電気回路学I
秋田県立大学 システム科学技術学部 電子情報システム学科
第1回 基本概念:
• 電気回路、電気回路解析とは? • 電流、電圧とは?
• オームの法則、抵抗とコンダクタンス、その物 理的な意味
電気回路とは?
抵抗(𝑅)、キャパシタ(C)、インダクタ(L)、直流 電圧源、直流電流源、交流電圧源、交流電流 源などの回路素子の端と端を導線で様々に結 線したもの。
電気回路解析:
(本科目の中心内容) 与えられた回路の各素子または一部の素子に おける電流、電圧、または電力を求めること。電気回路設計:
(本科目では取り扱わない) 既定の仕様(設計要求)を満たすように回路を設計 すること。 解析は設計の基礎となる!電流:
• 帯電した粒子(電子やイオンなどの電荷)の 流れ • 電流の方向: 正電荷の移動方向 • 単位: アンペア[A] 1A=1秒間[s]に1クーロン[C]の電荷(電気量)の流れ • 記号: I(直流) または i(t) (交流)• t 秒間にQクーロンの電気量が流れている場合 の電流の大きさIは
• 逆に、I [A]の電流が流れているとき、t 秒間に その導線のある断面を通った電気量Qは
電圧:
• 静電場に電荷を置くと力を受ける。この力に 逆らって電荷を動かすと仕事を必要とする。 その仕事量を電圧という。
電圧:
• 単位: ボルト[V] 点bから点aまで+1[C]の電荷を運ぶのに、1 ジュー ル[J]の仕事量が必要なとき、aとbの間の電圧(電位 差)が1ボルト[V]であるという。 電圧の本質は電荷を運ぶのに必要な エネルギーの量! • 記号: V(直流) または v(t)(交流)電気抵抗とオームの法則
• 電荷(電流)はどんな材料でも流れるわけで はない。流れる材料は導体、流れない材料は 不良導体 または 絶縁体と呼ぶ。 • 導体の中でも、電流の 流れやすさ、あるいは、 流れにくさ の程度が異なる。 • ドイツの物理学者オーム(Ohm)が次の有名 なオームの法則を発見した。I V 材料1 材料2 R1 R2 つまり、一定の形状の物体に電流を流し、 その電流と電圧の関係を測ってみたところ、 同じ材料なら、その電圧と電流の比が一定 である事実を発見した。 その比例係数はRで表すと、次の関係が 成り立つ。 この比例係数Rの物理的な意味は? ででn 電圧降下
電荷を物体の端から端まで運ぶのに 必要なエネルギー (1秒間で)物体を通った電荷の量 (1秒間で)単位電荷を物体の端から端まで動かすためのエネルギー Rの値が大きければ大きいほど、単位電荷を動かすのに、 より多くのエネルギーを必要とすることを意味する。 Rの値が大きい材料では、電流が流れにくい、あるいは電流に 対する抵抗がより強い。 Rの値を(電気)抵抗と呼ぶ!
• 抵抗の単位: Ω(オーム) 1A の電流を流すのに1Vの電圧が必要な抵抗の大 きさは1 Ωである。 • 注意: 単位の書き方 文字記号の後に単位を書くとき、角括弧を付ける。 数字の後では括弧は必要ない。
電圧降下:
• 回路素子に電流を流したとき、その両端に電 位の差が生ずる現象のこと。コンダクタンス(伝導):
• Gは素子での電流の流れやすさを数値化したも ので、その単位はS(ジーメンス)である。 (回路では、抵抗との区別が特に要注意!)第2回: オームの法則II
・電圧・電流の仮定方向と実際の方向
• 電圧と電流の方向は自由に仮定できる。実 際の方向は、計算結果の符号によって決まる。 必ずしも仮定の方向と一致しない。 • 仮定方向によって、オーム法則の公式の符 号が変わるので、要注意。結論:
• VとIの仮定方向は逆のとき:
電圧・電流の実際の方向の決め方
• 計算結果の符号で決める。+であれば、仮定 方向と同じ、-であれば、仮定方向と逆。 例: 実際の方向 VとIの値は+、 実際の方向は仮 定方向と一致 VとIの値は-、 実際の方向は 仮定方向と逆演習問題:
• 以下の回路におけるVとIを求め、その実際の 方向を図示せよ。
解答:
(a) (b) (c) (d) Iの仮定方向は例(a)と逆 だが、実方向は同じ Iの仮定方向は 例(b)と逆だが、 実方向は同じ 実方向は仮定方向 の向きと無関係第3回: 抵抗の直列・並列接続
• オームの法則により、一つだけの抵抗における 電圧と電流を求めることができた。 • 二つ以上の抵抗が何らかの形で接続された場 合は、その上の電圧と電流の関係は? • 抵抗の接続方式: 直列接続 並列接続直列接続抵抗上の電圧と電流の計算:
