大断面,超近接シールド掘進に伴う 併設トンネルへの影響に関する分析
卜部 賢一 1 ・陣野 員久 2 ・石垣 兄太 3 ・長屋 淳一 4 ・稲垣 祐輔 5
1
正会員 大阪府富田林土木事務所松原建設事業所道路第一グループ(〒
580-0016
大阪府松原市上田3
丁目1-25
)E-mail:[email protected]
2
正会員 大阪府富田林土木事務所松原建設事業所道路第一グループ(〒
580-0016
大阪府松原市上田3
丁目1-25
)E-mail:[email protected]
3
正会員 大和川線シールド工事大鉄・吉田・森・紙谷共同企業体(〒
580-0034
大阪府松原市天美西8
丁目今池水みらいセンター内)E-mail:[email protected]
4
正会員 (株) 地域地盤環境研究所地盤解析部(〒550-0012
大阪府大阪市西区立売堀4
丁目3-2
)E-mail:[email protected]
5
正会員 (株) 地域地盤環境研究所地盤解析部(〒550-0012
大阪府大阪市西区立売堀4
丁目3-2
)E-mail:[email protected]
シールドトンネルの設計では,通常,常時荷重である土圧と水圧による影響を主として考える.しかし,
本現場では,大断面のシールドトンネルを超近接で併設掘進することから,後行シールド掘進に伴う先行 トンネル覆工に与える影響が大きいと考えられる.これらの特徴を有する大和川線シールドトンネルにお いて,シールド掘進に伴う周辺地盤や併設トンネルの挙動を的確に把握し,別途検討した設計手法を検証 するために各種計測値を収集した.その結果,先行トンネル覆工作用圧には,後行シールド側で土圧増加 が見られた.本稿では,シールド掘進情報に基づいて比較,検討した計測結果のうち,特に,後行シール ド掘進に伴う先行トンネル覆工への影響に注目し,計測データの分析結果について報告する.
Key Words : Shield tunnel, Large cross section, Long-distance and close-proximity shield
1. はじめに
阪神高速大和川線は,阪神高速道路4号湾岸線と同14 号松原線を結ぶ延長約
9.7
[km
]の自動車専用道路である.このうち大阪府が施工する大和川線シールドトンネルは,
セグメント外径
D
=12.30
[m
](シールド外径:12.54
[m
]),最小離隔約1.1[m](≒0.09D)の大断面かつ超近接,長距 離の併設施工となる.
本工事は,日本でも例を見ない,既往事例の少ないシ ールド工事である.よって,本シールド掘進にあたって は,トンネル周辺地盤の特性を十分に把握した上で,シ ールド掘進に伴う周辺地盤やトンネルおよび近接構造物 の挙動を的確かつ精密に把握し,シールド掘進データと 連動させて両者の関連性を検討することにより,近接構 造物や併設トンネル相互への影響を極力回避する必要が ある.
本稿では,大断面超近接シールドの施工における課題 と対応,およびシールド掘進に伴う計測結果について報 告する.
2. 本工事の特徴
(1) 工事概要
大和川線は,「大阪都心部における新たな環状道路」
の一部を形成する路線であり,阪神高速4号湾岸線と14 号松原線を結ぶ延長約
9.7
[km
]の自動車専用道路である (図-1参照).本工事では,シールドトンネル
2
本を最小離隔1.1
[m
] で併設掘進することから,後行シールド掘進に伴う先行 トンネル覆工への影響が懸念された.そこで,シールド 掘進による影響を把握するため,路線全体で計測断面を5
断面設定した.本稿では,そのうち,計測断面④およトンネル工学報告集,第24巻,Ⅱ-7,2014.12.
び計測断面⑤における計測結果について報告する.
(2) 地盤概要
シールド掘進対象区域の地盤高はTP+10[
m]前後であ
り,表層から洪積層が分布している比較的良く締まった 地盤であり,沖積層はほとんど分布していない(図-2参 照).計測断面④および計測断面⑤におけるトンネル周 辺地盤も,N値10程度の硬質な洪積粘性土地盤とN値60 以上の良く締まった洪積砂礫土地盤の互層状態であり,全体的に硬質な地盤である.
(3) 各種計測概要
各計測断面における断面図を図-2に示す.計測断面④ の土被りは約17.6[
m],離隔は約1.2[ m]であり,鉄道構
造物直下を横断する手前のトライアル断面として位置づ け,鉄道構造物の下越しシールド掘進時の施工管理に反 映した.また,計測断面⑤の土被りは約13.3[m],鉄道
構造物からは約9.2[m],離隔は約1.5[m]であり,鉄道構
造物の直下に位置する断面である.それぞれの断面において計測する項目は,トンネル覆 工作用圧,トンネル覆工発生応力,トンネル内空変位で あり,自動計測を実施した.なお,初期値は,各計測断 面における先行トンネルが後行シールドの影響を受ける 手前の日時とする.また,計測結果は,後行シールド通 過による影響のみを図化した増分変化(以下,併設増分) を示す.
