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オーストリア私財団法の概要

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オーストリア私財団法の概要

著者 早川 勝

雑誌名 同志社法學

巻 67

号 4

ページ 1379‑1460

発行年 2015‑08‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000015566

(2)

    同志社法学 六七巻四号一三七九

             

                              

(3)

    同志社法学 六七巻四号一三八〇         

はじめに

  オーストリアでは、公益及び慈善目的で設立され国の監督を受ける財団は、二つの根拠法によっている。一つは、一九七四年一一月二七日に制定された連邦財団法及び基金法

)1

であり、他の一つは、各州が制定した州財団法

)2

に基づいて設立された財団である。財団を連邦法に基づいて設立するか、それとも州法に基づいて設立するかは、財団が全国レベルで広く活動するか州の範囲内でのみ活動するかどうかによる。

  さらに、一九九三年に公益目的も私益もさらに両方の目的を追求することを認める私財団法 3

が制定された。この法律の制定は、私益を目的とする財団に対する税制と密接に関連している。私財団は、財産相続を巡る争いや若しくは相続による財産の分散を防ぎ、財産を独立しかつ所有者のいない権利の担い手に移すことを可能にする。一九八〇年代後半には、オーストリアにおける大きな税負担のために、個人又は企業家は、これを逃れるため税の特典がある海外の国で私財団または信託を創設した。このため、かなりの財産が国外に流出することになった。そこで、一九九〇年代の初頭に、税制改正が行われ、所得税の抑制、財産税の廃止、法人税の改正、最終課税(Endsteuerung )の導入措置がとられた。これらの改正によって、税制に対する抵抗が弱まり、投資家に対する経営の場としての魅力を取り戻すことにな

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    同志社法学 六七巻四号一三八一 った。しかし、当初は、不十分な制度であったため、自己の財産を世代を超えて確保したい私企業者は、引き続いて海外で財産を維持することを強いられた。そのため、一九九三年に私財団法が制定された。これにより海外に設置した私財団又は信託に拠出された財産がオーストラリアに還流することになった 4

。さらに、本法の導入によって、家族の財産の分散又は処分を免れ、専ら自己利益を目的する家族財団を創設する可能性が開かれることになったのである。

  財団と基金は、公益および慈善目的を追求する。二〇一二年現在、二二一の連邦財団、六八の基金及び二三八の州財団と一〇〇の州基金が存在する 5

。他方、私財団法によって設立される私財団の目的は、公益や慈善目的の追求に制限されておらず、法律や公序に反しない限りあらゆる目的を追求することが認められる。既述したように、公益の追求だけでなく私益の追求も許されている点に特徴がある 6

。私財団は、株式会社よりもよく利用されており、その経済的重要性が明確である。二〇一二年現在、その数は三二八八で、連邦財団及び州財団よりも遙かに上回っている。私財団法が制定された翌年には一一〇の私財団が設立されたにすぎないことを考慮すると、私財団の設立数が飛躍的に増加している。これは、私財団に関する税制の改正が影響しているといわれている。私財団の設立の理由として、とくに私益の追求と個々人に応じた選択の可能性、および、高度な設立者の自由設計と介入の形成の可能性があげられている。実務における設立のインセンティブとして、最適な財産形成、法律上の相続の排除ないし修正、財産の散逸の回避、事業の維持、学問、研究の促進および慈善目的があげられている。さらに、税制面における特典の享受という魅力もある。公益を追求するためには、連邦財団によって行うことができるので、私財団は圧倒的に私益の追求のために利用されている 7

  以下では、まず簡単に連邦財団の概要に触れ、つぎに財団法の概要と私財団の実態について紹介することにする。

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    同志社法学 六七巻四号一三八二

第一章  連邦財団 一  連邦法による連邦財団は、設立者の指示によって継続的に寄付された、法人格を有する財産である。財産の収益は、公益又は慈善目的の達成のために使用される。一般公衆又は特定の範囲の者が精神、文化、慣行、スポーツ又は経済分野で支援を受ける場合、公益性が認められる。それに対して、援助の必要な者を助成することが企図されている場合に、慈善目的が存在する(連邦法二条二項、三項)。財団の基本財産は、利用されるだけで、目的の追求によって使い尽くすことは許されない。目的の追求のためには、収益だけが自由に使われるだけである。財産が使われる場合、基金(Fonds)が問題になる。財団の目的(Gegenstand)の選択は自由であり、その目的が公益又は慈善である限り、自ら企業を営みまたは企業の持分を取得することができる

)8

二  国の監督は非常に厳格に規制されている。まず、財団の設立については、財団宣言(Stiftungserklärung )の監督庁による認可(Genhmigung)が必要である。しかし、法律上の要件が充足されている場合、監督庁は裁量することなく認可を与えなければならない(準則主義 Normativsystem )。財団宣言は、財産を継続して寄付する設立者の意思表示であって、基本財産及び公益目的又は慈善目的を含まなければならない(連邦法四条)。したがって、財団の設立は、設立者の私法上の意思行為と監督庁の公法上の行政行為を要求する 9

。監督庁は、州首相ないし財団目的に対応する内務大臣である(同法三九条)。財団監督庁は、財団宣言が法の要件(同法四条)を満たしているか、特に表示された財団目的が公益若しくは慈善を目的とするか、又は財団の財産が持続的な目的達成に十分かどうかについて検査する。生前財団は、撤回できない意思表示だけで可能である。財団は、財団の設立が許される決定がなされたときに法人格を取得

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    同志社法学 六七巻四号一三八三 する(同法六条四項)。財団の登記の効力は宣言的効力をもつにすぎない。財団登記簿への登記は、宣言的にすぎない ₁₀

