CONTENTS
政治・社会情勢
政治動向 ……… 5
経済動向 1 経済構造 ……… 11
2 経済動向 ……… 13
貿易・投資動向 1 貿易構造 ……… 22
2 対日関係 ……… 30
3 国際収支 ……… 37
経済・貿易政策 1 経済政策 ……… 42
2 財政政策 ……… 44
3 金融政策 ……… 50
4 直接投資 ……… 53
5 経済協力 ……… 60
6 貿易為替管理制度 ……… 62
産業動向 1 農林業 ……… 68
2 鉱工業 ……… 72
市場環境 1 立 地 ……… 76
2 市場構造 ……… 77
3 労働事情 ……… 80
4 外資政策 ……… 86
〔付〕 基礎データ 1 基礎事項 ……… 93
2 政治体制 ……… 95
3 文化・社会 ……… 98
4 関係機関 ……… 104
政治動向
1999 年総選挙−自由党の台頭
戦後、社会民主党、国民党による 2 大政党政治が続いたが、1999 年 10 月 3 日に 行われた国民議会選挙で、社会民主党は第 1 党の座を守ったものの戦後最低の得票 率に終わり、最大野党の自由党(当時の党首は、ハイダー・ケルンテン州知事)が、
小差ではあるが、連立与党の国民党に代わって第 2 党の座についた。社会民主党の 得票率は 33.15%で、前回 95 年選挙での得票率を 9.8 ポイント下回った。自由党の 得票率は 26.91%、国民党との差は 415 票と僅差であった。自由党が第 2 党の座に ついたのは選挙前からの予想どおりだったが、国民党との差は予想されたほどには開 かず、議席数は両党同数となった。自由党躍進の背景としては、13 年の長期にわた る社会民主党・国民党 2 大政党による連立政権へのマンネリ感から変化が求められ たことに加え、バルカン半島での紛争激化に伴う外国人の増加や治安の悪化に対する 国民の不満などがあげられる。
こうした 3 党の勢力拮抗のなかで、組閣連立交渉は難航し、約 4 ヵ月に及ぶ交渉 の結果、2000 年 2 月 3 日、国民党と自由党による中道右派連立政権が成立した。連 立政権の閣僚人事は、それまでは連立与党間で外相と内相、蔵相と経済相を分け合う のが通例であったが、同政権ではこの慣例を破り、国民党が、首相、外相、内相、経 済相と、財務相ポスト以外の重要ポストを押さえた。首相には、国民党のシュッセル 党首(改選前の前政権では外相)が就任した。排外的な主張を党是とする自由党の政 権参加は、他の EU 諸国、米国、イスラエルからの激しい批判を招き、EU14 ヵ国は オーストリアとの政治的対話中止など制裁措置を発動した。なお、周辺中欧諸国は、
EU とは一線を画した対応をとった。
これに対しオーストリア政府は、その解除を要求し、同年 5 月、EU が 6 月までに 制裁を解除しない場合は、秋に国民投票を実施する計画を、閣議で決定した。EU 側
は 6 月末、アハティサーリ前フィンランド大統領をはじめとする 3 人の有識者から なる賢人グループを設置し、オーストリアの難民・移民政策や少数民族対策について の調査を委ねた。同賢人グループによる調査報告を踏まえ、制裁措置は 2000 年 9 月 に解除されるに至った。この間、2000 年 2 月末、ハイダー氏は自由党党首の座を退 いた。
こうして波乱の幕開けでスタートしたシュッセル内閣であったが、連立も 2 年目 に入り、財政赤字削減、経済構造改革(国営企業の民営化や規制緩和)、年金・社会 保障制度改革等の課題に取り組んできたところ、2002 年 9 月、自由党出身のリース
=パッサー副首相(自由党党首)とグラッサー財務相が、党内での路線対立を理由に 辞意を表明したことで連立政権は解体し、2002 年 9 月 19 日、シュッセル首相は議 会を解散、11 月 24 日に総選挙を行うことになった。
連立の崩壊
連立政権の崩壊は、直接的には税制改革(減税)をめぐる自由党の内紛が原因とな った。国民党のシュッセル首相と自由党のリース=パッサー副首相が率いる連立政権 は、長年続いた社会民主党政権で 1,235 億ユーロ(GDP の約 63%)にまで累積した 財政赤字の削減を最優先の公約とし、2002 年単年度での財政均衡を目標に、財政改 革を急速に進めていた。
その内容は、年金制度改革など福祉部門も含め、国民に負担を強いるものであった ことから、労働者層を中心とする有権者の支持を失うことになった。その結果、特に 労働者層を支持基盤とする自由党は、シュタイヤマルク州、ブルゲンラント州、ウィ ーン市で行われた地方選で大敗した。
これに対し、自由党の実質的な指導者であるケルンテン州のハイダー知事(前党首)
は、「敗因は連立政権におけるテクノクラート達にある」として、財政改革を進める グラッサー財務相ら連邦レベルにおける自由党幹部を批判、政策の転換を強く求める とともに、できるだけ早い時期の減税実施を提唱した。しかし、グラッサー財務相ら は「景気と財政の動向を見た上で、2003 年の税制改革を決めたい」と慎重な姿勢を 保っていた。
その後、景気停滞による税収減と社会保障費の増大により、財政改革の見通しはさ
らに暗くなり、加えて 2002 年 8 月中旬には大規模な水害が発生したことから、政府 は被災者支援を優先することを理由に、税制改革を 2004 年に延期することを決定し た。これに対し、2003 年 10 月に予定されている総選挙前の減税をあくまで希望す る自由党内のグループが、臨時党大会の開催を要求。最終的には同党の連邦党大会評 議員 750 人のうち約 400 人が、臨時党大会の開催要求に署名した。
その後、自由党内での長時間に及ぶ討議や調停工作にもかかわらず、党内での合意 が得られず、9 月 8 日夜、リース=パッサー副首相、グラッサー財務相、ベステンタ ーラー国民議会自由党会派会長の 3 人が、党内の支持を得られないことを理由に辞 任を表明。これを受けて、シュッセル首相は、「内紛を抱えたパートナーと連立は維 持できない」として連立を解消し、総選挙に踏み切ることになったものである。
自由党内紛の背景には、税制改革ばかりでなく EU 東方拡大などの重要政策をめぐ って、国民党寄りの独自路線を歩み始めている党首のリース=パッサー副首相やグラ ッサー財務相らに対し、同党の実質的な指導者であるハイダー知事が、自らの指導力 を回復しようと画策したものとみられている。
2002 年総選挙−自由党の後退
11 月 24 日に行われた国民議会(下院、定数 183)総選挙の結果、与党の国民党 が得票率を前回選挙の 26.9%から 42.3%へと大幅に伸ばし、大勝した。一方、内紛 を起こした自由党は、前回の得票率 26.9%から 10.0%へと大幅に後退した。前回 33.2%に得票を減らし、かろうじて第 1 党を維持した社会民主党は、36.5%とわず かに支持を伸ばしたにとどまり、緑の党も得票率は前回の 7.4%から 9.5%に伸びた が、当初予想されていたような勢いは見られなかった。