3. 施工上の課題と対応
本工事では,大断面のシールド掘進であり,併設トン ネルを超近接して構築するため,後行シールド掘進に伴 う先行トンネル覆工への影響が大きいと考えられる.大 断面,超近接シールド施工に伴う施工時荷重の影響に関 しては,別途,設計上の配慮をおこなっているが
1)
,こ こではその影響度に着目した.計測断面⑤は,鉄道構造物直下に位置する断面である ことから,鉄道構造物の沈下量を極力抑制するため,切 羽圧と裏込め注入圧を通常掘削よりも高めに設定した.
一方,計測断面④は,先行シールド掘進時に鉄道構造物 手前のトライアル計測と位置づけ,計測断面⑤と同じ掘 進条件を設定したが,後行シールド掘進時は,鉄道構造 物の影響範囲外であることから,切羽圧と裏込め注入圧 を通常掘削時の設定圧に戻して掘進した(表-1参照).
4.
計測結果(1) 計測断面④
a) トンネル覆工作用圧
計測断面④における後行シールド通過時の先行トンネ ル覆工作用圧を図-3に,その分布図を図-4に示す.切羽 圧は,シールド上部と中央のデータを示しているが,セ グメント組立中に切羽圧が低下する傾向にあり,シール ド掘進中ではほぼ静止土圧相当にあった.また,裏込め
図-1 路線概要図
三宝JCT 三宅JCT
開削トンネル 掘割構造 シールドトンネル
鉄砲ランプ 常磐西ランプ 常磐東ランプ 天美ランプ
三宝JCT
鉄砲ランプ
常磐西ランプ
常磐東ランプ
天美ランプ
三宅西ランプ
三宅JCT
開削トンネル シールドトンネル シールドトンネル
掘割構造 開削トンネル 開削トンネル 開削トンネル
掘割構造
掘割構造
高架構造 高架構造
阪神高速道路(株)施行区間5.4km 堺市施行区間1.6km 大阪府施行区間2.7km 大和川線
9.7km
計測断面①
計測断面③
計測断面④ 計測断面②
計測断面⑤
本報告対象 シールドトンネル
先行シールド 後行シールド 先行シールド 後行シールド
使用 未使用
使用 未使用
使用(上側270°) 未使用 未使用 使用(左右90°)
設定条件
実施工時 の状況
掘進時:
上部 0.20~0.33[MPa]
中央 0.30~0.43[MPa]
静止土圧より大きめ 停止時:
上部 0.20~0.26[MPa]
中央 0.30~0.32[MPa]
掘進時:
上部 0.20~0.28[MPa]
中央 0.30~0.40[MPa]
ほぼ設定値 停止時:
上部 0.20~0.18[MPa]
中央 0.20~0.28[MPa]
掘進時:
上部 0.10~0.23[MPa]
中央 0.20~0.32[MPa]
静止土圧より大きめ 停止時:
上部 0.10~0.20[MPa]
中央 0.20~0.30[MPa]
掘進時:
上部 0.15~0.30[MPa]
中央 0.27~0.40[MPa]
静止土圧より大きめ 停止時:
上部 0.08~0.18[MPa]
中央 0.20~0.30[MPa]
計測断面④ 計測断面⑤
施工概要
工法 泥土圧式シールド工法
シールドマシン 外径φ12 540[mm],機長L
12 355[mm]
セグメント 篏合方式合成セグメント4)(外径φ12 300[mm],内径φ11 580[mm],幅B
1 800[mm])
地盤条件土被り厚
17.6[m] 9.15[m]
地下水位
TP+2.5[m] TP+0.5[m]
掘進地盤 砂および砂礫と粘土の互層
線形条件 平面線形
R=1 400[m]~13 000[m] R=1 400[m](左)
縦断線形
VR=9 500[m](下り3%~1%) VR=∞(下り3%)
切 羽 圧
上部:0.230[MPa],中央:0.310[MPa] 上部:0.121[MPa],中央:0.196[MPa]
その他の 施工条件
気泡材 外周充填材 コピーカッター
ジャッキパターン 上部5本のジャッキ未使用 上部6本および左部4本のジャッキ未使用
使用
使用
図-2 計測断面④,⑤の断面図および計測器設置位置図
表-1 シールド施工概要および設定シールド掘進条件
P - 1
P - 2
P - 3
P - 4 P - 5
P - 7 P - 8
P - 6
σ - 1
σ - 2
σ - 3
σ - 4 σ - 5
σ - 6 σ - 7
σ - 8
記号 計測項目 計測機器
トンネル覆工作用圧 パッド式土圧計 トンネル覆工作用水圧 間隙水圧計 トンネル覆工発生応力 ひずみ計
ユニバーサル変位計 トータルステーション用プリズム
坑内温度 温度計
層別沈下計測用アンカー 層別沈下計測用伸縮計 地表面沈下計測用基準水槽 地表面沈下計測用水盛式沈下計
温度 温度計
トンネル内空変位
地盤内鉛直変位
2)
3)
12300 12300
先行シールド 後行シールド
100 0 527 0 +0 .5D
6270 +1.0
D 51 04
176 44 166 44 100 0 5085
4709 3
24 60 0
-6.707 -6.688
(東行線) (西行線)
DL=-30.00 10.94
10.94
5270 +0.
