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技術資料〉

テラヘルツ波を用いた塗膜 モニタ リング技術

安井 武 史、安 田 敬 史、荒木

塗膜測定 は、塗装製品の品質評価 において重要 な役割 を果 た している。本稿では、 テラヘルッ電 磁波パルス (THzパ ルス)を 用 いた新 しい塗膜 モニタ リング技術 として、THz塗 膜計を紹介する。

THz塗 膜計が有す る非接触 リモー ト・実時間 ・膜厚 ムラ計測等 の特徴 を利用す ることによ り、従 来の接触式膜厚計では困難 とされた膜厚測定が可能 になる。本手法 を多層膜 ・ウェッ ト膜 。動体サ ンプルなどの計測 に応用 し、 その有用性 を確認 した。 さらに、塗膜の THz分 光特性が ウェッ ト状 態 と ドライ状態で異なることを利用す ることによ り、 ウェッ ト膜の乾燥状態 モニタ リングも可能で あることを示 した。THz塗 膜計 は、塗装製品の全数検査や塗装工程 のイ ンプ ロセスモニタ リング のための有用なツール として期待 される。

キーワー ド:塗 膜、 テラヘルッ、膜厚、乾燥状態

1.緒

自動車 ボデ ィを始 めとした様々な工業製品に おいては、基板 (素地)の 防腐 ・防錆 ・防水 ・ 色彩効果の目的か ら、表面塗装が施 されている。

塗膜の厚 さムラ (不均一性)や 品質不良 (乾燥 不十分、気泡 ・異物混入、剥離他)は これ らの 効果を低下 させ ることか ら、塗膜測定 は塗装製 品の品質管理のために重要である。 これまでは、

塗膜や基板の種類によって膜厚計 (電磁誘導式、

渦電流式、超音波式)が 選択 されて きたが、 い ずれ も接触式であるため、 これ らの膜厚計では

2008年 7月 9日 受付

YASu Takeshi,YASUDA Takashi,ARAKI TsutOmu 大阪大学大学院基礎工学研究科機能創成専攻 (〒560‑8531大 阪府豊 中市待兼 山町1‑3) TEL 06‑6850‑6217

Vol.43 No.11(2008)

乾燥 した塗膜 (ドライ膜)し か計測で きなか っ た。 その結果、塗装完了後 に膜厚 をチェックす るパ ッシブな膜厚管理が行われて きた。 もし、

非接触 リモ‐ 卜に、乾燥状態 (ドライ膜、ウェッ ト膜)を 問わず膜厚測定が実現で きれば、塗装 工程 におけるイ ンプロセス 0モ ニタ リングが可 能 にな り、 アクティブな膜厚制御型塗装技術 に 貢献す ると考え られ る。 その結果、塗装品質の 向上 とともに製品の歩留 まりが改善 され、塗装 ライ ンエ程 における生産効率が大幅 に向上す る ことが期待で きる。 また、塗装材料 の省資源化 や塗装時の シンナー使用量を削減で き環境 にも 優 しい。

非接触 リモー ト計測のための手段 として最初 に思 い浮かべ るのが光学的手法であるが、塗膜 は可視領域では不透明であるため、その適用 は 困難である。そ こで、我 々は、 テラヘルツ電磁

389(25)

(2)

THzパ ル ス (  )

波パ ルス (THzパ ルス)に 着 目 した。THz領 域 (周 波 数 =0.1〜 10 THz、 波 長 =30〜 3000 μm)は 、ち ょうど光波 と電波の境界 に位置 し、

これまで光源 と検 出器の制限か ら、 ほとんど研 究が行われていない未開拓 な電磁波領域であっ た。 しか し、最近の安定な近赤外超短パルスレー ザーの出現 と THz発 生 ・検 出デバ イス技術 の 発達 によ り、 THz領 域 の超短パ ルスの発生及 び検 出 が容 易 にな り、 この領 域 の研 究 開発 (THzテ クノロジー)が 加速 している。THzテ クノロジーは、国家基幹技術10大戦略の 1つ に 挙 げ られると共 に、10年後の市場規模 は 2兆 円 に達す ると予測 されてい る。 THzパ ルスは、

光波 と電波の境界 に位置す るとい うことか ら、

その両者の性質を有す るユニークな電磁波であ る。具体的には、① 自由空間伝搬、②非金属物 質に対する良好な物質透過性、③低 エネルギー ・ 低侵襲、④ コヒー レン ト (レーザー光のように 空間的及 び時間的に干渉 しやすい)ビ ーム、⑤ 超短パルス、⑥広帯域 スペク トル、⑦ イメージ