三  財団登記簿は内務大臣によって管理され(同法四〇条)、公開される。財団の組織規約を定める財団の定款と財団宣言とは区別しなければならない。定款は、財産、名称、管理機関の権限並びに年度決算に関する事項を定めなければならない(同法一〇条)。定款は、監督庁が決定によって許可しなければならない。その際、監督庁に裁量権はない。監督庁は、機関の活動を監視するか(閲覧権、コントロール権、指図権及び解任権)又は一定の法律行為ないし財産処分(受益者への援助金の付与若しくは第三者との取引)が定款の変更と同様に認可が必要である限りにおいて、財団の日常の活動に介入する。財団財産の変更は、その価値が減少しない場合にだけ認められる(同法一四条二項)。財産の態様の変更は、監督庁に届け出なければならない。監督庁は、財団の不動産の負担や譲渡についても同意権がある。同意は、財団の目的の達成が将来も確保される場合に限り、与えられる。連邦法は、財団の設立と設立後の日常の活動についても厳格な外部のコントロールの原則に従っている。しかし、開示によるコントロール若しくは機関の自主規制のような法的なメカニズムを定めていない ₁₁

四  財団は、原則として長期間存続することができる。その存続期間前の解散は非常に制限され、財産が存在しない場合、さらに、財団財産が継続的な目的の達成に十分でない場合に解散する(同法二〇条一項一号、二号)。財団が、公益若しくは慈善を目的としない場合、又は目的を達成できない場合、定款を変更しなければならないのに変更できない場合、財団は解散しなければならない(同法二〇条一項三号)。財団が解散する場合、その財産は定款で定めた者に帰属する(同法二〇条二項)。その者が同意しないかまたは譲渡できない場合、財産は同様な目的をもつ財団に譲渡しな

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    同志社法学 六七巻四号一三八四

ければならない。これもできない場合、財産は、できるだけ設立者の意思に相応するように利用する(同法二一条二項、三八条二項) ₁₂

。連邦財団は、私財団に組織変更することができる(私財団法三八条一項) ₁₃

第二章  私財団 第一款  私財団の概念一  私財団は、法人格を有する権利主体(Rechtsträger)である(私財団法一条一項)。私財団の財産は、寄付された財産を使用、管理及び活用して設立者が定めた許された目的の達成に寄与するために、設立者によって寄付される。私財団は法人格を有し、オーストリア国内に住所を持たなければなければならない。私財団は、所有権者のいない財産に対して法人格が与えられ、それによって財産の独立性が得られることに特徴がある ₁₄

。私財団は、所有者と構成員がいない法人である。私財団の基礎は、財団証書に形式的に定められた設立者の意思である。設立者は、財団の設立と同時に財産に対する処分権を失う。ただし、財団宣言の変更又は私財団の撤回を留保する限り、その限りではない。私財団は、設立者及びその権利承継者の法律上の運命から切り離されているのである ₁₅

二  私財団の最低の財産額は、七万ユーロである。資本会社と比較できる資本維持規制が定められていないので、その財産は、目的の追求に使用することができる。唯一の制限は、受益者に対する給付は債権者の請求権を縮減しない場合にのみ許されるとする定めである(同法一七条二項)。この制限は、私財団の債権者保護の為の規制である。設立者は、一定の財産目的物の処分を禁止することができる。例えば、財産譲渡の禁止である。明確な規定がない場合、財団の理

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    同志社法学 六七巻四号一三八五 事会(Stiftungsvorstand)は、財団の目的を可能な限り追求するためにその財産を処分することができる。設立者が寄付した財産の一般的な維持義務はない。

三  私財団の名称は、すべての既に登記された私財団の名称と明確に区別されるものでなければならない。名称は、紛らわしく誤認させるようなものであってはならず、﹁私財団﹂という文字を必ず含まなければならない(同法二条)。

四  私財団は、所有者がいないので、目的によって支配される ₁₆

。目的は、財産と並んで私財団の不可欠の要件である。私財団は、設立者が定めた目的のために創設される(同法二条)。私財団は、法又は公序に反しない限り、許されるあらゆる目的のために設立することができ、目的を制限する明文規定はない。私財団の財産の収益による目的の達成も制限していない。目的の達成のために、寄付された財産の基本部分を使用することも許される(消費財団

Verbrauchsstiftung)。使用財団(Gebrauchsstiftung)の場合は、収益だけが目的の達成のために利用される。目的の制限としては、法律上禁止された目的を除けば、財団成果の給付をもっぱら財団のためにすることが唯一の目的であるいわゆる自己目的財団(Selbstzweckstiftung)は禁止される ₁₇

。私財団には目的の実現の名宛人である受益者が存在しなければなければならない。目的の確定については厳格な基準は設けられておらず、目的はしばしば財団の活動から明確になる。財団財産の維持は、通例、目的の追求のための前提になる。一般公衆の支援に向けた公益私財団は、原則として認められる。私財団が許されない目的を追求し、かつ確定した差止命令に相当な期間内に従わない場合、裁判所は解散を命じなければならない(同法三五条三項)。

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    同志社法学 六七巻四号一三八六

五  私財団の目的と活動の対象(Gegenstand)とは区別しなければならない。目的は、私財団の方向を明確にし、同時に財団目的に内在する目的の追求、つまり財産の利用の態様を明確にする。それに対して、対象は目的の追求に必要な資金を調達し、それを自由に使わせるために、財団の活動(Tätigkeit)を制限する ₁₈