5D 62 70 +1. 0D
17 625
離隔 2000
離隔 1214
g g g
K
Dc1
Dc2 Dc1-sg
Dc2-s Dc2 Ds2 Dc3
Dsg3
Dsg4 Dsg4-c
Ds5
Dc6 Dc6-sg
Ds5
Ds5
Dc6
Dsg Ds5-c
12300 360 11580 12300
360 11580
360 360
1454
1 3.31 13.32
g g
9 .15 9. 13
後行シールド 先行シールド
(東行線) (西行線)
K
Dc1
Dc2 Dc1-sg
Dc2-s Dc2 Ds2 Dc3
Dsg3
Dsg4 Dsg4-c
Ds5
Dc6 Dc6-sg
Ds5
Ds5
Dc6 Ds5-c
鉄道構造物
(a)計測断面④ (
b)計測断面⑤
※計測位置番号は計測断面④および計測断面⑤ともに同じである.
トンネル位置計測断面④ 計測断面⑤
No.6
立坑 近鉄南大阪線No.6
立坑図-3 後行シールド通過時の先行トンネル覆工作用圧(併設増 分)経時変化(計測断面④)
【テールブラシ通過中作用圧最大時】 【テール通過時】
【テール通過1D後】 【テール通過
1ヶ月後】
図-4 後行シールド通過時の先行トンネル覆工作用圧(併設増 分)分布(計測断面④,右側:後行トンネル側)
図-5 後行シールド通過時の先行トンネル覆工発生応力(併設 増分)経時変化(計測断面④)
【テール通過時】
【テール通過
1D
後】 【テール通過1ヶ月後】
図-6 後行シールド通過時の先行トンネル覆工発生応力(併設 増分)分布(計測断面④,右側:後行トンネル側)
0.4 0.2 0
[M Pa]
0.4 0.2 0
[M Pa]
30 0 -30
[N/mm2]
:外側
:内側
+:引張
-:圧縮 30
0 -30
[N/mm2]
:外側
:内側
+:引張
-:圧縮
30 0 -30
[N/mm2]
:外側
:内側
+:引張 30 -:圧縮
0 -30
[N/mm2]
:外側
:内側
+:引張
-:圧縮
【テールブラシ通過中作用圧最大時】
0.4 0.2 0
[MPa]
0.4 0.2 0
[M Pa]
0 1000 2000 3000 4000
ジャッキストローク(mm) No.1(上) No.12(右) No.37(左) No.25(下)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
切羽土圧(MPa)
中央 右 上 右
0 0.2 0.4 0.6 0.8
裏込め注入圧力(MPa)
No.1 No.2
0.0 0.1 0.2 0.3
P-1
0.0 0.1 0.2 0.3
P-2 P-8
0.0 0.1 0.2 0.3
P-3 P-7
0.0 0.1 0.2 0.3
P-4 P-6
0.0 0.1 0.2 0.3
2012/6/4 0:00 2012/6/5 0:00 2012/6/6 0:00 2012/6/7 0:00 2012/6/8 0:0
P-5
後行トンネル 切羽通過
後行トンネル テール通過時
No.37 (左) No.25 (下) No.12 (右)
No.1 (上)
中央 右 上 右
No.1 No.2
P-1
P-2 P-8
P-3 P-7
P-4 P-6
P-5 4000
3000 2000 1000 0 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0.3 0.2 0.1 0.0 0.3 0.2 0.1 0.0 0.3 0.2 0.1 0.0 0.3 0.2 0.1 0.0 0.3 0.2 0.1 0.0
トンネル覆工作用圧( MP a ) J
ストローク( mm )
裏込め注入圧( MP a )
切羽圧( MP a )
0 1000 2000 3000 4000
ジャッキストローク(mm) No.1(上) No.12(右) No.37(左) No.25(下)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
切羽土圧(MPa) 中央 右 上 右
0 0.2 0.4 0.6 0.8
