電子機器冷却用装置のヒートシンクの伝熱促進に関 する研究
全文
(2) 静岡大学. 博士論文. 電子機器冷却用装置のヒートシンクの 伝熱促進に関する研究. 平成 25 年 6 月 安. 藤. 健. 志.
(3) 目. 第1章. 次. 序. 論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1. 1-1. 研 究の背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1. 1-2. 本 論文の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6. 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9. 第2章. 電 子機器冷却 用装置の説 明と改良研 究目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・11. 2-1. 電 子機器冷却 装置につい て・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11. 2-2. 研 究目標と方 針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13. 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14. 第3章. 冷 却性能評価 方法につい て・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15. 3-1. 冷 却性能評価 方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15. 3-2. 各 種評価方法 の詳細説明 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15. 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20. 第4章. ペ ルチェ素子 について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22. 4-1. 熱 電効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22. 4-1-1. トムソン 効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22. 4-1-2. ゼーベッ ク効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23. 4-1-3. ペルチェ 効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24. 4-2. 熱 電冷却の基 礎式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24. 4―2-1. 電熱冷却 のエネルギ ー収支・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25. 4―2-2. 冷却のた めの消費エ ネルギ-・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26. 4―2-3. 成績係数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27. 4―2-4. 最大吸熱 量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27. 4―2-5. 最大温度 差・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27. 4―2-6. 最大成績 係数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28.
(4) 4―3. 熱 伝素子の性 能指数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28. 4-3-1. 熱電材料 の性能指数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29. 4―3-2. ペルチェ 素子の材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30. 4―3-3. 熱電材料 の種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30. 4-3-4. 性能特性 図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31. 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34. 第5章. 研 究目標の物 理量として の数値化の ための基礎 実験・・・・・・・・・・・35. 5-1. 高 密度プレー トフィンシ ンクによる 基礎実験・・・・・・・・・・・・・35. 5-2. 伝 熱グリスの 差による吸 熱能力の差 の実験・・・・・・・・・・・・・・・39. 5-3. 冷 却ユニット の吸熱能力 の測定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41. 5-4. 改 良方針再確 認と基礎実 験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42. 5-4-1 改良方針 再確認・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 5-4-2 水冷ユニ ットによる 改良方針の 確認実験・・・・・・・・・・・・43 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48. 第6章. 各 種ヒートシ ンクの解析 、実験によ る冷却性能 の比較検討 ・・・・・49. 6-1. 概 要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49. 6-2. プ レートフィ ン・ヒートシンクのス トレートフ ィンと オフセット フィンのC AE解析に よる冷却性 能比較・・・・・・・・・49. 6-2 -1. 試料 形状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49. 6-2 -2. 解析 条件・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49. 6-2 -3. 解析 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50. 6-2 -4. 解析 結果図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51. 6-3. オ フセットプ レートフィ ン・ヒート シンクのフ ード効果・・・・・53. 6-3 -1. 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53. 6-3 -2. 実験 条件と実験 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54. 6-4. 高 密度プレー トフィン・ ヒートシン クの ヒートブロ ック法によ る性能実験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54.
(5) 6-4 -1. 概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54. 6-4 -2. 実験 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55. 6-4 -3. 結果 の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55. 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56. 第7章. ピ ンフィン・ヒートシン クの詳細検 討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57. 7-1 概 要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57 7-2 電 子機器用冷 却装置の性 能向上のた めの基礎検 討・・・・・・・・・・・・57 7-3 改 良方針の検 討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58 7-3-1. 熱伝達率 h 増加の可 能性の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58. 7-3-2. ピンフィ ンの効率η の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60. 7-3-3. 銅製の ピンフィン による冷却 性能の実験 ・・・・・・・・・・・・62. 7-4 軸 流ファン風 速分布偏在 性がピンフ ィンシンク 冷却性能に 及ぼす影響 の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63 7-4-1 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63 7-4-2 軸流ファ ンの風速分 布の実測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・64 7-4-3 軸流ファ ンの風速分 布がピンフ ィンシンク 冷却 に及ぼす影 響のCAE 解析による 検討・・・・・・・・・・・・・・・66 7-4-4 軸流ファ ンの風速分 布がピンフ ィン・ヒートシンク 冷却に及ぼ す影響のラ バーヒータ ーによる検 討・・・・・・・73 7-4-5 ピンフィ ン・ヒートシンクの中 心部の 冷却寄与率 に関する冷 却実験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78 7-5 ピ ンフィンシ ンクの熱伝 達率 h の風 速との関係 に関する検 討・・80 7-5-1. 熱伝達率 と風速の熱 流体力学に よる検討・・・・・・・・・・・・・80. 7-5-2. ピンフィ ン・ヒートシンクの熱 伝達率 h の 風速 u との 関係実測デ ータ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82. 7-6 熱 伝達促進の ための擬似 格子構造ヒ ートシンク による実験 ・・・・84 7-6-1. 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84.
(6) 7-6-2. 高密度プ レートフィ ンによる擬 似格子構造 ヒートシン クによる冷 却性能実験 ・・・・・・・・・・・・・・・・85. 7-6-3 トリップメッシュ擬 似格子構造 ヒートシン クの実験・・・85 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・88. 第8章. 各 実験検討結 果に基づく 改良方針と 改良実験・・・・・・・・・・・・・・・・89. 8-1 各 実験結果に 基づく改良 方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・89 8-2 風 速増加によ るペルチェ クーラーの 改良実験・・・・・・・・・・・・・・・90 8-2-1 ファンの 選定と特性 比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90 8-2-2 高速ファ ンによるヒ ートシンク の熱抵抗の 測定・・・・・・・91 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・92. 第9章. 発 泡多孔質体 の界面熱伝 達率の優位 性に関する 論理的考察 ・・・・93. 9-1 緒 言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93 9-2 非 連結多孔質 体(粒子充 填層)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93 9-3 発 泡多孔質体 の熱伝達・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95 9-4 発 泡多孔質体 における熱 伝達モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・99 9-5 滲 み出し混合 流速の見積 もり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・101 9-6 既 存の実験結 果と相関式 の比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・103 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・107. 第10章. 改良シングルブロー法によるセラミック多孔質体の 高 精 度 な 界 面 熱 伝 達 率 の 決 定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・108. 10-1. 概. 要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・108. 10-2. 緒. 言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・108. 10-3. 実 験 装 置 と 実 験 手 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・110. 10―4. 実 験 結 果 の 検 討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・113. 10-5. 結 論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・116. 参 考 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・116.
(7) 11章. ピ ンフィン・ ヒートシン クと発泡多 孔質体ヒー トシンクの 冷却性能比 較実験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・118. 11-1. 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・118. 11-2. 実験試料仕 様・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・118. 11-3. 実験装置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・119. 11-4. 実験結果の 検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・122. 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・126. 第12章. ハイブリッ ドフィンシ ンクの性能 の検証と考 察・・・・・・・・・・・・127. 12-1 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 12-2 実験試料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 12-3 測定点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129 12-4 実験結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・130 12-5 実験データ と理論式に よる比較検 討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・130 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・135. 第13章. 軸流ファン によるハイ ブリッドフ ィンシンク の性能検証 ・・・・137. 13-1 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・137 13-2 実験試料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・137 13-3 実験装置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・137 13-4 実験結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・139 13-5 実験結果の 検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・140 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・140. 第14章. 流体で満た された多孔 質体チャネ ル強制対流 の 局所非熱平 衡モデルに 基づく厳密 解・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・141. 14-1 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・141 14-2 緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・141 14-3 有効気孔率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・143.