今回の選挙での主な争点は、これまで現政権が強力に進めてきた行財政改革の是非、
失業・景気対策、EU の東方拡大などであった。野党の社会民主党は、これまでの国 民党・自由党連立政権による社会保障をも含めた財政削減策を、社会的弱者の負担を 増やすものとして反発し、また、最近の景気後退に伴う失業増加についても、現政権 の対策は不十分として強く批判した。
一方、EU の東方拡大については、自由党がテメリン原発問題や、第 2 次大戦後の ズデーテン地方ドイツ人排斥問題の解決をチェコの EU 加盟の前提条件にすることを
主張、「EU 東方拡大に疑問を持つ人は自由党に」という選挙キャンペーンを繰り広 げた。開票後の調査によれば、自由党が失った票の 3 分の 2 がこれまでの連立相手 の国民党支持に移っており、内紛を起こした自由党が支持を落としただけで、基本的 には現政権の政策が多くの有権者から是認されたとみることができよう。また、中・
東欧諸国と国境を接する地域でも、自由党は大幅に得票率を減らしており、EU 東方 拡大に疑問を呈する同党キャンペーンは結局、支持を得られなかったものとみられる。
獲得議席数は国民党 79(改選前 52)、社会民主党 69(同 65)、自由党 18(同 52)、緑の党 17(同 14)で第一党の座を維持した国民党は、3 ヵ月にわたり各党と様々 なレベルで政権協議を行ってきたが、結局自由党との間で連立政権の維持で合意が成 立し 2003 年 2 月 28 日、第二次シュッセル内閣が発足の運びとなった。自由党は第 一次連立内閣では、12 閣僚ポストのうち 5 ポストを占めたが今回 3 ポストに減った。
シュッセル首相と自由党のハウプト党首は合同記者会見で、財政赤字対策として、
早期退職者(男性 65 歳未満、女性 60 歳未満)に対する年金の早期支給制度の廃止 や低所得者に対する非課税限度引上げなどが盛り込まれた新政策を発表した。
一方、2000 年にハイダー党首(当時)率いる自由党との連立政権が発足した際、
他の EU14 ヵ国とはオーストリアと政治レベルでの 2 国間公的接触や要人の往来中 止等の制裁措置を発動する事態となったが、今回そのような動きは見られない。
社会民主党から 18 年振りの大統領が誕生
2004 年 4 月 25 日、大統領選挙が行われ、社会民主党の候補者で議会副議長であ るハインツ・フィッシャー氏が、対立候補である外相のベニータ・フェレロヴァル ドナー氏を小差で破り勝利した。フィッシャー氏の得票率は 52.4%、後者は 47.6%
であった。フィッシャー氏は 65 歳、18 年振りの社会民主党出身者である。同氏は 7 月 8 日宣誓し、現職のトーマス・クリステル氏と交代した。なお、大統領職は象徴 的色彩が強いことから、選挙戦事態が盛上がりに欠け、関心も低下していることから、
得票率は 1980 年の 90%台から今回は 70.8%へと減少している。
欧州議会をめぐる動き
2004 年 6 月 13 日、欧州議会選挙が行われ、2 年前に行われた総選挙結果を反映
した結果となった。即ち 2 大政党が躍進し、自由党は大幅に議席を減らした。社会 党は 33.4%(前回 99 年の時は 31.7%)で国民党の 32.7%を若干上回り、緑の党も 12.8%(同 9.3%)と増勢したが、自由党は 6.3%で前回の 23.4%から激減した。た だ、他の EU 諸国が欧州議会選挙で政権与党が票を減らすなかで、オーストリアは与 党国民党が 1 議席であるが支持率を増加させた。
こうしたなか、既存政党に属さない独立候補者の動きがあった。ジャーナリストで あるハンス・ピーター・マーティン氏は独立候補者として 14%の支持率を得、新議 会で 2 議席を獲得した。同氏は 1999 年の欧州議会選挙のとき、社会民主党の有力候 補として選出されたが、議会での経費乱用暴露をめぐる動きで 2004 年初めに同党か ら除名されている。しかし、今回オーストリアの有力タブロイド紙・クローネ・ツァ イトングの支持を得て、欧州議会の改革と透明性を訴えて勝利を収めた。今回の成功 に気をよくした同氏は、国民議会レベルでも中道左派系の新党を結成する意向である と伝えられている。
対外関係
オーストリアは 1955 年の独立後、10 月に憲法で永世中立を規定した。国連には 独立当初より加盟しており、ウイーンは第 3 の国連都市として IAEA(国際原子力 機関)、UNIDO(国連工業開発機構)等国連諸機関の本部が置かれている。また、
OSCE(欧州安全保障協力機構)事務局、OPEC(石油輸出国機構)本部など多くの 国際機関の所在地ともなっている。NATO には非加盟だが協力関係にある。
EU には 95 年 1 月に加盟し、98 年には議長国も努めた。その後の EU の東方拡大 の流れを受けて近隣の EU 加盟候補諸国との「地域的パートナーシップ」構想を打ち 出すなど、EU の枠組みの中で中・東欧諸国との結びつきを強化する方向にある。
《最近の動 *- き》
2004 年 5 月 1 日、新たに 10 ヵ国が EU に加盟した。今回の EU 拡大は、地理的 にも投資的な観点からオーストリアと密接につながっており、政府は新加盟国の EU 委員会での議席と投票権を維持することを強力に推し進めながら、新加盟国の EU 内 における立場を擁護するために、これらの国と良い関係を構築していくことになろう。
しかし、近隣の新加盟国は、低い税金や安い労働力を武器にして外資の勧誘や市場進 出を図っており、オーストリアにとって同時にあらたな挑戦をつきつけられた。EU 拡大が、移民の増加をもたらし、ひいては国内の失業率の上昇をもたらすなかで、政 府は新加盟国からの自由な労働移動を制限するための暫定的措置を採用した。
一方、2004 年 6 月 18 日の EU サミットで加盟各国から承認された EU 条約に対 してはオーストリア議会は圧倒的多数で支持した。シュッセル首相は、今後の発展に 向け新しい展望が開かれたとし、欧州市民にとっては基本的権利憲章の具体化、EU 外相の設置、加盟国間の公平化、反テロ闘争に対する取り組みなど EU 加盟国に巨大 な改善をもたらすと述べた。社会民主党や緑の党などの野党は、同条約を賞賛したも のの、当初案よりも大幅に後退した内容に失望感を示した。
1 経済構造