裏込め注入圧力(MPa) No.1 No.2
-40 -20 0 20 40
σ-1-IN σ-1-OUT
-40 -20 0 20 40
σ-2-IN σ-2-OUT σ-8-IN σ-8-OUT
-40 -20 0 20 40
σ-3-IN σ-3-OUT σ-7-IN σ-7-OUT
-40 -20 0 20 40
σ-4-IN σ-4-OUT σ-6-IN σ-6-OUT
-40 -20 0 20 40
201 2/6/4 0:00 201 2/6/5 0:00 201 2/6/6 0:00 201 2/6/7 0:00 201 2/6/8 0:
σ-5-IN σ-5-OUT
+:引張,-:圧縮
後行トンネル 切羽通過
後行トンネル テール通過時
No.37 (左) No.25 (下) No.12 (右)
No.1 (上)
中央 右 上 右
No.1 No.2
σ-1-IN σ-1-OUT
σ-2-IN
σ-2-OUT σ-8-IN
σ-3-IN σ-7-IN
σ-4-IN σ-6-IN
σ-5-IN
σ-8-OUT
σ-3-OUT σ-7-OUT
σ-4-OUT σ-6-OUT
σ-5-OUT 4000
3000 2000 1000 0
0.3 0.2 0.1 0.0 0.4 0.5
0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 40 20 0 -20 -40 40 20 0 -20 -40 40 20 0 -20 -40 40 20 0 -20 -40 40 20 0 -20 -40
トンネル覆工発生応力( N/ m m
2) J
ストローク( mm )
裏込め注入圧( MP a )
切羽圧( MP a )
設定値:0.31[MPa] 設定値:0.23[MPa]設定値:0.36[MPa]
設定値:0.31[MPa] 設定値:0.23[MPa]
設定値:0.36[MPa]
U2 U4
U5
U6 U8
U9
U12 凡例(単位:
mm) -6 6
6
-6 0
U1 U3
U7
U10
U11
原型図 変形図 図心軸
U2 U4
U5
U6 U8
U9
U12 凡例(単位:
mm) 6 -6
6
-6 0
U1 U3
U7
U10
U11
原型図 変形図 図心軸 U2
U4 U5
U6 U8
U9
U12 凡例(単位:
mm) -6 6
6
-6 0
U1 U3
U7
U10
U11
原型図 変形図 図心軸 U2
U4 U5
U6 U8
U9
U12 凡例(単位:
mm) -6 6
6
-6 0
U1 U3
U7
U10
U11
原型図 変形図 図心軸
6 6
- 6
- 6 6
6
- 6
- 6 6
6
- 6
- 6 6
6
- 6 - 6
U1 U2
U3 U4
U5
U6 U7 U8 U9
U10
U11
U12
原型図 変形図原型図 変形図
原型図 変形図
原型図 変形図
U12
U1 U2
U11 U3
U4 U5
U6 U7 U8 U9
U10
U1 U2
U3 U4
U5
U6 U7 U8 U9
U10
U11
U12
U1 U2
U3 U4
U5
U6 U7 U8 U9
U10
U11
U12
[mm] [mm] [mm] [mm]
【切羽通過時】 【テール通過中作用圧最大時】 【テール通過時】 【テール通過
1D
後】図-7 後行シールド通過時の先行トンネル内空変位(併設増分)の分布(計測断面④,右側:後行トンネル側) 注入圧は,測点によって多少のばらつきがあるものの,
ポンプ吐出圧の圧力損失を0.10 [MPa]程度と仮定すると,
全土被り圧相当(0.36[MPa])の裏込め注入圧で施工した ことになる.なお,ここでの裏込め注入圧は,突出口横 に設置した土圧計で計測したテール土圧である.
先行トンネル覆工作用圧は,後行側の右側スプリング ライン(P-3)において後行シールドテール通過前に増加 し,最大値0.26[MPa]を示した.また,後行シールドテ ール通過後は,後行シールド通過前の圧力約0.05 [
MPa]
まで減少したが,テール通過1D後からテール通過1ヶ月 後までに微増し,約0.10[
MPa]が残留する結果となった.
