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⽇韓映像ビジネスにおけるフォーマット・セールスの可能性
Possibility of the Format Sales in the Field of Japanese and Korean Broadcasting
1W153055-8 齋藤 友紀⼦ 指導教員 是枝 裕和 ⼟⽥ 環 SAITO Yukiko KORE-EDA Hirokazu TSUCHIDA Tamaki
概要: ⽇本と韓国は政治や経済、⽂化など多くの⾯で密接な関係である中で、映像ビジネスやエンタテインメント産業が果たす役割や 市場の規模は決して⼩さくない。まず、本論⽂では⽇韓の映像ビジネスの状況を確認し、その中で特に 2000 年代に⼊り積極的に⽇本の テレビ局が取り組んだ「フォーマット・セールス」に着⽬する。フォーマット・セールスとは、制作された番組をそのまま売買するので はなく、そのフォーマット(形式)を販売することである。この場合の「フォーマット」とは、①セットのデザイン、②構成、③ゲーム のルールや進⾏、④演出上のノウハウなどによって構成される。フォーマット・セールスが増えた背景には「クール・ジャパン」の施策 によって、⽇本のコンテンツ産業の海外展開が促進される⼀⽅で、海外市場に対する番組販売の単価や成約数が伸び悩む状況が背景にあ る。本研究では、国境を越えた映像ビジネスにおいて、フォーマット・セールスが持つメリットそして課題点をいくつかの番組例、特に バラエティ番組をサンプルに取りながら論じる。そして、フォーマット・セールスのあり⽅が、番組をフォーマット化するだけではなく、
アイドル・グループに⾒られるように⼈間のフォーマット化へと進⾏しつつあることを仮説として⽰す。
キーワード:⽇韓交流、バラエティ番組、フォーマット・セールス、クール・ジャパン Keywords: Japan-Korea Relations, Variety Shows, Format Sales, Cool Japan
1. ⽇韓間の映像ビジネス
⽇韓の交流史を⾒ると、韓国が⾏った⽇本⽂化開放は 1998 年 から 4 段階式に映画、劇場アニメ、ビデオ、放送などを開放した ことである。10 年以上前に完全に開放され、若い⼈の間では⽇本 の⽣活⽂化を楽しむ⼈が増えている。⼀⽅、⽇本では 2003 年に NHK で「冬のソナタ」をきっかけに韓流ブームが起こり、韓国ド ラマがより放送されるようになった。このように映像を通して⽇
韓交流は盛んであり、政治外交の影響を⼤きく受けることもなく 今⽇まで続いている。
ビジネス⾯から⾒ると、⽇本と韓国の放送コンテンツの海外輸 出額は年々増えており、⽇本に関しては 2012 年からフォーマッ ト権などの番組放送権以外の輸出額が⽬に⾒えて増加した。⽇本 韓国の主な放送コンテンツの輸出先を⾒てみると、⽇本の場合は アジアが半数以上、韓国においては⽇本が約 32.9%を占めている。
また、番組放送権の輸出額のジャンル別割合をみると、⽇韓とも に、バラエティ番組が、⽇本はアニメ、韓国はドラマに続き⼆位 となっている。
2. フォーマット・セールスの展開と課題
では、⾃国の映像コンテンツを海外へ輸出する場合には、どの ような⽅式が取られているだろうか。かつては、番組を単独で売 るという形式が圧倒的に主流であった。例えば、海外でヒットし た近年の⽇本製のテレビ番組として、 「孤独のグルメ」、 「You は何 しに⽇本へ?」などが挙げられるが、⽇本のテレビ番組に対して、
放映先の現地の⾔語によって吹き替えを⾏う、字幕を当てるなど して、番組販売と放映が⾏われてきた。それに対して、フォーマ ット・セールスは 2000 年前後から特にイギリスやオランダで注
⽬され始め、期を同じくして⽇本でも⼤⼿放送局によって積極的