。私財団法は私財団の活動対象を制限し、一定の活動の対象について明文をもって禁止する。すなわち、私財団は、単なる副業を越える営利活動を行うことは許されず、商事会社の業務執行を引き受けることができず、又は合名会社及び合資会社の無限責任社員であることが許されない(同法一条二項)。自ら所有者として企業を営むか又は資本会社のように他の会社形式で営む企業に対して直接若しくは間接的に影響力を及ぼすことができる私財団は企業財団(Unternehmensträgerstiftung)と呼ばれる。私財団が合資会社の有限責任社員になることは可能である。私財団の民法上の組合への参加は、当該組合が営業活動をしていない場合に限り、許される。さらに、私財団は、株式会社、有限会社又は協同組合に参加することができる。財団宣言における目的は、実務では非常に一般的に判断され、財団目的及び受益者に関する詳細な記載は財団証書または財団補足証書若しくは企画宣言においてなされる ₁₉

六  企業に対する持分の拠出は許される ₂₀

。したがって、コンツェルン指揮も許され、私財団の重要な利用分野は、積極的なコンツェルン・スピッツの機能又は持株会社機能である。私財団によるコンツェルン指揮は許されるが、しかし営利活動(Handelsgewerbe )が禁止されるために厳格なコンツェルン指揮は許されない。コンツェルン業務執行の最も重要な分野を包括的に有することはできず、限定された指揮の行使に制限される ₂₁

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    同志社法学 六七巻四号一三八七 第二款  設立者の権利と義務   所有権者がいない形成体としての私財団には、法的意味における構成員ないし所有権者がいない。したがって、所有権者がいないことから生ずる構造的な欠陥が私財団には内在している。設立者も受益者も私財団の機関ではない。私財団の指揮と目的の達成は、理事会の権限に割り当てられる。設立者が理事会の構成員でない場合、理事会は他人の財産の管理者として行動する。それに対応して、理事会の行為が機会主義的になる危険がある。そこで私財団法は、強行的な法的メカニズムを定めて私財団の外枠を規制している。たとえば、最低三人の理事による相互監視、商号登記裁判所のコントロール及び特別検査の開始、受益者の説明請求権と帳簿閲覧権、私財団の必置機関としての財団検査人、一定の条件の下での監事会の設置である。しかしながら、これらの内部的な組織形成に関する規制は全体的には不完全であって欠陥がある。商号登記裁判所と財団検査人のコントロールは、持続的なものではないからである。私財団管理の効率的で支障をきたさない機能を確保するためには、設立者の財団宣言による合目的な私的自治に基づく形成が必要である ₂₂

1  設立者一  私財団の設立者(Stifter )は、財団の設立を欲する一人若しくは複数の自然人又は法人である。遺言によって設立される死因私財団(moritis causa)の場合には、設立者は一人の設立者だけである(同法三条)。これに対して、生前私財団(inter vivos)は、複数の自然人又は法人によって設立されることができる。複数の設立者は権利共同体を形成する。したがって、共同してのみ権利を行使する(同法三条二項)。実務においては、複数の設立者の権利行使は階層化されており、メインの設立者のみが権利を行使する。その他の設立者は、メインの設立者の死亡後に他の設立者に権

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    同志社法学 六七巻四号一〇一三八八

利行使の権限が移転してから共同して権利を行使する。設立者は、財団宣言において多数決議による共同行使を定めることができる。設立者を決定過程において平等に取り扱う必要がなく、ある設立者は他の設立者よりも多くの議決権を付与されることができる。特別な設立者の権利の行使には各設立者の同意が必要である ₂₃

。共同しないことについて合致している場合に、共同せずに権利を行使することができる。複数の設立者が、複数の財団宣言を別々にするか又はこれらの宣言を相互に関連づけるかどうかは設立者の自由である。

  設立者は一方では法人を設立し、他方ではこの法人に財産を寄付するので、私財団の設立は無制限の行為能力を前提にする。設立者が未成年者である場合には、後見裁判所の許可が必要である。

  設立者が資本会社の場合、会社の財産が財産の寄付によって縮減しないように配慮しなければならない。そうでなければ、隠れた利益配当又は出資の払戻の問題が生じる。通常の資本減少に関する規定を遵守する場合、社員への直接の配当が許される。

二  設立者については、まず、設立者の員数、複数の設立者がいる私財団における財産の寄付、自然人又は法人の設立者、設立者の国籍、成人又は未成年者の設立者等の状況が調査されている。設立者の数は、私財団の三六%が一人、二九%が二人、一四%が五人、一一%が三人、二%が六人、三%が七人以上であり、最大は四〇人である。つぎに、ほとんどの私財団では設立者が自然人で八七%、法人の場合は九%である。法人の内訳は、四八%が資本会社で、有限会社が圧倒的である。人的会社は一一%で、その他として社団、協同組合、保険会社、自治体が設立者である。ウィーンにおける私財団の場合には、七四%が自然人の設立者、一八%が自然人と法人、八%が法人が設立者である。私財団を設立するのは、通例は成年であるが、七・五%は未成年が設立者である。未成年の設立者の場合、通例は二人または三人

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    同志社法学 六七巻四号一一一三八九 である。一四の私財団では、六人が未成年者の設立者である。

  設立者の国籍については、九三%がオーストリア人、外国人は八%である。外国人の内訳は、二一%がドイツ人、一一%がロシア人とブラジル人、一〇%がモナコ人、八%がポルトガル人とイギイリス人、六%がチェコ人とルーマニア人、四%がスイス人である ₂₄

