• 検索結果がありません。

公的年金と貯蓄率 ――平成

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "公的年金と貯蓄率 ――平成"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

公的年金と貯蓄率

――平成11年年金改正による再計測――

鈴木  亘

I. はじめに

年金改革の立案に当たって,家計が改革に対してどのように反応するのか,という点を把握 しておくことは大変重要である。特に年金改革が貯蓄率に与える影響については,年金改革が 景気を悪化させ,年金財政にも負のフィードバックをもたらす可能性がある。すなわち,理論 的には年金と貯蓄には代替関係が存在することから,例えば平成11年改正のように将来の年 金給付水準を引き下げる改革がなされるときには,貯蓄率が上がり,景気が悪化する可能性が ある。したがって,年金と貯蓄に代替関係があるかどうか,代替関係の大きさがどれくらいあ るのかという点を定量的に把握することは,きわめて重要であり,経済学ではFeldstein(1974) 以来,繰り返し様々な形で実証研究がなされてきたが,いまだにコンセンサスが存在している とは言いがたい。わが国においても,Yamada and Yamada(1988),麻生(1991),岩本・加藤・日 高(1991),高山(1992)など,数多くの研究が存在しているが,その点は同様である。

さて,年金と貯蓄の分析は,当初の時系列データの分析に代わり,最近はクロスセクション の家計個票データを用いた分析が行われており,分析の精度は高くなりつつある。手法におい ても,King and Dicks-Mireaux(1982)や,Hubbard(1986)などによってほぼ確立したかに見えた。

しかしながら,最近行われたAttansio and Brugiavini(2003), Attansio and Rohwedder(2003)等の研 究によれば,クロスセクションの家計個票データを用いた分析にも,問題が少なくない。第一 に,公的年金資産の推計精度の問題がある。一般に,公的年金資産は,職業やコホートの世帯 属性を用いて分析者が推計を行うが,家計が実際に認識している将来年金受給額からはしばし ば乖離が見られる。第二に,貯蓄率を決める個人の(unobservable) heterogeneityが,公的年金受 給額自体の決定要因にもなっており,両者の間に相関が想定されてしまうという点である。し たがって,年金改革の前後のデータを使って,将来年金受給額に対して個人の(unobservable)

heterogeneityとは無関係なNatural Experimentによるバリアンスを確保して推定するほうが望ま

しいとされている。そこで,本章は,日本郵政公社郵政総合研究所(旧郵政省郵政研究所)が 実施している「家計と貯蓄に関する調査」の平成8年,10年,12年,14年の個票データを用 いて,平成11年改正の前後のバリアンスを確保した上で,OLSや(unobservable) heterogeneity

(2)

を明示的に考慮したIV法によって推定を行い,これまでの先行研究の結果を再検証すること にする。このデータは,将来の年金受給額を自分で予想する質問が含まれており,家計が実際 に把握している年金資産を計算できるという望ましい特徴を持っており,この点も利点である。

以下,本章の構成は次の通りである。2節ではデータの解説を行う。3節では推定結果を示す。

4節は結語である。また,補論では,将来労働所得の推計に用いた賃金関数の推定結果をまと めている。

II. データについて

本章において用いるデータは,日本郵政公社郵政総合研究所(旧郵政省郵政研究所)が実施 している「家計と貯蓄に関する調査」の平成8年,10年,12年,14年の個票データである。

この調査は,全国の全都道府県から20才以上の世帯主がいる世帯を層化多段無作為抽出法で サンプル抽出をして実施しており,平成8年のサンプル数6,000(回収3,695,有効回答率 61.6%),106,000(回収3754,有効回答率62.6%),125,010(回収3,111,有効回答率 62.1%),14年がやや増加して9,000サンプル(回収5,583,有効回答率62.0%)となっている。

調査方法は,訪問留置法で行われている。毎回のサンプル数は異なっているものの,サンプル の抽出方法は厳密に同様の形式で行われており,有効回答率もほぼ62%前後に保たれている ことから,時系列比較が可能なサンプルとなっている。本章では,この4年の個票データをプ ールして用いることにする。分析に用いたサンプルは,②世帯主年齢が,20才以上59才以下 の年金未受給者に特定した。これは,改革の原則として,既裁定者は年金改革の影響をほとん ど受けないからである。

