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「落書き」と建造物・器物損壊罪の成否

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(1)

「落書き」と建造物・器物損壊罪の成否

その他のタイトル Graffiti und Gebaude‑oder Sachbeschadigung

著者 佐伯 和也

雑誌名 關西大學法學論集

巻 59

号 3‑4

ページ 663‑695

発行年 2009‑12‑18

URL http://hdl.handle.net/10112/1523

(2)

‑‑‑‑i 

落 書 き

L

と 建 造 物 . 

ロロ

壊 罪 の

佐 成

不 ロ

(3)

四 次 は じ め に

説の検討ー損壊・毀損概念

落書きと﹁損壊﹂の射程

お わ り に

(4)

︵六 六

三︶

毀棄及び隠匿の罪 ﹂

の第二六

0 条に建造物損壊罪を︑そして第二六

一 条に器物損壊罪を規

了 ︶

定している︒どちらも︑基本的な行為は﹁損壊

であり︑損壊の意義をいかに解するか問題となり︑学説上見解の対

(2 ) 

立がみられる ︒

通説・判例は︑損壊の意義について︑物理的損壊に限らず︑物の効用を害する一切の行為をいうとする﹁効用侵害 説﹂を採用している︒この考えをはじめて明確に判示したのは︑営業上来客の飲食用に使う食器に放尿した行為に関

(4) 

する事例においてであり︑その後︑最高裁も﹁損壊

とは︑﹁物質的に物の全部︑

一 部を害し又は物の本来の効用を

(5) 

失わしむる行為を言う ﹂ としている ︒

このような見解に対して︑損壊の日常用語的意味からの隔たりが大きいとして︑

損壊とは︑物の全部または一部を物質的に破壊・毀損し︑その結果としてその物の本来の用法に従う使用の全部また は一部を不能ならしめた場合に限るべきであるとする﹁物質的毀損説﹂が︑少数ながら有力に主張されている

の こ

一般的に物質的破壊・毀損をともなわないので︑ときに結論の相違をもたらすことに

見解は︑物質的破壊・毀損を損壊罪成立の前提要件・必須要件とするものであり︑二つの見解の相違は︑先に挙げた

(8) 

事案の他︑特に︑養魚池から鯉を流出させた行為︑幅物に﹁不吉﹂と墨で大書した行為︑競売記録等を持ち出し隠匿

(9) 

した行為等において現れる︒また︑主に建造物損壊罪に関係した︑労働組合の争議手段としても行われる﹁ビラ貼

(1 0

)

1 1 ) 

り﹂や﹁落書き﹂についても︑

最近︑最高裁は︑公衆便所への落書き行為が建造物損壊罪の﹁損壊﹂に当たるかどうかに関して︑注目すべき判決 な

﹁ 落

き﹂と建造物・器物損壊罪の成否

刑法典は︑﹁第四

0 章 は

じ め

三五一

(5)

( S u   b s t a n z v e r l e t z u n g )

﹂ または

( b e s c h a d i g e n

) ︑または破壊した

( z e r s t o r e n )

者 は

︱ 一年以下の自由刑または

三五 二

関法

(1 2

を下した︒公園内に設置された公衆便所の白色外壁にラッカースプレー ニ 本を用いて赤色および黒色のペンキを吹き

付けて︑その南東側および北東側の外壁部分のうち︑既に落書きされていた 一 部の箇所を除いてほとんどを埋め尽く

すような形で︑﹁反戦﹂︑﹁戦争反対

﹂ および﹁スペクタクル社会﹂と大書した行為が問題となった事案で︑最高裁は︑

﹁本件落書き行為は︑本件建物の外観ないし美観を著しく汚損し︑原状回復に相当の困難を生じさせたものであって︑

その効用を減損させたものというぺきであるから︑刑法二六 0 条前段にいう﹃損壊﹄に当たると解するのが相当であ

(1 3

)  

り︑これと同旨の原判断は正当である︒﹂と判示した︒つまり本件決定も︑本件落書き行為を﹁効用侵害説 ﹂ の立場

から判断して建造物損壊罪の損壊に当たると判ホしたことになる︒外観ないし美観を著しく汚損する行為は︑そもそ

も損壊行為に当たるのであろうか︒かりに効用侵害説の立場に依拠するとしても︑外観ないし美観を財物ないし建造

物の﹁効用 ﹂ に含めうるのであろうか︑あるいは︑物質的な破壊・毀損そのものを落書き行為等において認めること

はできないのであろうか︒いずれにせよ︑器物および建造物損壊罪にいう﹁損壊﹂の意義が︑出発点として問題とな

(1 4

る ︒

と こ

ろ で

壊 ﹂

・ ﹁

毀 損

ドイツにおいてはどのような状況であろうか︒ドイツ刑法典は︑器物損壊に関して第三 0 三条一項にお

いて︑﹁違法に︑他人の財物を毀損し

( 1 5 )  

罰金に処する︒

﹂ と規定している︒つまり︑器物損壊罪の﹁損壊﹂は︑﹁破壊﹂・﹁毀損 ﹂ を要件としており︑最小の前

提である﹁毀損概念

( B e s c h a d i g u n g b e g r i f f

) ﹂ の実質的な内容規定に関して非常に争われており︑わが国同様︑﹁損

の射程が問題となっている︒ドイツの通説は︑連邦通常裁判所の限定的立場と同様に︑﹁物質的侵害

第五九巻三•四号

︵本来的な︶﹁使用可能性の減損

(B ra uc hb ar ke it sm in de ru ng

)

﹂を﹁毀損﹂と解して ︵

六四

(6)

︵六

六五

おり︑その他のなかで多くの者は︑個々の点について相違は存在するが︑所有者の合理的利益に反する︑財物の軽微

( 1 7 )  

でないすべての状態変更

(N

u s t a n d s v e r a n d e r u n g )

を﹁毀損﹂に含めようと解している︒そして

一 部の者は︑法的明

( 1 8 )  

確性の諸観点から︑当初ライヒ裁判所によって支持された︑物質侵害を﹁毀損﹂と考える物質侵害説を主張している

これらのドイツ学説における議論の焦点は︑わが国における議論と同様︑とりわけ外観の毀損からの財物の保護と の関係にあり︑前世紀の七

0

︑ 八

0 年代においては︑﹁権限のないビラ貼り﹂が中心的な問題であったのに対して︑

今日では︑﹁グラフィティ現象﹂が中心的な関心事となっている︒これらわが国とドイツの議論的類似性に鑑みて︑

ドイツにおける﹁毀損概念

に関する学説等を紹介・検討することは非常に有益であると考え︑

とした﹁毀損﹂・﹁損壊

の意義をまず検討する︒その後に︑今日のわが国︑そして本稿の中心的問題である﹁落書

( 2 0 )  

き﹂をどこまで﹁毀損﹂・﹁損壊﹂として刑法上捕捉することができるのかについて考察したい︒

( l

)

二六

一条には﹁傷害﹂という語も用いられているが︑﹁損壊﹂の概念と同

一であると解されている

したが

って

︑﹁

損壊

﹂ の意義をいかに解するかは︑﹁傷害﹂の意義も考慮して決定される

(2

) その他︑公用文書毀棄罪︵二五八条︶︑私用文書毀棄罪︵二五九条︶︑境界損壊罪︵二六二条の二︶および信書隠匿罪︵ニ 六三条︶が規定されている︒これらの犯罪は︑行為について︑﹁毀棄﹂・﹁損壊﹂・﹁隠匿﹂の諸概念を用いているが︑前二者 は客体の相違に応じた使い分けにすぎないと解されている

