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&2 ガス溶解燃料を用いたディーゼル噴霧燃焼特性に関する研究

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(1)

_________________________________

* Department of Mechanical Engineering, Doshisha University, Kyoto

Telephone/FAX: +81-774-65-6405, E-mail: euq1503@mail4.doshisha.ac.jp, jsenda@mail.doshisha.ac.jp

** YANMAR Co., Ltd., Shiga

Spray and Combustion Characteristics of CO

2

Gas Dissolved Diesel Fuel

Tomoyuki MUKAYAMA*, Go ASAI**, Masaki KURIBAYASHI**, Eriko MATSUMURA*, Jiro SENDA*

(Received July 4, 2019)

The CO2 gas dissolved fuel for the diesel combustion is effective to reduce the NOx emissions to achieve the internal Exhaust Gas Recirculation (EGR) effect by fuel. This method has supplied EGR gas to the fuel side instead of supplying EGR gas to the intake gas side. The fuel has followed specific characteristics for the diesel combustion. When the fuel is injected into the chamber in low pressure, this CO2 gas is separated from the fuel spray. The distribution characteristics of the spray are improved and the improvement of the thermal efficiency is expected by reduction heat loss in the combustion chamber wall. Reduction of soot emissions by the lean combustion is expected. Furthermore, this CO2 gas decreases the flame temperature. Further, it is anticipated to reduce NOx emissions by the spray internal EGR effect. In this paper, the n-tridecane and CO2 gas were used as a basic fuel spray research, and shadowgraph photography and luminescence flame photography were conducted to measure the evaporation characteristics and flame characteristics of the fuel spray. In addition, chemiluminescence photography and luminous flame photography were conducted in the RCEM (Rapid Compression and Expansion Machine) for the combustion characteristics.

Effervescence of CO2 gas improves evaporation of the spray, and it promotes air-fuel mixture formation. The temperature and KL factor become lower with the increase in dissolved pressure. The simultaneous reduction of NOx and soot can be achieved by use of the CO2 gas dissolved fuel.

.H\ZRUGV:diesel engine, fuel improvement, gas dissolved fuel

キーワード:ディーゼルエンジン,燃料改善,気体溶解燃料

&2 ガス溶解燃料を用いたディーゼル噴霧燃焼特性に関する研究

向山 智之,朝井 豪,栗林 真幹,松村 恵理子,千田 二郎

はじめに

近年,化石燃料の枯渇が懸念される中,ガソリン 機関と比較して熱効率の高いディーゼル機関が注目 されている.しかし,排気規制および燃費規制は年々 厳しくなる傾向にあるため,ディーゼル機関に対し てさらなる熱効率の向上および低エミッション化の 両立が求められている.ディーゼル燃焼は拡散燃焼 主体の燃焼形態であることから,燃焼の改善には混

合気の形成過程が重要となる.そのため,燃料噴霧 を微粒化させ,早期に希薄で均一な混合気を形成さ せることが必要となる.現在では燃料噴射圧力の 超高圧化により燃料噴霧の微粒化および混合気の形 成を促進する手法が用いられている .しかし,超 高圧噴射は投入エネルギに対して得られる噴霧の微 粒化効果が少なく,燃料噴射圧力03Dを超える と微粒化の促進が限界となる .そのため,高圧噴

(2)

射に依らない物理的な観点で燃料の微粒化を促進さ せる方法が必要となる.

そこで本研究では燃料に気体を混入および溶解さ せ,溶解気体の析出効果により微粒化を促進する手 法に着目した.また,エンジンシステム上で実用 化するため,(*5 ガスを燃料タンクにバブリングさ せることにより,燃料に溶解させるシステムを提案 する.本報では,(*5 ガスの主成分であり燃料に対 する溶解度の高い &2ガスを燃料に溶解させ,噴霧 特性に与える影響について報告する.そして,定容 燃焼容器および急速圧縮膨張装置を用いた &2ガス 溶解燃料の燃焼特性について報告する.

研究コンセプト

本研究の目的は高圧噴射に依らないディーゼル燃 焼の改善およびそれに伴う熱効率の向上と低エミッ ション化の両立である.)LJにエンジンシステム 上でのコンセプトを示す.エンジンシステム上で実 用化するため,(*5 ガスを燃料タンクにバブリング することで(*5ガス溶解燃料を作成し,燃焼室筒内 に噴射するシステムを提案する.(*5 ガス溶解燃料 には以下の四つの効果を期待することができる.

一つ目は溶解気体の析出効果である.燃料噴射時 の減圧に伴い,燃料中に溶解していたガス成分の過 飽和分が析出することで,噴霧の微粒化が促進され 微粒化効率が向上すると考えられる.

二つ目は高分散噴霧および高分散混合気の形成に より,コンパクト火炎を形成することで燃焼室壁面 への衝突を低減することができ,壁面熱損失の低減 が期待される.

三つ目は希薄かつ均一な混合気の燃焼による 30

(粒子状物質:3DUWLFXODWH0DWWHU)排出量の低減 効果である.溶解気体の析出効果により燃料噴霧の 微粒化が促進され,噴霧が急速に蒸発し希薄で均一 な燃焼となるため,30の排出量低減が期待される.

四つ目は(*5ガスが燃焼に直接寄与することによ る12[排出量の低減効果(噴霧内(*5効果)である.

通常の(*5システムでは燃焼室全体に(*5ガスが存 在するのに対し,(*5 ガス溶解燃料では噴霧中にの み(*5ガスが存在するため,同等の(*5率において

従来の(*5 に比べ,さらなる12[排出量の低減が期 待できる.また,外部(*5と異なり,燃料噴射時に (*5ガスが析出することで燃料噴射以降に&2濃度が 増加するため,圧縮終了時の温度低下を防ぐことが できる.そのため,サイクル熱効率を低下させるこ となく,12[の排出量を低減させることが可能である.