さて,分析に用いる諸変数であるが,まず,貯蓄率に関しては「(年間世帯所得―1ヶ月あ たりの生計費×12)/年間世帯所得」という定義で計算している。可処分所得の計算に必要な 税と保険料については,2002年の調査では尋ねられていないことと,それ以外の年も定義上 ありえない数値が多く含まれており,欠損値も多いために,粗貯蓄率の方が適当であると判断 した。

次に,将来年金資産受給額については,このアンケート調査では,老後の予想生活費とその うちの何割が公的年金でまかなえるかという予想が尋ねられており,両者を乗じた上で,平均

寿命(男78.3歳)までの総和を,割引率(2%)を使って計算している。通常,この分野の研究で

は,職業やコホートなどの属性から,制度にしたがった年金額を計算して,データに加えるこ とが多いが,家計によっては年金制度の詳細がわかっているとは限らない。しかし実際に家計 が認識している期待年金額がわかるという意味で,このデータはきわめて都合がよい。また,

金融資産の総額については毎年のデータで詳細にわたって尋ねられている。実物資産総額につ いては,残念ながら2002年の調査では尋ねられていないが,過去3年分については把握できる ので,それを用いることにする。さらに,重要な要素である将来労働所得については,先行研 究にしたがって,賃金プロファイルから求めることにする。ここで問題であるのは,世帯主及 び配偶者の労働所得を個別に尋ねているのは平成8年の調査が最後であるということであり,

後は世帯主とそれ以外(平成10,12),世帯全体(平成14年)しか把握できないということで ある。そこで,まず,賃金プロファイルについては平成8年のデータを使って,加入年金別も しくは職業種別に世帯主及び配偶者について別々に賃金プロファイルを推定し,後の年は世帯 主と配偶者の属性から,その賃金プロファイルを使って推計するという操作を行っている。そ

(3)

してその労働所得の合計と実際の世帯労働所得の乖離分の半分を足して調整を行っている。賃 金プロファイルの推定については,補論を参照されたい。また,金額データは全て,平成12 年価格に直して使っている。その他,分析に用いる諸属性データは,図表1の通りである。

 

平均値     標準偏差     最小値     最大値  貯蓄率 

将来労働所得現在価値  将来年金資産現在価値  金融資産総額  実物資産総額  消費額(月額) 

世帯所得 

将来労働所得現在価値/世帯所得  将来年金資産現在価値/世帯所得  金融資産総額/世帯所得  実物資産総額/世帯所得  1996年ダミー  1998年ダミー  2000年ダミー  2002年ダミー  世帯主性別  世帯主年齢  世帯人数  持家有無  東京都区部  政令指定都市  人口15万以上の市  人口5万以上の市  人口5万未満の市  町村 

北海道・東北  関東・東京 

中部(信越・北陸・東海)・近畿  中国・四国 

九州・沖縄  世帯主厚生年金  世帯主共済年金  世帯主国民年金  世帯主無年金  [図表1] 記述統計 

0.3305569 0.7895776 -20 0.9691965 4547.289 4419.39 176.5278 30170.88

3048.039 1720.748 0 27244.94

870.8973 1462.992 0 35940.59

2927.961 7358.228 0 184000

28.46811 17.24001 3 800

654.3721 487.0976 0 15315.04

10.6755 21.09671 0.0551916 609.1801

6.536689 8.140389 0 204.337

1.432164 3.150832 0 119.8438

4.852611 19.92128 0 888.8889

0.2439643 0.4294932 0 1

0.241834 0.428216 0 1

0.1848245 0.3881748 0 1

0.3293772 0.4700109 0 1

0.7079097 0.4547467 0 1

43.18472 10.24564 20 59

3.459018 1.486333 1 9

0.5651248 0.4957658 0 1

0.08521 0.2792081 0 1

0.1848245 0.3881748 0 1

0.311828 0.4632635 0 1

0.1942585 0.3956488 0 1

0.0508217 0.2196445 0 1

0.1730574 0.3783161 0 1

0.1152364 0.3193232 0 1

0.3457091 0.475623 0 1

0.327957 0.4694929 0 1

0.0925137 0.2897644 0 1

0.1185839 0.3233146 0 1

0.6344075 0.4816207 0 1

0.1042932 0.3056563 0 1

0.2183671 0.4131592 0 1

0.0343869 0.1822302 0 1

(4)