︒したがっ

て ︑

一般的に

う言 と︑

﹁損壊﹂の意義をいかに解する かは︑﹁毀棄﹂の意義や﹁損壊﹂・﹁毀棄﹂と﹁隠匿﹂の関係をも視野に入れて考える必要がある

( 3 )

用毀損説︑効用喪失説とも呼ばれる︒この考えを基本的に支持するのは︑例えば︑井田良﹃刑法各論

﹄ ︵

0

0

七︶九

九頁︑内田文昭﹃刑法各論︹第三版︺

︵ 二

0

二︶四

0

0

0

︑大 仁塚

﹃刑 法概 説︵ 各論

︶︹ 第一 版二 増補 版︺

﹄︵ 二

0

0

五︶三

四九頁以下︑大谷実﹃刑法講義各論︹新版第三版︺﹄︵二

0

0

九 ︶

四六頁以下︑岡野光雄﹃刑法要説各論︹第五版︺﹄︵二〇

0

九︶ニ

二頁以下︑川端博﹃刑法各論講義﹄︵二

0

0 0

七︶三八

頁以下︑中森喜彦﹃刑法各論︹第二版︺﹄︵

一九

九六

﹁ 落

書き﹂と建造

物・器物損壊罪の成否

三五三

ドイツの学説を中心

(7)

関法第五九巻―――•四号

三五四

八四頁︑中義勝﹃刑法各論

﹄(‑

九七五︶一八五頁以下︑西田典之﹃刑法各論︹第四版︺﹄︵二

0

七︶二五六頁︑林幹人 0

﹃ 刑

法 各

論 ︹

第 二

版 ︺

﹄ ︵

二 0 0 七

︶ =

七頁︑堀内捷三﹃刑法各論﹄︵

0 0

九六頁︑前田雅英﹃刑法各論講義︹第 1 ︱

‑︶一

四 版

︺ ﹄

︵ 二

0

0 七︶︳︱‑五七頁︹ただし︑建造物損壊罪の損壊について︑三五五頁参照︒︺︑山口厚﹃刑法各論︹補訂版︺

﹄︵ ニ

0

0

五︶三四五頁以下︑山中敬一

﹃刑 法各 論︹ 第二 版︺

﹄︵ 二

0

0

九︶四四七頁等参照︒ただし︑物質的侵害と効用喪失の関

係が定かでないものもあるし︑学説的には︑さらに分類可能である︒ ( 4)

大判明治四二•四・

六刑録

五輯四五二頁。 (5)

最判昭和二五•四・ニ―

刑菓四巻四号六五五頁。

( 6 )

曽根威彦﹃刑法各論︹第四版︺﹄︵二

0

八 ︶ 0

九六頁︑同﹃刑法の重要問題各論︹第二版︺﹄︵二

0 0 六 ︶

頁以

下︑

田中久智「毀棄•隠匿罪」阿部純二ほか編『刑法基本講座①財産犯論

』(- 九九――-)三三

三頁

以下、さらに、城下裕二

﹁毀 損概 念﹂

﹃刑 法の 争点

︹第 三版

︵ 二

0

0

︶二

0

八頁

( 7

)

大判明治四四・ニニ

・ 七

刑 録

七輯

九七頁

(8) 大判大正

一0•

三・七刑録二七輯

五八頁。

( 9 )

大判昭和九・︱ニ・ニニ刑集一三巻一

七 八

九 頁

( 1 0 )

最高裁が︑労働組合の争識行為として行われたビラ貼り行為について建造物損壊罪の成立を認めたリーディングケースは︑

最高裁昭和四一年六月一

0

日第三小法廷決定︵刑集二

0

巻五号三七四頁︑判例時報四五四号六四頁︑判例タイムズ一九一

四九頁︶である︒

( 1 1 )

本文等で用いている﹁落書き﹂には︑基本的に︑﹁グラフィティ

( G r a f f i t i )

11

落書き﹂も含めている︒スプレー缶やマー

カー等を使い︑たいていは違法に︑そして匿名で︑壁や車両等に描かれた文字や絵等が﹁グラフィティ﹂に属する︒グラ

フィティのなかで︑単色から三色ぐらいで︑独自のペンネームやサイン等を描いたものを︑タグ

(D as

, ,

Ta

")といい︑少g

ない色のスプレーを使い︑ペンネーム等を平面的に拡大し︑その輪郭は外側の輪郭線によって色縁取られ︑内側の部分はた

いてい別色で塗りつぶされているものを︑スロー・アップ

(

Da sT hr ow

  , U

p)

という︒さらに︑多彩な色を用い︑時間をか

けて︑絵や文字を描く︑ピース

(D as p i e c e )

と呼ばれるもの等がある︵詳しくは︑

Hu ma n B e h f o r o u z i

, D

ie   de u t s c h e   G r a f f i t i   , Sz en e  │  Ei ne   e x p l o r a t i v e S   t u d i e   z u

r   P ha no me no lo gi e  u nd   zu e   d n  A kt iv en   im   Fe ld

, u

n t e r   B e r t i c k s i c h t i g u n g   s t r a

f   , 

︵六

六六

(8)

sg es et z ,  Ju ra

f2006S430   . . 

%

¥

( 1 7 )

いわゆる﹁状態変更説

(N us ta nd   ve ra nd er un gs th eo i r e)

﹂である

( 1 8 )  

Wa lt er   Ka rg

l , 

Ge si nn un g  un d Er fo lg e  b mi   Un te rs ch la gu ng st at be st an

d , 

ZS tW  

1 0 3  

(

19

91

S157 )

f f . ;  

de rs

, S

ac hb es ch ad i  ,  gu ng u   nd  S t r a f g e s e t z l i

c h k e i t , J N 

19

97S289 

f f .   ( 1 9 )  

g l .  

Be hf or ou

zi , 

Di  e de ut sc he   Gr a i t f f

i   , S

ze

e2006n .

Ol iv er   Sc hn ur

r , 

G r a f t i f i   a l s   S

ac hb es ch ad ig un

2006g .

In gm ar W  ol

f , 

G r a f f i t i   a l s   k

ri mi no lo gi sc he s  un d  s tr af re ch ts do gm at is h c es P  ro bl

2004em .

Ra lp h  I n g e l f i n g e r ,  G r a f f i t i   u nd  S ac hb es ch ad i  , 

( 1 6 )  

( 1 5 )

  ( 1 4 )  

3 ) ( 1  

( 1 2 )  

︵ 六 六 七

r e c h t l i c h e

r , 

kr im in ol og is h c er u  nd  k r i m i n a l p r i i v e n t i v er A  sp ek

2006)te .

