「共に創りあげる授業」を主題とした研究も3年目を迎え ました。今年度は「『思考力』を育みながら『教科ならではの 文化』を味わう子どもたち」という副題を新たに設定し、本 研究の方向性を明確にすることができました。今後も、各教 科の実践から見いだしたことをもとに、研究を充実させてい く所存です。
10月14日に開催した教育研究協議会においては、400名を 超える県内外の先生方にご参会いただきました。各教科の 提案授業を材料に、「教科の授業のあるべき姿」「今後の教 育において大切にしていきたいこと」などについて議論するこ とを通して、互いの授業観や教科観、子ども観を深める場に できました。反面、本校が果たすべき役割や、その果たし方に ついて改善の余地があることも明確になりました。
そのような意味合いでは、教育研究協議会のみならず、地 域の先生方と授業を介したつながりをもつことができる「交 流研修」も貴重な機会です。今年度は、静岡市立城内中学校 と静岡市立清水第七中学校の先生
方を中心に、つながりをもつことがで きました。交流校の先生方のニーズを とらえつつ、今後もこの動きは広げて いきます。
「先進講話」も同様です。今年度
は、東京大学高大接続研究開発センターの白水始先生にご 登壇いただき、「評価」をテーマにご講演いただきました。当 日は、静岡県下より150名以上の先生方にご参会いただきま した。知識構成型ジグソー法を実際に体験していただくこと により、評価において大切にしたい考え方や、その具体的な 方法について、考えを深める機会となったようです。
先生方にお越しいただく機会だけでなく、本校の教師が全 国で開催される様々な研修会に参加する機会も増えました。
静岡市教科リーダー研修会に参加させていただいた時には、
静岡市の先生方の授業への熱意に触れることができました。
東京大学CoREFの研修会では、全国の先生方の協調学習 に関する実践発表を拝聴させていただき、いつも刺激をいた だいています。このような全国の先生方をつなぐネットワーク の構築は、今後も一層進んでいくことでしょう。
すべてに共通して感じたことは、「校種や肩書など関係な い。教師としての力量を直向きに高めようとする人間が集う 空間が広がっている」ということです。子どもたちが日々何か を学んでいくように、私たち教師も「よりよいものを求めてこ だわり高め合う」ことができます。学校は子どもたちのための 空間、でも教師も学校をともに創りあげていく存在、だとした ら、私たち自身が互いに磨き合い、よりよい自分になっていく 必要があるはずです。
最後に、琉球大学教育学部附属中学校で出会った子ども の言葉を紹介します。
「私も、始めは引っ込み思案で、自分から何かを言うほう じゃなかったんです。でも何かを伝えると応えてくれる人がい て、そのうち自然と自分から伝えていくようになりました。今は 仲間と一緒に何かを考えることが楽しくて仕方がない」
準備した答えに子どもたちを効率よく導くことばかりを重 視する授業は、もう終わりにしましょう。子どもたちが本当に 頭を使って考えなくてはいけない空間が教室に広がっている からこそ、未来が創られていくのですから。
2017.
冬No.77 2017.
冬No.77
2017.
冬No.77 2017.
冬No.77
静岡大学教育学部附属静岡中学校 静岡大学教育学部附属静岡中学校
’
17 教育研究協議会のお知らせ 未来を創る教室研修部長
長 嶋 昌 和
■期日 平成29年10月12日(木)
■会場 静岡大学教育学部附属静岡中学校
〒420-0856 静岡市葵区駿府町1番86号 TEL (054)255-0137 FAX (054)252-7335 ホームページアドレス http://www.shizuchu.ed.shizuoka.ac.jp/
※期日などは予定です。詳細は5月にご案内いたします。
保健体育科では、「合理的な動きや健康的な
生活を創りあげるおもしろさを味わう授業」
を実現するために
、「一人一人がよりよい動 きのイメージをもてるようにすること
」「
仲
間同士で話し合う場を設けること」を大切にして、授業を積み重ねました。
研究協議会では
、「
バスケットボール
( 3 対3
)―
仲間と連携してシュートチャンスを
創り出そう―」を実践しました。シュートチャンスをフリーの状態であることと捉え、チームの誰かがフリーでシュートを打つことができるように、戦術を考えたり、動きを試したりすることを繰り返す活動をしました。子どもたちからは、戦術板や、撮影した動画を用いながら、「どのように連携して動けばフリーになることができるのか」を話し合い、体現しようとする姿が見られました。一方で、何のためにフリーになる必要があるのかがあいまいになり、戦術を発揮することだけにとらわれてしまうという課題もありました。 協議会後は、子どもたちがよりよい動きのイメージをもつために、どのようなタイミングで動画や模範を見せることが必要なのかを考えながら授業実践を行っています。今後も各題材において、子どもたちが何をどのように試行錯誤していけば、その題材の本質に迫ることができるのかを考えながら授業を構想していきます。 (杉山慎一郎) 今年度、技術・家庭科(技術分野)では「豊