ング測定や分光測定が可能、 といった特徴 を有 してお り、非破壊検査 ・セキュ リテ ィなどの分 野 における新 しいセ ンシング手段 として注 目さ れている・D。本稿では、THzパ ルスを用 いた塗 膜 モニタ リング技術 (THz塗 膜計)に 関す る研 究成果'°を紹介する。

2.測 定原理

THz塗 膜 計 の測 定 原 理 を図 1●)に示 す。

THzパ ルスを基板上 に施 され た単層塗膜 に入 射 させ ると、屈折率の不連続点である塗膜表面

境界(1) 境界(a

図 l la)測 定原理 と(b)THzエ コーパ ルスの時間波形

︵ ■ じ 黙 肥

[空気一塗膜境界(1涸及 び塗膜裏面 [塗膜―基 板境界9月 で THzエ コーパ ルスがそれぞれ反 射 され る。 これ らの THzエ コーパ ルスの時間 波形 を観測す ると、図 1(りに示すように各境界 か らの THzエ コーパ ルスが時間的 に分離 され て戻 って くる。 この時間遅延 Z′は、塗膜 の群 屈折率 (パルス光の伝搬速度が真空中に比べ遅 くなる割合)を πハ 膜厚 を α、真空中の光速を θとす ると、以下のような式で与え られ る。

∠′=(2η夕α)/θ (1) したが って、ηらが既知 であ るな らば、 測定 し た ∠′か ら、膜厚 αを決定す ることが可能 にな る。 このよ うに THz塗 膜計 の原理 は超音波 エ コーに類似 しているが、その利点 は、非接触 リ モー ト測定が可能である以外 に、各種の塗膜や 基板材、多層膜、 ウェッ ト膜、膜厚 ムラ計測 に

も拡張可能である点である。

3.膜 厚計 測 3.: 点 計測型 THz塗 膜計'acD

図 2に 点計測型 THz膜 厚計 の実験装置図を 示 す。THzパ ルスの発生及 び検 出には、 フェ ム ト秒パルスレーザー (モー ド同期チタン ・サ ファイア レーザー)と 光伝導 ア ンテナ (PCA) を用 いる。 レーザー光 は ビームスプ リッターを 用 いて、THz発 生用 ポ ンプ光 と THz検 出用 プ ロープ光 に分離 され る。 ポ ンプ光を THz発 生 用 PCAに 入射 す る ことによ り THzパ ルスが 自由空間に放射 される。 シリコンレンズと軸外 し放物面鏡 1で コリメー ト (平行光線 ビームに す ること)さ れた THzパ ルスは、 シ リコン ・

(3)

フェム ト秒 パルス レーザー

電流―電圧変換 アンプ

ロックイン アンプ ビーム

スプリッター

ビームスプ リッターで一部反射 された後、軸外 し放物面鏡 2を 用 いて塗膜 サ ンプルに点集光 さ れ る。 サ ンプルか らの THzエ コーパ ルスは、

軸外 し放物面鏡 2で 再度 コ リメー トされ シリコ ン 0ビ ームスプ リッターを透過 した後、軸外 し 放物面鏡 3に よって THz検 出用 PCA(ま たは 電気光学結晶)に 入射 され る。 ここで、 ピコ秒 オーダーの THzパ ルスの時間波形 を直接 リア ル タイム測定す ることは、検出エ レク トロニク スの帯域不足 によ り不可能であるため、一般 に ポ ンプ ・プロープ法を用 い られ る。 この方法で は、 THzパ ルス とプ ロー ブ光 の光路長 を調節 す る ことによ り両者 が同 じタイ ミングで THz 検 出用 PCAに 入射す ると、 プ ロニブ光 によっ て THzパ ルス電場 の一部が時間的に切 り出 さ れ、 それに比例 した電流信号が PCAか ら出力 され る。 プロープ光 のパルス幅 (100 fs程度) は THzパ ルス (l ps程度)に 比べて十分 に短 いので、 プロープ光の時間遅延 を機械式 ステー ジによ り連続的に変化 させなが らその電流信号 をロックイ ンア ンプでサ ンプ リング測定す るこ とによ り、THzパ ルス全体 の電場時間波形 が 再現 で きる。 本装置 の基本特性 は、 パ ルス幅 0.4 ps、スペ ク トル帯域 0.1〜2THz、 測定 SN