最高裁平成

八年

七日第三小法廷決定︵刑集六

0 巻

号二九頁︑判例時報

九二七号

[六二

尺判例タィムズ

‑ 0 七号

四 四

頁 ︶

︒ 本決定の評釈として︑鎮目征樹﹁落書きと建造物損壊罪の成否﹂法学教室三

一 一

号 ︵ 二 0

0 六 ︶

二四頁︑橋田久﹁判 批﹂平成

八年度重要判例解説︵ジュリスト

︱ ︱

︱ 二 ニ 号

︶ ︵ 二 0

0 七 ︶

七二頁︑橋本正博﹁判批﹂刑事法ジャーナル七号

︵ 二 0

0 七︶五二頁︑藤井敏昭﹁判解﹂曹時五九巻五号︵二

0

0 七 ︶

七四七頁︑さらに︑岡本昌子﹁落書きと建造物損壊

罪﹂﹃刑法判例百選

I I 各 論 ︹ 第 六

︺ 版

﹄ ︵ 二 0

0 八︶こハ 0 頁等参照

原審の解説として︑白井智之﹁判解﹂研修六七九巻

︵ 二 0

0 五︶丁七頁以下がある︒

「損壊」について、特に、安里全勝「毀棄•隠匿罪における毀棄•隠匿の概念について

(l)ー(4.完)」山梨学院大学法

学論集

一 号 ( ‑ 九 八 七 ︶ ニ ニ 頁 ︑

四 号

(

九 八

︶ 八

二 0

頁 ︑

五 号

( 0

九八九︶四

頁 ︑

七号︵

九 九 0 )

I

︱ 1 0

以下︑および田中久智﹁ビラ貼りと建造物・器物損壊罪とくに損壊概念の考察との関連においてーーー

( l ) i ( 3

0 七頁以下︑二八号( 九七九︶二 法学二七号

(i

九七八︶ニ

︱‑

﹂熊本 )

三頁

以下︑二九号(

九 八 0 )

頁以下︑同﹁毀棄・

隠匿罪﹂前掲害三三三頁以下参照

この規定の﹁財物﹂には︑建物︑庭等の不動産︑さらに動物も属する

そ︒

して︑現在は︑﹁権限なく︑他人の財物の外観 を︑軽微でなく︑かつ

時的でもなく変更した

(v er an de rn )

者 は

︑ 同 様 に 処 す る ︒

二項︶と規定し︑﹁未遂は処罰する

︵三項︶と定めている︒したがって︑ドイツ刑法典は︑﹁毀損﹂構成要件と﹁変更﹂構成要件を現在有していることになる︒

He lm ut   Sa tz ge

r , 

De r  Ta tb es ta nd   de r  S ac hb es ch ad ig un g 

(§303 

St GB )  n ac h  d er  R ef or m 

< l u r c h   d as   Gr a f f i t i   , B ek am pf un

g  , 

﹁落書き﹂と建造物・器物損壊罪の成否

三 五

(9)

損し

第五九巻三•四号

gu 2003ng

竿

( 2 0 )

ドイツ刑法典は︑長らくの法政策的な議論の末︑刑法第三

0

三条の構成要件に重要な変更がなされた︒新しく︑﹁権限な

く︑他人の財物の外観を︑軽微でなく︑かつ一時的でもなく変更した

( v e r a n d e r n )

者は︑同様に処する︒﹂と規定する第二

項が付け加わり︑二

0

0

五年九月八日から効力を有している︒さらに︑注

( 1 5 )

も参 照せ よ︒

説 の 検 討

' ー ︐ '

̲

損壊・毀損概念

わが国における建造物損壊罪および器物損壊罪の﹁損壊﹂とはどのような内容をもつのであろうか︒ドイツにおけ

る議論が参考となる︒というのは︑ ドイツ刑法典第 三 0 三条第 一 項は︑器物損壊に関し︑﹁違法に︑他人の財物を毀

(b es ch ad ig en

)

︑または破壊した

( z e r s t or en )

者 は

二年以下の自由刑または罰金刑に処する︒﹂と規定し︑行

為としての﹁毀損﹂あるいは﹁破壊 ﹂ という意味内容が︑器物﹁損壊﹂に輪郭を与えていたし︑改正後も与えており︑

結局︑わが国同様︑﹁損壊﹂の概念内容が問題となるからである︒ただし︑毀損・破壊は単に段階的な・量的な概念

として区別され︑﹁毀損する﹂とは︑﹁破壊する﹂ということよりも弱い行為形式であるといえるので︑﹁毀損する﹂

( 2 1 )  

の意味がとくに重要となる︒

念が﹃財物関係的﹄

関 法

であり︑保護法益は﹃人的関係的﹄ ここで問題とする﹁毀損﹂に関してドイツにおいて多くの見解が存在するが︑それは︑﹁刑法典三 0 三 条の毀損概

(2 2

であるというところにその原因がある ﹂ といわれている︒ど

の立場に従うかは︑これら二つの観点のどちらにどの程度比重を置くのか︑さらに︑刑法上の重要な原則等︵例えば︑

法益保護︑明確性の原則︑法的安定性︶ との関わりで︑どのように内容を定めるのかに依存しているといえる︒以下

三五六

︵六

六八

(10)

では︑ドイツの重要な諸見解について︑とくに紹介・検討したい

状態変更説

(N u s t a n d s v e r a n d e r u n g s t h e o r i e )  

落 書 き ︵

グラフィティ

︵ 六

六 九

( 2 3 )  

毀損概念に関して︑ドイツにおいて﹁状態変更説﹂という見解が︑有力に主張されている

この見解はかなり包括 的な適用領域を認める考え方であり︑所有者の利益に反するすぺての状態変更を︑器物損壊罪の意味での﹁毀損

﹂ と

( 2 5 )  

して認める ︒

この見解を基礎とするならば︑物質侵害

の他の諸見解が考慮する諸要件の

無を判断することなく

の諸事例は︑器物損壊として捕捉することができる

さ ら

︑ に

落書

き以外の︑多数のその他 の諸状況も︑例えば︑﹁持続性﹂や﹁修復の必要性

が問題とされていないので︑

1

たとえ︑この見解によっても︑

( 2 6

ある程度の変更の重大性が要求されたとしても—ー'、毀損概念に包括されることになるであろう

例えば、読者が長

一 八

0 度開けて置いていた本を閉じることや︑所有者が好んで絵のよ

( 2 7 )  

うに乱雑に 置

いている薪を精確に山積みにすることにも︑毀損が認められるであろう

所有者の意思に反する欠陥品

(2 8

の修埋もまた︑それ故︑﹁毀損﹂であり︑処

されなければならないであろう

この学説を主張する者の目的は︑何よりも︑民法等によって包括的に保護された所有者の立場を刑法においても完 全に保護することにある

まさに外観を損ねることは︑所有に関わる重大な侵害として理解されるのであって︑その ことは包括的な刑法上の所有権保護の意味においてー│ー刑法上の効果を伴わなければならないのである

しかしこのように﹁毀損

﹂ を︑そして﹁損壊 ﹂

を広く理解する見解は説得的ではない

まず︑この理解は法的文

( 2 9 )  

から離れすぎであり︑類推解釈の禁止に関係する疑念が提起されうる

さらに︑状態変更説によって目指されている

﹁ 落

き ﹂

と建造物・器物損壊罪の成否

い時間かかってようやく該当箇所を見つけて︑

(

1 )  

三五

(11)

第五九巻――•四号

︳ ︱ ‑ 五 八

六七

0 )