(8) 14-4 金属発泡体 の淀み有効 熱伝導率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・146 14-5 等温高温壁 および低温 壁を有する 金属発泡体 充填チャン ネルの強制 対流熱伝達 ・・・・・・・・・・・150 14-6 等熱流束下 の金属発泡 体充填チャ ンネルの 強制対流熱 伝達・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・155 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・162. 第15章. 結言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・166. 付録―1. 改良前ペル チェクーラ ーの外観と 仕様とノン ドレン・・・・・・・170. 付録―2. 新型ペルチ ェクーラー の仕様と従 来型との性 能比較・・・・・・・173. 記号(熱電 素子に関す る記号)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・177 記号(熱流 体力学に関 する記号) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・178. 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・180.
(9) 第1章. 序. 論. 1-1. 研 究の背景. 20 世紀後半のブロードバンドの実現に伴うパソコンとインターネットサービス の普及、このサービスをインフラとして支える通信用のサーバー、ルーター、スイ ッチ、これらの装置で構成されたデータセンターなどの情報インフラの増築が現在 も進んでいる。また、21 世紀に入り携帯電話の普及と、この通信サービスを支える 基地局の増設により通信網の拡大が進められている。図 1-1、1-2 に郊外の通信基地 局の例を示す。図 1-3 には小型通信基地信局(小型通信装置を収納した筐体)と、 これの冷却装置であるペルチェ素子を使った電子機器用冷却装置(以下本文ではペ ルチェクーラと称す)が電柱に設置されている様子を示す。. 図 1-1. 郊外基地局ア ンテナ. 1.
(10) 図 1-2. 郊外基地局コ ンテナ. 小型通信基地局 (小型通信装置収納筐体). ペルチェクーラ. 図 1-3. 小型通信局と ペルチェク ーラ. 2.
(11) 通信サービスをよりきめ細やかにするために、通信基地局の増設が必要となって いる。しかし,ビルなどの建築物が乱立する都市部では大型の通信基地局が設置で きないめ、図 1-3 に示すように、小型の通信装置を防水性のキャビネットに収納し、 ペルチェクーラで冷却する小型通信基地局が街角の電柱などに多数設置されている。 通信基地局や小型通信基地局の各種通信装置には多数の半導体素子が使用されてい る。現代はインターネットや携帯電話は不可欠で、当たり前のものとなってきてい る。このインターネットや携帯電話などの発達を牽引してきたのが、CPUに代表 される半導体素子である。図 1-4 にCPUの発熱密度の年代による推移を示す (1) 。. 発熱密度[W/cm2]. 10,000. 1,000. 100. 10. 1 1970. 1980. 1990 年 代. 2000. 2010. 図 1-4 年代の経過とC PUの発熱 密度の年代 推移 図 1-4 のCPUの発熱密度の年代推移のグラフをみると、特に 1990 年から 10 年 ごとに発熱密度は 10 倍になっている。これらはインターネットおよび携帯電話の普 及と呼応している。このように情報通信インフラは拡大の一途をたどっている。し かし、情報通信資本の成長という観点から見ると、過去 10 年間で、米国は約 4 倍の 成長、英国は約 4.5 倍の成長を示いるが、日本はこれらの約半分の成長に留まって いる。分野別では「小売」「対個人サービス」「農林・水産」「医療・福祉」「教育」 において ICT(Information Communication Technology)の利活用が低迷している。 日本の情報通信産業の市場規模は全産業市場の 10%を占めており、日本の情報通信. 3.
(12) 産業はマイナス成長の時期も含めて、経済成長に対する寄与度は一貫してプラスを 維持しており、平成 19 年度のまでの 5 年間では平均 34%の寄与率を示している。 ICT の利活用が低迷している分野における情報化投資の加速と ICT 利活用の促進が 日本の今後の成長に必要であり、ICT による経済成長と国際競争力の強化が今後の 日本の繁栄にとって極めて重要である (2) 。 このような背景から、国策として ICT の利活用の促進政策も進められてきた。文 科省においては教育情報化推進委員会が平成 16 年に設置され、2005 年度末までに、 教室のインターネット接続率を 100%にすることを目標に掲げている (3) 。総務省と 文部科学省は 2011 年 7 月 6 日、「フューチャースクール推進事業」および「学びの イノベーション事業」に係わる提案公募について発表した (4) 。都道府県、市町村、 これらの連携体および国立大学法人 1 校に ICT 利活用に関する措置に補助金を出す というものである。 このように、国策としても情報通信事業の成長は非常に重要な位置にある。一方、 私生活でも、ますます必要不可欠となったインターネット、携帯電話などの情報通 信インフラを安全かつ確実に 24 時間連続運用することがさらに重要になってきて いる。その上、携帯電話の通信サービスの内容が高度化し、通信負荷(トラフィッ ク)は増える傾向にある。それと共に、通信エリアの拡大に応じて通信基地局の増 設が今も続いている。現在、半導体素子の主流は Si であり、ジャンクション温度は 170℃が限界である。この半導体素子を如何に正常動作温度に冷却できるかが情報通 信サービスを確実に提供するための大きな技術課題となっている。. 図 1-5. CPUの冷却. 4.
