行政マネジメント部門
○:発表者 5日(木):No. 1~No.12
日付 時間 № 所 属 氏 名 課 題 名 頁
10:00~10:20 1 東京国道 織地オ リ ジ 啓ケ イ 上野駅における違法設置物件対策の取り組み 495
10:20~10:40 2 河川部 松岡マツ オカ 明アキラ 低潮線保全区域の巡視について 499
10:40~11:00 3 用地部 上野ウ エ ノ 拓哉タ ク ヤ 物件移転期限を徒過した相手方に対する法的措置について 503
11:00~11:15
11:15~11:35 4 下館河川 ○若旅ワ カ タ ビ 勝弘カ ツ ヒ ロ 郡司グ ン ジ 隆タカシ
入札・契約手続に係るミス事例の研究について 507
11:35~11:55 5 宇都宮国道 高橋タ カ ハ シ 忠タダシ 利根川橋旧橋撤去に伴う発生品の処分について 511
11:55~12:15 6 総務部 ○松井マ ツ イ 道宏ミ チ ヒ ロ 古谷フ ル ヤ 靖ヤスシ
車両管理業務委託における総合評価方式の導入 515
12:15~13:15
13:15~13:35 7 八ッ場ダム 泉田イ ズ ミ ダ 絵美エ ミ 樺太に本籍地を有していた者の戸籍調査について 517
13:35~13:55 8 北首都国道 関口セキグチ 淳ジュン 法定相続人が多数存在する土地の用地取得について 521
13:55~14:15 9 常総国道 岩間イ ワ マ 真実マ ミ 成年後見人の選任について 523
14:15~14:30
サキムラ タ イ キ 持続的に鮮度を保つデータベースシステムの紹介 ~荒川上
平成24年度スキルアップセミナー関東 発表課題
<会 場>共用大会議室(501①)
休憩 休憩
休憩・昼休み 5日
14:30~14:50 10 荒川上流 﨑村サキムラ 大樹タ イ キ 持続的に鮮度を保つデ タベ スシステムの紹介 ~荒川上
流管内データベースシステムの構築~ 527
14:50~15:10 11 常陸河川国道 平舘ヒ ラ タ テ 治オサム 水生生物調査による広報活動を通じた河川環境の保全 531
15:10~15:30 12 ひたちなか市 井上イ ノ ウ エ 亨トオル 勝田駅東口地区第一種市街地再開発事業について -賑わ
い・快適空間の創出- 535
アカウンタビリティ部門
6日(金):No. 1~No. 6
日付 時間 № 所 属 氏 名 課 題 名 頁
9:45~10:05 1 (独)水資源機構
武蔵水路改築建設所 神田橋カ ン ダ バ シ 修オサム 住民参加による周辺整備計画について 539
10:05~10:25 2 横浜国道 加藤カ ト ウ 祐哉ユ ウ ヤ 遮音壁設置における地元合意形成について 543
10:25~10:45 3 二瀬ダム 渡邉ワ タ ナベ 恭章ヤスアキ 水源地域を守る -ダムと水源地域活性化- 547
10:45~11:00
11:00~11:20 4 大宮国道 飯島イ イ ジ マ 徹トオル 地元小学生を対象とした圏央道現地学習会の実施について 551
11:20~11:40 5 東日本高速道路㈱
横浜工事事務所 富澤ト ミ ザ ワ 敦アツシ よこかんみなみ 合意形成に向けた広報の取組みについて 555
11:40~12:00 6 甲府河川国道 山田ヤ マ ダ 直ナオ 広報の取り組みについて~出前講座~ 557
休憩 6日
低潮線保全区域の巡視について
河川部 河川管理課 松岡 明
1.はじめに(背景)
海洋に関する施策を総合的かつ 計画的に推進し、我が国の経済社 会の健全な発展及び国民生活の安 定向上を図るとともに、海洋と人 類の共生に貢献することを目的に 平成19年7月「海洋基本法」が 施行された。さらに我が国の領海 や排他的経済水域(EEZ)等に おいて適切な権利の行使等海洋管 理のための「海洋管理のための離 島の保全・管理のあり方に関する 基本方針」(以下、「離島基本方針」
という。)が決定された。
離島基本方針では「低潮線を変更させるような行為の制限」等のための法制度の整備が 進められ、「排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び 拠点施設の整備等に関する法律」(以下、「低潮線保全法」という。)が、平成22年5月 26日成立し、平成22年6月2日に公布された。
・我が国は国土面積(約38万
km2)の約11倍の世界有数の排他的経済水域の面積(約
405万km2)を設定。
・排他的経済水域等には、コバルトリッチクラスト、レアメタル、メタンハイドレート 等の海底資源エネルギーが多数賦存。
・排他的経済水域の等の確保に資する低潮線の保全が緊急の課題。
2.低潮線保全法と基本計画
低潮線保全法では、「低潮線保全区域の指定と行為規制」と「特定離島の指定と特定離 島港湾施設の整備等」により排他的経済水域と大陸棚を保全し、利用を促進することが位 置づけられており、基本計画概要としては、下記のとおりである。
①低潮線及びその周辺の調査と情報の集約、低潮線保全区域における行為規制
②特定離島を拠点とする排他的経済水域等の保全及び利用に関する活動目標
③拠点施設の整備
出典:海上保安庁海洋情報部HP
3.低潮線保全区域とは
「排他的経済水域等の限界を画 する基礎となる低潮線等の周辺の 水 域 で 保 全 を 図 る 必 要 が あ る 区 域。」
4.低潮線保全区域では
①状況調査、巡視等(低潮線保全法第4条)
基本計画に基づき、排他的経済水域等の保全及び利用の促進のため、衛星画像や防 災ヘリコプター等を活用し、低潮線及びその周辺の人為的な損壊や自然浸食等の状 況調査、巡視を行う。
②行為規制(低潮線保全法第5条)
低潮線保全区域内において、海底の掘削等低潮線の保全に支障を及ぼす恐れがあ る行為をしようとする者は国土交通大臣の許可を受けなければならない。
5.関東地方整備局の取り組み
低潮線保全法及び基本計画に基づき、関東 地方整備局では、低潮線保全区域内の海底の 掘削等に関する行為規制、低潮線及びその周 辺の状況調査・巡視を実施。
関東地整河川部・・・・・45区域を所管。
港湾空港部・・・ 5区域を所管。
低潮線保全区域の巡視箇所
地方整備局等 都道府県 区域数 合計 北海道開発局 北海道 48 48
青森 1 岩手 4 宮城 3 福島 1 千葉 4 東京 46 北陸地方整備局 石川 2 2 近畿地方整備局 和歌山 2 2
島根 1 山口 1 四国地方整備局 高知 3 3