III. 推定モデル及び推定結果

さて,推定モデルは,Attansio and Brugiavini(2003), Attansio and Rohwedder(2003)にしたがっ て,次式の定式化を用いている1

ここでSRi,tは貯蓄率,FEi,tは将来の労働所得現在割引価値2を現在の世帯所得で割ったもの,

PEi,tは将来年金資産現在割引価値を現在の世帯所得で割ったもの,Wi,tは金融資産総額や実物

資産総額,Xは諸属性であり,Dとして各年のマクロ的ショックを捉える年ダミーをくわえて いる。添え字は,iが個人,tが時点である。また,Xの添え字のjは属性項目の種類を示す。

まず,OLSによる推定結果が,図表2,図表3の通りである。図表2がもっとも単純なモデ ルであるが,理論どおりに全ての変数が有意であり3,年金資産と貯蓄率との間に負の代替関 係があることがわかる。また,その代替関係は労働所得や資産よりも高いことがわかる。図表 3は,様々な属性をコントロールしたものであるが,実物資産の代わりに入れた持家ダミーの 結果,金融資産が有意な関係ではなくなるが,年金資産の大きさは図表2とそれほど変わらず に有意な結果となっている。

i t D j Xj t

i W t i P t i F t

i FE PE W X D u

SR, =

α 

0 +

α 

, +

α 

, +

α 

, +

α 

+

α 

+

j

Attansio and Brugiavini(2003), Attansio and Rohwedder(2003)には(1)式の導出のための簡単な理論モデルの展開 があるが、ごく常識的なものであるので、ここでは省略する。

割引率は2%を用いている。

もっとも、金融資産は10%基準である。

[図表2] 貯蓄率関数の推定結果1(OLS)

係数    標準誤差     p値  将来労働所得現在価値 /世帯所得  -0.0085498 0.0029715 0.004 将来年金資産現在価値 /世帯所得  -0.0550167 0.0085152 0 金融資産総額 /世帯所得  -0.0234811 0.0125198 0.061

1998年ダミー  -0.026202 0.0361844 0.469

2000年ダミー  0.0705382 0.0290563 0.015

2002年ダミー  0.1088048 0.0274724 0

定数項  0.7413859 0.0394117 0

注)推定方法はOLSであり、Whiteによる標準誤差の修正を行っている。サンプルは、 

  4543。 R-squaredは、0.5305

(5)

次に,平成12年までの3ヵ年のデータによって,実物資産も考慮した推定結果が,図表4,5 の通りである。実物資産が有意となる代わりに金融資産が有意ではなくなっていることがわか る。ただ,ここでも年金資産は理論どおりに負で有意であり,係数の大きさもそれほど変わら なく安定している。代替性がもっとも高い資産であるという結果も変わらない。

[図表3] 貯蓄率関数の推定結果2(OLS)  

 

将来労働所得現在価値 /世帯所得  -0.0097951 0.0031072 0.002 将来年金資産現在価値 /世帯所得  -0.0564077 0.0084883 0 金融資産総額 /世帯所得  -0.0174875 0.0123378 0.156