2  設立者の権利 一  設立者は、私財団法上僅かな権利しか有しない。設立者は最初の理事会を選任し(同法一五条四項)、同時に受益者である場合にだけ、私財団に関する情報を請求することができる(同法三五条三項)。

  一定の専属的で譲渡することができない形成権は、設立者にだけ帰属する。たとえば、財団宣言の撤回権又は変更権である。有効であるためには公証人の認証の形式で行われなければならない。

  変更権は設立者にどのような方法でもまた何時でも財団宣言を変更することを許す。変更は、受益者の変更と同様に、私財団の目的の変更も含む。設立者が自己を受益者として選任することもできる。変更権は、共同設立者の権利によって制限されることができる。変更権は、私財団を創設するときに財団宣言において留保した場合にだけ行使することができる。変更権を事後的に創設することは不可能である。これに対して、撤回権は、自己の絶対的な裁量により私財団を解散することを設立者に許す。変更権と同様に、撤回権は、私財団の設立の時に留保されなければならない。私財団の変更権と撤回権は財産権であり、従って債権者が強制執行によって実現できると解されている。

  私財団の変更権と廃止権は、﹁純粋な設立者の﹂権利と呼ばれる。それは、生前私財団でも死因私財団でも、これらの権利を第三者に割り当てることができないことを意味する。変更権は、すべての設立者によって留保することができ

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    同志社法学 六七巻四号一二一三九〇

る。それに対して、撤回権は、法人でない設立者によってだけ留保されことができる(同法三四条)。

  財団の定款において、設立者は財団の経営を監視する権利とその他の権利を留保することができる。たとえば、理事会の任命権及び特別の場合に解任する権利、さらに、私財団の経営を効率的に監視することを確保する情報権と検査権である ₂₅

二  設立者の権利については、変更権、撤回権、指図権と同意権等について調査されている。設立者が行使する権利として九四%の私財団が変更権を定め、六二%が撤回権を留保している。撤回権を留保していない三八%の財団においては、五八%が留保を定めていないか又は排除する明文規定を定めている。二〇%は設立者が法人であるため、留保できない(同法三四条)。調査した財団宣言の一九%において、撤回権が事後に放棄されている。三%は死因私財団並びに撤回の表示が無効である財団である。私財団の二%は、設立者が理事会に対する指図権が認められ、四%が取引に対する同意権が与えられている。設立者は、諮問会の構成員であることを介して間接的に同意権を行使する。

  一二%の私財団において設立者が理事会の構成員である。多くの場合に設立者が顧問会の構成員であることは明かであるが、財団証書の七三%はそのことについて記載していない。全設立者の三九%は受益者でもあり、財団証書に記載がある。四%の私財団では、設立者が受益者になれないことを明文をもって定める。六六%の私財団は財団証書になにも記載していない。受益者は財団補足証書においても記載でき、決議とそれを記録する書類において決定できるからであると考えられる。二一%の私財団では、設立者自身が受益者を選任することができる。圧倒的に多数の私財団では財団補足証書において受益者が選任されるか又は一定の者に委託されている ₂₆

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    同志社法学 六七巻四号一三一三九一 3  設立者の義務   最低資産の寄付は、純粋の設立者の義務ではない。法定の最低資産額七万ユーロは、第三者も寄付することができる。設立者としての地位は、登記の時に私財団が使用できる最低資産を準備することに対する共同保証を意味する。一人以上の設立者がいる場合、すべての設立者が資産の準備に対して共同で責任を負う。つぎに、設立者は、最低要件を有する財団の定款の作成義務を負う(同法九条一項)。さらに、設立者は最初の理事会を選任しなければならない(同法一五条四項)。設立者が選任できない場合、私財団の管理人が理事会を選任する。そのほか、設立者は、他の設立者に対して信認義務を負う ₂₇

4  事後寄付者(Nachstifter)   設立者が私財団の設立後に財産を私財団に寄付する場合は、事後財団(Nachstiftung-sukzessive Dotierung )と呼ばれる。追加財団(Zustiftung)と同様に、私財団による承認が必要な双方の法律行為が問題となる。既存の私財団に資産を寄付する自然人または法人は、設立者になることができない(同法三条四項)。

5  追加寄付者(Zustifter )   第三者による私財団への事後的な寄付金が追加財団である。追加寄付者は、設立者の地位を取得しない(同法三条四項 ₂₈

)。追加寄付は、贈与の規定が適用される双方的法律行為である。そのことは、追加寄付が常に私財団によって承認されなければならないということを意味する。理事会は、承認義務を負っているのではなく、私財団の目的又はその他の負担と一致しない場合、寄付金を拒否しなければならない。

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    同志社法学 六七巻四号一四一三九二

第三款  財団財産   七万ユーロの最低財産額(同法四条)は、財団宣言において常に寄付されなければならない。財産は現金又は有価物の形式で寄付することができる。最低財産が現金で拠出されない場合、設立検査を行わなければならない。最低財産は、寄付されるだけでなく、理事会が商号登記簿に登記する前に私財団の口座に振り込まれ、理事会が使用できなければならない。

  寄付されるべき財産の種類に関する規定は定められていない。動産、不動産、有形物または物の集合物であることができる。私財団について資本拠出若しくは維持に関する法律上の規制がなく、また配当禁止が存在せず、過大評価から債権者を保護する規定が存在しないので、設立者のサービス行為、利益の機会若しくは取引関係も寄付することができる。専属的権利及び譲渡できない権利だけが寄付されることができない。

  企業参加を寄付する場合、この寄付が私財団に許された活動と合致しなければならない。さらに、財産が財団目的を達成できるか検査されなければならない。寄付された財産は、別段の規定がないので、財団宣言又は財団補足証書において記載される必要がない。消費財団の財産は、配当によってゼロに縮減されることができる。さらなる財産が補充され若しくは追加的に寄付されない場合は、私財団は解散しなければならない。

