経済統計論
B:後期試験
村澤 康友 2004年2月3日
注意:3問とも解答すること.なお平方根は大まかな近似でよい.
1. (20点)以下の用語の定義を式または言葉で書きなさい(各20字程度).
(a) 統計的推測
(b) 自由度nのχ2分布 (c) 有意水準
(d) (Y のX上への)回帰モデル
2. (30点)府大生の平均通学時間を調べたい.そこで無作為に選んだ府大生5人に通学時間を尋ねた ところ,20分・40分・50分・60分・80分という回答が得られた.
(a) 標本平均と標本分散を求めなさい.
(b) 標本平均の標準誤差を求めなさい.
(c) 平均通学時間の90%信頼区間を求めなさい(正規母集団を仮定してよい).
3. (50点)2003年12月のテレビ朝日ニュースステーション世論調査の結果として,イラク戦争につ いて「国民の(過)半数は,小泉政権の自衛隊派遣の決断を支持していません」と報道された.これ について以下の問いに答えなさい.ただし調査対象は無作為に選ばれ,全員が回答したと仮定する.
(a) 成功確率pのベルヌーイ分布の平均と分散を求めなさい.
(b) 母比率pの2項母集団から抽出した無作為標本を(X1, . . . , Xn)とする.中心極限定理を利用し て標本比率X¯ の漸近分布を導出しなさい.
(c) 次の検定を(近似的に)行うための検定統計量を与えなさい.
H0:p=p0 vs. H1:p > p0.
(d) 回答数609のうち,自衛隊派遣を「支持しない」とした人の割合は51%であった.有意水準5
%で次の検定を行いなさい.
H0:p= 0.5 vs. H1:p >0.5.
(e) テレビ世論調査の回答数は通常600前後である.回答数を625,検定の有意水準を5%とする と,標本比率が何%以上ならH0はH1に対して棄却されるか?
1. 統計学の基本用語
(a) 標本から母集団について推測すること.
• 「母集団について」がなければ0点.
• 「標本から」がなければ2点.
(b) n個の独立なN(0,1)の2乗和の分布.
• 「n個の2乗和」で1点(なければ0点).
• 「N(0,1)」で2点.
• 「独立」で2点.
(c) 検定において許容する第1種の誤りの確率.
• 「第1種の誤り」がなければ0点.
(d) E(Y|X)を与える式.
• 「関係式」「説明する式」は0点.
• 「予測式」は2点.
• E(X|Y)は0点.
2. 母平均の区間推定 (a) 標本平均は
X¯ := 20 + 40 + 50 + 60 + 80 5
= 50.
標本分散は
s2 := (20−50)2+ (40−50)2+ (50−50)2+ (60−50)2+ (80−50)2 4
= 900 + 100 + 0 + 100 + 900 4
= 500.
• 不偏分散でなければダメ.
(b) (無作為標本の)標本平均の分散は V¡
X¯¢
= V
µX1+· · ·+Xn
n
¶
= V(X1+· · ·+Xn) n2
= V(X1) +· · ·+ V(Xn) n2
= σ2 n. 標準偏差は
q V¡X¯¢
= rσ2
n. 標準誤差は
rs2
n =
r500 5
= 10.
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• 標準誤差の定義で5点.
(c) (無作為標本の)標本平均の分布は
X¯ ∼N µ
µ,σ2 n
¶ . 標準化すると
X¯ −µ
pσ2/n ∼N(0,1).
σ2をs2に置き換えると
X¯−µ
ps2/n ∼t(n−1).
t分布表よりn= 5なら Pr
"
−2.132< X¯ −µ
ps2/n <2.132
#
=.9, または
Pr
"
−2.132 rs2
n <X¯ −µ <2.132 rs2
n
#
=.9, または
Pr
"
X¯ −2.132 rs2
n < µ <X¯ + 2.132 rs2
n
#
=.9.
前問の結果を代入すると,90%信頼区間は(28.68,71.32).
• t分布表の読み違いは5点.
• 標準正規分布表で評価したものは5点.
• 公式の間違いは0点.
3. 母比率の検定 (a) 平均は
p·1 + (1−p)·0 =p.
分散は
p·(1−p)2+ (1−p)·(0−p)2 = p(1−p)2+p2(1−p)
= p(1−p)[(1−p) +p]
= p(1−p).
• 2項分布は0点.
(b)
X¯ ∼aN µ
p,p(1−p) n
¶ .
• 平均と分散で5点.
(c) 標準化すると
X¯−p
pp(1−p)/n ∼a N(0,1).
検定統計量は
Z:= p X¯−p0
p0(1−p0)/n.
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• 標準化して5点.
(d) 検定統計量の値は
Z = .51−.5
p.5(1−.5)/609
= .01
p1/2436
= .01√ 2436
≈ .5.
.5<1.65よりH0は棄却されない.
• 検定統計量の式が間違っていたら0点.
• 検定統計量の値で5点.
(e) 棄却される条件は
X¯−p0
pp0(1−p0)/n ≥1.65, すなわち X¯ −.5
p.5(1−.5)/625 ≥1.65.
したがって
X¯ ≥ .5 + 1.65 r 1
2500
= .5 + 1.65 50
= .533.
• 検定統計量の式が間違っていたら0点.
• 両側検定は5点.
※答案は返却します.採点や成績に関する質問にも応じます.オフィスアワーの時間(水・金の昼休み)
に研究室まで来てください.
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