日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 26, No. 2, 190-200, 2012
原 著
妊婦の冷え症と前期破水における因果効果の推定
—傾向スコアによる交絡因子の調整—
Inference of causal effects between pregnant women's sensitivity
to cold (hiesho) and premature rupture of membranes
—Adjustment of confounding factors by propensity scores—
中 村 幸 代(Sachiyo NAKAMURA)
*1堀 内 成 子(Shigeko HORIUCHI)
*2桃 井 雅 子(Masako MOMOI)
*3 抄 録 目 的 日本人女性を対象に,妊娠時に冷え症であることでの,前期破水発生率について,冷え症でない妊婦 と比較分析し,冷え症が前期破水の誘因であるかについて,因果効果の推定を行うことである。 対象と方法 研究デザインは後向きコホート研究である。データ収集期間は,2009年10月19日から2010年10月8 日までの約12カ月である。調査場所は,首都圏の産科と小児科を要する総合病院6箇所である。研究の 対象は入院中の産後の女性2810名であり,質問紙調査と医療記録からの情報を抽出した。また,分析 方法には,傾向スコア(propensity score)を用いて交絡因子のコントロールを行い,その影響を調整した。 結 果 前期破水であった662名(23.6%)のうち,冷え症がある女性の割合は348名(52.6%)であり,冷え症 でない女性の割合は314名(47.4%)であった。冷え症でない妊婦に比べ,冷え症である妊婦の前期破水 発生率の割合は,1.67倍(共分散分析)もしくは1.69倍(層別解析)であった(p<.001)。 結 論 冷え症と前期破水の間の因果効果の推定において,因果効果がある可能性が高いことが示唆された。 キーワード:冷え症,妊婦,前期破水,傾向スコア Abstract PurposeThe purpose of this study is to carry out a comparative analysis of Japanese women with and without sensitiv-ity to cold (hiesho) during pregnancy with regard to incidence of premature rupture of membranes and infer the causal effects as to whether sensitivity to cold (hiesho) induces premature rupture of membranes.
*1慶應義塾大学(Keio University) *2聖路加看護大学(St. Luke's College of Nursing) *3聖マリア学院大学(St. Mary's College)
Method
The study design was a retrospective cohort study. Data was collected for approximately twelve months be-tween October 19, 2009 and October 8, 2010 at six general hospitals with obstetric and pediatric departments in the Greater Tokyo Metropolitan Area. The study was conducted on 2,810 postpartum Japanese women inpatients at those hospitals, and their information was extracted from questionnaire surveys and medical records. In this analy-sis, confounding factors were adjusted using propensity scores.
Results
Out of 662 women (23.6%) with premature rupture of membranes, 348 (52.6%) had sensitivity to cold (hiesho) and 314 (47.4%) did not. Incidence of premature rupture of membranes is 1.67 times higher (analysis of covariance) or 1.69 times higher (stratified analysis) among pregnant women with sensitivity to cold (hiesho) than those with-out sensitivity to cold (hiesho) (p<.001).
Conclusions
It was strongly inferred that causal effects exist between sensitivity to cold (hiesho) and premature rupture of membranes.