Vol.43 No.11(2008)

シリコン レンズ

比100(測 定時間 1秒 )で あ った。

図 3は 、本装置で実際 に測定 された単層塗膜 (アル ミフ レーク入 リメタ リック塗装)の THz エ コーパ ルス信号示 してお り、 2つ の THzエ コーパルスが時間的に分離 されている様子が確 認で きる。次 に、黒 アク リル塗料 と白エナメル 塗料 を用 いて様 々な厚 さの塗膜サ ンプルを作成 し、THz塗 膜計 で膜厚計測 を行 った結果 が図 4で ある。横軸 は市販の接触式膜厚計 (渦電流

fitlLfiSrEtl ,llj,^

︵ .● 0 黙 肥 .

図 3

0     5    10    15    20    25    30    35 時間 (ps)

単層塗膜 (メタ リック塗装)の THzエ コー パ ルス波形

391(27)

(4)

yttf禁,;躍毀68

「黒 アク リル塗膜 y=0.81x,R=0996

00      0

0      50     100     150     200     250 膜厚 α(μm)

図 4 THz塗 膜計を用 いた膜厚測定結果

式、精度 =± 3%)で 測定 した膜厚 (α)で 、 縦軸 は時間遅延量 と塗膜 の光学 的厚 さ (πα) を示 している。両塗膜 サ ンプルにおいて良好 な 線形関係が得 られてお り、実測値 と近似直線 の ば らつ きか ら膜厚精度 は 4μmで ある。 また、

近似直線 の傾 きは群屈折率 (π)に 対応 してお り、 黒 アク リル塗膜 で1.812、自エナメル塗膜 で2.612とな り、異 な る塗膜 において比較的大 きな相違があることが分か った。一方、膜厚分 解能 (αmb)は、以下 の式で与え られ る。

αmm=(c/T)/(2π ♪

すなわち、膜厚分解能 は THzパ ルスの時間幅 (∠つ とサ ンプル群屈折率 (π♪ によって制限 され、図 4の黒アクリル塗膜では40μmで あっ た。膜厚分解能より薄い塗膜を計測 した場合に は、 2つ の THzエ コーパルスが時間的に重な ることになり、 2つ の THzエ コーパルスの遅

500 400

里3 0 0

日 200 l C10

延時間か ら膜厚を求 めるという簡便 な手法では 正確 に膜厚 を決定で きな くなる。 そ こで、重回 帰分析 (回帰分析の独立変数が複数 にな った多 変量解析手法)に よる重畳波形分離解析 (複数 成分の重 なった信号波形か ら各成分 を分離抽 出 す る信号解析手法)を 行 ったところ、膜厚分解 能が 20μmま で改善 された。 さらに、 10 fs以 下 の極超短パ ルス レーザーを用 いて THzパ ル ス幅を狭窄化す ることによ り、10μm以 下の膜 厚分解能が実現可能 と考え られる。

次 に、図 2の 実験装置 においてサ ンプル位置 を 2次 元的 (10 mm*10 mm領 域、lmm間 隔) に走査す ることにより、膜厚 ムラの計測を行 っ た。多層塗膜サ ンプル (第 1層 :黒 アク リル塗 膜、第 2層 :白 エナメル塗膜、基板 :ポ リエチ レン板)を 測定 した結果 を図 5●)に示す。従来 の接触式膜厚計では測定困難であった各塗膜の 詳細 な膜厚 ムラ分布が可視化で きてお り、 それ ぞれの膜厚 ムラは 239±33μm(平 均値 士標準 偏差)と 158±1lμmと な った。一方、塗膜 の 剥離 は、塗装の防腐 ・防錆効果を低下 させ基板 材料の機械的特性を劣化 させ る重大 な品質欠陥 であるが、従来法ではその検出が困難であった。

一方、THz塗 膜計 を用 いた場合、剥離部で新 たな THzエ コーパ ルスが発生す るため、 これ を利用す ることにより剥離部の検出が可能 にな る。図 5(Dは 、一部剥離 した単層塗膜 (塗膜 : 白エナメル塗装、基板 :ア ル ミ板)の 測定結果 を示 している。正常部では塗膜表面 (空気―塗

︵ヽ

4 0 2 0

∞0 彗

200百

1       6 )

膜厚 ムラ計測。(a12層塗膜 と(b)剥 離 した単層塗膜

︵ E3Ц饉 5%

図 5

(5)