斜め上下部(P-2,P-4)では,後行シールドテール通過時 からほぼ横ばいの圧力状態にあり,(P-3)と同程度の圧 力が残留した.一方,先行トンネルの上下部(P-1,P-5) ではほとんど変化が見られず,後行トンネルと反対側 (P-7)では微少な増加が見られた.
b) トンネル覆工発生応力
計測断面④における後行シールド通過時の先行トンネ ル覆工発生応力を図-5に,その分布図を図-6に示す.後 行シールド掘進に伴う先行トンネル覆工発生応力は,後 行側の右側スプリングライン(σ-3)において,切羽通過 前から内側圧縮になった.テール通過時は,さらに内側 圧縮,外側引張が進行したが,斜め上下部(σ-2,σ-4)で は,逆に内側引張,外側圧縮となる傾向にあった.特に,
後行側の右側スプリングライン(σ-3)では,後行側から 先行トンネルへの押し付け荷重が作用しているにも関わ らず,内側圧縮,外側引張の応力が発生する結果となっ た.後行シールド掘進時には,先行トンネル覆工作用圧 の増加に伴ってトンネル覆工発生応力が正曲げ(内側引 張,外側圧縮)方向へ増加した.一方,後行シールド停 止時(セグメント組立時)には,先行トンネル覆工作用圧 の減少に伴って逆に負曲げ(内側圧縮,外側引張)が増加 した.分析の結果,後者の影響が大きいことを確認した.
このことから,先行トンネルには,後行シールドの掘進 と停止の繰返しによる発生応力の変動により,内側圧縮,
外側引張の応力が累積して発生した.
先行トンネル上下部(σ-1,σ-5)でのトンネル覆工発生 応力は,テール通過後に微増したものの,いずれの測点
においてもほぼ横ばい傾向にあり,その傾向はテール通 過1ヶ月後まで継続した.
c) トンネル内空変位
計測断面④における後行シールド通過時の先行トンネ ル内空変位分布図を図-7に示す.後行シールド切羽通過 までは,いずれの測点においても変動はほとんど見られ なかった.しかし,切羽通過後からテール通過時までに 後行側スプリングライン(U11)において,後行シールド 側へ約2.0[
mm]変位した.
テール通過以降,後行側スプリングライン(U11)で後 行シールド側へさらに変位し,トンネル内空変位は,水 平方向に約5.0[
mm]伸張,鉛直方向に約3.0[ mm]圧縮す
る変形となった.なお,後行トンネル反対側(U3)にお ける変位は,ほとんど変化はなかった.d) 地盤変位
計測断面④における先行および後行シールド通過に伴 う先行トンネル直上地盤の鉛直変位を図-8 に示す.先 行シールド通過時には,先行トンネル天端
1m
上部で5.3[ mm],地表面で 2.5[ mm]程度の沈下量に抑制できた.
これは,切羽圧と裏込め注入圧を高め(切羽圧:
0.20
~0.33[MPa],裏込め注入圧:0.60[MPa])に設定したこと
による効果である.一方,後行シールド通過では,通常施工(切羽圧:
0.15~0.28[ MPa],裏込め注入圧:0.45[MPa])に戻し,先
行トンネルに比べて切羽圧および裏込め注入圧が小さか ったことから,トンネル天端1m上部で14.2[mm],地表 面で8.7[mm]の沈下が発生した.
(2) 計測断面⑤ a) トンネル覆工作用圧
計測断面⑤における後行シールド通過時の先行トンネ ル覆工作用圧を図-9に,その分布図を図-10に示す.鉄 道構造物の沈下抑制のため,切羽圧は静止土圧より大き めであり,セグメント組立中は低下傾向にあった.
先行トンネル覆工作用圧は,計測断面④と同様に,後 行側の右側スプリングライン(P-3)において,後行シー ルドのテール通過前に増加し,最大値0.20[
MPa]を示し
た.また,後行シールドのテール通過後は,後行シール図-8 先行トンネル直上の地盤変位(計測断面④,上段:先行シールド通過時,下段:後行シールド通過時)
ド通過前の圧力約
0.05
[MPa
]まで減少して残留した.斜 め下部(P-4)では,後行シールドテール通過時からほぼ 横ばい状態にあり,(P-3
)と同程度の圧力が残留した.一方,先行トンネルの上下部(P-1,P-5)では,ほとんど 変化は見られなかったが,後行トンネルと反対側(
P-7
) では,地盤反力による増加が見られた.b)
トンネル覆工発生応力計測断面⑤における後行シールド通過時の先行トンネ ル覆工発生応力を図-11,その分布図を図-12に示す.後 行シールド掘進に伴う先行トンネル覆工発生応力は,後
行側の右側スプリングライン(
σ-3
)において,内側と外 側の応力が圧縮側に増加するが,外側の方がより圧縮力 が大きく,後行トンネル側より圧縮される挙動を示し,トンネル覆工作用圧に対応した曲げモーメントおよび変 位挙動であった.一方,後行トンネル反対側では,トン ネル覆工発生応力にほとんど変化はなかった.テール通 過後は,いずれの測点においても,ほぼ横ばい傾向にあ り,テール通過1ヶ月後まで継続した.