(13) 図 1-5 に コ ン ピ ュ ー タ の 高 速 計 算 処 理 を す る 半 導 体 素 子 で 構 成 さ れ た 中 央 演 算 処 理 装 置 、 C P U ( Central Processing Unit) の 冷 却 の 例 を 示 し た ( 5 ) 。 C P U と プ レ ー ト フ ィ ン シ ン ク の 間 に 熱 伝 導 グ リ ス を 塗 り 、軸 流 フ ァ ン を ネ ジ で 固 定 し 冷 却 す る 例 が 一 般 的 で あ る 。日に日に高度化する通信サービスの安定し た提供は、CPUに代表される、半導体の冷却技術の如何にかかっていると言って も過言ではなく、今後さらに冷却技術の重要 性 は 高 く な る と 考 え ら れ る ( 6 ) 。 半 導 体 の 進 展 と し て は 現 在 主 流 の Si に 変 わ り 、 SiC や GaN が 注 目 さ れ て い る 。SiC に い て は 一 部 ス イ ッ チ ン グ 直 流 電 源 に 実 用 化 さ れ つ つ あ る ( 7 ) - ( 8 ) 。こ れ ら の 素 子 は ジ ャ ン ク シ ョ ン 温 度 が 200℃ と 高 い 上 に 、ス イ ッ チ ン グ 時 の 排 熱 ロ ス が 従 来 の Si 素 子 の 1/10 と 言 わ れ て お り 、将 来 は C P U に も 展 開 さ れ る こ と は 間 違 い 無 い 。 し か し 、 図 1-4 の C P U の 熱 密 度 の 変 遷 が 示 す よ う に 、 Si 素 子 の 性 能 が 向 上 す る と そ の 性 能 を 限 度 ま で 使 う 技 術 が 出 現 し 、素 子 の 性 能 向 上 と 共 に 素 子 の 発 熱 密 度 を 高 め 、冷 却 技 術 が 従 来 に 比 べ さ ら に 重 要 と な っ て き た 。 SiC や GaN も Si と 同 じ 発 熱 密 度 の 歴 史 を た ど る こ と は 十 分 考 え ら れ る 。一 方 、 素 子 そ の も の の 冷 却 技 術 の 革 新 を 追 及 し た 、マ イ ク ロ チ ャ ン ネ ル な ど に よ る 冷 却 技 術 も 20 年 近 く 研 究 が 続 け ら れ て い る ( 9 ) - ( 1 4 ) 。レ ー ザ ー 素 子 の 冷 却 や 一 部 の コ ン ピ ュ ー タ で の 実 用 例 は あ る が 、数 は 少 な く 、一 般 的 な 半 導 体 素 子 の 冷 却 に ま で は 普 及 し て い な い 。従 っ て 、従 来 の 放 熱 シ ン ク に よ る 強 制 対 流 に よ る 冷 却 技 術 は 今 後 も 主 流 で あ り 、効 率 の 良 い 放 熱 シ ン ク な ど の 研 究 開 発 は 今 後 も 重 要 と な る ( 1 5 ) - ( 1 7 ) 。こ の 技 術 的 基 礎 と な る 熱 流 体 力 学 の 重 要 性 も ま す ま す 大 き く な るものと考えられる。 さ ら に 、素 子 単 体 の 冷 却 は 言 う に 及 ば ず 、こ れ ら の 素 子 で 構 成 さ れ た 通 信 装 置 や ス イ ッ チ ン グ 電 源 、こ の 装 置 を 覆 う ケ ー ス 、さ ら に は こ れ ら の 半 導 体 を 使 用 し た 機 器 類 や 通 信 装 置 を 収 納 す る キ ャ ビ ネ ッ ト 、ラ ッ ク 、こ れ ら の キ ャ ビ ネ ットやラックを多数設置したデータセンターや基地局全体にまでに合理的な 熱 対 策 の 必 要 性 は 及 ん で い る 。特 に 、小 型 基 地 局 は 携 帯 電 話 の サ ー ビ ス の 内 容 の 高 度 化 と 通 信 網 の 拡 大 、細 密 化 の た め 、前 述 し た よ う に 都 市 部 の 電 柱 な ど に 設 置 さ れ る こ と が 増 え て 来 て い る 。そ れ に 伴 い 通 信 装 置 と そ の キ ャ ビ ネ ッ ト も. 5.
(14) 小 型 化 の 傾 向 に あ り 、こ れ ら を 冷 却 す る ペ ル チ ェ ク ー ラ の 小 型 化 、高 性 能 化 の 要 求 が 強 く な っ て き た 。こ の 要 求 に 応 え る こ と は 通 信 技 術 を 陰 で 支 え 、利 便 性 の 維 持 や 緊 急 時 の 連 絡 の 確 保 な ど 社 会 性 も 高 い た め 、積 極 的 に ペ ル チ ェ ク ー ラ の 小 型 高 効 率 化 の 改 良 研 究 を 、次 世 代 に 繋 が る 放 熱 シ ン ク の 可 能 性 の 追 求 と 共 に進める事にした。. 1-2. 本論文の構成. 本論文は、15章からなり、第2章「電子機器用冷却装置の説明と改良研究目標 」 では、ペルチェクーラの構成ユニットの説明と、期待される研究目標について述べ ている。従来のペルチェクーラの概要、性能、仕様は付録1に示してある。第3章 「冷却性能評価方法について」では、本研究で行った様々なシンクの放熱性能実験 や冷却性能実験方法を記述してある。各章、各項で同様の実験方法が何回も出てく るが,その都度の詳細説明は極力止め,4 種の代表的な実験方法について説明し、 名称だけで分るようにした。第4章 「ペルチェ素子について」では、電子機器用冷 却装置の心臓部である、ペルチェ素子について重要と思われる項目についてまとめ た。第5章「研究目標の物理量としての数値化のための基礎実験」では、研究の初 期段階に位置づけられる各種基礎実験を行っている。筐体の容積の冷却能力への影 響、各部熱抵抗の影響の検討を行い、とくにグリスの影響について調べた。また、 従来のペルチェモジュールの吸熱能力の限界を具体的に把握し、ペルチェクーラの 放熱に関する式、 Q h =Q c + P を検討した。また、第2章の改良目標を、実験値をも とに物理量としての目標値を具体化し、ペルチェユニットの水冷ユニットによる実 験で放熱抵抗半減が吸熱能力も向上につながることを確認している。第6章「各種 ヒートシンクの解析、実験による冷却性能の検討」では、数種類のヒートシンクの CAE解析や実験を行い、各シンクの性能向上に対する有用性の是非の検討を行っ ている。第7章「ピンフィン・ヒートシンクの詳細検討」では、前述の多くの検討結 果から、空冷で現状のピンフィン・ヒートシンクで熱抵抗を半減という目標を熱流体 力学的な問題として捉え、現状のピンフィン・ヒートシンクの熱伝達率 h の向上によ る放熱シンクの熱抵抗の半減という方向が明確にし、従来のペルチェユニットの放. 6.
(15) 熱シンクの熱伝達率 h を物理量の数値として具体化した。次に、文献で向上できる 余地について検討した。また、フィン効率について検討し、実験で改良の余地の有 無の検討をした。ペルチェクーラには軸流ファンを使用するが、軸流ファンにはそ の外縁部と中央部では風速分布に極端な差があるという、風速の偏在性という問題 がある。これとピンフィン・ヒートシンクを組み合わせた場合の風速の偏在性が冷却 性能に及ぼす影響の有無について徹底的に調べた。また、ピンフィンヒート・シンク の熱伝達率 h と風速 u の関係について熱流体力学の理論式の検討と、実測データの 検討から熱伝達率 h と風速 u との関係を具体化した。この関係基づき適切なファン を選定し放熱フィンの熱抵抗を半減を実現し、回路構成の変更により冷却性能の向 上を従来のピンフィン・ヒートシンクの大きさで実現すべく、2 種類のヒートシンク に乱流促進構造を付加し、それぞれの試料で冷却性能の向上の効果について実験結 果の報告を行なっている。第8章「各実験検討結果に基づく改良方針と改良実験」 では、今までの解析、実験、理論的検討結果について再検討を行い、物理量として の改良方針の再確認を行ない、最終的には風速を従来の 4 倍のファンの使用により 熱抵抗を半減し、従来の約半分の大きさの小型化した製品を実現するとともに、回 路構成なども変更することでCOPを世界1の水準にし、機会学会の技術賞も受賞 した。付録-2にこれらの詳細説明を載せた。第9章「発泡多孔質体の界面熱伝達率 の優位性に関する理論的考察」では、発泡多孔質体はピンフィンと異なり、熱伝達 率が風速の約 1 乗に比例する点に注目した。この発泡多孔質体とピンフィンシンク の熱伝達の機構の差を、発泡多孔質体の物理モデルに基づく 2 エネルギー方程式を 求め、さらに局所体積平均理論により発泡多孔質体の熱伝達率が風速の約 1 乗に比 例する半理論式を導出した。また、各研究者の論文データとの比較においてよい一 致を示したことを報告している。第10章「改良シングルブロー法によるセラミッ ク多孔質体の高精度な界面熱伝達率の決定」では、第9章で理論的に証明した、発 泡多孔質体の界面熱伝達率が風速の約 1 乗に比例することを、従来法より高精度か つ再現性の高い改 良 シ ン グ ル ブ ロ ー 法 を 用 い て 各 種 セ ラ ミ ッ ク 多 孔 質 体 の 熱 伝 達 率 測 定 実 験 を 行 う こ と で 、実 験 で も 発泡多孔質体の熱伝達率が風速の約 1 乗に 比例することを証明した。第 11章「ピンフィンシンクと発泡多孔質体シンクの冷. 7.