福岡 1 長崎 26 鹿児島 4 沖縄総合事務局 沖縄 38 38
合計 16 185 185
九州地方整備局 31
低潮線保全区域(都道府県別)
中国地方整備局 2
東北地方整備局 9
関東地方整備局 50
西之島 〈父島から約130km〉
沖ノ鳥島
南鳥島 銚子・犬吠埼
孀婦岩 〈八丈島から約360km〉
八丈島 〈東京から約290km〉
ベヨネース列岩 〈八丈島から約120km〉
須美寿島 〈八丈島から約200km〉
鳥島 〈八丈島から約290km〉
聟島 〈父島から約70km〉
嫁島 〈父島から約40km〉
父島 〈東京から約970km〉
母島 〈父島から約40km〉
北硫黄島 〈父島から約200km〉
硫黄島 〈父島から約260km〉
南硫黄島 〈父島から約320km〉
5.1 平成23年度巡視前の課題
①関東地整管内は低潮線保全区域のほとんどが離島。 → 巡視手段の検討
②他機関との連携検討
・海上保安庁測量船への同乗 須美須島
・東京都漁業調査船ドック時の同乗 (東京から
・漁船借り上げの可否 約
500
㎞)②関係機関との調整 巡視状況
・漁船借り上げの際の条件
5.2 平成23年度実施内容
①巡視区域:22区域
②巡視方法
・防災ヘリコプター(あおぞら号)の利用
・直轄維持工事船舶の利用(離島部)
・東京都漁業調査船による巡視(離島部)
③巡視結果:制限行為等なし、明確な地形変化等無し
④他機関との連携
・東京都漁業調査船(興洋)ドックに合わせた低潮線の巡視
・海上保安庁からの航空写真の提供依頼及び灯台への立ち入り調査の可否
・関係漁協への低潮線保全法の説明及び漁船を利用した巡視の可否について調整
東京都漁業調査船(東京都
HP
より) 関係漁協への説明⑤低潮線保全官等ブロック連絡会開催
・関東地方低潮線保全区域に係る関係行政機関の対応等について、総合的に連絡調 整し、排他的経済水域等の保全に資することを目的
⑥H23年度巡視時の課題、改善への取り組み
・東京都漁業調査船による巡視では、海底状況を見ながら保全区域に接近し、全方 向から撮影を行った。
・防災ヘリコプター搭載カメラによる写真撮影箇所の把握が難しい(ヘリ搭載カメラ とGPSが連動していないため、撮影写真を見ながら動画で位置を確認するしかな い)
北方向から撮影
・離島部はアップだけではなく、遠景状況写真も必要。
・防災ヘリコプターでの撮影は、高度を上げて陸地との関係がわかるように撮影し
た方がよい。 九州地整看板設置事例
5.3 平成24年度実施内容
①巡視区域43区域予定
②巡視方法
・防災ヘリコプター(あおぞら号)の利用
・直轄維持工事船舶の利用(離島部)
・東京都漁業調査船による巡視(離島部)
・漁船借り上げによる巡視(離島部)
③他機関との連携
・東京都漁業調査船(みやこ、たくなん及び興洋)の協力による巡視
・関係漁協との契約による巡視
・海上保安庁からの航空写真の提供
④看板設置
・低潮線保全区域に容易に接近でき、海底の掘削等人為的損壊行為が可能であると 判断される箇所で、周知看板の設置の検討。
6.今後の課題
平成23年度関東ブロック連絡会を開催したことにより、関係者との連携調整等低潮線 保全に関する事項の協力体制は確立された。巡視の課題としては、現地が潮位の影響を受 けるため、潮位情報を元に巡視計画を立案する必要ある。
関東地整として、独自の巡視手段は防災ヘリのみとなっており、平成24年度は漁船を 活用した巡視を実施する予定であるが、職員の安全確保も大きな課題と考えている。
また、平成24年度は、低潮線保全の取り組み強化として、違反行為や台風等の自然災 害等に対する活動計画の検討等を行う予定。
なお、巡視により、低潮線保全区域の変状等を発見した際の関係機関との連絡体制の確 保が急務である。
7.終わりに
低潮線保全区域の巡視等は我が国の天然資源の探査及び開発、海洋環境の保全その他の 活動の場として重要な排他的経済水域及び大陸棚の基点である低潮線の保全を図るため極 めて重要なものである。このため、関東地整においては、今後も低潮線及びその周辺の状 況調査・巡視に取り組んでいく予定である。
なお、低潮線保全に関する事務は地整職員も初めての事務であり、手探りで状態で実施 しているが、各関係者においては低潮線保全の重要性をご理解・ご協力いただき御礼申し 上げます。
移転期限を徒過した相手方に対する法的措置について
用地部用地企画課
上野拓哉1.背景と目的
昨今、時間コストをできるだけ抑えた効率的な事業実施が求められており、そのために は用地契約から引き渡しまでの計画的な工程管理と実務の円滑化・迅速化が不可欠である。
ここでは、移転期限までに建物等を移転し土地を引き渡すことを主旨とした土地売買契 約(物件移転補償を含む)締結後に、相手方が契約書で合意済みの移転期限までに建物を 移転せず、事業進捗に重大な支障を及ぼしかねない事例が発生したことから、このような 事案が発生した場合において契約内容の義務の履行を確保するために必要な措置として、
訴訟手続きにより解決を図った案件について説明するものである。訴訟手続きに移行する ことにより早期の解決につながった事例もあり、今般、その経緯等について手続きの概要 と課題について以下で述べる。
2. 本件事案の概要
当局の直轄道路事業において、平成20年5月に土地売買契約を締結し、平成22年3 月の土地引渡し期限までに建物の移転がなされなかったことから、契約不履行の状況に至 った。その後、催告を行ったものの契約書上の義務が履行されず、履行の遅延は、平成2 4年度中の供用に向けた工事工程に支障をきたす恐れがあった。このような状況に対し、
国は土地売買契約日をもって土地所有権を取得済みであり、土地の所有権移転登記は契約 締結後に完了していることから、契約義務の履行を請求する民事訴訟手続きを行うことで、
義務履行の確保を図った案件である。
3.全体の流れ
3
.1
用地取得の流れ用地取得は、用地調査・補償金算定を経て補償説明・協議を行い、土地売買契約を締結 し、登記・建物等物件の移転を経て、土地の引渡しを受け完了する。用地取得の目的は、
事業施行に必要な土地の確保であり、土地売買契約により土地の所有権を取得し、建物等 が存する場合は移転費用を補償することで、更地とした上で引き渡しを受けるものである。
この契約を締結すると、相手方には、契約書で合意した移転期限までに建物等を移転する 義務(以下、「当該義務」という。)が生じることとなるため、契約締結に際しては、相 手方の移転先確保状況等を十分に確認することとしている。