(3 0

所有権に関する民法的保護と刑法的保護を共に与えようとする思考も︑説得的な論証ではない︒むしろ︑刑法の最終

手段性に反する ︒ そのような場合︑民法上の請求権や特別法によって︑しばしば適切に解決されるであろう ︒ そうだ

とすれば︑状態変更のすべての場合において︑そして民法と同時的に刑法を投入する必要性はそれほど高くないとい

( 3 1 )

3 2 )

 

えよう︒最後に︑﹁所有︵権︶﹂それ自体ではなく︑﹁所有者の意思﹂を保護法益化し︑﹁器物損壊構成要件を所有者の

( 3 3 )  

一 般的な処分の自由に対する犯罪へと規範変更﹂をしてしまうことになり︑最終的に︑器物損壊罪の輪郭を不明確に

( 3 4 )  

するのではないかという懸念がある︒

以上によって︑特に器物損壊の﹁毀損﹂・﹁損壊 ﹂ を︑所有者に意思に反するすべての状態変更の場合に肯定すると

いう見解は︑単なる外観の変更に﹁損壊﹂と同視できるマイナスという意味での不法が認められるときがあるとして

も︑﹁毀損﹂や﹁損壊﹂という概念の内容と考えることはできない︒器物損壊に関する学説は︑﹁物質侵害説から︑効

( 3 5 )  

用喪失説

(F un kt io ns ve re it el un gs th eo ri e)

を克服して︑状態変更説へ! ﹂ と取って代わっていくぺきということはで

物質侵害説

( S u b s t a n z v e r l e t z u n g s t h e o r i e )

法規の文言に密接に向ける解釈は︑財物それ自体において﹁毀損 ﹂ を求めることになる ︒ その際︑注目は︑当然に

まず︑物体に向けられ︑その結果︑必然的に﹁物質侵害﹂が決定的な基準となる︒有体物としての財物は︑

その有形性が侵害を被ったとき︑その本質において毀損されている︒それ故︑ドイツにおけるライヒ裁判所が最初完

( 3 6 )

3 7 )

 

全に物質的侵害というメルクマールに目を向けたことも︑不思議なことではない︒

( 2 )   きない

関法

い わ

ば ︑

(12)

k e i t )  

︵ 六

七 一 ︶

(3 8

ドイツのライヒ裁判所は︑﹁毀損 ﹂

の概念を最初非常に狭く解釈し︑物質侵害的な作用を要求していた︒文献にお ける最も限定的な見解は︑このライヒ裁判所の初期の立場に立ち戻ることを説いている︒とくに

a K r g

ーは︑効用侵

(3 9

害に基づく毀損概念の拡大に反対し︑﹁財への回帰

( R i . c i k w e n d u n g

z u r  

S a c h e )

﹂ に賛成し︑使用可能性

( B a r u c h b a r

や状態というカテゴリーは明確性の原則の要求との関係では︑主観的にも︑客観的にも十分に輪郭を与えうる

(4 0

ものとみることはできないと主張する ︒

この批判は十分に傾聴に値するが︑彼によれば︑器物損壊にとっては︑つね

に物質侵害の要件が問題とされるべきことになる ︒

そして︑物質概念を厳格に理解して︑物質侵害が存在するときだ けに決定的な重要性を与え︑緩やかに理解された物質の侵害という迂回を通じて︑複合物の有用性の減少を考慮する

ことは排除される結果となる ︒

この点は︑毀損概念の限定に導くが︑反対に︑処罰範囲を拡大するものとしての物質

(4 1

的毀損を限定する重大性という不明確な調整方法を︑

K a r g

は l

放 棄

す る

︒ しかしながら︑使用可能性の考慮をしないで︑本当に︑重大性という調整方法を放棄してよいのか否か︑

K a r g

l は

長所として強調するのだが︑非常に問題である︒というのは︑このことは︑ほんの些細な物質侵害でさえ捕捉しなけ

(4 2 )

 

ればならないというほとんど説得的ではない結論に至るからである

︒ さらに︑使用可能性基準を完全に否定するとき

に︑財物の物質的な無傷性はそれのみでは保護に値する法的な価値を形成してはいないこと︑価値は︑所有者による 目的設定と結合して初めて十分に記述されうることを見誤っており︑また︑財物の使用可能性に映し出されている財

( 4 3 )  

物価値の結果的ななおざりによって︑所有権保護の本質的な部分は︑台無しにされるであろう

︒ そして︑組成物に関

する多くの 事

案について︑例えば︑機械に異物が混入されたライヒ裁判所によって決定がなされた事案︑複雑な機械

を解体する 事

案︑また機械等から機能的に重要な部品を取り外す事案について考えるならば︑甘受し得ない処削の間

﹁ 落

書き﹂と建造物・器物損壊罪の成否三五九

(13)

第五九巻――•四号

( 4 4 )  

隙が生じるであろう︒使用可能性の規定に関する信頼のおける︑確かな基準を発見するのはある程度困難であること

(4 5

は認めざるを得ないとしても︑さらに︑その前提たる法益保護が処罰範囲の不明瞭な拡大に導くような危険な要素を

ある意味含んでいることを肯定せざるを得ないとしても︑明確性に基づく法益保護という思考の過度の強調は︑それ

(4 6 )

 

ドイツの﹁物質侵害説﹂の検討との関係で注目されるのが︑わが国の﹁物質的毀損説﹂である︒この見解は︑﹁物

の全部または 一 部を物質的に破壊・毀損﹂することを前提条件とし︑その意味では﹁物質侵害説 ﹂ の考えを前提とし

て︑さらに︑﹁その結果としてその物の本来の用法に従う使用の全部または一部を不能ならしめること﹂を﹁損壊﹂

(4 7 )

 

の要件としている ︒ しかし﹁物質的毀損説﹂は︑私見によれば︑﹁物質侵害説 ﹂ と同様の問題を抱え込むことになる

ゆえに︑支持することはできない︒特に︑処罰の間隙の問題である︒例えば︑﹁汽船の操舵機︑主機関の部品を除去

し︑発航不能にする行為のような︑組成物の﹂﹁解体について﹂︑再組立が﹁きわめて困難 ﹂ な場合であったとしても︑

︑ ︑

︑ ︑

﹁組成物全体が物質的に破壊された

﹂ ︵

引用者傍点︶ということはできないであろう︒さらに︑﹁幅物に﹃不吉﹄と 墨

する行為(大判大正一

0•三

・七刑録二七輯

一五

八 頁)

のような物の汚損も︑

墨書 によって幅物に墨が染み込み︑

( 4 8 )  

原状回復も不可能となるから︑幅物およびその画を物質的に毀損したことになる﹂と主張するが︑物質的な結合等に

より原状回復が不可能だからという理由で︑﹁物質的な毀損﹂を認めることはできないであろう ︒

こ の

よ う

な 場

合 ︑

効用侵害ではなく物質的な毀損が認められるとするならば︑それは︑後に検討する﹁間接的物質侵害﹂という形態の

場合といえよう︒わが国の物質的毀損説は︑結局︑﹁原状回復の困難性・不可能性 ﹂ から物質侵害を肯定し︑現実の

物質侵害が存在しないところに損壊を認めるものであり︑﹁効用侵害説﹂とあまり異ならない︒ 以上に問題を含む考え方である︒

関法三六〇︵六

七 二 ︶

(14)

