及び施行規則(昭和8年4月1日・文部省令第 10号)が収録されている。この法律において「重 要美術品に認定されている物件については当分 の間、なお効力を有する」と規定されており、
この認定物件を所有している所蔵家においては
「重要美術品」指定と表示することができる。
(例えば固録・カタログ・パンフレッ ト・解説 題箋等)
次に「中央行政組識」があり、文部省の所掌 事務として教育、学術、文化、又は宗教に関す る法人の設立認可に関すること。そして①文化 の振興に関し、企画し、及び援助と助言を与え ること、②劇場、音楽堂、美術館その他の文化 施設に関すること、③灌作権、出版権、④文化 財の指定に関すること
第3章に文化庁の欄を設け、文部省の外局と し、設置、任務及び長、所掌事務、権限、日本 芸術院等が規定されている。これは文部省組織 令の中に文化庁の役割がでている。続いて東京 固立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館 ・ の機構の規程がある。次に東京、京都の国立近 代美術館に関する規程があり、続いて国立西洋 美術館、国立国際美術館の規程がある。次に東 京国立文化財研究所、奈良国立文化財研究所の それぞれの規程があり、最後に飛鳥資料館規程 と埋蔵文化財センター規程がある。
く有形文化財>
国宝及び重要文化財指定基準(昭和50年11月 20日文部省告示第153号改正)として絵画、彫 刻、工芸品、書籍、典籍、古文書、考古資料、
歴史資料、建造物の指定基準の規程がある。例 えば絵画、彫刻の部の「重要文化財」について みると①各時代の遺品のうち製作優秀で我が国 の文化史上貴重なもの、②我が国の絵画、彫刻 史上特に意義のある資料となるもの、③題材、
品質、形状又は技法等の点で顕著な特異性を示
すもの、④特殊な作者、流派又は地方様式等を
●
代表する顕著なもの、⑤渡来品で我が国の文化 にとって特に意義のあるものと規定している。
その後に「国宝」の規程があり、「重要文化財の うち製作が極めて優れ、かつ、文化史的意義の 特に深いもの」と規定している。続いて指定書 規則、文化財台帳規則、管理、修理、等の規則 が収録されている。またこれらの公開について は消防法に定める施設の博物館施設については 公開できるが、「デパート等臨時施設における国 宝・重要文化財の公開について」(昭和49年1月 14日文化庁次長から都道府県教育長あて通知)
通知があり、デパート等公開施設は、本来文化 財の保存活用を巨的とする場所でないため防災 等の施設設備の面から、また学芸員等を置いて
ないため人的な面からも文化財の展示、保管に 万全を期すことが困難な実情であります。・・・・・・
昭和49年2月1日以降文化財の公開を本来の目 的としないデパート等臨時施設における国宝・
重要文化財の公開を許可しないこととしました ので御了知願います。この為デパート等の臨時 施設については公開できないことになっているc
く無形文化財>
重要無形文化財の指定並びに保持者及び保持 団体の誇定の基準(昭和50年11月20日文部省告 示154号改正)として有形文化財規程と同様に、
芸能関係と工芸技術関係に分れいる。続いて認 定書の交付事項が規定されている。
く民俗文化財>
重要有形民俗文化財指定基準(昭和50年11月 20日文部省告示155号改正)は次のとおりの規程 がある。
一次に掲げる有形の民俗文化財のうちその形 様、製作技法、用法等において我が国民の基 盤的な生活文化の特色を示すもので典型的な
もの
(一)衣食住に用いられるもの例えば、衣服、
装身具、飲食用具、光熱用具、家具調度、
住居等
(二)生産、生業に用いられるもの 例えば、
農具、漁猟具、エ匠用具、紡織用具、作業 場 等
(
三) 交通、運輸、通信等に用いられるもの 例えば、運搬具、舟車、飛脚用具、関所等 四交易に用いられるもの例えば、計算具、
計量具、看板、鑑札、店舗等
固 社 会 生 活 に 用 い ら れ る も の 例 え ば 、 贈 答用具、警防用具、刑罰用具、若者宿笠 因信仰に用いられるもの例えば、祭祀具、
じゅ
法会具、奉納物、偶像類、呪術用具、社祠 等
(七)民俗知識に関して用いられるもの 例え ば、暦類、 卜占用具、医療具、教育施設等ぼ(
匹民俗芸能、娯楽、遊戯に用いられるもの 例えば、衣裳、道具、楽器、面、人形、
がん
玩具、舞台等
仇人の一生に関して用いられるもの 例え
うぶ
ば、産育用具、冠婚葬祭用具、産屋等
(+)年中行事に用いられるもの 例えば、 正 月用具、節供用具、盆用具等
二 前項各号に掲げる有形の民俗文化財の収集 でその目的、内容等が次の各号の一に該当し、
特に童要なもの
( 一