(16) 却性能比較実験」では、同じ大きさのアルミ製のピンフィンシンクと金属発泡体シ ンクの伝熱特性の比較実験を行い、ピンフィンシンクの熱伝導と発泡多孔質体の熱 伝達の優位性を明らかにしている。第12章「ハイブリッドフィンシンクの性能の 検証と考察」では、ピンフィンシンクの熱伝導特性と発泡多孔質体の熱伝達特性の それぞれの優位性を組み合わせたハイブリッドシンクを作成し、熱伝達率の測定実 験を実施し、熱伝達率がピンフィン・ヒートシンクより約 2 倍向上することを示す とともに、理論解析を行い理論式が実験値と一致することを報告している。第13 章「軸流ファンによるハイブリッドフィンシンクの性能検証」においては、小型ヒ ートシンクとしての応用を念頭に置き,軸流ファンによるハイブリッドシンクの熱 伝達性能の実験を行い、その有用性を明らかにしている。第14章「流体で満たさ れた多孔質体チャネル強制対流の局所非熱平衡モデルに基づく厳密解」では、従来 の2エネルギー方程式で使用されてきた流体相と固体相の熱伝導に関する式が過り であることを淀み熱伝導率から有効気孔率を導出することで証明している。また、 有効気孔率の概念が、流体で満たされた多孔質体チャネル内の固体相と流体相、そ れぞれの有効熱伝導率に与える迷路係数と熱分散の効果を説明するために有効であ ることを示している。この有効気孔率の概念を使って、局所非熱平衡モデルに基づ き,発泡金属充填チャネル内の強制対流熱伝達の厳密解を得ている。局所熱流束壁 と局所熱平衡壁の理論的考察から、実際の見積もりにおいては、局所熱平衡壁の条 件を用いるべきであることを明らかにしている。. 8.
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(19) 第2章. 電 子機器冷却 用装置の説 明と改良研 究目標. 2-1 電 子機器冷却 装置につい て. 小型基地局に設置される通信装置の発熱は数 10Wと小さく、屋外設置における、 一昔前の方法は、密閉度の高い筐体に収納し、自然放熱で冷却していた。そのため 大きな放熱面積が必要になり、通信装置の大きさに比べ数倍もの大きさの筐体に収 納し、コストもかかっていた。また、筐体が大型のため本来は小型で軽量である通 信装置も筐体を入れた総重量は重くなり、設置時の作業性の悪化などの影響もあっ た。自然放熱の研究などもなされたが、実用化に至っていない (1) 、 (2) 。通信用筐体の 空冷限界などについて論じた論文も複数あるが、具体的な事例には対応出来ていな いのが実際のところのようである (3)-(6) 。そこで、100W程度の冷却能力のクーラであ れば小型通信基地局の通信装置を収納する筐体を確実に冷却し、なおかつ、小型化 でき、電柱などの高所作業における作業性の向上、安全性の向上が確保しやすい利 点がある。そのため、近年、100Wの程度の冷却能力のペルチェクーラが採用された。 コンプレッサ式のクーラでは 400W程度までしか小容量化が出来ないこと、ポンプ、 コンプレッサなど稼動部による振動、冷媒の補充などメンテナンスも必要である。 ペルチェクーラの稼動部はファンだけであり、ポンプなど振動の大きい稼動部が無 く、冷媒のメンテナンスも不要であることも、ペルチェクーラが採用される理由で ある。また、ペルチェクーラを実装した専用筐体もある (7) 。図 2-1 にペルチェクー ラの構成要素と吸熱性能 100Wのペルチェクーラの外観を示す。ペルチェクーラは 大きさ40mm×40mm、厚さ 4mmのペルチェ素子を、W100×H37×D130 の大き さのアルミ合金製で、2mm□のピンフィンシンクに熱伝導グリスで密着させ、他の 隙間を断熱材で埋め、吸熱側と放熱側のピンフィンシンクをバネ入りのネジで一定 の締め付けトルクで締め付けて組み立てた、ペルチェユニットを基本構成要素とし ている。ペルチェクーラの定格に合わせてペルチェユニットを必要数使用し、各定 格のペルチェクーラを作成している。図 2-2 にペルチェクーラの基本構成要素であ るペルチェユニットの外観を示す。. 11.
(20) ペルチェクーラー ペルチェ素子. 図 2-1. ペルチェユニット. ペルチェクー ラの構成要 素と外観. 吸熱側 吸熱側. 放熱側. 図 2-2. ペルチェユニ ット外観図 130 ペルチェ素子. 100. 図 2-3. ヒートシンク 上のペルチ ェ素子配置. 12.
(21) 図 2-2 のペルチェユニットの上部が吸熱側、下部が放熱側であり、図 2-3 に示す ようにペルチェ素子を 3 枚配置するのが基本構成である。これらのペルチェ素子を 直列につなぎ、所要の電流を流し、軸流ファンを使用し吸熱と放熱を行う。吸熱能 力は図 2-2、図 2-3 に示したペルチェユニット単体では約 65Wである。このペルチ ェユニットを 2 台使い、ファン、電源、表示装置などと一緒に組み立てて、約 100W の吸熱性能のペルチェクーラとする。詳細な仕様は付録―1に示す。. 2-2. 研 究目標と方 針. 第1章で述べたように携帯電話の基地局の増設が続いている。通信機器はその サービスの内容が高度化を続け、黒電話の時代は音声のみの電信で良かったものが、 音声と文字、さらには画像の送信、動画の伝送、近年ではインターネットのモバイ ル端末化、と激しく進化している。これに伴い通信トラフィックは増加し、高容量、 高速の通信サービスをよりきめ細かく確実に行う必要が出てきた。さらに、従来に 比べより高性能かつ小型化した通信装置を使った小型基地局が各地に多数設置され るようになり、冷却装置も小型、高効率化が求められるようになった。この結果、 以下に示す目標を満たすペルチェクーラの改良研究が必要になった (8),(9) 。. 研究目標 1)小型化の要求:従来のサイズを半分にする 2)冷却性能. :従来の吸熱性能 100W維持. 3)COP. :従来の 0.56 から 1 以上にする. 注:ここで言うCOPはペルチェクーラの全消費電力と吸熱量の比. 方針 以上 3 つの研究目標は一応数値で示してある。しかし、この研究目標を実現する ためには、目標とする数値をより具体的な、制御できる物理量として数値化する必 要がある。このため、冷却に関する基礎実験を行い、物理量としての数値目標の具 体化から始めることにした。. 13.
