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九州大学旧六本松キャンパスの実在校舎を対象とした耐震補強と水平加力実験 [ PDF

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Academic year: 2021

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九州大学旧六本松キャンパスの実在校舎を対象とした耐震補強と水平加力実験

1. はじめに  本研究は,九州大学キャンパス移転に伴い撤去され る予定の六本松キャンパス内の実在建物(3号館およ び4号館)を対象として,静的水平加力実験を実施し、 当該建物の耐震性能について検討を行うことを目的と している.4号館校舎(昭和 46 年竣工)では,耐震診 断による耐震性能評価と加力実験の結果を比較するこ とにより,今後の耐震診断に寄与するデータの取得を 目指す.3号館校舎(昭和 38 年竣工)では,耐震補強 施工実験ならびに補強後の校舎の耐震性能を調べる加 力実験を行う.この耐震補強法は,圧縮抵抗型のCFTブ レースによるもので,従来にない簡易施工が可能な点 が特徴であり,実験室での実験的研究と解析的研究を 進めてきた1)~4).実在の建物に本補強法を適用し,施工 性と耐震性を実証して,今後の文教施設等に対する有 力な耐震補強法として提示することを目的としている. これらのうち,本報では3号館の耐震補強設計と実験 結果について述べる. 2. 実験対象建物の概要  本研究で実験対象とする建物の配置図を図1に示す. 北側に正門があり,その正面に本館が位置している.そ の本館東側に位置する3号館と4号館を実験対象とし た.本報で述べる3号館校舎は,東西方向に長いL字の 平面形状を有する 3 階建 RC 造校舎で,東西方向につい ては,桁行き方向 14 スパン,梁間方向 3スパンである. コンクリート強度は22.1MPa,柱主筋(22φ)の降伏強 度は 308N/mm2であった. 3. 実験試験体  図2に,図1の斜線部分を抜き出し,切断位置と補強 箇所を示す.図に示す位置で切断し,⑦‐⑧スパンを加 力実験試験体とした.試験体クリアランスを 250mm 以 上設けるものとして切断している.なお,基礎梁および 1階スラブは切断していない.  既存RCフレームの補強として,1階と2階にそれぞ れ□ 200 × 200 × 6 と□ 175 × 175 × 6 の角形鋼管にコ ンクリートを充填して作成した CFT ブレースを設置し 平紙 裕文 図2 3号館切断位置と補強箇所 a)1階平面図 b)立面図(A 通り) 3600 3600 3600 3600 3600 ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ 36 00 36 00 36 00 10 00 切断 切断 図1 配置図 3600 3600 3600 3600 3600 ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ A B C D 63 00 25 00 52 00 切断 切断 試験体側 反力側 補強箇所 4号館 3号館 運動場 国道202号線 図書館 正門 本館 た.図2に示すように,設置箇所は1階と2階の⑦‐⑧ スパンと⑨‐⑩スパンの A 通り・D 通りの計8箇所と なっている.  補強フレームの詳細を図3に示す.これは,⑦‐⑧ス パンの A 通りについて示している.図2の a)と図3か らわかるようにCFTブレースは室内側に設置している. 実験では,図に示すように,2階に 1000kN 油圧ジャッ キを2機,3階に2000kN油圧ジャッキを1機設置し,繰 返し水平力を載荷した.  本実験では柱のせん断破壊を避けるため,実験用ス リットを設けた.実験用スリットは,汎用されている構