Keywords: hiesho (sensitivity to cold), pregnant women, premature rupture of membranes, propensity score
Ⅰ.は じ め に
1.研究の背景 昨今では,女性の50%以上が冷え症であるといわれ (寺澤,1987;坂口,2001;三浦・交野・住本,2001), 社会一般で,冷え症で悩んでいる女性は多い。また妊 婦においても,冷え症の自覚がある妊婦は約67%で あり,半数以上が冷え症である(中村,2008)。さらに, 冷え症とマイナートラブルや日常生活行動との関係で は,冷え症である妊婦は,倦怠感,腹緊,頭痛,腰痛, イライラ感の5項目のマイナートラブルにおいて,妊 娠に伴うマイナートラブルが悪化し,さらにそれは規 則的な生活や食事などの日常生活行動と関連があるこ とが示唆されている(中村,2008)。 助産所等の現場では,安全なお産の為の体作りとし て冷え症への対策や改善に力を入れている。つまり, 臨床の現場で活動する助産師も,冷え症が分娩時に与 える影響は大きいと認識しており,冷え症と前期破水 とは関係があると実践知から感じていると推察できる。 一方,学術的には,冷え症と分娩の異常との関係に ついて調査研究をおこなった論文はなく,研究におい ては未開発の領域である(中村,2010)。 近年周産期医療の進歩は目覚ましく,分娩時の異常 の減少も著しい。しかしながら,早産率は増加傾向に ある。前期破水は,早産の原因のうち30%にあたる といわれている。37週未満の前期破水の75%は陣痛を 伴っており,妊娠を継続できるのはわずか10%前後 であることから,胎児の予後は早産と同様に厳しい。 (池ノ上・鈴木・高山他,2006)。また,前期破水は全 妊娠の5∼10%に生じ,そのうち少なくとも約60%は 妊娠37週以降に生じるとされている(Parry, Strauss, 1998)。一方,妊娠37週以降の前期破水であっても, その合併症として,母体側では,子宮内感染,常位胎 盤早期剝離離,臍帯脱出等があり胎児側でも,胎児感 染,胎便吸引症候群等の危険が伴う(日本産科婦人科 学会,2009)。したがって,前期破水の予防は,周産 期医療において,取り組むべき最も重要な課題の一つ であるといえる。 以上から,本研究の目的は日本人女性を対象に,妊 娠時に冷え症であることでの前期破水(37週以降の前 期破水を含む)発生率について,冷え症でない妊婦と 比較分析し,冷え症と前期破水との因果効果の推定を 行うことである。Ⅱ.研 究 方 法
1.研究デザイン 後向きコホート研究である。 2.データ収集期間とデータ収集場所 調査期間は,2009年10月19日から2010年10月8日 までの約12カ月である。調査場所は,早産児の収容 が可能な首都圏の産科と小児科を要する総合病院6箇 所である。 3.研究の対象者 分娩時の1年以上前から日本に在住している日本人 女性(国籍が日本)入院している分娩後の女性である。 なお,今回の妊娠が,死産や新生児死亡となった女 性や心身の状態が不安定な女性を除いた。収した。 研究者は,適宜,提出された質問紙を受け取り,同 意が得られた女性の分娩時の情報を医療記録(分娩台 帳もしくは,助産録)から抽出した。また,研究協力 を辞退する場合は,事前に渡した「研究協力への断り 書」を所定の場所に,郵送もしくは,Faxにて送信し てもらった。なお,研究協力への最終的な同意は,質 問紙の回答の提出をもって承認を得たものとした。 5.分析方法 冷え症の有無での2群間における,前期破水との因 果効果の推定のための分析を行った。観察研究にて因 果効果を推定するためには,交絡因子の影響を除去す る必要がある。因果効果とは,独立変数と従属変数の 両方に影響を与える交絡因子の影響を除去した場合の 独立変数(冷え症)による従属変数(前期破水)への効 果のことである。 したがって,本研究では,傾向スコア(propensity score)を用いて交絡因子のコントロールを行い,その 影響を調整した。この方法は,複数の交絡因子を一つ の変数に集約することで,その一変数の上でマッチン グや層別化などを行うことができるということから考 え出された概念であり,現在,交絡因子の調整におい て最も有効な方法であるといわれている(Rosenbaum & Rubin, 1983;星野・岡田,2006)。分析方法は,多 重ロジスティック回帰分析とMantel-Haenszel検定で あり,推定された傾向スコアを用いた具体的な調整 方法として,共分散分析(割り当て変数と傾向スコア を説明変数とした線形の2変量回帰分析)と層別解析 を行った。なお,層別解析では,層別の最低基準は 5層以上が望ましいとされているため(Rosenbaum & Rubin, 1983),本研究では,算出した各傾向スコアの 最小値から最大値を均等に5層のサブグループに分類 し層別化した(Rubin, 1997; D'agostino, 1998)。 なお,統計的分析には統計ソフトSPSS Statistics 17.0および19.0を使用し,p<.05を有意差があるとし た。 6.倫理的配慮 調査対象の権利を守るために,倫理的配慮に十分注 意してデータ収集を行った。具体的には,対象者には, 口頭と書面で研究内容を十分に説明し,質問紙の回答 の提出を持って同意の承認を得たものとした。なお, 研究協力の有無にかかわらず,施設でのケアは変わら 4.