(22) 参考文献 (1) 岡崎多佳志,瀬下裕,前田有美, 移動体通信機極の冷却システムに関する研究 冷媒自然循環を用いる冷却装置の性能解析,日本機械学会論文集,B編 71(707), pp.1878-1884,2005. (2) 中里典生,平沢茂樹,森利行,真藤孝徳, 通信機器きょう体内フィン付鉛直基 板の自然対流冷却,日本機会学会論文集(B編),61 巻,587 号,pp.2667-2681, 1995. (3) 中山亘, 電子機器の空冷技術:その適用限界を探る, REAJ 誌,Vol.29,No.2, pp.438-445,2007. (4) 平澤茂樹ら,LSIチップ内のSOI構造トランジスタ素子の熱解析,日本機械 学会論文集(B 編),62 巻,593 号,pp.405-409,1996.. (5) 佐藤圭,鈴木恭宜,三村哲也,楢橋祥一、野島俊男,小型極低温受信フロン トエンドの基本特性と移動通信基地局への適用効果、 電子情報通信学会 技術研究報告. RCS, 無線通信システム 100(82),pp.1-6,2000. (6) 宮坂明宏,加保貴奈,三次仁,中須賀好典,上羽正純,発熱特性信号による衛星搭 載用中継器の発熱低減評価,日本航空宇宙学会論文,Vol.52,pp.507-513,2004 (7) 屋外通信用キャビネット ReiCabi,日東工業、販促資料,2011. (8) Ando, K., Nakayama, A., Imai, Y., Hirai, H., Heat Transfer Characteristics in Consolidated Porous Media, AIP Conf. Proc. Vol. 1254, pp. 27-32, Proc. 3rd Int. Conference on Porous Media and Its Applications in Science, Engineering and Industry, 2010. (9) 安藤健志,今井悠介,平井秀和, 中山顕, 連結・非連結多孔質体の界面熱伝達 率の違いに関する理論的考察,化学工学論文集, Vol.39, No.2, pp.73-77,2013.. 14.
(23) 第3章. 冷 却性能評価 方法につい て. 3-1. 冷 却性能評価 方法. 第2章のペルチェクーラの性能向上のための、研究目標を制御できる物理量とし ての数値目標として具体化するためには、各種シンクの冷却性能を多数の実験で調 べる必要がある。この実験方法には、製品の規格に基づく冷却性能評価、シンクの 冷却性能を簡便に比較する評価方法などがあり、各種実験において各種冷却評価方 法を必要に応じて使い分けている。各章の項目でその都度試験方法の説明を極力省 くため、本項に各試験方法をまとめ、各試験方法が名称で分かるようにした。冷却 性能の評価は温度測定技術が基本であり各種規格、多くの文献に記述されている基 本の方法を元に行なっている (1)-(5) 。必用に応じて試験方法を図で説明することもあ る。. 以下の 4 種の試験方法が主に使用される: 1)二重箱法・・・・規格に基づく製品性能評価やペルチェユニット性能評価 2)ヒートブロック法・・シンクの冷却性能、熱抵抗の相対評価等に使用する 3)吊り下げ法・・・室温にモジュールなどを吊るした状態で冷却実験をする 4)ダクト法・・・・ダクトに試料を設置し送風しヒートブロックと組み合わ せて性能評価をする. 3-2. 各 種評価方法 の詳細説明. 1)二重箱 法 ペルチェクーラの冷却性能の評価は熱関連機器工業会の試験規格 (1) で行う。こ の冷却性能評価法には二重箱法とエンタルピー法の 2 種類がある。二重箱法の方 がエンタルピー法より実際の使用条件に近い性能が分かるため、試験規格ではエ ンタルピー法で求めた能力には 0.7 を乗じて実質的な性能としている。今回のヒ ートシンクの性能評価には、二重箱法を多用している。二重箱法は断熱した試験 筐体に発熱体と評価試料を設置し、試験筐外部温度を一定に保てる恒温槽内に置 く。規格では、槽内の温度を 35℃に設定し、試験筐体内の電熱ヒータを発熱させ、. 15.
(24) 断熱筐体に設置した試料クーラを作動させる。筐体内部の温度が 35℃になり筐体 外部の温度と平衡になったときのヒータの消費電力をクーラの吸熱能力と考え ることができる。図 3-1 に二重箱法の概念図を示し、断熱箱の例を図 3-2 に示す。. 恒温槽内部 温度 35[℃] 断熱箱 試験筐体内 部温度 ヒーター. 35[℃]. クーラ. 電力計 W 図 3-1. 図 3-2. 二重箱法の概念. 断熱箱(ペル チェユニッ ト評価の例 ). 16. 恒温槽.
(25) ヒートシンクの冷却性能などの相対評価においては、恒温槽ではなく恒温室も使 用する。また設定温度も冷却装置の評価では 35℃であるが、ヒートシンクや冷却ユ ニットなど、部材の冷却特性の相対評価では温度の値を特に定めていない。但し、 断熱箱内部と外部の温度を同じ値にすることで評価を行い、筐体内部と外部の温度 が同じ温度で平衡状態になったときのヒータに供給した電力を試験試料の吸熱性能 とみなす点は規格試験と同じである。各部の温度は熱電対で計測する (2),(3) 。. 2)ヒートブロ ック法 主にヒートシンクの冷却特性の相対評価を行う場合に使用する簡便法である。熱 抵抗も求められる。図 3-3 にヒートブロックの概観図と構成部材を示す。. 図 3-3. ヒートブロッ ク. メインヒータで発熱量を制御し、ガードヒータはメインヒータと同じ温度になる ようにコントロールする。両ヒータの温度差が 0.2K以内になるように設定する。 これにより図 3-3 に示すベークライトはほぼ断熱状態となり、メインヒータからの 熱は銅版を通して、ほぼ 100% 試験試料に供給される。周囲温度 T a [℃]と試料シン クの温度 T s [℃]を測定し、メインヒータの供給熱量 Q h [W]から、ニュートンの冷 却の式 Q h = hA ( T s -T a )により hA を決定する。ここで、 h は熱伝達率[W/m 2 K]、. A は試料シンクの表面積[m 2 ]である。R th =1/ hA が熱抵抗[K/W]となる。各種 ヒートシンクの冷却性能の相対比較がこの試験方法により可能となる。試験装置の. 17.
(26) 概要を図 3-4 に、ヒートブロック部を図 3-5 に示す。それぞれの実験で各部の温度 の測定は熱電対 (2) を使用し、JIS規格に準じた方法で行う (3) 。. 図 3-4 ヒートブロック 試験装置の 概要. 図 3-5. ヒートブロッ ク部. 18.
(27) 3)吊り下 げ法 ラバーヒータや試料シンクに適切な熱量を与えた時の熱分布を正面や背 面 から 、 サーモグラフィで確認する ( 6)-(8) 。大型ペルチェユニットでヒートブロック法の適 用が困難な場合、そのヒートシンクの冷却性能を調べる場合に、常温の部屋などで 行う簡便な評価方法である。ラバーヒータとサーモグラフィの例を図 3-6、大型ペ ルチェユニットの例を図 3-7 に示す。. 図 3-6 サー モグラフィ の例. 図 3-7 ペルチェユニッ トの例. 4)ダクト 法 ブロア. 風速計. ヒータ 熱電対. 熱電対. 試験試料 図 3-8. ダクト法. 19.