かな生活を創る人
」 を育むために
、「
他者
」 を意識したものづくりを通して
、 ものにつ いて語り合う活動に力を入れてきました
。
「他者」を意識する機会を意図的に設定すれ
ば
、年代や立場が異なる人々の視点が獲得 され
、身
近な技術の価値や有用性を見いだ すことができるのではないかと考え
、研
究
を重ねました。 研究協議会では、「センサの計測による制御と生活課題型システムの構築」を公開し、
手だての有効性や題材の価値について協議 しました
。センサを
「 便 利なもの
」 ととら えていた子どもたちが
、実際にセンサを用 いた生活課題型システムを構築したり
、 身 近にあるセンサについて語り合ったりする
活動を通して、「どうしてセンサが設置されているのか」「なぜ赤外線センサを用いてい
る の
か」
な
ど、
セ ン サ の 種 類 や 設 置 位
置、
その効果など
、新たな視点でものをとらえ る姿が見られました
。 ま
た、
製 作したシス テムを動画配信サイトに公開し
、 様々な立 場 の 人 か ら ご 意 見 を い た だ く 調 査 活 動 に よって
、 ますますものについて語り合うこ
とができました。
今後も
、子どもたちの思考に沿った手だ てのあり方や教科の本質に迫る題材につい
て研究を重ねていきたいです。 (本部康司) 本年度、技術・家庭科(家庭分野)では、「豊
かな生活を創る人
」を育みたいと願い
、 互 いに考えをかかわらせることで
、 も のの見 方や考え方を広げる機会と
、 実践して検証 することを大切にして授業づくりに取り組 みました
。研
究協議会では
、ものを購入す るまでの思考の流れを図示することで
、 自 分自身のものを購入する際の考え方を認識 するとともに
、仲
間の考えを知ろうと質問 したり
、 図に書き込んだりする子どもの姿 が見られました
。次時で再び消費行動をふ り返ると
、 学習前よりも満足する消費行動 ができたと感じることができました
。そ
の 後
、消費者トラブルや
、復興支援のために 被災地で生産されたものを購入する活動な ど
、社会の出来事について調べ
、 改めてよ り よ い 消 費 行 動 に つ い て 議 論 し ま し
た。
「 マークや制度などを知る必要がある
」「
自 分自身の満足だけでなく
、生
産者に与える 影響や利益を考えて選択をするべき
」な
ど の発言があり
、 一 人の消費者として
、複
数 の視点から消費行動を見直す機会となりま
した。
今後は
、研
究協議会で話題となった
「 子
どもが考えたい問いをどのように生みだし、共有していくか」について研究を重ね、「共
に創りあげる
」授
業づくりに取り組んでい
きたいと思います。 (堀池美衣)
英語科では
「 世界の人々とつながる人
」 を育みたいと考え
、 今年度の実践に取り組 みました
。そ
の際
「 世 界の人々やその文化
を知ること」「円滑にコミュニケーションを図るための技能を習得すること」そして「英
語でのやりとりを通して子どもたちが達成 感や喜びを得ること
」 を大切にしてきまし た。 研究協議会では“Let’s Make a Great and Cute Robot”(1年生)“Important Things to Communicate with People Who Have Different Cultures”(3年生)の授業を行い
ました
。 これらの授業では
、子どもたちが 英語でやりとりする中で
、互
いの考えを深 めたり
、 新しい考えを得たりしながら
、 伝
え合う喜びを実感できました。
英語でコミュニケーションを図ることに 抵抗を感じていた子どもたちも
、英
語でや りとりすることを味わっていく中で
、徐
々 に
「英語でのコミュニケーションがあたり
まえの文化」を築きつつあるようです。
どのような題材を
、 どのように構想して いけば
、 英 語でのやりとりを子どもたちが 味わうことができるのかという課題の解決 には
、 さらなる実践の積み重ねが必要とな りそうです
。今年度の協議会で得られた手 応えを大切にしつつ
、 今後の研究に励んで
いきたいと思います。(長田敬司・稲葉英彦・髙田幸秀)
技 術 科 保 健 体 育 科 英 語 科 家 庭 科 Home Economics
交 流 研 修 報 告
交流研修担当 長 田 敬 司
Report
2017.
冬No.77 2017.