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68-2 造スリットとは仕様が異なり,腰壁を柱から完全に絶 縁するため,幅100mm以上の十分な間隔を設けている. 4. 補強設計  本実験では,試験体の風上柱の引張降伏が先行する ように,CFTブレースの断面を設計した.ブレースに使 用した角形鋼管の機械的性質を表1に示す.コンク リートの諸元を表2に,コンクリートの調合表を表3 に示す.混和材には,フライアッシュを使用している. スランプフローは 57.5cm で,フロー時間は 18.1 秒の高 流動コンクリートを使用した.このコンクリートを鋼 管ブレースへの充填とブレース接合部の作成に使用し ている.3 本のシリンダー試験による平均強度は, 71.4MPaであった.  図4に A 通りの無補強架構の断面力図を示す.図の Qc・Mcは,柱のせん断力・曲げモーメントで,Qbは梁 のせん断力である.図の純フレームは柱が曲げ降伏す るとして計算しており,柱断面の曲げ終局強度 Muが分 かれば,崩壊メカニズム時の水平耐力Pnを特定できる. Muは「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準」 5)の終局曲げ耐力式で算定した.P nは 458kN であった.  補強架構周辺の力の釣合いを図5に示す.ここでは, 2階梁と3階梁に同一の水平力 P が作用すると仮定し た.1層の柱が引張降伏すると連層耐震壁と同様に,補 強架構が全層にわたり回転すると考えられる.図の破 線で切り出した自由体について,A 点を回転中心とし, 鉛直荷重Wiと柱の降伏軸力N(=937kN)による力のモーy 図3 補強フレーム詳細 メントと水平加重による力のモーメントの釣合いによ り,風上柱引張降伏時の補強架構の計算耐力を求めた. 補強架構が負担する1階の水平力P(=2P)は890kN,ブf レースの負担軸力NBDは863kNであった.なお,この検 討において,直交梁の影響は考慮していない.  A通りについて,無補強架構と補強架構の1構面あた りの計算耐力を表4に示す.1構面の耐力は,無補強架 構と補強架構を比較すると,約2倍の耐力増大が期待 できることがわかる.  ブレースの軸圧縮耐力NBUは,次に示す「コンクリー ト充填鋼管構造設計施工指針」6)の CFT中柱の軸圧縮耐 力式を使用して算定した.ブレースの座屈長さをブ レース材長の 0.7 と仮定すると,NBUは 4150kN となる. 規格 降伏強度(MPa) 降伏ひずみ(%) 引張強度(MPa) 降伏比 □-175×175×6.0 405 0.197 489 0.83 □-200×200×6.0 STKR400 400 0.195 485 0.83 表1 鋼材の機械的性質 呼び強度

(MPa) シリンダー強度(MPa) ヤング係数(GPa) スランプフロー(cm) 空気量(%) ブレース 60.0 71.4 42.2 57.5 2.9 表2 コンクリートの諸元 表3 コンクリートの調合表 水 セメント 細骨材 粗骨材 混和材 170 430 722 891 120 39.6 46 単位重量 (kg/ ) 水セメント比 (%) 細骨材率(%) 図4 無補強架構の断面力図 図5 補強架構周辺の力の釣り合い 表4 計算耐力 Pn=458kN N=368kN Mc=328kN N=461kN Qb=247kN Mc=473kN Mu=321kN Mu=180kN Mc=283kN Mc=643kN QC=162kN QC=295kN Mu=180kN Mu=321kN 無補強架構 (kN) 補強架構(kN) 補強/無補強 計算耐力 (1構面) 458 890 1.9 3122 3600 3083 ⑧ ⑦ 36 00 36 00 36 00 65 0 85 0 85 0 70 0 175 17 5 65 0 70 0 スリット 2000kNジャッキ 1000kNジャッキ ×2 h A L Ny W3 NBD W2 W1 Qc P P 接合鋼板 PL-6 接合鋼板 PL-6 CFTブレース □175*175*6 CFTブレース □200*200*6

A

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68-3 図6 ブレース設計フロー 図8 側面支圧面積 図7 接合部水平力負担図 図9 水平力 Q‐層間変形角 R 関係 図 10 載荷プログラム -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1

