患者のベッドからの転落予防のための予兆検出装置 の開発
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(2) 東京女子医科大学大学院医学研究科および 早稲田大学大学院 先進理工学研究科. 博 士 論 文 概 要 論. 文. 題. 目. 患者のベッドからの転落予防のための 予兆検出装置の開発 Development of a Device for Detecting the Signs of Falling Behavior of Patients for Preventing Fall Off from the Bed. 申. 大津 Ryoji. 請. 者. 良司 OTSU. 共同先端生命医科学専攻 先端治療機器臨床応用・開発評価研究. 2016 年 12 月.
(3) 病院内における入院患者のベッドからの転落事故は国内外を問わず発生頻 度と重篤度のいずれも高い患者の生命にかかわる重大な事故である.病院等で は,この重大な課題を解決するため様々な対策を取っている.しかし,転落事 故は増加傾向にある.そのため,本研究は,患者の転落を減少させるため,患 者がベッドから転落する予兆となる行動を検出し,患者の転落に至る行動の発 生頻度を下げる手法を提言することを目的とする. 第 1 章は,研究の背景と研究の動機をまとめた. 転落事故がどのような問題を発生させているのか把握するため,国内外の現 状を調査した. WHO 及 び 米 国 The Agency for Healthcare Research and Quality は , 病 院の事故報告数の 1 位が転落事故であると報告している.日本においても国立 病院機構等から同様の発表がされている. 転落事故を防止する一つの手段として,身体拘束を行う場合がある. 厚生労働省は,身体拘束が患者の尊厳を侵し,身体能力を低下させていると 指 摘 を し て い る .そ の た め ,同 省 は ,身 体 拘 束 を 無 く す 通 知 を 2 0 0 1 年 に 出 し て いる.しかし,現在においても,病院等では,身体拘束は行われており,これ に代わる有効な手段が開発させていない. また,転落事故は医療経済問題でもある.米国では,転落事故による総額の 治 療 費 支 出 が , 年 間 202 億 ド ル に も 及 ん で い る . さらに,事故は訴訟に発展する場合がある.看護師が訴えられ,最高裁で判 決が出るまで 6 年も費やした事件もある. こ の よ う に ,転 落 事 故 を 減 少 さ せ る こ と は ,国 レ ベ ル の 重 要 な テ ー マ で あ る . 転落事故を減少させる対策の一つとして,ベッドセンサが使用されている. しかし,ベッドセンサは偽陽性,偽陰性が多く,信頼性は低い.米国の研究で も,ベッドセンサが有効でないと指摘している. 第 2 章では,事故の減少対策が必要なことは広く認識されていながら,患者 の転落を減少できない理由を,患者の要因,医療機関の要因,設備の要因に分 けて検討した.患者の要因は,①身体の状態,②精神の状態や性格,③服薬, ④その他の項目に分類できる.転落を検出するベッドセンサを避けてベッドか ら降りようとして転落する患者の偽陰性を作る行動があることもわかった. 次に,医療機関の要因は,看護師の多忙や人手不足で患者に目が届かない, 患者安全への認識不足など,組織の要因と医療従事者の要因があることがわか った.三番目に,設備の要因は,ベッドなど転落時の傷害を軽減する対策はあ る.しかし,転落前に患者の行動を検出するためのベッドセンサは,偽陽性・ 偽陰性が多く信頼性が低く,転落を十分防止できていないことがわかった. これら転落要因を除去する一つの方法として,患者の状態を常時測定し,転 落の予兆となる行動を検出した時に,看護師に通知する装置が有効ではないか No.1.