﹁物質侵害﹂のみに位置づけることも︑﹁状態変更﹂という基準を用いることも十分でないとするならば︑物質侵 害と効用侵害を組み合わせて毀損︵損壊︶

かどうかを決定する見解が残されることになる︒もちろん︑この見解が妥

当かどうかは︑とくに効用

( F

u n

t k

i o

n )

の内容如何にかかわる︒﹁効用﹂の規定について︑諸説が存在する︒

( 4 9 )

5 0 )

 

効 用 概 念 の 包 括 的 理 解 客 観 説 まず︑毀損の内容を規定する可能性として︑すぺての考え得る美的効用やコミュニケーション的効用を考慮する︑

( 5 1 )  

包括的な効用概念の理解がありうる︒色彩及びデザインは︑例えば︑財物の好感の持てる様相︑コントラスト︑よし あし等をもたらすことにも奉仕するゆえに︑すべての物は︑

損ねることは︑そこから結果的に生じる利用可能性の減損を通じて器物損壊として捕捉されるであろう︒これらの諸 観点が芸術品の如く主たる効用として位罷づけられるのか︑あるいは建物の正面

( H

a u

s f

a s

s a

d e

n )

な効用としての位置づけしかもたないかどうかによる︑容易に行うことが出来ない処罰の相違は︑この見解によるな

( 5 2 )  

らば︑無用である︒しかしながらこのような理解によるならば︑処罰範囲が広がるために︑

外観が一般的な見解によって権利者の利益を考慮して保護に値するものとして位置づけられえない︑したがってそれ が付随的効用の性質をも何らもたない諸事例を排除することによって︑限界を引く試みがなされている︒

この見解の長所は︑その財物にとって美的性質がどのような意味を有しているのか否かという認定判定を行う必要 性がなくてすむことである︒経済的技術的目的がはっきりと前面に出ている物であったとしても︑その美観を損 ねた場合には︑毀損・損壊として評価することができる

そしてグラフィティ・落書きの場合も︑疑問の余地なく︑

① 

﹁ 落

書き﹂と建造物・器物損壊罪の成否

③物質侵害と効用侵害をともに考慮する説

三 六

︵ 六

七 三 ︶

一部の者によって︑物の のように付随的 一 定の美的モメントを本来的に備えている ︒ この効用を

(15)

ことになる︒この見解は︑ 状態変更説とは確かに別の理論的関連づけを行っているにもかかわらず︑結論における相

第五九巻――•四号

ただし︑この見解は毀損概念拡大の危険を内在しており︑処罰限定的な効果をさらに付与することを困難にするで

(5 5

あろう︒例えば︑迷彩塗料の戦車は︑重大性の観点を度外視するとすれば︑水性のカラーペイントによって毀損され

(5 6

うるであろう︒さらに︑この見解によ っ て︑例えば︑乗客の心地よさを演出する︑近距離車両の統一的なインテリア︑

コーポレートデザインの外観的意義やマーケティング目的が強調されるならば︑所有者の生の喜びのごとく︑所有に

( 5 7 )  

と っ て重要でない観点の保護へ導くことになろう ︒ 以上によって︑美観を効用に包括的に含めることは確かにある意味首尾 一 貫しているが︑その代償として︑毀損の

射程を非常に広範囲なものとしてしまい︑最終的に毀損概念の輪郭を消し去り︑使用可能性の基準を完全に内容空虚

なものとしてしまう危険があるゆえに︑このような効用の理解を前提とすることはできない ︒

人的毀損概念

( P e r s o n a l i s i e r t e r B es ch ad ig un gs be gr if f)

主観説

毀損概念を具体化する別の可能性は︑所有者によって財物に付与された目的規定によって︑主観的に使用可能性を

規 定 することである ︒ この見解によるならば︑財の所有者が位置づけている具体的な︑財物によってあるいは財物を

一 部の者は︑財産者利益に合理性

(V

er nu nf ti gk ei t)

があるか 通じて意図している効用を軽微でなく損ねることは︑

(5 8

どうかの検討を要求するが︑物の毀損にあたる ︒ 経済的な利用可能性に何の変化をもたらさない害ある行為の捕捉は︑

所有者によって選択された形態や色彩を損ねているときの捕捉と同様に︑そのことが特殊な財物の効用を条件づけて

( 5 9 )  

いるとしても可能である ︒ このような人的毀損概念の効果として︑意思違反が犯罪実現にとっての高い重要性をもつ ② 

( 5 4 )  

毀損として刑法上捕捉できるのである ︒

関法三六

︵ 六

七 四

(16)

③ 

三 六

六七 五︶

この見解に対しても︑出発点において問題がないわけではない

︒ 器物損壊を通じて︑できる限り間隙のないような

(6 1

所有権保護を目的とする厳格な志向の存在が︑まず︑批判されなければならない︒この見解によるならば︑本来的な 使用にとって問題はないが︑特殊な使用︑例えばアクロバットの練習道具としての椅子の使用にとって利用すること

( 6 2 )  

ができないほどの変更であっても︑使用可能性を損ねることに導くので︑毀損を肯定することになる

︒ このような過

(6 3

度の主観化は︑効用概念の輪郭を無くしてしまうおそれがある

そのことは別にするとしても︑

一 般化なき個々の効

(6 4

用規定は︑所有者によって処罰が決定されるゆえ︑明確性の原則と

一 致にもたらされるかどうかも疑わしい︒さらに︑

意思違反性の強調は︑他人性メルクマールの意義をある

意 味では消失させてしまうことになる ︒ というのは︑財物と

の関係で目的規定を確定する所有者は︑決して財物を毀損することができず︑その者はつねに自らの意思と一致して

(6 5

行 為 しているからである ︒

最後に︑器物損壊罪が親告罪として性格づけられているということに関係して︑

主 観的利

益を含めることを擁護する説明が可能であるとしても︑場合によっては︑親告罪でなくなる場合

︵ ドイツ刑法の 三 〇

三 条 C

の但書︶︑あるいは︑わが国の建造物損壊罪

︵ 非親告罪 ︶

ないといえよう ︒ 以上によって︑主観的使用可能性の規 定 は︑説得的な解決ではないことが明らかにな っ た ︒

(6 6

客 観 的 効 用 の 毀 損 限 定 客 観 説

最後に︑効用規 定 を客観化する見解の検討が必要である ︒ 物質侵 害 とともに︑客観的な効用侵害として毀損を規定

(6 7

)

6 8 )  

するのは︑ドイツの判例の立場及びそれに賛同する 学 説である ︒

例 え

ば ︑

Be hm

は︑ある程度の重大性が認められる

限りで︑物体

(

Sa ch su bs at nz

)

の侵害か︑あるいは技術上の使用目的︑財物によって伝逹された内容的表示もしくは

﹁落書

き ﹂

と建造

物 ・

器物損壊罪の成否 (6 0 ) 

違はほとんど存在しないことになる ︒

の存在を考慮すると︑もはや説得的な根拠とはなら

(17)