持家有無  0.0324287 0.0231447 0.161

世帯人数  -0.0331458 0.0065495 0

世帯主性別  0.0351613 0.0342913 0.305

20― 24歳  0.3826522 0.0971606 0

25― 29歳  0.1696682 0.0513473 0.001

30― 34歳  0.0865313 0.0358476 0.016

35― 39歳  0.1003013 0.0388397 0.01

40― 44歳  0.0380588 0.0366008 0.298

45― 49歳  0.037754 0.0315129 0.231

50― 54歳  -0.0059384 0.0388223 0.878

1998年ダミー  0.0098673 0.0489288 0.84

2000年ダミー  0.0779564 0.0292046 0.008

2002年ダミー  0.0913714 0.02416 0

東京都区  -0.0546781 0.0317585 0.085

政令指定都市  -0.0564278 0.0277286 0.042

人口15万以上の市  -0.011032 0.023194 0.634

人口5万以上の市  -0.0323822 0.0259102 0.211

人口5万未満の市  -0.0415997 0.0624408 0.505

北海道・東北  -0.001607 0.025413 0.95

関東・東京  -0.0138117 0.0242147 0.568

中部(信越・北陸・東海)・近畿  -0.0566978 0.0292081 0.052

中国・四国  0.0306868 0.0228635 0.18

定数項  0.7987766 0.0703664 0

注)推定方法はOLSであり、Whiteによる標準誤差の修正を行っている。サンプルは、 

  4543。 R-squaredは、0.5441

係数    標準誤差     p値 

[図表4] 貯蓄率関数の推定結果3(OLS)  

 

将来労働所得現在価値 /世帯所得  -0.0074984 0.0032563 0.021

将来年金資産現在価値 /世帯所得  -0.06092 0.0093837 0

金融資産総額 /世帯所得  -0.0038267 0.0260176 0.883

実物資産総額 /世帯所得  -0.0154148 0.0017217 0

1998年ダミー  0.030651 0.0386545 0.428

2000年ダミー  0.1077155 0.0314988 0.001

定数項  0.7760306 0.0471809 0

注)推定方法はOLSであり、Whiteによる標準誤差の修正を行っている。サンプルは、 

  2371。 R-squaredは、 0.5998

係数    標準誤差     p値 

(6)

さて,Attansio and Brugiavini(2003), Attansio and Rohwedder(2003)では,年金資産の推定値の 不完全性を補い,貯蓄率を決める個人の(unobservable) heterogeneityが,公的年金受給額自体の 決定要因にもなっているという問題を考慮するために,改革によって将来の年金受給額が異な るグループ(職業別,コホート別の改定前後のダミー)を年金資産の操作変数として用いる推 定も行っている。本章では,データの利点があり,必ずしもそのような操作が必要とは限らな いものの,同様の操作変数4を用いた推定を行った。推定結果は,図表6から図表9の通りで ある。

[図表5] 貯蓄率関数の推定結果4(OLS)  

 

将来労働所得現在価値 /世帯所得  -0.0083907 0.0034212 0.014

将来年金資産現在価値 /世帯所得  -0.061725 0.009225 0

金融資産総額 /世帯所得  0.0016707 0.0271669 0.951

実物資産総額 /世帯所得  -0.015246 0.0017714 0

世帯人数  -0.0140541 0.0099256 0.157

世帯主性別  0.0716485 0.0585275 0.221

20― 24歳  0.2972458 0.1458504 0.042

25― 29歳  0.108156 0.0780492 0.166

30― 34歳  -0.0249875 0.0587773 0.671

35― 39歳  0.0190838 0.053035 0.719

40― 44歳  -0.0082577 0.0608044 0.892

45― 49歳  -0.0044625 0.0511738 0.931

50― 54歳  -0.0552005 0.0654007 0.399

1998年ダミー  0.0935225 0.0673872 0.165

2000年ダミー  0.109668 0.0310078 0

東京都区  -0.0733627 0.0496955 0.14

政令指定都市  -0.1023313 0.0475224 0.031

人口15万以上の市  -0.0096562 0.0377079 0.798

人口5万以上の市  -0.0145968 0.0368395 0.692

人口5万未満の市  -0.048482 0.0950941 0.61

北海道・東北  -0.0109565 0.0353588 0.757

関東・東京  -0.0128233 0.0319007 0.688

中部(信越・北陸・東海)・近畿  -0.0556367 0.0412865 0.178

中国・四国  0.0363229 0.0367098 0.323

定数項  0.809237 0.0888839 0

注)推定方法はOLSであり、Whiteによる標準誤差の修正を行っている。サンプルは、 

  2371。 R-squaredは、0.6078

係数    標準誤差     p値 

このデータでは世帯主の加入年金がわかっているため、厚生年金、共済年金、国民年金、未加入者別、5 刻みのコホート別、改定前後の年別の組み合わせで操作変数を作っている。