相手方が期限までに建物等を移転しない場合は、地方整備局用地事務取扱規則では「当 該義務の履行を催告するとともに、当該義務の履行を確保するために必要な措置を講じな ければならない。」と定められており、さらに関東地方整備局用地事務取扱細則では「必 要に応じて民事訴訟法による手続き又は道路法、河川法等に規定する監督処分を行うよう 事務所長が局長へ上申する」こととしており、まずは状況確認と移転催告を行うが、それ でも履行しないときは、訴訟手続き・監督処分等の措置を行なわざるを得ない。
3
.2
民事訴訟の流れ土地の買主である当局は、土地売買契約に基づき、相手方に対して履行期限までに建物 を撤去して土地を明け渡すことを請求する権利(建物収去土地明渡請求権)を有する。こ の請求権を最終的に強制執行というかたちで実行し、土地の引渡しを受けるために、建物 収去土地明渡請求訴訟の提起依頼を地方法務局あてに行う。
このとき同時に、仮処分命令の申立依頼を行う。その後、本案訴訟を経て、最終的には 強制執行手続を行うことになる。しかしながら本件事案では、仮処分命令が強力な催告と なって本案訴訟に移行する前に相手方が自主的に建物等を撤去するに至ったことから、こ の仮処分について詳しく説明していくこととする。
民事訴訟工程(通常)
※相手方から控訴された場合などは、さらに上訴事件として数ヶ月は要する 建物収去土地明渡訴訟提訴
(地方法務局⇒地方裁判所)
判決確定(勝訴)
建物収去(代替執行)の実施 土地明渡しの執行 執行官による執行
訴訟提起及び仮処分申立依頼(局⇒地方法務局)
占有移転禁止の仮処分 命令申立
処分禁止の仮処分命令 申立(建物が有る場合等)
決定 決定
仮処分執行申立 裁判所による嘱託登記
仮 処 分 手 続
(
3~ 6 ヶ 月)
本 案 訴 訟 手 続
(
3~ 6 ヶ 月)
強 制 執 行 手 続
(
6~ 1 2 ヶ 月)
4.仮処分 4.1 仮処分とは
仮処分には「係争物に関する仮処分」と「仮の地位を定める仮処分」の二種類がある。
「係争物に関する仮処分」とは、物に関する請求権を保全するための仮処分であり、「仮 の地位を定める仮処分」とは、争いのある権利関係について生ずる損害や危険を避けるた めの仮処分である。
本件は、係争物に関する仮処分を行った事例である。これは、現状が変更(=建物等が 第三者に売却等されるもしくは占有移転される等)されることにより、債権者(=当局)
が、権利(=契約に基づく建物収去土地明渡請求権)を実行することができなくなるおそ れがあるときに、採用される仮処分である。
なお、仮の地位を定める仮処分としては、債権者に回復しがたい著しい損害または急迫 の危険を避ける必要がある場合に認められ、判決に基づく強制執行と同一の状況を仮に実 現させることとなる「断行の仮処分」が代表的なものとして挙げられる。
4.2 仮処分を行う目的
係争物に関する仮処分は、建物等の所有者及び占有者を恒定するために行う。訴訟手続 き上、必須ではないが、仮処分手続きを行うことにより、訴訟手続きの長期化を未然に防 止することが可能となる。
具体的には、訴訟提起後、相手方が建物等を売却するなどして建物等の所有者や占有者 が変わってしまった場合、再度相手方を変更して裁判を最初からやり直さなければならな い。この場合、判決を得て強制執行に至るまでの期間がやり直しに掛かった分だけ長くな り、土地の引き渡しが遅れることになる。裁判のやり直しを防ぐために、早い段階で占有 者と所有者を恒定しておくところにこの仮処分の意味がある。本件では、以下の2つの仮 処分申立を行った。
4.3 占有移転禁止の仮処分と不動産処分禁止の仮処分
占有移転禁止の仮処分とは、占有している者に対して、その占有を移転する行為を禁止 する仮処分のことをいう。仮処分後に第三者が建物等を占有し始めた場合、強制執行の段 階でその第三者が建物等の占有を続けていても、その第三者に対して強制執行を行うこと ができるようになる。
不動産処分禁止の仮処分とは、相手方に対して、第三者への建物の売却等を禁止する処 分のことをいう。仮処分決定が下ると、地方裁判所により支障建物に処分禁止の登記がな される。この登記がなされると、当局が当該建物の処分について第三者対抗要件を得る。
つまり、仮に処分禁止の登記の後に第三者が当該建物を譲り受けた場合でも、その第三者 に対して強制執行をすることができるようになる。
4.4 仮処分の流れ
国の利害に関係する訴訟に関しては、一元的に法務局が行うこととなっている。このた め、まず当局から地方法務局へ①建物収去土地明渡訴訟の提起依頼と②仮処分の申立依頼 を同時に行う。これを受けて地方法務局が地方裁判所へ③仮処分申立(その後担保金の供 託)を行う。担保金を供託する目的は、保全処分の執行が違法または不当であった場合、
相手方が被るおそれのある損害を担保するためである。地方裁判所にて④仮処分決定が下 されると、裁判書書記官により不動産について処分禁止の仮処分の登記がなされる。その 後、地方法務局が⑤占有移転禁止の仮処分の執行申立を地方裁判所宛てに行う。最終的に 地方裁判所の執行官が⑥占有移転禁止の仮処分を執行(公示書貼り出し、公示看板設置)
し、建物等の権利関係が固定される。
4.5 公示書の内容
公示書には、以下の内容が記載されている。
(1)債務者(相手方)は、建物について、譲渡その他一切の処分をしてはならない。
(2)債務者(相手方)は、建物の占有を他人に移転し、又は占有名義を変更することを
禁止されている。(3)執行官は、建物に対する債務者の占有を解いてこれを保管中である。ただし、債務者
(相手方)に限り、使用を許した。
5. まとめ
今回の案件のように、仮処分執行により相手方が自主撤去に応ずることで短期間(訴訟 提起依頼から約半年)で解決が図れるケースもある。一方、本案訴訟手続きに移行した場 合、訴訟提起から強制執行まで相当期間かかることが想定され(先例では2年以上要した ものもある)、多大な時間と労力を要するばかりでなく、事業進捗に多大な影響を及ぼし かねないと思料される。
6.最後に
訴訟手続には上記のような時間的リスクが伴うため、訴訟になる前に相手方に建物等を 移転していただくことが何より重要と考える。そのための対策として考えられることを、
契約締結前と契約締結後に分けて、以下で述べる。