(28) ダクト中央に注目する試料で構成したヒートブロックを設置し、インバータで風速 を変え、アネモメーター (9)-(12) で風速を測定し各部の温度を熱電対で測定し、ヒー トシンクの冷却性能を把握する方法である。図 3-8 に試験装置の概観図を示す。こ のような試験方法を駆使し次世代のヒートシンクの研究をすすめる (13),(14) 。. 参考文献 (1) 電子冷却式盤用クーラーの性能評価試験方法,技術資料. 第 008 号-2009. TECTA 盤用熱関連機器工業会,2009. (2) JIS C1602-1995. 熱電対,日本規格協会,1995.. (3) JIS Z8710-1993. 温度測定方法,日本規格協会,1993.. (4) 伝熱工学資料,第1章 温度測定、日本機械学会、改定4,pp.285-303,1986. (5) 石塚勝,電子機器の熱設計基礎と実際 12.1 温度測定法, 丸善, pp.395-407,1998. (6) D.Auer,サーモグラフィポケットガイド,TestoAG,2009. (7)出 村 克 宣:赤 外 線 サ ー モ グ ラ フ ィ に よ る 室 内 空 間 の 温 度 分 布 測 定 ,社 団 法 人 日 本 建 築 学 会 学 術 講 演 梗 概 集 .D-2,pp.159-160,2005. (8) 島田宏樹,サーモグラフィによる状態監視保全技術の改善,日本保全学会第4回 学術講演,JOURNAL,Vol.11,pp.107-116,2007. (9) Dryden, H.L. and Kuethe, A.M., The measurementof fluctuations of air speed by the hot wire. anemometer. NACA Technical Report 320,1929.. (10) 前田昌信,エレクトロニクスの発達に支えられた流体計測の進展,ながれ 25, PP.145-152,2006. (11) Karmshar et al.,Issues and temperature compensation tschniques for hot wire Thermal flow sensor,International Journal of Physics and ence,Vol.6 pp.3270-3278,2011. (12) 菱田幹男,長野靖尚,田代真一郎:速度変動と温度変動の同時測定,日本機械 学会論文集,43-365,pp.225,1977.. 20.
(29) (13) 安藤健志,今井悠介,平井秀和,中山顕, 発泡金属充填ピンフィンヒートシン クを用いた伝熱促進,日本機械学会論文集(B編),77 巻,782 号,1958-1967,2011. (14) 安藤健志,今井悠介,平井秀和, 中山顕,連結・非連結多孔質体の界面熱伝達 率の違いに関する理論的考察,化学工学論文集, Vol.39, No.2, pp.73-77,2013.. 21.
(30) 第4章. ペルチェ 素子につい て. ペルチェクーラの性能向上、小型化においてペルチェ素子の特性について理解し ておくことは重要である。また、熱的基礎実験の動作温度を知る場合に、特にペル チェ素子の I - Q c 吸熱特性上での検討が有効であることから,熱電効果とペルチ ェ素子の基本について各種文献を参考にしてまとめた (1)-(4) 。. 4-1. 熱 電効果. 電気と熱の間の現象を熱電効果(thermoelectric effect)と称す。この熱電効果に は三つあり、トムソン効果(Thomson effect)、ゼーベック効果(Seebeck effect) 、 ペルチェ効果(Peltier effect)である。電流が流れると抵抗で発熱するジュール熱 (Joule heating)があるが、一般には熱電効果には含まれない。ペルチェ効果につい ては後の項で詳細な説明を行う。ここでは、トムソン効果とゼーベック効果につい てその概要を説明する。 4-1-1. トムソン 効果 B. A. I TB. TA V. 図 4-1. トムソン効果 の原理図. 図 4-1 に示すように、一つの導体、または半導体の中に温度差が存在する場合、 これに電流を流すとジュール熱の他に、熱の発生または吸収がみられる。この 熱量を Q T とすると、以下のような式で表される。. Q T =σ・ I ・ ΔT. (4-1). ここで I は電流[A]、ΔT は温度差( T A ― T B )[K」をあらわしている。またσは 比例定数でトムソン係数(Thomson coefficient)と呼ぶ。温度の高い方から低い方 (図4-1において T A > T B )へ電流を流したとき熱が発生する場合、トムソン係 数σが正となるように定めている。この様な熱の発生、または吸収の現象は 1851. 22.
(31) 年トムソン(Sir W.Thomson)が発見し、トムソン効果と呼ぶ。この現象はペルチェ効 果の利用を考える場合、厳密には考慮する必要があるが、実際問題としては無視す ることが多い。 4-1-2. ゼーベッ ク効果. I. 1. TB. TA A. B. I. 2. 図 4-2 ゼーベック効果 の原理図 図 4-2 の よ う に 異 種 の 2 つ の 導 体 、 あ る い は 半 導 体 を 接 続 し て 閉 回 路 を 構 成 し 、 2 種の導体の接続点、A、B点の温度 T A 、 T B が異なる場合、この閉回路に電流 I が流れる。即ち、この回路に起電力が発生する。この現象は 1821 年ゼーベック (T.J.Seebeck)が発見した。これをゼーベック効果と呼び、誘起された起電力を熱起 電力(thermoelectric electromotive force)という。一つの材料の定数として、温 度差1K当たりにに誘起される熱起電力αを考え、これを絶対熱起電力(absolute thermoelectric power)という。これは他の熱電効果をまったく示さない仮想的な材 料を組み合わせた場合の熱起電力である。図 4-2 に注目し、材料 1,2 の絶対熱起電 力をα 1 、α 2 とすれば、熱起電力 V 12 は次のように表される。. V 12 =(α 1 -α 2 ) ΔT. (4-2). ΔT =( T A ―T B ). (4-3). このゼーベック効果または熱起電力は、古くから金属材料の組み合わせを使って、 温度測定、熱放射測定、赤外線検出などに使われてきた。熱電対(thermocouple)が その代表である。半導体を使うと、金属材料に比べて大きな熱起電力が得られるの で、ゼーベック効果を使った熱発電が考えられるようになり、研究が盛んに行われ ている。. 23.
(32) 4-1-3. ペルチェ 効果 A 1. I. 2. V 図 4-3. ペルチェ効果 の原理図. 図 4-3 はペルチェ効果を説明するための原理図である。1 および 2 の二種の導体 を接続し、これに直流電流 I を流すと、接続点Aで熱の発生あるいは、熱の吸収が 起こる。図示した方向の電流Iで熱の吸収が起こる場合、電圧Vの極性を反転し、 電流の方向を逆にすると、熱の発生が起こる。この現象はペルチェ(J.C.A.Peltier) によって 1834 年に発見されたもので,ペルチェ効果という。この効果は古くから 知られていたが、半導体工学の発展とともに効率の良い素子が開発され、各種冷却 装置に使用されるようになってきた。. 4-2. 熱 電冷却の基 礎式. ペルチェ素子は図 4-3 に示す金属 1,2 をP型、N型の半導体素子にし、この組を 多数(典型的なモジュールでは 127 対ほど)直列に接続し、図 4-4 に示すようなペ ルチェモジュールとしている (5) 。. 銅電極 リード線. セラミック基板. 熱電半導体(N型) 熱電半導体(P型). 図 4-4. ペルチェモジ ュールの概 観図. 24.