実験装置および実験条件 気体溶解燃料の作成および燃料噴射装置 加圧溶解装置および燃料噴射装置

)LJに加圧溶解装置および燃料噴射装置の概略 図を示す.この装置は,高圧容器(最高使用圧力:

03D,容積:FP)内を一定圧力に保ちながら,

容器内の燃料中に気体をバブリングし溶解させる構 造となっている.バブリングは高圧容器底面に設置 した多孔円盤を通して気体を供給することにより行 なった.燃料にはQトリデカン(Q&+:WULGHFDQH)

を,溶解気体には二酸化炭素(&2:&DUERQGLR[LGH)

を用いた.なお,高圧容器内の溶解圧力3Gはリリー フバルブにより調整し,バブリングする &2の流量

を FPPLQ(.,03D)とした条件下で

分間加圧溶解を行なった.溶解燃料をポンプによ り指定した燃料噴射圧力 3LQMまで加圧する際,ポン プ内での減圧領域にキャビテーションが生じ,溶解 気体が析出することが予想される.これにより,正 確な噴霧挙動が観察されないことが予想される.そ こで,今回はアキュムレータを備えた蓄圧式の噴射 系を用いた.まず,手押しポンプにより燃料噴射圧 力まで加圧し,アキュムレータの弁を閉じた.次に

Providing EGR gas for fuel tank and bubbling

Atomizing spray Return part of

exhaust gas EGR Cooler

Inter Cooler

Supply Pump

Engine Compressor

Common-rail

Fig. 1. Concept of EGR gas dissolved fuel injection system.

(3)

リーク弁を開けることにより通常燃料を溶解圧力の まま準静的に溶解燃料に置換した.その後,アキュ ムレータの弁を開けることにより,溶解燃料を燃料 噴射圧力まで加圧し噴射を行なった.

溶解度測定法

本実験では,過去に千田らが 1ガス溶解燃料の溶 解度を調査した方法と同様に,質量を測定すること により気体溶解度を算出した.)LJ に溶解度測 定の手順および算出方法を示す.まず,溶解度測定 容器内に気体が溶解された燃料を抽出することによ り,溶解気体が減圧に伴い析出し,容器内の圧力は 増大する.その後容器の蓋を開放し容器内圧力を大 気圧に戻すことにより,燃料から析出した溶解気体 を放出する.それぞれの過程における質量を以下の ように定義する.

(D)溶解度測定容器の質量 $>J@

(E)測定容器+燃料+溶解気体の質量 %>J@

(F)測定容器+燃料の質量 &>J@

以上より,燃料の質量PI>J@および溶解気体の質量 PJ>J@が求められ,溶解度;Jは式より算出される.

なお,0Iは燃料のモル質量>JPRO@,0Jは気体のモル 質量>JPRO@を表す.

/

/ /

g g

g

f f g g

X m M

m M m M

 

()

定容燃焼容器による噴霧・燃焼実験 定容燃焼容器

本実験では高温・高圧のディーゼル雰囲気場を模 擬できる定容燃焼容器を用いて,燃料噴霧の燃焼特 性および火炎特性の把握を行なった.)LJ に実験 装置の概略図を示す.本実験における実験装置は定 容燃焼容器,可燃混合気を作成する混合容器,燃料 噴射装置および制御装置により構成される.まず,

混合容器内においてアセチレン,酸素および窒素を 組成とする可燃混合気を作成し,定容燃焼容器内に 充填した.その後,スパークプラグを用いた可燃混 合気を点火・燃焼させ雰囲気場を高温・高圧にし,

雰囲気圧力が任意の圧力まで低下した際に燃料を噴 射した.なお,定容燃焼容器には雰囲気場を均一に するため,攪拌機を設置した.また,定容燃焼容器 の圧力測定には圧力センサ(.,67/(5:&)を用 い,チャージアンプ(.,67/(5:%)を介してデ ータロガー(*5$3+7(&:*/)により取得し,圧力 データを 3& に取り込んだ.なお,データロガーのサ ンプリング間隔は µs とした.

非蒸発場における透過光撮影

ノズル噴孔部において &2ガス溶解燃料の噴霧を 撮影した.マイクロフラッシュ(菅原研究所:

0/$6,06'$,露光時間:µV)を光源とす る光は,拡散板を介して輝度ムラを低減させた後に

A [g]

(c) Container + Fuel (b) Container + Fuel

+ Dissolved gas (a)Container

B [g] C [g]

Fig. 3. Measuring method of gas solubility.

supplyFuel Injector

CO2+n-C13H28

Volume: 1,500 cm3

CO2

Pressure dissolution apparatus Manual pump Accumulator

Fig. 2. CO2 gas dissolved fuel injection system.

Timing control unit Injector Spark plug

Constant volume combustion vessel Mixer

Pressure sensor

Mixed gas tank Amp.

Pressure sensor

Amp.

Pressure sensor

C2H2

Vacuum pump

PC

O2 N2

Mixer

Fig. 4. Experimental setup of constant volume combustion vessel.

(4)

噴霧へと照射された.撮影には噴霧前方に設置した デジタル一眼レフカメラ(1LNRQ:',解像度:

×SL[HO)を用いた.