まず契約締結前においては、適切な移転期限の設定が重要である。会計年度を考慮し、
年度末が土地引渡しの最終期限となるが、機械的に移転期限を年度末に設定するのではな く、工事工程上急ぐ箇所は、相手方の都合を十分斟酌しつつ、早めの移転期限を相手方に 提案する必要がある。また、移転の目途が年度を跨ぐ場合は、翌債制度や補償国債制度な どを適切に活用する必要がある。いずれにしても、工事工程を前提として、相手方との十 分な調整がなされることが重要である。
次に契約締結後において、まず重要なことは、用地担当者が「相手方が契約上の義務を 果たしてくれたときに用地交渉は終了するんだ。」という意識を持つことではないかと考 える。具体的には、相手方が移転期限内に移転完了できないような障害が発生していない か状況確認を行い、何か問題があった場合は当局が解決・助力できるものなのかを把握す ることが重要と考える。そして問題を把握後、出来る限りのサポートを行うことが必要で ある。これは、移転期限経過後も同様である。これらを実行するにあたっては、状況確認 をいかに正確に行うかで全ての対応が決まるため、状況確認が最重要となる。特に現場を 担当する事務所は、きめ細かな状況確認のうえで、問題が把握された場合は、速やかに本 局に報告することで、正確な情報の共有が可能になり、結果的に本局としても正確な助言・
指導を行うことができると考える。
それでもなお、相手方が移転をせず、長期化の恐れがある場合は、移転督促と並行しつ つ早めに地方法務局との協議を開始し、訴訟手続きの準備を行うことが重要と考える。
以上
入札・契約手続に係るミス事例の研究について
下館河川事務所 経理課 専門員 ○若旅 勝弘 契約係長 郡司 隆
1.目的・背景
入札・契約手続においては、近年ますます制度が複雑化している中、担当する職員の業 務量は増大しており、また契約手続に精通するまでに時間がかかることから、ミスが発生 し手続取り止め等の事態が生じている。
そこで、どのようなミスがあったのか、ミスによりどのような結果になったのか、ミス を防ぐためにはどういった点に気をつけるべきなのかを考察し、下館河川事務所としてミ ス防止の取り組みを行った。
2.実施内容
2.1 ミス事例の検証
23年度に報告されたミス事例を検証した結果、比較的多かったミスは次のとおりであ った。
①業者選定ミス(評価)
②入札公告等記載ミス
ミスが発生した結果、入札契約手続に公平性・公正性が確保できないと判断された場合 は、手続取り止め・契約解除の措置がとられ、ミスによって発注者・入札参加者及び受注 者に様々な損失が生じることとなる。
2.2 チェック体制の整備
ミスの原因は、単純な見落としによるいわゆるヒューマンエラー、ケアレスミスであっ たり、担当する職員の経験・知識不足によると思われるミスが多いと推察される。
こういったミスを防ぐためには、まずは複数チェックによる体制を整備することが考え られる。そのため下館河川事務所では、平成22年度より計画課内に「入札契約推進室」
を設置し、発注担当課・経理課とそれぞれ連携して図1のようなチェック体制で実施して いる。
工事・業務(企画競争役務含む)それぞれの入札契約手続きにあたって、公告・公示文 の作成から参加希望者から提出された申請書の審査~評価点算出までこの体制の中で行っ ている。
一連の流れの中で、工事・業務それぞれの作成・審査担当者の目も入るが、その後、も う1名担当のチェック、総括の工事品質管理官のチェック及びフィードバックを経て経理 課のチェックも入る。
図1 下館河川事務所入札契約手続関係チェック体制表
このチェック体制の過程を経て間違い等が発見された場合には訂正を行って、最終的に 公告・公示又は入札・開札を迎えている。
なお、工事の入札・開札時においては、入札の3日前を目処に積算担当課から設計書の 提出を受け技官の係長がチェックを行い、仮に不審な点があった場合には積算担当課に確 認を行い、開札に備えている。
2.3 チェックリストの実施
ミスを未然に防ぐためには、チェックリストを作成し実施することも重要であると考え られる。下館河川事務所では平成22年度より図2のような事務所独自に作成したチェッ クリストを実施してきた。
工事・業務別、計画課・経理課別、公告・公示文作成~契約締結時までの手続き毎に作 成されている。
なお、リストの赤字部分は当初作成時にはなかった項目で、リストを使用していく中で 追加した項目である。
図2 下館河川事務所作成チェックリスト
3.成果
上記チェック体制及びチェックリストを使用した結果、平成22年度及び23年度にお いては当事務所で大きなミスは発生しなかった。このことから、成果はあったと考えられ る。
複数の課に跨り、複数のチェック、更には技官・事務官という違った立場の目線も入っ たこの一連のチェック体制が未然に大きなミスを防いだと思われる。
4.考察
平成23年度には、本局契約課で作成されたチェックリスト(図3)が送付されており、
当事務所独自に作成したものと比較したところ、当事務所独自に作成したチェックリスト については、チェックリストの項目は各担当課(発注課・入札契約推進室・経理課)で分 けられており、本局版では同一の項目を各課がチェックするかたちとなっている。この点 では、項目を共有することによりお互いがどこまでチェックしたのかがわかりやすくなっ ていると思われる。
図3 本局作成チェックリスト
5.今後の課題・方針
今後の課題としては、本局版・事務所版のそれぞれ優れていると思われるところを組み 合わせるなど、さらに使い勝手のよいチェックリストを作成することにより、入札・契約 手続事務の効率的且つ円滑な運営を図り、大きなミスだけでなく細かいミスも解消してい く。
チェックリストについては、例えば新たな通知があった際には項目を増やしたり削除し たりと常時改良を検討し、随時見直しを図るものとする。
また、細かいミスもなくすためには、チェックリストだけでなく常に各担当課と連携を 図ることが必要であると考える。そのために、年度当初に事業担当課・計画課・経理課で 打合せを行い、その後は重要な変更があった際にはその都度情報を共有し確認しあうため に打合せを行うこととする。
利根川橋旧橋撤去に伴う発生品の処分について
宇都宮国道事務所 経理課 専門官 高橋 忠
1.事由発生の経緯