5
0
-5
-10
-15 0.4 0.2 0.0 0.8 0.4 0.0 0.8 0.4 0.0 裏込め注入圧
外周充填圧 チャンバ土圧
鉛直変位
T2-2後行 45°影響範囲入
T2-2後行 切羽通過1D前 T2-2後行 テール通過
T2-2後行 テール通過1D後 T2-2後行 45°影響範囲出 T2-2後行 切羽通過
シールドマシン通過 中
5
裏込め注入圧 外周充填圧 チャンバ土圧
鉛直変位 0
-5
-10
-15 0.4 0.2 0.0 0.8 0.4 0.0 0.8 0.4 0.0
シールドマシン通過中
T2-2後行 45°影響範囲入 T2-2後行 45°影響範囲出
T2-2初期値設定 T2-2切羽通過1D前
T2-2切羽通過 T2-2テール通過
T2-2テール通過1D後
図-9 後行シールド通過時の先行トンネル覆工作用圧(併設増 分)経時変化(計測断面⑤)
【テールブラシ通過中作用圧最大時】 【テール通過時】
【テール通過1D後】 【テール通過
1ヶ月後】
図-10 後行シールド通過時の先行トンネル覆工作用圧(併設増 分)分布(計測断面⑤,右側:後行トンネル側)
図-11 後行シールド通過時の先行トンネル覆工発生応力(併設 増分)経時変化(計測断面⑤)
【テール通過時】
【テール通過
1D
後】 【テール通過1ヶ月後】
図-12 後行シールド通過時の先行トンネル覆工発生応力(併設 増分)分布(計測断面⑤,右側:後行トンネル側)
0.4 0.2 0
[M Pa]
0.4 0.2 0
[M Pa]
0.4 0.2 0
[MPa]
0.4 0.2 0
[MPa]
【テールブラシ通過中作用圧最大時】
30 0 -30
[N/mm2]
:外側
:内側
+:引張
-:圧縮 30
0 -30
[N/mm2
]
:外側
:内側
+:引張
-:圧縮
30 0 -30
[N/mm
2]
:外側
:内側
+:引張
-:圧縮
300 -30
[N/mm2
]
:外側
:内側
+:引張
-:圧縮
0 1000 2000 3000 4000
ジャッキク() No.1(上) No.12(右) No.37(左) No.25(下)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
切羽土圧(MPa)
中央 右 上 右
0 0.2 0.4 0.6 0.8
裏込め注入圧力(MPa) No.1 No.2
0.0 0.1 0.2 0.3
P-1
0.0 0.1 0.2 0.3
P-2 P-8
0.0 0.1 0.2 0.3
P-3 P-7
0.0 0.1 0.2 0.3
P-4 P-6
0.0 0.1 0.2 0.3
2012/2/4 0:00 2012/2/5 0:00 2012/2/6 0:00 2012/2/7 0:00 2012/2/8 0:00 2012/2/9 0:0 P-5
後行トンネル 切羽通過
後行トンネル テール通過時
No.1 (上) No.12 (右) No.37 (左) No.25 (下)
中央 右 上 右
No.1 No.2
P-1
P-2 P-8
P-3 P-7
P-4 P-6
P-5 4000
3000 2000 1000 0 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 0.3 0.2 0.1 0.0 0.3 0.2 0.1 0.0 0.3 0.2 0.1 0.0 0.3 0.2 0.1 0.0 0.3 0.2 0.1 0.0
トンネル覆工作用圧( MP a ) J
ストローク( mm )
裏込め注入圧( MP a )
切羽圧( MP a )
0 1000 2000 3000 4000
No.1(上) No.12(右) No.37(左) No.25(下)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
切羽土圧(MPa)
中央 右 上 右
0 0.2 0.4 0.6 0.8
裏込め注入圧力(MPa) No.1 No.2
-40 -20 0 20 40
σ-1-IN σ-1-OUT
-40 -20 0 20 40
σ-2-IN σ-2-OUT σ-8-IN σ-8-OUT
-40 -20 0 20 40
σ-3-IN σ-3-OUT σ-7-IN σ-7-OUT
-40 -20 0 20 40
σ-4-IN σ-4-OUT σ-6-IN σ-6-OUT
-40 -20 0 20 40