実験条件を7DEOHに示す.本実験では,&2ガス の溶解量が噴霧特性に与える影響を調べるため,供 試燃料には通常燃料としてQ&+を,溶解燃料とし て3G ~03Dにおいて&2を溶解させた燃料を 用いた.なお,非溶解燃料である通常燃料は便宜的 に3G 03Dとした.また,燃料噴射圧力の影響を 把握するため,溶解圧力3G一定の下,燃料噴射圧力 を変化させ実験を行なった.供試ノズルには噴孔径 GQ が PP(OQGQ ) の 単 孔 ホ ー ル ノ ズ ル

('(162:*3インジェクタ)を用いた.

蒸発場におけるシャドウグラフ撮影 )LJにシャドウグラフ撮影における光学系の概 略 図 を 示 す . 光 源 に は $Uイ オ ン レ ー ザ

(6SHFWUD3K\VLFV:6WDELOLWH,λ QP)を 用いた.光源からの光はピンホールにより絞られ,

凹レンズ(I PP)により拡大され,両凸レンズ

(I PP)により平行光となり,定容燃焼容器内 に入射される.容器内を通過した光はシュリーレン ミラー(I PP)により集光され,カラーハイ スピードビデオカメラ(3KRWURQ:)$67&$06$)

へ導かれる.なお,カメラに取り込まれる光の強度 を調整するため,カメラ前方に1'フィルタを設置し た.また,カラーハイスピードビデオカメラの撮影 速度はISVとした.

実験条件を7DEOHに示す.本実験では圧縮比 のディーゼル機関におけるGHJ&$$7'& におけ る筒内温度,筒内圧力を基準条件とし,雰囲気密度 の影響を把握するため,基準条件から~GHJ&$

変化させた雰囲気密度とした.

輝炎直接撮影および二色法解析

)LJ に輝炎直接撮影の光学系の概略図を示す.

カ ラ ー ハ イ ス ピ ー ド ビ デ オ カ メ ラ (9LVLRQ 5HVHDUFK:3KDQWRP9&)を用いて輝炎の撮影を 行なった.また,二色法解析における温度計測上の 誤差を低減するため,89,5 カットフィルタを使用 し波長QP以上の発光を除外した.なお,撮影速 度はISVとし,露光時間はµs とした.

実験条件を7DEOH に示す.本実験では&2ガス の溶解量が燃料噴霧の燃焼特性および火炎特性に与 える影響を把握するため,供試燃料には通常燃料お よび溶解圧力3G ,03Dの&2ガス溶解燃料を 用いた.雰囲気条件は圧縮比のディーゼル機関 におけるGHJ&$$7'& の筒内温度,筒内圧力を 想定し,雰囲気温度,雰囲気圧力をそれぞれ.,

Table 1. Experimental condition.

Ambient gas Ambient density Ambient temperature Ambient pressure Dissolved pressure Injection pressure Nozzle hole diameter Injection fuel amount Nozzle hole length

ρa[kg/m3] Ta[K]

Pa[MPa]

Pd[MPa]

Pinj[MPa]

mf[mg]

ln[mm]

1.1

0.0, 1.0, 2.0, 3.0, 4.0 298

0.1

25, 35, 45 4.0 0.15 0.90 N2

Test fuel n-C13H28

dn[mm]

Constant volume combustion vessel Color high speed

video camera

Double convex lens(f=300 mm)

Schlieren mirror (f=1,500 mm)

Injector

ND filter Ar+laser

Concave lens (f=-40 mm) Pinhole

Fig. 5. Optical setup for shadowgraph photography.

Table 2. Experimental condition.

O2concentration Ambient density Ambient temperature Ambient pressure Dissolved pressure Injection pressure Nozzle hole diameter Injection fuel amount Nozzle hole length

ρa[kg/m3] Ta[K]

Pa[MPa]

Pd[MPa]

Pinj[MPa]

mf[mg]

ln[mm]

8.1, 10.6, 13.6

0.0, 4.0 787 1.90, 2.47, 3.18

35 4.0 0.15 0.90 0.0

Test fuel n-C13H28

dn[mm]

XO2[mol%]

Constant volume combustion vessel

Fuel injector UV/IR cut filter

Color high speed video camera

Fig. 6. Optical setup for luminous flame photography.

(5)

03D とした.供試ノズルには噴孔径GQ PP

(OQGQ )の単孔ホールノズル('(162:*3 イン ジェクタ)を用いた.

二色法は物体からの異なる二波長における輻射輝 度を計測することで,物体の表面温度と相対すす濃 度(./値)を非接触で算出する方法である.計測 した輻射輝度の二波長における比を算出することで 未知数./を消去できるため,輝炎の波長放射率によ る補正を実施せずに真温度に近い温度計測が可能で ある.本実験では二色温度計測システム(0LWVXL 3KRWRQLFV:7KHUPHUD+6)を用いた.

急速圧縮膨張装置による燃焼実験 急速圧縮膨張装置

本実験ではディーゼル機関における 回の圧縮膨 張行程が模擬できる急速圧縮膨張装置(5&(0:5DSLG

&RPSUHVVLRQDQG([SDQVLRQ0DFKLQH)を用いた.

7DEOH に 5&(0 の諸元を示す.また,本実験ではシ リンダライナ壁面温度をウォータジャケットに温水 を供給することにより,. 一定に保った.筒内 圧力の測定には圧力センサ(.,67/(5:%)を用 い,チャージアンプ(.,67/(5:%)を介した後,

3& に取り込んだ.データの分解能はロータリエンコ ーダ(分解能:GHJ&$SXOVH)からの信号を 倍波回路により分解能 GHJ&$SXOVH として 3& に取り込んだ.

