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日植病報 83:95 101(2017) Jpn. J. Phytopathol. 83: (2017) ウリ科野菜果実汚斑細菌病のカボチャ汚染種子に対する間欠温湯処理の種子消毒効果 原一晃 1 * 白川隆 2 ABSTRACT HARA, K. 1 * and SHIRAKAWA,

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ウリ科野菜果実汚斑細菌病のカボチャ汚染種子に対する

間欠温湯処理の種子消毒効果

原  一晃

1

*・白川  隆

2 ABSTRACT

HARA, K.1* and SHIRAKAWA, T.2 (2017). Effect of intermittent heat treatment to disinfest wet squash seeds artificially infested

with Acidovorax citrulli. Jpn. J. Phytopathol. 83: 95–101.

The control of bacterial fruit blotch, caused by Acidovorax citrulli (Aac), a seed-borne pathogen of cucurbits, is important to prevent expansion of the pathogen into new areas in Japan. To establish a more effective hot water treatment to disinfest seeds, we examined effects of treatment temperature, treatment duration and temperature changes on the survival of Aac. To kill off Aac in a short time, intermittent heat treatments of repeated heating (50°C) and cooling (20°C) in turn was more effective than continuous heat without cooling. Because dry heat is not easily transmitted through the large seeds, which also harbor numerous bacteria, the effect of intermittent hot water treatment using hot water and cold water in a small regulated water bath was tested on artificially infested seeds of wet squash. The intermittent hot water treatment was more effective than the continuous hot water treatment for 20- and 30-min durations. The test using a bacterial suspension yielded nearly the same results. Further combining the intermittent hot water treatment with 0.01 M acetic acid and a mixture of 0.168% basic copper chloride prevented infection by Aac. Large amounts of squash seeds can thus be treated in a large regulated water bath to disinfest seeds as effectively as treating small amounts of seed in the small water bath. The optimum condition was a 30-min intermittent hot water treatment (53°C) with 0.01 M acetic acid and a mixture of 0.168% basic copper chloride. Although germination vigor and germination rate of the seeds tended to decrease slightly after the intermittent hot water treatment, germination rate was around 60% and was not in a problem for seed stock.

(Received May 31, 2016; Accepted March 23, 2017) Key words: bacterial fruit blotch, Acidovorax citrulli, artificially infected seeds of wet squash, seed disinfection, intermittent heat water treatment, continuous heat water treatment

緒  言

Acidovorax citrulli (syn. A. avenae ssp. citrulli)(以下 Aac)が

原因である果実汚斑細菌病は,主に種子伝染し,多くのウ リ科植物に感染することが知られている(Latin et al., 1995; Rane et al., 1992; 白川ら,2000a; Sowell et al., 1979; Webb et

al., 1965).また,本病はアメリカをはじめオーストラリア,

タイ,中国,ブラジルなど多くの国で発生が確認されてい る(Latin et al., 1995; Schaad et al., 2003; Walcott et al., 2004). そのため,Aac は日本の植物防疫法の施行規則において栽 培地検査を要する検疫有害動植物に指定され,わが国への 侵入が警戒されていた(平田ら,1998).しかし,国内にお いても1998 年以降,スイカでは穂木用種子や台木用トウガ ン種子が原因で,メロンでは穂木用または台木用種子が原 因 で 突 発 的 な 発 生 が 確 認 さ れ た( 白 川 ら,2000a; 白川, 2003; 白川,2010; 小木曽ら,2001; 小木曽ら,2005; 堀田ら, 2006; 富田ら,2006).これら国内での本病の単発的な発生は, す べ て 種 子 伝 染 に よ る も の と 考 え ら れ て い る( 白 川 ら, 2000a; 白川,2010).このことから Aac 汚染種子による国内 での拡散と定着が危惧されている.一方,わが国では主に

1 ナント種苗株式会社宇陀育種研究農場(〒 633-2101 奈良県宇陀市大宇陀五津 7-8) Uda Breeding and Research Station, Nanto Seed

