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1 条件付きの極値問題 その1 ローカルな1変数化
1.1 問題設定
x, yが条件G(x, y) = 0を満たすときに、関数F(x, y)の極値などを求めたい。
人間は古くから様々な最大値、最小値に関心をもって来ましたが、そのほとんどの場 合、関連する要素は何らかの相互関係や制限条件を満たしており、その条件の範囲内で 最大値、最小値、あるいは極値を求める事が現実的な問題となります。
何か物を作る場合には予算の制限があるでしょうし、遵守しなければならない法律と 云う制限もあるでしょう。何の条件もなしに自由に行動できる事は稀であり、むしろ制 限があるからこそ最大値/最小値を求める事に意味があると言えるかも知れません。
定義1.1 条件G(x, y) = 0を満たす点(a, b)において、この点のごく近くにあって 条件G(x, y) = 0を満たす任意の点(x, y)について
F(a, b)≤F(x, y)
が成り立つとき、関数F(x, y)は点(a, b)において条件G(x, y) = 0のもとでの極 小値をとると言います(不等号の向きを変えて定義されるものは条件付きの極大値 と呼びます)。
これは所謂『広義の極値』式の定義であって、もちろん『狭義の極値』式の定義を採 用する場合もあるでしょう。その場合は上の定義に於いて、『近くの条件を満たす任意 の点』ではなく、近くの条件を満たす点のうち『点(a, b)以外のもの』について不等号 に付いている等号をなくしたものが成立する事と定義します。この辺りは微妙ですが注 意して下さい。
本講義の定義に従うと、例えば定数関数はその任意の点で極小かつ極大になります。
また、上の定義では『ごく近く』と云う分かったようで分からない曖昧な言い方をし ていますが、これは高専ではきちんとした位相の概念を学ばないことを考慮した苦肉の 策であって、本来は『この点を中心としたある円盤の内部』の事を指しています。
1.2 簡単に1変数に帰着できる場合
問題1.2 x+y= 1のときに3x2+y2の最小値を求めて下さい。
先の問題設定の書式に合わせるなら
G(x, y) =x+y−1, F(x, y) = 3x2+y2
です。この場合は条件式G(x, y) = 0からy= 1−xと書けますのでこれを関数F(x, y) の式のyのところに代入した関数を考えます:
H(x) =F(x, y(x)) =F(x,1−x) = 3x2+ (1−x)2.
x+y= 1を満たすようなx, yは、まずxを自由に決定し、次いでそれに応じてyの値 を決める事が出来るので、x+y= 1を満たす全てのx, yについてF(x, y)の値を考え る事は、全てのxについてH(x)の値を見る事と同じ事になります。これは微分可能な 1変数関数ですから、導関数を使って極値を求める事が出来ます。
もっとも、この関数に限って言えば、2次関数ですから微分をせずとも平方完成に よって簡単に最小値が分かります(x= 14, y= 34のとき最小値 34)。
1.3 復習:微分可能な1変数関数の極値の求めかた
事実1.3 (1階微分による候補点の選定)
前提条件: 関数V(x)は微分可能である。
主張内容: V(x)の極値の候補点はV0(x) = 0となる点のみ。
事実1.4 (2階微分による判定) 前提条件:
(i) V0(a) = 0である。
(ii) 関数V(x)は点aの近くで2階微分可能、各導関数は連続である。
主張内容:
(i) V00(a)>0ならばV は点aで極小値であり、
(ii) V00(a)<0ならばV は点aで極大値である。
(iii) V00(a) = 0の場合は不明である。
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1.4 (簡単には)1変数に帰着できない場合
問題 1.5 x2+ 2xy−y2=−1のときにx−yの極値を求めて下さい。
やはり書式を合わせるために
G(x, y) =x2+ 2xy−y2+ 1, F(x, y) =x−y
としておきます。形式的にはさっきの問題と全く同じですから同じ方法で求めてみよう と思うのですが、条件式が複雑なためにy=y(x)の形に出来ません(無理をして2次 方程式の解の公式を使っても±が入ってしまい、1つの関数の式には出来ません)。
1.4.1 ローカルな1変数化
例えば条件式G(x, y) = 0の表す曲線が下図左の様になっていたとしましょう。曲線 全体を俯瞰してみるともの凄く複雑な曲線になっていて、x座標を指定しても曲線上 には対応する点は複数あり、y座標はただ1つには定まりません。要するにこの曲線
G(x, y) = 0の場合は、曲線全体で(グローバルに)通用するyをxで表した関数は原
理的に存在しません。ではどうしたら良いでしょうか?