化学種自発光計測および輝炎の同時撮影 本実験では &2ガス溶解燃料が燃焼の活性化に与

える影響を評価するため,化学種自発光計測および 輝炎の同時撮影を行なった.化学種自発光計測およ び輝炎撮影に用いた光学系の概略図を )LJ に示す.

筒内から発した光はダイクロイックミラーにより反 射光及び透過光に分光される.化学種自発光計測で は反射光を高速ゲート ,,ユニット(浜松ホトニク ス:&&)を取り付けたモノクロハイスピー ドビデオカメラ(9LVLRQ5HVHDUFK:3KDQWRP90)

を用いて撮影した.なお,化学種自発光計測では高 温酸化反応における中間生成物である 2+ ラジカル を撮影するため,透過中心波長 QP,半値幅 QP のバンドパスフィルタを取り付けた.また,輝炎 撮影では透過光をカラーハイスピードビデオカメラ

(9LVLRQ5HVHDUFK:3KDQWRP9&)により撮影し た.なお,両カメラの撮影速度は ISV とした.

実験条件を 7DEOH に示す.本実験では &2ガス 溶解量が混合気の形成および燃焼過程に与える影響 を評価するため,供試燃料には通常燃料および溶解 圧力3G ~03D の &2ガス溶解燃料を用いた.

燃料噴射時期θLQMはGHJ&$$7'& とした.供試ノ ズルには噴孔径GQが PP(OQGQ )の単孔ホ ールノズル('(162:*3 インジェクタ)を用いた.

Table 3. Experimental condition.

O2concentration Ambient temperature Ambient pressure Dissolved pressure Injection pressure Injection heat quantity Nozzle hole diameter Injection fuel amount Nozzle hole length

Ta[K]

Pa[MPa]

Pd[MPa]

Pinj[MPa]

Qinj[J/cycle]

mf[mg]

ln[mm]

733

35 3.44 0.0, 2.0, 4.0

342 8.0 0.133

0.86 21.0

Test fuel n-C13H28

dn[mm]

XO2[mol%]

Table 4. Experimental condition.

Bore ×Stroke Compression ratio Equivalent crank speed Intake gas temperature

[ - ] Ne[rpm]

Ta[K]

16.0 200 353 100×450

Fuel injection system Direct injection

[mm]

RCEM

High speed video camera High-speed gated image intensifier unit

Band pass filter Mirror (f=100 mm)

Dichroic mirror

Color high speed video camera

Fig. 7. Optical setup for chemiluminescence and luminous flame photography.

Table 5. Experimental condition.

Injection timing

Ambient pressure at injection Dissolved pressure Injection pressure Injection heat quantity Nozzle hole diameter Injection fuel amount Nozzle hole length

Pa[MPa]

Pd[MPa]

Pinj[MPa]

Qinj[J/cycle]

mf[mg]

ln[mm]

35 3.5 0.0, 1.0, 2.0, 3.0, 4.0

342 8.0 0.15 0.90 -5

Test fuel n-C13H28

dn[mm]

θinj[deg.CA ATDC]

(6)

実験結果および考察

溶解度測定結果および正則溶液理論に基づく 溶解度推算値との比較

加圧溶解装置を用いてQ&+に&2ガスを溶解さ せ,溶解圧力と溶解度の関係を調査した.正則溶液 理論より,溶解度式は式で表される

 

2

2

2 2 2 2 1 1 2

ln ln

RTf fRTX V 

 

()

正則溶液とは,化学的相互作用,会合,双極子相互 作用などのない溶液の総称である.なお,5 は気体 定数,7は温度,fは溶液と平衡な気相のフガシティ,

f゜は純粋な液体状態にあるフガシティを示してい る.フガシティとは実在気体の系の化学平衡を行な う際に,圧力の代わりに用いる状態量である.また,

;はモル分率,9は体積,φは体積分率,δは溶解パ ラメータであり,添え字は溶媒,添え字は溶質 を示している.ここで,圧力が低い条件ではf 3と 考えることができ,さらに液体中での気体の溶解状 態は希薄溶液と考えられるため,φ とすると式 の+HQU\の法則が導かれる.

2 2

P H X  

()

 

2

2

exp

2 1 2

H f   V     R T

()

ここで,+ はヘンリー定数と呼ばれ,式より溶 解圧力に比例して溶解量が増加することがわかる.

)LJに式から算出したQ&+に対する各気 体の溶解度直線および溶解度測定実験より得られた 測定結果を示す.実験結果と計算結果はほぼ一致し ており,飽和溶液の作成および溶解度測定が高精度 に行なわれたことが確認できる.また,&2ガスの燃 料に対する溶解度が高いことから,燃料噴射に伴う 減圧による気体の析出効果が十分に期待できる.

定容燃焼容器による噴霧特性および火炎特性 非蒸発場における&2ガス溶解燃料の噴霧特 性

&2ガスの溶解が噴霧特性に与える影響を調べる ため,透過光撮影により WWLQM の噴霧根元部の 直接拡大撮影を行なった.ここで WWLQMとは,燃料 噴射開始からの時間W を燃料噴射期間WLQMで正規化 した値のことである.)LJに噴霧根元部の拡大撮 影画像および画像より算出した噴霧幅を示す.これ より,いずれの燃料噴射圧力においても溶解圧力が 増加するに従い,噴霧幅が大きくなる傾向を示した.

これは溶解圧力の増加に伴い噴射による減圧度が大 きくなるため,気泡析出効果が大きくなり,分散が 促進されたためであると考えられる.しかし,3G

03D においてはいずれの燃料噴射圧力においても,

通常燃料と比較して噴霧幅が減少する傾向を示した.