埼玉県と茨城県の県境を流下する利根川に架かる国道4号利根川橋については、竣工後 80年以上経過し、老朽化が著しくなったことから、新橋の架設が計画され、平成16年 度から工事に着手、平成21年度には工事が完成し、同年供用を開始、新設橋への交通切 り替えを完了した。これに伴い、役割を終えた旧橋の撤去が始まり、平成26年度には、
撤去が完了する計画である。
今回、この利根川橋旧橋の撤去に際し、橋桁 等に使用されていた鋼材等が不用となり、大量 の鉄屑が発生することとなった。
なお、今回の発生品が生じる撤去工事は、
①4号利根川橋上部工撤去工事
(工期:平成24年6月15日)
②4号利根川橋A1~P2上部撤去工事
(工期:平成24年6月15日) (利根川橋旧橋・撤去工事前の現況) の2本である。
2.問題の所在
今回の撤去工事により発生する鉄屑の総量は、概算でも1,400tに上る。また、そ の鉄屑は一時的にではなく、約6ヶ月の長期間に亘って、次々に発生していく。そこで、
第一の問題として、これらの鉄屑をどこに保管するのか、から始まり、引渡し方法につい て、あるいは売払いの契約手法についてどうするか等、種々の問題が生じた。
以下、これらの問題点を抽出・整理し、それぞれについて、検討を加えてみたい。
2.1 保管場所の問題
2.1.1 保管場所の現状
宇都宮国道事務所管内には、鉄屑等の不用品や工事材料品を保管して置くための資材置 場として、複数の資材置場を有しているが、それぞれの所在地が今回の撤去工事の現場か ら遠隔地にあり、また、近在にある資材置場でも、敷地面積が
2
,600
㎡ほどの広さはあ るが、従前から保管している支給品があり、今回発生する鉄屑を保管する余裕はない。2.1.2 保管場所の検討・選定
上述したとおり、当事務所管内には、発生品を保管して置く場所が見当たらない。
そこで、どんな方法があるのか考えてみた。
○検討1
発生した鉄屑を現場で、直接撤去工事施工業者に取得させ、処分させる。取得した 鉄屑の財産価値分については、請負代金から減額する。この場合、現地で直接業者に
これらの橋桁 等が不用品と なる
引渡すことから、保管場所・引渡し方法の難点をクリアできる。
→歳入・歳出の混同であり、また、物品管理法上財産価値があるものは物品管理官が 取得することとされており、従って、この方法は採用できない。
○検討2
、 、 。
当事務所以外での施設において 保管が可能な場所を見つけ出し そこに保管する
→物品管理法上、支障はないが、他方で借地料等が発生すること、また、仮りに相手
、 、 。
方の好意により 無償で借りられるとしても 盗難の防止の処置をする必要がある
○検討3
工事現場の作業ヤード内に一時的に仮置く。
→河川管理者の同意が前提、上記と同様防犯対策を必要とする。また、長期間に亘る 仮置きは不可。
しかし、上記検討箇所も、管内の資材置場と同様にどれも、1,400tに上る鉄屑を 収容する能力はない。
そこで他方、総量1,400tの発生取得→引渡しというあり方にこだわらず、ある程 度の発生品が出た段階(例えば300~500t)で分割して引渡す売払い方法があるの ではないか、その方法を模索した。
2.2 売払い手順における方策
2.2.1 一般的な売払いの契約手順
1 発生品の取得2 資材置場へ保管・・・このときに、売払いをすべき鉄屑の数量を確定する 3 入札公告
4 現地確認(参加業者による)
5 入札(契約)
6 納入告知書の発行・業者からの入金 7 引渡し
※入札公告の公示から引渡しまで、通常2ヶ月の時間を要する。
2.2.2 鉄屑を分割して引渡す方法の検討
○検討①
・分割総価契約による売払い方式
, 、 、 、
売払い契約を1 400tベースではなく 例えば 600tで数量を確定したら その度に売払いの入札公告を公示、計3回の売払いを実施する。
(契約手順は「一般的な売払いの契約手順 (上記」
2.2.1
)のとおり)→撤去工事は、継続して執行されていることから、売払い手続き期間中にも鉄屑は、
。 。 、
発生する その発生した鉄屑を保管する場所がない 適度な保管場所が複数あれば 対応可能だとしても、売払いをする度に、売払い場所が変わるため、煩雑になる。
○検討②
・総価契約で分割引渡し方式
始めに概算数量(確実といえる数量・今回のケースであれば、1,200t程度)
の総価で売払い契約を締結し、実際に鉄屑が発生する度、その都度契約業者に引渡し ていくという方法。
(契約手順は以下のとおり)
1 入札公告・・・数量はあくまで概数 2 現地確認(参加業者による)
3 入札(契約)
4 納入告知書の発行・業者からの入金
これ以降の作業を複数回に分けて実施し
5 発生品の取得・保管
概数に至るまで、分割して引渡す
6 数量の確定 7 引渡し
→すべての鉄屑の発生するまで、6ヶ月間の長期間を要し、その間に鉄屑の価格変動 が生じてしまうリスクがある。また、撤去工事が中止(事故や施工業者の倒産によ る工事の中止)になった場合、現場発生品が生じることがない。
○検討③
・単価契約による分割売払い方式
一般的な不用品の売払いは、数量を確定した後、総価で契約するのであるが、ここ では、発想を転換し、始めに鉄屑1tあたりの単価で売払い金額を確定する。
その後数量を確定し、引渡そうとするものである。
(契約手順は以下のとおり)
1 入札公告・・・数量はあくまで概数 2 現地確認(参加業者による)
3 入札(契約)
これ以降の作業を複数回に分けて実施
4 発生品の取得・保管
し、概数に至るまで、分割して引渡す
5 数量の確定
6 納入告知書の発行・業者からの入金 7 引渡し
→国土交通省において、不用品の売払いを単価で実施した前例がない。
3.手法の決定
手続きと場所の比較検討
検討項目 判定 理由
手 単価による分割売払い方式 ○ 単価による場合、公告した後で撤去工事の進捗 に合わせて数量を確定でき、数量確定即引渡に 続 分割総価による売払い方式 × より、存置期間の短縮が期待できる。
場 管内資材置場 × →遠方にあり、空間的に余裕がない 他の施設の土地の借上げ × →条件に見合う場所が見つからなかった
所 工事現場作業ヤード内 △ →存置期間を短くし、量も少なくして一時的に 仮置くことが条件
置き場所については、河川管理者と協議を重ねた結果、前頁表の条件つきで同意を得た ので、工事現場作業ヤード内に仮置きすることとした。一方、売払いの契約手法は、本局 と協議の上、単価での分割引渡し方式を採用することとした。また、単価であっても、総
.