冬No.77
私たちは
、 子 どもたちが主体的に仲間と
「共に創りあげる授業
」を
実践するために
、
「魅力的な題材選定
」「
切実感をもって作品
世界を味わうための問いの共有」「思考を深
める手だて
」 を意識しながら
、 授 業づくり
を進めてきました。
協議会の授業では
、 新書版
『ディズニー ランドという聖地
』を
資料として活用し
、 説明文を創りあげる中で生まれた個人の課 題を全体で共有し
、 解決策を見いだしてい く場面を参観していただき
、 構成や言葉の
吟味について研修を深めました。
童話
「 寂しいお魚
」 の授業では
、 作品中 の登場人物の会話や
、情景描写などの叙述 に注目しながら
、 主人公が理解したであろ う心情に迫る
「問
い
」をつくる場面を提案
しました。 協議会においても、「問い」に関する話題
が多く挙がり
、 子 どもの主体性と学習の深 まりについて参観者の方々と学び合う時間 となりました
。ま
た
、教科書会社の方に来 ていただき
、題材の編集の経緯や意図を聞 けたことで
、今後私たちが題材選定をする
際の参考にもなりました。
今後も子どもたちの主体的な学びを大切
にできる教師のかかわり、手だてについて、さまざまな視点で研究を進めていきます。(鈴木康弘・池田昌史・梶山哲耶) 今年度の研究協議会では、「子どもの貧困」
の背景を調査し
、 自分なりに解決策を考え
た子どもたちが、「『家庭への直接的な支援』と、『雇用や子育て環境の整備』のどちらを
優先すべきか
」 について語り合いました
。 事後の教科別協議では
、子
どもたちが自分 の言葉で語るとともに
、他
者の視点を取り 入れながら考えを深めていくようすが見ら れたことや
、子どもたちが切実感や問いを もつうえで題材の出会いの場面で提示され た資料が鍵になっていたこと等が話題にな りました
。こ
の題材は
、現在進行中の問題 であるとともに
、 様々な背景が絡み合って いるために
、その解決策をめぐって見解の ズレが生じる問題でした
。こ
のことが
、 題 材そのもののおもしろさを味わうことや
、 子どもたちの追求をより一層深めることに
つながったのだと考えています。
授業において
、 このような
「共に創りあ げる営み
」を
生み出していくことで
、子
ど もたちは
「社
会科ならではの文化
」 を 味わ
いながら、「社会を創る人」に近づいていくのだと私たちは考えています。
今後は
、今年度課題となったことの中か ら
、特
に「
対 話の質を高めるためにどのよ うな手だてが有効であるのか
」 に ついて
、
さらに研究を進めていきます。(尾﨑弘剛・長嶋昌和)
今年度、私たちは「様々な問題について、
論理的かつ客観的に解決にあたる人
」 を
育みたいと願い、「子どもたち誰もが『自
分たちで数学を創った
』 と実感できる授 業
」 をめざして実践を重ねてきました
。 そこで特に意識して取り組んだことは子
どもたち誰もが「根拠を明確にした考え」をもてることです。研究協議会では、「子
どもたちが見通しをもって活動している
こと」や「見たい子どものあらわれを題材のどこで構想するか」等、貴重なご意
見をいただき
、 子 どもの思考に寄り添っ た授業のあり方について考察することが
できました。
子どもたちは心を揺さぶられるような 題材と出会うと自然に疑問を抱き
、 ク ラ ス 全 体 で 共 有 さ れ た 問 い が 生 ま れ る で しょう
。 そして
、 その問いに対して根拠
を明確にした考えをもって互いに表現し、
問い直すような体験を繰り返すことが
、 数学を創りあげる活動につながっていく と考えます
。 そのような授業はどのよう にすれば実現できるのかを
、 これからも
追求し実践していきたいと思います。(森正樹・松本匡由・杉山元希) 「考えてみたい」「つくってみたい」といった思いを抱いた子どもたち同士の対話から、様々なことを考えさせられます。
今年度の研究協議会の授業では
、簡易ス
ピーカーを試行錯誤しながらつくる子どもたちの中に「スピーカーはなぜ音が出るのだろう」と疑問が生まれ、磁石やコイルのしくみやはたらきといった視点で考えを述べ合う姿
を見ていただきました
。ま
た
、「
東海地震の
災害予想をつくってみよう」という共有された問いに対して、子どもたちは過去の文献の資料や最近の地震観測の記録、静岡市の地質などをもとに話し合う姿を見ていただきました。2つの授業をもとに、事後の協議では子どもたちの学びについて様々な意見交換ができ、日頃の授業実践をふり返る有意義な機会となりました。 授業では何気ない子どもの対話の中にも、科学的な視点がふんだんに盛り込まれていることがあります。それを授業者が伝えるばかりでなく、日常の会話のごとく子どもたち同士のかかわりの中で広がれば、子どもたちの学びはより豊かなものになるでしょう。〝科学