これは気液二相流の粘性に寄与するもので,小さな 気泡群が液相中に分散している気泡流では,液相の 粘性係数µOよりも大きな見かけの粘性係数µを持つ ことがある.そこで,~PPの気泡を混入し

Dissolved Pressure Pd[MPa]

0.0 MPa

25 MPa35 MPa45 MPa

10 0

20 30

10 0

20 30

10 0

20 30

0 10 20 10 20 [mm]

Injection Pressure Pinj[MPa]

1.0 MPa0 10 20 10

20 20 3.0 MPa10 0 10 20

t/tinj= 0.7

2.0 MPa0 10 20 10 20

Pinj=35 MPa Pinj=25 MPa

Distance from nozzle orifice [mm]

Spray width [mm]

20

10 30

0 0 2 4 6

Pinj=45 MPa

Spray width [mm]

20

10 30

0 0 2 4 6

Spray width [mm]

0 2 4 6

20

10 30

0 Distance from nozzle orifice [mm]

Distance from nozzle orifice [mm]

Pd=0.0 MPa Pd=1.0 MPa Pd=2.0 MPa Pd=3.0 MPa Pd=4.0 MPa

Fig. 9. Comparison of the spray width for various injection pressures and dissolved pressures.

Dissolved Pressure Pd[MPa]

Molar fractionX2[-]

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

1.0

0.2 0.0 0.4 0.6 0.8

Experiment (CO2) Theory (CO2: H6.57) Theory (O2: H=61.0) Theory (N2: H=100

5.0

Fig. 8. Solubility line of each gas for n-C13H28.

(7)

た気液二相流において,減圧下での気泡の成長とボ イド率の変化を考慮した日向らの実験式である式 を示す.

 

16

1 0.45 1.3

l

T

a

          

 

()

l b

a

d D

T

  

()

ここで,αはボイド率,7Dは 7D\ORU 数,GEは気泡径,

' は二相流の平均速度勾配,σは表面張力を示して いる.式より微細な気泡群を含む気液二相流に おいて,ボイド率が一定の時,気泡径が減少すると 見かけの粘性係数が大きくなることがわかる.

3G 03D の条件においては &2ガスの溶解量が少 なく,小さな気泡群を多く含む噴霧流になったため,

みかけの粘性係数は増加し噴霧の分散性に負の影響 を及ぼしたと考えられる.

蒸発場における &2ガス溶解燃料の噴霧特性

&2ガスの溶解が噴霧特性に与える影響を把握す るため,蒸発場における自由噴霧のシャドウグラフ 撮影を行なった.)LJ にシャドウグラフ撮影に より得られた蒸発場における WWLQM の噴霧画像 を示す.)LJ より噴霧の蒸気相に着目すると,

いずれの雰囲気密度においても通常燃料と比較して

&2ガス溶解燃料の蒸気相は広域に分散しているこ とがわかる.このことから &2ガス析出による燃料 液滴の微粒化促進効果によって,液滴の蒸発が促進 され,混合気の分散に大きく影響を与えたと考えら れる.

)LJ に )LJ の噴霧画像より得られた蒸気 相および液相到達距離の時間履歴を示す.これより,

いずれの雰囲気密度においても &2ガス溶解燃料の 気相到達距離は通常燃料と比較してわずかに増大し ていることがわかる.これは &2ガスの析出効果に より噴霧の微粒化が促進され,早期に蒸発したため であると考えられる.一方,液相到達距離について は,通常燃料と比較し &2ガス溶解燃料の方が増大 する傾向を示した.これは噴霧の液相中に含まれる 気泡が減圧とともに膨張したためであると考えられ る.また,液相の消滅時間においても &2ガス溶解 燃料は消滅する時間が早くなる傾向を示した.これ は膨張によって液相の密度が低下し,液相の蒸発速 度が早くなったためと考えられる.

)LJ に3G 03D における雰囲気密度ρDを変 化させた際の蒸気相および液相到達距離の時間履歴 を示す.これより,蒸気相到達距離は雰囲気密度が 増加するに伴い減少する傾向を示した.これは雰囲 気密度の増加により減圧度が小さくなり,&2ガスの 析出が抑えられたためと考えられる.また,液相到 達距離は雰囲気密度が増加するに伴い増大する傾向 を示した.これは雰囲気密度の増加により,液相の 蒸発が抑制され,液滴の運動量が保持されたためと 考えられる.液相の消滅時間について,ρD

NJPにおいて最も早く,ρD NJPにおいて最 も遅くなった.これは雰囲気密度の増加により液相 の密度が増大する一方で,噴霧と周囲気体との間に 働くせん断力も増加するため,噴霧の微粒化が促進 される.そのため,この二つの相反する効果により,

0 10 20 30 10 20

30 302010 0 10 20 30

0 10 20 30 10 20 30 0 10 20 30 40 50

[mm]

60 0 10 20 30 40 50 60

ρa=8.1 kg/m3 Pa=1.90 MPa Dissolved pressure Pd[MPa] 0.0 MPa4.0 MPa

t/tinj=0.7

ρa=10.6 kg/m3

Pa=2.47 MPa ρa=13.6 kg/m3 Pa=3.18 MPa

Fig. 10. Shadowgraphs of evaporating sprays.