201 2/2/4 0:00 201 2/2/5 0:00 201 2/2/6 0:00 201 2/2/7 0:00 201 2/2/8 0:00 201 2/2/9 0:0
σ-5-IN σ-5-OUT
+:引張,-:圧縮 後行トンネル 切羽通過
後行トンネル テール通過時
No.1 (上) No.12 (右) No.37 (左) No.25 (下)
中央 右 上 右
No.1 No.2
σ-1-IN
σ-2-IN σ-8-IN
σ-3-IN σ-7-IN
σ-4-IN σ-6-IN
σ-5-IN
σ-1-OUT
σ-2-OUT
σ-3-OUT
σ-4-OUT
σ-5-OUT σ-6-OUT σ-7-OUT σ-8-OUT 4000
3000 2000 1000 0 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 40 20 0 -20 -40 40 20 0 -20 -40 40 20 0 -20 -40 40 20 0 -20 -40 40 20 0 -20 -40
トンネル覆工発生応力( N/ m m
2) J
ストローク( mm )
裏込め注入圧( MP a )
切羽圧( MP a )
設定値:0.20[MPa] 設定値:0.12[MPa]設定値:0.18[MPa]
設定値:
0.20[MPa]
設定値:0.12[MPa]設定値:0.18[MPa]
【切羽通過時】 【テール通過中作用圧最大時】 【テール通過時】 【テール通過
1D
後】図-13 後行シールド通過時の先行トンネル内空変位(併設増分)分布(計測断面⑤,右側:後行トンネル側)
【トンネル覆工作用圧】 【トンネル覆工曲げモーメント】 【トンネル覆工軸力】 【トンネル内空変位】
(右側:後行トンネル側,青色:計測断面④,赤色:計測断面⑤) 図-14 後行シールドテール通過
1D
後における計測結果(併設増分)比較c) トンネル内空変位
計測断面⑤における後行シールド通過時の先行トンネ ル内空変位分布図を図-13に示す.後行シールド切羽通 過時から先行トンネルへの押し付け荷重が作用したこと により,水平方向に圧縮し,鉛直方向へ約2.0[mm]伸張 する挙動を示した.
テール通過後もほぼ横ばい傾向を示し,水平方向には はすべての断面において変動は微少であった.これは,
計測断面④に比べて計測断面⑤の方が土被り厚が小さく,
初期地山応力に対して相対的に大きな荷重が作用し,解 放応力が小さかったためと考えられる.なお,後行トン ネルと反対側(U3)の変位は,テール通過後,シールド 通過前の変位量まで減少した.
(3) 計測断面④および⑤における併設増分の比較
後行シールドテール通過1D後における計測断面④と 計測断面⑤の各種計測結果の比較図を図-14に示す.各 計測項目について,計測断面④,⑤の比較結果を以下に 示す.a) トンネル覆工作用圧
先行トンネル覆工作用圧(併設増分)は,計測断面④,
⑤ともに後行側の右側スプリングライン(P-3)および斜 め上下部(P-2,P-4)において増加し,併設増分がわずか に残留した.後行トンネルと反対側(P-7)を含むその他 の測点については,先行トンネル覆工作用圧にほとんど 変化は見られなかった.このような結果は,両断面にお
いて定性的および定量的に類似した傾向を示した.本挙 動は,両断面での切羽圧,裏込め注入圧とも大差がなか ったことからも裏付けられる.
b) トンネル覆工発生断面力
先行トンネル覆工に発生した曲げモーメント(併設増 分)は,後行側の右側スプリングライン(σ-3)で負曲げ (内側圧縮,外側引張),右斜め上下部(σ-2,σ-4)で正曲 げ(内側引張,外側圧縮)の状態であった.一方,先行ト ンネル覆工に発生した軸力(併設増分)は,計測断面④,
⑤ともに後行側の右側スプリングライン(σ-3)において 圧縮力が発生した.
先行トンネル覆工断面力(併設増分)は,定性的な分布 形状は類似しているものの,計測断面④の方が計測断面
⑤よりも後行シールド掘進側スプリングラインにおいて 負曲げ(内側圧縮,外側引張)が,斜め上部および下部で 正曲げ(内側引張,外側圧縮)が卓越した結果になった.
これは,両計測断面において実際の切羽圧と裏込め注入 圧は,絶対量として大差はないものの(例えば,図-3と 図-9における切羽圧と裏込め注入圧の実測値参照),計 測断面⑤の方が土被り圧が小さいことから,地山応力に 対して相対的に大きな荷重が作用したことになり,結果,
解放応力が小さくなったことが原因として考えられる.
