博 士 ( 理 学 ) 干 野 真
学 位 論 文 題 名
走時トモグラフイーにおける速度構造の メッシュの自己最適化
学位論文内容の要旨
本 論 文 は 、 地 震 波 走 時 ト モ グ ラ フイ 手法 の改 良と して 、モ デル 構造 にお ける グリ ッ ドを 波 線 の 分 布 に 合 わ せ て 自 動 的 に 適 切な 位置 ヘ配 置す る手 法を 提案 する 。デ ータ セッ ト に対 し て 、 よ り 適 切 性 の 高 い 逆 問 題 を デザ イン する こと で、 より 詳細 な地 下構 造の イメ ー ジを 得 るの が目 的で ある 。
従 来 は 、 そ の 多 く が 規 則 的 な グ リッ ドの 配置 によ って 速度 構造 が表 現さ れて いた が 、本 手 法 で は 、 不 規 則 な グ リ ッ ド 配 置 を用 いる 。ま ず、 グリ ッド 配置 の最 適化 問題 では グ リッ ド 配 置 が 不 規 則 で あ っ て も 、 各 グ リッ ドの 支配 域の 形状 のバ ラン スが 保た れて いる こ とが 重 要で ある 。し たが っ て、 構造 の表 現に はど のよ う なグ リッ ド配 置からでも最適な要素分 割 が 得 ら れ る デ ロ ー ネ 四 面 体 分 割 を採 用し た。 そし て、 デロ ーネ 分割 の構 築法 とし て 技術 的 難 易 度 の 高 い 「 頂 点 逐 次 添 加 法 」を 採用 した 。こ の方 法は デロ ーネ 分割 の条 件を 満 たし つ つ 、 任 意 の 位 置 に グ リ ッ ド を 追 加で きる 。す なわ ち、 四面 体の 頂点 位置 にお ける 地 震波 速 度 を パ ラ メ ー タ ー と し て 、 全 体 の再 構成 を行 わず に、 一個 から のパ ラメ ータ ーを 追 加で き る 。 こ の こ と に よ っ て 、 構 造 の 逐次 的細 分化 と逆 問題 を交 互に 行う 自己 最適 化戦 略 が可 能 と な る 。 こ の 戦 略 は 、 こ れ ま で 他の 構造 表現 方法 に対 して は提 案さ れて いた 。主 な 利点 は 、 構 造 全 体 を 試 行 錯 誤 的 に 何 度 も再 構成 する より も計 算量 が少 ない こと であ る。 今 回、
デ ロ ー ネ 四 面 体 分 割 に 対 し て こ の 戦略 を用 いる のは 初め ての 試み であ る。 一般 に、 走 時ト モ グ ラ フ イ ー に お け る パ ラ メ ー タ ー配 置の 自由 度お よび 適切 性の 高さ と、 その 導出 に 必要 な 計 算 時 間 の 間 に は ト レ ー ド オ フ があ る。 本手 法は その トレ ード オフ の妥 協点 を見 出 した も の と い え る 。 そ し て 、 以 下 の 事 に つ い て も 開 発 あ る い は 適 用 を 行 っ た 。 1. . 全 域 的 な パ ラ メ ー タ ー 配 置 の 適 切 性 を 評 価 す る 定 量 的 規 準 値 の 適 用 2. パラ メー ター 追加 位 置の 判定 方法 の開 発
3. 従来 のロ バス トな 波 線追 跡法 の四 面体 分割 への 拡張 法の 開発
(1)につ いて は、 比較 的少 な い計 算量 (0(N) )で 導出 でき る規 準値 がす でにCurtis and Snieder (1997)によ って 提案 され てい る。 以下 、こ の規 準 値を @と 呼ぶ 。(2)に つい て は、
ま ず、 パラ メー ター (頂 点グ リッ ド) 追加 位置 を四 面 体の 重心 とす ることで、追加位置判定 問 題 を 四 面 体 の 順 位 付 け 問 題 と す る。 順位 判定 の規 準は 互い に異 なる 方向 性を もつ ニ つの 規 準 を 交 互 に 用 い る 。 ひ と っ は 、 試 行 的 に 追 加 し た 際 のeの 変 化 を 評 価 す る こ と に よ る 基 準 で あ る 。 こ の 基 準 は 波 線 同 士 の交 差性 を重 視す る方 向性 をも って おり 、「 頂点 逐 次添 加 法」 がト モグ ラフ イー に内 部的 に組 み込 まれ たこ と で初 めて 可能 となった。もうーっは、
波 線 の 交 差 性 の 検 出 能 カ は 無 く 、 波線 密度 とグ リッ ド密 度の 空間 的分 布が 一致 する こ とを
重視する方向性をもつ既存の基準である。(3)については、ネットワーク最短経路問題を 応用した手法を用いた。これはすでに規則的なグリッドモデルに対しては提案されていた が、本研究により、不規則四面体分割されたモデルについても十分に適用できることが明 らかになった。
以上のことを採り入れた総合手法を用いて仮想構造モデルによる数値実験を行った。結 果におけ る@の値 は、同一 の構造に従来の手法を用いた場合よりも高い値を示した。し たがって、本手法は、従来の規則的なグリッドモデルの欠点であった、波線の分布に対す るグリッドの過不足を調整し、適切な位置にグリッドが配置された解を導くことができる といえる。また、結果がグリッド追加位置の判定方法に対して非常に敏感であることも明 らかになった。今回提案するニつの基準の交互使用は単独での使用よりも適切性が高い結 果を導く ことが分 かった。 このこと は、Oを最 大に改善する位置への追加が効果を発揮 するには、全体のコンディ.ションが捉えられている必要があり、そのためには補助的な追 加が必要であると解釈できる。したがって、この点に着目し、より良い判定規準を考案す ることが今後の課題である。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