0.0 1.0 2.0 3.0

80 60 40 20

00.0 1.0 2.0 3.0

80 60 40 20 0

80 60 40 20 0

Spray tip penetration [mm]Spray tip penetration [mm] Spray tip penetration [mm]

Time after start of injection [ms]

Time after start of injection [ms]

Time after start of injection [ms]

Vapor phase (Pd=0.0 MPa) Vapor phase (Pd=4.0 MPa) Liquid phase (Pd=0.0 MPa) Liquid phase (Pd=4.0 MPa) ρa=8.1 kg/m3

Pa=1.90 MPa ρa=10.6 kg/m3

Pa=2.47 MPa

ρa=13.6 kg/m3 Pa=3.18 MPa

0.0 1.0 2.0 3.0

Fig. 11. Temporal change in spray tip penetration of vapor phase and liquid phase.

(8)

液滴消滅時間と雰囲気密度の関係に極値を持ったと 考えられる.

)LJに蒸気相のアスペクト比 <; の時間履歴 を示す.なお,アスペクト比とは噴霧軸方向の最大 長さ<を半径方向の最大長さ;で除した値である.

そのため,アスペクト比は噴霧の蒸気相が長く細い ほど大きく,短く太いほど小さな値を示す.いずれ の雰囲気密度においても通常燃料と比較し,&2ガス 溶解燃料は噴射後,早期にアスペクト比が小さくな る傾向を示した.これは前項で述べたように,&2

ガスの析出効果より噴霧の分散が促進されたことに より,扁平な噴霧を形成したためであると考えられ る.このことから,&2ガスの析出効果は噴霧を比較 的早期に広域拡散できることがわかる.

輝炎直接撮影および二色法解析

)LJに溶解圧力3Gを変化させた際の輝炎画像 を示す.溶解圧力の増加に伴い,輝炎の発生位置は 噴霧下流部に移動していることが確認された.これ は析出した &2ガスが噴霧先端方向に燃料噴霧を膨 張させ,噴霧上流部において燃料密度が低下したた めであると考えられる.また,溶解圧力の増加に伴

い輝炎の発光強度が小さくなっていることがわかる.

輝炎の発光は炭素粒子が火炎面から熱を受けること で発生するため,30の生成に深く関係していること が知られている.そのため,&2ガスの析出効果は 30生成量を低減する可能性があると考えられる.

次に,輝炎撮影結果の画像二色法解析により得ら れた火炎温度の分布画像を)LJに示す.通常燃 料の場合,火炎全体において高温領域が存在するが,

溶解燃料においては溶解圧力の増加に伴い高温な火 炎領域が縮小する傾向を示している.これは噴霧内 部に含まれる &2ガスが熱容量を増大させ,燃焼温 度の上昇傾向を抑制したためであると考えられる.

また,高温領域において&2の熱解離反応が生じ ることで,燃焼温度が低下したと推察される.)LJ に画像二色法による相対すす濃度の分布画像を示 す.溶解圧力の増加に伴い,相対すす濃度の分布領 域は縮小する傾向を示した.これは &2ガスの析出 効果により,噴霧の微粒化が促進され希薄な混合気 の燃焼となることに加えて,&2の熱解離により生じ た2ラジカルが30を再燃焼させ,30生成量が低 減されたためであると考えられる.

)LJ(D)に画像二色法より得られた平均火炎 温度の時間平均を示す.ここで火炎温度は各座標の 火炎温度7ILとその面積$Lを乗じた値の総和Σ7IL

$Lを火炎面積Σ$Lで除した値とした.これより溶解 圧力の増加に伴い平均火炎温度は低下する傾向を示 し,溶解圧力3G 03Dの条件においては通常燃料 と比較し約.低下した.ディーゼル機関において,

(*5率をとしたとき火炎温度は約.低下し,

12[の排出量は約低減することが報告されている.

Vapor phase (ρa=10.6 kg/m3, Pa=2.47 MPa) Liquid phase (ρa=10.6 kg/m3, Pa=2.47 MPa) Liquid phase (ρa=8.1 kg/m3, Pa=1.90 MPa) Vapor phase (ρa=8.1 kg/m3, Pa=1.90 MPa)

Vapor phase (ρa=13.6 kg/m3, Pa=3.18 MPa) Liquid phase (ρa=13.6 kg/m3, Pa=3.18 MPa)

Spray tip penetration [mm]

40 20

00.0 1.0 2.0 3.0

Time after start of injection [ms]

80 60

Fig. 12. Temporal change in spray tip penetration of vapor phase and liquid phase.

Aspect ratio Y/X[-]10 8 6 4

0 2 Aspect ratio Y/X[-]10 8 6 4

0 2

Aspect ratio Y/X[-]10 8 6 4

0 2

Large Small

Y X Aspect ratio Y/X

XY Y

X Pd=0.0 MPa

Time after start of injection [ms]

Time after start of injection [ms]

Time after start of injection [ms]

ρa=8.1 kg/m3

Pa=1.90 MPa ρa=10.6 kg/m3

Pa=2.47 MPa

ρa=13.6 kg/m3 Pa=3.18 MPa

Pd=4.0 MPa

0.0 1.0 2.0 3.0

0.0 1.0 2.0 3.0 0.0 1.0 2.0 3.0

Fig. 13. Aspect ratio of vapor phase of spray.

Dissolved Pressure Pd[MPa]

0.0 4.0

2.0

Time after start of injection [ms]

1.0 1.5 2.0 2.5 4.5

0 10 20 30 40

0 10 20 30 40

0 10 20 30 40

20 10 0 10

20 20100102020100 1020201001020201001020 [mm]

Fig. 14. Images of luminous flames.