調査方法 1 ) 測定用具 調査は,質問紙調査と医療記録からのデータの収集 である。質問紙は,冷え症に関連する分娩時の状況 とデモグラフィックデータである。デモグラフィッ クデータに中の合併症の項目は,子宮筋腫,卵巣の う腫,糖尿病,心疾患,不妊症,歯周病等を含む13 項目である。これらは,国内(池ノ上・鈴木・高山他, 2006;日本産科婦人科学会,2008),国外(Diane & Margaret, 2003; Gary, 2005; NICE, 2008; NICE, 2007) の代表的な文献を参考に研究者が作成した。また,医 療記録からデータ収集した主な項目は,分娩経過全 体についてと,新生児についてである。分娩経過の項 目は,分娩週数などの早産を確認する項目,陣痛の強 弱や陣痛促進薬の使用,分娩所要時間などの微弱陣痛 や遷延分娩を確認する項目,前期破水を確認する破水 の時期,弛緩出血を確認する分娩時総出血量と,その 鑑別診断や各分娩時の異常に影響を与える項目に当た るものである。新生児の項目は,新生児の出生数や体 重,アプガースコアなどをあげた。なお,各異常分娩 の定義は日本産科婦人科学会にて定められたものであ り,診断の基盤となる基準は6施設ともほぼ同様であ り,施設間での大きな相違はみられなかった。 不安とストレスに関しては,SFS-1[心理的ストレス 反応測定尺度](鈴木・嶋田・坂野他,2007)を使用し た。なお,本研究におけるSFS-18の信頼性については, クロンバックのα係数は,ストレス尺度では0.91,不 安尺度では0.84であり,いずれも内的整合性に問題は なく,信頼性は確保された。 さらに,冷え症は自覚で判断できるという先行研究 の結果を受け(中村,2008),妊娠後半の冷え症の自覚 の有無を問う項目をあげた。具体的には,「妊娠後半 に冷え症の自覚があったか」「妊娠後半に手足が冷え ている(冷たい)と感じたか」である。なお,本研究は 早産を対象に含むため,妊娠後半が対象者により異な ることを考慮し,妊娠後半の週数の定義は定めなかっ た。 データ収集にあたり,内容妥当性ならびに表面妥当 性の確保は十分行った。 2 ) 調査の実際 入院中の分娩後の女性に,研究の主旨を説明し,研 究協力に同意が得られた女性に対し質問紙の記入をし てもらった。記入後の質問紙は,所定の回収箱に投入 する等,施設の方針や対象者の状況により選択して回
ず,不利益を受けないこと,研究結果は研究論文とし てまとめられ,専門の学会等で公表することについて も説明した。 研究の実施に際し,聖路加看護大学の倫理審査委員 会(09-057)と,調査実施施設の倫理審査委員会での承 認を得て行った。 7.用語の定義 ・冷え症(hiesho/sensitivity to cold) 先行研究の結果から(中村,2008),冷えの自覚は, 前額部温と足底部温の温度較差を反映しているため, 自己申告で「冷え症の自覚があるもの」を冷え症と した。
・前期破水(premature rupture of membranes) 陣痛開始前の破水であり,医療記録に記述されて いる破水時間と陣痛開始時により判断した。
Ⅲ.結 果
1.リクルート状況 2009年10月19日から2010年10月8日までの約12ヵ 月間調査を行った。総リクルート数は4448名であり, そのうち回答が得られたのは2821名であった。2821 名のうち,外国人3名と,医療記録から情報を得るこ とに承諾を得られなかった女性8名の合計11名を対象 から除外した。最終的に2810名を分析の対象とした。 回収率は60.8%であり,有効回答率は99.6%であった。 2.対象の属性(表1-1,1-2) 対象の平均年齢は32.7(SD: Standard Deviation 4.6) 歳であった。冷え症の有無では,冷え症であった女性 は1168名(41.6%)で,冷え症でなかった女性は1642 名(58.4%)であった。前期破水では,前期破水であ った女性は662名(23.6%)で,前期破水でなかった 女性は2148名(76.4%)であった。分娩歴では,初産 婦が1501名(53.4%),経産婦は1309名(46.6%)であ った。妊娠時の合併症の有無では,合併症があった 女性は1098名(39.1%)であり,なかった女性は1712 名(60.9%)であった。児の出生数は,単胎が2,795名 (99.5%),双胎は14名(.5%),品胎は1名(.1%未満) であった。児の平均出生体重は3032 g(SD384.9)であ った。 冷え症の有無での対象者の属性では,BMI(kg/m2) の平均は,冷え症がある女性は24.6(SD2.8)で,冷え 症でない女性は24.4(SD2.6)であり,冷え症の女性の 方の肥満度が高かった(p=0.01)。平均分娩所要時間 では,冷え症がある女性は10.1時間(SD8.0)で,冷え 症でない女性は8.2時間(SD6.5)であり,冷え症の女 性の方の平均分娩所要時間が長かった(p<.001)。分 娩時総出血量の平均についても,冷え症がある女性 は466.6 ml(SD316.4)で,冷え症でない女性は382.4 ml(SD316.4)であり,冷え症の女性の方の平均分娩時 総出血量が多かったp<.001)。また,妊娠中に喫煙 していたのは,冷え症がある女性は53名(57.0%)で, 冷え症でない女性は40名(43.0%)であり,冷え症の 女性の方が,喫煙率が高かった(p=.003)。