オーストリアの経済は自由競争が原則の市場経済であるが、経済的・社会的協力(ソ ーシャル・パートナーシップ)により市場秩序が維持される。いわゆる社会的市場経 済により、経済問題を利益団体間の自由な話し合いにより解決する。とくに賃金、物 価政策がその代表例といえる。
戦後復興期に原料産業を中心とした基幹産業国有化政策を反映して、国営オースト リア産業持株会社(⑩ AG)などのもと、主要企業の直接、間接的な政府保有が色濃 くなっている。しかし、最近は EU 参加への適応や国際競争力強化のリストラ促進の ため、国有企業の民営化が進められてきた。民営化は 1993 年所期の目的を達成した が、以降ひきつづき⑩ AG は民営化エージェントとして機能した。
製造業、サービス業が産業の中心で農林業の比重は小さい。名目 GDP に占める生 産構成は 2002 年の場合、農林業 2.1%、エネルギー、水道、建設を含む第 2 次産業 31.7%、その他第 3 次産業 66.2%である。
国土が狭いわりに鉱物性資源が比較的豊かで、金属工業は古くから発達し、欧州の 武器庫といわれていた。第 2 次大戦後は、重要な産業部門の国有化を行うなど、積 極的な産業政策を展開し、重化学工業部門の発展をみせた。
また美しい観光資源は、豊かな歴史とあいまって観光産業が発達し、重要な外貨獲 得源となっており、恒久的な貿易赤字を補填している。従って環境への対応が厳しい。
観光国でありまた福祉国家としてのオーストリアでは、環境保護は最優先の社会的、
経済的重要課題である。廃棄物再利用をはじめ、水質保全、森林枯渇対策、有害廃棄 物削減、国立公園維持その他に厳しい対策を立てている。
人口が 807 万人(2001 年央)と少なく国内市場が限られていること、地勢的に中 欧に位置し、従来、東欧と中欧・西欧との仲介貿易の拠点や懸け橋となっていたこと
から、両地域への貿易依存度が非常に高い。
中小企業の比率も非常に高い。OECD の調査(1998 年初)によると、24 万 2,653 事業所中、従業員 100 名以上の事業所数は 1.4%の 3,290、その従業員数は 114 万 人で全体の 46%。従業員 99 名以下の事業所数は 23 万 9,363 で全体の 98.6%、従 業員は 54%の 134 万人となっている。
オーストリアの人口構成も少子高齢化の傾向を示している。2000 年の 15 歳以下 の人口は総人口の 16.7%だが、2030 年には 14%に低下、一方、60 歳以上の構成比 は同期間に 20.7%から 32%に上昇すると予測されている。
オ ー ス ト リ ア は 豊 か な 国 で 2003 年 の 国 民 1 人 当 り GDP は 3 万 1,070 ド ル、
EU15 ヵ国中 5 番目にランクされる。
対 GDP 比で公共財政赤字 0.2%、公的債務 67.8%、失業率 6.9%(EU 調整値で は 4.3%)、消費者物価上昇率 1.8%となっている。1994 年に欧州経済地域(EEA)
に参加して以来、政治、社会面と並び経済面でも EU 法体制への適合に努め、95 年 EU に加盟。99 年初から欧州経済通貨統合(EMU)の第 3 段階へ移行した。
2 経済動向
オーストリア経済は、EU 加盟による競争激化やシリング高で 1995 年の GDP 実 質経済成長率は 1.7%と低迷し、景気後退の影響から中小企業の倒産が増え、96 年 の倒産件数は約 5,400 件となり戦後最悪のレベルを記録した。97 年には景気は持ち 直したが、98 年後半に輸出の伸びが弱まると景気は安定性を欠き、上昇と下降を繰 り返した。99 年にはユーロ安の基調が続き、EU 域外への輸出が大きく後押しされ たため、輸出の不調による経済の減速は 99 年央には峠を越え、同年の実質 GDP 成 長率は EU 全体の平均とほぼ同じ成長率の 2.2%となった。
2000 年に入ってもユーロ安は続き、加えて北米市場の好況や中・東欧市場向けの 輸出が堅調で、GDP 伸び率は 3.4%の増加となった。しかし、2000 年後半に自動車 保険税、タバコ税、エネルギー税、公共交通料金などの引上げを行ったこと、米国経 済の減速、原油価格高騰とエネルギー価格の上昇などにより、国内経済は陰りをみせ 始めた。
2001 年は、米国の景気低迷に伴う欧州各国の景況悪化、オーストリア国内建設部 門の不振、均衡財政を目指す政府の公的支出削減策等により、景気は停滞、実質経済 成長率は 0.8%へと減速した。景気悪化に伴い 2001 年の 10 月から失業者が急速に 増え、労働局によれば過去 10 年間で最悪であった 1997 〜 99 年の水準 30 万人強に 近づいた。こうした状況に対して政府は、建設部門に対する支援を中心に景気浮揚策 を進め、2002 年 1 月に 8.9%に達した失業率は同 4 月には 6.9%まで下落した。
2002 年に入り景況感は徐々に改善したものの、最大の輸出先である EU 諸国、特 にドイツの景気後退、8 月の洪水による国内生産能力の低下、夏以降の株式急落、欧 州景況の悪化、企業の設備投資の減退などにより、年後半の景気が伸び悩み、実質経 済伸び率は 1.1%の低成長にとどまった。個人消費の低迷、設備投資の減退などで景 気が後退するなか、観光部門だけは前年に続きテロへの懸念から、航空機での旅行を 敬遠する周辺諸国からの観光客が増えて順調であった。
2003 年の動向
2003 年第 1 四半期の経済成長率は前四半期の伸び 1.1%を下回り 0.5%増へと半 減した。国内需要が弱まり、貿易黒字幅が低下し経済成長の足を引っ張った。建設部 門は回復の兆しはみられたが企業全体の投資意欲は低下した。国内需要がかなり回復 した第 2 四半期の成長率は 0.9%増へと前四半期よりもアップした。企業投資は若干 回復し、建設部門も上昇トレンドに向かったが、輸出は急激なユーロ高の影響で前年 同期比 4%減となり、GDP のマイナス要因となった。
第 3 四半期に入って貿易収支が経済成長を若干押し上げ 0.8%増となった。個人消 費はかなり落ち込んだが、企業投資は回復基調が続き、製造業や建設部門が上昇基調 に入った。第 4 四半期の GDP 伸び率は、資本支出が急激に減少、貿易収支もマイナ ス要因となり 0.5%増へと低下した。製造部門や建設部門は更に回復したものの、通 年の GDP 伸び率としては近年では最も低い 0.7%の伸びとなった。しかし、EU 全体 の景気も停滞したことからオーストリアの伸びは EU の平均の伸びであった。