図 6 実 時間 2次 元THz塗 膜計

膜境界)及 び塗膜裏面 (塗膜一基板境界)か ら のエコーが観測 され るのに対 し、剥離部では塗 膜表面 (空気一塗膜境界)、塗膜裏面 (塗膜一 空気境界)及 び基板表面 (空気一基板境界)の

3つ のエコーが観測 されるため、剥離状態を図 5(b)のように可視化す ることが出来 る。

3。2 実 時間 2次 元 THz塗 膜計4■0

上述 の点計測型 THz塗 膜計 を用 いることに よ り、 THzパ ルスを用 いた膜厚計測 の有用性 を確 認 す る ことが で きた。 一 方 、 点計 測 型 THz塗 膜計 で は機械式時間遅延走査 を利用 し たポ ンプ 0プ ロープ法 に基づいて間接的に時間 波形 を取得 しなければな らないため、THzェ

コーパ ルス時間波形 (ピコ秒オーダー)を 1つ 取得す るのに数秒〜数分前後の測定時間が必要 となる。 2次 元断層 イメー ジを取得す るために は、 さらに ビーム照射位置を 1次 元的に走査 し なければな らない。その結果、画像取得 に時間 (数分〜数時間)が かか り、本手法 の応用性 を 著 しく制限 して きた。 このような機械的な走査 を無 くし、 リアルタイムで 2次 元断層像が取得 で きれば動体 サ ンプルに も適用 で き、THz塗 膜計 の応用性 は飛躍的に高 まるはずである。

ここで、 THz波 の光 と しての並列性 に注 目 し、電気光学的時間―空間変換 (電気光学結晶 内で THz電 場時間波形 を レーザー光 の空間強 度分布 に変換す ること)と 線集光 THz結 像光 学系 (サンプルに線集光 された THzラ インビー ムを THz検 出用電気光学結晶に結像するため

Vol.43 No.11(2008)

の THz光 学系)を 利用すれば、機械的走査機 構を必要 とす ることな く、 2次 元断層分布の取 得が可能になる。本手法の原理図を図 6に 示す。

サ ンプルか ら反射 された THzエ コー ビームと プロープビームを電気光学結晶 (印加電界 に依 存 して屈折率が変化す る結晶)に 非共軸入射 し 波面同士を面 として重ねると、電気光学的時間一 空間変換 によ り、 THzエ コーパ ルスの時間情 報がプロープビームの空間強度分布 に変換 され る (図 6で は偏光子 ペアを省略)。 ここで 2次 元 イメー ジング検 出器 (CCDカ メラ)を 用 い た場合、時間波形情報 は水平座標方向に展開 さ れるので、残 りの垂直座標をサ ンプルの 1次 元 イメー ジングに利用で きる。 そこで、 サ ンプル に対 して円筒 レンズを用 いた線集光 THz結 像 光学系を導入す ることによ り、実時間で 2次 元 時空間 THzイ メ=ジ を取得す る。 このよ うに して得 られたイメー ジの時間軸 は深 さ情報 に対 応 して い ることか ら、THz集 光 ライ ンピーム に沿 ったサ ンプ′レの 2次 元断層 イメー ジを直接 的に取得で きる。本手法では、機械的走査機構 が一切不要で、原理的に レーザーの単一 ショッ

トパルスでの計測が可能である。図 7に 本装置 の基本特性を示す。

本手法の有用性 を確認す るため、 ベル ト・コ ンベヤー上の塗装製品を想定 し、動体サ ンプル ヘの適用性を評価 した。サ ンプルはアル ミ板上 の半分の領域 に自アルキ ド塗装 (膜厚 175μm) を施 した ものを用 いた。 この塗膜サ ンプルを、

THzビ ームの集光 ライ ン方 向に沿 って連続 的

393(29)

(6)

︵ .1 じ 黙 肥

に移動 させなが ら (移動速度 5mm/s)、  2次 元断層 THzム ー ビー (イメー ジ領域 :6 ps×5 mm、 毎秒10フ レーム)を 取得 した。図 8は 3 つの THzビ ーム照射位置におけるスナップショッ

トを示 してお り、水平軸が深 さ分布、垂直軸が THzラ イ ンビームに沿 った 1次 元空 間分布 に 対応 して い る。 イメー ジの グ レースケール は THzエ コーパ ルス電場 の正負電場 強度 を示 し ている。非塗装部分では、 アル ミ板表面か らの THzエ コー信号が 2.8 psの位置 に現れてお り、