(33) 原理を理解しやすくするため1対のP型、N型半導体素子の組により構成された 基本的なペルチェ素子の簡易図を用いる。熱電素子の基礎式の検討により、ペルチ ェ素子を冷却装置、特に筐体の冷却に使用する場合の技術的課題について述べる。. 吸熱フィン 熱伝導性グリス 電気絶縁板 導体 P 形 半 導. N 形 半 導. +. -. 導体 電気絶縁板 熱伝導性グリス. 電. 流. 図 4-5 4―2-1. 放熱フィン. PN半導体の ペルチェ素 子の原理図. 電熱冷却 のエネルギ ー収支. 図 4-5 に示すように、P型、N型半導体、一対の素子に電流 I を流したとき、上 部が冷却側となりN型およびP型の半導体と導体の接触部で吸熱が行われる。また、 図 4-5 の下部が放熱側となり吸熱側と同様、各半導体と導体の接触部で発熱が起こ る。これらの吸熱量を Q c とし、放熱側の放熱量を Q h とすると、それぞれが以下の 式で示される。. Q c = α e T cj I-(ReI 2 )/2-K e ΔT j. (4-4). Q h = α e T hj I+(ReI 2 )/2-K e ΔT j. (4-5). T Cj :冷却側接合部温度[K] T hj :放熱側接合部温度[K] α e : T Cj と T hj の平均温度における素子一対のゼーベック係数 [V/K]. 25.
(34) R e :素子一対の電気抵抗 [Ω] K e :素子一対の高低温接合部間熱コンダクタンス [W/K] ΔT j : T hj -T Cj. [K]. 式(4-4)、式(4-5)両式の第一項は電流によってそれぞれの接合部に発生するペ ルチェ熱である。第二項は同じく電流によって発生するジュール熱であり、冷却 側と放熱側に半分づつ分配されて流入する。第三項は高温接合部から低温接合部 に貫流する熱伝導による流入熱である。即ち、冷却側で吸収される熱量 Q c は、 ペルチェ効果による吸熱量から、ジュール熱の半分と温度差により高温側から流 入する熱量を差引いたものである。また、発熱側で放熱する熱量 Q h はペルチェ 効果による発熱量にジュール熱の半分を加えたものから、温度差による低温側に 流出する熱量を差し引いたものである。これらの式にはトムソン効果 (1) の熱は考 慮されていない。ゼーベック効果は温度により変化し、実際には吸熱側と放熱側 のゼーベック係数は異なる。しかし、ゼーベック係数として高低温間の平均温度 α e を用いることで、近似的にトムソン効果を計算に組み入れたことになる。. 4―2-2. 冷却のた めの消費エ ネルギ-. 熱電冷却において一対の素子間の電圧 V e は下式. V e =α e ΔT j + R e I. (4-6). であり、温度差があるときは熱起電力に打ち勝つための余分な電圧を加える必要 がある。消費されるエネルギー(電力) P は. P = V e I =(α e ΔT j + R e I ) I. (4-7). となる。また、エネルギー収支から見て. P = Q h- Q c. (4-8). でなければならない。 また、放熱側の放熱量は. Q h = Q c+ P. (4-9). であり、放熱側の吸熱量に消費電力Pが加算されたもので、吸熱量に比べると大き. 26.
(35) くなる。特に消費電力 P は電流 I の増加に伴ってこの 2 乗で急速に増大する。この 熱をできるだけ効果的に放熱させることが、熱電冷却を実用化するに当たって最も 重要な技術課題である。. 4―2-3. 成績係数. 消費したエネルギー(電力) P に対する吸熱量 Q c の割合を 成 績係 数(COP)という 。 COP をφ c とすれば φ c= Q c/ P. (4-10). で表すことができる。. 4―2-4. 最大吸熱 量. 前述 の式(4-2) Q c = α e T C j I -( R e I 2 )/2- K e ΔT j は 電流 I の 二 次 関 数 で あ る 。 吸熱量 Q c が最大になる電流 I qcmax は、 Q c を I で微分し dQ c / dI =0 と置けば. I qcmax =α e T Cj / R e. (4-11). となる。このときの電圧 V qcmax は V qcmax = I qcmax ・ R e =α e T Cj で示される。. V qcmax =α e T Cj =α e T hj ( ΔT J = T hj - T Cj =0). さらに、. となる。. また、このときの最大吸熱量 Q cmax は. Q cmax =α e 2 T Cj 2 /2 R e ― K e ΔT j. (4-12). となる。これは ΔT j = T hj - T Cj =0 のとき K e ΔT j =0 となり最大となり、これ を一般的に最大吸熱量 Q cmax と呼ぶことが多い。従って、 Q cmax =α e 2 T Cj 2 /2 R e このとき T hj = T Cj であるから I qcmax =α e T hj / R e でもあり、. Q cmax =α e 2 T hj 2 /2 R e = V qcmax ・ I qcmax /2= P qcmax /2 となり、最大吸熱量の時の COP は 0.5 となる。. 4―2-5. 最大温度 差. 前述の式(4-4)は式(4-14) と書き換えることができる。. 27. (4-13).
(36) Q c =α e T Cj I -( R e I 2 )/2- K e ΔT J. (4-4). Q c =α e ( T hj - ΔT J ) I -( R e I 2 )/2- K e ΔT J. (4-14). Q c および低温接合部の最低到達温度( T Cj ) mini また高温接合部温度 T hj のいずれか が与えられたとき、接合部温度差 ΔT J が最大になる電流 IΔT jmax は ΔT J を I で 微分し dΔT J / dI =0 と置けば. IΔT jma x =α e ( T Cj ) min i / R e =( K e /α e )[{1+2 Z ( T hj + Q c / K e )}1/2-1] として求められる。式中のZは熱電素子の性能指数と呼ばれるもので、. Z =α e 2 /( R e K e ). (4-15). と表される。. 4―2-6. 最大成績 係数. 高・低温両接合部の温度 T hj と T cj が与えられたとき、冷却の成績係数が最大にな る電流 IΦ max は. IΦ max =α e ΔT J / R e ( M -1). (4-16). である。ただし、M =(1+ ZT j ) 1/2 であり、T j =( T hj + T Cj )/2 とした式である。 このときの電圧 VΦ max は. VΦ max =α e ΔT J M /( M -1). (4-17). となる。また、冷却の最大成績係数 Φ max-cool は. Φ max-cool =( T hj / ΔT J )( M - T hj / T Cj )/( M +1). (4-18). である。. 4―3. 熱 伝素子の性 能指数 熱伝冷却における最大吸熱量 Q cmax 、最大温度差 ΔT Jmax 、最大成績係数 Φ max. の式の中には、熱伝素子の性能特性を示すゼーベック係数α e 、電気抵抗 R e 、熱コ ンダクタンス K e および、性能指数 Z =α e 2 /( R e K e )などが含まれていて、 Z が 大きいほどこれらの値はいずれも大きくなり、熱電冷却の性能が優れていること を示している。このことはまた、熱電発電における最大出力、最大変換効率などに 対しても同じことが言える。. 28.