Co. Ltd., 7-8 Itsutsu, Ouda, Uda, Nara 633-2101, Japan

2 農業・食品産業技術総合研究機構(〒 305-8666 茨城県つくば市観音台 3-1-1) National Agriculture and Food Research Organization,

3-1-1 Kannondai, Tsukuba, Ibaraki 305-8517, Japan

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つる割病対策として抵抗性台木を用いた接ぎ木栽培が広く 行われている.使用する種子に汚染種子が混入した場合, 育苗期間中に植物体でAac が増殖し,さらに接ぎ木作業や 灌水による二次伝染と接ぎ木後の高温多湿条件での養生に より,混入した汚染種子がごくわずかであっても被害が拡 大する可能性がきわめて大きい.このため,本病に対する 精度の高い種子消毒技術の開発が強く求められている(白 川,2003). これまで,本病におけるスイカ種子に対する化学的消毒 方法として,0.5 M に調整した酢酸液あるいはリンゴ酸液へ の30 分間以上の浸漬(白川ら,2000c; 白川,2003),過酢 酸への浸漬処理(Hopkins et al., 2003),各種細菌病に登録の あるオキシテトラサイクリン等の抗生物質への浸漬処理(野 村・白川,2001)で高い効果が得られている.また,0.5 M の酢酸浸漬と,85°C で 5 日間以上あるいは 80°C で 7 日間 以上の乾熱処理を組合せた方法でも高い消毒効果が報告さ れている(白川ら,2000c; 白川,2003). スイカ以外のウリ科野菜種子についても,銅水和剤と有 機酸の混合液への浸漬処理や過酢酸溶液,オキシテトラサ イクリンを含む抗生物質を用いた浸漬処理が試験的に行わ れてきた(原ら,2006,2007).しかし,これらの浸漬処理 は,スイカ,メロンなど小型種子では有効であるものの, 大型種子のカボチャ,ユウガオでは十分な効果は得られて いない.また,物理的な方法の1 つである乾熱消毒法は, カボチャ種子が十分に消毒される温度条件では著しい発芽 障 害 を 起 こ す こ と か ら, 適 用 で き な い( 窪 田 ら,2009, 2010,2013; Kubota et al., 2012).他の効果的な物理的種子消 毒方法として,多くの野菜種子やイネなどで実用化されて いる温湯浸漬法(大畑ら,1999)があり,本病についてス イカ種子では本病に対する消毒効果が報告されているが(野 村・白川,2001),カボチャ種子に対する有効性はまだ報告 されていない. そこで,急激な温度変化により,細菌細胞へのダメージ を大きくし生存に影響を与えることを期待して,温水と冷 水への浸漬を交互に繰り返し,温水への浸漬を最低2 回以 上行う間欠温湯処理による本病の防除を目的とした種子消 毒について検討したので報告する. 材料および方法 供試菌株および生菌の調整 供試菌株としてAac 9801(白 川ら,2000a)を供試した.YP 培地で 36°C,24 時間 95 rpm で振盪培養した後,2380×g,20 分間の遠心分離で細菌を 集菌し,0.01 M リン酸緩衝液(pH 7.4)に濃度 1×108 cfu/ml となるよう懸濁して以下の試験に用いた.なお,生菌の調 整をはじめ,試験はすべてナント種苗株式会社宇陀育種研 究農場内の病理実験室で行った. Aac 生菌の連続加温処理および間欠加温処理における加 温処理温度,加温積算時間の違いによる殺菌効果の比較  野村・白川(2001)は,Aac の 14 菌株について調査した結果 から,Aac の死滅温度は 55°C 付近と判断している.この報告 をもとに,種子に処理したときの発芽への影響を考慮して, 50,53,55°C の各加温処理温度に設定した連続加温処理と間欠 加温処理で,加温積算時間に対する生菌数の差異を調査した. 調製した細菌懸濁液を1 処理あたり 0.2 ml 容の PCR 用 チューブ8 個に 100 ml ずつ加え,DNA 増幅装置[iCycler; 日本バイオ・ラッド ラボラトリーズ(株)]を用いて加温 処理を行った.加温処理温度を50,53,55°C として,それ ぞれの温度で,加温積算時間0,10,20,30,40 分間の処 理を行った.間欠加温処理は,それぞれの温度で5 分間, 冷却処理を20°C で 2 分間を 1 サイクルとして 2,4,6,8 サイクルの処理,すなわち,加温積算時間が10,20,30, 40 分間になるよう処理を行った.処理前後の生菌密度は, 各処理区において8 本のチューブから細菌懸濁液を全量回 収して混合後,AacSM 基礎培地(白川ら,2000b)による希 釈平板法に準じて測定した.なお,培養は,36°C,4 日間 の条件で行い,3 反復の試験を行った. 人工汚染種子の作製 カボチャ‘アクア新土佐’を用いて,