妊娠中の カンジダ,クラミジア,B群レンサ球菌等の感染症の 合併では,妊娠中に感染していたのは,冷え症があ る女性は21名(58.3%)で,冷え症でない女性は15名 (41.7%)であり,冷え症の女性の方が,妊娠中の感染 率が高かった(p=.0042)。 また,前期破水であった662名のうち,妊娠22週0 日から妊娠36週6日までの分娩数は40名(6.0%)であ り,妊娠37週0日以降の分娩数は622名(94.0%)であ った。妊娠22週0日から妊娠36週6日までの分娩のう ち,冷え症がある女性は30名(75.0%)で,冷え症で 表1-1 冷え症の有無における対象の背景 (N=2810) (t検定) 冷え症である 平均(SD) 冷え症ではない平均(SD) t値 p値 effect size効果量 対象全体 (n=1168) (n=1642) 年齢(歳) BMI(kg/m2) 分娩週数(週) 出生体重(g) 32.5(4.6) 24.6(2.8) 39.2(1.6) 3018.6(417.0) 32.8(4.7) 24.4(2.6) 39.4(1.2) 3041.3(360.1) 1.254 2.580 2.764 1.500 .210 .01* .006** .134 .06 .07 .14 .06 経腟分娩のみ(n=2427) (n=1020) (n=1407) 分娩所要時間(時間) 分娩時総出血量(ml) 10.1 466.6(8.0)(316.4) 382.48.2(6.5)(316.4) 5.9007.014 <.001**<.001** .27.24 p<.05* p<.01**ない女性は10名(25.0%)であり,冷え症の女性の方 が多かった(p=.002)。妊娠37週以降の分娩では,冷 え症がある女性は317名(51.0%)で,冷え症でない女 性は305名(49.0%)であり,冷え症の有無における有 意差はなかった(p=.63)。さらに,前期破水の女性の うちの陣痛促進薬使用の有無を分娩週数区分別にみる と,妊娠22週0日から妊娠36週6日では,40名のうち 4名(10.0%)が陣痛促進薬を使用していた(p<.001)。 妊娠37週以降の分娩では,622名のうち243名(39.0%) が使用していた(p<.001)。 3.冷え症と腹部の冷えとの関係性(表2) 冷え症である妊婦の81.7%(954名)が「腹部の冷え の自覚」においても冷えていると感じていた。「冷え 症」と「腹部の冷えの自覚」を全体でみると,その一致 率は85.2%であった。χ2乗検定の結果でもp<.001で あり,「冷え症」と「腹部の冷えの自覚」との間に関係 があった。また,残差分析の結果でも,冷え症であり 腹部の冷えの自覚がある妊婦が,冷え症ではないが腹 部の冷えの自覚がある妊婦に比べ有意に多く,冷え症 ではなく腹部の冷えの自覚がない妊婦が,冷え症であ るが腹部の冷えの自覚がない妊婦に比べ有意に多かっ 表1-2 冷え症の有無における対象の背景 冷え症である (n=1168) n(%) 冷え症ではない (n=1642) n(%) χ 2値 p値 効果量 effect size 対象全体(n=2810) (n=1168) (n=1642) 分娩歴 初産 676(24.1) 825(29.4) 16.287 <.001** .08 1回 経産 377(13.4) 637(22.7) 2回以上 経産 115(4.1) 180(6.4) 妊娠中の喫煙(全妊娠期中)あり 53(57.0) 40(43.0) 9.420 .003** .06 なし 1115(41.0) 1602(59.0) 合併症 感染症 あり 21(58.3) 15(41.7) 4.221 .042* .04 なし 1147(41.3) 1627(58.7) 妊娠中の抗生剤の内服 あり 48(49.5) 49(50.5) 2.594 1 .116 なし 1120(41.3) 1593(58.7) 絨毛膜羊膜炎 あり 3(50.0) 3(50.0) 0.176 1 .698 なし 1165(41.5) 1639(58.5) 妊娠時異常 子宮収縮抑制剤の内服 あり 125(48.8) 131(51.2) 6.116 .014* .05 なし 1043(40.8) 1511(59.2) 胎児奇形 あり 38(56.7) 29(43.3) 6.487 .012* .05 なし 1130(41.2) 1613(58.8) 先天性胎児異常 あり 38(56.7) 29(43.3) 6.487 .012* .05 なし 1130(41.2) 1613(58.8) 分娩時異常(有意差がある項目のみ) 前期破水 あり 348(52.6) 314(47.4) 43.16 <.001** .12 なし 820(38.2) 1328(61.8) 前期破水あり(n=662) 分娩週数 22∼36週(n=40, 6.0%) 37週以降(n=622, 94.0%) 30 317(75.0)(51.0) 10 305(25.0)(49.0) 10 .23 .002.63 .17.00 早産 あり 78(70.9) 32(29.1) 40.583 <.001** .12 なし 1090(40.4) 1610(59.6) 微弱陣痛 あり 188(65.3) 100(34.7) 74.282 <.001** .16 なし 980(38.9) 1542(61.1) 遷延分娩 あり 105(67.7) 50(32.3) 46.279 <.001** .13 なし 1063(40.0) 1592(60.0) 分娩様式 経腟分娩 960(34.2) 1350(48.0) 5.895 .052 .05 鉗子又は吸引分娩 60(2.1) 57(2.0) 帝王切開術 148(5.3) 235(8.4) 経腟分娩のみの状況(n=2427) (n=720) (n=1022) 弛緩出血 あり 343(56.0) 270(44.0) 65.292 <.001** .17 なし 677(37.3) 1137(62.7) χ2検定 p<.05* p<.01**