2つの抵抗直列接続の場合: • 2つの抵抗上の電流が同じ! • それぞれの抵抗上の電圧と電流はオームの 法則で計算できる。 問題: a-b間の電圧Vと電流I の関係?また、電圧の定義より、
合成抵抗は、直列接続 されている抵抗の和
分圧器回路:
分圧比: V 1とV2の比 より 分圧比 = 抵抗の 比n個の抵抗の直列接続の場合:
例題2.1
次の回路で、 とするのに必要な条件
を求めよ。ただし、m>1である。
解: 分圧器の計算式より
並列接続抵抗上の電圧・電流の計算:
2つの抵抗の並列接続の場合: • 2つの抵抗上の電圧が同じ! • それぞれの抵抗上の電流はオームの法則で 求められる。 問題: a-b間の電圧Vと電流I の関係?コンダクタンスの和
合成抵抗の逆数 はそれぞれの抵
抗の逆数の和
分流器回路:
分流比:I
1とI
2の比
分流比 =抵抗の
例題2.2
• 次の回路で、 とするのに必要な条
件を求めよ。ただし、n>1である。 解:
例題2.3
• 次の並列接続回路の合成抵抗R0を求めよ。 解:
直列・並列接続混在の場合:
• 計算できる直列または並列接続の部分回路 に分解し、各部分の合成抵抗を求めた後、全 体の合成抵抗を求める。
例題2.4
例題2.5
• A-b間の合成抵抗を求めよ。
例題2.6
• 次の回路でa-b間の合成抵抗を求めよ。
a b
例題2.7
• a-b間の合成抵抗を求めよ。
c
d
例2.8
• 次の回路でa-b間の合成抵抗を求めよ。 a a a b b b挑戦的演習問題
(電磁気学試験問題より) 図の回路を考える。抵抗はすべて𝑅であり、外部から電流𝐼 を中央の点に注入している。 (1) 点線の四角の内側から外側に 向けて流れる正味の電流(すな わち流出の場合は正、流入の場 合は負と考える)の総和を求めよ。 (2) 各抵抗を流れる電流の値を 求めよ。第4回: 電圧源と電流源
• (直流)電圧源: 一定の電圧を提供する装置 (例: 乾電池、蓄電池、変圧器と整流器の組合せ) • 起電力: 電流を取り出さないときの直流電 圧源両端の電圧(E)を指す. • 理想電圧源(定電圧源): 取り出す電流の値にかかわらず一定の電 圧を保つ電圧源• 理想電圧源(続き)
理想的な場合:
理想電圧源
内部抵抗を考慮した電圧源
:内部抵抗 現実的な場合: 有限 電流の増大 に伴って電 圧Vが減少• の場合
• 逆に、 の場合
近似的に理想電圧源とみなせる.
負荷抵抗Rが変化しても、端子電 流がほぼ一定の電源となる.
• (直流)電流源: 出力電流一定の電源 注: 電流源は仮想的な電源で、実際的には存在してい ない.しかし,これを導入することによって,回路の解 析・設計をするのに都合がよい場合がある. • 理想電流源: 現実的に 不可能
内部抵抗のある電流源
:内部コンダクタンス
有限
電圧源と電流源の等価変換:
• 外部から見たとき,ある電圧源とある電流源は全く同じ働き をするなら,この電圧源と電流源は等価であるという. • 何を見ればよい? (1) 出力端開放時の端子電圧 電圧源: 電流源: (2) 出力端短絡時の短絡電流 電圧源: 電流源:• 同じ働きするためには, と はそれぞれ等 しくなる必要がある.
• 従って,電圧源と電流源の等価条件: (1) (2)
例題4.1
A) 次の電圧源を,電流源を用いた電源に変換せよ.
B) 次の電源回路を(a) or (b)の電源回路に変換せよ.
解答:
A) 等価条件により,次の等価電流源が得られる.
演習問題
1. 次の電圧源の等価電流源をそれぞれ求めよ.
2. 次の電流源の等価電圧源をそれぞれ求めよ.
(1) (2)
3. 次の方式で接続されている電圧源と電流源の合成 電圧源と合成電流源をそれぞれ求めよ.
(1)
第3章 直流回路網方程式
1. キルヒホッフの法則 • これまで1つの抵抗,および複数抵抗の直列・並列接続の場合の電圧・ 電流はオームの法則を用いて求める方法を学んできた. 多くの抵抗を複雑に接続した回路で,電圧・電流はどう求めるか? • 例: 次の2つの回路はこれまでの方法では解けない. (a) (b) 直列でもな い,並列で もない! 電源が二 つあるため, 既知の方 法は使えな い!キルヒホッフの第1法則(電流則) • 基本的な考え方 ・電流の本質は電荷の流れ ・電荷は節点において溜まらない 流れ込む電流と流れ出る電流の大きさは同じ! • 表現の仕方(表現式) 色んな形(式)で表せる.教科書によって違うが,その本質 を理解することが大事!
