• 検索結果がありません。

法学史におけるD. 19, 1, 13 pr. : その2 : ヴィントシャイトの瑕疵責任論におけるその位置

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "法学史におけるD. 19, 1, 13 pr. : その2 : ヴィントシャイトの瑕疵責任論におけるその位置"

Copied!
18
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

法学史における D. 19, 1, 13 pr.

─その :ヴィントシャイトの瑕疵責任論におけるその位置─

小 川 浩 三

. はじめに

本稿でも,前稿 に引き続き,19世紀のパンデクテン法学者がデータで

あるローマ法文とどのように取り組んだかを具体的イメージとして提示す

ることが課題である。前稿が19世紀前半に活躍したプフタであったのに対

し て,本 稿 の 主 人 公 は 19 世 紀 後 半 に 活 躍 し た ヴ ィ ン ト シ ャ イ ト

(Bernhard Windscheid, 1817-1892)である。彼の『パンデクテン法教科

(2)

ーマ法の取り扱いを,とりわけ D. 19, 1, 13 pr. を中心におきながら,検討

することにする。まず,瑕疵責任を論じている体系的位置を確認し(2.),

次いでそれに基づいて事案に応じた各論的な議論を取り上げ( 3 , , 5 ),

最後に全体の議論を総括する( )。

. 瑕疵責任論の体系的位置づけ

ヴィントシャイトが瑕疵責任を論ずるのは,『パンデクテン法教科書』

第 巻第 編「債権(Das Recht der Forderungen)」 ,第 章「個別の債

権(Die einzelnen Forderungsrechte)」,I「契 約 か ら 発 生 す る 債 権

(Forderungsrechte aus Verträgen)」,D「交換を目指す契約(Vertrag auf

Umsatz)」,1「売買(Der Kauf)」,c「義務(Verpflichtungen)」において

である。

「義務」においては,まず総論的に(α, §. 389)売主と買主のそれぞれ

の義務を列挙する。売主の義務についてはまず主要なものとして,「買主

が購入物を現実に所持するよう配慮する(dafür zu sorgen, dass der Käufer

die Kaufsache wirklich habe)」義務を挙げる。この義務が不能になるケー

スとして,買主が第三者により追奪された場合の損害賠償義務として,売

主の追奪担保義務を挙げる。さらに,不能が売主に責(Schuld)がある場

合には,売主の損害賠償義務を,売主に責がない場合の危険負担を挙げる。

次 い で,給 付 さ れ る 物 が 備 え る 態 様 に つ い て,ま ず,売 主 が「確 証

(Zusicherung)」 した通りでなければならない。次いで,売主が「約束し

ちなみに全体の構成は,第 編「法一般について(Von dem Rechte überhaupt)」, 第 編「権利一般について(Von den Rechten überhaupt)」,第 編「物権(Das Sachenrecht)」,第 編「家 族 法(Das Familien-Recht)」,第 編「相 続 法(Das Erbrecht)」

(3)
(4)

証された性状(zugesicherte Eigenschaft)」(第 項)を欠くことは,「(目

的物の)価値,または,通常の使用もしくは契約によって前提とされた用

法のための有用性(Tauglichkeit)を,消滅または減少させる瑕疵」(第

項)と 区 別 さ れ た。そ の 効 果 も,後 者 の 瑕 疵 の 場 合 に は 買 主 が 解 除

(Wandlung)または減額請求しかできなかったのに対して(§462 BGB a.

F.),後者の「確証された性状」を欠く場合には不履行を理由とする損害

賠償請求も可能であり(§463 BGB a. F.),この場合売主による不可抗力

による免責は認められなかった。第

項の「瑕疵」の定義が,「通常有す

べき有用性」を欠くことといった客観的なものから,第一義的に当事者が

明示的・黙示的に合意した有用性を欠くという主観的なものに変わってく

ることによって,

項で言う主観的に定義された「契約において約定さ

れた性状」と 項の「確証された性状」の区別が問題になり,後者の認定

は抑制的になっていった。 そうした背景事情もあって,2001年改正にお

いて「確証された性状」は削除された。

ヴィントシャイトは,「確証」について本文において何も述べていない。

脚注13において比較的長い叙述があるので,これを検討してみよう。最初

に,『学説集(Digesta)』の法文が引用される。19巻

章「購入物・売却

瑕疵の主観的定義が通説になっていたことについては,たとえば,vgl. Ermann/ Barbara Grunewald, Bürgerliches Gesetzbuch, 10. Aufl. 2000, Vor §459 Rn. 3 f.; Soergel/Ulrich Huber, BGB, Bd. 3, 12. Aufl. 1991, §459 Rn. 20 ff.; Staudinger/ Heinrich Honsell, Kommentar zum BGB, Bd. 2, 13. Aufl. 1995, §459 Rn. 18 ff.

Ermann/Grunewald, §459 Rn. 20; Soergel/Huber, §459 Rn. 140 f.; Staudinger/ Honsell, §459 Rn. 124 f. u. 134.