た。つまり,冷え症と腹部の冷えの自覚はおおよそ同 様であることが推察された。 4.冷え症の有無における前期破水との関係 前期破水であった662名(23.6%)のうち,冷え症が ある女性の割合は348名(52.6%)であり,冷え症でな い女性の割合は314名(47.4%)であった。 1 ) 交絡因子の選択 傾向スコア算出のため,冷え症と前期破水の交絡因 子の選択を行った。選択した項目は,妊娠前の体重, 分娩時(前)の体重,BMI,分娩歴,妊娠中の喫煙(全 妊娠期間中),母体合併症の有無,子宮奇形,妊娠中 の感染症,切迫早産,子宮収縮抑制薬の内服,先天性 胎児異常,分娩週数,早産の13項目である。 なお,交絡因子の選択において,前期破水について は,文献からの抽出もしくは各分娩時の異常において 統計的に有意差がある項目を選択した。冷え症につい ては,冷え症の有無において統計的に有意差がある項 目を選択した。そして,冷え症と前期破水の両方に当 てはまる項目を交絡因子とした 2 ) 傾向スコアの算出 対象は,2810名全員である。変数選択の方法は強 制投入法であり,その結果,モデルの方程式に組み 込まれた項目は,妊娠前の体重,分娩時(前)の体重, BMI,分娩歴,妊娠中の喫煙(全妊娠期間中),母体 合併症の有無,子宮奇形,妊娠中の感染症,切迫早産, 子宮収縮抑制薬の内服,先天性胎児異常,分娩週数, 早産の13項目であり,この13項目の傾向スコアを算 出した(表3)。 3 ) 傾向スコアによる調整前の冷え症が与える影響 従属変数を前期破水,独立変数を冷え症としてロジ スティック回帰分析を施行した。その結果,回帰係数 0.59,p<.001,オッズ比1.8であった。つまり,交絡 因子の調整前では,妊娠後半の冷え症の有無で,前期 破水になる確率は1.8倍であるといえる。 4 ) 共分散分析による傾向スコアの調整 従属変数を前期破水,独立変数を冷え症と前期破水 の傾向スコアとして,ロジスティック回帰分析を施行 し共分散分析を行った。その結果,冷え症の回帰係数 0.51,p<.001,オッズ比1.67(95%CI: 1.402.00)で あった。つまり,傾向スコアで調整すると妊娠後半の 冷え症の有無で,前期破水になる確率は1.67倍となっ た。 5 ) 層別解析による傾向スコアの調整 算出した傾向スコア値で対象者を値で均等に5層の サブグループに層別化した。そして,各層毎に冷え症 と前期破水の2変量でχ2検定を行った。第1のグルー 表2 腹部の冷えの自覚と冷え症との関係 腹部の冷えの自覚 あり なし 不明 冷え症 あり (n=1168) 調整済み残差 81.7% (n=954) 39.4 15.2% (n=178) 38.9 3.0% (n=36) .1 なし (n=1642) 調整済み残差 8.3% (n=136) 39.4 88.7% (n=1456) 38.9 3.0% (n=50) .1 χ2値=1580.7 p<.001 effect size .75 表3 冷え症と前期破水の共変量として,傾向スコアの推定に使用した項目 回帰係数
(B) 標準誤差(SE) Wald統計量(SE/B)2 自由度 有意確率(p) オッズ比(OR) 95%信頼区間(CI値)
妊娠前の体重 .01 .13 .59 1 .442 1.01 .991.04 分娩時(前)の体重 .02 .01 10.06 1 .002 1.02 1.011.03 BMI .01 .03 .25 1 .614 1.01 .961.07 分娩歴 .23 .06 15.63 1 <.001 .79 .71 .89 妊娠中の喫煙 (全妊娠期間中) .64 .22 8.72 1 .003 1.90 1.242.91 母体合併症の有無 .07 .08 .83 1 .361 1.08 .921.26 子宮奇形の合併 .40 .95 .18 1 .675 .67 .114.32 妊娠中の感染症 .59 .35 2.85 1 .092 1.80 .913.57 切迫早産 .10 .13 .58 1 .446 1.11 .851.44 子宮収縮抑制薬の内服 .29 .14 4.75 1 .030 1.34 1.031.75 先天性胎児異常 .62 .25 5.92 1 .020 1.85 1.133.04 早産 1.26 .22 34.12 1 <.001 3.53 2.315.39 分娩週数 .01 .03 .12 1 .727 .95 .951.08 モデルの適合度:χ2検定,*p<.001,NagelkerkeR2乗.04,HosmerとLemeshowの検定p=.87,判別的中率60.6%,n=2810