1.5 層間変形角層間変形角層間変形角層間変形角((((×××10×101010----2222radrad))))radrad

0.25 0.5 0.75 1.0 1.5 ブレースの断面設定 ブレースの断面設定 接合部耐力の検討 END OK NG OK 接合部の設計 接合部の設計 NG 3 1 2 Q Q Q 1 2 j P Q Q Pj Q3 j f P P 表5 実験耐力と計算耐力 実験値 Pexp 計算値 Pf Pexp/Pf 崩壊機構形成時 耐力 (kN) 2886 1.17 最大耐力 (kN) 3552 2477 1.43 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 4000 -2 -1 0 1 2 Q (k N) R (×10-2rad) ● 最大耐力発揮点 3552kN ● 崩壊機構形成時耐力 2886kN ブレースは 5 倍程度の安全率を有している.  図6にブレース接合部の設計手順フローを示す.ブ レースの断面を決定した後,パンチングシアと支圧に ついての検討を行う.  図7に接合部において,仮定した水平力の分担を示 す.Q1,Q2はそれぞれ柱,補強コンクリートのパンチ ングシア耐力である.それぞれのパンチングシア耐力 QPは,下に示す「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐 震改修設計指針」7)の柱のパンチングシア耐力式で算定 する. 0.98 0.1 0.85 P c c av Q A F k (1) 0.72 /(0.76 / ) av k a D (2) / c s y/ c N A A A (3)  ここに,Fcはコンクリート強度,Ac,Asはそれぞれコ ンクリートおよび鉄筋の断面積,yは鉄筋の降伏強度, kavはせん断スパン比(a/D)による強度低減係数で,a=0 とし,繰返し載荷による低減係数 は0.8で計算した.補 強コンクリートのパンチングシア耐力においては,N=0 とし,補強コンクリート強度および断面積を用いて計 算した.また,補強コンクリート中のアンカー筋を考慮 した.Q1と Q2はそれぞれ 1572kN と 361kN となった.  ブレースに軸力が導入されると,接合部の高流動・高 強度コンクリートを介して,躯体の柱側面に圧縮力が 作用する.この際,躯体部分の普通コンクリートが支圧 により破壊することが危惧される.ここでは,ブレース の偏芯を考慮し,局所破壊をする部分を図8の斜線部 分と仮定し,この面積に Fcを乗じて計算を行った.そ の結果,側面支圧耐力は 2433kN となった.設計フロー より,接合部耐力 Pjは柱および接合部コンクリートの パンチングシア耐力を足し合わせたもので決定され, 1933kNとなった. 5. 実験結果  実験で得られた試験体の水平力Q‐層間変形角R関係 を図9に示す.図中には計算により求めた試験体全体 の正側と負側の水平耐力を,点線により示している.実 験は,図 10 の載荷プログラムに従って行った.正側加 力時において,R=0.6/100rad. で風上柱の主筋が降伏し, 想定通りの崩壊機構を形成した.その時の水平力は 2886kNであった.その後,耐力は変形とともに増大し, R=1.35/100rad.で最大耐力 3552kN を発揮した.  実験耐力と計算耐力の比較を表5に示す.表より,風 上柱の主筋の降伏時耐力は,計算耐力より 17%大きい 値となっている.崩壊機構形成後も,耐力が増加してい るのは,直交梁の押さえ効果と主筋のひずみ硬化によ るものだと考えられる.  1階の C8 柱と D8 柱の鉛直ひずみ wc‐R 関係を図 11 に示す. wcは変位計より得られた柱の鉛直変形を検長 水平力 Q1:柱のパンチングシア耐力 Q2:補強コンクリート パンチングシア耐力