(5)

物訴権について(de actionibus empti venditi)」から,D. 19, 1, 6, 4, D. 19,

1, 13, 3 および ,さらに,18巻

章「売却物の危険および利益(de

peri-culo et commodo rei venditae)」から D. 18, 6, 16 が引かれている。

D. 19. 1, 6, 4 (Pomponius 9 ad Sab.) 君が私にある器を売り,一定の数量の容積をもつこと,あるいは,一定の重量を もつことを述べ(dicere)た場合に,君が数量不足のものを給付するときには,私 は君を相手として購入物訴権により訴えることになる。さらに君が私に器を売り, その器は無傷だ(integer)と君が確言し(adfirmare)たが,しかしそれは無傷で なかったというときには,それを理由として私が失ったものも君は私に保証す (praestare)べきことになる。しかし,無傷であることを君が保証するという意図 でなかったときは,君は悪意(dolus)に限って保証すればよい。ラベオは反対の 考えで,反対のこと〔保証しないこと〕が意図されていない限り,いずれにせよ無 傷であることが保証されなければならないということだけが守られるべきである, と考えている。そしてこれが正しい。酒樽の賃貸の場合にも,これが保証されなけ ればならないとサビヌスが解答したことを,ムニキウスが報告している。

君が私に器を売り,その際に器が無傷(integer)であると確言(adfir-mare)した場合には,器に傷があることによって買主が失ったもの,つ

まり器の傷から漏れて失われてしまったものまで売主は賠償しなければな

らない。器の数量を単に述べただけの場合には,おそらく言及された大き

さ・重さの器と数量不足の器との差額が購入物訴権によって請求されるこ

とになると思われるが,確言あるいは確証のある場合には,それ以上の責

任を負うことになる。問題は,無傷であることの言及が,「確言」または

「確証」といえるかどうか,効果から言えば,無傷であることを売主が保

(6)

証する,つまり器から漏れたものについてまで損害賠償責任を負うレベル

の「確証」かどうかである。ある論者の説は,買主において,売主がこの

損害賠償まで保証する意図であったこと,または,悪意つまり傷があるこ

とを知っていて「確証」したということを証明しなければならない。これ

に対してラベオは,無傷であるという断言があれば,売主には保証する意

図が推定され,売主において保証する意図がなかったことを証明しなけれ

ばならない。

D. 19, 1, 13, 3 (Ulpianus 32 ad ed.) しかし,たしかに奴隷が盗人だと知らなかったのに,きちんとして信頼できると 断言し(adseverare),高価に売った場合はどうか。考察が求められるのは,売主 が購入物訴権で責を負わされるかどうかである。私も責を負わされると考えること になる。もちろん,売主は知らなかったが,しかし知らなかったことを安易に断言 すべきではなかったのである。この知らなくて断言する者と知っている者との間に は,〔違いがある。すなわち,知っている者は〕盗人であることを警告しなければ ならなかったのであり,知らなかった者は,軽率に情報を与えるなどと安易な行動 をとってはならなかったのである。10

ここでは,奴隷に瑕疵があること(盗人である)を知らなかったが,瑕

疵がないと断言した者は,購入物訴権で責めを負うことが述べられている。

なお,プフタにおいてはこの法文が,「確証」という特別な効果をもつものでは なく,性状についての約定一般を論ずる中で引用されていることについては,前掲 拙稿(注 )58頁以下参照。

10 Quid tamen si ignoravit quidem furem esse, adseveravit autem bonae frugi et fidum et caro vendidit? videamus, an ex empto teneatur. et putem teneri. atqui ignoravit: sed non debuit facile quae ignorabat adseverare. inter hunc igitur et qui scit praemonere debuit furem esse, hic non debuit facilis esse ad temerariam indicationem.

(7)
(8)
(9)
(10)
(11)
(12)
(13)
(14)
(15)
(16)

の意思を推測させる何らかの当事者の合意またはそれに類するものである。

それもなければ,通常の当事者がもつと想定される意思である。したがっ

て,このドイツ民法典の定義は,第 選択肢が客観的な定義のように見え

たとしても,全体としてまったく主観的な定義である。このような主観的

瑕疵概念は,私的自治の原則を出発点とする見方からすれば至極当然であ

る。この現代的な視角からすれば,「明示的または黙示的に約定された性

状を欠く」という瑕疵概念からスタートするプフタの見方は,

22

極めて健

全だと思える。原則は,当事者の明示的な合意であり,それを黙示の合意

で補って,たとえば D. 19, 1, 13 pr. のケースなどは,黙示の合意で処理す

ることが可能であろう。とりわけ,目的物からして少なくとも売主が商人

であることが想定される事案では,商品が通常の品質・性能を有している

ことは黙示の合意として認めることはできるであろう。

23

しかし,こういった議論は,19世紀から20世紀の私的自治と意思表示を

めぐる激しい論争を経た21世紀の西欧法文化に触れているわれわれの見方

に過ぎない。それももちろん一面的なものである。19世紀の法律家たちに

とって,黙示の意思表示を用いることによって瑕疵責任の広範に及ぶ問題

を処理することは,困難であったであろう。それよりも,合意や売主の瑕

疵が存在しないとしても,瑕疵が商品の使用を損なうほどに重要なもので

あり,しかも隠れたものである場合には,商品の返却または代金の減額を

認めることによって,交換価値のバランスを保つという最低限の消費者保

護を迅速に行う手段を選んだのではないであろうか。そして,高級管理告

22 拙稿(前掲注 )56頁。

(17)
(18)

しかし,古代ローマの高級管理官告示ではどうであったのだろうか。検討すべき課 題である。

参照

関連したドキュメント

「文字詞」の定義というわけにはゆかないとこ ろがあるわけである。いま,仮りに上記の如く

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ

問についてだが︑この間いに直接に答える前に確認しなけれ

式目おいて「清十即ついぜん」は伝統的な流れの中にあり、その ㈲

を高値で売り抜けたいというAの思惑に合致するものであり、B社にとって

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値

なお︑本稿では︑これらの立法論について具体的に検討するまでには至らなかった︒

・取締役は、ルネサス エレクトロニクスグルー プにおけるコンプライアンス違反またはそのお