プの傾向スコアは .37であり,対象人数は768名であ った(χ2=.96, p=.36)。第2のグループの傾向スコアは.37 .49であり,対象人数は1724名であった(χ2=3831, p <.0)。第3のグループの傾向スコアは.49.62であ り,対象人数は185名であった(χ2=.37, p=.62)。第4の グループの傾向スコアは.62.74であり,対象人数は 105名であった(χ2=.52, p=.52)。第5のグループの傾向 スコアは>.74であり,対象人数29名であった(χ2=.02, p=.89)。 次に,それらを統合して,共通オッズ比の回帰係数 や共通オッズ比の95%信頼区間(CI値)等を算出した。 層別解析にはMantel-Haenszel法を施行した。その結 果,回帰係数.52,p<.001,共通オッズ比1.69であっ た。つまり,傾向スコアで調整すると妊娠後半に冷え 症の有無での前期破水になる確率は1.69倍となり,共 分散分析での値と近似していた(表4)。 なお,すべてのロジスティック回帰分析でもモデル の適合度は十分であった。
Ⅳ.考 察
1.冷え症と前期破水との関係性の推定 妊娠後半に冷え症である女性は,そうでない女性に 比べて,前期破水の発生率は約1.7倍であった。この 結果は,共分散分析と,層別解析の両方の分析方法に おいてほぼ同様の値であることから,その信頼性は高 いと考える。 また,本研究では,傾向スコアを用いて交絡因子の 調整を行った。このことで,交絡因子の影響を除去し た場合の,冷え症がもたらす前期破水への影響を推定 することができた。その結果,傾向スコアによる調 整前のオッズ比は1.8であり,調整後は1.7倍であった。 つまり,いずれも調整前と調整後のオッズ比値との間 に大きな差はなかった。要するに,傾向スコアで交酪 因子の調整を行っても,前期破水の発生率にほとんど 変化はみられないということである。この結果から, 冷え症と前期破水との因果効果において,交絡因子の 影響力が少ないことが考えられる。言い換えると,冷 え症が前期破水の重要な1要因であることが推測でき る。以上から,妊娠後半の冷え症と,前期破水の発生 率との間に因果効果がある可能性が高いことが推定さ れた。 前期破水の発生率は全分娩の約10∼20%であると いわれている(荒木,2010)。本研究でも前期破水発 生率は全体の23.6%であり,既存の研究結果と大き な相違はなかった。前期破水は,母体側の合併症と して子宮内感染,早産,常位胎盤早期剥離などがあ り,胎児側の合併症としては羊水過少による臍帯圧 迫,臍帯脱出や胎児機能不全などがある(日本産科婦 人科学会,2011)。すなわち,命に直結する合併症も 多く,見逃すことのできない重要な疾患である。特に, 妊娠37週未満の破水をpreterm PROM(pPROM)とい い,妊娠37週以降の前期破水をterm PROM(PROM) と区別しており,母体ならびに胎児へのリスクは高く, PROM とは異なった管理を行う(日本産科婦人科学会, 2011)。本研究では,前期破水であった662名のうち, 妊娠22週0日から妊娠36週6日までの分娩数(pPROM) は40名(6.0%)であった。これは,本研究における早 産数は110名であることから,早産の36.4%がpPROM であったことを示すものであり,前期破水は,早産の 原因のうち30%にあたるといわれている既存の研究 と類似していた。またpPROMの管理は,床上安静を 余儀なくされ,場合によっては,胎児心拍数モニター の連続装着等が必要となる。したがって,リスクのみ ならず,妊婦の負担も大きく,周産期医療において大 きな課題の一つといえよう。 一方,妊娠37週0日以降(PROM)の分娩数は622名 (94.0%)であった。妊娠37週以降の前期破水では待機 時間が長いことによる絨毛膜羊膜炎が懸念されるため, 分娩誘発が望ましいといわれている(ACOG Practice 表4 冷え症の有無における前期破水の割合 (n=2810) 回帰係数(B) 標準誤差(SE) (SE/B)2/ΧWald統計量2値 自由度 有意確率(p) オッズ比(OR)/共通オッズ比 95%信頼区間(CI値)
傾向スコアに よる調整前* 冷え症 .59 .09 42.61 1 <.001 1.80 1.512.14 傾向スコアに よる調整後 共分散分析** 冷え症 .51 .09 31.57 1 <.001 1.67 1.402.00 層別解析 Mantel-Haenszel 冷え症 .52 .09 33.05 1 <.001 1.69 1.412.02 モデルの適合度:*χ2検定,p<.001,NagelkerkeR2乗.02,判別的中率76.4% **χ2検定,p<.001,NagelkerkeR2乗.03,HosmerとLemeshowの検定p=.007,判別的中率76.4%
Bulletin, 2007: Dare, Middleton, Crowther et al., 2006)。 本研究でも,PROMでは622名のうち243名(39.0%) が陣痛促進薬を使用していた。本研究では全体対象数 2810名のうち,陣痛促進薬の使用は24.9%(699名)で ある。つまり,陣痛促進薬の使用の3人に1人が前期 破水であったことを示している。つまり,妊娠37週 以降の前期破水であっても,陣痛促進薬の使用のリス ク,妊婦の負担,不安やストレスも計り知れなく多い。 前期破水の時期と冷え症について,pPROMのうち, 冷え症がある女性は30名(75.0%)であり,冷え症で ない女性は10名(25.0%)であった。つまり有意に冷 え症であることで,前期破水が起こる可能性が高いこ とが判明した(p=.002)。PROMでは,冷え症の有無に おける有意差はなかった(p=.63)。つまり,pPROM では冷え症の影響が大きいことか推察される。 