[図表6] 貯蓄率関数の推定結果5(IV)   将来労働所得現在価値/世帯所得 

将来年金資産現在価値/世帯所得  金融資産総額/世帯所得  1998年ダミー  2000年ダミー  2002年ダミー  定数項 

-0.0820788 0.0118421 0 -0.0040622 0.0012081 0.001 -0.0062597 0.0098673 0.526 0.0232718 0.0426492 0.585 0.1182984 0.0381547 0.002 0.1703075 0.0372706 0 0.7994698 0.0501139 0 注)推定方法はIVであり、Whiteによる標準誤差の修正を行っている。サンプルは、 

  4543。 R-squaredは、0.4722

係数    標準誤差     p値 

(7)

[図表7] 貯蓄率関数の推定結果6(IV)   将来労働所得現在価値/世帯所得 

将来年金資産現在価値/世帯所得  金融資産総額/世帯所得  持家有無 

世帯人数  世帯主性別  20―24歳  25―29歳  30―34歳  35―39歳  40―44歳  45―49歳  50―54歳  1998年ダミー  2000年ダミー  2002年ダミー  東京都区部  政令指定都市  人口15万以上の市  人口5万以上の市  人口5万未満の市  北海道・東北  関東・東京 

中部(信越・北陸・東海)・近畿  中国・四国 

定数項 

-0.0978176 0.0140216 0 -0.0035513 0.0011856 0.003 0.0110044 0.0127898 0.39 -0.0128163 0.0310782 0.68 -0.0409252 0.0087238 0 -0.0314312 0.0552141 0.569 0.4609387 0.1202018 0 0.21642 0.0625069 0.001 0.0732713 0.0377667 0.052 0.0893832 0.0389395 0.022 0.0196263 0.0347659 0.572 0.021553 0.0286229 0.451 -0.0307684 0.0337084 0.361 0.0376883 0.0565181 0.505 0.151079 0.0408504 0 0.1690565 0.0344219 0 -0.0733219 0.0370127 0.048 -0.0901458 0.0344241 0.009 -0.0024368 0.0275889 0.93 -0.0140741 0.0275856 0.61 -0.0505393 0.0621874 0.416 -0.0021674 0.0347626 0.95 -0.0499931 0.0359809 0.165 -0.0733927 0.0368273 0.046 0.0021501 0.0346255 0.95 1.036355 0.1290145 0 注)推定方法はIVであり、Whiteによる標準誤差の修正を行っている。サンプルは、 

  4543。 R-squaredは、0.4119

係数    標準誤差     p値 

[図表8] 貯蓄率関数の推定結果7(IV)   将来労働所得現在価値/世帯所得 

将来年金資産現在価値/世帯所得  金融資産総額/世帯所得  実物資産総額/世帯所得  1998年ダミー  2000年ダミー  定数項 

-0.0761149 0.0114164 0 -0.0050485 0.0018919 0.008 0.0087779 0.0212114 0.679 -0.0149466 0.001765 0 0.0569484 0.0443142 0.199 0.1336078 0.0378828 0 0.8036056 0.0499667 0 注)推定方法はIVであり、Whiteによる標準誤差の修正を行っている。サンプルは、 

  2371。 R-squaredは、0.5849

係数    標準誤差     p値 

(8)

推定結果は,いずれも年金資産の係数も理論通り負で有意であるが,大幅にその係数が小さ くなっており,他の資産に比べてもむしろ小さくなっていることがわかった。

IV. 結語

本章は,年金改革に対する家計の反応を見るうえで,きわめて重要な公的年金と貯蓄率の関 係を探った。既に,わが国においても,クロスセクションの個票データによる分析例は数多く あるが,最近の行われたAttansio and Brugiavini(2003), Attansio and Rohwedder(2003)等の研究に よれば,クロスセクションの家計個票データを用いた分析には,①公的年金資産の推計精度が バイアスをもたらす,②貯蓄率を決める個人の(unobservable) heterogeneityが,公的年金受給額 自体の決定要因にもなっており,両者の間に相関が想定されてバイアスをもたらす,という問 題点があることが指摘されている。そこで,本章では,家計の期待年金受給額が直接把握でき る日本郵政公社郵政総合研究所(旧郵政省郵政研究所)が実施している「家計と貯蓄に関する 調査」平成8年,10年,12年,14年の個票データを用い,また,平成11年の年金改正をNatu- ral Experimentとして,将来年金受給額に対する個人の(unobservable) heterogeneityとは無関係な バリアンスを確保して推定した。その結果,先行研究よりも値は小さいものの,年金と貯蓄率 との間に負の代替関係が計測された。したがって,平成11年のような給付率を下げる年金改 革を行う場合には,貯蓄率が若干ながら上昇し,景気にも若干悪影響を及ぼす可能性があるこ とが確認され,その影響を十分留意すること必要だと言えよう。