Aac 人工汚染種を作製した.108 cfu/ml に調製した Aac の懸

濁液4 l に対して,種子 3 l(約 4800 粒)を浸漬し,30 分間 の減圧処理を行った後,室温で通風乾燥して5°C で保存した. 小規模試験における温湯処理 50,53,55°C で,それぞ れ連続温湯処理および間欠温湯処理を行った.小型恒温水 槽[サーマルロボTR1(容積 8 l);(株)井内盛栄堂]に蒸 留 水 を700 ml 入 れ た 1 l 容 ビ ー カ ー を 設 置 し,50,53, 55°C の温水とした.一方,長辺 360 mm,短辺 270 mm,深 さ130 mm のポリプロピレン製平型容器に冷水を張り,そ の中に温水と同様のビーカーを設置して水温を13°C±1°C に保って冷水とした.Aac 人工汚染種子を 50 ml(約 80 粒) ずつお茶用の不織布製パックに入れて,前処理として蒸留 水に室温で60 分間浸漬した.次に,10,20,30,40 分間 の連続温湯浸漬および温水10 分間浸漬後の冷水 10 分間浸 漬を1 回の処理として,2~4 回の間欠温湯処理をそれぞれ 行った.以後,間欠温湯処理の温湯積算時間は10 分間単位 とし,2 回の間欠処理は温湯積算時間 20 分間,3 回は 30 分 間,4 回は 40 分間の間欠温湯処理と表記した.なお,前処 理として常温で蒸留水に60 分間浸漬した処理種子を対照区 とした.処理後の種子は,室温で通風乾燥して効果判定試 験に供試し,3 反復の試験に供試した.