量1 400tを一括で行うとしたら 総価で売払いの場合と同様に問題 参照:上記, 、 (2
検討②)が生じてしまうことから、2~3ヶ月の間をおいて、3回に分けて実施し
2.1
た。
4.不用品単価契約の結果について
①H23宇都宮国道鉄屑売払い(単価契約)その1 入札公告日 平成23年10月24日
入札・契約 平成23年11月18日→引渡期限日 平成24年 1月20日 引渡完了日 平成23年12月16日
(引渡総量631.0t)
②H23宇都宮国道鉄屑売払い(単価契約)その2 入札公告日 平成24年 1月23日
入札・契約 平成24年 2月22日→引渡期限日 平成24年 4月23日 引渡完了日 平成24年 4月17日
(引渡総量544.6t)
③H24宇都宮国道鉄屑売払い(単価契約)
入札公告日 平成24年 3月 1日
入札・契約 平成24年 4月 6日→引渡期限日 平成24年 5月17日 引渡完了日 平成24年 4月23日
(引渡総量344.3t)
さて、今回の鉄屑売払いに際し、最も苦慮したことは、どのタイミングで売払いの公告 を公示すべきかという点であった。できるだけ仮置き期間を短くするとともに、より効率 的な引渡しができるため、撤去工事の工程と売払い手続きの工程とを勘案し、公告公示の 時期を決めることであった。また他方、年を跨ぐ事情から、年末年始の期間には鉄屑を河 川敷きには保管しないこと、引渡しが年度を跨がないこと、こうした点にも配慮した。
結果として、全3回の売払い契約とも、契約締結から納入告知書の発行、入金そして引 渡し完了まで円滑に進み、上々のものであった。これは、ひとえに現場及び出張所による 速やかな数量確定によることが大きい。このことが早期に引渡しに繋がったといえる。
5.まとめ
今回のように、撤去工事をしつつ、一方で大量の鉄屑を売払う場合には、単価契約によ
、 。 、 、
る方法は 非常に有効なものと思われる 但し 今回のケースが円滑に進んだ条件として 鉄屑の等級が一種類( H1」のみ)であったことが挙げられる。このようなケースは、「 非常に稀れであることから、鉄屑の売払いに単価契約を持ち込むことは、緊急避難的でイ レギュラーな措置であると思料する。
車両管理業務委託における総合評価方式の導入
○総務部総務課 専門員 松井 道宏 総務部契約課 購買係長 古谷 靖
1.目的・背景
車両管理業務は、事務所等の所掌業務を遂行するにあたり、工事の監督、用地交渉や 地元調整、さらには災害時等の対応などの業務実施に必要な車両を運行するともに、こ れに必要な日常の点検整備、燃料及び油脂類等の補給や事故の処理に関する事務など、
車両の管理を行う業務である。
特に車両の運行については、現地調査における、山間僻地の狭隘及び悪路等の安全的 確な走行、さらには災害時における迅速さや
24
時間体制での業務履行も求められる。このため、本業務の履行においては、ただ単に車両を運行すれば良いということでは なく、災害発生時に業務を履行するための体制確保、運行計画の変更に臨機に対応する ための連絡方法の確立などが特に重要視されるところである。
しかし、平成
21
年度より一般競争入札を導入して以降、熾烈な価格競争となり、予 定価格に対して60
%以下の落札額であった低入札案件が、平成21
年度は58
件中40
件、平成
22
年度は45
件中41
件、平成23
年度は44
件中43
件と非常に多くなっている。一方で、車両管理責任者と連絡がつかない、指示内容が正確に車両管理員へ伝わらな い、経路把握不十分による目的地到着遅延、速度超過・急ハンドル・急ブレーキ等の危 険運転など業務履行上の問題が多く発生しており、事務所等の業務遂行に支障が出る事 例も多くなっていた。
そういった問題を受け、車両管理責任者等の配置体制の事前確認、業務履行状況等調 査の実施、低入札調査の強化、是正措置要求、是正措置を講じない場合の契約解除、車 両管理員の要件として過去の実績や健康状態の確認、車両管理員へ研修等を実施させる など、さまざまな取り組みを行ってきたところであるが、依然として連絡体制の不備な ど多くの問題事例が発生したことから、更なる対策として、安全運転教育の実施、地理 不案内の解消のための措置、迅速な連絡体制の確保、災害時の参集体制の確保などを行 い、早急に業務履行の適正化を図る必要があった。
2.実施内容
上述のとおり、車両管理業務の運行については、様々な場面で迅速かつ的確な運行・
連絡体制の確立が求められ、平成
21
年度の一般競争導入後は、様々な問題が多く発生 していることから、価格のみの競争では適正な業務履行を期待することは困難であると 考えられたため、事業者の実施方針など価格以外の要件を加味して評価を行う「総合評 価」により競争させることにより、入札参加者へ業務履行時の創意工夫を促し、結果と して業務履行の適正化を図っていくこととしたものである。車両管理業務における総合評価方式の導入は、国土交通省では初めての事例であった
ため、本省の大臣官房会計課及び関東地整と同様に総合評価方式導入に積極的であった 九州地整と連携を図り、財務省へ対して、評価方法、評価項目内容や配点について、協 議を行い承認を得た後、関係事務所との調整を経て、本局外
15
事務所において総合評 価方式による契約手続きを試行的に導入することとした。評価方式は、価格競争の比重が高い除算方式とし、評価項目として通信方法の工夫な どを提案させることにより、車両管理責任者と連絡がつかない、指示内容が正確に車両 管理員へ伝わらない問題が、経験・資格・地域精通度などを評価することにより、目的 地への到着遅延などの問題が、安全運転教育への提案などを評価することにより、危険 運転等の問題が、緊急時の体制などの提案させることにより、緊急時の業務履行が継続 出来ない問題が解消され、さらに、契約になった技術提案は契約内容となることから、
仕様書で定めた以上の内容になることも期待されるなど、総合評価方式の導入により、
さまざまな問題の解消を目指している。
3.成果
総合評価方式による試行を実施した本局外
15
事務所の入札結果を分析すると、予定 価格に対して60
%以下の落札額であった低入札案件が、前年度の15
件から4
件と減少 し、予定価格に対する平均落札率については、前年度50
%から67
%と17
ポイント上 昇した。最低価格ではない応札者が総合評価の結果、逆転した事例も2
件あった。また、従来の価格競争で行った契約についても入札価格が上昇し、予定価格に対して
60
%以下の落札額であった低入札案件が減少したが、予定価格に対する平均落札率を 比較すると、総合評価方式による試行を実施した本局外15
事務所が67
%、それ以外の 事務所が62
%で5
ポイント程度の差があり、総合評価方式の導入は、低入札の解消に ついても一定の効果はあったものと思料される。4.考察・今後の課題