  私財団に不動産を寄付する場合、不動産取引に関して土地法の規定を遵守しなければならない。債務の寄付は、この債務が物の集合の構成要素である場合に限って行うことができる。

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    同志社法学 六七巻四号一五一三九三 第四款  受益者及び最終受益者とその権利1  受益者   受益者とは財団宣言それ自体において利益を割り当てることを指定された者をいう。財団宣言においてそのような者が指定されなかった場合、受益者は、設立者が任命し、さもなければ理事会が決定する(同法五条)。受益者は、私財団の目的の実現の名宛人である ₂₉

。私財団の目的は、受益者に関する規定によって初めて明確になる。

  設立者は、受益者を自由に選出することができる。受益者は、一人若しくは複数の自然人及び法人であることができる。設立者自身も単独で又は他の者と共同して、受益者であることができる。複数の受益者は、財団宣言に別段の規定がない場合、平等に取り扱われなければならない。公衆のような不特定の者も受益者として任命されることができる。設立者が受益者の任命を特定の者に委任することを欲する場合、このことを財団宣言において明確に定めなければならない。受任者は、自然人若しくは法人であることができる。

  執行可能な権限をもつ受益者は、私財団の利益に対し法によって執行できる権利を有する。理事会はこのタイプの受益者に利益を割り当てるかどうかについて裁量権をもたない。それについては財団の定款に定められるが、理事会は利益の範囲の決定に関し裁量することができる。受益者は、不当な裁量権の行使に対して自らを守ることができる。執行可能な権限を有する受益者は、すべての受益権を享受し、異なるタイプの受益者の間で最も強力な地位を有する。実在の受益者は、私財団の特典に対する執行可能な権限をもたない。理事会が、この種のタイプの受益者に特典を配分する裁量権を有する。裁量権は財団の定款の規定によって制限することができる。これに対して、潜在的受益者は、財団の目的の名宛人である。しかし、執行可能な権限をもつ受益者でも実在の受益者でもない。理事会は利益を潜在的受益者に配分することが許されない ₃₀

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    同志社法学 六七巻四号一六一三九四

  受益自体は、現金であれ、現物給付であれ、金銭価値のある給付である。設立者が受益者に提供されるべき受益に関する規定を設けなかった場合、この決定は理事会の義務となる。理事会は、定められた財団目的の範囲で決定しなければならない。受益者に対する給付は、私財団の目的の達成のために寄付されるので贈与ではない。受益者自身も寄付を受諾しなければならない。

  受益者としての地位は、財団宣言若しくは財団補足証書において指定され、またこれに基づいて個別化できる受益者にあっては、私財団の商号登記簿への登記又は受益者の出生とともに取得する。受益者の確定のためにある者による具体的な決定が必要である場合、受益者の地位は、任命された者の決定によって生じる。

  受益者の地位は、受益者の死亡若しくは受益者の地位の放棄と共に終了する。私財団の解散の場合にも、商号登記簿への解散の登記により受益者の地位は終了する。

2  受益者の権利   受益者が有する権利は、受益者のタイプによって異なる。私財団法においては、情報請求権(同法三〇条)が定められ、理事会が、解散事由が存在するにもかかわらず解散決議をしない場合、受益者は私財団に対して説明を求め、かつ、私財団の解散を裁判所に申し立てることができる。解散事由が存在しない場合、解散決議の破棄を裁判所に請求することができる。私財団の解散に関する決議の監視権(同法三五条三項と四項)及び理事会の構成員の解任を裁判所に請求する権利がある。さらに、一般的法原則から派生する権利がある。そのほか、受益者は私財団の目的の達成に関し理事会に対し情報を求める権利がある(同法三〇条一項)。受益者は、年度貸借対照表、年次報告書、計算書類、財団証書及び補足証書を閲覧する権利を有する。この権利は、自己の費用で謄写する権利を含む。情報請求権又は閲覧権が理事

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    同志社法学 六七巻四号一七一三九五 会によって拒否された場合、裁判所がこの権利を執行することができる(同法三〇条二項)。

  判例によれば、潜在的受益者は受益者ではない。従って、潜在的受益者は、法的受益者の権利の名宛人ではない。受益者は情報請求権をもたず、理事会構成員の解任請求権限(同法二七条二項)もなく、決議監視権(同法三五条三項、四項)もない。他方、設立者は、受益者に対して権利を付与することができる。実務においては、重大な事由がある場合、理事会を直接に解任する権利、理事会の任命権、同意権、ある種の取引の拒否権、特別な問題において指示を与える権限が与えられている ₃₁

  ある者が受益者でありかつ財団に対する請求権を取得した場合、受益者はこの請求権を譲渡、処分又は担保に供することができる。受益者の債権者もそのような場合、財団に対する請求権は担保に供することができる。財団宣言における設立者による担保提供の排除は、効力を生じない。

3  最終受益者   最終受益者とは、私財団の清算後に残った財産が帰属することになる自然人及び法人である(同法六条)。最終受益者は、財団証書若しくは財団補足証書において設立者が指定することができる。この場合にも、この指定は設立者が指名した者によって行うことができる。最終受益者は、受益者であることができるが、そうでなければならないのではない ₃₂

。最終受益者は、同時に受益者であることができるかどうか財団宣言において規定される。財団証書又は補足証書は、最終受益者の名前を表示しなければならない。さもなければ、清算後の利益はオーストラリア連邦の財産になる(三六条三項)。