走時トモグラフイーにおける速度構造の メッシュの自己最適化
博士学位論文審査等の結果について(報告)
三次元地下構造探査の課題は、古くからの固体地球科学の基本的な課題である。計算機 が用いられるようになってからは、その多くは立方体メッシュで表現したモデル構造を仮 定し、インバージョン手法により残差最小とモデル構造再現数値実験による評価を原理と して解析されてきた。
しかし、地震探査法では観測点が主として地表に限定されることなどから、どうしても 偏った分布の波線データを用いたトモグラフィとなりがちである。波線が関心ある地下深 部をまんべんなく通過する理想的なデータセットが得られる環境はまず考えられない。こ のような波線偏在という観測データのもつ不可避的な限界をどのように評価し、走時デー タから最も信頼できる走時異常の3次元分布を求めれぱよいのか、という根本問題に果敢 に挑戦した研究のひとっが本研究である。
震源と観測点の3次元的な偏在故に、データの質に基づぃた最も信頼できる解を得るた めには、波線の偏在をはじめから考慮したメッシュ構造を構築することから始めるべきで ある。本論文では、四面体による不規則のメッシュ構造を、自己最適化の手法で構築し、
波線データの質に適合した構造解析を行い、既存の手法による結果と比較し、開発した手 法の優位さを検証したものである。
本論文では、地震波走時トモグラフイ手法の改良として、グリッドを波線の偏在分布に 合わせて自動的に適切な位置へ配置する手法を提案している。その結果、より適切性の高 い逆問題がデザインされたことになり、より詳細で信頼性の高い地下構造のイメージを得 ることができる。
従来は規則的なグリッドの配置によって速度構造が表現されていたが、本手法では不規 則なグリッド配置を用いている。グリッド配置の最適化問題では、グリッド配置が不規則
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弘 稔
二 清
順
田 原
山 田
岡 笠
小 蓬
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
で あっ ても 、 各グ リッドの支配 域の形状のバランスが保たれていることが重要である。
した がって、構造の表現にはどのようなグリッド配置からでも最適な要素分割が得られ るデロ ーネ四面体分割が採用された。そして、デローネ分割の構築法として技術的難易度 の高い 「頂点逐次添加法」を採用した。この方法はデローネ分割の条件を満たしつつ、任 意の位 置に四面体の頂点を追加する手法である。すなわち、四面体の頂点位置における地 震波速 度をパラメーターとして、全体の再構成を行わずに、一個からのパラメーターを追 加でき る。このことによって、構造の逐次的細分化と逆問題を交互に行う自己最適化戦略 が可能 となった。
この 戦略は、これまで他の構造表現方法に対しては提案されていた。主な利点は、構造 全体を 試行錯誤的に何度も再構成するよりも計算量が少なぃことである。今回、デローネ 四面体 分割に対してこの戦略を用いるのは初めての試みである。一般に、走時トモグラフ ィにお けるパラメーター配置の自由度および適切性と、その算出に必要な計算時間の間に は ト レ ー ド オ フ が あ る 。 本 手 法 は そ の ト レ ー ドオ フの 妥 協点 を見 出し たと いえ る。
全域 的なパラメーター配置の適切性を評価する定量的規準値の適用については、比較的 少ない 計算量で導出できる規準値がすでに提案されている。パラメーター追加位置の判定 方法に ついては、まず、パラメーター(頂点)追加位置を四面体の重心とすることで、追加 位置判 定問題を四面体の順位付け問題とする。順位判定の規準は互いに異なる方向性をも つニつ の規準を交互に用いた。ひとっは、試行的に追加した際の基準値の変化を調べる方 法であ る。これは波線同士の交差性を重視する評価となっており、「頂点逐次添加法」がト モグラ フアに内部的に組み込まれたことで初めて可能となったといえる。もうーつの評価 基準は 、波線密度とグリッド密度が一致することだけを重視する既存の基準であり波線の 交差性 の検出能カは無い。
従来 のロバストな波線追跡法の四面体分割への拡張法の開発については、ネットワーク 最短経 路問題を応用した手法を用いた。これはすでに規則的なグリッドモデルに対しては 提案さ れていたが、本研究により、不規則四面体分割されたモデルについても十分に適用 できる ことが明らかになった。
以 上のことを採り入れた総合手法を用いて仮想構造モデルによる数値実験を行った結 果、基 準値は従来の手法を用いた場合に比ベ高い値を示した。したがって、本手法は、従 来の規 則的なグリッドモデルの欠点であった、波線の分布に対するグリッドの過不足を調 整し、 適切な位置にグリッドが配置された解を導くことを可能にしたといえる。また、結 果 が グ リ ッ ド 追 加 位 置 の 判 定 方 法 対 し て 非 常 に敏 感で あ るこ とも 明ら かに なっ た。
今回提 案するニつの評価基準の交互使用は、それぞれ単独での使用よりも適切性が高い結 果を導 くことが数値実験で確かめられた。今後この点に着目し、より良い評価規準が得ら れる応 用問題を広く吟味することが今後の課題である。
これ を要するに、著者は、地震波トモグラフィについて媒質分割の自己最適化手法の開 発に関 する新知見を得たものであり、今後地下構造の解明において物理探査で基礎的貢献 をなす ところ大なるものがある。
よっ て著 者 は、 北海道大学博 士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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