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小規模試験における銅水和剤と酢酸混合液浸漬後の温湯 処理 薬剤液として0.01 M 酢酸(和光純薬工業株式会社) 溶液で調製した銅水和剤(塩基性塩化銅84.1%)[ドイツボ ルドーA;北興化学工業(株)]の 500 倍希釈液(以下,0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液)を用いた.Aac 人工汚染種子を 小規模試験における温湯処理と同一の量および方法で準備 し,前処理として0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液に室温 で60 分間浸漬した.次に,温湯処理の小規模試験と同じ条 件で連続温湯処理および間欠温湯処理を行った.前処理の みの区と,蒸留水に室温で60 分間浸漬処理したのみの区を 対照区とした.処理後の種子は,室温で通風乾燥後3 反復 の試験に供試した. 間欠温湯処理の中規模試験 種子温湯消毒用の大型恒温 水槽[YS-101(容積 100 l);(株)タイガーカワシマ]に水 道水を加え,53°C に加温して温水とした.これとは別に 20 l 容積のポリプロピレン製のバケツに水道水 10 l を加え, 水温13°C ± 1°C に保って冷水とした.Aac 人工汚染種子を 500 ml(約 800 粒)ずつを長辺 450 mm,短辺 300 mm のポ リエチレン製野菜ネット袋に入れ,0.01 M 酢酸-500 倍銅 水和剤混液を用いて,室温で60 分間浸漬して前処理を行っ た.次に,前処理の終わった種子を用いて,加温積算時間 20,30 分間の間欠温湯処理を行った.対照区として,蒸留 水に室温で60 分間浸漬後の加温積算時間 20,30 分間の間 欠温湯処理,前処理のみと蒸留水に室温で60 分間浸漬のみ の処理の区を設定した.処理後の種子は,室温で通風乾燥し, 3 反復の試験を行った. 消毒効果の検定 内径14 mm,長さ 100 mm のポリスチ レン製試験管を発泡スチロール製の試験管立に立て,無滅 菌の乾燥水苔を水道水で適度に湿らせて深さ約30 mm 詰め, 乾燥後の処理種子を1 粒ずつは種したのち,人工気象器 [NC-350HH;日本医科器械製作所](以下人工気象器は同 一メーカーの同一製品を使用)内に置いた.は種後発芽ま では適度に保湿した状態にして30°C で 12 時間,20°C で 12 時間の温度条件下で管理した.発芽ぞろい後に灌水し,明 期は照度が約4200 lx,35°C で 12 時間,暗期は 25°C で 12 時間の環境で栽培し,いずれも密封して容器内の湿度を保っ て発病を促した.灌水処理後10 日目まで観察を行い,発病 が疑われる個体についてラテックス凝集法(小宮ら,2003) を用いてAac による発病か否かを簡易的に判定した.小規 模試験は,1 処理区あたり 50 粒は種,中規模試験は 100 粒 は種とした. 発芽試験 小規模試験では,消毒効果の検定を行う際に 試験管内における発芽数をは種8 日後に調査し,発芽率を 求めた.中規模試験では,実用化が可能な技術か否かを詳 細に調査するために,実際に育苗用培土には種し,発芽勢 と 発 芽 率 を 調 査 し た. 長 辺195 mm,短辺 115 mm,深さ 35 mm のスチロールケースに湿らせた育苗用培土(たねま き培土;タキイ種苗株式会社)を詰め,ケース1 枚あたり 種子25 粒をは種して覆土後乾燥防止のためにスチロール ケースと同じ素材のふたをした.人工気象器内に,20°C で 12 時間,30°C で 12 時間の温度条件下に置いた.培土上に おける出芽を確認した後にふたを取り,照度約4200 lx で 12 時間日長とし,灌水を適宜行って管理した.は種後 5 日 目と8 日目に出芽数を調査し,5 日目を発芽勢,8 日目を発 芽率とした.発芽が揃った時期に奇形苗の発生有無を調査 した.なお,土まき試験は間欠温湯処理の中規模試験の人 工汚染種子と同一ロットの健全種子を用いた.また,土ま き試験には1 処理区あたり 100 粒を供試し,試験管での発 芽試験は防除効果の検討と同じ1 処理区あたり 50 粒で,そ れぞれ3 反復の試験を行った. 結  果 Aac 生菌の連続加温処理および間欠加温処理における加 温処理温度,加温積算時間の違いによる殺菌効果の比較 50°C の場合,連続加温処理では 40 分間で,間欠加温処 理では30 分間以上で生菌が検出限界以下となり,加温積算 時間が10,20,30 分間では連続加温処理よりも間欠加温処 理の結果の方が有意に生菌数は少なかった(表1).一方, 53°C の場合,連続加温処理は 20 分間以上,間欠加温処理 では10 分間以上で生菌を認めなかった(表 1).また,加温 処理温度が55°C の場合,連続加温処理と間欠加温処理の両 者で,加温積算時間10 分間以上で生菌を認めなかった(表 1).以上の結果から,加温処理温度が 55°C,53°C の場合は, 連続加温処理と間欠加温処理との間でAac の殺菌効果の差 異はほとんど無いが,50°C では連続加温処理よりも間欠加 温処理の方が殺菌効果は高くなった. 小規模試験における温湯処理 生菌を用いた試験で,間欠加温処理の殺菌効果が高く, また,生菌が検出されなくなる処理条件が明らかとなった ことから,カボチャの人工汚染種子を用いて同様の試験を 行った.その結果,蒸留水に浸漬のみの区(無処理区)の 発病株率が93.3%に対して,50°C では,加温積算時間 10 分間で74.0%,加温積算時間 20,30,40 分間の連続処理で それぞれ57.3,20.0,9.3%,間欠処理で 28.0,20.7,6.7%だっ た(第1 図 A).53°C では,加温積算時間 10 分間で 55.3%, 加温積算時間20,30,40 分間の連続処理でそれぞれ 24.7, 16.7,8.0%,間欠処理で 11.3,2.7,4.0%だった(第 1 図 B). 55°C では,加温積算時間 10 分間で 15.3%,加温積算時間