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    同志社法学 六七巻四号一八一三九六

第五款  設   立   私財団は財団宣言によって設立され、商号登記簿への登記によって成立する ₃₃

。財団宣言は、私財団の基礎を形成し、その機能において株式会社の定款に相応する。一方的行為としての財団宣言は、生存中でも遺言によっても行うことができる。私財団の名前でその登記の前に行為した者は、連帯して責任を負う(同法七条)。私財団の定款の作成とその登記の間は、生成中の私財団と呼ばれ、会社の場合と同様に、登記の完了と同時に登記された私財団に自動的に包摂される ₃₄

1  生存中の財団宣言   ⑴  財団証書   財団宣言には、以下の事項を記載しなければならない(同法九条)。①財産の寄付、②財団の目的、③受益者の名称又は受益者を決定する者、④私財団の名称と住所、⑤設立者の名前、生年月日(商号登記簿番号)、住所、⑥私財団の存続期間である。財団宣言がこれらのいずれかの事項を含まなかった場合、私財団は商号登記簿に登記することができない。

  私財団は、一定の期間又は不定の期間設立されることができる。一定の期間設立される場合、最終日は必ずしも暦年により定められる必要はない。公益としてみなすことができない純粋の扶養財団は、一〇〇年後に解散しなければならない。立法者によれば、この規制は、一〇〇年も経てば設立者を動機づけた受益者との関係はもはや存在しないとみなすことができるからである ₃₅

  財団宣言における記載事項は、財団証書に補足的に含まれなければ効力を生じない(同法九条)。この比較可能でな

(20)

    同志社法学 六七巻四号一九一三九七 い(taxative)列挙は、理事会と設立検査人の選任・解任及び任期に関する別の規定、財団目的の確保のため監事会若しくはその他の機関の設置、財団宣言の変更に関する規制又は財団補足証書が作成されることができる旨の表示を含む。撤回権又は変更権の留保は、事後に対応する権利を行使することができるためには、財団証書に記載されなければならない。

  ⑵  財団補足証書 一  財団補足証書の作成について財団証書が参照していない場合、将来作成されてもその財団補足証書は無視される。財団補足証書は財団証書と異なり、商号登記簿に提出する必要がない。実務においては、一般的に秘密にしておきたい規定が財団補足証書において定められる。財団目的、受益者及び補足的財産の寄付、理事に対する報酬に関する詳細な規定が財団補足証書において定められる。実務においては、さらに詳細な内容を定める第三の証書の作成が普及している。債務を確保する場合を除けば公証人の認証が不要である。相続の際に不明なことがある場合に、解釈の手助けになる ₃₆

二  実務においては、九五%が財団補足証書を利用するか又はその利用を留保しているといわれているが、財団補足証書について次のような調査がなされている。一〇の私財団のうち八つの私財団に財団補促証書があり、三%の私財団が二以上の証書を商号裁判所に提出し、一五%はまったく提出していない。五七%の私財団では変更が商号登記裁判所に申請されていない。一〇の私財団の内三つの私財団は、少なくとも一回は補足証書を変更している。少ない証書の変更件数は、証書の変更に大きな注意が払われ、慎重であることを示している ₃₇

(21)

    同志社法学 六七巻四号二〇一三九八

2  死因財団   死因私財団は、遺言による財団宣言によって設立される。相続上の法律行為として、最終の財団宣言の妥当性の要件と法律効果は、私財団法において特別規定(leges specialis)が適用されない限り、相続に関する規定に従って判断しなければならない。遺言による財団宣言は、公証人の認証が必要であり、さらに補足的に遺言の方式に相応しなければならない。財団宣言は財団証書と財団補足証書から構成することができる。遺言による財団宣言の最低の内容は、︱生前財団宣言と同様に︱財団宣言について規定する私財団法九条に従う。

  死因私財団は、設立者の死後初めて成立するので、既存の財団の撤回権は存在しない。撤回には公証人の認証行為は不要である。撤回の形式は、一般的には、遺言による処分の撤回と放棄に関する規定による。死因財団の財団宣言の変更は、変更権が第三者に委任することができる限りにおいてのみ可能である。死因財団宣言が方式又はその内容に瑕疵がある場合、私財団は存在しないが、場合によっては遺言による処分が存在する。後者の場合、無効の転換の方法で設立者ではない遺贈者の意思にできるだけ近づくことを試みなければならない ₃₈

  私財団の登記手続きを開始できるためには、︱そのような者が任命される限り︱理事会が遺産裁判所に通知しなければならない。理事会が任命されなかったか又は理事会が通知しなかったために、私財団の登記が適切な時期に期待されない場合、管轄権を有する裁判所が職権若しくは申立に基づいて財団管理人(Stiftungskurator)を選任しなければならない。管理人の任務は、私財団の成立について配慮することである。したがって、管理人が最初の理事会又は監事会を選任する必要がある。しかし、管理人には、すでに任命された理事会又は監事会を解任しまた新たに選任する権限がなく、この措置を権限のある裁判所に提案できるにすぎない。管理人の職務は、私財団が成立するや否や、又はその成立が不可能である場合、裁判所による罷免によって終了する。受益者は、最初の理事会又は監事会の選任が自己の任務

(22)

    同志社法学 六七巻四号二一一三九九 である場合、財団管理人の選任ができない。

3  設立検査   私財団の最低財産が内国の通貨で拠出されない場合、寄付された財産が最低財産額に達しているかどうか検査しなければならない(同法一一条)。これは会社法上の設立検査に関する規制にならったものである。最低財産が株式のような有価物で全部又はその一部だけが拠出された場合、設立検査が必要である。実務では、設立検査を避けるために、金銭を寄付するかあるいは最低財産が財団証書において寄付され、さらなる財産が財団補足証書において寄付される ₃₉