以上より,いずれも,前期破水から始まるお産は, 正常とは異なる経過を伴い管理分娩を余儀なくされる。 本研究の結果,冷え症は前期破水の誘因の一つと推察 されるため,冷え症改善へのケアを行うことは,前期 破水の予防につながるものと示唆される。 本研究の結果は,臨床の現場において実際に行われ てきていることへのエビデンスの提唱であり,日本に おいて慣例的に行われてきた冷え症予防のケアの科学 的根拠の確立となった。つまり,本研究の結果は,妊 婦に対しエビデンスに基づくケアの提供につながるも のであり,さらに,妊婦のヘルスプロモーションの一 環として,冷え症の予防や改善のために,日常生活行 動の見直しへのケアが拡充していくと推察する。 2.冷え症と前期破水の因果推論 研究において,因果効果の絶対値が大きいことが, 因果関係の直接の立証にはならないし,また因果関係 を完璧に検証することは不可能である。では,当該研 究がどのような要件を持っていれば,より因果関係に 近い関係を示したといえるのであろうか。因果効果か ら,因果関係を示すには,学問分野ごとにさらに別の 基準を満たすことが要求される(星野・繁桝,2004)。 本研究では,Hill(1965)の因果関係の判定のガイド ラインに従い,9項目における冷え症と前期破水との 因果推論を行った。 1 ) 相関の強さ 本研究の結果,冷え症と前期破水との間において, オッズ比も約1.7であり,高い確率で有意であった(p <.001 95%CI: 1.41-2.02)。したがって,冷え症と前期 破水の間において強い相関があると推測できる。 2 ) 相関の一致性 相関関係の大きさは,さまざまな状況で,対象や実 証に利用する手法が違っても一致している必要がある。 しかし,冷え症と前期破水との関係を証明した研究は ない。したがって,他の研究との一致性を確認するこ とはできない。 3 ) 相関関係の特異性 冷え症と前期破水が1対1で対応している必要があ る。しかし,冷え症と前期破水には他の要因も存在す るため要件を満たしているとはいえない。 したがって,傾向スコアを用いて,冷え症と前期破 水以外に影響を与えると考えられる変数の調整を行い, 冷え症と前期破水との特異性を明確にした。以上から, 冷え症と前期破水との相関関係の特異性はある可能性 があることが推測できるものの条件を満たしていると はいえない。 4 ) 時間的な先行性 冷え症は異常分娩に時間的に先行している必要があ る。本研究の独立変数は冷え症,従属変数は前期破水 であり,妊娠後半の冷え症の有無と,分娩時に起こっ た前期破水との比較である。したがって,冷え症が時 間的に先行していると言及できる。 5 ) 量・反応関係の成立 冷え症の状態が強くなると,前期破水が起こる割合 も高くなる必要がある。しかしながら,本研究では, 冷え症の強さを区分して結果を分析していないため, 量・反応関係の成立を確認することはできない。 6 ) 生物学的妥当性 三浦・交野・住本(2001)らによると,冷え症の自 覚と四肢の温度の低下とは一致しており,冷え症と は,四肢の循環不全であり,自律神経系の異常,すな わち交感神経が有意になった状態であると述べてい る。自律神経系の異常では,リンパ免疫系の機能は神 経の影響を受けて調節されているため,免疫力が低下 する。そして,感染の防御機構のひとつに粘液があ り,腟内も酸性環境を維持し,細菌や真菌の増殖を抑 制している(Elaine, 2010)。すなわち,免疫力の低下 は 内環境にも影響を与え,細菌や真菌の増殖の抑制 を弱める可能性がある。また,川嶋(2010)は冷え症 による循環障害は,細胞の活性化の低下を招き,それ が免疫力の低下につながると述べており,村田・萬・ 江口(1982)も冷えの診断のひとつに頸管粘液の増量 をあげている。頸管粘液の増量は腟内の酸性環境が弱
まることでおこる。したがって,冷え症により,免疫 力,自己治癒力が低下し,腟内酸性環境が弱まること が推察できる。 一方,前期破水では絨毛膜羊膜炎等の感染がおこる と,炎症により好中球が集まり,エラスターゼという 酵素を放出する。このエラスターゼが卵膜のコラー ゲンを溶かすことにより卵膜が破れ,前期破水となる (平野・佐藤・田中他,2005)。小竹・進(2005)による と,細菌性症と前期破水は関係していると述べており, 細菌性 症の基準の1つとして,内のpH>4.5である と述べており,妊婦の免疫反応が弱ければ,細菌の侵 入や増殖を抑制しきれず前期破水をおこすことを推察 している。 したがって,以上の考察から冷え症では,免疫力が 低いことが予側されるため,感染しやすく,前期破水 を起こしやすいことが示唆され,冷え症と前期破水の 生物学的妥当性があることが推察できる。 7 ) 先行知見との整合性 研究においては,冷え症と前期破水との関係を研究 した調査型の研究はない。したがって,先行研究との 整合性の有無を判断することはできない。 一方,臨床の現場の助産師は,冷え症であると前期 破水を起こしやすいと認識している。したがって,経 験上での先行知見との整合性はあると予測できる。 8 ) 実験による知見 動物実験等での実験研究による証拠がある必要があ る。冷え症は現在のところ,人間においての知見であ る。したがって動物実験等はされていないため,確認 することはできない。 9 ) 他の知見との類似性 すでに確立している別の因果関係と類似した関係・ 構造を有している必要がある。これについては,冷え 症の研究自体が乏しいことから,他の知見との類似性 を議論することは難しい。 