目的と手段を取り違えてはいけません。我々は極値が求めたい(目的)のであって、
そのためにyをxで表わせたら良いな(手段)と考えているだけの事です。それがだめ でも他の手段があるかも知れないじゃないですか。
実際、よくよく考えてみれば極値と云うのはローカル(局地的)な意味での最大値/
最小値の事ですから、ある点で極値かどうかと云うことに関係するのはその点の近くの
様子だけであって、関数が遠い所でどうなっていようが関係ありません。そこで曲線上
の点(a, b)の近くだけを抜き出して眺めてみましょう(図右)。
どうでしょう。この部分だけを見ればかなり単純な曲線になっていて、1つxの値を 定めればそれに応じてただ1つのyの値が確定します。つまりローカルにはyはxの 関数になっているようです。
実際、曲線上の点(a, b)付近の点でx-座標がxである点のy-座標をy(x)とする事に よって1つの滑らかなグラフをもつ関数が定義され、右図は正にその関数y=y(x)の グラフになっています(y(x)の具体的な形は明らかではありませんが、そう云う関数 が存在する事は分かると云うことです)。この関数y(x)は『滑らかなグラフ』をもちま すから、微分可能であり、微分を使った極値判定のスキームに上手く乗ってくれます。
グラフ上の各点(x, y(x))は当然曲線G(x, y) = 0の上にありますから、G(x, y(x)) = 0 が(ローカルに)成り立っており、この式の両辺をxで微分すれば、合成関数の微分の ルールから
Gx(x, y(x)) +Gy(x, y(x))y0(x) = 0, すなわち、 y0(x) =−Gx(x, y(x)) Gy(x, y(x))
が成り立っています。ただし、この計算が意味をもつのは分母が0でない場合、
Gy(x, y(x))6= 0の場合のみです。
これはローカルに定まる関数y(x)の具体的な形は分からなくても、その微分なら既
知関数G(x, y)から計算する事が出来る事を意味しており、非常に重要な事実です。
特に点(a, b)が極値かどうかの判定に於いて問題となるのはy0(a)であり、従って
Gy(a, b)6= 0でさえあれば、点(a, b)の近くで局所的にyをxの関数で表わして1変数 関数の議論に帰着させ微分計算を進める事が出来るることになります。
つまり、Gy(a, b)6= 0であるような点(a, b)で関数F(x, y)が件の条件下での極値で あるかどうかは、H(x) =F(x, y(x))と置いて、これがx=aで極値かどうかを微分を 使って判定すれば良いと云う事になります。
1.4.2 1階微分による極値の候補点のリストアップ
H(x)を微分してみると、合成関数の微分規則から
H0(x) =Fx(x, y(x))·1 +Fy(x, y(x))y0(x)
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となり、y(a) = bであることに注意すれば、点x = aで極値であるためには、まず
H0(a) = 0すなわち
Fx(a, b) +Fy(a, b)y0(a) = 0 (1.1) でなければならないことが分かります。また、さっき見たようにy(x)の具体的な形は 分からなくても、その微分係数ならG(x, y)の言葉で書き表せました:
y0(a) =−Gx(a, b) Gy(a, b) から、これを(1.1)に代入するとH0(a) = 0であることは
Fx(a, b) +Fy(a, b) Ω
−Gx(a, b) Gy(a, b)
æ
= 0
Fx(a, b)Gy(a, b) =Fy(a, b)Gx(a, b) と書き表す事が出来ます。
この式は元々はローカルな1変数化によって得られたわけですが、表面上はローカル な関数y(x)を使わずに書けてしまっていますから、グローバルに適用出来る形式の式 になっています。
また、さっき微分による極値判定が上手く行かないと云う理由でGy(a, b) = 0の場 合を除外しましたが、この場合にも極値である可能性がないわけではありませんのでこ うした点も極値の候補点としてカウントしなければなりませんのでまとめると次の様に なります:
事実1.6 (極値の候補点) F(x, y)が条件G(x, y) = 0の下での極値をとる可能性が ある点は、次の2種類のみです:
(i) G(x, y) = 0であってGy= 0となる点
(ii) G(x, y) = 0であってFxGy=FyGx(Gy 6= 0)となる点。
1.5 具体的な極値の判定例
今回考えている関数G(x, y) =x2+ 2xy−y2+ 1についてはGy(x, y) = 2x−2y で すから、Gy(x, y) = 0となるのはx=yのときですが、曲線G(x, y) = 0にはそのよう
な点はありません(G(x, x) =x2+ 2x2−x2+ 1 = 2x2+ 16= 0)。従って今回の問題で は(i)に該当する点はありません。
したがって条件G= 0を満たす点のうちFxGy =FyGxとなる点を求めます。具体 的には連立方程式:
1(2x−2y) = (−1)(2x+ 2y) (判定式を満たすこと)
x2+ 2xy−y2+ 1 = 0 (条件を満たすこと)
を解くわけですが、第1式からx= 0が得られ、これを第2式に代入すればy=±1が すぐに得られます。従って条件付き極値の候補点は2点(0,±1)です。
このどちらの点でもGy 6= 0ですから、ローカルにyをxの関数として考える事が出 来、H(x) =F(x, y(x))と置いて微分計算をします。
y0(x) =−Gx(x, y(x)) Gy(x, y(x)) に注意すれば
H0(x) =Fx(x, y(x)) +Fy(x, y(x))y0(x) = 1 + 2x+ 2y
2x−2y = 2x x−y H00(x) = 2(x−y)−2x(1−y0)
(x−y)2 = −2y+ 2xy0 (x−y)2
ですが、2階微分は2点(0,±1)での値にしか興味がありませんので、これ以上y0の部 分を計算したところでどうせ消えてしまいますからここでやめておきます。
従って点(0,1)ではH00(0)<0ですからこれは極大値(F(0,1) =−1)、点(0,−1) ではH00(0)>0ですからこれは極小値(F(0,−1) = 1)である事が分かります。
Exercise
基本演習1 G(x, y) =xy−1 = 0の条件のもとでのF(x, y) =x2+y2の極値を、
次の3つの方法で求めて下さい。
(1)各点ごとにyをxの関数と見る方法でローカルに1変数化して。
(2)条件式を使って直接グローバルに1変数化して。
(3)問題を幾何学的に捉える事によって別の視点から。