。事後財団と追加財団については設立検査が定められていない。

  設立検査においては、寄付された財産が最低財産額に達しているかどうか決定しなければならない。検査の内容は、財産の現状の調査及び財産が七万ユーロに達しているかどうかについての評価である。最低財産額に達している限り、寄付された財産が財団宣言において記載された額に達しているかどうかは考慮されない。

  設立検査人の選任は、理事会の申立によって裁判所が行わなければならない。設立者も理事会も特定の者を設立検査人に提案することができるが、裁判所はこの提案に拘束されない。設立検査人には、経済検査士又は経済検査会社が任命される。株式法上の設立検査人の資格要件(株式法二五条四項)と同じである。

  次の者は、独立性が保障されていないので選任されることができない。私財団機関のその他の構成員、私財団若しくはその被支配企業の労働者並びに受益者、その配偶者及び受益者と直系又は傍系三親等の親族(叔父、伯父、叔母、伯母、姪、甥)である。

  書面で作成されるべき検査報告書は設立者にも理事会にも提出しなければならない。設立検査人と理事との間の見解

(23)

    同志社法学 六七巻四号二二一四〇〇

が相違する場合、当事者の一人の申立に基づいて商号登記簿への登記について管轄権を有する裁判所が非訟手続において決定する。

  設立検査人は、私財団の機関ではないので責任に関する私財団法の規定を適用されず、裁判所の専門家の責任に関する規定に従う。設立検査人は、自己の活動について必要な現金立替金の補償請求権及び自己の尽力に対して報酬請求権を有する。

4  債権者保護   私財団法は、債権者保護に関する規制を正面から詳細に定めず、私財団における債権者保護は﹁継子扱い﹂されている。散逸している規定で、以下のような規制が、債権者保護に役立つ。まず、最低財産額七万ユーロが法定され(同法四条)、最低資本額に関して種々の規制がある。最低財産額の拠出が金銭ではなく、現物による場合、裁判所が選任した設立検査人の検査が行われる(同法一一条)。理事会は財団財産を利用できることを表示し、取扱銀行が証明する(同法一二条)。しかし、私財団法は、資本会社や公益財団の場合と異なり、財団財産を財団目的の達成のために使い尽くすことができる。設立者は、分配禁止に役立つ財団のある種の基本財産を任意に決定することができる(同法九条二項)。さらに、設立者は、受益者への援助金によって減らすことが許されない最低財産額を決定することができる(同法九条二項一一号)。このような最低財産は財団補足証書において秘密裏に七万ユーロを下回らないより低い額に決定することができる。さらに、債権者保護は理事会の責任に委ねられる。理事会は、債権者の請求権が減じられない限りにおいて、財団目的の達成のために受益者に給付することができる(同法一七条二項)。この規制は、財団の財産が株式法上の債権者保護に関する規定を準用する(同法三六条二項)という規定によって補足される。さらに、間接的であるが、

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    同志社法学 六七巻四号二三一四〇一 商法の規定に基づく財団の会計義務および検査義務が役立つ。しかしながら、私財団法は、年度決算の開示を要求せず、さらに年度決算書の不正に対して配当禁止の制裁を定めていない ₄₀

第六款  財団の機関   私財団の機関は、理事会と検査人の二つの機関が必置機関であり、場合によって監事会(Aufsichtsrat)を置かなければならない。機関の法定された員数を満たさない場合、裁判所はその構成員の申立又は職権で選任しなければならない。さらに、財団宣言が定めるか又は重大な義務違反若しくは能力喪失のような重大な事由があるときは、裁判所は申し立て又は職権で機関構成員を解任しなければならない(同法二七条)。

  設立者は、顧問会(Beirat)のような財団の目的を確保するためその他の機関を任意に設置することができる(同法一四条)。

1  理事会 一  理事会は、株式会社の取締役会に倣っている。理事会は最低三人から組織する。二人の理事は、国内に居所を有しなければならない(同法一五条一項)。理事は、自然人で完全な行為能力がなければならない。受益者、その配偶者、受益者と直系、傍系三親等の親族は、理事になることができない。法人をコンツェルン支配する自然人は理事会の構成員になることができない(同法一五条三項)。監事会の構成員又は財団検査人としての職務は、理事の地位と両立しない。受益者が兼任の禁止に反して理事に就任しても理事の地位から排除される。その選任は無効であり、事後的にも治癒されない ₄₁

。法人は、私財団の理事会の理事になることができない。

(25)

    同志社法学 六七巻四号二四一四〇二

  最初の理事会は、設立者か、又は死因財団の設立の場合は財団管理人によって選任される。この規制は強行的であり、変更することができない。理事会のさらなる構成員の任命・解任、代理権限、任期に関する規定は、財団宣言において補充的に定めることができる。実務においては、設立者が生前中に自分を理事会構成員に選任し、補充理事の選任及び解任することを留保している ₄₂

。選任、解任権限は、受益者に解任権がないか又は重大な事由に制限された解任権が受益者に帰属する場合に限り、受益者にも認められる。さもなければ、受益者は、財団の機関に対して決定的な影響を及ぼすからである。監事会にも理事の選任権・解任権を委任することができる。