ら 出

発 す

る ︑

B e h m

の限定的な見解が支持されうる︒ 明白な美的効果の侵害が認められる場合に毀損を肯定できるという︒それに対して︑彼は︑それらに関係しない外観

(6 9

の変更は︑十分とはみなさない︒ところが︑同様に︑客観的アプローチを支持する

N

ac zy

k

は︑財物において客観化

日々の生活のものの見方を考慮して規定しなければならない︑所有者の目的設定に位置づける ︒ そして︑す

(7 0

でに客観的に証明可能な所有者の物の形態に関する利益をも含めて理解する ︒ そうすると︑結論の大部分は ︑ 非常に

広すぎる点で批判された状態変更説と一致することになろう ︒

客観的な見解も問題がないというわけではなく︑客観的な目的設定についても疑念の対象となりうる ︒

例 え

ば ︑

ポーツ器具は︑肉体を鍛錬する道具として使用することもできるし︑また︑部屋の装飾物としても利用することがで

( 7 1 )  

き る

と は

い え

の確定に関して最も異論にさらされていない︑そして

(7 2

の拡張の危険に対抗できる︑最も説得的な考え方であるといえよう ︒ 基本的には︑財物の

この見解は﹁効用﹂

( 2 1

Sa tz ge r は ︑

つの行為は構造的には区別されず︑作用の程度においてのみ異なるとする

(a.a. 

0

. ,  

S. 430.)

同様 に︑ Ja n 

C

Sc hu

hr , 

Ve ra nd er n  d es   Er sc he in un gs bi ld es i   e ne r  S ac he   a l s   S t r a f t

a t A SJ 2009169~

( 2 2

In ge l f i n

0

g eraa. . , 

. ,  

S. 28

( 2 3

Sc hr oe de r によ

って根拠づけられた

説である

(d

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An me rk un g  z u 

O L G  

H am bu rg

75 v

19 75

JR 

19 76 S. 337 

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, A

nm er ku ng

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m U r t e i l   d es  

O L G  

Ka rl sr uh

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28 4

19 77

J

19 78 S. 

7 2  

f f

. ,  

de

rs , 

Zu r  Sa

ch be sc ha di gu ng u  d rc h  P la ka   ,  t i e r e n   u nd   Be sc hm ie re

n JR , 

19 87 S . 359 

f f .

d

er

s , 

Sc hl us sw or

tJR  , 

19 88 S. 363.)

( 2 4

)

上位概念としての﹁状態変更説﹂には︑毀損概念に関する多くの様々な解釈アプローチが︑属することになる︒それらす

べては︑ドイツの判例の立場である効用侵害説

(F

un kt io ns   be ei nt ra ch   t ig un gs th eo ri

e)の適用も人的毀損概念によるそ

の拡 大も所有者の保護にとって十分ではないものとみる

点に共通性をもっている(

Sc hn ur

r

0

aa. . ,

. ,  

S. 43.)

Sc hn ur rは︑状態

さ れ

た ︑

関法

第五九巻三•四号

﹁本来的な利用可能性 ﹂ か

三 六 四

﹁ 毀

損 概

﹁ 損

壊 概

念 ﹂

︵ 六

七 六 ︶

(18)

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蒜器烹惑刈淀

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( die ,,weite"  Zustandveranderungstheorie)'̲)

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( W ertminderungstheorie) 

心::,,r-サー~-~Q

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,,enge"  Zustandveranderungstheorie )'s‑¥.J ̲)

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(die ,,  vermittelnde"  Auffassung) 

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'Maurach/Schroeder/Maiwald, Strafrecht  Besonderer  Tei!,  Teilband  1,  9.  Auflage,  2003,  §36  Rn.  18 . 

涅も旦

'Schroeder, a .  a. 

0., 

JR  1987,  S.  360.  ...J

゜トロ;;‑‑,f‑¥ヽ土旦吋心脚〈

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Q 迂 Karl‑Heinz Gassel,  Wildes  Plakatieren  und  Sachbeschadigung  im  Sinne  des§303  StGB,  JR  1980,  S.  187  f. 

将弓'6

Peter  Ruthe,  Der  Normbereich  der  Sachbeschadigung  (§303),  1980,  S.  121  f. 

ゃふ

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(vernunftig)

如Q旦竪製ヤ設$‑'

1

活拳甘如1"'1'‑(oQ竺

'V gl.  Gosse!,  a.  a. 

0., 

S.  188  f.;  Robert  Haas,  Sachbeschadigung  <lurch  wildes  Plakatieren  ?‑Probleme  des§303  StGB‑OLG  Bremen  und  OLG  Hamburg,  MDR  1976,  773,  JuS  1978,  S.  16  ff.;  Urs  Kindhauser,  Strafrecht‑Besonderer  Teil  II,  4.  Auflage,  2005,  §20  Rn.  16  ff.;  Wolfgang  Mitsch,  Strafrecht  Besonderer  Teil  2,  Teilband  1,  2.  Auflage,  2003,  §5  Rn.  20.;  Haro  Otto,  Straf‑ rechtliche  Aspekte  des  Eigentumsschutzes  (11)‑Diebstahl,  Unterschlagung  und  Sachbeschadigung  in  der  neueren  Lehre  und  Rechtsprechung,  Jura  1989,  S.  208.;  Walter  Stree,  in:  Schonke / Schroder / Cramer,  Kommentar  zum  Strafgesetzbuch,  27.  Auflage,  2006,  Rn.  8a  ff. 

ぼ)

Maurach / Schroeder / Maiwald,  a.  a . 

0., 

§36  Rn.  11. 

(芯)

Maurach/Schroeder/Maiwald,  a.  a. 

0., 

§36  Rn.  17.  U

将勾

J'Schroeder

旦吋0巳協去公共ば零翫芦

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0., 

S.  30.)'

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(a.  a. 

0., 

S.  433.) ゜

啜)

lngelfinger,  a .  a. 

0., 

S.  31.;  Satzger,  a.  a. 

0., 

S.  433. 

ゃふ旦,>J 

Q

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0:.1‑‑1

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'Wolf, a.  a. 

0., 

S .  127. 

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(19)

匡走綜ば兵~111・臣nit'

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ぼ)匡慈Q~弄竺

Satzger, a.  a.  0.,  S.  433. 

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~1-0 ( a.  a .  0 . ,  S.  30.)

(足)#江共

マ竺

'Wolf, a.  a.  0.,  S.  125  f. 

ゃふ以

'Seelmann, a.  a.  0.,  JuS  1985,  S.  200.;  Jens  Wilhelm,  Der  Praktische 

Fall‑Strafrecht :  Das  tiberklebte  Wahlplakat,  JuS  1996,  S.  425  Fn.  11. 

如翁臣賽吋゜器製応ご唸旦芸叫'茎坦竺声恥苺

⇒ 

~ ~1'0Qゃ母心

(忘)

Satzger,  a.  a.  0.,  S.  433. 

啜)

Satzger,  a.  a.  0.,  S.  433.  lngelfinger

茶叡炉知疇餌環凶雌疇翠訳響出誌菜匹叶炉J叫山知匠

( a.

a. 

0.,  S.  30. ) 

(箆)

Wolf,  a.  a .  0.,  S.  126. 

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'Seelmann, a.  a.  0. ,  S.  200. 

旦祖~-SI.

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(苫)

Satzger,  a.  a.  0.,  S.  433.;  lngelfinger,  a .  a .  0.,  S .  30.  祢江否浬幸 0

瞬忌刈〇翌華や迂

Schnurr, a.  a .  0.,  S.  46  ff. 