(37) 4-3- 1. 熱電材 料の性能指 数. これまでの説明では、熱電素子の性能指数 Z =α e 2 /( R e K e )とし、(P+N)1対 素子のものとして扱ってきた。しかし、材料の性能指数は、P、Nそれぞれについて 評価しなければならない。今、P型・N型熱電材料のゼーベック係数、抵抗率、熱 伝導率をそれぞれα p・α n 、ρ p・ρ n 、κ p・κ n とし、断面積および長さを A p ・ A n 、. L p ・ L n とすると(P+N)1対素子では α e =α p -α n =α p +|α n |. R e =ρ p ( L p / A p )+ρ n ( L n / A n ) K e =κ p ( A p / L p )+κ n ( A n / L n ) で表される。α e は素子の寸法に左右されないが、熱電素子(対)の性能指数 Z を最大 にするには R e 、K e が最小になるように、P型・N型の素子寸法を最適にしなけれ ばならない。その条件を求めると、 ( L n A p )/( L p A n )={(ρ p κ p )/(ρ n κ n )} 1/2 の関係が得られる。しかし通常では L p = L n = L 、A p = A n = A で使用するのでその場合 の(P+N)1対素子では. R e = ( L / A )(ρ p +ρ n ) K e = ( A / L )(κ p +κ n ) となり、そのときの性能指数 Z は. Z =(α p -α n ) 2 /{(ρ p +ρ n ) (κ p +κ n )} となる。すなわち、熱電素子(対)の性能指数 Z はP型・N型熱電材料の持つ固有の ゼーベック係数、抵抗率、熱伝導率によって左右される。そこで P型: Z p =α p 2 /(ρ p κ p ). (4-19). N型: Z n =α n 2 /(ρ n κ n ). (4-20). を、熱電素子の寸法に関係ない材料固有の「熱電材料の性能指数」と呼んでいる。 当然ながら、熱電素子(対)の性能指数は、P型・N型熱電材料の性能指数 Z p ・ Z n が大きくなるほど大きくなる。. 29.
(38) 4―3-2. ペルチェ 素子の材料. 熱電発電はゼーベック効果、熱電冷却はペルチェ効果を応用したもので、これ らを総称して熱電変換と呼んでいる。ゼーベック係数α(熱起電力、熱電能とも 言う)の大きい材料ほどペルチェ効果が大きい。これに電流を流した場合の冷却 の妨げとなるジュール熱を小さくするため、できるだけ電気抵抗が小さいこと、 即ち比抵抗ρが小さい物質であることが望ましい。また高温側から低温側に熱が 流れると冷却時に温度差を阻害するので、熱伝導率κはできるだけ小さいものが よい。この結果、熱電変換に用いられている物質の性能の良否を示す指数として、 上述の性能指数 Z を熱電変換素子の性能の基準としている。この Z は一般化して. Z =α 2 /(ρκ). [K - 1 ]. で表され、Z の大きい物質を熱電材料と称し、Z が大きいほど冷却効果も大きい。. 4―3-3. 熱電材料 の種類. ペルチェ素子の性能指数 Z は温度によって変わる。現在よく知られているいろ いろな熱電材料の性能指数 Z の最大値と Z が最大になるときの温度をP形を表 4-1、N形を表 4-2 に示す。. 表 4-1 各ペルチェ素子 の最大性能 指数 Z と温 度:P形 ペルチェ素子の材質. Z [10 ― 3 /K]. 温度 T [K]. (Bi,Sb) 2 (Te,Se) 3. 2.45. 300. (Bi,Sb) 2 Te 3. 2.50. 350. FeSi. 0.20. 750. SnTe. 0.50. 780. SiGe. 0.60. 1050. SiGe-GaP. 0.70. 1050. 1.20. 700. (Cu,Ag) 2 Se(TPM-217). 1.30. 700. Ge-TeSbTe 2 (TAGS). 2.00. 700. PbSnTe. (TEGS-3P). 30.
(39) 表 4-2 各ペルチェ素子 の最大性能 指数 Z と温 度:N形 ペルチェ素子の材質. Z [10 ― 3 /K]. 温度 T [K]. Bi 2 (Te,Se) 3. 3>. 150>. BiSb. 2.60. 330. PbTe (TEGS-2N). 1.60. 450. PbTe(TEGS-3N). 1.50. 600. SiGe-GaP. 1.20. 930. Gd 2 Se 3 (TPM-217). 1.20. 1100. SiGe. 1.25. 1100. FeSi. 0.50. 700. 冷却素子として使えるのは 300K前後に最大性能指数 Z を示すビスマス-テルル 系の材料に限らおり、 Z =2.4~2.5[10 ― 3 /K]である。ここ数 10 年間研究されてい るが、冷却用の素材はビスマス-テルル系の材料以外には発見されていない (6) 。 一 方、熱発電用の素子はかなりの温度範囲で使用できそうなものもあるが、性能指数 Zが冷却用に比べて一般的に低い。しかし、現在も熱発電用の素子は研究が続けら れている (7),(8) 。. 4-3-4. 性能特性 図. 電熱冷却における吸熱量は次式で示される。. Q c =α e T c I -( R e I 2 )/2- K e ΔT. (4-21). Q c :吸熱量[W] α e :熱電素子合計のゼーベック係数 [V/K]. R e :熱電素子合計の電気抵抗 [Ω] K e :熱電素子合計の並列コンダクタンス [W/K] I :熱電素子に通電する直流電流[A] T c :吸熱側接合部温度. [K]. T h :発熱側接合部温度. [K]. (+)冷却、(-)加熱. ΔT :吸熱側接合部温度( T c )と発熱側接合部温度( T h )の温度差( T h - T c )[K]. 31.
(40) 上記のα e 、 R e 、 K e は使用される熱電材料により異なるためメーカーによって若干 異なる。また使用温度によっても異なる。ある T h で I と Q c の関係を ΔT をパラメ ーターとしてグラフ化したものをサーモモジュールの性能特性グラフという。本論 文で使用するペルチェ素子の各係数を基に式 4-21 に基づき、 T h =50℃における. I - Q c 特性の結果を図 4-6 に示す。. 図 4-6. ペルチェモジ ュール性能 特性図(T h =50℃). 図 4-6 のTh=50℃の I - Q c 特性において、ΔT =30Kで通電電流 I =6.5Aでも吸 熱量 Q c は 35Wしかなく、 R e を 2Ωとするとジュール熱は( R e I 2 )/2=84.5Wとなる 。 ペルチェ素子は、レーザー発信器のレーザー励起素子の冷却や、ワインクーラ、 車載用の冷蔵庫、またエネルギーハーベストの先駆として体温で駆動する時計への 応用、その技術の展開の研究もあり (9) 実用化されている。レーザー発信器では発信 波長が温度の変化に敏感に反応する。レーザー励起素子の冷却装置のコストや大き さよりも、発信波長の安定性を重視するため、水冷装置により放熱を促進し、フィ ードバック制御回路などで温度を確実に安定化している。放熱部分は冷却水を供給 するチラーや、熱を大気に放熱する大型のファンとラジエターなどで構成されてお り、我々が目標とするキャビネットの放熱部分の大きさ、コストとは格段の差があ. 32.
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