) 歴史的変遷を示すもの
( 二
) 時代的特色を示すもの 曰地域的特色を示すもの 四 生活階層の特色を示すもの 固職能の様相を示すもの
三他民族に係る前二項に規定する有形の民俗 文化財又はその収集で、我が国民の生活文化
との関連上特に重要なもの
一部改正〔昭和五
0
年文告ー五五号J
続いて「重要無形民俗文化財」指定基準の規 程がある。
ー風俗慣習のうち次の各号の一に該当し、特 に重要なもの
(一) 由来、内容等において我が国民の基盤的 な生活文化の特色を示すもので典型的なも の
(
二) 年中行事、祭礼、詰会等の中で行なわれ る行事で芸能の基盤を示すもの
二民俗芸能のうち次の各号のーに該当し、 特 に重要なもの
(
一) 芸能の発生又は成立を示すもの
(二)芸能の変遷の過程を示すもの
(三)地域的特色を示すもの
次にこれらの指定書規則があり、記載要領、
寸法、用紙の色、附醤、形状など細かく記され ている。続いて「埋蔵文化財」についての発掘 又は遺跡の発見の届出等に関する規則がある。
事務処理の迅速適正化として、書類作成上の書 式・様式の規定見本がある。
次に「出土文化財取扱要領」があり、国が保 有するものの選択基準があり、①製作技術に優 れ、②類例に乏しく代表的であり、③学術上又 は芸術上極めて価値の高いものは国が保有する
ものとする、という規程がある。続いて第2項 に出土文化財について国が保有するもの以外の もので、その発見者又は発見された土地の所有 者が当該出土文化財に係る報償金の支給又は譲 与を受ける権利を主張していないものは、その 出土地を管轄する地方公共団体に対し、その申 請に基づき、譲与するものとする。それ以外の ものについては、発見者等に譲与するものとす (16ページヘ続く)
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福岡市博物館 福岡市博物館 福岡市博物館
寄 贈 者
大分県国東町教育委員会 大分県国東町教育委員会 大分県国東町教育委員会 別府大学附属博物館 宮崎県総合博物館
香港中文大学中国文化研究所 徐氏藝術館
梨花女子大学校博物館
香港中文大学中國文化研究所・文物館 香港中文大學文物館
(7ページより続く)
る。またこれらの文化財は減失若しくはき損又 は所有者の変更があった場合には教育委員会を
第30号をお届け致します。この編集を引受 けさせていただき、創刊より年2回発行し、
満15年が経過いたしました。創刊時には何号 まで続くかと一末の不安もありましたが、関 係者の皆様のご指導ご協力により欠号もなく 発行でき、総ページ444ページに達しました。
この間原稿をお寄せ下さいました諸先生、上 司、同僚の皆様、また関係者の皆様に厚くお 礼申し上げます。昭和49年「考古学等資料室」
が大学院学舎 4階へ開設、 50年より配属され、
資料室規程の制定、学内公開がなされました。
そして昭和55年梁報
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愛」の発行、同59年「考古学等資斜室紀要」の創刊と充実発展し てきました。また昭和57年 「博物館学課程開 設20周年記念特集」(『肝陵」の別冊)号、同 開設30周年記念特集号(同粁陵の別冊)が発
収蔵品目録8 研究紀要第3号 年報創刊号
タ イ ト ル
浜崎寺山遺跡(報告書第10集) 国東地区遺跡群発掘調査概報III 大隅遺跡(報告書第9集) 駒方津室迫遺跡の構造論的研究 宮崎県総合博物館研究紀要第18輯
2000YEARS OF CHINESE LACQUER 陶姿1 新石器時代至遼代
特別展図録21 朝鮮白磁窯址発掘調査報告展 東京富土美術館臓日本美術名品
梅雲堂蔵展大千画
経て報告しなければならない。
以下の規程についてはスペースの閃係で次号 にゆずる。
行され、博物館学課程の紹介と博物館設立に ついて要望してきました。幸い平成6年4月 博物館相当施設に指定され一般公開されるこ
とになりました。今後は大学附属博物館とし て学生、教職員の学術研究を主体に一般公開 の趣旨にそい公開請演会、特別展など企画実 施していきたいと考えております。管理運営 委員各位の皆様をはじめ関係者の皆様のご指 導ご協力をお願いいたします。
表紙の写真は「須恵器」で5世紀後半のも のと推定されます。高さ21.3cm、口縁部径 15.1cm、胴部径20.1cmで、体部外面には平 行叩きを全面に施し、頸部中央に削り出し凸 帯を付け、その上下に波状文を施している。
優美な形態をなしているが、出土地不詳であ
る。 〔角田芳昭〕
関西大学博物館彙報 No.30 平 成7年3月30日 発 行 関 西 大 学 博 物 館 絹 集 ナニワ印刷掬 印刷