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ぼ)

Schroeder,  a.  a .  0.,  JR  1976,  S .  339 . 

(案)

V  gl.  RGSt  13,  27. 

( ~ ) lngelfinger ,  a.  a.  0.,  S.  29. 

啜)栄(案)~\淫゜11'"'""~誤弄志竺湮全旦吾心旦雲起寧餅玲終二寄

4

叫如忌湖翠娼訳赳

心゜や菜竺'悉褐芍餡毬〇吾要牛以学

0心踪蓉如~£'姦V慨や縣誕茶速丑心憫憫Q萎器辺終0心叡tlQ澁垣茶臣睾心終0(RGSt

20,  182)

や母心゜

啜)

Kargl,  a.  a.  0.,  ZStW  103  (1991),  S.  136  (157  ff.);  ders,  a.  a.  0.,  JZ  1997,  S.  289  ff. 

( ~ ) Kargl ,  a .  a .  0.,  JZ  1997,  S .  287  ff. 

( ~ ) Kargl ,  a.  a.  0.,  JZ  1997,  S.  289  f. 

(笞)

Wolf,  a.  a.  0.,  S.  123. 

心 ) Wolf ,  a.  a .  0.,  S.  123. 

( ~ ) lngelfinger,  a.  a.  0.,  S.  29.;  Wolf,  a.  a.  0 . ,  S.  123 . 

( ~ ) Peter  Thoss,  §303  als  Reservestrafrecht,  KritV  1994,  S.  398.  Thoss

迂蓉瞑駆檸式苓旦投忌祖后

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(20)

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S.  30.) ゜

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蓬懸」4「苓瞬

(Ansehnlichkeit)

繹芦」如采迂訃ノ:.,,l'0 

(Sachbeschadigung  und  Verunstaltung‑Zur  Notwendigkeit  einer  Abgrenzung  bei  der  Auslegung  des§303  I  StGB,  1984,  S .  60  ff.) 

(日)

Vgl.  Volker  Krey / Uwe  Hellmann,  Strafrecht‑Besonderer  Tei!  Band  2,  Auflage .  14,  2005,  Rn.  246£ .;  Uwe  Scheffler,  Das  Verteilerkasten‑Urteil  (BGH  29,  129)‑eine  falsch  interpretierte  Entscheidung  ?,  NStZ  2001,  291. 

(斜)

Wolf,  a.  a. 

0., 

S.  130. 

ぼ)

Krey/Hellmann,  a.  a. 

0., 

Rn.  247. 

>J 

Q

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Wolf

忘茫梁

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'BGHSt 29,  129  (134)

旦怜七岨贖嘩

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忌一忌苓一西囲

e

痘塩俎IIl遠汁咽

( vgl. a.  a. 

0

.

Fn.  491.) 

0

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晦芸送「寂正」忌泊烹忍訳臥ゃ菜'翠苓

忌江「袋王」忌器烹茶知製や菜心eゃ~t-(d゜

(苫)

Wolf,  a.  a. 

0

.,  S.  131. 

(埒)

Scheffler

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寂王翠赳基囲如1!l器案起旦亮媒ヤ心JAl以終心応刈:,

,r‑ (a.  a. 

0

.,  291£. ) ゜

ぼ)

Wolf,  a.  a. 

0., 

S.  131. 

(お)

Wolf,  a.  a. 

0

.

S .  131. 

やふ江

V gl.  Carsten  Mommsen,  Anmerkung  zu  OLG  Dlisseldorf,  Urteil  v .  10.  3.  1998,  JR  2000,  s.  174. 

(菩)

V  gl.  Maiwald,  a.  a. 

0., 

JZ  1980,  256  ff.; 

将茫正羞

'Mommsen, a.  a. 

0., 

S .  172  ff.; 

匡送江

Ruthe, Der  Normbereich  der 

「院噸11!枷」心哉迎蓉.苺蓉烹要呉Q笞知

11H

くギ

(i

くや

‑R)

(21)

室坦綜ば~~Ill・巨Il~h

1 1  H く< ( ‑1(<0 ) 

Sachbeschadigung  (§303),  1980,  S.  144  ff. 

( 忠 ) Wolf ,  a .  a.  0 . ,  S .  131.  V  gl.  Ruthe,  a.  a.  0.,  S.  145.  bzw.  Maiwald,  a.  a.  0.,  JZ  1980,  S.  258. 

( 55) 

>JQ

知↑旦把燕

1"'t.(cQ竺

'Wolf, a.  a .  0.,  S.  131. 

( ;:3)  Wolf,  a.  a .  0.,  S.  131. 

やふ江

vgl. Schnurr,  a.  a.  0.,  39  f. 

( 器 ) V  gl.  Maiwald,  a .  a .  0 . ,  JZ  1980,  S.  257. 

ぼ ) 器旦 'Schnurr, a.  a.  0.,  S.  33  ff. 

~~ 淫蒼パ゜

( 芯 ) Kargl,  a.  a.  0.,  S.  287  f.;  Wolf,  a.  a.  0.,  S .  132 . 

( 足 ) Wolf,  a.  a.  0.,  132 . 

( 呂 ) 苓溢.淑瞬茄如迅

V

栄梧針

1"'t.(c

訳淀心丑溢...) ¥'‑J,  「底製他瞬冤」

4宦和J

心茶や枷心や玲炉

I"'‑a

玲心二送'益套 Q 怜咲起出

庄ロ器幸刈:,, '疇 遠許逗'「葉裳如瞬器」

4

如 ・・0 :.t‑ ¥'‑J

如吋

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>JQ誤淀旦弓心終ふ-~-苓溢・認瞬廷'零苓忌旦'栄榊砂菜

心旦ヤ 珈終二 ゜

( と)

::L~ ~Q弄零旦0

:,, 

¥'‑)筵

'Wolf, a .  a.  0 . ,  S .  120  f. 

~\産

海 ) 弄志

0

斉命旦幽怜起旦寧怪母

t.(c:,, 

竺芸:,, , ::;1 寄如如袋心ぷ尽ゞ迎 'Behm, a.  a. 

0., 

S.  169  ff.;  ders,  Oberflacheneinwir‑

kung  und  Substanzverletzung  nach§303  StGB,  StV  1982,  S.  596  f.;  Wilfried  Bottke,  Ubersicht  zum  Strafrecht,  Februar  bis 

April  1980,  JA  1980,  S.  510  ff.;  Stefan  Braum,  Das  Graffiti‑Bekampfungsgesetz  und  der  Schutz  des  Eigentums,  KJ  2000 ,  S. 

35  ff.;  Thomas  Fischer,  Strafgesetzbuch  und  Nebengesetze,  56.  Auflage,  2009,  §24  Rn.  8  ff.;  Rengier,  Strafrecht,  Besonder‑

er  Teil  I ‑ Vermogensdelikte,  11.  Auflage,  2009,  §24  Rn.  4  ff.;  Satzger ,  a.  a.  0.,  S.  430  ff.;  Wessels/Hillenkamp,  a.  a.  0.,  §1 

Rn.  29. ;  Hagen  Wolff,  Leipziger  Kommentar  zum  Strafrecht,  12 . ,  neu  bearbeitete  Auflage,  Zehnter  Band  :  §§284  bis  305  a, 

2008,  §303  Rn.  9  ff. 