本年度は、国土交通省で初めての試みということもあり、評価項目、評価方法等につ いて、評価基準が明確でないなど、結果的に至らない点が多く見受けられており、今後 試行を継続するにあたり改善していく必要がある。
また、試行後、業務履行上の大きな問題事例は発生していないが、引き続き、注視す るとともに、総合評価方式の導入目的である業務履行の適正化が図られたかを今後検証 する必要がある。
5.今後の方針
試行を実施した事務所等を対象に行ったアンケート調査などを基に、より的確な評価 項目、評価方法を構築し、来年度の試行継続に向けての財務省協議に反映したいと考え ている。
今後、さらに試行の成果、課題を十分検証し、試行対象事務所の拡大等についても検 討していきたい。
樺太に本籍地を有していた者の戸籍調査について
八ッ場ダム工事事務所 用地調整課 泉田 絵美
1.事業及び用地取得の概要
本件は、八ッ場ダム建設事業に伴う付替町道に必要な用地として、24名の個人名義で 登記された村落所有の山林取得に係る用地買収事例です。
我が国では、従来、村落等の地縁団体には法人格が認められていなかったため、村落所 有の不動産については、当時の構成員である各個人の共有名義で登記が行われていました。
このような不動産を取得する場合、共有者全員との売買契約が必要となります。
当該地については、明治24年に共有者○○外23名として登記されてから約120年 が経過した土地であるため、それぞれの家系で数次の相続が発生しています。しかし、当 該地は村落所有の土地であったため、その多くは相続登記が未済となっていました。また、
遺産分割協議書などの相続書類が完備されている者でも、相続書類には当該地が含まれて いませんでした。このため、約240名の法定相続人から登記承諾等を得る必要が生じて います。
当該地の用地買収にあたり、登記簿上の所有者が死亡している用地の取得については、
戸籍簿等から相続人の調査を行い、相続人を確定させます。その後、相続人と起業者との 契約を締結すると共に、嘱託での所有権移転登記の承諾を頂く事となります。しかし、当 該事例の相続人のうち1名は、旧樺太に本籍地を有していたために、戸籍の入手が困難で、
その所在の確認に苦慮した事例となっています。
2.旧樺太の戸籍について
樺太(ロシア名:サハリン)は、北海道の北に位置する南北に細長い島です。
樺太は、日露戦争(1904年)後のポーツマス条約により、北緯50度以南(南樺太)
がロシア帝国より日本に割譲され、一時、日本領となっていました。その後、1945年 に当時のソビエト連邦が日ソ中立条約を一方的に破棄して南樺太に侵攻し、1951年、
サンフランシスコ平和条約締結により、日本政府は南樺太の領有権を放棄しました。終戦 後、樺太がソビエト連邦の統治下に置かれると、日本人の多くは本土へ強制的に引き揚げ ることとなりました。
このような戦乱により、日本に持ち帰られている戸籍簿は、旧樺太の全42市町村(昭 和19年当時)のうち6ヵ村( 大 泊おおとまり郡遠淵とおぶち村、大 泊おおとまり郡知床しれとこ村、大 泊おおとまり郡富内とむない村、元 泊もとどまり郡 元 泊もとどまり 村、敷香し す か郡内路な い ろ村、敷香し す か郡散江ち り え村)についてのみ、戸籍簿の一部が外務省外地整理室に保 管されている状態となっています。このように、戸籍簿のほとんどが失われている状態で あるため、旧樺太に本籍地を有していた者の戸籍を入手することは非常に困難な状況とな っています。
3.事例の概要及び戸籍調査の実施について
相続状況概略図のとおり、法定相続人A氏は昭和19年に福島県で出生し、両親の離婚 により、戸籍上、昭和21年に母B氏と共に、本籍地を樺太恵須取え す と る郡塔路と う ろ町大字塔路と う ろ地先 に移している。しかし、その先の足取りは前述したような状況のため、戸籍を入手するこ とができず、戸籍上の消息は不明となってしまいました。
当該家系の法定相続人はA氏の他に7名おり、各相続人に対して聞き取り調査を行いま したが、A氏とは連絡を取り合っておらず、A氏の所在は不明とのことでした。このため、
A氏に関係する資料を所有している可能性がある下記の機関への調査を開始しました。
3.1 外務省アジア大洋州局地域政策課外地整理室(注 1
まず初めに、旧樺太の戸籍簿の一部が保管されている外務省外地整理室に対して、戸籍 簿の所在について公文書による照会を行いました。
)
前述したように、外地整理室で保管されている戸籍簿は6ヵ村についてのみとされてい ましたが、念のため調査を行いました。しかし、該当する戸籍簿は保管されていない旨の 回答書(証明書)を受領する結果となりました。
3.2 北海道保健福祉部(注 2 次に、外地(注
)
3)からの引揚者やその遺族には引揚者給付金が支給され(注 4
北海道保健福祉部の説明によると、引揚者給付金受給者名簿により受給状況が調査でき るとのことであったため、樺太への転籍前の戸籍(写)を添付し、A氏及び母親のB氏に ついての照会を行いました。
)、その受給者 の中に調査対象者がいる可能性があるため、北海道保健福祉部に対して確認を行いました。
照会の結果、調査対象者のA氏及びB氏の所在については情報を得ることはできません でした。しかし、A氏の祖母(B氏の母)C氏及びA氏の叔父(B氏の兄)D氏からの請 求があったことが判明し、参考資料として給付金請求についての関係書類の写しを受領す ることができました。
なお、念のため、A氏の出生地である福島県社会福祉課にも問い合わせを行いましたが、
給付の事実を確認することはできませんでした。
3.3 社団法人全国樺太連盟(注 5
さらに、(社)全国樺太連盟に対して、用地買収の関係で権利者の所在調査をしている 旨説明し、調査手段等を相談してみましたが、連盟には個人の所在が分かるような資料は なく、対応しかねるとのことでした。
)
3.4 稚内市立図書館
最後に、北海道の稚内市立図書館には樺太関係の資料が所蔵されている可能性があるた め、図書館蔵書目録を入手し確認を行いました。蔵書目録には、「恵須取え す と る町在住者名簿」
や「樺太人名録」等の資料が確認できたため、図書館員に内容を確認してもらいましたが、
調査対象者の氏名は記載されていませんでした。
3.5 調査結果 今回、実施した 調査では、結果と して、調査対象者 の資料を入手する ことはできません でした。しかし、
3.2北海道保健 福祉部への照会で 参考資料として受 領した、A氏の祖 母C氏及び叔父D 氏の所在を手がか りにしてA氏の母 方の戸籍調査を行 い、相続関係があ る程度判明しまし
た(ある程度とは、他の親族にも旧樺太に本籍地を有する者がおり、所在の確認が出来な かった者がいたためである。)。
しかし、依然としてA氏の所在は不明なままであるため、母方の戸籍調査から判明した 親族である祖母C氏と行動を共にしていた叔父D氏の子E氏(A氏の従兄弟・B氏の甥)