(4) と考えた. 第 3 章は,患者の転落の予兆行動を検出し,看護師が予兆の段階で介入する ことで,転落に至る原因を除去し,その後患者が転落に至ることを防止できる と考え,患者の行動を推定した. これまで,看護師等は,患者が安静な状態から転落までの間にどのような行 動を取るか十分理解をしていなかった.そこで,筆者は看護師等と,患者がベ ッド上でどのような行動をとっているのか推定をして,その推定した行動の中 から,転落の予兆となる行動を特定する作業を行った. その結果,患者の仰臥位から転落までの一連の行動のパターンを見出すこと ができた.仰臥位から最初に行う動作は4つあり,その後に行動が変化して転 落する.4 動作から派生した結果,高い位置からの転落と,低い位置からの転 落になることもわかった.また,転落に至る行動の最初である予兆行動は,6 つに分類できることもわかった. しかし,これら検討は,身体能力が高い若い健常者が行う行動であり,高齢 者の行動と差異がある可能性があるため,高齢者の行動を三次元モーションキ ャプチャー測定機で測定をした.結果,高齢者は筋力低下から,看護師等と推 定した最初に上体を起こす行動ができない人もいることが判明した. 第 4 章では,患者の転落予兆行動の検出する装置の仕様を作成し,実験用の 装置を開発したうえで,臨床研究を行った. 被験者は患者 4 名である.研究に先立ち臨床研究の倫理委員会の了承を得て い る .計 測 は 延 べ 8 7 日 間 行 っ た .こ こ で は 研 究 の 結 果 と し て ベ ッ ド 上 の 様 々 な 患者行動を測定したのでまとめた. 第5章は考察を行った. 本研究で調査した観察において,患者のベッド上全ての状況をして,その中 で設定したエリアに患者の体の一部が入ることで装置は検知をし,録画を開始 する設定通りの動作をすることが分かった.検知エリアに患者が入り続けてい る間は連続して録画を続けており,その間の患者の行動変化を観察することが できていることが分かった.看護師および作業療法士とこれら録画画像を見な がら患者がどのような行動を取って転落に至るか,これまで不明であった行動 を明らかにすることができた. この患者行動画像分析から,事前に看護師等と実験で推定した患者行動とほ ぼ同様の動きをすることが分かった. 次に,可視化したデータを看護師と評価をし,行動の危険度を設定し,行動 変化を定量化した.危険度とは,その後転落をしたときに重症度である.危険 度 が 時 間 の 推 移 と と も に ど の よ う に 変 化 し て い く か 秒・分 単 位 の 短 時 間 ,時 間 , 日,週の長時間の変化を定量化することもできた. 例 え ば ,急 性 期 患 者 が 入 院 後 1 0 日 間 の 危 険 行 動 数 の 変 化 お よ び 危 険 度 別 の 頻 No.2.
(5) 度 を 測 定 す る と ,有 意 に 減 少 し て い る こ と が 分 か っ た .こ の よ う に 本 装 置 よ り , バイタルセンサ同様に患者の変化を記録することができるようになり,患者ご とにどのような行動を危険行動の予兆として捉えることができるか,今後研究 を進めることで明確になっていくことが分かった. センサが患者の転落の予兆行動を検出し,即座に看護師に通知できれば,看 護師がその予兆の段階で介入することで転落に至る原因を除去し,結果として その後患者が危険行動を起こすことを防止できると考える. さらに,ベッド全体を測定できる非接触のセンサのため,センシングできな いところから患者が抜け出すことができず患者安全が向上していた.また,非 接触であるため,褥瘡や引っかけて転倒する危険性もない. 厚生労働省はガイド資料において身体拘束に対して, 「身体拘束の有効性が必 ずしも明らかでなく」と記載している.本研究では身体拘束をしている患者の 行動も観察し,拘束で転落が防げている患者がいることもわかった.今後,身 体拘束について議論を深めていくには,本装置などで患者行動を連続して観察 することも有効であることが判明した.一方,患者数が 4 例と少ないこと,対 象となる機器が無いことは本研究の課題である. 第6章では,本研究の成果をまとめた.本研究が進むことで,患者行動が 明らかになる.これにより,転落行動の予兆が判明し看護師が早期に介入によ り患者の転落行動の原因を除去でき,転落が減少することで患者の院内での QOL の 向 上 に 貢 献 す る と 考 え る . また,本研究のレギュラトリーサイエンスとしての意義も言及した. ま ず ,医 療 分 野 以 外 の 目 的 で 開 発 さ れ た 機 器 を 医 療 分 野 に 導 入 す る た め に は , 安全性と有効性などを担保する必要がある.レギュレーションは医療分野に新 たな技術を導入する障害ではなく,ガイドとなり導入の促進となりえる. 次 に ,本 研 究 に よ り ,ベ ッ ド 上 の 患 者 の 状 況 を バ イ タ ル セ ン サ な ど の よ う に , 常時測定し,定量化することができるようになる.これにより,看護師等は患 者の状態を可視化,定量化して評価できるようになり,看護の質の向上と身体 拘束を無くす. さ ら に , 新 た な 技 術 で 転 落 事 故 を 削 減 し . 202 億 ド ル に も 及 ぶ 治 療 費 を 削 減 できることは,医療経済の面でも意義がある. そして,新たな技術により転落事故による訴訟を無くすことは,技術と社会 との調和をはかることになる. 本研究は,新たな手法によって患者のベッドからの転落を防止する提言を行 った.このことは,患者の死傷が減る患者のベネフィットだけでなく,患者家 族や医療従事者のベネフィット,国のベネフィットなど幅広く意義のある研究 である.. No.3.