( 定 ) Behm,  Sachbeschadigung  und  Verunstaltung,  S.  203 . 

ぼ ) Rainer  Zaczyk,  Nomos‑Kommentar  zum  Strafgesetzbuch,  2003,  §303  Rn.  6,  12. 

( ;::::'. )  Gassel,  Besonderer  Teil/2,  §4  Rn.  17 .  l't-'Q~ 刈娼緊旺 'Gassel 竺他溢起以皿呂糾恙殴ル辺咋嘩ゃ迂終 2 心ふ心 ゜

( 食 ) 匡委

0

州崇迂 'Wolf, a.  a . 

0., 

S.  133. 

(22)

( 1 ) 

落書きと﹁損壊﹂

の射程

三六九︵

六八

一︶

望まない落書きは︑建造物あるいは財物という客体の美観・外観を﹁損ねる﹂ことは確かである

し か

︑ し

ド イ

ツ の通説・判例のような毀損概念の基本的定義によるならば︑財物の物質の侵害︑あるいは使用可能性が損ねられた場

(7 3

合のみ︑刑法典 三 0

三条第一項の構成要件は充足されることになる

カラースプレー等による侵害︵落書き︶のよう

(7 4

)  

な場合︑二つの基準の適用はともに困難になる

︒ 落 書

きのような行為を﹁毀損﹂﹁損壊

という概念のもとで︑どこ まで刑法上捕捉できるのか︑また捕捉すぺきであろうか

この点に関して︑従来︑わが国では﹁効用侵害説

を前提にして︑﹁効用

に美観・外観等をも含めるぺきか否か︑

術作品かどうかで区別すべきか否かに関する議論が中心としてなされ︑落

きの問題は︑基本的には︑﹁効用﹂侵 害の問題として捉えてきたといえよう

︒ 本稿が紹介・検討する﹁間接的物質侵害

という基準により︑落書き等を刑

( 7 6 )  

法上建造物・器物損壊で部分的に捕捉できるという議論はなされてこなかったといえよう

まず︑﹁効用﹂に関係し

(7 7

)  

使用可能性の減損

(B ra uc hb ar ke it sm in de ru ng )

まず︑﹁財物の使用可能性が損ねられた﹂かどうかという基準によるならば︑行為客体の技術上の使用可能性を損

ねることに導くような落 書

きは︑問題なく︑器物損壊である

︒ 例えば︑自動 車

のフロントガラスや店のショーウイン ドーにカラースプレーを吹き付ける者は︑その行為によって行為客体が外観においてのみにとどまらず︑その利用可

﹁ 落 書 き

﹂ と 建 造

物・器物損壊罪

成否

た︑﹁使用可能性﹂について検討することにしよう

(23)

たらすことにもなる︒ドイツの連邦通常裁判所は︑このような場合において︑その物の外観を一般的に考慮すること

を否定し︑財物の主目的のみを使用可能性公式の基礎に据えている︒そのことによって︑連邦通常裁判所は︑技術的

(8 2

な使用価値を有する物と美的使用価値を有する物との違いを認めていることになる︒

(8 3

この点について︑わが国の判例は︑美観・外観を比較的広く保護しているが︑わが国の多くの学説はドイツの判例

同様︑例えば︑建造物損壊罪について︑建造物の美観・威容は﹁文化的価値のある建造物以外については ﹂ 建物の効

用であるとすることはできないと主張してい紅︒このような制限的な立場は︑建造物損壊︵あるいは器物損壊︶規定

の直接的な保護対象として︑広い範囲において美的価値を範囲外に閉め出すことになる︒従って︑物の外観の重要性

を正当に評価していないと批判し︑芸術作品のみならず多くの日用品もまたその視覚的な作用を顧慮して形作られて その財物の色彩や形状などの美的価値を重要視していたとしても︑ 一般化は︑ときに被害者の意思に反する結果をも

第五九巻三•四号

三七

(7 8

能性においても損ねられているので︑器物損壊を犯している ︒ 同様のことは︑情報伝達のための物にスプレーを吹き

付けることによって︑その表示内容がカラー塗料によって損ねられたときにも当てはまる︒たとえば︑広告板を識別

不可能にすることや交通標識にカラースプレーを吹き付けることは︑行為客体の物質へのその時々の影響に関係なく︑

(7 9

器物損壊である︒

それに対して︑﹁物の美的価値 ﹂ は︑物の価値であることは疑いえないとしても︑﹁財物の使用可能性が損ねられ

た﹂かどうかという基準によっては︑不完全な保護をうけているにすぎない ︒ その考慮は︑視覚的な効果が財物本来

の目的として認められうることを前提としているからである ︒ しかし使用可能性公式に内在する財物目的の一般化は︑

(8 0

所有者に考え得る豊富な目的設定のなかからの選択の必要性を当然生じさせることになる ︒ その意味では︑所有者が

関法︵六

八 二 ︶

(24)

①  ( 2 )  

三 七

八三

いるということが指摘されてい紅︒そのことを私も否定するつもりはないが︑﹁効用﹂・﹁使用可能性﹂の意味の明確

化 の

観 点

︑ つまり「本来的な使用•利用可能性の支障を来したかどうか」という観点から、直接美観等を保護すべき なのは︑文化財や芸術作品等の場合に限るべきではないかと考えている︒なお︑財物や建造物の美観・外観は︑明ら かな美的目的設定がなくても︑完全に刑法上保護されないというわけではない︒むしろ物質侵害のメルクマールを通 じて︑間接的な保護が与えられる場合も考え得るのであり︑この視点が特に重要である︒

物質侵害

( S u b s t a n v z e r l e t z u n g )

物体の物質性は︑包括的に刑法上保護されうる︒物質の軽微とはいえない︑負の変更は︑行為客体の使用可能性を

(8 6

損ねたかどうか︑支障を来したかどうかに関わりなく︑﹁毀損﹂および﹁損壊﹂の概念内容を満たすことになる

︒ し

かし不法な落書きを物質的な侵害として認めることは︑やはり困難である︒そのことは︑落書きによって︑財物の表

面を直接損ねること

︵直接的物質侵害

u m

m i

t t

l e

b a

r e

S u s b t a n z v e r l e t z u n g )  

損概念﹂に取り入れられた︑落書き等を除去することによって生じる間接的な物質損害︵間接的物質侵害

m i t t e l b a r e

(8 7

S u   b s t a n z v e r l e t z u n g )

に関しても︑妥当する︒以下では︑物質侵害という基準で︑落書き等の行為につき刑法上捕捉

(8 8

できる場合について︑﹁直接的物質侵害﹂と﹁間接的物質侵害﹂に分けて検討しよう︒

直接的物質侵害

﹁落書き﹂と建造物・器物損壊罪の成否

に 関

し て

︑ も

ドイツの判例によって﹁毀

塗料によって惹き起こした物質表面の直接の物質的侵害は︑器物損壊等の要件を満たす

なぜなら︑財物の表面に

(8 9 )

 

なされたラッカー塗装やペンキ塗装も︑財物の物質の一部だからである︒落書きにより︑塗料が︑例えば︑酸のよう

参照

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