する
〟子 どもたちの対話を引き出すために
、
授業者は何を大切にし、どのような手だてが必要なのかを私たちは引き続き考えていきたいと思います。 (山田星治・海野雅爾) 研究協議会では、ガムランに登場する様々
な音色の特徴や雰囲気を知覚
・ 感受した子 どもたちが
、それらに似た音色をボウルで 奏でたり
、 音 の組み合わせ方や重ね方など を試行錯誤したりして
、ガ
ムラン風の音楽 をグループで創作していきました
。事後の
教科別協議では
、子どもたちが音楽を形づ くっている要素をより深く感じ取りながら 試行錯誤したり
、感性をより豊かに働かせ られるようにしたりするための授業者のし かけについて話題になりました
。そして
、 子どもたちが音や音楽に対する感性を豊か に働かせながら
、心
を開放して主体的に取 り組む音楽科の授業について
、 考 察を深め
ることができました。
本題材の最後に
、ガ
ムラン風の音楽の演 奏会を行いました
。そこでは
、子
どもたち が自ら生み出した音色や間
、 余韻などを大 切に演奏する姿や
、 耳 を澄ませて演奏を聴
き、「すごい!」「おもしろい!」と思わず感嘆の声を上げる姿が見られました。
音や音楽は目には見えず時間が経つと消 えてしまいますが
、 私たちはふと心が動か されて聴き入ってしまうことがあります
。 音や音楽にときめく瞬間を大切に
、子ども
たちの音や音楽に対する感性を引き出し
、 広げ
、 深 めていける授業を目指して
、さ
ら
に研究を重ねていきます。 (小林真人)
国 語 科
音 楽 科 社 会 科
理 科 数 学 科
本年度、新たな取り組みとして静岡市立城内中学校と静岡市立清水第七中学校にご協力を仰ぎ、交流研修を進めました。 清水第七中学校では、校内研修に参加させていただきました。提案授業を参観し、事後研修では教科の授業のあるべき姿について話し合われました
。
授業中に見られた、子どもたちが互いにかかわりながらよりわかりやすい英文を創りあげる姿や、抽象的な関数の問題について、視覚に訴えたり、具体的な数字を用いたりする工夫を子どもたちが考え出している姿は、清水第七中学校や本校の研修テーマに沿った姿
であったと思います
。「
附属静岡中学
校の教員が事後研修会に参加したことで協議が深まった」という声が清水第
七中学校の先生方から聞けたことで
、
交流研修の目的が果たされたと実感しました。 城内中学校では、本校の教員による理科の授業(物理分野)を実施することができました。「予想→実験→考察」
といった流れを子どもたちがつくり
、
楽しみながら科学している姿が見られ
ました
。 数 学科では
、「
城内中学校で
の公開授業に向けて、授業案を共につくる」という交流ができました。共に交流させていただいた先生からは「授業づくりにおいて、単元観や教材研究
の方法など多くを知ることができた
」
「 若手の先生に良い授業を見せること
ができた」といった声をいただきました。 さらに、社会科が静岡市立籠上中学 校の社会科と、英語科が静岡大学教育学部附属静岡小学校と、交流させていただきました。課題の設定、用いる手だて、教師のフィードバック、授業の中で見たい子どもの姿など、多岐にわたる意見交換ができたことは、本校の研究を進める上でも大変有意義だったと確信しています。
校内研修の進め方
、 授業の構想
、 魅
力的な題材の開発、若い先生を応援したいなど、研修によせるニーズは学校によっても先生一人一人によっても異なっていることを考慮し、今後は様々なニーズに応えていける事業に発展させたいと考えています。私たちと共に研修してくださる学校がございましたら、お電話や、ホームページからの参加フォームにてご連絡ください。
今年度、美術科では「感性豊かに、創造し
ていく人」を育みたいと願い、研究をすすめました。子どもたち自身が考え、自分の主題
をもち、納得できる表現をしていくために、どのようなかかわり合いがもてるとよいかを
大切にして、授業構想・実践を行いました。 研究協議会「表したい自分を表現しよう」
の授業では、試作として「目」の描写を行っ
た後に「『表したい自分』を表現するために
『
色』
『 筆 致
』をどのように工夫していけば
よいか」、小グループで話し合いを行いました。事後研では、「主題をもつための手立て」
「いつ主題が生まれるのか」「かかわり合いの
視点
」についてなど
、A表現
(1
)の題材なら
ではの課題が話題となり、参会者の方々と学び合うことができました。 子ども自身が主題を生み出し、表現欲求に
沿って構想を深めていく授業というのは、授業者が思い描くように簡単には実現できない
課題です。来年度以降も共に創りあげる営みを大切にして、授業構想・実践を重ねていき
たいと思います。 (土肥正通)