以上より,9つの基準のうち,相関の強さ,時間的 な先行性,生物学的妥当性の3項目については,基準 を満たしていた。一方,相関の一致性,相関関係の特 異性,量・反応関係の成立,先行知見との整合性,実 験による知見,他の知見との類似性の6項目について は,現時点では論議することが不可能な状態である。 したがって,満たしていないとはいえない。 Hill(1965)の因果関係のガイドラインは,9項目の うち,何項目満たしていれば,因果関係があると判 断できるものではなく,なるべく多くの基準を満た していれば,得られた相関関係が因果関係である可 能性は高いとされている。また,Hulley, Cummings, Browner et al., (2010)は,因果関係を支持するエビデ ンスとして重要なものは,関連の一致性,関連の強 さ,量̶反応関係,生物学的妥当性であると述べてい る。本研究では,この4つの項目のうち,2項目を満た していた。したがって,充分とはいえないものの,因 果推論を高めることはできたと考える。しかしながら いずれも,冷え症と前期破水の研究は先行研究が乏し く,未開発の分野であるため,今後因果推論を高めて いくには,さらなる研究の蓄積が必要不可欠であると 考える。 3.助産ケアへの適応と提言 2009年の我が国の分娩数は1,085,912件であった (厚生労働省,2010)。本研究の結果,妊娠後半の冷え 症の割合は41.6%であり,その結果から仮定すると, 451,739名の妊婦が冷え症であり,非常に多いことが 分かる。そして,分析の結果,冷え症の妊婦は,前期 破水を起こしやすいことが推定できた。つまり,前期 破水の予備軍は多く,冷え症は見逃すことはできない 重要な症状であることが示唆された。 臨床の現場では,前期破水の予防のために,喫煙や 過度の運動の回避,感染の予防など,積極的にケアを 行っている。本研究の結果より,前期破水の予防とし て,冷え症の有無を見極め,冷え症への対策や改善に 力を入れていることが必要不可欠である。冷え症のス クリーニングにおいては,冷え症は自覚だけではなく, 冷え症と腹部の冷えの自覚はおおよそ同様であること から,妊婦の腹部の冷えの自覚でも診断が可能であ る。また,冷え症とは中枢温と末梢温の温度較差であ る(中村,2008;中村・堀内・毛利他,2010)ことから, 下肢の触診は冷え症の診断において重要である。さら に,妊婦においては,冷え症の自覚と腹部の冷えの自 覚はほぼ一致していることから,腹部の触診も不可欠 である。このように,問診や触診で冷え症の有無の判 断が可能であることから,冷え症の判断は容易である ため,今後は,臨床の現場において,問診,触診,そ してエビデンスに裏付けされた理由の説明を行ってい くことが求められる。 スクリーニングの時期について,妊婦の体温が安定 するのは妊娠20週頃である。妊娠初期は基礎体温が 上昇するために体が熱っぽく,冷え症の自覚が乏しく
なる可能性がある。したがって,基礎体温が落ち着く 妊娠20週までは,特に触診をすることが重要である。 また妊娠後半にかけては,子宮の増大により,骨盤内 の血管が圧迫され下肢への血流が悪化するため,冷え 症も悪化しやすく,冷えの自覚も明確になる。したが って,20週以降は,問診,触診の両方のスクリーニン グが有効となる。妊婦の冷え症は妊娠が継続すれば, さらに進んでいく可能性がある。加えて,早期予防, 早期発見により,妊娠初期からの対応が可能となるた め,妊娠初期からの継続的スクリーニングが必要不可 欠である。そして将来的には,尿検査や血圧,体重測 定等と並行して,妊婦検診のルーティン項目に,冷え 症のスクリーニングが加えられることを望む。 4.研究の限界と今後の課題 本研究のデザインは後ろ向きコホート研究であり, 妊娠後半の冷え症の自覚についても,分娩後に振り返 り聞いている。このことは,リコールバイアスが生じ る可能性がある。
Ⅴ.結 論
本研究は,日本人妊婦を対象に,冷え症の前期破水 への影響を分析し,冷え症と前期破水との間の因果効 果の推定を行った。結論は以下である。 1 . 冷え症である妊婦の前期破水発生率の割合は,冷 え症ではない妊婦に比べ,約1.7倍であった。 2 . 冷え症と前期破水との因果推論では,相関の強さ, 時間的な先行性,生物学的妥当性の3項目において, 冷え症が前期破水の原因である可能性が示唆された。 3 . 冷え症のスクリーニングにおいては,冷え症は自 覚だけではなく,冷え症と腹部の冷えの自覚はおお よそ同様であることから,妊婦の腹部の冷えの自覚 も冷え症の診断には重要である。 謝 辞 本研究にご高配,ご協力いただきました2810名の 対象者の皆さまならびに,調査協力施設のスタッフの 皆さまに心から感謝いたします。また,ご指導いただ きました聖路加看護大学教授の柳井晴夫先生に感謝い たします。 本研究は2010年度聖路加看護大学大学院博士論文 の一部であり,以下の助成金をいただき行ったもので あります。 ・2010年度日本助産学会学術奨励研究助成 ・科学研究費補助金 基盤研究C 課題番号22592525 ・平成21年度日本私立看護系大学協会若手研究者研 究助成 文 献ACOG Practice Bulletin (2007). Premature Rupture of Mem-branes. No 80, April,(Guide-line).
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