2001 年と 2002 年と比較した場合、年後半に個人消費が落ち込んだが 2003 年全 体としては国内需要が景気を牽引した。即ち建設投資が上向き機械・設備投資の力強 さに支えられ、総固定投資は 4.3%の増加となった。しかし、景気の悪化に伴い失業 率は拡大し続け年間の失業率は 7%となった。消費者物価はエネルギー価格の騰貴が あったものの適度な上昇にとどまった。ドイツなどオーストリアの主要貿易パートナ ーの需要不足や強いユーロ高の影響で輸出は減少し、貿易収支は第 3 四半期に若干 黒字となったが通年では 14 億ユーロの赤字となった。
2004 〜 05 年の動向
2004 年第 1 四半期の GDP 伸び率は 0.7%増となり、EU15 ヵ国平均の 1.6%増を 下回った。国内の工業生産活動は上向きつつあるが、全体の国内需要が依然として弱 い。これは、個人消費の伸びは若干回復したが、家計需要がしっかりしてないせいで ある。資本支出の伸びは前年下半期に比べて減少したものの、総固定資本は増加しつ づけている。年初からの国内経済の牽引車は国内需要と外国貿易である。主要貿易パ ートナーのいくつかの国で需要回復の兆しがあるが、商品及びサービス輸入の増加率 が上回っており、これが GDP の伸び率をマイナス 0.4%へと押し下げた。失業率は
第 2 四半期までゆるやかに上昇を続け前年同期比で 0.3%増加した。消費者物価は、
エネルギー税の値上げやタバコ税の課税により第 2 四半期には前年同期比 2.3%上昇 した。
3 年連続の低成長率を記録した 2003 年であったが 2004 年の国内経済はゆっくり と推進力をつけつつある。回復の推進力は前年から続いている健全な資本支出である。
2004 年の経済活動は 1 年を通して、主に個人消費の増加と固定投資の更なる拡大に 裏づけされた国内需要に牽引されるであろう。輸出も増加が予想されるものの、輸入 の勢いがそれを大きく上回り貿易収支からは GDP にプラスの影響を期待できない。
前年下期に低下した個人消費は、家計における可処分所得が伸び悩み、消費マインド が落ち込んでいることから 2004 年も前年に近い伸びが予想される。ただ、2005 〜 06 年に向けては労働需要や実質賃金の高まり、2005 年の所得税の削減などで可処 分所得を押し上げ、個人消費は大きく伸びることが予想される。政府投資の拡大や輸 送インフラの更新により、資本支出や建設投資は前年下期から力強く回復している。
2005 年には設備稼働能力の増加、ビジネスマインドの回復、低金利や受注増に裏づ けされ、企業投資の増加率は大幅にアップするであろう。2004 年の商品・サービス 輸出は近隣諸国の需要増により回復してきたが、2005 〜 06 年は輸入の伸びが輸出 の伸びを大きく上回ることになろう。
2003 年のインフレ率は 1.3%であったが、2004 年には原油価格の高騰、年初から のエネルギー課税により、上昇圧力が高まっている。8 月には 1 月の 1.2%から 2.2
%に上昇した。ただ、ユーロ高が続いていることから、このインフレ圧力を緩和して いる。2004 年全体のインフレ率は 1.9%、2005 年は原油価格の高騰が収まること、
ユーロの対米ドルレートがかなり高めであることから 1.8%程度が見込まれる。
実質GDP成長率(%)
(内訳)
消費支出 設備投資 建設投資 輸出 輸入
工業生産伸び率(%)
消費者物価上昇率(%)
賃金上昇率(%)
失業率(%)
国際収支(10億ユーロ)
経常収支 貿易収支
財政赤字GDP比(%)
為替レート(ドル/ユーロ)
注:△はマイナスを意味する。以下同様。
〔出所〕 WIFO、2004年9月
2003(実績)
0.7 1.3 5.3 3.3 2.7 6.3 1.7 1.3 2.2 7.0
△2.05
△3.83
△1.1 1.132
2004(見通し)
1.9 1.6 2.2 0.7 8.3 5.3 2.9 2.1 2.1 7.1
△1.62 3.95
△1.3 1.226
2005(見通し)
2.5 2.5 3.5 1.7 6.8 7.1 3.0 2.0 - 6.9
△1.92 2.90
△1.9 1.293 2002(実績)
1.4 0.8
△2.8
△0.7 5.2 0.8 0.7 1.8 2.4 6.9 0.37
△2.40
△0.2 0.945 2001(実績)
0.8 1.4
△2.3
△2.5 7.5 5.7 1.4 2.7 3.1 6.1
△4.13
△1.47 0.3 0.896 主要経済指標と経済見通し
個人消費支出 公共支出 総固定資本形成 最終国内需要 在庫調整a 総国内需要
輸出(商品、サービス)
輸入(商品、サービス)
純輸出 GDP(市場価格)
GDPデフレーター 消費者物価指数 個人消費デフレーター 失業率
家計貯蓄率b 政府財政収支 経常収支c
注:*…市場価格、10億ユーロ
a …実質GDP成長率(実質GDPの対前年増減率)への寄与率 b …可処分所得に占める割合
c …GDPに対する割合(%)
2005 2.7 0.7 4.4 2.6 0.0 2.7 6.8 7.6
△0.3 2.4 1.1 1.1 1.1 5.8 9.1
△1.9
△0.3 2004
1.3 0.7 3.3 1.8 0.2 1.5 4.7 4.3 0.3 1.5 1.6 1.2 1.3 5.9 8.5
△1.3
△0.2 2003
1.3 0.7 4.3 1.3
△0.6 1.9 1.0 3.0
△1.0 0.7 2.0 1.3 1.8 5.7 8.5
△1.4
△0.6 2002
0.8 0.1
△2.8
△0.2
△0.1
△0.3 3.7 1.2 1.4 1.4 1.4 1.7 1.1 5.5 8.2
△0.4 0.4 2001
1.4
△1.4
△2.3 0.0
△0.1
△0.1 7.5 5.9 0.9 0.8 2.1 2.3 2.2 4.8 7.5 0.1
△1.9 2000*
117.4 39.7 49.78 206.8 0.7 207.5 103.9 105.2
△1.3 206.7 - - - - - - - OECDによる経済見通し
〔単位:%、95年価格〕
GDP(国内総生産)
(名目伸び率%)
GDP(国内総生産)
(実質伸び率%、1995年価格)
個人消費支出 (伸び率、%)
公共支出 (伸び率、%)
固定資本形成 (伸び率、%)
輸出(商品・サービス)
(伸び率、%)
輸入(商品・サービス)
(伸び率、%)
1人当りGDP(ユーロ)
貿易収支(10億ユーロ)
経常収支(10億ユーロ)
消費者物価(%)
失業率(%)
(EU方式による失業率)
〔出所〕 オーストリア統計局、WIFO(2004.10.1)
2001 212.5 2.8 198.6 0.8 111.8 1.3 36.6
△1.4 46.1
△2.3 107.2 6.9 103.7 5.9 26,840 0.6
△4.1 2.7 6.1
(3.6)