c) トンネル内空変位
計測断面④における先行トンネル覆工の内空変位(併 設増分)は,テール通過後,後行側の右側スプリングラ イン(U11)で後行側へ約5.0[
mm]変位し,斜め上下部(U9,
U2 U4
U5
U6 U8
U9
U12 凡例(単位:
mm) 2 -2
2
-2 0
U1 U3
U7
U10
U11
原型図 変形図 図心軸 U2
U4 U5
U6 U8
U9
U12 凡例(単位:
mm) -2 2
2
-2 0
U1 U3
U7
U10
U11
原型図 変形図 図心軸 U2
U4 U5
U6 U8
U9
U12 凡例(単位:
mm) -2 2
2
-2 0
U1 U3
U7
U10
U11
原型図 変形図 図心軸
U2 U4
U5
U6 U8
U9
U12 凡例(単位:
mm) -2 2
2
-2 0
U1 U3
U7
U10
U11
原型図 変形図 図心軸
2 2
- 2
- 2 2
2
- 2
- 2 2
2
- 2
- 2 2
2
- 2 - 2
原型図
変形図 原型図
変形図 原型図
変形図 原型図
U1
変形図U2
U3 U4
U5
U6 U7 U8 U9
U10 U11
U12
U1 U2 U3
U4 U5
U6 U7 U8 U9
U10 U11
U12
U1 U2 U3
U4 U5
U6 U7 U8 U9
U10 U11
U12
U1 U2
U3 U4
U5
U6 U7 U8 U9
U10 U11
U12
[mm] [mm] [mm] [mm]
0.3 0.15 0
単位:MPa U2
U4 U5
U6 U8
U9
U12 凡例(単位:
mm) 4 -4
4
-4 0
U1 U3
U7
U10
U11
原型図 図心軸 計測断面④ 計測断面⑤
- 4 - 4
4 4
1000 0
-2500
単位:kN/リング
60
0 -60
単位:kN・m/リング
U1 U2
U3 U4
U5
U6 U7 U8 U9
U10
U11
U12
原型図 計測断面④ 計測断面⑤ [mm]-60
60
U12)で鉛直方向に約3.0
[mm]圧縮するなど,後行シール ド側に押し出す変形が顕著であった.一方,計測断面⑤ の内空変位量は小さく,ほぼ真円状態を維持した結果に なった.後行シールドと反対側(U3)での変位について は,両計測断面ともほとんど発生しなかった.これは,計測断面⑤では,上部の鉄道構造物への影響 を極力抑制するために,大きめの切羽圧と裏込め注入圧 を設定してシールド掘進したが,計測断面④では通常掘 進に戻り,地山応力に対して相対的に計測断面⑤ほど大 きな荷重を先行トンネル覆工側へ作用させなかったこと が原因として考えられる.つまり,後行シールド掘進に 伴う先行トンネル覆工への併設影響は,後行シールド掘 進条件に大きく依存することを確認できた.
5. おわりに
大断面,超近接シールド施工に伴う先行トンネル覆工 への施工時荷重の影響を把握することを目的に,計測断 面④,⑤で得られた結果を整理し,比較,検討した.
得られた知見を以下に示す.
① 先行トンネル覆工作用圧は,計測断面④,⑤ともに 後行シールド掘進側において増加した後,併設増分 がわずかに残留する結果になった.これは,両断面 で定性的および定量的に類似した傾向を示した.本 挙動は,両断面での切羽圧,裏込め注入圧とも大差 がなかったことから裏付けられる.
② 先行トンネル覆工断面力は,計測断面④の方が計測 断面⑤よりも後行シールド掘進側スプリングライン において負曲げが,斜め上部および下部で正曲げが 卓越した結果になった.断面力の定性的な分布は,
類似した傾向を示した.これは,計測断面⑤の方が
土被り圧が小さいことから,地山応力に対して相対 的に大きな荷重が作用して解放応力が小さくなった ことが原因として考えられる.
③ 先行トンネル内空変位は,計測断面④で後行シール ド側に押し出された変形を示し,計測断面⑤はほぼ 真円状態を維持した結果になった.前者は,後行シ ールド掘進が通常掘進に戻ったことから,後者に比 べて切羽圧および裏込め注入圧が小さかったことが 原因として考えられる.つまり,後行シールド掘進 に伴う先行トンネル覆工への併設影響は,後行シー ルド掘進条件に大きく依存することを確認できた.
謝辞:本稿の検討では,「大和川線トンネル技術委員会 (委員長:大西有三 京都大学名誉教授)」によりご指導 頂いた.ここに付記して謝意を表す.
参考文献
1)
阪神高速道路(株):シールドトンネル設計マニュア ル,2011.2)
橋本正,矢部興一,山根昭彦,伊藤博昭:パッド式 シールドセグメント用土圧計の開発,第28
回土質工 学研究発表会講演概要集,pp.2055-2058,1993.3)
橋本正,水原勝由,西田義則,和田幸司,才田誠,樋口佳意:連結ユニバーサル変位の開発―基礎実験 結果及び設置方法―,第
39
回地盤工学研究発表会講 演概要集,841,pp.1679-1680,2004.4)
志村敦,藤原勝也,辻野博史,岩住知一:超近接長 距離併設シールドトンネルの設計,トンネルと地下,Vol.41,No.11,pp.43-50,2010.
(2014. 9. 15 受付)