キルヒホッフの第2法則(電圧則) • 基本的な考え方 ・電圧は電位の差 ・ある点とその点自身の電位の差は零 ある閉路(ループ)を一巡したとき, 各素子の電圧降下の総和は零となる!
表現の仕方(表現式): • 出発点を決める. • 一巡する方向(基準の方向)を 決める. • 一巡する方向に一致する電圧 降下を正(または負)とする. a点から出発し,基準方向に一致した 場合は正とすると, は,閉路の基準方向に一致するものを正,逆のものを負とする. 電流による電圧降下は左側,起電力は右側へ.
回路方程式の立て方
• 回路各部の電圧や電流が満たすべき関係を 式で表現したものは、回路方程式という。 • 方程式の立て方は、未知数の取り方によって 三種類がある: 1. 枝電流法 理解しやすいが、未知数の数が多い 2. 閉路電流法 3. 節点電位法 立てやすい、未知数の数が少ない素子の正弦波交流特性
• 正弦波交流電圧・電流の標準の形:
• 【抵抗の交流特性】
を抵抗Rに印加すると,
• 一方, 𝐼𝑚 = 𝑉𝑅𝑚 𝜃 = 𝜙 • 結論: 抵抗において, 不変, を抵抗Rに印加すると, 不変 振幅に対しオームの法則成立 位相は同じ(同相)
( ) u t ( )
i t
抵抗の交流電力と実効値
( ) m sin i t I
t とおくと, ( ) ( ) m sin v t Ri t RI
t よって, 2 2 2 ( ) ( ) ( ) sin (1 cos 2 ) 2 m R m RI p t i t v t RI t t t t
• 平均電力𝑃𝑅を求める. 𝑝𝑅(𝑡)は周期関数であるので,1周期にわたって積分し,そ の結果を周期T で割ってよい. 2 0 0 2 0 2 2 2 2 1 1 ( ) (1 cos 2 ) 2 1 sin 2 2 2 1 sin 2 2 2 1 2 2 2 T T m r R T m m m m m RI P p t dt t dt T T RI t t T RI T T T RI I V R R
2 sin 2 2 sin 2 0 T m m V RI 𝑣 𝑡 , 𝑖(𝑡)の実効値を𝑉𝑒, 𝐼𝑒で表すと,上式から 2 2 m e m e V V I I • 【インダクタの交流特性】 𝑖 𝑡 = 𝐼𝑚sin(𝜔𝑡 + 𝜃) を𝐿に加えると, ( ) ( ) cos( ) sin( ) 2 sin( ) m m m di t v t L L I t dt LI t V t 2 m m V L I 誘導性リア クタンス
•
0 としたとき,0 pi/2 pi 3pi/2 pi
0
i(t)
• 【キャパシタの交流特性】 𝑖 𝑡 = 𝐼𝑚sin(𝜔𝑡 + 𝜃) を𝐶に加えると, 1 1 ( ) ( ) sin( ) 1 cos( ) 1 sin( ) 2 sin( ) m m m m v t i t dt I t dt C C I t C I t C V t
1 2 m m V I C 容量性リア クタンス•
0 としたとき,0 pi/2 pi 3pi/2 pi 0
v(t) i(t)
正弦波交流電圧・電流の複素数表現 • 三角関数表現 • 複素数表現 ( ) ( ) 2 sin( ) ( ) ( ( ) ) e j t j t c e j e e e v t V t V t V e V e V e e V V
フェーザ表現 ( ) (cos( sin( ) sin( )) cos( ) ) j t j j t j t e e e e e Ve V e e V e V t j t V t jV t ( ) 2 Im( ) 2 sin( ) j t e v t Ve V t • 正弦波電圧・電流の複素数表現 三角関数表現:
複素数表現:
• 角周波数、周波数、周期の関係:
• 例: 周波数50Hz,実効値100Vの正弦波交流電圧の 三角関数表現と複素数表現を書け.
解: 初期位相角 とする.また,
三角関数表現: 複素数表現:
• 抵抗上の複素電圧・電流の関係 振幅に対しオームの法則 成立,位相は同じ(同相) j j e e V e V RI RI e e e V RI
2 , 2 m e m e V V I I に注意• インピーダンス(単位:Ω) 抵抗部 リアクタンス 誘導性リアクタンス 容量性リアクタンス : 𝑍の大きさ : 𝑍の位相角
• アドミッタンス(単位: S(ジーメンス))
• インピーダンス(アドミッタンス)の接続 直列接続:
並列接続:
• 複素電圧・電流の求め方
例: 𝑓 = 60 Hz, の正弦波電圧 を 次の回路に印加した場合の電流 を求めよ.
解: より, .初期 位相角 とする.また, より,
回路は次のように書き直せる.
よって,
ただし,