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20,30,40 分間の連続処理でそれぞれ 6.7,1.3,2.0%,間 欠処理で6.7,4.0,2.0%だった(第 1 図 C).このように, 処理温度が高くなるほど消毒効果が増大する傾向を示した. さらに50°C では,加温積算時間 20 分間の連続温湯処理, 間欠温湯処理で,それぞれ発病率が57.8,28%と両処理間 で有意に差を認めた.これは,同じ20 分間の加温積算時間 において,間欠温湯処理のほうが連続温湯処理よりも消毒 効果が高いことを示している.一方,加温積算時間30,40 分間では連続温湯処理,間欠温湯処理の両処理間の結果で 発病率に有意に差を認めなかった(第1 図 A).53°C では, 20 分間の加温積算時間において連続温湯処理,間欠温湯処 理の発病率はそれぞれ24.7,11.3%,加温積算時間 30 分間 では,16.7,2.7%と両処理間の結果で有意に差を認めた. 加温積算時間40 分間では,連続温湯処理,間欠温湯処理の 発病率の結果は有意に差を認めなかった(第1 図 B).55°C では,加温積算時間20,30,40 分間で,連続温湯処理と間 欠温湯処理の両処理間の結果で有意に差を認めず,また, この温度でも発病を完全に抑えることができなかった(第1 図C). 発芽への影響を検討したところ,50°C で,無処理区の発 芽率が95.3%に対して,加温積算時間 40 分間の連続処理で 86.0%と有意に差を認めた.連続処理と間欠処理では,50, 53°C で間欠処理の発芽率が高い傾向を示し,50°C では 20, 30 分間の処理が 10 分間処理よりも高い発芽率を示した.さ らに,53°C では温湯処理区の方が無処理区よりも発芽率が 高いが,上記以外では無処理区の結果との間に有意な差は 認めなかった.また53°C,55°C では連続処理,間欠処理と もに処理時間が長くなるほど発芽率が低下する傾向を示し たが,その結果に無処理区との有意な差を認めなかった(第 1 図 A,B,C). 第1 表 Ac 生菌の連続加温処理および間欠加温処理における加温処理温度,加温積算時間の違いによる消毒効果の比較 処理温度 (°C) 積算処理時間(分)と処理方法 0 10 20 30 40 連続 間欠 連続 間欠 連続 間欠 連続 間欠 検出されたコロニー数(cfu/ml) 50 1.45×108 a 9.63×105b 8.74×104 bc 2.85×104c 122 d 513 d LD e LD e LD e 53 2.36×108 a 1 b LD b LD b LD b LD b LD b LD b LD b 55 2.66×108 a LD b LD b LD b LD b LD b LD b LD b LD b 加温処理温度は50°C,53°C,55°C とした.連続加温処理と,1 サイクルあたりの冷却処理の温度,時間を 20°C,2 分間として 5 分間の間欠加温処理をそれぞれ行い,各処理条件で加温積算時間0,10,20,30,40 分間の生菌密度を測定した.各生菌密度は 3 反復試験の平均値.表中で同一温度内の異なる英小文字は,それぞれの数値の対数について,Tukey 法の有意水準 5%で有意差あり. LD は検出限界(<1 cfu/ml). 第1 図 小規模試験における連続温湯処理および間欠温湯処理 が発病率と発芽率に与える影響 温湯処理温度は50°C(A),53°C(B),55°C(C)とし, それぞれ連続温湯処理および間欠温湯処理後の加温積 算時間の違いによる発病率,発芽率を比較した.発芽 率は播種後8 日目に調査した.各処理における発病率, 発芽率は3 反復の平均値.無処理は蒸留水に室温で 60 分間浸漬のみ.各図中の異なる英小文字は,Tukey 法 の有意水準5%で有意差あり.* は Dunnet 法の有意水 準5%で,無処理区と有意差あり.図中のバーは標準 誤差.凡例はA,B,C 共通.