[図表9] 貯蓄率関数の推定結果8(IV)   将来労働所得現在価値/世帯所得 

将来年金資産現在価値/世帯所得  金融資産総額/世帯所得  実物資産総額/世帯所得  世帯人数 

世帯主性別  20―24歳  25―29歳  30―34歳  35―39歳  40―44歳  45―49歳  50―54歳  1998年ダミー  2000年ダミー  東京都区部  政令指定都市  人口15万以上の市  人口5万以上の市  人口5万未満の市  北海道・東北  関東・東京 

中部(信越・北陸・東海)・近畿  中国・四国 

定数項 

-0.0858567 0.0118381 0 -0.0047881 0.0015709 0.002 0.0235519 0.0232533 0.311 -0.0144205 0.0019696 0 -0.0219639 0.0111768 0.05 0.0488756 0.0622711 0.433 0.3422569 0.1470158 0.02 0.1619089 0.0973796 0.097 -0.0115645 0.0610922 0.85 0.0230466 0.0475422 0.628 -0.0026765 0.058225 0.963 -0.0064019 0.0449332 0.887 -0.0605723 0.0617475 0.327 0.1202614 0.0710727 0.091 0.1520638 0.0374682 0 -0.0567502 0.0517539 0.273 -0.1099156 0.0500106 0.028 0.0026997 0.0379044 0.943 0.0035481 0.0388096 0.927 -0.0624374 0.0958377 0.515 -0.0147791 0.0370665 0.69 -0.0394198 0.0366942 0.283 -0.071759 0.0430309 0.096 0.0048663 0.0369834 0.895 0.9040268 0.1066842 0 注)推定方法はIVであり、Whiteによる標準誤差の修正を行っている。サンプルは、 

  2371。 R-squaredは、0.5709。 

係数    標準誤差     p値 

(9)

参考文献

麻生良文「公的年金制度と貯蓄」貯蓄経済研究センター編『人口の高齢化と貯蓄・資産選択』

ぎょうせい,1991

岩本康志・加藤竜太・日高政浩「人口高齢化と公的年金」『季刊・社会保障研究』Vol.27, No.3, pp.285-294,1991年

大田清・桜井俊行「公的年金と貯蓄行動,高齢期就業―1994年郵政研究所アンケート調査に よる分析―」高山憲之・チャールズユウジホリオカ・大田清編『高齢化社会の貯蓄と遺産・

相続』日本評論者,1996年

高山憲之『ストック・エコノミー』東洋経済新報社,1992

小口登良・八田達夫「1999年政府年金改革案の評価」日本経済研究No.40,2000年 八田達夫・小口登良『年金改革論:積立方式に移行せよ』日本経済新聞社,1999年

Attansio, O.P and A. Brugiavini "Social Security and Households' Saving", Quarterly Journal of Eco- nomics pp.1074-1119, 2003

Attansio, O.P and S. Rohwedder, "Pension Wealth and Household Saving: Evidence from Pension Re- forms in the United Kingdom", American Economic Review Vol.93 No.5, pp.1499-1521, 2003 Feldstein,M, "Social security, induced retirement and aggregate capital accumulation", Journal of Politi-

cal Economy 82, pp.905-926, 1974

Yamada,T., T. Yamada, "The Effect of Japanese Social Security Retirement Benefit on Personal Saving and Elderly Labor Force Behavior" NBER Working Paper No.2661, 1988

King, M., and L. Dicks-Mireaux, "Asset Holdings and the Life Cycle," Econonomic Journal, XCII, pp.412-437, 1982