(9)

そのため,溶解圧力3G 03D においては,(*5 率 程度に相当する火炎温度低下の効果が得られた と考えられる.)LJ(E)に画像二色法より得ら れた積算./値の時間平均を示す.ここで積算./値 は各座標の相対すす濃度./Lとその面積 $Lを乗じた 値の総和Σ./L・$Lとした.従来の (*5 システムでは 酸素濃度の低下に伴い,30 排出量の増加が報告され ている.しかし,)LJ(E)より溶解圧力の増加 に伴い積算 ./ 値は減少する傾向を示し,溶解圧力 3G 03D の条件においては通常燃料と比較し約 低下した.これは析出した &2ガスが噴霧の微粒 化を促進させ希薄・均一な混合気の燃焼となり,30 の排出量を低減させたためであると考えられる.こ れより,&2ガス溶解燃料は定性的に 12[および 30 の同時低減が可能であると考えられる.

急速圧縮膨張装置による火炎特性および燃焼 特性

急速圧縮膨張装置における燃焼特性 )LJ に溶解圧力3Gを変化させた際の熱発生率 および筒内温度のクランク角度履歴を示す.これよ り,溶解圧力の上昇に伴い拡散燃焼期間における熱 発生率の最大値が増加する傾向を示した.これは &2

ガスの析出効果により,希薄・均一な混合気の燃焼 となり,さらに析出した &2の熱解離により生成さ れた酸素成分 2 ラジカルが 30 を再燃焼させ,燃焼が 活性化したためであると考えられる.

燃焼特性の解析では )LJ に示すように着火遅 れ期間,予混合燃焼割合および燃焼期間を定義した.

着火遅れ期間τLJは燃料噴射開始から熱発生率の値 が負から正に転じるまでの期間とした.予混合燃焼 期間を燃焼開始から予混合燃焼における熱発生率の 最大値を過ぎ,熱発生率が減少から増加に転じた時 期までと定義した.予混合燃焼期間における累積熱

Time after start of injection [ms]

1.0 1.5 2.0 2.5 4.5

Dissolved PressurePd[MPa]

0.0 4.0

2.0

0 10 20 30 40 [mm]

0 10 20 30 40

0 10 20 30 40

20 10 0 10

20 201001020201001020201001020201001020 1700 Temperature [K] 2600

Fig. 15. Images of flame temperature.

Dissolved PressurePd[MPa]

0.0 4.0

2.0

0 10 20 30 40 [mm]

0 10 20 30 40

0 10 20 30 40

0.0 KLfactor [-] 2.0

Time after start of injection [ms]

1.0 1.5 2.0 2.5 4.5

20 10 0 10

20 201001020201001020201001020201001020

Fig. 16. Images of KL factor.

1900 2000 2100 2200

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 Dissolved Pressure Pd[MPa]

ΣTfiAi/ ΣAi[K]

50 100 150

ΣKLiAi[mm2]

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 Dissolved Pressure Pd[MPa]

(a) Time averaged flame temperature (b) Time averaged cumulative KLfactor

Fig. 17. Time averaged flame temperature and cumulative KL factor.

Pd=0.0 MPa Pd=2.0 MPa Pd=4.0 MPa

5 10

0

-5 Crank angle [deg.CA ATDC]

-20 0 20 40 60

Rate of heat release [J/deg.CA] Cylinder temperature [K]900

850 800 750 700

Fig. 18. Rate of heat release and cylinder temperature.

Crank angle Injection duration

Rate of heat release

Ignition delay

Total heat release Qtotal

0.9Qtotal

Qpre

θ90

Premixed combustion period

θpre

Diffusion combustion period

Fig. 19. Definition of combustion characteristics.

(10)

発生量4SUHを全体の累積熱発生量4WRWDOで除したもの を予混合燃焼割合と定義した.燃焼期間は燃焼開始 から累積熱発生量の となるまでの期間とした.

なお,本実験では回の実験結果をアンサンブル平 均した値を用いた.

)LJ に溶解圧力を変化させた際の着火遅れ期 間を示す.着火遅れ期間は通常燃料と比較し,&2

ガス溶解燃料を用いた条件で短縮された.一般に着 火遅れ期間τLJは,物理的着火遅れ期間τSKと化学的 着火遅れ期間τFKとの和であると考えることができ る.物理的着火遅れ期間とは,燃料が微粒化する ことにより蒸発し,空気と可燃混合気を形成するま でに要する時間のことであり,蒸発速度と密接な関 係にある.一方,化学的着火遅れ期間とは混合気を 形成してから,化学反応が進行して燃焼が生じるま でに要する時間のことであり,反応速度と密接な関 係にある.&2ガスの析出効果は,燃料噴霧の微粒化 を促進させ蒸発速度を速くする.そのため,通常燃 料の条件と比較して,&2ガス溶解燃料の条件で着火 遅れ期間が短縮化した理由としては,物理的着火遅 れ期間が短縮されたためであると考えられる.また,

雰囲気組成中の &2ガスは化学的着火遅れ期間に影 響を与えないという知見があり,溶解圧力の上昇 に伴い微粒化が促進されるため,着火遅れ期間は短 縮されると推測された.しかしながら,)LJ に 示すように溶解圧力の上昇に伴う着火遅れ期間の変 化に有意な差は見られなかった.これは &2ガスが 噴霧内部に存在することにより熱容量が増大し,雰 囲気温度が溶解圧力の上昇に伴い低下したため,反 応速度が低下することにより,化学的着火遅れ期間 が長期化したためであると考えられる.

)LJ に溶解圧力を変化させた際の予混合燃焼 割合および燃焼期間を示す.予混合燃焼割合は溶解 圧力 3G 03D の条件で最小値となった.これは 3G 03Dの条件において最も着火遅れ期間が短縮 されたためであると考えられる.一方,3G ~ 03D の条件では溶解圧力の上昇に伴い,予混合燃焼 割合が増加する傾向を示した.これは &2ガスの析 出効果により後燃えが低減され,拡散燃焼割合が減 少したためであると考えられる.