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小規模試験における銅水和剤と酢酸混合液浸漬後の温湯 処理 蒸留水での間欠温湯処理で十分な消毒効果が得られな かったことから,0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液への浸 漬処理後に温湯処理を行い,その効果を調査した.その結果, 蒸留水処理区(無処理区),0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混 液浸漬のみ区の発病率が89.3,29.3%に対して,50°C では, 30,40 分間の間欠温湯処理で発病を認めなかった(第 2 図 A). 53°C では,40 分間の連続温湯処理,20,30,40 分間の間 欠温湯処理で,発病を認めなかった.(第2 図 B).55°C では, いずれの温湯処理区でも発病を認めなかった(第2 図 C). 発芽への影響を検討したところ,50°C では加温積算時 間が長くなるのに伴って発芽率が低下する傾向は認められ たが,無処理区の結果との間には統計的に有意な差は認め なかった.53°C では,加温積算時間 40 分間の連続温湯処 理,30,40 分間の間欠温湯処理で,発芽率が 60 もしくは 70%台と低下し無処理区との結果に統計的に有意な差を認 めた.55°C では,加温積算時間 20 分間の間欠温湯処理, 30,40 分間の連続および間欠温湯処理で発芽率の大幅な 低下がみられ,いずれも無処理区の結果と有意に差を認め た(第2 図 A,B,C).なお 0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤 混液に浸漬のみの処理区における発芽率の向上は,無処理 区に比較して発芽時の発病が少なかったため,発芽不能と なった種子の割合が減少したことが考えられる(第2 図 A, B,C). 間欠温湯処理の中規模試験 小規模試験で消毒効果が高く,発芽率の低下が顕著とな らなかった53°C で,蒸留水(無処理),0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液への浸漬処理後に,加温積算時間20,30 分 間の間欠温湯処理を行った.無処理区,0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液浸漬のみの区の発病率が90.3,21.7%に対 して,蒸留水に浸漬後の,積算処理時間20,30 分間の連続 温湯処理では発病率がそれぞれ11.3,2.3%だった.一方, 0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液に浸漬後の同じ積算処理 時間の間欠温湯処理では,発病を認めなかった(第3 図). 発芽は,無処理区の発芽勢が86.0%,発芽率が 91.7%に対 して,蒸留水,0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液に浸漬後 の温湯処理では,0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液に浸漬 後の20 分間間欠温湯処理の発芽率以外,いずれの積算処理 時間でも発芽勢,発芽率ともに無処理区よりも低下し,無 処理区の結果と有意に差を認めた(第3 図).しかし,処理 による奇形葉の発生など発芽異常を認めなかった.以上の 結果から,中規模試験においても発芽勢,発芽率はやや低 下するものの,0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液浸漬処理 と間欠温湯処理と組合せることで,高い消毒効果が期待で きることが明らかとなった. 考  察 これまでの野菜種子やイネの種子伝染性病害に対する温 湯消毒は,ほとんどが,一定温度で一定時間処理する連続 第2 図 小規模試験における 0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液 浸漬後の連続温湯処理および間欠温湯処理が発病率と 発芽率に与える影響 0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液に室温で 60 分間浸 漬後の種子を供試した.温湯処理温度は50°C(A), 53°C(B),55°C(C)とし,それぞれ連続温湯処理お よび間欠温湯処理後の加温積算時間の違いによる発病 率,発芽率を比較した.発芽率は播種後8 日目に試験 管内の発芽を調査した.各発病率,発芽率は3 反復の 平均値.無処理は蒸留水に室温で60 分間浸漬のみ.銅・ 酢酸は0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液に室温で 60 間浸漬のみ.図中の銅・酢は0.01 M 酢酸-500 倍銅水 和剤混液の略.各図中の英小文字は,Tukey 法の有意 水準5%で有意差あり.* は Dunnet 法の有意水準 5%で, 無処理区と有意差あり.図中のバーは標準誤差.凡例 はA,B,C 共通.