アル ミ板表面が平 らで内部構造 を有 しないため 1本 の垂直 ライ ン状 とな っている。 (図 8僣))。

次 に塗装部分では、塗膜表面及 び塗膜一 アル ミ

周波数 (THz) (bl

板境界か らの THzエ コー信号が時間的 に分離 (2.3 ps及び 4.5 ps)されているのが確認で きる (図 8に))。また、 自アルキ ド塗装 の群屈折率 (2.14)と時間遅延 か ら算 出 した膜厚 スケール は同図上部の水平軸 に示 されている。例えば、

測 定 領 域 1〜4mmに お け る膜 厚 ム ラ分 布 は 162±21μmで あ った。非塗装部分 と塗装部分 の境界 では、 1つ の THzエ コー信号 と 2つ の THzエ コー信号 が混在 して いる様子 が確認 で きる (図 8(D)。 このよ うに、THzビ ーム照射 位置の移動 により 2次 元断層 イメージが連続的 に変化 してお り、本手法が動体サ ンプルの 2次 元断層分布 の実時間モニタ リングに有効である

時間 ( p s )

( a )

図 7 実 時間 2次 元 THz塗 膜計の基本特性。la)時間特性 とlb)スペク トル特性

橿 翠 ︵ E ︶ E 廻 運 ︵ E ︶ E

μ m

THz

パル ス 輔│

曖翻」II

(D 移動塗膜の計測

膜 厚 ( μ m )

︵ E

1   3  4

時間 (ps)

図 8

(7)

ドライ膜

ウェッ ト腰 0 5       1

周波数 (THz)

l a )

ことが分かる。

4.乾 燥状 態 モニ タ リング30 塗膜の塗装工程 におけるイ ンプロセス計測を 考えた場合、膜厚測定 と共 に望 まれるのが、乾 燥状態のモニタ リングである。塗膜が ウェッ ト 状態か らドライ状態へ と変化することによって、

すなわち乾燥状態 によ って塗膜 の THz分 光特 性 (屈折率、吸収)が 変化すれば、 その特徴を 利用 して乾燥状態のモニタ リングが可能である と考 え られ る。 そ こで、塗膜 の THz分 光特性 を THz時 間領域分光法 (THz―TDS)で 評価 し た。THz―TDSで は、THzパ ルスの電場時間波 形をポ ンプ ・プロープ法 によって測定 し、 それ をフー リエ変換す ることにより振幅及 び位相の 周波数 スペク トル (フー リエ ・スペク トル)を 得 る。 したが って、サ ンプルが有 る場合 と無 い 場合のフー リエ ・スペク トルの比較か ら、 サ ン プルの THz分 光特性 (吸収係数、屈折率)を 得 ることが出来 る。一般的な透過型 THz―TDS 装置°を用 いて、 白エナメル塗料 の ドライ膜及

びウェ ッ ト膜 の THz分 光測定 を行 った結果が 図 9で ある。吸収係数および屈折率のいずれに おいて も、 ドライ膜 とウェッ ト膜で大 きな相違 が確認で きる。 すなわち、塗膜 の THz分 光特 性 は、乾燥状態 に依存 して、 ウェッ ト膜か ら ド

ライ膜 の方 にシフ トしてい くことになる。

図 9に 示 したような乾燥状態 に依存 した THz 分光特性 の変化 は、時間領域 の THzエ コーパ

Vol.43 No.11(2008)

ドライ膜

ウェッ ト嬢

0 5       1 周波数 (THz)

(b)

ルスでは時間波形の経時的変化 として観測 され ると考え られ る。そ こで、 アル ミ板上 に施 した 速乾型黒 アク リル塗装が ウェッ ト膜か ら ドライ 膜 に変化す る過程 を点計測型 THz塗 膜計で計 測 した (図10)。THzエ コーパルスの時間波形

0     10    20    30    40    50    60

時間 (ps)

乾燥 の進行 に伴 うTHzエ コーパルス波形の 変化

絆 本 国

︵L 8 ︶ 轟 迷 挙 愁

図 9 ド ライ膜及 びウェッ ト膜 (いずれ も白エナメル塗料)の THz分 光特性。

(al吸 収係数 と(bl屈 折率のスペク トル。

図 10

395(31)

(8)

冊 虫 興 蕪

0 2 4 6 8

経過時間 (min)