2002 218.3 2.7 201.2 1.3 112.9 0.9 36.7 0.1 44.9
△2.8 111.1 3.7 105.0 1.3 27,440 3.8 0.4 1.8 6.9
(4.2)
2003 223.9 2.6 202.7 0.7 114.3 1.2 36.9 0.7 47.0 4.7 113.9 2.5 110.7 5.5 27,930 1.7
△2.1 1.3 7.0
(4.1)
2000 206.7 4.9 197.1 3.5 110.4 3.3 37.1
△0.1 47.2 6.4 100.2 14.2 98.0 11.6 25,489
△3.0
△5.4 2.3 5.8
(3.7)
1999 197.1 3.4 190.4 2.7 106.9 2.6 37.2 3.0 44.4 2.0 87.7 8.5 87.8 9.0 24,337
△3.4
△6.3 0.6 6.7
(4.0)
1995 172.3 4.2 172.3 1.6 96.8 2.6 35.2 1.3 41.9 5.4 63.4 3.0 64.8 5.6 21,676
△4.9
△4.5 2.2 6.6
(3.9)
主要経済指標
〔単位:特記以外10億ユーロ、%〕
(金額、10億ユーロ)
農林水産 鉱業 製造業
電気・ガス・水道 建設
商業(1)
ホテル・レストラン 輸送・通信 金融 不動産(2)
行政・国防・社会保障 その他サービス 銀行サービス帰属分 税金・補助金 GDP
(前年比増減、%)
農林水産 鉱業 製造業
電気・ガス・水道 建設
商業(1)
ホテル・レストラン 輸送・通信 金融 不動産(2)
行政・国防・社会保障 その他サービス 銀行サービス帰属分 税金・補助金 GDP
注:(1)卸売、小売、自動車・自動二輪車・家庭用品を含む。
(2)不動産、リース、各種ビジネスサービス
〔出所〕 オーストリア統計局
2002 4.69 0.74 42.22 4.48 15.15 25.15 8.99 14.79 13.25 35.29 11.84 29.01 9.89 22.64 218.33
△0.5 7.4 2.1 2.7 1.2 0.3 6.8 4.2
△0.5 4.2 0.6 2.1
△3.9 4.5 2.7
2003 4.59 0.78 42.82 4.62 15.73 25.68 9.44 15.08 13.17 36.87 12.09 30.07 9.85 22.88 223.96
△2.0 4.5 1.4 3.1 3.8 2.1 5.0 1.9
△0.6 4.5 2.2 3.7
△0.4 1.0 2.6 2001
4.71 0.69 41.37 4.36 14.98 26.06 8.42 14.20 13.33 33.86 11.77 28.41 10.29 21.67 212.51 3.2 8.2 2.5
△1.8
△1.1 0.6 6.2 6.0 1.4 7.9 0.7 5.9 7.2
△0.9 2.8 2000
4.56 0.64 40.35 4.44 15.14 24.92 7.93 13.39 13.15 31.39 11.69 26.82 9.60 21.82 206.67 3.7 2.5 7.7
△6.7 1.7 6.8 8.4 3.3 11.9 8.6 0.9 3.6 14.9 1.4 4.9 1999
4.40 0.63 37.48 4.76 14.88 23.32 7.31 12.96 11.75 28.91 11.58 25.88 8.36 21.57 197.06 2.3 2.1 3.5 1.0 2.6 2.2 5.1 0.9
△3.9 4.8
△1.3 2.9
△7.7 7.6 3.4 1995
4.12 0.59 32.33 4.62 12.78 20.87 6.37 12.03 11.07 22.74 10.97 24.93 8.35 17.21 172.29
△3.4
△3.0 7.3 5.1 3.4 4.7 4.2
△2.9 1.7 11.9 2.0 5.7 5.2
△2.1 4.2
GDPの推移(産業別粗付加価値生産額、名目)
部門
(金額、10億ユーロ)
農林水産 鉱業 製造業
電気・ガス・水道 建設
商業(1)
ホテル・レストラン 輸送・通信 金融 不動産(2)
行政・国防・社会保障 その他サービス 銀行サービス帰属分 税金・補助金 GDP
(前年比増減、%)
農林水産 鉱業 製造業
電気・ガス・水道 建設
商業(1)
ホテル・レストラン 輸送・通信 金融 不動産(2)
行政・国防・社会保障 その他サービス 銀行サービス帰属分 税金・補助金 GDP
注:(1)卸売、小売、自動車・自動二輪車・家庭用品を含む。
(2)不動産、リース、各種ビジネスサービス
〔出所 〕 オーストリア統計局
2002 4.68 0.62 40.19 5.85 13.48 24.78 7.42 14.49 13.64 29.59 10.77 25.48 10.64 20.82 201.17
5.7 3.1 0.5 5.3
△0.5 1.2 2.4 1.5 0.1 2.1
△0.4 1.2
△2.7 0.8 1.4
2003 4.46 0.63 40.11 5.97 13.87 25.11 7.57 14.65 13.45 30.03 10.74 25.85 10.62 20.69 202.51
△4.8 2.0
△0.2 2.0 2.9 1.3 2.0 1.2
△1.4 1.5
△0.2 1.4
△0.2
△0.6 0.7 2001
4.43 0.60 39.99 5.56 13.55 24.49 7.25 14.27 13.63 28.98 10.81 25.19 10.94 20.67 198.46
0.4 5.7 1.4 3.6
△3.2 0.0 3.4 1.3
△1.0 5.0
△1.4 0.3 4.1
△0.2 0.8 2000
4.41 0.57 39.44 5.36 14.00 24.49 7.01 14.08 13.77 27.59 10.96 25.11 10.51 20.70 196.99
△0.4
△2.0 6.5
△0.8 0.8 3.7 5.5 2.1 5.2 6.4
△0.6 1.8 5.5 1.8 3.4 1999
4.43 0.58 37.03 5.41 13.89 23.62 6.64 13.80 13.09 25.94 11.03 24.65 9.96 20.33 190.47
△3.2
△0.8 3.1 3.9 1.4 3.0 2.8 2.4 4.2 3.2
△3.4 1.6 4.5 7.9 2.7 1995
4.12 0.59 32.33 4.62 12.78 20.87 6.37 12.03 11.07 22.74 10.97 24.93 8.35 17.21 172.29