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処理で行われてきた(大畑ら,1999; 横須賀ら,2004).一 方で,本研究ではAac 生菌を使った 50°C の試験で,加温積 算時間が20,30 分間で連続加温処理よりも間欠加温処理の 殺菌効果が高いことが明らかになった.さらに,カボチャ のAac 汚染種子を用いた試験では,50°C の温湯積算時間 20 分間,53°C の温湯積算時間 20,30 分間の試験で,間欠温 湯処理の方が連続処理よりもきわめて処理効果が高く,間 欠温湯処理がAac 汚染種子の消毒に有効であることが明ら かになった.しかし,50,53,55°C のいずれの温度でも発 病を認めた.生菌を使った試験ではこれらの温度で,Aac が検出されない処理を認めたが,水中に存在する菌に処理 するのと,種子表面や種子内部に存在すると思われる菌に 処理するのとでは,熱の伝わり方が異なることなどが原因 と考えられる.また,55°C の温湯積算時間 40 分間の連続 温湯処理,間欠温湯処理で発病率は2.0%と低く抑えられ, 発芽に対する影響も小さかったものの,わが国においては, 二次伝染に対する危険性から発病率2.0%では十分な効果と はいえない.防除効果の検討と並行して行った発芽試験で は,薬剤を用いない温湯処理では連続処理,間欠処理とも に加温時間が長くなることによる発芽率の大きな低下は認 めなかったが,0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液浸漬後の 連続処理連続処理,間欠処理で大きく発芽率が低下した. 発病を認めない条件を明らかにするため,0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液の浸漬処理と温湯処理の組合せ処理を検討 した結果,組合せ処理において50,53°C のそれぞれの間欠 温湯処理で,発病を認めず発芽にも影響が比較的小さかっ た.さらに,53°C の 30 分間の間欠温湯処理は 50°C よりも 消毒効果が期待でき,また,発芽率が低下する傾向を認め るものの60%程度の発芽率が確保されたことから,後述す る原種および原原種種子用には,実用的に問題ない程度で 最適と考えられる. 白川らは,スイカ種子において酢酸溶液処理と乾熱処理 の組合せを検討し,0.5 M 酢酸 30 分間浸漬後の 80°C で 7 日 以上または85°C で 5 日以上の乾熱処理で高い消毒効果を認 めている(白川ら,2000b,2003).要因として,酢酸溶液 処理により種子表面に付着している病原菌を消毒し,さら に乾熱処理により種子内部の病原菌が消毒される相乗効果 や,作用機構が異なる複数の処理を組合せることによって, 片方の処理で消毒できなかった病原細菌がもう一方の処理 で消毒される補完効果などをあげている(白川ら,2000b). 今回,カボチャ種子で行った薬剤液浸漬と間欠温湯処理を 組合せる方法でも,薬剤液による消毒と温湯による消毒の 相乗効果や補完効果により処理効果が増大したと考えられる. 種子は,その用途により,一般栽培に用いる種子と,そ の生産に用いる原種や原原種に区別することができる.本 病は主に種子伝染することは既に述べたが,原種,あるい は原原種の種子消毒を高精度で行うことが,多少の発芽障 害を起こしたとしても,一般栽培用種子の採種で健全種子 を得るためにきわめて有効である.薬剤浸漬処理と間欠温 湯処理との組合せ処理は,作業面で他の手法に比べるとや や煩雑だが,一般栽培用に比べて取扱量が少ない原種や原 原種では,その処理が可能である.また,大型恒温水槽を 用いて,試験規模を拡大した場合でも,本消毒法が,Aac に対する消毒効果や発芽への影響の点から小規模試験と同 等の有効性があることが明らかになり,その利用が可能で あると考えられる.それらのことから,本消毒法を原種お よび原原種に適用することで,採種栽培における無病種子 の生産に貢献できると考えられる.今後,本消毒方法が果 実汚斑細菌病の感染拡大の予防策の一つとして,国内だけ でなく海外の採種栽培の現場にも普及することにより,無 病種子の生産をもたらすことが期待される. 摘  要 Acidovorax citrulli(Aac)によって引き起こされる果実汚 斑細菌病は,ウリ科植物における種子伝染性病害の一つで, 常発地域からの侵入と蔓延を防ぐことは重要である.そこ で,加温処理による種子消毒の効果的な処理条件を確立す るために,処理温度,処理時間,温度変化がAac の生存に 及ぼす影響を調査した.その結果,加温処理(50°C)と冷 第3 図 中規模試験における間欠温湯処理が発病率と発芽勢, 発芽率に与える影響 蒸留水または0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液に室温 で60 分間浸漬後の種子を供試した.53°C で加温積算 時間20,30 分間の間欠温湯処理を行った.各発病率 は3 反復の平均値.無処理は蒸留水に室温で 60 分間 浸漬のみ.銅・酢のみは0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤 混液に室温で60 分間浸漬のみ.図中の銅・酢は 0.01 M 酢酸-500 倍銅水和剤混液の略.図中の英小文字は, Tukey 法の有意水準 5%で有意差あり.* は Dunnet 法 の有意水準5%で,無処理区と有意差あり.図中のバー は標準誤差.