図 11 乾 燥 の進行 に伴 う群屈折率 の変化

が、塗装終了直後 (0分 )か ら経時的に変化 し ている様子が確認で きる。 この経時変化 を定量 的に評価す るため、重回帰分析 による重畳波形 分離解析を行 い、サ ンプルの群屈折率を抽出 し たのが図11である。今回用 いた塗料サ ンプルの ドライ膜 の群屈折率 は既知 (=1.81)で あるの

で、 その相違か ら乾燥状態をモニタ リングする ことが出来 る。

3.2で紹介 した実時間 2次 元 THz塗 膜計の特 徴 は、非接触 リモー ト特性 と実時間性である。

このような特徴 は、動体サ ンプル以外に、ウェッ ト膜の計測 に対 して も有用である。 そ こで、乾 燥過程の進行 に伴 う塗膜の断層 イメー ジの経時 変化 を実 時間 2次 元 THz塗 膜計 で計 測 した (図12)。図 81C)と同様、時間的に分離 された 2 つの THzエ コーパ ルス信号 が確認 で きる。 こ

こで、左側のエコー信号 の時間的変化 はサ ンプ ル表面位置の変位 (αの変化)を 反映 している のに対 し、 2つ のエコー信号 の時間間隔 は光学 的膜厚 (π)に 対応 して い る。 それぞれの経 時変化 をプロッ トしたのが図13であ り、乾燥の 進行 に伴 い塗膜が幾何学的及 び光学的に収縮 し ている様子が確認で きる。 また、その変化が10 分過 ぎか らプラ トーにな っていることか ら、乾 燥が ほぼ完了 したと推測で きる。

●    ・       ・     ・

田J︵ E︶E 田導︵ E︶E

︵ E 回週︿ E︶E

ヨ︵ E︶田E 旧翠︵ E︶E

0 1 2 3 4 5

E r4 (ps)

図12 乾 燥の進行 に伴 う 2次 元断層分布の変化

(9)

命 e ヨ 製 肛 士

塗膜表面位置

▲ 0:::::::::::::i::

光学的膜厚

0   5 経

過時』 ( →

b   "   →

欄 1 1 1 , 1 環 ∬ 蝋 1 . 島 r 赫

参考文献

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図13 乾 燥の進行 に伴 う膜厚の変化 の よC雛 %.,267[1],128(2006)

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ベル トコンベヤー上を流れる塗装製品の全数検    research/thz/

査や塗装工程 のイ ンプロセスモニタ リングが可   9)T.Yasui and T.Araki:ル π.メ4ppl ttS.,44 能 になると期待 され る。 また、接触式膜厚計を    [4Al,1777(2005)

用 いた保守点検が困難 な大型構造物 (例えば、  10)D.J.CoOk,SoJ.Sharpe,s.Lec,and M.G.

橋梁や船舶。など)や 塗膜下の基板腐食 の評価    Allen:Op cal Terahertz Sdence and にも有効であると思われ る。 さ らに、工業計測    Techndogy(Topical meeing of Opucal だけでな く、古代絵画評価への応用 に関す る研    Sodety ofAmerica),Technical Digest,TuB5 究・'0も 近年注 目されており、 これか らの技術    (2007)

動向に目を離せない。

11)K.Fukunaga,Y.Ogawa,S.Hayashi and I.

本研究 は、新 エネルギー ・産業技術総合開発    Hosako:EICE ttcttπ .助 ″Ss 4,258 機構 (NEDO)産 業技術研究助成事業および 日   (2007)

本学術振興会 ・科学研究費補助金18686008より  12)J.B.JacksOn,M.Mourou,J.Fo Whitaker, 援助を受 けた。

I.N.Duling Ⅱ I,S.Lo WilliamsOn,M.Ⅳ 【 enu,

and G.A.Mourou:の 10%π π.,281[4], 5 2 7 ( 2 0 0 8 ) 。

Vol.43 No.11(2008) 397(33)

図 6 実 時間 2次 元THz塗 膜計 膜境界)及 び塗膜裏面 (塗膜一基板境界)か ら のエコーが観測 され るのに対 し、剥離部では塗 膜表面 (空気一塗膜境界)、塗膜裏面 (塗膜一 空気境界)及 び基板表面 (空気一基板境界)の 3つ のエコーが観測 されるため、剥離状態を図 5(b)のように可視化す ることが出来 る。 3。 2 実 時間 2次 元 THz塗 膜計4■0 上述 の点計測型 THz塗 膜計 を用 いることに よ り、 THzパ ルスを用 いた膜厚計測 の有用性 を確 認 す る こと

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