Hubbard,G, "Pension Wealth and Individual Saving", Journal of Money, Credit and Banking, XVIII, pp.167-178, 1986

(10)

補論 賃金プロファイルの推定結果

①世帯主厚生年金加入者 

 

世帯主年齢  世帯主年齢2乗  世帯主性別  規模ダミー2  規模ダミー3  規模ダミー4  規模ダミー5  東京都区部  政令指定都市  人口15万以上の市  人口5万以上の市  人口5万未満の市  北海道・東北  関東・東京 

中部(信越・北陸・東海)・近畿  中国・四国 

定数項 

43.8823 6.808409 0

-0.4192176 0.0808029 0

150.1829 33.12284 0

1.142078 59.87607 0.985 53.44383 59.2545 0.367 122.4552 58.98536 0.038

236.8769 58.5009 0

31.42855 35.18949 0.372 54.23808 28.01212 0.053 62.8191 25.79718 0.015 29.27983 28.67773 0.307 56.43456 44.13652 0.201 44.68328 35.967 0.214

139.5436 29.84071 0

57.20546 29.61876 0.054 22.47903 38.23223 0.557

-865.5407 153.759 0

注)推定方法はOLSである。Adj R-squared =  0.2472 Number of obs =    1075 係数    標準誤差     p値 

②世帯主共済年金加入者 

 

世帯主年齢  世帯主年齢2乗  世帯主性別  東京都区部  政令指定都市  人口15万以上の市  人口5万以上の市  人口5万未満の市  北海道・東北  関東・東京 

中部(信越・北陸・東海)・近畿  中国・四国 

定数項 

67.7244 14.05653 0

-0.6434038 0.1602212 0 50.62194 68.82712 0.463 68.59639 127.4529 0.591 148.1764 47.23752 0.002 97.46011 35.17112 0.006 59.6349 38.68588 0.125 -27.36433 57.09793 0.632 14.53558 49.19216 0.768 91.73558 48.83253 0.062 61.00373 44.89572 0.176 9.923099 54.11633 0.855

-1175.047 308.7318 0

注)推定方法はOLSである。Adj R-squared =  0.2665 Number of obs =    245 係数    標準誤差     p値 

(11)

③世帯主その他 

 

世帯主年齢  世帯主年齢2乗  世帯主性別  パート  東京都区部  政令指定都市  人口15万以上の市  人口5万以上の市  人口5万未満の市  北海道・東北  関東・東京 

中部(信越・北陸・東海)・近畿  中国・四国 

定数項 

13.82997 15.18269 0.363 -0.102598 0.1773818 0.563 99.91376 60.26809 0.098

-267.1638 72.53726 0

62.16849 77.45977 0.423 99.89523 62.19802 0.109 49.49546 57.02129 0.386 95.73766 60.61104 0.115 39.71206 87.04451 0.649 27.61973 76.57737 0.719 134.3048 61.60561 0.03 16.36926 59.52225 0.783 18.30757 82.97506 0.826 -110.8707 329.5108 0.737 注)推定方法はOLSである。Adj R-squared =  0.0998 Number of obs =    354

係数    標準誤差     p値 

④配偶者:サラリーマンもしくは団体職員(常勤) 

 

配偶者年齢  配偶者年齢2乗  配偶者性別  規模ダミー2  規模ダミー3  規模ダミー4  規模ダミー5  東京都区部  政令指定都市  人口15万以上の市  人口5万以上の市  人口5万未満の市  北海道・東北  関東・東京 

中部(信越・北陸・東海)・近畿  中国・四国 

定数項 

8.694275 16.13956 0.591 -0.0318601 0.1995965 0.873 42.72201 143.5968 0.767 252.2761 166.4437 0.132 219.8848 163.6516 0.181 240.9649 164.0482 0.144 278.5256 163.0036 0.09 -40.97602 103.8245 0.694 60.14221 62.03926 0.334 -29.48606 55.89394 0.599 -11.1604 57.98764 0.848 -44.46511 77.37853 0.567 6.761747 80.12052 0.933 70.5476 79.8284 0.379 89.95666 71.58746 0.211 73.53282 83.28908 0.379 -266.7768 352.2627 0.45 注)推定方法はOLSである。Adj R-squared =  0.0353 Number of obs =    143