  財団宣言が理事の選任・解任も任期も規定していない場合、理事会は、裁判所によって解任されるまで職務にとどまる。裁判所は、申立に基づき又は職権によって理事に重大な義務違反がある場合、理事に任務の正規の(ordnungsgemäss)遂行能力がない場合、理事の財産について破産手続が開始する場合、費用を補塡する財産が理事にないため破産手続が拒絶される場合、及び理事の財産に対する執行が不奏功である場合に、理事を解任する(同法二七条)。

  理事会は、遅滞なく商号登記簿に登記しなければならない。私財団が登記申請義務を負う場合、理事会が代理する。理事としての地位は、任命期間の完了による解任の場合を除いて、解任条件の発生又は理事の死亡によって終了する。

  理事会は私財団を管理し、外部に対して私財団を代表し、財団目的の達成について配慮し、その場合、財団宣言の規定を遵守する義務を負う(同法一七条一項)。財団宣言に別段の定めがない場合、理事全員が共同してのみ財団宣言を表明し、私財団の署名をする権限を有する。個々の理事は、一定の取引または一定の種類の取引をすることができる(同法一七条三項)。設立者は、業務執行を財団宣言において詳細に規定することができるが、法律上強行的に規定された理事会の権限に拘束される。

  理事は、自己の職務をつつましく(sparsam)かつ誠実な業務指揮者の注意をもって遂行する義務を負う(同法一七

(26)

    同志社法学 六七巻四号二五一四〇三 条二項)。疑いのある場合、理事全員が代表権を有する(同法一七条三項)。理事の責任は過失責任である。理事は、効率的で責任感のある活動を行うために必要な能力と識見を持たなければならない。私財団の重要な活動について自己利益がないこと、財団の利益に適切な情報を提供すること、財団の最善の利益のために行為することが要求される。複雑な財産構造をもつ私財団の管理と要求に関する知見を欠いている場合、理事職を引き受けること自体に過失がある ₄₃

  受益者の選任と並んで、受益者への寄付に関する決定も理事会の義務である。理事会は受益者への給付を私財団の債権者の請求権がそれによって縮減されない場合にだけ行うことができる。理事会は、分配されるべき金額を私財団が引き受けた債務の全額を考慮して決定する強行的な権限を有する。

  理事会の会議は、相当な期間に議長、副議長若しくは理事の三分の二によって招集することができる(同法一七条四項)。少なくとも三人の構成員から組織しなければならない機関は、内部規定に関する規定を定めなければならない(同法二八条)。理事会は、一人の議長及び少なくとも一人の副議長を選定しなければならない。業務執行権限は、議長が最終決定権(Dirimierungsrecht)をもつ過半数によって定められる。理事会は、受益者の要求があれば財団目的の達成について説明し、受益者に対して年度決算書、状況報告書、検査報告書、財団証書及び財団補足証書を閲覧させる義務を負う。さらなる理事会の不可欠の義務は、とくに私財団の帳簿の記帳義務、財団目的を確保するための財団宣言の変更義務である。さらに、相応する事由が存在する場合に理事の選任・解任を請求し、並びに損害賠償請求権を行使する義務を負う。

  財団宣言において別段の定めがない場合、理事会の活動に対してその職務及び私財団の状況と合致する報酬を提供しなければならない。財団宣言において別段の定めがない場合、報酬の額は、財団の機関若しくはその構成員の申立により裁判所が決定しなければならない(同法一九条)。

(27)

    同志社法学 六七巻四号二六一四〇四

二  理事会について、員数、任期、再任、年齢制限、代表権限、選任・解任、報酬、理事会における決議、理事会の業務執行措置に対する同意について調査が行われている。理事会は最低三人の理事によって組織されなければならない。(一五条)。私財団の七四%は三人の理事からなり、財団証書の一八%においては三人ないし五人の員数である。三%は規定を設けていない。私財団の七%において、経済受託者(Wirtschaftstreuhänder)又は弁護士の資格を可能な限り要求する。一部においては、財団証書が企業家の経験以外に、理事の一部について黙秘義務のような特別な適格性、不動産分野における財産管理の経験又は特別な知識を要求する。私財団法は、有限会社法と同様に、理事の任期について規定していない。財団証書の七%において規制がなく、一三%は不定期間とする。二九%の私財団は理事の任期を五年とし、一六%は三年とする。三%の私財団では最初の理事は不定の期間とし、その後の理事に一定の期間を設けるか又は設立者の死亡後に任期を定める。また三%は、裁判所が任命した理事は短期の任期を定め、一%は一年、四%は二年とする。さらに、理事の再任について三分の二弱の私財団が明文規定で認めている。つぎに、理事の年齢制限は、私財団の三%が年齢制限を設けており、最低三〇歳とするが、しかし、六八%は、規制していない。逆に三二%は規定を設け、その内六%は六五歳、一六%は七〇歳、九%は七五歳、一%が八〇歳と定める。

  理事は財団を代表し(同法一七条)、理事全員が共同で代表する(同法一七条三項)。しかし共同代表規定は任意規定なので、通例の場合その適用を回避している。九一%の私財団は二人で代表し、五%は理事会議長が単独で代表権限を有する。二%では設立者に対する個別代理権限を定め、〇・三%が一般的な単独代理権限を有する ₄₄

  理事の任命については、第一義的任命権と補充的任命権が財団証書において段階的に規定されることがしばしばである。補充的任命権は、死亡又は行為能力の喪失のために権利を行使できない場合に行使される。私財団の六一%は、設立者が理事を任命し、一七%は理事会構成員が自己補充権を有し、一〇%は諮問会、九%は裁判所が、二%は設立者と

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※可燃性ガスの安全管理では爆発下限界を区切 りとして、濃度をLELという単位で表現する ことが多い (LEL:Lower Explosive Limit).

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