に取り組まれるようになった。
フォーマット・セールスの特徴は、フォーマットを基に⾃国の タレントを使うなどアレンジし、⾃国の特徴を出せることであり、
各国の特⾊を⽣かした現地版ヒット番組を安価に制作することが できる。また⽇本では放送が終了した番組でも、現地版が制作さ れることにより、海外で再び輝きを取り戻す可能性もある。その
⼀⽅で海外戦略に⼒を⼊れる韓国や市場を拡⼤している中国、経 済成⻑が著しい東南アジアの国々の中でどのように優位性を保っ ていくか、オリジナリティの確保やセールスの拡⼤は課題となっ ている。
フォーマット・セールスが増えた背景には、「クールジャパン」
の成功と失敗が影響している。クール・ジャパンの原型は、ブレ ア政権時代のイギリスで振興された「クール・ブリタニア」 (Cool Britannia)である。1990 年代のイギリスは、それに先⾏した保守 党政権下の不景気から脱却し、クリエイティブ産業の輸出額が 6 年で 1.7 倍になり、⽂化的に歴史があるというイメージだけでな く、現代⽂化においてもハイセンスであるという印象を与え成功 した。⼀⽅、⽇本のクール・ジャパン政策は 10 年、⺠主党の鳩⼭
政権時に始動し、⾃⺠党への政権交代後の安倍政権へと引き継が れた。 「デザイン視点で横串を刺す」、 「政策・事業を連携させる」、
「⼈材ハブを構築する」、「外国⼈の視点を取り⼊れる」、「地⽅の 魅⼒をプロデュースする」という 5 つの視点から戦略を練り、ゲ ーム、アニメ、⾷、ファッションなど、国内のクリエイティブ産 業の振興を図った。国は 300 億円を出資してクールジャパン機構
(海外需要開拓⽀援機構)を設⽴し、2014 年 3 ⽉には⺠間企業か
ら 85 億円の出資を募るなど、官⺠共同で海外へ⽇本⽂化を売り
込む事業を加速させた。しかし経済産業省が個々のプロジェクト
に対して無差別に資⾦を投⼊し、結果としては失敗に終わった。
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フォーマット・セールスは、汎⽤性の⾼い形式に特化したため、
クール・ジャパンを推進⼒としながらも、番組販売の単価や成約 数の限界を避け、その収束から⽐較的距離を置くことができた。
3. ⽇本と韓国におけるフォーマット・セールス
第 1 章で考察したように、⽇本と韓国との映像ビジネスにおけ る交流をみれば、バラエティ番組の割合が⼤きく、また⽇本から 韓国にフォーマット・セールスのかたちで販売され、よく知られ ているものにはバラエティ番組が多い。そのなかでもクイズ番組 の販売は突出している。
韓国の MBC テレビで 2007 年から放映されている「⽇曜⽇、⽇
曜⽇の夜に」の 1 コーナーで放送されていた「ブレインサバイバ ー」は、⽇本のフジテレビが制作した番組「クイズ!ヘキサゴン」
のフォーマットを利⽤している。その共通点は、もとの⽇本の番 組では個⼈戦の形式であるのに対し、韓国ではチーム戦の形式へ と変化したことだ。これは韓国で「우리、
(私たち)」という⾔葉が重宝されているように、常にチームで⼀つという⽂化が強いこ とから⽣まれた韓国独⾃のアレンジであるといえよう。また、韓 国ではプレビューチャンスのような司会者に、不正解の答えに対 するヒントをもらう形式のクイズ番組が多く⾒られる。これもチ ームで解く形式が⽣んだルールであると⾔える。何故ならば、個
⼈戦であれば、すでに解答権がないため、答えに対してヒントを もらっても意味がないが、チーム戦であれば、次の解答者がいる ため意味をなすのだ。このようにフォーマット・セールスは、⽂
化の違いによってその国特有のルールや形式が⽣まれることを可 能にする。
4. 「⼈間」のフォーマット・セールスへ
2000 年頃から始まった番組のフォーマット・セールスだが現在、
