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イネ貯蔵デンプン合成関連酵素の遺伝・育種学的研 究

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

イネ貯蔵デンプン合成関連酵素の遺伝・育種学的研 究

中村, 哲洋

http://hdl.handle.net/2324/2534485

出版情報:Kyushu University, 2019, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(2)

` 氏 名 :中村哲洋

論文題名 :イネ貯蔵デンプン合成関連酵素の遺伝・育種学的研究 区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

イネ胚乳における貯蔵デンプンはアミロースとアミロペクチンから構成されている。アミロース はグルコースが直鎖上に連結した分子構造を示す一方、アミロペクチンはグルコース鎖が枝分かれ した分子構造を有する。貯蔵デンプン代謝機構の解明には、既知のデンプン合成関連酵素の機能解 明、及び同新奇酵素の同定が不可欠である。本研究では、葉における同化デンプン代謝系の解析に よって得られた情報を活用し、①デンプン枝切り酵素、Isoamylase1(ISA1)の貯蔵デンプン代謝系に おける機能解明及び②新奇デンプン代謝関連遺伝子SUGARY2(SUG2)の高密度連鎖地図を構築した。

ISA1活性を欠損するsugary1(sug1)変異体は、胚乳に貯蔵デンプンの代わりに水可溶性グルカン

(WSG)を蓄積し、葉身に野生型と同等量の同化デンプンを蓄積する。ISA1の機能を解明するために、

sug1変異体の同化デンプン代謝系に及ぼす影響を解析した。sug1変異体の葉身ではISA1の活性を消 失するものの、葉身における同化デンプンの量とアミロペクチンの分子構造は共に野生型と同等で あった。これらの結果から、ISAの活性の消失が葉身の同化デンプン合成に及ぼす影響は軽微であ ると考察した。イネ胚乳では3つのデンプン枝作り酵素、Starch Branching Enzyme (BE)I、BEIIa、

BEIIbが発現しているものの、葉身ではBEIIbは発現していない。BEIIbは貯蔵デンプン代謝系におけ

るアミロペクチンの短鎖を特異的に合成する機能を有する。これらの事実から、BEIIbによる短鎖の 合成にはISA1が不可欠である仮説を設定した。この仮説を証明するためには、胚乳においてISA1活 性 とBEIIb活 性 を 欠 損 さ せ る こ と が 必 要 で あ る 。 そ こ で 、sug1変 異 体 とBEIIbに 関 す る 変 異 体

amylose-extender (ae)の二重変異体を作出し、その胚乳における貯蔵デンプンを解析した。ae変異体

の胚乳ではWSG は蓄積せず、デンプン量は野生型より有意に減少している。ISA1とBEIIb両方の活 性を欠損するae/sug1二重変異体胚乳では、WSGの蓄積は認められなかった。さらに、ae変異体と

ae/sug1二重変異体の胚乳貯蔵デンプンでは、デンプン蓄積量、アミロペクチン鎖長分布、デンプン

粒の形態、結晶構造、熱糊化特性についてほぼ同等であった。これらの結果から、ISA1はBEIIbに よって合成される過剰なアミロペクチン短鎖を特異的に除去する機能を有すると考察した。

新奇デンプン代謝関連酵素を同定するために、イネ sug2 変異体を解析した。sug2 変異体は胚乳 の中心部にWSGを蓄積していたが、ISA1の活性は野生型と同等であった。さらに、sug2変異の葉 身では同化デンプンが有意に減少していた。これらの結果から、sug2 変異体は sug1 変異体とは異 なる酵素の欠損によって WSG の蓄積が生じており、新奇の酵素に関する変異であると推定した。

SUG2遺伝子の同定を目的に、同遺伝子の高密度連鎖地図を構築した。その結果、SUG2遺伝子候補 領域を染色体11上の 288.5 kbp内に絞り込んだ。この候補領域内に存在する23個の予測遺伝子の 内、Os11g0586300の遺伝子産物はシロイヌナズナにおけるEarly Starvation 1 (ESV1)と相同性を有す ること、シロイヌナズナのesv1 変異体はイネの sug2変異体と同様に葉身の同化デンプン蓄積量が 減少すること、ESV1 はデンプン粒上に存在し、デンプン分解を制御していることが報告されてい る。sug2変異体における Os11g0586300 のゲノム塩基配列を解読した。その結果、解析した全ての sug2 変異体において、アミノ酸置換を伴う塩基置換を生じていた。これらの結果は Os11g0586300 がsug2変異体の原因となる候補遺伝子であることを示唆している。

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