に連絡を取ることにしました。その後、E氏に聞き取り調査を行うことができ、その結果、
A氏及びB氏の所在等の状況が判明することとなりました。
なお、A氏及びB氏は旧樺太から転出後、終戦に伴い本土に引き揚げ、戸籍法第110 条(注 6)により裁判所の許可を得て山形県に就籍していました。当該戸籍には、就籍の理由 として樺太より入籍とされており、生年月日や父母の情報等から同一人物であることが推 定されました。そこで、管轄の法務局に確認したところ、同一人物として判断されるため、
登記申請上、問題ないとの回答を得ました。
4.今後に向けた提案
当該事例では、協議離婚後の母方の親族への聞き取り調査により、偶然、所在が判明し たものですが、そのような調査を行っても所在が判明しない場合が十分に予想されます。
そのため、関係機関への照会や親族への聞き取り調査に並行して、失踪宣告や不在者財産 管理人制度の活用について、あらかじめ準備をしておくことが必要となります。
また、数次に渡り相続が発生している場合、戸籍簿の保存期間(注 7
【相続状況概略図】
(亡)C氏
(亡)父
(相)A氏 E氏
(S19生)
(亡)祖父 被相続人
(相)○ 母B氏 (亡)D氏
(S21協議離婚)
)が満了し戸籍が取得 できないケースや、今回の旧樺太の戸籍簿のように戸籍の取得が困難なケースは今後も発 生する可能性があり、処理方法についての事例を収集し定型化を図ることで、より迅速な 事務処理が可能となります。
さらに、村落所有の共有地等、多数の登記名義人がいる土地では、各権利者に自己の所 有地であるという認識が乏しいため、相続登記が未済となり、相続人の数が膨大になって しまう場合が多くなっています。このような場合、その事務処理が煩雑で長期化するため、
実務上では処理の着手が後回しになることが多く、結果的に更なる相続が発生し、より煩 雑化・長期化することに繋がっています。そのため、用地調査等の段階で、このような土 地が判明した場合には、早期に着手することが肝要です。
このような状況を解決し、計画的かつ円滑に用地取得を進めるために、用地部において は「用地取得マネジメント」を実施していると聞いています。個別の用地リスクの一つで ある、共有地や複数相続の早期解決が重要であることがわかります。
5.所感
今回の事例は、外地である樺太の戸籍調査という特殊な事例でしたが、この事例を通じ て帰納的に方法論を提示できるのではないかと考え、紹介させていただくこととなりまし た。
起業者が事業を進め完成させるためには、たとえ今回の事例のように困難な場合であっ ても、最終的には問題を解決し、事業用地を取得しなければなりません。用地取得には土 地所有者の個別の問題を解決しながら進めていく必要があり、所在不明者がいる場合など では、その家系の歴史を紐解いていくような作業も必要となります。今回、結果的に、事 前の想定に反して戸籍を追うことはできませんでしたが、様々な方法で所在調査を試みた 結果、最終的には相手方への聞き取りから手がかりを掴むことができ、問題解決のための ノウハウを学ぶことができました。
また、この事例に携わったことで、旧樺太の戸籍簿が現在どのような状態であるかを知 ることができ、今後、他の外地の戸籍調査が必要になった際の参考になると思います。さ らに、樺太が辿ってきた歴史についても知ることとなり、大変良い経験となりました。
(注1)昭和27年に設置され、終戦まで日本が統治していた外地の喪失に伴う外地官署の整理、外地にいた邦人 に対する援護等を所掌している。
(注2)引揚者給付金は、厚生労働大臣が所管し、これに関する請求は市町村長及び都道府県知事を経由して行わ れる。給付金を受ける権利の認定は、昭和20年8月15日における本籍地が、本邦の場合には当該本籍地の 都道府県知事が、歯舞郡島、色丹島及び厚生労働省で定めるその他の島、並びに樺太及び千島列島等の場合に は北海道知事が行う。
(注3)「外地」とは、台湾、朝鮮、樺太など内地の法体系とは異なる外地法によって外地法令が適用された地域
(the territory governed by laws other than those of Japan proper)(外務省条約局)とされていたが、
現行法においては、単に外地という場合は本邦以外の地域を意味し、日本の旧統治区域に限定されない。
(注4) 「引揚者給付金等支給法」(昭和32年5月17日制定)による。
(注5)樺太関係の有志が中心となり、樺太引揚者の擁護厚生と相互扶助を目的として結成され、昭和24年に当 時の厚生省より社団法人の認可を受けた。主な活動として、樺太の歴史の伝承・そのPR活動、「樺連情報」
の発行、樺太の現状に関する情報・資料の収集、樺太残留邦人の調査と援助等を行っている。
(注6) 本籍を有しない者は、家庭裁判所の許可を得て、許可の日から10日以内に就籍の届出をしなければな
らない。
(注7)平成22年5月6日法務省令第22号により、期間が80年から150年間に延長された。
法定相続人が多数存在する土地の用地取得について
北首都国道事務所 用地第二課 関口 淳
1.はじめに
本件は、茨城県内で進めている圏央道事業の用地取得における事例であり、相続登記さ れないまま、多数の法定相続人が存在している土地について、相続人が確定するまでの経 緯を紹介するものである。
2.土地の権利調査
本件で取得する土地の登記名義人について、戸籍を調査したところ、大正10年に死亡 しており、相続登記されないまま、法定相続人が99名存在していることが判明した。
法定相続人がこのような人数になったのは、登記名義人が戸主でなかったためであり、
仮に登記名義人が戸主であったならば、家督相続されて、用地の取得時に相続は発生して いなかったと思われる。
3.土地の現況
本件土地の現況は、被相続人の長男(戸主)の子孫(以下「甲氏」という。)が住む宅 地になっており、現在、甲氏が固定資産税を納めている。
圏央道事業により、住宅が移転対象になっているため、甲氏としては、単独で相続した い意向である。
4.遺産分割協議
甲氏は、登記名義人の財産に関する相続書類を持っていないため、残り98名の法定相 続人全員と遺産分割協議することとなったものの、今まで面識がない法定相続人が大多数 を占めていることから、それらの法定相続人に対しては、起業者が代わりに、甲氏が相続 することについての了解を確認することになった。
5.権利者の意向確認
意向確認の方法は、電話番号が分からないこともあり、法定相続人であることを知らせ る手紙を発送し、相手方からの連絡を待つことにした。手紙は法定相続人全員には発送せ ず、その家の代表者(長男等)と思われる法定相続人あてに発送している。
連絡が取れた代表者から、順次、甲氏が相続することについて意向確認するとともに、
兄弟等の取りまとめを依頼していったが、なかなか連絡を寄越さない法定相続人がいて、
時間を要したところである。