番組だけでなく「⼈間のフォーマット化」と呼べるような状況が エンタテインメント産業では進⾏している。
⽇本では、AKB グループの東南アジア版(JKT48 など)に⾒ら れるように、曲やダンス、劇場などをフォーマットとし、現地の
⼈々を起⽤しながら海外へ⽇本のアイドルの型を「輸出」する傾 向が強まっている。従来、PUFFY など、⽇本で⼈気を博したアイ ドルが、海外進出を⽬指したケースはあったが、このフォーマッ トは各国の特徴を具現化し、また練習⽣についてのコストを抑え ることができることにメリットがある。また、若年層⼈⼝が減少 している⽇本に対し、東南アジア圏では、20 歳以下の⼈⼝の総⼈
⼝の占める割合が⾼い。そのため、アイドル⽂化に対する潜在的 な市場が存在していると⾔えるだろう。
韓国では、アイドルの育成のために、投資型で歌やダンスを教 え込むため、⻑い育成期間の末に選ばれた者がステージに⽴つこ とが出来る。⼀⽅、⽇本では、初期から共通の歌やダンスを教え、
選抜せずにステージに⽴たせることで、各々の個性を発揮させる 育成システムを定型として持つ。
これらのことから⽇本のアイドルを韓国にフォーマット・セー ルスをすれば、韓国は投資するコストを削減でき、韓国アイドル 固有の特徴を活かすことができるのではないか。
結論
テレビ番組のフォーマット・セールスは、クイズ番組などのバ ラエティ番組を中⼼に⽇韓で展開されてきたが、2000 年代後半か らフォーマット・セールスの対象は「番組」から「⼈間」へと変 遷してきた。テレビ業界は広告収⼊も減り、番組は簡単にデジタ ルの⼿法でコピーされるようになり、番組のフォーマット・セー ルスが下⽕になってきた時に「⼈間」のフォーマット・セールス が誕⽣した。
⽇韓でフォーマットの相違が⾒られるが、⽇本におけるフォー マットを韓国に導⼊することで、韓国の「우리、(私たち)
」チームで⼀つという⽂化や、韓国アイドル固有の特徴によって柔軟に 変化させることができる。⽇本のコンテンツ産業としては、韓国 の⽂化に相応するよう、フォーマットを柔軟に変形することによ り、⽂化の壁を超えて流⾏を⽣み出すことを可能にした。⽇本独
⾃の⽂化に執われることなく、相⼿国に適するよう形を変えるこ とが出来るフォーマットは、確実に今後の⽇本のグローバル戦略 の中でも⼤きな武器になるだろう。
参考⽂献(抜粋):
・⾦成玟、『K-POP 新感覚のメディア』、岩波新書、2018。
・⾦成玟、 『戦後韓国と⽇本⽂化―「倭⾊」禁⽌から「韓流」まで
―』、岩波現代全書、2014。
・クォン・ヨンソク、 『「韓流」と「⽇流」 ⽂化から読み解く⽇韓 新時代』、NHK ブックス、2010。
・Screens「バラエティーは国境を越える! ̶フジテレビが考え る強みを活かした海外戦略と課題【後編】」https://www.screens- lab.jp/article/5564 、2018-11-23 最終閲覧。
・総務省、「放送コンテンツの海外展開について」、知的財産戦略 本部 検証・評価・企画委員会(第 5 回)議事次第 資料 7、
2013-12-12、
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyok a_kikaku/dai5/siryou7.pdf、2018-11-25 最終閲覧。
・鄭榮蘭「政治的対⽴と⽂化交流による⽇韓相互認識の変遷
―⽇韓の⽂化受容(韓流・⽇流)が国⺠の意識の変化に与え る影響」
https://www.waseda.jp/inst/cro/assets/uploads/2017/04/d85 63f54a86be1222c9890a4ab0e5e48.pdf 、2018-12-27 ⽇最終閲 覧。
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