(6) No.1. 早稲田大学 氏 名. 大 津. 良. 博士(生命医科学)学位申請 司. 研究業績書. 印 (2 0 1 7 年 2 月 現 在 ). 種 類 別 1.論文 ○論文. 題名、. 発表・発行掲載誌名、. 発表・発行年月、. 連名者(申請者含む). Ryoji Otsu, Hiroshi Iseki, Ken Masamune Identification and analysis of changes in patient behavior that lead to falls from the bed. The Society for Nursing Science and Engineering(accepted). 論文. 大津良司 医療安全に向けた会員病院の取り組み ル 35: p44-47,2013. 2.講演. 大津良司、伊関洋,正宗賢、漠然とした医療ニーズを機器として具現化す る め の イ ン テ グ レ ー シ 手 法 , SI2014, 東 京 ビ ッ グ サ イ ト , 東 京 , 2014年 12 月 17日 大津良司、伊関洋,正宗賢,医療機器開発時の医療現場ニーズの仕様化手 法の研究~ 定量化されていない漠然としたニーズを医療機器に作りあげ る ~, 日 本 コ ン ピ ュ ー タ 外 科 学 会 , 大 阪 大 学 コ ン ベ ン シ ョ ン セ ン タ ー ,大 阪 , 2014 年 11 月 9 日. 講演. 講演. 講演. 講演. 講演. 患者安全推進ジャーナ. 大津良司、伊関洋,正宗賢,患者の危険行動の予兆検知によるベッドから の転落防止のため非接触センサの臨床研究,看護理工学会,大阪大学大学 会 館 , 大 阪 , 2014年 10月 6日 大 津 良 司 、伊 関 洋 ,正 宗 賢 ,危 険 行 動 を 抽 出 し 患 者 の ベ ッ ド か ら 転 落 未 然 に 防 止 す る 三 次 元 セ ン サ の 有 効 性 の 研 究 ,第 4 回 レ ギ ュ ラ ト リ ー サ イ エ ン ス 学 会 学 術 大 会 , 一 橋 大 学 一 橋 会 館 , 東 京 , 2014年 9月 23日 大 津 良 司 、伊 関 洋 ,梅 津 光 生 、医 療 ロ ボ ッ ト 開 発 イ ン テ グ レ ー タ ー ,S I 2 0 1 3 第 14回 計 測 自 動 制 御 学 会 シ ス テ ム イ ン テ グ レ ー シ ョ ン 部 門 講 演 会 , ポ ー ト ピ ア ホ テ ル , 兵 庫 , 2013年 12月 20日 大津良司、伊関洋,梅津光生、患者危険行動を予知し転落を防止するため の標準化の研究、日本生体医工学会 第 6回 レ ギ ュ ラ ト リ ー サ イ エ ン ス 専 門 別 研 究 会 、 東 京 、 2013 年 10月 12日. 講演. 大津良司、伊関洋,梅津光生、患者危険行動を予知し転落を防止するため の 標 準 化 の 研 究 、日 本 生 体 医 工 学 会 第 5 回 R S 専 門 別 研 究 会 、東 京 女 子 医 科 大 学 ・ 早 稲 田 大 学 連 携 先 端 生 命 医 科 学 研 究 教 育 施 設 ,東 京 、 2013年 10月 12日. 講演. 大津良司、伊関洋,梅津光生、患者危険行動を予知し転落を防止するため の標準化の研究、日本生体医工学会 第4回レギュラトリーサイエンス専 門別研究会、東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育 施 設 , 東 京 、 2013年 10月 12日 大 津 良 司( 共 著 ),第 6 章 医療ロボット開発を先導するイノベーション・ インテグレータを助けるテキストマイニング,ビッグデータを活かす技術 戦 略 と し て の テ キ ス ト マ イ ニ ン グ , 中 央 経 済 社 , 2014年 5月 10日. 3.著書. No.1.
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