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で︑心から感謝申し上げたい︒

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Academic year: 2021

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(1)

集落の歴史地理

ここに歴史地理学紀要第九巻をお送りするにあたり︑感慨やまさに新たなるものがあります︒毎年

一冊ずっこの紀要が発行されて以来︑約一 O

年になり︑第一巻が発刊されたとき生れた子供は︑もう 大きく成長して小学校三年の秋を迎えている勘定となる︒この紀要が年とともに成長し︑ここまでく るためには関係者のなみなみならぬ苦労と︑ことに畠山文化財団の格別のご尽力があったればこそ

で︑心から感謝申し上げたい︒

このたびの紀要の主題は︑集落の歴史地理学的研究であり︑すでに本学会の大会で発表されたもの が中心となっている︒研究地域は︑北は東北から関東を経︑南は四国にまでおよび︑時代的には近世 を主とし︑古代・中世の集落をもふくんでいる︒集落地理学研究に大きく稗益することを信じ︑かっ

祈念する次第である︒

十年一昔ということばは︑一区切りの時期をあらわすことばとしてよくもちいられる︒本紀要が十 年に近い日子を経た今日︑過去の研究のあゆみを回顧し︑将来の研究への礎とすることもそろそろと

考えられてよい︒

歴史地理学の研究発表に参加して感ずることは︑中年以下の若い年齢層の出席者の少ないことであ り︑発表者も中年以上の年齢層に属する人達が多く︑ことに大学に在学する若い学徒の参加者の少な いことに強い淋しさを感ずる︒これは︑歴史地理学研究が深い歴史学的素養を必要とし︑その研究に あたって単に統計数値の処理だけでは簡単に片づけられない特殊性のあることにもよろうし︑最近の

(2)

学校教育では古文書を読む力に欠け︑研究能力の基盤を欠いていることにもよろうと考えられる︒し かし︑一面︑歴史地理学研究がともすれば︑郷土史家的︑回顧趣味的傾向に堕するとすれば︑まこと

に残念なことであり︑そうした印象を与えるとすればなおさら不幸なことである︒

青野寄郎教授が日本地理学会会長就任潰説で︑戦後のわが国の地理学的研究とその問題点について のべた際(地理学評論第三六巻︑一ニ O 三│三 O

八頁)戦後のわが国の地理学研究のうち︑その約七割 に近いものが︑ミクロな地域の研究であり︑この点︑アメリカでは同規模のものは二割強で︑研究の 五割以上がマクロないしはスーパーマクロの地域の研究であることを指摘した︒これはわが国の歴史

地理学研究の現段階にもあてはまるものと思う︒

この点︑本紀要の第四巻で﹃アジアの歴史地理﹄がだされたことはまことによい企画だったと思う し︑今後も研究地域を日本の徴地域にかぎることなく︑広い地域の対比研究をこころみ︑広域の歴史

地理学的研究のまとめられることを心から祈念するものである︒

いま一つのぞまれることは外国の研究者との文献の交換であり︑外国の歴史地理学研究との対比研 究である︒その点からも本紀要のなかで︑少くとも外国文のレジュメが入ることが必要だと思う︒そ うすることによって︑研究地域も研究内容も︑研究方法も︑より科学的に高められ︑より高い高次の 研究段階に進み︑真にグローバルな歴史地理学研究の成果が続々とでることと信ずる︒この点も今後

の問題として期待したいものである︒

一 九 六 七 年 十 月

岸 本

参照

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