23.7
△4.7 5.8 4.3 1.1 3.3
△1.2
△1.6
△0.5 4.3
△0.7 0.2 5.3
△5.2 1.6
GDPの推移(産業別粗付加価値生産額、実質、95年価格)
GDPの推移(産業別粗付加価値額、95年)
250
200
150
100
50
0
(10億ユーロ)
1995 1999 2000 2001 2002 2003
税金−補助金 銀行サービス帰属分 その他のサービス 行政・国防・社会保障 不動産
金融 輸送・通信 ホテル・レストラン 商業
建設
電気・ガス・水道 製造業 農林水産 鉱業
1 貿易構造
オーストリアは先進工業国の一員ではあるものの、人口 807 万人程度の中小国で あるため国内市場には限りがある。このため貿易への依存度が高い。2003 年の輸出 の GDP 比は 34.2%、輸入のそれは 35.3%(いずれもユーロ・ベースの fob 輸出入 額の名目 GDP に対する割合)であった。さらに、国際収支ベースの商品・サービス 輸出入の GDP に対する寄与度をみると、1995 年には 74.4%であったが、2002 年 には 97.2%と、ほぼ 100%に近づいている。
とりわけ、1995 年の EU 加盟以降の貿易の伸びはめざましい。90 年から 94 年 までの間の輸出の年平均伸び率が 6%であったのに対し、95 年から 2000 年の間の それは 10.6%であった。輸入の伸び率も年平均 9.1%を記録している。この結果、
GDP に対する貿易赤字の割合も 94 年の 5%から 2000 年は 2.7%にまでほぼ半減し た。なお、2002 年には黒字に転換している。
商品貿易構造としては、原材料の割合が低く、輸出入とも製品、半製品が 9 割近くで、
貿易相手国との間で工業製品の水平分業が著しく進展しているといえる。
主要輸出品は、機械・輸送機器でほぼ全体の 4 割強を占める。そのほか医薬品、
金属製品、鉄鋼、紙・同製品など。近年、原料・半製品に代わり、付加価値の高い完 成品の輸出(2003 年で全輸出総額の 78%)が増加する傾向にある。
輸入でも、機械・輸送機器がほぼ 4 割を占め、その 11%が自動車である。そのほか、
食料品、化学品、繊維・衣料、エネルギー製品などが主要輸入品。
地域別には、特に輸出で全体の 30%以上、輸入で 40%以上の比重を占めるドイツ をはじめとして、EU および EFTA など西欧諸国への依存度が高く、輸出入ともに 6 割前後となっている。オーストリアは旧コメコン諸国との取引が盛んであったことか ら、東西貿易の中継地として、CIS・東欧諸国との輸出入が堅調で、92 年以降、特に中・
東欧との取り引きが増加している。
これに加えて近年では、ASEAN 諸国をはじめとするアジア地域や中南米との関係 強化にも力を入れている。
輸入額は輸出額を常に超過し、オーストリアは伝統的に貿易赤字国となっていたが、
近年この赤字幅は大幅に縮小している。この赤字は観光、運輸その他のサービス収支 の黒字で縮小されているが、経常収支の赤字の原因となっている。
2002 年の動向
欧州、特にドイツやイタリアの景気後退は、オーストリアの輸出を鈍化させた。
2000 年に前年比 15.6%増と大きく伸びた輸出は、2001 年の第 2 四半期から減速し、
2002 年は同 4.1%増の 773 億ユーロとなった。
2002 年の輸出を地域別にみると、EU 諸国が輸出の約 6 割を占め、依然、オース トリアにとって最も重要な市場となっている。しかし、EU 内でも特に重要なパート ナーであるドイツへの輸出は、前年比 2.2%増と低い伸び率を示した。輸出の約 18
%を占め、EU に次ぐ重要市場である中・東欧諸国では、クロアチア、スロベニアを はじめとする旧ユーゴスラビア諸国やルーマニアなどの南東欧諸国への輸出が好調で あった。その反面、中・東欧諸国中で最も大きな市場であるハンガリーとチェコは同 0.9%増、3.6%増といずれも低い伸びにとどまり、中・東欧諸国全体では 6.9%増で あった。米国向け輸出は、ユーロ高の高進を反映し 1.6%の微増にとどまった。この ほか、中南米諸国向け輸出は 24.7%減と大幅に縮小した。一方、アジア諸国、特に 中国向け輸出が 37.6%増と着実な伸びを示し、日本を抜いてアジア地域最大の輸出 相手先となった。
過去 10 年の傾向をみると、オーストリアの輸出相手国・地域には明らかな変化 がみられる。EU のシェアは、1992 年には全体の 68.1%であったが、2002 年には 60.2%に減少した。一方、中・東欧諸国は、同 11.6%から 17.5%に増加、北米も輸 出額で 3.8 倍、シェアでは同 3.4%から 5.2%と顕著な伸びとなっている。さらに、
前述のとおり中国向け輸出が急増している。
2002 年の輸入は、設備投資の減少、耐久消費財等に対する国内需要低迷により前 年比 2.2%減の 769 億ユーロであった。この結果、02 年の貿易収支は、1945 年以降
初めて 3 億ユーロの黒字に転じた。
輸入を地域別でみると、EU 諸国からの輸入が全体の 65.8%と大きな割合を占める が、前年比でみると 1.6%減少した。一方、EU 諸国に次ぐ重要なパートナーである中・
東欧諸国は、ルーマニア、ブルガリア、クロアチアなどの南東欧諸国からの輸入が好 調で、全体では同 0.9%増であった。
商品別でみると 2002 年の輸出は、燃料が前年比 26.4%増、化学品が 11.5%増で あった。特に化学品は米国向けが好調で、59.9%増となった。木材、パルプなどの 原料輸出は 3.4%増であった。これら原料の 6 割は、オーストリアにとって重要な輸 出先であるドイツ、イタリア向けである。また、紙、鉄鋼、非鉄金属などの中間製品
(原料別製品)、機械・輸送機器の分野では、輸出の伸びがそれぞれ 0.8%増、2.8%
増と鈍化している。機械・輸送機器の分野のうち自動車はオーストリアの輸出全体の 9.2%を占める最大の輸出産品となっており、2002 年の輸出は同 6.6%増と 2001 年 に引き続き好調であった。オーストリアでは 92 年からダイムラー・クライスラー社 との合弁会社が自動車の生産を開始している。
一方、輸入では国内景気の後退を反映し、ほぼすべての分野において伸びが鈍化し ており、特に原料別製品の輸入が前年比 6.6%減と落ち込みが大きい。また、機械・
輸送機器の分野も、通信機器、工作機械、自動車などいずれも輸入が伸び悩み、同 4.1%減と大きく落ち込んだ。
2003 年の動向