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却処理(20°C)を交互に繰り返して処理する間欠加温処理が, 冷却処理がない連続加温処理に比較してAac を短時間で殺 菌することが明らかになった.次に,大型の種子は,熱が 内部に伝わりにくく存在する細菌数も多いことなどから, 消毒が困難なカボチャの人工汚染種子および小型恒温水槽 を用いて温水と冷水への浸漬を交互に繰り返す間欠温湯処 理の効果を検証した.加温積算時間20,30 分間の温湯処理 において,間欠温湯処理の方が連続温湯処理よりも効果が 高かった.これは,生菌を使った試験の結果と一致した. さらに,銅水和剤500 倍希釈液と 0.01 M 酢酸混合液への浸 漬処理と間欠温湯処理の組合せ処理を小型恒温水槽を用い て検討し,発病を認めない処理条件を明らかにした.大型 恒温水槽を用いたカボチャ種子の大量処理は,小型恒温水 槽を用いた少量種子の処理と同等の効果があり,さらに, 銅水和剤500 倍希釈液と 0.01 M 酢酸との混合液への浸漬処 理後の30 分間間欠温湯処理(53°C)が最適と考えられた. 間欠温湯処理のカボチャ種子の発芽率は,無処理区に対し てやや低下する傾向を示したが,60%程度の発芽率が確保 されていることから,原種および原原種に処理する場合に は,問題にならない程度と考えられた. 引 用 文 献 原 一晃・氷上涼子・島津樹一・白川 隆(2006).ウリ科野 菜の果実汚斑細菌病に対する銅水和剤と有機酸の混合処理 ならびに過酢酸処理の種子消毒防除効果.関西病虫研報 48: 57–60. 原 一晃・白川 隆・氷上涼子・島津樹一(2007).ウリ科野 菜の果実汚斑細菌病に対する各種農薬の種子消毒効果.日 植病報 73: 278.(講要)

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