係数    標準誤差     p値 

⑤配偶者:公務員 

 

配偶者年齢  配偶者年齢2乗  配偶者性別  東京都区部  政令指定都市  人口15万以上の市  人口5万以上の市  人口5万未満の市  北海道・東北  関東・東京 

中部(信越・北陸・東海)・近畿 

42.62607 37.71472 0.264 -0.3447991 0.4514297 0.449 (dropped)

303.2665 224.4882 0.183 -24.50664 133.8395 0.856 -4.129455 68.47424 0.952 14.28135 93.82817 0.88 43.1596 141.1537 0.761 -39.36384 182.4172 0.83 0.1498856 171.0742 0.999 係数    標準誤差     p値 

(12)

⑥配偶者:パート 

 

配偶者年齢  配偶者年齢2乗  配偶者性別  規模ダミー2  規模ダミー3  規模ダミー4  規模ダミー5  東京都区部  政令指定都市  人口15万以上の市  人口5万以上の市  人口5万未満の市  北海道・東北  関東・東京 

中部(信越・北陸・東海)・近畿  中国・四国 

定数項 

-16.23556 7.359682 0.028 0.2442716 0.0880248 0.006 10.35451 68.26593 0.88 3.804492 35.5871 0.915 -13.91523 35.99546 0.699 -3.627892 35.29948 0.918 5.125919 34.49073 0.882 -10.3129 29.3774 0.726 -43.37285 21.89289 0.048 -16.63166 19.34499 0.391 -34.79871 21.0452 0.099 -76.88403 37.93958 0.044 25.18871 27.93434 0.368 0.3459611 23.18214 0.988 30.58819 22.71998 0.179 28.76945 30.78424 0.351 372.0314 154.6715 0.017 注)推定方法はOLSである。Adj R-squared =  0.0825 Number of obs =   325

係数    標準誤差     p値 

⑦配偶者:自営業、農林水産業、その他   

配偶者年齢  配偶者年齢2乗  配偶者性別  規模ダミー2  規模ダミー3  規模ダミー4  規模ダミー5  東京都区部  政令指定都市  人口15万以上の市  人口5万以上の市  人口5万未満の市  北海道・東北  関東・東京 

中部(信越・北陸・東海)・近畿  中国・四国 

定数項 

41.77515 41.97833 0.365 -0.4434657 0.4846957 0.402 (dropped)

19.42847 153.194 0.904 205.7927 96.35941 0.086 111.3093 165.6543 0.531 258.0012 148.2485 0.142 69.8098 163.3298 0.687 2.18685 126.2588 0.987 -16.55676 92.83431 0.865 121.7713 106.0462 0.303 -51.49497 193.6312 0.801 -31.03222 122.4392 0.81 -260.4637 137.4018 0.117 -28.10997 104.9072 0.799 -320.8726 137.5176 0.067 -767.4408 896.7475 0.431 注)推定方法はOLSである。Adj R-squared =  0.5012 Number of obs =   21

係数    標準誤差     p値 

参照

関連したドキュメント

一方、区の空き家率をみると、平成 15 年の調査では 12.6%(全国 12.2%)と 全国をやや上回っていましたが、平成 20 年は 10.3%(全国 13.1%) 、平成

第1回 平成27年6月11日 第2回 平成28年4月26日 第3回 平成28年6月24日 第4回 平成28年8月29日

回答した事業者の所有する全事業所の、(平成 27 年度の排出実績が継続する と仮定した)クレジット保有推定量を合算 (万t -CO2

○「調査期間(平成 6 年〜10 年)」と「平成 12 年〜16 年」の状況の比較検証 . ・多くの観測井において、 「平成 12 年から

ヒット数が 10 以上の場合は、ヒットした中からシステムがランダムに 10 問抽出して 出題します。8.

復旧と復興の定義(2006 年全国自治体調査から).

の 45.3%(156 件)から平成 27 年(2015 年)には 58.0%(205 件)に増加した。マタニティハウ ス利用が開始された 9 月以前と以後とで施設での出産数を比較すると、平成

平成28年度の日本経済は、緩やかな回復軌道を描いてきましたが、米国の保護主義的な政