2003 年の貿易は、最大の輸出先である EU とりわけドイツ経済の冷え込みとユ ーロ高の影響から輸出が前年比 1.4%増の 784 億 7,100 万ユーロと低迷した。一 方、輸入は国内における堅調な設備投資を反映して、輸出を上回る 3.5%増の 798 億 3,100 万ユーロを記録した。この結果、2002 年に黒字に転換した貿易収支は 03 年 には再び 13 億 6,000 万ユーロの赤字となった。
輸出が低迷した結果、2003 年の実質 GDP 成長率は 0.7%増となり 3 年連続の低 成長となった。しかし、2004 年 5 月からの EU 拡大の影響が設備投資に前倒しの影 響を受け(6.2%増)、特に電気機械部門が 6.8%、自動車部門が 4.1%増と大幅の伸 びを示し、公共投資も活発に行われたことから景気を下支えした。
輸出を商品別にみると、全体の 4 割を占める機械・輸送機器が前年比 0.6%減、中 でも最大の輸出品目である自動車はドイツなど EU 諸国向けが振るわず 4.4%減とな った。また、ドイツの大手家電メーカー・グルンデイヒが倒産し国内の TV 工場が閉 鎖に追い込まれたことから通信機器は 16.2%減となった。一方、飲料・たばこは EU 向けにミネラルウォーターが好調で 28.7%増、燃料・エネルギーも 2003 年夏の猛 暑でドイツ、フランス向けの電力輸出が急増し 7.2%増となった。
輸出を地域別にみると、EU 諸国が輸出の約 6 割を占め最大の市場となっているが、
最大の貿易相手国であるドイツへの輸出は 1%弱の微増で EU 全体でも 0.5%増と停 滞した。好調だったのは中・東欧諸国(6.7%増)と CIS・ロシア(21.6%増)向けで、
ルーマニア向け(24.8%増)、ブルガリア向け(11.4%増)が目立つ。しかし、2003 年のユーロ高は輸出には逆風となり米国向け(1.8%増)、中・東欧最大の相手国ハン ガリー向けは 4.9%減、アジア・中東向けも 5.4%減と不振であった。02 年に航空機 の特需のあった中国向けはその反動で 2003 年は 23.3%減となった。
輸入を商品別にみると、機械・輸送機器が全体の 4 割弱を占めている。2003 年は 設備投資の増加を反映し同輸入は 4.3%増となった。この他、原油価格の上昇から石 油などの燃料輸入が 11.8%増、飲料・タバコが 9.1%増であった。
輸入を地域別にみると、EU が全体の 66%を占めている。重要なパートナーであ るブルガリア、スロバキア、チェコなど中・東欧諸国からの輸入が機械・輸送機器を 中心に年々拡大しており、2003 年も 12.4%と大きく増加した。ロシア・CIS 諸国か らの輸入は原油価格の上昇から 28%増もの大幅増となった。
2004 年の動向
2003 年後半に低迷した輸出は、04 年第 1 四半期に入って回復し前年同期比 4.1%
の増加になった。第 2 四半期に入っても輸出は好調で、4 月の商品輸出は 15%増、5 月は 10%増と大幅に増加している。これは、主要貿易パートナーである近隣諸国、
特にドイツの需要回復によるものである。例えば、第 1 四半期における EU15 ヵ国 向けの輸出の伸びは 3.4%であったのに対し、ドイツ向けは 7.6%増であった。また、
スロベニア、スロバキア向けなど新規 EU 加盟国向けは 10.4%の伸びであった。こ の結果 EU25 ヵ国向けに占める輸出シェアは 73%まで高まった。また、前年減少し
たアジア向けは、30%の増加となった。商品別では消費財の輸出が低迷し、機械や 輸送機器が 7.5%増と好調であった。
一方、第 1 四半期の輸入は国内需要の低迷を反映し 0.7%の微増にとどまった。4 月は若干回復したものの、5 月にはまた低迷している。同期間の EU15 ヵ国からの輸 入は 3.7%増であったのに対し、EU25 ヵ国でみた場合 5.2%の増加となった。対ド イツ輸入は大幅増、対米輸入は 12%減であった。商品別では資本財や中間財の輸入 が増加傾向、消費財は低迷している。
EU ドイツ イタリア フランス 英国 オランダ スペイン EFTA スイス 中・東欧諸国 ハンガリー チェコ ポーランド スロベニア ロシア 米国 アジア諸国 中国 日本 中南米 アフリカ
合計(その他を含む)
注:中・東欧諸国:上記以外にスロバキア、ルーマニア、ブルガリア、クロアチア、マケドニア、
ユーゴスラビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アルバニア、バルト三国を含む。
伸び率 0.5 0.9 5.5 1.8
△6.1
△6.3
△12.3
△0.8
△0.3 6.7
△4.9 7.1 2.5 10.8 18.2 1.9
△5.4
△23.3
△6.2
△7.3 1.2 1.4 2003
構成比 59.5 31.9 8.8 4.4 4.3 2.5 5.9 5.9 5.2 18.5 4.0 3.1 1.7 2.0 1.4 5.2 6.3 1.1 1.1 0.8 1.1 100.0 金額
46,729 25,011 6,903 3,490 3,387 1,988 1,604 4,633 4,060 14,495 3,173 2,407 1,334 1,549 1,132 4,084 4,945 897 855 620 882 78,471 2002
46,517 24,780 6,544 3,427 3,608 2,121 1,829 4,671 4,074 13,587 3,335 2,248 1,301 1,398 958 4,010 5,225 1,170 912 669 871 77,400 2001
45,146 24,160 6,323 3,391 3,467 1,854 1,764 4,475 3,862 12,699 3,316 2,151 1,215 1,283 941 3,933 4,857 845 909 876 909 74,251 オーストリアの輸出(主要国・地域別)
〔単位:100万ユーロ、%〕
EU ドイツ イタリア フランス 英国 オランダ スペイン EFTA スイス 中・東欧諸国 ハンガリー チェコ ポーランド スロベニア ロシア 米国 アジア諸国 中国 日本 中南米 アフリカ
合計(その他を含む)
注:中・東欧諸国:上記以外にスロバキア、ルーマニア、ブルガリア、クロアチア、マケドニア、
ユーゴスラビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アルバニア、バルト三国を含む。
〔出所〕 オーストリア統計局
伸び率 3.7 4.9 0.8 28.2
△11.1 4.7 14.8 4.7 3.3 12.3 1.5 17.4 5.4 18.5 28.0
△15.2
△1.5 25.4 9.0