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68-4 図 13 包絡線        A8 柱   C8 柱 図 11 1階柱の鉛直ひずみ - 層間変形角 R 関係 -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 -2 -1 0 1 2 εw c (% ) R (×10-2rad) 表6 CFT ブレース負担軸力 -0.25 -0.2 -0.15 -0.1 -0.05 0 0.05 -2 -1 0 1 2 εgb (% ) R (×10-2rad) 降伏ひずみ εy -0.25 -0.2 -0.15 -0.1 -0.05 0 0.05 -2 -1 0 1 2 εgb (% ) R (×10-2rad) 降伏ひずみ εy 図 12 CFT ブレースの軸方向平均ひずみ ‐R 関係   D 通り   A 通り -0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 -2 -1 0 1 2 εw c (% ) R (×10-2rad) で除して算定した.柱主筋の降伏ひずみは0.17%で,図 に点線で示している.本補強法では,崩壊機構の形成を 正側加力時の風上柱の伸びにより判定できる.D8 柱が それに当たる.図より,R=0.6/100rad.で降伏現象が確認 され,この時点で風上柱の引張降伏による崩壊機構が 形成されたことがわかる.その後も鉛直ひずみは漸増 し,最大で1%に達している.C8柱は,補強されていな い構面の柱であり,正側加力時においてD8柱ほど大き な伸びとなっていない.C8 柱と D8 柱の伸びの差から, 直交梁による補強構面の押さえ効果を評価できるが, 現時点では検討が進んでおらず,今後の課題としたい.  試験体のCFTブレースの軸方向平均ひずみ gb‐R関係 を図 12 に示す.gbは,ブレース中央部に貼付した4面 のゲージデータの平均を用いている.実験終了のR=1.5/ 100rad.まで弾性範囲内に収まっており,ブレースの座 屈が起こらなかった実験の観測と一致する.負側加力 時においては,ひずみは0となり,引張力を全く負担し ていないことがわかる.また,最大耐力発揮時のCFTブ レースの負担軸力NBEと計算軸力NBD,軸圧縮耐力NBU表5に示す.実験における負担軸力 NBEは,図 12 のブ レースの最大ひずみに軸剛性をかけて求めた.A通りお よび D 通りともにブレース負担軸力は実験値が計算値 を上回っている.ここでも,図9と同様に計算値は実験 を過小評価している.  図13に試験体のQ‐R関係の正側加力時における包絡 線を示す.図には,風上柱の引張降伏時における試験体 全体の耐力を点線で,接合部耐力を基に求めた試験体 全体の耐力を一点鎖線で示す.また,ブレースの座屈耐 力により決まる試験体全体の耐力を二点鎖線で示して いる.図より,接合部破壊により決まる耐力とブレース 座屈により決まる耐力は風上柱の引張降伏により決ま る耐力のそれぞれ 1.9 倍,2.7 倍程度となっていること がわかる.実験結果から,設計で意図した破壊機構が形 成されたことがわかる. 6. 結論  本報では,CFT ブレースを用いた耐震補強法の設計 と実験結果について述べた.得られた結果を以下に列 挙する. 1)補強架構の破壊機構として,ブレースの座屈,風 上柱の引張降伏および接合部の局所破壊を仮定し, それぞれの耐力の算定法を示した.この検討に基 づき,本試験体を風上柱の引張降伏が先行するよ うに補強を行った. 2)水平加力実験を行なった結果,補強試験体は設計 で意図した風上柱の引張降伏による崩壊機構を示 した.この時の耐力は計算により 20%程度の誤差 で安全側に推定できた. 【参考文献】 1)北島 幸一郎,中原 浩之,崎野 健治:CFT圧縮ブレースを用いたRC造架構の耐震 補強法に関する実験的研究,コンクリート工学年次論文報告集,Vol.30, No. 3, pp.1573-1578, 2008年 7 月 2)中原 浩之,北島 幸一郎,崎野 健治:RC造建物を対象とした圧縮ブレース補強法の 耐震性能改善効果に関する解析的研究,コンクリート工学年次論文報告集,Vol.30, No. 3, pp.1579-1584, 2008年 7 月 3)北島 幸一郎,中原 浩之,崎野 健治:偏芯梁を有する RC 造架構の CFT 圧縮ブレース による耐震補強に関する実験的研コンクリート工学年次論文報告集,Vol.31, No. 2, pp.1039-1044, 2009年 7 月 4)中原 浩之,崎野 健治,北島 幸一郎:地震被害にあったRC造建物の構造性能の検討 とその耐震補強に関する解析的研究,コンクリート工学年次論文報告集,Vol.31, No. 2, pp.1111-1116, 2009年7月 5)日本建築防災協会:2001 年改訂版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・同 解説,2005.2. 6)日本建築学会:コンクリート充填鋼管構造設計施工指針,第2版,2008.10. 7)日本建築防災協会:2001 年改訂版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計指 針・同解説,2005.2. NBE (kN) NBD (kN) NBE/NBD NBU  (kN) NBE/NBU A通り 1227 863 1.42 0.30 D通り 1362 840 1.62 4150 0.33 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 0 0.5 1 1.5 Q (k N) R (×10-2rad) 風上柱の引張降伏耐力:2477kN 接合部耐力:4679kN ブレース座屈破壊耐力:6773kN

参照

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