燃焼反応領域および輝炎領域

)LJに溶解圧力3Gを変化させた際の2+ラジカ ルおよび輝炎の撮影画像を示す.溶解圧力が増加す るに伴い,2+ラジカルおよび輝炎が半径方向に広が っており,先端到達距離が抑制されていることがわ かる.また,2+ラジカルの発光強度が増加し,輝炎 の発光領域および発光強度が減少する傾向を示して いることがわかる.このことについて定量的に評価 するために,撮影画像から2+ラジカルおよび輝炎の アスペクト比,発光領域面積および積算輝度値を算 出した.)LJに2+ラジカルおよび輝炎のアスペ クト比<;の時間履歴を示す.なお,アスペクト比 はそれぞれの先端到達距離< を半径方向最大長さ ; で除したものと定義する.溶解圧力が増加するに伴 いアスペクト比が小さくなる傾向を示した.これは

1.5 1.6 1.7 1.8 1.9 2.0

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

Dissolved Pressure Pd[MPa]

Ignition delay [deg.CA]

Fig. 20. Ignition delay.

5.0 6.0 7.0 8.0 9.0

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

Ratio of premixed combustion [%]

5.0 6.0 7.0 8.0 9.0

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

Dissolved Pressure Pd[MPa]

Combustion period [deg.CA]

Fig. 21. Ratio of premixed combustion and combustion period.

(11)

&2ガスの析出効果により燃料噴霧の分散性が向上 したためであると考えられる.これにより,&2ガス 溶解燃料においては扁平な噴霧火炎を形成し,壁面 からの熱損失を低減させる効果が期待できる.

)LJ に 2+ ラジカルおよび輝炎の発光領域面積 の時間積分値を示す.溶解圧力の上昇に伴い,2+ ラ ジカルの発光領域面積に有意な差は見られないが,

輝炎の発光領域面積については減少傾向が見られた.

これは &2ガス析出の微粒化効果により周囲気体と の混合が促進され,不輝炎領域を増加させたためで あると考えられる.)LJ に 2+ ラジカルおよび輝 炎の積算輝度値の時間積分値を示す.ここで積算輝 度値とは各地点における輝度値,Lにその面積$Lを乗 じた値の総和Σ,L・$Lとした.溶解圧力の上昇に伴

い 2+ ラジカルの積算輝度値は増加する傾向を示し たが,輝炎の積算輝度値は減少する傾向を示した.

2+ ラジカルは高温酸化反応時の中間生成物であるた め,燃焼反応の検出に用いられている .加えて,

輝炎の発光はすすの生成に関係していることから,

&2ガスの析出効果は燃焼領域を変化させず,輝炎の 生じていない不輝炎領域を増加させ,すすの生成を 低減させる効果があると考えられる.

Crank angle after injection [deg.CA]

Dissolved pressurePd[MPa]

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

0 2 4 6 8 10

Fig. 22. Images of OH radicals and luminous flames.

Crank angle after injection [deg.CA]

Luminous flames 0.0

1.0 2.0 3.0

4.0 OH radicals

Aspect ratio Y/X[ -]

0 2 4 6 8

Pd=0.0 MPa Pd=2.0 MPa Pd=4.0 MPa

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

Aspect ratio Y/X[ -]

0 2 4 6 8

Fig. 23. Aspect ratio of OH radicals and luminous flames.

8,000 7,000 6,000 5,000 4,000

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

Dissolved Pressure Pd[MPa]

Time integration of luminous area [mm2deg.CA]

Luminous flames OH radicals

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

8,000 7,000 6,000 5,000 4,000

Fig. 24. Luminous area of OH radicals and luminous flames.

7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 6.0 5.0 4.0

3.0

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

Dissolved Pressure Pd[MPa]

x [×105mmdeg.CA]

Luminous flames OH radicals

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

Fig. 25. Time integration of cumulative luminescence intensity, x of OH radicals and luminous flames.

(12)

まとめ

本研究では &2ガスを燃料に溶解させ,ディーゼ ル雰囲気場を模擬した定容燃焼容器および急速圧縮 膨張装置を用いて,噴霧特性および燃焼特性の把握 を行なった.以下の得られた知見を示す.

・ 燃料中への気体の溶解度は質量測定により算 出可能であり,その測定結果は正則溶液理論に 基づく推算結果とほぼ一致する.

・ 非蒸発場における &2ガス溶解燃料噴霧は溶解 圧力の増大に伴い分散性が向上する.

・ &2ガスの析出効果により噴霧の分散性が向上 し,扁平な火炎を形成する.そのため,壁面熱 損失を低減させる効果が期待できる.

・ &2ガスが燃料中から析出することにより,予混 合燃焼を抑制し,拡散燃焼を活性化させる.

・ 溶解圧力の増加に伴い,火炎温度および積算./

値が低下したことから,&2ガス溶解燃料におい て12[および30の同時低減が可能である.

参考文献

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6) 千田二郎,柴田一郎,藤本元,“ガス溶解燃料を用い たディーゼル噴霧の特性(第2報,液化CO2混合燃 料噴霧の特性)”,日本機械学会論文集(B編),63[613], 271-276 (1997).

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14) 水谷幸夫,燃焼工学,(森北出版,東京,1994),p.276.

Fig. 1. Concept of EGR gas dissolved fuel injection system.
Fig. 3. Measuring method of gas solubility.
Table 1. Experimental condition.
Table 5. Experimental condition.
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参照

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