△3.7 2.6 3.5 2003
構成比 65.9 40.8 7.0 4.8 2.2 3.0 1.7 3.7 3.3 14.3 3.2 3.3 1.2 1.8 1.7 4.0 8.5 2.2 2.2 0.7 1.3 100.0 金額
52,579 32,606 5,593 3,821 1,794 2,424 1,370 2,976 2,617 11,450 2,594 2,626 979 1,421 1,321 3,169 6,809 1,761 1,794 538 1,050 78,471 2002
50,678 31,086 5,548 2,981 2,017 2,553 1,194 2,841 2,533 10,191 2,556 2,236 926 1,200 1,032 3,735 6,911 1,405 1,646 559 1,024 77,400 2001
51,450 31,901 5,643 3,198 2,081 2,299 1,088 2,872 2,528 10,094 2,688 2,119 938 1,113 1,146 4,210 7,232 1,360 1,758 582 1,238 74,251 オーストリアの輸入(主要国・地域別)
〔単位:100万ユーロ、%〕
食料品 飲料・タバコ 原料 燃料 動植物油脂 化学品 うち医薬品 原料別製品 うち:紙・紙製品
鉄・鉄鋼
金属製品
機械・輸送機器 うち:原動機
工作機械
電気機械
自動車
その他工業製品 その他
合計
〔出所〕 オーストリア統計局
構成比 4.2 1.6 3.3 2.5 0.1 10.2 3.8 22.7 4.7 4.3 4.4 41.9 5.0 5.3 8.4 9.3 13.0 0.5 100.0 2003 金額 3,289 1,255 2,567 1,972 68 7,967 2,947 17,848 3,689 3,387 3,472 32,883 3,957 4,123 6,620 7,275 10,221 400 78,471 2002
金額 3,074 975 2,511 1,840 66 7,929 3,041 17,309 3,587 3,133 3,303 33,069 3,923 4,138 6,593 7,586 10,092 535 77,400 2001
金額 2,803 974 2,388 1,452 53 7,077 2,297 17,187 3,382 3,182 3,309 32,137 3,982 4,041 6,520 7,316 9,910 270 74,251 2000
金額 2,478 780 2,396 911 54 6,427 1,982 16,363 3,240 2,959 3,099 30,612 3,642 3,789 6,102 6,869 9,090 581 69,692 オーストリアの輸出(品目別)
〔単位:100万ユーロ、%〕
食料品 飲料・タバコ 原料 燃料 動植物油脂 化学品 原料別製品 うち:金属製品 機械・輸送機器 うち:電気機械
自動車
その他工業製品 うち衣料・衣服 その他
合計
〔出所〕 オーストリア統計局
構成比 5.2 0.7 3.7 8.0 0.2 11.2 16.0 3.9 39.2 7.4 11.2 15.3 3.9 0.6 100.0 2003 金額 4,153 542 2,940 6,407 124 8,929 12,783 3,103 31,313 5,922 8,958 12,198 3,135 444 79,831 2002
金額 4,029 497 2,960 5,731 126 8,683 12,507 3,025 30,020 5,881 8,643 12,184 3,091 444 77,104 2001
金額 3,937 437 2,930 5,500 110 8,229 13,264 3,252 31,612 6,238 9,022 12,431 3,127 241 78,692 2000
金額 3,535 376 3,014 4,899 111 7,572 12,502 2,965 30,819 5,894 8,611 11,814 2,925 278 74,938 オーストリアの輸入(品目別)
〔単位:100万ユーロ、%〕
オーストリアの輸出入(品目別) (2003年)
その他 工業製品その他
機械・輸送機器
原料別製品 化学品
動植物性油脂燃料 原料
飲料品・タバコ 食料品
その他
工業製品その他
機械・輸送機器 原料別製品 化学品
動植物性油脂 燃料
原料 飲料品・タバコ 食料品
輸入 輸出
2 対日関係
貿易動向
2002 年の動向
2002 年の対日輸出は、9 億 1,222 万ユーロで前年とほぼ同じ規模を維持した。一方、
対日輸入はオーストリアの需要低迷を反映し、前年比 6.4%減の 16 億 4,581 万ユー ロとなり 2 年連続の減少となった。これにより、対日貿易赤字幅は 7 億 3,359 万ユ ーロへと縮小した。
対日輸出を商品別にみると、従来最大の対日輸出品目である木材は同 3.8%増加した。
第 2 の品目である自動車の輸出も 6.8%増で引き続き拡大している。構成比では小さ いながらも、食料品が前年比 24.6%も急増した。日本国内における BSE(牛海綿状脳症)
問題の影響を反映し、肉及び肉製品が 330%増、飼料が 150%増と大幅に伸びた。また、
コンピュータ・事務用機器の輸出が急増しており(84.8%増)、一部のオーストリア製 品が日本の市場において競争力を発揮していることが証明されている。
日本からの輸入では、設備投資の不調を反映して 3 分の 2 強を占める機械・輸送 機器が 2 年連続の減少となった。ただし、最大の輸入品目である自動車・バイクは、
前年の大幅減から 9.7%の増加に転じている。個人消費の減速を反映して、主要輸入 品目の一つであるカメラ類も大幅に減少し同 19%減となった。
2003 年の動向
2003 年の対日貿易は、輸出が 6.2%減少の 8 億 5,525 万ユーロ、輸入が国内需要 拡大を反映して 9.0%増の 17 億 9,400 万ユーロとなった。これにより、対日貿易赤 字額は 9 億 3,875 万ユーロに拡大した。
対日輸出を商品別に見ると、日本の景気低迷を反映して最大の輸出品目である木材・
コルクが 12.4%減、自動車等が 22.3%減、有機化学製品が 19.5%減など多くの品目 が減少した。そうした中、「木質バイオマス」に関係する製品の増加が顕著で、木材 製品が前年比 6.7%増となった。また、家具も前年に続いて 7.6%増と拡大している。
一方、対日輸入は、全体の 8 割近くを機械・輸送機器が占めている。同項目は、